説明

減速機構付きモータ

【課題】弾性部材の耐久性の低下を防止できる低コストな減速機構付きモータを提供する。
【解決手段】減速機構付きモータ1は、回転軸21に装着され、回転軸21と一体に回転できると共に回転軸方向に移動できるウオーム22Aと、回転軸21に固定された左側ストッパ31Aあるいは右側ストッパ31Bと、一端が左側ストッパ31Aあるいは右側ストッパ31Bに当接し他端がウオーム22Aに当接して、ウオーム22Aを回転軸方向に付勢させる弾性部材40Aあるいは弾性部材40Bを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速機構付きモータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、図5に示すように、モータ110の回転軸111方向に自在に摺動できるウオーム112の両側にスラストベアリング113を設け、このスラストベアリング113とハウジングケースの内側面114との間に、ウオーム112を回転軸111方向に付勢させるコイルスプリング115(圧縮コイルばね)を配した減速機構付きモータが記載されている。この減速機構付きモータでは、ウオーム112に噛合されたウオームホイール116が負荷の高い高負荷状態になると、ウオーム112の両側に設けられたスイッチ117がウオーム112の移動によりオンされ高負荷状態を検知して、減速機構付きモータに接続された制御回路によりモータを停止もしくは逆回転させることにより、モータに過電流が流れるのを未然に防止できると共に、ウオームとウオームホイールとの噛合部の損傷が防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭52−156873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図5の減速機構付きモータでは、ウオームを付勢させる圧縮コイルばね(弾性部材)が、スラストベアリングとハウジングケースの内側面に当接して設けられているため、回転軸が回転する毎に、弾性部材にはその回転方向にある程度の捩りが発生する。すると、その捩りにより圧縮コイルばねの付勢力が不安定になると共に圧縮コイルばねの両端のいずれかで滑り磨耗が生じることにより、圧縮コイルばねの耐久性が低下し、装置の信頼性が低下してしまう。さらに、スラストベアリングを使用しているため、部品コストが高くなってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、モータに過電流が流れるのを未然に防止できると共に、ウオームとウオームホイールとの噛合部の損傷を防止でき、さらに、耐久性・信頼性の低下を防止できる低コストな減速機構付きモータを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成すべく成された本発明の請求項1の減速機構付きモータは、
モータと、
前記モータの一方に突出されている回転軸と、
前記回転軸に装着され、前記回転軸と一体に回転できると共に前記回転軸方向に移動できるウオームと、
前記ウオームと噛合されるウオームホイールと、
前記回転軸に固定されたストッパと、
一端が前記ストッパに当接し他端が前記ウオームに当接して、前記ウオームを前記回転軸方向に付勢させる弾性部材と、
前記ウオームの前記回転軸方向の移動を検知する検知手段を備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に記載の減速機構付きモータは、
ステータの外周にロータを有するブラシレスモータと、
前記ロータのロータケースに固定され、前記ロータケースから突出されている回転軸と、
前記回転軸に装着され、前記回転軸と一体に回転できると共に前記回転軸方向に移動できるウオームと、
前記ウオームと噛合されるウオームホイールと、
一端が前記ロータケースに当接し他端が前記ウオームに当接して、前記ウオームを前記回転軸方向に付勢させる弾性部材と、
前記ウオームの前記回転軸方向の移動を検知する検知手段を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3に記載の減速機構付きモータは、請求項1又は2に記載の減速機構付きモータにおいて、
前記ウオームは、径方向内側に空洞部を有し、
前記弾性部材は、少なくとも軸方向の一部が、前記空洞部に挿入されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4に記載の減速機構付きモータは、請求項1乃至3のいずれかに記載の減速機構付きモータにおいて、
前記検知手段は、前記ウオームの移動によって操作されるスイッチであることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項5に記載の減速機構付きモータは、請求項1乃至3のいずれかに記載の減速機構付きモータにおいて、
前記検知手段は、非接触式のセンサーであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の減速機構付きモータでは、ウオームに噛合するウオームホイールの負荷状態が、通常負荷状態から負荷の高い高負荷状態に変化すると、ウオームは、ウオームホイールからの反力を受けて弾性部材を圧縮させて回転軸方向に移動し、検知手段が、所定距離移動したウオームを検知することにより、ウオームホイールの高負荷状態を検知する。そして、検知手段の信号に基づきモータは停止され、あるいは、逆回転されることにより、モータに過電流が流れるのを未然に防止できると共に、ウオームとウオームホイールとの噛合部の損傷を防止できる。さらに、回転軸が回転する際、弾性部材は、回転軸と一体に回転することにより、弾性部材にはその回転方向の捩りや滑り磨耗が生じないため、弾性部材の耐久性の低下を防止できると共に、設計値通りの弾性部材の付勢力が長期に亘って安定してウオームに作用するため、装置の耐久性・信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態例に係る減速機構付きモータを説明するための図であり、(a)は、減速機構付きモータの上ケースを除いた平面図であり、(b)は、(a)の切断線A−Aの断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態例に係り、ウオームの動作を説明するための図であり、(a)は、減速機構付きモータの上ケースを除いた平面図であり、(b)は、(a)の切断線B−Bの断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態例に係る減速機構付きモータを説明するための図であり、(a)は、減速機構付きモータの上ケースを除いた平面図であり、(b)は、(a)の切断線C−Cの断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態例に係る減速機構付きモータを説明するための図であり、(a)は、減速機構付きモータの上ケースを除いた平面図であり、(b)は、(a)の切断線D−Dの断面図である。
【図5】従来の減速機構付きモータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る減速機構付きモータについて説明する。
【0014】
(第1実施形態例)
図1は、本発明の第1実施形態例に係る減速機構付きモータを説明するための図である。
図2は、本発明の第1実施形態例に係り、ウオームの動作を説明するための図である。
【0015】
本例の減速機構付きモータ1は、図1に示すように、ハウジング10と、モータ20と、回転軸21と、ウオーム22Aと、ウオームホイール27と、左側ストッパ31Aと、右側ストッパ31Bと、弾性部材40A、40Bと、検知手段50A、50Bを備えている。
【0016】
ハウジング10は、上ケース(不図示)と下ケース11の開口端部が互いに嵌合して所定の内部空間を有する箱状に形成され、モータ20やウオームホイール27等を収容している。下ケース11には、内底面から一体に立ち上げられたモータ支持部11Aが設けられている。
【0017】
モータ20は、インナーロータ型のブラシ付きモータから構成されており、モータ支持部11Aにネジ止めされて固定されている。
【0018】
回転軸21は、モータ20のモータケース20Aから一方に突出されており、突出された部分は外形Dカット状に形成され、このDカット状の部分に、ウオーム22Aが装着される。
【0019】
ウオーム22Aは、硬質樹脂により形成され、長手方向にDカット形状の貫通孔22A1を有する。この貫通孔22A1は、モータケース20Aから突出された回転軸部分の外形より若干大きく構成されており、ウオーム22Aが回転軸21に装着(係合)されると、ウオーム22Aは回転軸21と一体に回転できると共に回転軸方向に移動できる。また、回転軸方向のウオーム22Aの両側には、径方向内側に左側空洞部24Aと右側空洞部24Bがそれぞれ設けられ、左側空洞部24Aと右側空洞部24Bは、回転軸方向から見て円形状に形成されている。
【0020】
ウオームホイール27は、硬質樹脂により形成され、ウオーム22Aと噛合されている。このウオームホイール27は、上ケースと下ケース11に挟持されて回転自在に設けられている。
【0021】
左側ストッパ31Aと右側ストッパ31Bは、金属材料で外形円形状に形成され、回転軸21にそれぞれ圧入されて固定されており、ウオーム22Aの回転軸方向の移動を制限するものである。左側ストッパ31Aと右側ストッパ31Bの外形は、左側空洞部24Aと右側空洞部24Bより若干小さく形成されている。左側ストッパ31Aは左側空洞部24Aに挿入され、右側ストッパ31Bは右側空洞部24Bに挿入されている。
【0022】
弾性部材40A、40Bは、圧縮コイルばねから構成され、ウオーム22Aを回転軸方向に付勢させるものである。弾性部材40Aは、一端が左側ストッパ31Aに当接し他端が左側空洞部24Aの底部に当接しており、弾性部材40Aと左側ストッパ31Aの全体が、左側空洞部24A内に配されている。弾性部材40Bは、一端が右側ストッパ31Bに当接し他端が右側空洞部24Bの底部に当接しており、弾性部材40Bと右側ストッパ31Bの全体が、右側空洞部24B内に配されている。この弾性部材40A、40Bの外形は、左側ストッパ31Aと右側ストッパ31Bの外形より小さく形成されている。
なお、上述の弾性部材は、圧縮コイルばねであるが、円筒状のゴム等でもよい。
【0023】
このように構成すると、弾性部材40Aは、ウオーム22Aを回転軸方向(図1中の矢印T方向)に付勢させた状態となると共に、弾性部材40Bは、ウオーム22Aを回転軸方向(図1中の矢印U方向)に付勢させた状態となる。
また、左側ストッパ31Aは、左側空洞部24Aより若干小さく形成されていると共に、右側ストッパ31Bは、右側空洞部24Bより若干小さく形成されているため、ウオーム22Aは、弾性部材40A、40Bの変位量だけ回転軸方向(図1の矢印U方向あるいは矢印T方向)に移動できる。
また、回転軸21とウオーム22Aの貫通孔22A1が係合されることにより、回転軸21が回転すると、ウオーム22Aと弾性部材40A、40Bと左側ストッパ31Aと右側ストッパ31Bは、回転軸と一体に(同期して)回転する。
【0024】
検知手段50A、50Bは、透過型フォトインタラプタにより構成される非接触式のセンサーであり、ウオーム22Aの移動を検知するものである。本例の透過型フォトインタラプタは、回転軸方向と直角方向にウオーム22Aを挟んで発光素子50A1、50B1と受光素子50A2、50B2を一定の間隔を持たせて対向して配されている。検知手段50Aは、ウオームの左端部26Aに近接して対向して配され、検知手段50Bは、ウオームの右端部26Bに近接して対向して配されている。そして、ウオーム22Aが回転軸方向に移動すると、発光素子の光がウオーム22Aにより遮られ、検知手段50A、50Bは、ウオーム22Aの回転軸方向の移動を検知する。
【0025】
このように構成された本例の減速機構付きモータ1において、モータ20に駆動電流が供給され、モータ20が駆動されると、回転軸21が回転(正転あるいは逆転)し、ウオーム22Aが図1中の回転軸先端側から見て時計回りあるいは反時計回りに回転する。すると、ウオーム22Aと噛合されたウオームホイール27が、図1中の矢印R方向あるいは矢印S方向に回転する。
また、モータ20が駆動されると、モータの回転方向に応じて発光素子50A1と発光素子50B1の一方が発光する。具体的には、ウオームホイール27が図1中の矢印R方向に回転するようにモータが回転する場合には発光素子50A1が発光し、ウオームホイール27が図1中の矢印S方向に回転するようにモータが回転する場合には発光素子50B1が発光するように制御される。
【0026】
そして、ウオームホイール27の負荷状態が、通常負荷状態から負荷の高い高負荷状態に変化すると、ウオーム22Aは、ウオームホイール27からの反力を受けて弾性部材を圧縮させて回転軸方向(図1中の矢印U方向あるいは矢印T方向)に移動する。
図2は、ウオームホイール27が矢印R方向に回転中に高負荷状態に変化した時の状態を示している。図2に示すように、ウオームホイール27の高負荷状態によってウオーム22Aが所定距離移動すると、発光素子50A1からの光がウオーム22Aによって遮られ、受光素子50A2は発光素子50A1からの光を受光できず、これによりウオームホイールの高負荷状態を検知することができる。すると、この検知信号に基づいてモータが停止され、あるいは、逆回転されることにより、モータに過電流が流れるのを未然に防止できると共に、ウオームとウオームホイールとの噛合部の損傷を防止できる。
【0027】
また、本例の減速機構付きモータ1は、回転軸21に装着され、回転軸21と一体に回転できると共に回転軸方向に移動できるウオーム22Aと、回転軸21に固定されたストッパ31A、31Bと、一端がストッパ31A、31Bに当接し他端がウオーム22Aに当接して、ウオーム22Aを回転軸方向に付勢させる弾性部材40A、40Bと、ウオーム22Aの回転軸方向の移動を検知する検知手段50A、50Bを備えている。
よって、回転軸が回転(正転あるいは逆転)すると、弾性部材(圧縮コイルばね)は、回転軸と一体に(同期して)回転するため、弾性部材にはその回転方向の捩りや滑り磨耗が生じないため、弾性部材の耐久性の低下を防止できると共に、設計値通りの弾性部材の付勢力が長期に亘って安定してウオームに作用するため、設計値通りのウオームの移動量でウオームホイールの高負荷状態を安定して検知でき、装置の耐久性・信頼性の低下を防止できる。
また、本例の減速機構付きモータでは、従来例のようなスラストベアリングを使うことなくウオームが回転軸方向に付勢されるため、低コスト化が実現できる。
【0028】
また、本例の減速機構付きモータでは、弾性部材40Aと左側ストッパ31Aの全体が、左側空洞部24A内に配されていると共に、弾性部材40Bと右側ストッパ31Bの全体が、右側空洞部24B内に配されている。
このように構成すると、弾性部材とウオームの回転軸方向の装着幅(弾性部材とウオームを回転軸に装着した際の弾性部材とウオームとの回転軸方向の全長)を最小限にすることができ、装置を小型化できる。
【0029】
また、本例の減速機構付きモータでは、検知手段50A、50Bは、非接触式のセンサーであるため、ウオームと検知手段が接触することなくウオームホイールの高負荷状態を検知できるため、耐久性が格段に向上できる。
【0030】
なお、本例の減速機構付きモータでは、ウオームに空洞部を設け、弾性部材をこの空洞部内に完全に収納しているが、本発明では弾性部材の少なくとも軸方向の一部が、ウオームの空洞部内に挿入されていれば、弾性部材とウオームの回転軸方向の装着幅を抑えることができ、装置が大型化するのを抑えることができる。
また、本発明の減速機構付きモータでは、ウオームに空洞部を設けずに、弾性部材をウオームの端部に当接して配置することもできる。この場合には、装置の小型化のメリットはないものの、ウオームの形状が簡素化され製造コストを下げることができる。
【0031】
また、本例の減速機構付きモータでは、検知手段として透過型フォトインタラプタからなる非接触式センサーを用いているが、この非接触式センサーとしては例えば発光素子と受光素子を備える反射型フォトインタラプタを用いることもできる。反射型フォトインタラプタを用いる場合には、例えばウオームの両端部外周に反射板が設けられる。そして、ウオームホイールの高負荷状態によってウオームが所定距離移動すると、発光素子からの光が反射板により反射し、その反射光を受光素子が受光することにより、ウオームホイールの高負荷状態を検知できる。
【0032】
また、本発明の減速機構付きモータでは、検知手段50A、50Bは、上記のような非接触式のセンサーに限らず、ウオーム22Aの移動によって操作(押圧)される接触式のリーフスイッチ、押しボタンスイッチ、マイクロスイッチでもよい。この場合のスイッチは、ウオームの端部に対向して配される。
【0033】
また、本例の減速機構付きモータでは、2つの弾性部材40A、40Bを用いてウオーム22Aを回転軸の両方向に付勢させ、2つの検知手段50A、50Bによってウオーム22Aの両方向への移動を検知するように構成しているが、例えばモータの駆動方向が一方向だけの場合(即ち、ウオームホイール27を図1中の矢印R方向もしくは矢印S方向の一方向だけに回転させる装置の場合)には、その駆動方向(回転方向)に応じてウオーム22Aの付勢や移動検知を一方向だけにしてもよい。
【0034】
具体的には、ウオームホイール27を図1中の矢印R方向だけに回転させる装置の場合、ウオームホイール27の高負荷状態を検知するためには、ウオーム22Aを図1中の矢印T方向に付勢した状態で矢印U方向の移動を検知することが出来ればよいため、図1の構成において、弾性部材40Bを除いてストッパ31Bが右側空洞部24Bの底部に当接して配され、検知手段50Bが除かれる。なお、この場合には、ウオーム22Aが図1中の矢印U方向に所定距離移動したことを検知手段50Aが検知して、ウオームホイールの高負荷状態を検知すると、この検知信号に基づいてモータが停止される。これにより、モータに過電流が流れるのを未然に防止できると共に、ウオームとウオームホイールとの噛合部の損傷を防止できる。
また、ウオームホイール27を図1中の矢印S方向だけに回転させる装置の場合、ウオームホイール27の高負荷状態を検知するためには、ウオーム22Aを図1中の矢印U方向に付勢した状態で矢印T方向の移動を検知することが出来ればよいため、図1の構成において、弾性部材40Aを除いてストッパ31Aが左側空洞部24Aの底部に当接して配され、検知手段50Aが除かれる。なお、この場合には、ウオーム22Aが図1中の矢印T方向に所定距離移動したことを検知手段50Bが検知して、ウオームホイールの高負荷状態を検知すると、この検知信号に基づいてモータが停止される。これにより、モータに過電流が流れるのを未然に防止できると共に、ウオームとウオームホイールとの噛合部の損傷を防止できる。
【0035】
(第2実施形態例)
図3は、本発明の第2実施形態例に係る減速機構付きモータを説明するための図であり、図3(a)は、減速機構付きモータの上ケースを除いた平面図であり、図3(b)は、図3(a)の切断線C―Cの断面図である。図3において、図1中の符号と同一の符号は同等の部材を指しており、詳細な説明は省略する。
【0036】
本例の減速機構付きモータは、ウオーム22Bを図3中の矢印T方向だけに付勢した状態で矢印U方向だけの移動を検知するように構成したものであり、図1の弾性部材40Bと検知手段50Bを省略するとともに、ストッパ構造を第1実施形態と異なる構造にしたものである。
すなわち、第1実施形態では、ウオーム22Aの右側空洞部24B内に右側ストッパ31Bを設けているが、本例では、ウオーム22Bの右端が閉塞されており、その閉塞部の右側には、回転軸方向に突出する半球状突起部22B1が設けられ、この突起部22B1が下ケース11の内側面と当接して配されることにより、ウオーム22Bの回転軸方向の移動(図3中の矢印T方向)が制限されている。
【0037】
そして、回転軸21の先端部と、ウオーム22Bの閉塞部(挿通孔22B2の底部)との間には、ウオーム22Bが回転軸方向(図3中の矢印U方向)に移動できる隙間が設けられている。
【0038】
本例の減速機構付きモータでは、モータ20が駆動すると、ウオームホイール27は図3中の矢印R方向に回転する。そして、ウオーム22Bが図3中の矢印U方向に所定距離移動したことを検知手段50Aが検知して、ウオームホイールの高負荷状態を検知すると、この検知信号に基づいてモータが停止される。これにより、モータに過電流が流れるのを未然に防止できると共に、ウオームとウオームホイールとの噛合部の損傷を防止できる。
また、回転軸が回転すると、弾性部材40Aは、回転軸と一体に(同期して)回転するため、弾性部材40Aにはその回転方向の捩りや滑り磨耗が生じない。このため、弾性部材の耐久性の低下を防止できると共に、設計値通りの弾性部材の付勢力が長期に亘って安定してウオームに作用するため、設計値通りのウオームの移動量でウオームホイールの高負荷状態を安定して検知でき、装置の耐久性・信頼性の低下を防止できる。
また、本例の減速機構付きモータも、従来例のようなスラストベアリングを使うことなくウオームが回転軸方向に付勢されるため、低コスト化が実現できる。
【0039】
(第3実施形態例)
図4は、本発明の第3実施形態例に係る減速機構付きモータを説明するための図であり、図4(a)は、減速機構付きモータの上ケースを除いた平面図であり、図4(b)は、図4(a)の切断線D−Dの断面図である。図4において、図1及び図3中の符号と同一の符号は同等の部材を指しており、詳細な説明は省略する。
【0040】
本例は、モータの構造が第2実施形態例と異なる。第2実施形態例では、インナーロータ型のブラシ付きモータ20により構成されているが、本例では、アウターロータ型のブラシレスモータ28により構成されている。
【0041】
より具体的には、本例のブラシレスモータ28は、ステータの外周にロータ28Bを有する。
ステータは、ステータベース28Aに固定され巻線された不図示のステータコアを有し、ステータベース28Aは下ケース11の左側内壁部11Bに固定されている。
ロータ28Bは、上記のステータコアの外周に配されたロータケース28B1と回転軸29を有する。
【0042】
回転軸29は、ロータ28Bのロータケース28B1に固定され、ロータケース28B1から一方に突出されており、突出された部分は外形Dカット状に形成され、このDカット状の部分に、ウオーム22Bが装着(係合)される。
ウオーム22Bを付勢する弾性部材40Cは、一端がロータケース28B1に当接し他端が左側空洞部24Aの底部に当接しており、ウオーム22Bを回転軸方向(図4中の矢印T方向)に付勢させる。
回転軸29が回転すると、ウオーム22Bと弾性部材40Cとロータケース28B1は、回転軸と一体に(同期して)回転すると共に、ウオーム22Bは、弾性部材40Cの変位量だけ回転軸方向(図4の矢印U方向)に移動できる。
【0043】
本例の減速機構付きモータでは、ブラシレスモータ28が駆動すると、ウオームホイール27は図4中の矢印R方向に回転する。本例の減速機構付きモータの場合、ウオーム22Bが図4中の矢印U方向に所定距離移動したことを検知手段50Aが検知して、ウオームホイール27の高負荷状態を検知すると、この検知信号に基づいてモータが停止される。これにより、モータに過電流が流れるのを未然に防止できると共に、ウオームとウオームホイールとの噛合部の損傷を防止できる。
【0044】
また、回転軸が回転すると、弾性部材40Cは、回転軸と一体に回転するため、弾性部材40Cにはその回転方向の捩りや滑り磨耗が生じないため、弾性部材の耐久性の低下を防止できると共に、設計値通りの弾性部材の付勢力が長期に亘って安定してウオームに作用するため、設計値通りのウオームの移動量でウオームホイールの高負荷状態を安定して検知でき、装置の耐久性・信頼性の低下を防止できる。
また、本例の減速機構付きモータも、従来例のようなスラストベアリングを使うことなくウオームが回転軸方向に付勢されるため、低コスト化が実現できる。
また、検知手段に非接触式のセンサーが使われていると共に、モータにはブラシレスモータが使われているため、耐久性・信頼性の高い減速機構付きモータが実現できる。
なお、以上説明した本発明の3つの実施形態例では、いずれもウオームに噛合するウオームホイールが出力ギアとなっているが、ウオームとウオームホイールの間には、減速ギヤが1つあるいは複数配置されてもよい。
【0045】
次に、本発明の減速機構付きモータの使用例として、本発明の第1実施形態例の減速機構付きモータを、自動車用パワーウインドウ装置に用いた場合を説明する。一般的な自動車用パワーウインドウ装置は、減速機構付きモータの出力軸(図1の例ではウオームホイール27の軸)の両方向(図1中の矢印S方向と矢印R方向)の回転力を利用することにより、窓ガラスを上下方向に移動させるものである。
ウオームホイールの負荷状態が、窓ガラスが円滑に移動する通常負荷状態では、ウオームは、ウオームホイールからの反力を受けて弾性部材を僅かに圧縮させて回転軸方向に移動しながら回転する。そして、ウオームホイールの負荷状態が、通常負荷状態から例えば窓ガラスに人や物が挟まれた負荷の高い高負荷状態に変化すると、ウオームは、ウオームホイールからの反力を受けて弾性部材を大きく圧縮させて回転軸方向に移動し、検知手段が、所定距離移動したウオームを検知することにより、ウオームホイールの高負荷状態を検知する。そして、検知手段に接続された不図示の制御回路によりモータが停止され、あるいは、逆回転されることにより、モータに過電流が流れるのを未然に防止できると共に、ウオームとウオームホイールとの噛合部の損傷を防止できる。
【0046】
また、本発明の第2実施形態例あるいは第3実施形態例の減速機構付きモータを、自動車用のワイパー駆動装置に用いた場合を説明する。一般的な自動車用のワイパー駆動装置は、減速機構付きモータに、モータの一方向の回転運動を揺動往復運動に変換する機構を組み合わせて使い、減速機構付きモータの出力軸(図3および図4の例ではウオームホイール27の軸)の一方向(図3、図4中の矢印R方向)の回転力を利用することにより、フロントガラスやリアガラスに取り付けられたワイパーを揺動させるものである。
ウオームホイールの負荷状態が、ワイパーが円滑に揺動する通常負荷状態では、ウオームは、ウオームホイールからの反力を受けて弾性部材を僅かに圧縮させて回転軸方向に移動しながら回転する。そして、ウオームホイールの負荷状態が、通常負荷状態から例えばガラスに雪や泥等が溜まった負荷の高い高負荷状態に変化すると、ウオームは、ウオームホイールからの反力を受けて弾性部材を大きく圧縮させて回転軸方向に移動し、検知手段が、所定距離移動したウオームを検知することにより、ウオームホイールの高負荷状態を検知する。そして、検知手段に接続された不図示の制御回路によりモータが停止されることにより、モータに過電流が流れるのを未然に防止できると共に、ウオームとウオームホイールとの噛合部の損傷を防止できる。
【符号の説明】
【0047】
1 減速機構付きモータ
10 ハウジング
11 下ケース
11A モータ支持部
11B 下ケースの左側内壁部(モータ支持部)
20 モータ
20A モータケース
21 回転軸
22A ウオーム
22A1 貫通孔
22B ウオーム
22B1 突起部
22B2 挿通孔
22C ウオーム
24A 左側空洞部
24B 右側空洞部
26A 左端部
26B 右端部
27 ウオームホイール
28 ブラシレスモータ
28A ステータベース
28B ロータ
28B1 ロータケース
29 回転軸
31A 左側ストッパ
31B 右側ストッパ
40A 弾性部材(圧縮コイルばね)
40B 弾性部材(圧縮コイルばね)
40C 弾性部材(圧縮コイルばね)
50A 検知手段(透過型フォトインタラプタ)
50A1 発光素子
50A2 受光素子
50B 検知手段(透過型フォトインタラプタ)
50B1 発光素子
50B2 受光素子





【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの一方に突出されている回転軸と、
前記回転軸に装着され、前記回転軸と一体に回転できると共に前記回転軸方向に移動できるウオームと、
前記ウオームと噛合されるウオームホイールと、
前記回転軸に固定されたストッパと、
一端が前記ストッパに当接し他端が前記ウオームに当接して、前記ウオームを前記回転軸方向に付勢させる弾性部材と、
前記ウオームの前記回転軸方向の移動を検知する検知手段を備えていることを特徴とする減速機構付きモータ。
【請求項2】
ステータの外周にロータを有するブラシレスモータと、
前記ロータのロータケースに固定され、前記ロータケースから突出されている回転軸と、
前記回転軸に装着され、前記回転軸と一体に回転できると共に前記回転軸方向に移動できるウオームと、
前記ウオームと噛合されるウオームホイールと、
一端が前記ロータケースに当接し他端が前記ウオームに当接して、前記ウオームを前記回転軸方向に付勢させる弾性部材と、
前記ウオームの前記回転軸方向の移動を検知する検知手段を備えていることを特徴とする減速機構付きモータ。
【請求項3】
前記ウオームは、径方向内側に空洞部を有し、
前記弾性部材は、少なくとも軸方向の一部が、前記空洞部に挿入されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の減速機構付きモータ。
【請求項4】
前記検知手段は、前記ウオームの移動によって操作されるスイッチであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の減速機構付きモータ。
【請求項5】
前記検知手段は、非接触式のセンサーであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の減速機構付きモータ。












【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−253946(P2012−253946A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125586(P2011−125586)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000220125)東京パーツ工業株式会社 (122)
【Fターム(参考)】