説明

渦流れ形ポンプ装置

【課題】ポンプ効率が良く、安価で耐食性に優れ長寿命でかつ、部品互換性を有したケーシングを用いた渦流れ形ポンプ装置を得る。
【解決手段】耐食性を有するインナーリング50を合成樹脂製ケーシング70に固着した構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポンプ装置に係り、特に渦流れ形ポンプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4に従来のポンプ装置を示す。渦流れ形ポンプ装置は、電動機1の回転軸2がケーシング71を貫通し、軸封装置4を介して、羽根車5が固着され、羽根車5を覆うようにケーシングカバー3が、Oリング7を介して水密にボルト31によって固着されて、回転軸2の回転によって渦流れ形のポンプ作用を行うもので、羽根車5の上流側には、逆流を防止する逆止弁9,羽根車5の下流側には、自給作用を促進するための、分離室10がパッキング11を介して水密にボルト30で固着されている。また、前記ケーシング71には、電動機1のエンブラ40にはめ合い公差で嵌合して、回転軸2の触れを最小限におさえて、羽根車5とケーシング71,ケーシングカバー3との干渉を無くすると同時に吸い込み側と吐き出し側がルーズにならないようにライナー面51を設けて摩擦力を得て、ポンプ効率の向上を図っている。さらには、ケーシング71の入り口側は、吸い上げ高さや、揚水量に応じてキャビテーションが発生するため、耐食性を有する材料とせざるを得ない。
【0003】
特許文献1には、ケーシング内に設けた羽根車を電動機により回転させてポンプ作用を行うポンプ部と、このポンプ部で加圧した水を蓄水する圧力タンクと、電動機の運転を制御する制御装置と、ポンプカバーを備え、ポンプ部と制御装置を圧力タンクの上側に位置させて設置し、これらをポンプカバーで覆うように該ポンプカバーを圧力タンクの上部に設置し、そして、圧力タンクをステンレス鋼板で構成し、ポンプ部や制御装置を取り付ける平坦部とポンプカバー受け部を形成した固定基板を圧力タンクの上面を覆うように該圧力タンクに被せて設置し、この固定基板のポンプカバー受け部にポンプカバーを搭載し、固定基板に、平坦部として、制御装置で発生した高調波の放出を抑制する高調波抑制リアクトルの取付座を設けたポンプ装置が記載されている。
【0004】
特許文献2には、モータを備え、該モータの回転軸に装着された羽根車を配したポンプ室を有する合成樹脂製の本体側ケーシングと、タンク室と該タンク室に続く吐出通路とを形成し、吸水口と吐出通路から続く第1吐出口と第2吐出口とを有す合成樹脂製の吸込側ケーシングと、本体側ケーシングと吸込側ケーシングとを仕切り、ポンプ室と吸水口及びタンク室とを流通させる開口部を設けた仕切板とからなり、モータにより羽根車を回転させて吸水口から水を吸い込み、第1吐出口及び第2吐出口から水を排出し、そして、圧力調整弁が吸込側ケーシングの上部であって吐出通路の上流側に脱着自在に配され、かつ、吸水口と第2吐出口との開口部が並列し吸込側ケーシングの下部に、該第2吐出口の開口部が開閉自在に設けられているポンプが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−084508号公報
【特許文献2】特開2007−138748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2では、タービン式ポンプであり、羽根車中心から水を吸い上げ外周へと吐出するため、羽根車,ケーシング等の相関寸法はルーズである。これに対し、本発明が対象とする渦流れ形ポンプは、羽根車,ケーシング,ケーシングカバーの3点で渦を発生させてポンプ作用を行うもので羽根車円周方向から吸い上げ、円周方向へ吐出するもので、相関寸法は非常に精密ものとする必要がある。
【0007】
上述のごとく、ケーシング71は、電動機1のエンブラ40との嵌合、各部品と水密にボルト類30,31で固着されることや、キャビテーションによる腐食を考慮して、青銅鋳物を機械加工して精密に作られているのが一般的である。特に、加工においては全面加工となるうえに、ボルトを受け入れるねじ加工も多く、複雑な加工を余儀なくされている。しかしながら、近年は材料費や加工費が上昇し、製品供給が困難な状況にある。
【0008】
そこで、本発明は、ポンプ効率が良く安価で耐食性に優れ長寿命でかつ、部品互換性を保持した、渦流れ形ポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、羽根車を覆うケーシングを合成樹脂製としたことを特徴とする。好ましくは、吸い込み側と吐き出し側を分離する隔壁部とライナー面の少なくとも1つを有する耐食材料から成るインナーリングを、ケーシングに固着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、ケーシングを合成樹脂化したことにより、キャビテーションが発生しても、侵食を抑制できる。
【0011】
本発明によると、合成樹脂製ケーシングにインナーリングを固着することにより、ポンプ効率が良く安価で耐食性に優れ長寿命でかつ、部品互換性を保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のポンプ装置の縦断面図である。
【図2】本発明のポンプヘッド部の斜視図である。
【図3】本発明の合成樹脂製ケーシングにインナーリングを固着した図である。
【図4】従来例のポンプ装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施例は、ケーシングを合成樹脂で構成し、インナーリングを耐食性を有する金属で構成し、羽根車とは別にケーシングにインナーリングを固着(固定)したことを特徴とする。
【0014】
以下、本発明の実施例を図面に沿って説明する。
【0015】
図1に本発明のポンプ装置の縦断面図を示し、図2本発明のポンプヘッド部の斜視図を示す。
【0016】
本発明の渦流れ形ポンプ装置は、電動機1の回転軸2が、合成樹脂製ケーシング70を貫通し軸封装置4を介して、周辺に多数の溝12(羽根)を持つ円板状の羽根車5が固着される。軸封装置4は円筒形状を有し、回転軸2の外周と合成樹脂製ケーシング70の貫通孔の間に挿入され、軸封装置4は回転軸2に対しても合成樹脂製ケーシング70の貫通孔に対しても相対的に摺動可能である。前記多数の溝12と同心円になるように合成樹脂製ケーシング70の内側には円環状の水通路13が形成される。水通路13の一部を吸い込み側14と吐き出し側15に分ける隔壁部52と、水通路13より小径のライナー面51とを有する、耐食性材料である青銅製のインナーリング50が複数個のタッピングねじ16で合成樹脂製ケーシング70に固着されている。ライナー面51は必須の構成ではない。図3に、本発明の合成樹脂製ケーシングにインナーリングを固着した図を示す。
【0017】
前記羽根車5を覆い、羽根車5に対しほぼ対称となるように水通路,隔壁部,ライナー面を有したケーシングカバー3にOリング7を付けてタッピングねじ17にて、合成樹脂製ケーシング70に固着される。これによって、ポンプヘッド部が構成されている。Oリング7は、合成樹脂製ケーシング70の水通路13の外周とケーシングカバー3の水通路の外周との間に挿入される。好ましくは、ケーシングカバー3も、合成樹脂製ケーシング70を構成する合成樹脂と同一の合成樹脂により構成する。
【0018】
隔壁部52で分けられた吸い込み側14つまり、羽根車5の上流側には逆流を防止する逆止弁9が設けられ、隔壁部52で分けられた吐き出し側15つまり、羽根車5の下流側には、自給作用を促進する分離室10を兼ねた水通路が構成されて、パッキング11を介して合成樹脂製ケーシング70にタッピングねじ18で固着され、しいては、蛇口等へとつながるものである。
【0019】
揚水される水は、電動機1の回転軸2の回転により、羽根車5が回転すると、羽根車5の溝12と合成樹脂製ケーシング70の水通路13で渦が発生し、運動量を増しながら、ほぼ一回転して高圧となり、前記隔壁部52にて切り分けられて、分離室10へと誘導されていくものである。隔壁部52の両側では大きな圧力差が生じるため、ライナー面51を設けて摩擦力を得て損失を防いでいる。つまり、羽根車5とライナー面51の隙間が大きければ効率が大幅に落ちることになるし、摩擦力を得るためにそれなりの面積も必要となることから、樹脂面そのままでは、樹脂特有のひけ等によって、効率が大幅に落ちるからである。本発明の実施例では、固定物である合成樹脂製ケーシング70と回転物である羽根車5との間に、青銅製のインナーリング50を設けることによって、これらを防止している。
【0020】
また、揚水量が増えてくると流速が速くなり、隔壁部52の吸い込み側水通路14近傍でキャビテーションが発生してポンプ作用ができなくなる。その際にもケーシングが合成樹脂製であるため浸食されることなく、長寿命のポンプとなる。合成樹脂としては、例えば、ポリエチレンオキサイド(PEO)を用いる。
【0021】
さらに、強度を確保し、耐熱性を有し、合成樹脂特有のひけが比較的少なくてすむように、ケーシングの合成樹脂化においては、10〜30%のガラス含有材料を用いると、より機能を確保できる。例えば、10〜30%のガラス繊維を合成樹脂に混ぜた後に、合成樹脂製ケーシング70を成型すればよい。合成樹脂製ケーシング70の成型方法としては、射出成型を用いてもよい。
【0022】
なお、前述において、青銅製のインナーリング50を複数個のタッピングねじ16で固着したとあるが、青銅の代わりに耐食性を有するステンレス材でも、また、タッピングねじ16による固着の代わりに合成樹脂製ケーシング70を成形する際、インサート成形として固着しても同様の効果が得られるのはもちろんである。
【符号の説明】
【0023】
1 電動機
2 回転軸
3 ケーシングカバー
4 軸封装置
5 羽根車
7 Oリング
10 分離室
16,17,18 タッピングねじ
50 インナーリング
51 ライナー面
52 隔壁部
70 合成樹脂製ケーシング
71 ケーシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機の回転軸がケーシングを貫通し、軸封装置,羽根車の順で固着され、羽根車を覆うようにケーシングカバーがOリングを介して水密に固着されて、回転軸の回転により渦流れポンプ作用を行う渦流れ形ポンプ装置において、
前記ケーシングを合成樹脂製としたことを特徴とする渦流れ形ポンプ装置。
【請求項2】
請求項1の渦流れ形ポンプ装置において、
前記ケーシングを、10%〜30%のガラス含有率を有する合成樹脂としたことを特徴とする渦流れ形ポンプ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2の渦流れ形ポンプ装置において、
吸い込み側と吐き出し側を分離する隔壁部とライナー面の少なくとも1つを有する耐食材料から成るインナーリングを、前記ケーシングに固着したことを特徴とする渦流れ形ポンプ装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2の渦流れ形ポンプ装置において、
吸い込み側と吐き出し側を分離する隔壁部とライナー面の少なくとも1つを有する耐食材料から成るインナーリングを、前記ケーシングにインサート成形で構築したことを特徴とする渦流れ形ポンプ装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2の渦流れ形ポンプ装置において、
前記ケーシングに水密に固着される分離室、ケーシングカバーをタッピングねじにて固着したことを特徴とする渦流れ形ポンプ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−87657(P2012−87657A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234117(P2010−234117)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】