説明

渦電流探傷プローブ及びその製造方法

【課題】鋭利な凸凹や、曲率の小さい被検査体面の検査でも、渦電流プローブにスペーサーとして設置する突起物の密着を安定させた渦電流プローブ及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】突起物5の外径が嵌るほどの径をもつ穴7Aを有する基板7と基板3を接着させ、突起物5の被検査体2と反対の面と、基板3が密着し、かつ、基板7の穴7Aで突起物5を嵌め、突起物5の位置を保持する。突起物5の外径より小さく、突起物5凸部先端部の外径より大きい穴10Aを有する基板10と、基板7と基板3の積層基板とを接着させ、基板3と基板7と基板10に作られた空間に突起物5を収納し、基板10の穴10Aで突起物5を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦電流探傷プローブ及びその製造方法に係り、特に、被検査体の表面にプローブを密着させて走査する検査に利用する好適な渦電流探傷プローブ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
渦電流探傷試験は、コイルに交流電流を流し、交流磁場を発生させ、発生させた交流磁場を被検査体に照射し、被検査体表面のき裂や材質(導電率、透磁率)の変化に起因する磁場分布の変化を、別途記録しておいた正常部位との信号の差で評価する非破壊検査方法である。渦電流探傷試験は、非接触で測定できるため、複雑な曲面の検査への応用が可能であるが、コイルと被検査体との距離が変わるとリフトオフノイズと呼ばれるノイズが発生し、検出したい信号、例えばき裂に起因する信号と区別がつきにくくなることがある。そのため、コイルと被検査体の間は密着もしくは一定の距離を保つほうが望ましいものである。
実際の試験では、交流電流を通電する励磁コイルと磁場分布の変化を検出する検出素子をある位置関係で配置し、樹脂の充填などで固定したプローブを被検査体表面に接触させ、さらにプローブを被試験体面に沿って走査することで、検査信号を取得する。このとき、走査の安定性を得ようとする場合、被検査体表面にプローブを押し付けて検査するが、コイルと被検査体の間の距離を一定にするため、コイルと被検査体の間にスペーサーを設けることがある。
【0003】
ここで、被検査体表面へのプローブの押し付けと走査で、プローブの接触面が磨耗する可能性があるため、プローブ面に被検査体の硬度より硬い材料を用いたスペーサーを設置することが知られている。具体的には、柔軟性を有する基板で構成したプローブ面に被検査体の硬度より硬い突起物を設置し、基板の磨耗を緩和させるものが知られている(例えば、特許文献1の図2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−300791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のものでは、渦電流探傷プローブでスペーサーとして設置されている突起物は、その突起物を押えるプラスティック板を突起物毎に設置する必要があり、マルチコイル式の渦電流探傷プローブなど多数のコイルを有し、多数のスペーサーを必要とするときには、プローブの製作に多くの設置作業が伴うという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、プローブの製作が容易であり、鋭利な凸凹ある被検査体面や、曲率の小さい被検査体面の検査でも、渦電流プローブにスペーサーとして設置する突起物の密着を安定させた渦電流プローブ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、基板と、該基板に対して固定された複数のコイルと、被検査体側に配置された複数の突起物とを有し、被検査体表面に密着させて走査して試験する渦電流探傷プローブであって、前記基板は、第1の基板と、該第1の基板に接着固定されるとともに、前記複数の突起物の外径よりも大きな内径の複数の穴を備え、前記複数の突起物をそれぞれ収納保持する保持手段となる第2の基板と、該第2の基板に接着固定されるとともに、前記複数の突起物の先端の外径よりも小さな内径の複数の穴を備え、前記複数の突起物をそれぞれ固定する固定手段となる第3の基板とからなるものである。
かかる構成により、プローブの製作が容易であり、鋭利な凸凹ある被検査体面や、曲率の小さい被検査体面の検査でも、渦電流プローブにスペーサーとして設置する突起物の密着を安定させ得るものとなる。
【0008】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記突起物は、被検査体と接触する反対側に軸を有し、前記第1の基板は複数の穴を有するとともに、該穴に前記軸を挿入保持するようにしたものである。
【0009】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記突起物は、被検査体と接触する反対側に軸を有し、前記第1の基板と前記第2の基板の間に挿入固定されるとともに、複数の穴を有する第4の基板を備え、前記第4の基板の穴に前記軸を挿入保持するようにしたものである。
【0010】
(4)上記(2)若しくは(3)において、好ましくは、前記軸は、前記コイルを保持するコイル保持手段である。
【0011】
(5)上記(4)において、好ましくは、前記コイル保持手段は、前記軸の内部に前記コイルを保持し、前記軸により、コイルの周囲に境界壁を設けて、コイルの保護をするコイル保護手段である。
【0012】
(6)上記(1)において、好ましくは、 前記複数の基板は、それぞれ柔軟性を有する可撓性基板からなる。
【0013】
(7)上記(1)において、好ましくは、 前記基板は、前記コイルと結線される電気配線を備えるようにしたものである。
【0014】
(8)また、上記目的を達成するために、本発明は、基板と、該基板に対して固定された複数のコイルと、被検査体側に配置された複数の突起物とを有し、被検査体表面に密着させて走査して試験する渦電流探傷プローブの製造方法であって、第1の基板に、前記複数の突起物の外径よりも大きな内径の複数の穴を備える第2の基板を接着固定し、前記複数の穴に、前記複数の突起物をそれぞれ収納保持し、前記第2の基板に、記複数の突起物の先端の外径よりも小さな内径の複数の穴を備える第3の基板を接着固定して、前記突起物を固定するようにしたものである。
かかる方法により、プローブの製作が容易であり、鋭利な凸凹ある被検査体面や、曲率の小さい被検査体面の検査でも、渦電流プローブにスペーサーとして設置する突起物の密着を安定させ得るものとなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プローブの製作が容易であり、鋭利な凸凹ある被検査体面や、曲率の小さい被検査体面の検査でも、渦電流プローブにスペーサーとして設置する突起物の密着を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態による渦電流探傷プローブの構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による渦電流探傷プローブの構成図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による渦電流探傷プローブに用いる突起物の他の形状と固定手段を示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態による渦電流探傷プローブの構成図である。
【図5】本発明の第2の実施形態による渦電流探傷プローブの構成図である。
【図6】本発明の第2の実施形態による渦電流探傷プローブにおいて、柔軟性基板を用いた場合の使用例を示す正面断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態による渦電流探傷プローブの構成図である。
【図8】本発明の第3の実施形態による渦電流探傷プローブの構成図である。
【図9】本発明の第4の実施形態による渦電流探傷プローブの構成図である。
【図10】本発明の第4の実施形態による渦電流探傷プローブの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1〜図3を用いて、本発明の第1の実施形態による渦電流探傷プローブの構成について説明する。
図1及び図2は、本発明の第1の実施形態による渦電流探傷プローブの構成図である。図1(a)は、本発明の第1の実施形態による渦電流探傷プローブの上面図である。図1(b)は、本発明の第1の実施形態による渦電流探傷プローブの側面断面図である。図1(c)は、本発明の第1の実施形態による渦電流探傷プローブの分解断面図である。図2は、本発明の第1の実施形態による渦電流探傷プローブの分解斜視図である。なお、図1及び図2において、同一符号は、同一部分を示している。
【0018】
図1に示すように、渦電流探傷プローブ1は、被検査体2の表面に面して検査に用いられる。渦電流探傷プローブ1は、プローブ1の基板3に設置されているコイル4に通電される交流電流より、磁場を発生させ、被検査体2に渦電流を誘導することで欠陥の有無や材質などに関する情報を取得する。
【0019】
渦電流探傷プローブ1は、基板3,7,10と、コイル4と、突起物5とから構成されている。凸形状をもつ突起物5は、被検査体2の表面に面している。突起物5は、半球状である。突起物5は、被検査体2の表面に接触して、渦電流探傷プローブ1と被検査体2との距離をなるべく一定に保つようにする。また、突起物5は、プローブ1を被検査体2の表面を走査する際に、渦電流探傷プローブ1の磨耗を緩和する役割を果たす。
【0020】
1枚の基板7には、複数の穴7Aが予め形成されている。穴7Aの直径は、突起物5の外径よりも僅かに大きいものである。また、1枚の基板10には、複数の穴10Aが予め形成されている。穴10Aの直径は、突起物5の先端の直径よりも大きく、かつ、突起物5の最大外径よりも小さくなっている。
【0021】
基板3に基板7を接着固定した時、基板7の穴7Aによって形成される窪みに、複数の突起物5が設置される。このとき、突起物5の被検査体2と反対の面と、基板3が密着し、かつ、基板7の穴7Aで突起物5を嵌め、突起物5の位置を保持する。すなわち、基板7の穴7Aと基板3は、突起物5の「保持手段」として用いられる。
【0022】
保持手段は、突起物5の外径が嵌るほどの径をもつ穴7Aを有する基板7と基板3を接着させ、突起物5の被検査体2と反対の面と、基板3が密着し、かつ、基板7の穴7Aで突起物5を嵌め、突起物5の位置を保持する。換言すれば、基板7の穴7Aで、突起物5のプローブ平面方向に対する位置を保持し、基板3と検査実施時の押圧12の力でプローブ厚み方向に対する位置が保持される。
【0023】
また、基板7の穴7Aに突起物5が保持された状態で、その上から、基板10を接着固定すると、突起物5の先端が基板10の穴10Aから突出した状態で、突起物部5が基板10により固定される。すなわち、基板10とその穴10Aが、突起物5の「固定手段」として用いられる。
【0024】
固定手段は、突起物5の外径より小さく、突起物5凸部先端部の外径より大きい穴10Aを有する基板10と、基板7と基板3の積層基板とを接着させ、基板3と基板7と基板10に作られた空間に突起物5を収納し、基板10の穴10Aで突起物5を固定する。換言すれば、基板10の穴10Aは、被検査体面に直接接触できるだけ突起物5の先端部を渦電流探傷プローブ1の外側へ飛び出させ、かつ、突起物5のプローブ平面方向に対する位置を固定する。基板10と基板7の接着により、基板10と基板3の間に突起物5が挟まれる状態になり、突起物5が固定される。
【0025】
このようにして、複数の突起物5は、複数の穴10Aを有する1枚の基板10によって同時に固定することができるため、プローブの製作が容易となる。
【0026】
基板3,基板7,基板10は、コイル4から発生する磁場分布に影響を与えない(導電性、磁性がない)アクリル樹脂材、ピーク材、ポリカーボネート、高分子ポリエチレン材などのプラスティック材が望ましい。基板3,基板7,基板10は、ゴム、スポンジ、ポリイミドフィルムなどの柔軟性を有する材料を用いれば、複雑形状部や曲面を検査に対して好適なプローブを構成することが可能である。
【0027】
基板3として、ポリイミドフィルム等を用いることで、プリント配線技術でコイル4などとの電気的接続を可能とする。すなわち、基板3の上には、電気配線8A,8Bがプリントされている。配線8Aは、図1(a)に示すように、複数のコイル4の一方の端子に共通に接続され、接地線として用いられる。配線8Bは、複数個のコイル4の数と同数備えられ、複数のコイル4の他方の端子にそれぞれ接続され、信号線として用いられる。
【0028】
コイル4は、プリント配線などにより電気配線8A,8Bを施した基板3に電気的に接続されており、コイル4の電気エネルギーや信号を送受信することができる。
【0029】
突起物5は、固定手段による固定が可能となるような凸形状を有しており、この凸部は、被検査体2の表面側に面している。突起物5は、コイル4から発生する磁場分布に影響を与えない(導電性、磁性がない)ことが好ましく、かつ、検査時の走査などによる渦電流探傷プローブ1の磨耗を緩和させることが好ましい。そのため、突起物5は、ダイアモンド、ダイアモンドライクカーボン、ルビーなどの硬い炭素系材料が望ましい。
【0030】
本実施形態の渦電流探傷プローブを製造する際には、図1及び図2に示すように、基板3と基板7を接着させ、基板3と基板7でくぼみを構成している穴7Aに突起物5を挿入し、基板10を基板7に接着させる。コイル4を基板3に設置し、基板3に施されているプリント配線などの電気配線と結線する。また、基板7、基板10に電気配線を設けることもでき、この際、電気配線を避けて容易に穴を開けることができるので、複数のコイルを有するマルチコイル渦電流探傷プローブや、面積の大きい渦電流探傷プローブを製造する際に、突起物を多数設置する必要がある場合にも、設置する複数の突起物5を一度に固定することができ、製造工程が簡略することができる。
【0031】
次に、図3を用いて、本実施形態による渦電流探傷プローブに用いる突起物の他の形状と固定手段について説明する。
図3は、本発明の第1の実施形態による渦電流探傷プローブに用いる突起物の他の形状と固定手段を示す断面図である。
【0032】
図3(a)は、図1にて説明したものと同じ突起物5および、それを固定する固定手段を示している。突起物5の先端は、丸形あるいは球形を有している。突起物5の丸形あるいは球形の曲面に基板10の穴10Aが嵌っており、固定手段を構成している。丸形あるいは球形を有する突起物5は、被試験体の凸凹を滑らかに吸収した走査で検査することを提供する。
【0033】
図3(b)は、他の第1の例の突起物5aの形状を示している。突起物5aの先端は、三角形あるいは円錐形を有している。突起物5aの三角形あるいは円錐形の面に基板10の穴10Aが嵌っており、固定手段を構成している。三角形あるいは円錐形の突起物5aは、被試験体の細かい表面形状にも追従した走査で検査することを提供する。
【0034】
図3(c)は、他の第2の例の突起物5bの形状を示している。突起物5bの先端は、丸形あるいは球形を有している。突起物5bの丸形あるいは球形の曲面とその反対側の間に段5Cとを有している。突起物5bの外径は基板10の穴10Aが嵌っており、突起物5bの段5Cの部分に基板10の穴が嵌っており固定手段を構成している。この場合、基板7の穴と、突起物5bとの間の隙間を小さくすることができるため、保持手段の機能精度を向上させることができる。丸形あるいは球形を有する突起物5bは、被試験体の凸凹を滑らかに吸収した走査で検査することを提供する。
【0035】
図3(d)は、他の第3の例の突起物5cの形状を示している。突起物5cの先端は、三角形あるいは円錐形を有している。突起物5cの三角形あるいは円錐形の面とその反対側の間に段5Cとを有している。突起物5cの外径は基板10の穴10Aが嵌っており、突起物5cの段5Cの部分に基板10の穴が嵌っており、固定手段を構成している。この場合、基板7の穴と、突起物5cとの間の隙間を小さくすることができるため、保持手段機能精度を向上させることができる。三角形あるいは円錐形の突起物5cは、被試験体の細かい表面形状にも追従した走査で検査することを提供する。
【0036】
以上説明したように,本実施形態によれば、プローブの製作が容易であり、鋭利な凸凹ある被検査体面や、曲率の小さい被検査体面の検査でも、渦電流プローブにスペーサーとして設置する突起物の密着を安定させることができる。
【0037】
次に、図4〜図6を用いて、本発明の第2の実施形態による渦電流探傷プローブの構成について説明する。
図4及び図5は、本発明の第2の実施形態による渦電流探傷プローブの構成図である。図4(a)は、本発明の第2の実施形態による渦電流探傷プローブの上面図である。図4(b)は、本発明の第2の実施形態による渦電流探傷プローブの側面断面図である。図4(c)は、本発明の第2の実施形態による渦電流探傷プローブの分解断面図である。図5は、本発明の第2の実施形態による渦電流探傷プローブの分解斜視図である。なお、図4〜図6において、同一符号は、同一部分を示している。
【0038】
図4に示すように、渦電流探傷プローブ1は、被検査体2の表面に面して検査に用いられる。渦電流探傷プローブ1は、プローブ1の基板3に設置されているコイル4に通電される交流電流より、磁場を発生させ、被検査体2に渦電流を誘導することで欠陥の有無や材質などに関する情報を取得する。
【0039】
渦電流探傷プローブ1は、基板3,7,10と、コイル4と、突起物5とから構成されている。凸形状をもつ突起物5は、被検査体2の表面に面している。突起物5は、半球状の凸部と、その凸部の凸面と反対側に一体的に設けられた軸5Aを備えている。突起物5は、被検査体2の表面に接触して、渦電流探傷プローブ1と被検査体2との距離をなるべく一定に保つようにする。また、突起物5は、プローブ1を被検査体2の表面を走査する際に、渦電流探傷プローブ1の磨耗を緩和する役割を果たす。突起物5の軸5Aは、基板3に設けられた穴3Aに挿入される。
【0040】
1枚の基板7には、複数の穴7Aが予め形成されている。穴7Aの直径は、突起物5の外径よりも僅かに大きいものである。また、1枚の基板10には、複数の穴10Aが予め形成されている。穴10Aの直径は、突起物5の先端の直径よりも大きく、かつ、突起物5の最大外径よりも小さくなっている。
【0041】
基板3に基板7を接着固定した時、基板7の穴7Aによって形成される窪みに、複数の突起物5が設置される。また、そのとき、突起物5の被検査体2と反対の面にある軸5Aは、基板3の穴3Aを貫通して配置される。このとき、突起物5の被検査体2と反対の面と、基板3が密着し、かつ、基板7の穴7Aで突起物5を嵌め、突起物5の位置を保持する。すなわち、基板7の穴7Aと基板3、及び突起物5の軸5Aと基板3の穴3Aは、突起物5の「保持手段」として用いられる。
【0042】
保持手段は、突起物5の外径が嵌るほどの径をもつ穴7Aを有する基板7と突起物5の軸5Aの外径が嵌るほどの径をもつ穴3Aを有する基板3を接着させ、突起物5の被検査体2と反対の面にある軸5Aは、基板3の穴3Aは貫通し、かつ、基板7の穴7Aで突起物5を嵌め、突起物5の位置を保持する。換言すれば、基板7の穴7Aあるいは、基板3の穴3Aで、突起物5のプローブ平面方向に対する位置を保持し、基板3と検査実施時の押圧12の力でプローブ厚み方向に対する位置が保持される。また、保持手段は、コイル4の中心部の空間に、突起物5の軸5Aを挿入しコイル4の位置を保持することによって、設置位置を安定に保持されている。
【0043】
また、基板7の穴7Aに突起物5が保持された状態で、その上から、基板10を接着固定すると、突起物5の先端が基板10の穴10Aから突出した状態で、突起物部5が基板10により固定される。すなわち、基板10とその穴10Aが、突起物5の「固定手段」として用いられる。
【0044】
固定手段は、突起物5の外径より小さく、突起物5凸部先端部の外径より大きい穴10Aを有する基板10と、基板7と基板3の積層基板とを接着させ、基板3と基板7と基板10に作られた空間に突起物5を収納し、基板10の穴10Aで突起物5を固定する。換言すれば、基板10の穴10Aは、被検査体面に直接接触できるだけ突起物5の先端部を渦電流探傷プローブ1の外側へ飛び出させ、かつ、突起物5のプローブ平面方向に対する位置を固定する。基板10と基板7の接着により、基板10と基板3の間に突起物5が挟まれる状態になり、突起物5が固定される。
【0045】
このようにして、複数の突起物5は、複数の穴10Aを有する1枚の基板10によって同時に固定することができるため、プローブの製作が容易となる。
【0046】
基板3,基板7,基板10は、コイル4から発生する磁場分布に影響を与えない(導電性、磁性がない)アクリル樹脂材、ピーク材、ポリカーボネート、高分子ポリエチレン材などのプラスティック材が望ましい。基板3,基板7,基板10は、ゴム、スポンジ、ポリイミドフィルムなどの柔軟性を有する材料を用いれば、複雑形状部や曲面を検査に対して好適なプローブを構成することが可能である。
【0047】
基板3として、ポリイミドフィルム等を用いることで、図1(a)に示したようなプリント配線技術でコイル4などとの電気的接続を可能とする。コイル4は、プリント配線などにより電気配線を施した基板3に電気的に接続されており、コイル4の電気エネルギーや信号を送受信することができる。
【0048】
突起物5は、固定手段による固定が可能となるような凸形状を有しており、この凸部は、被検査体2の表面側に面している。一方、突起物5の、凸形状の反対側の軸5Aは、基板3の穴3Aを通過する。さらに、コイル4の直下に設置する突起物5の軸5Aは、コイル4の中心部にまで挿入することができ、コイル4の位置を保持する保持手段として機能する。軸5Aの長さは、基板3の穴3Aに到達する程度以上でよいが、コイル4の位置を保持する保持手段を備えるために、基板3の穴3Aを貫通し、好ましくは、コイル4の高さまで到達する程度あれば、コイル4の位置保持性能が高くなる。
【0049】
突起物5は、コイル4から発生する磁場分布に影響を与えない(導電性、磁性がない)ことが好ましく、かつ、検査時の走査などによる渦電流探傷プローブ1の磨耗を緩和させることが好ましい。そのため、突起物5は、ダイアモンド、ダイアモンドライクカーボン、ルビーなどの硬い炭素系材料が望ましい。
【0050】
本実施形態の渦電流探傷プローブを製造する際には、図4及び図5に示すように、基板3と基板7を接着させ、基板7の穴7Aと穴7Aと共通軸に設置した基板3の穴3Aに突起物5の軸側5Aを挿入し、基板10を基板7に接着させる。コイル4の中心軸を突起物5の軸5Aに挿入し、なおかつ、基板3に設置し、基板3に施されているプリント配線などの電気配線と結線する。
【0051】
また、基板7、基板10に電気配線を設けることもでき、この際、電気配線を避けて容易に穴を開けることができるので、複数のコイルを有するマルチコイル渦電流探傷プローブや、面積の大きい渦電流探傷プローブを製造する際に、突起物を多数設置する必要がある場合にも、設置する複数の突起物5を一度に固定することができ、製造工程が簡略することができる。
【0052】
次に、図6を用いて、本実施形態による渦電流探傷プローブにおいて、柔軟性基板を用いた場合の使用例について説明する。
図6は、本発明の第2の実施形態による渦電流探傷プローブにおいて、柔軟性基板を用いた場合の使用例を示す正面断面図である。
【0053】
図6(a)は、試験部位が凹形状で、表面に凹凸を有する被試験体表面に対して、柔軟性を有する基板で構成した本実施形態の渦電流探傷プローブ1で検査した様子を図示している。図6(b)は、試験部位が凹形状で、表面に凹凸を有する被試験体表面に対して、柔軟性を有する基板で構成した本実施形態の渦電流探傷プローブ1で検査した様子を図示している。
【0054】
図6(a)示すように、被試験体表面に柔軟性を有する基板で構成した本実施形態の渦電流探傷プローブ1を押し付けて検査する。基板3,7,10としては、例えば、ポリイミドフィルムを用いている。突起物5は、被試験体表面に接触し、渦電流探傷プローブ1の磨耗を緩和し、渦電流探傷プローブ1と被試験体2の表面との距離を一定に保つ役割を果たしている。試験部位が凹形状であり、突起物5の渦電流探傷プローブ1との密着性が低下する傾向にあるが、前述の保持手段と固定手段とによって、密着性が安定している。基板3,7,10の接着面積は、突起物5の面積よりはるかに広く、基板3,7,10の全体が剥がれることを防止し、突起物5を密着性は良好となる。
【0055】
また、図6(b)示すように、被試験体表面に柔軟性を有する基板で構成した本発明の渦電流探傷プローブ1を押し付けて検査する。突起物5は、被試験体表面に接触し、渦電流探傷プローブ1の磨耗を緩和し、渦電流探傷プローブ1と被試験体表面との距離を一定に保つ役割を果たしている。試験部位が凸形状であり、突起物5の渦電流探傷プローブ1との密着性が低下する傾向にあるが、保持手段8と固定手段とによって、密着性が安定している。基板3,7,10の接着面積は、突起物5の面積よりはるかに広く、基板3,7,10の全体が剥がれることを防止し、突起物5を密着性は良好となる。
【0056】
図6に示した使用例は、図1及び図2に示した第1の実施形態に対しても同様に適用でき、また、後述の図7及び図8に示す第3の実施形態や、図9及び図10に示す第4の実施形態に対しても同様に適用できる。
【0057】
なお、突起物5の先端の凸部の形状や、突起物5の固定手段については、図4及び図5に示した半球状以外にも、図3(b)〜図3(d)に示した形状のものも用いることができる。
【0058】
以上説明したように,本実施形態によれば、プローブの製作が容易であり、鋭利な凸凹ある被検査体面や、曲率の小さい被検査体面の検査でも、渦電流プローブにスペーサーとして設置する突起物の密着を安定させることができる。
【0059】
また、コイルの保持も容易となる。
【0060】
次に、図7及び図8を用いて、本発明の第3の実施形態による渦電流探傷プローブの構成について説明する。
図7及び図8は、本発明の第3の実施形態による渦電流探傷プローブの構成図である。図7(a)は、本発明の第3の実施形態による渦電流探傷プローブの上面図である。図7(b)は、本発明の第3の実施形態による渦電流探傷プローブの側面断面図である。図7(c)は、本発明の第3の実施形態による渦電流探傷プローブの分解断面図である。図8は、本発明の第3の実施形態による渦電流探傷プローブの分解斜視図である。なお、図7及び図8において、同一符号は、同一部分を示している。
【0061】
図7に示すように、渦電流探傷プローブ1は、被検査体2の表面に面して検査に用いられる。渦電流探傷プローブ1は、コイル4に通電される交流電流より、磁場を発生させ、被検査体2に渦電流を誘導することで欠陥の有無や材質などに関する情報を取得する。
【0062】
渦電流探傷プローブ1は、基板3,7,10と、コイル4と、突起物5とから構成されている。凸形状をもつ突起物5は、被検査体2の表面に面している。突起物5は、半球状の凸部と、その凸部の凸面と反対側に一体的に設けられた軸5Bを備えている。突起物5は、被検査体2の表面に接触して、渦電流探傷プローブ1と被検査体2との距離をなるべく一定に保つようにする。また、突起物5は、プローブ1を被検査体2の表面を走査する際に、渦電流探傷プローブ1の磨耗を緩和する役割を果たす。突起物5の軸5Bは、基板3に設けられた穴3Aに挿入される。コイル4は、軸5Bの内部に収納、保持されている。
【0063】
1枚の基板7には、複数の穴7Aが予め形成されている。穴7Aの直径は、突起物5の外径よりも僅かに大きいものである。また、1枚の基板10には、複数の穴10Aが予め形成されている。穴10Aの直径は、突起物5の先端の直径よりも大きく、かつ、突起物5の最大外径よりも小さくなっている。
【0064】
基板3に基板7を接着固定した時、基板7の穴7Aによって形成される窪みに、複数の突起物5が設置される。また、そのとき、突起物5の被検査体2と反対の面にある軸5Bは、基板3の穴3Aを貫通して配置される。このとき、突起物5の被検査体2と反対の面と、基板3が密着し、かつ、基板7の穴7Aで突起物5を嵌め、突起物5の位置を保持する。すなわち、基板7の穴7Aと基板3、及び突起物5の軸5Bと基板3の穴3Aは、突起物5の「保持手段」として用いられる。
【0065】
保持手段は、突起物5の外径が嵌るほどの径をもつ穴7Aを有する基板7と突起物5の軸5Bの外径が嵌るほどの径をもつ穴3Aを有する基板3を接着させ、突起物5の被検査体2と反対の面にある軸5Bは、基板3の穴3Aは貫通し、かつ、基板7の穴7Aで突起物5を嵌め、突起物5の位置を保持する。換言すれば、基板7の穴7Aあるいは、基板3の穴3Aで、突起物5のプローブ平面方向に対する位置を保持し、基板3と検査実施時の押圧12の力でプローブ厚み方向に対する位置が保持される。また、保持手段は、コイル4の中心部の空間に、突起物5の軸5Bを挿入しコイル4の位置を保持することによって、設置位置を安定に保持されている。
【0066】
また、基板7の穴7Aに突起物5が保持された状態で、その上から、基板10を接着固定すると、突起物5の先端が基板10の穴10Aから突出した状態で、突起物部5が基板10により固定される。すなわち、基板10とその穴10Aが、突起物5の「固定手段」として用いられる。
【0067】
固定手段は、突起物5の外径より小さく、突起物5凸部先端部の外径より大きい穴10Aを有する基板10と、基板7と基板3の積層基板とを接着させ、基板3と基板7と基板10に作られた空間に突起物5を収納し、基板10の穴10Aで突起物5を固定する。換言すれば、基板10の穴10Aは、被検査体面に直接接触できるだけ突起物5の先端部を渦電流探傷プローブ1の外側へ飛び出させ、かつ、突起物5のプローブ平面方向に対する位置を固定する。基板10と基板7の接着により、基板10と基板3の間に突起物5が挟まれる状態になり、突起物5が固定される。
【0068】
このようにして、複数の突起物5は、複数の穴10Aを有する1枚の基板10によって同時に固定することができるため、プローブの製作が容易となる。
【0069】
基板3,基板7,基板10は、コイル4から発生する磁場分布に影響を与えない(導電性、磁性がない)アクリル樹脂材、ピーク材、ポリカーボネート、高分子ポリエチレン材などのプラスティック材が望ましい。基板3,基板7,基板10は、ゴム、スポンジ、ポリイミドフィルムなどの柔軟性を有する材料を用いれば、複雑形状部や曲面を検査に対して好適なプローブを構成することが可能である。
【0070】
基板3として、ポリイミドフィルム等を用いることで、図1(a)に示したようなプリント配線技術でコイル4などとの電気的接続を可能とする。コイル4は、プリント配線などにより電気配線を施した基板3に電気的に接続されており、コイル4の電気エネルギーや信号を送受信することができる。
【0071】
コイル4は、突起物5の軸5Bに形成された穴の中に挿入され、保持されている。すなわち、軸5Bが、コイル4の位置を保持するコイルの保持手段となる。コイル4の外径は、突起物5の軸5Bの穴に挿入できる程度の大きさである。
【0072】
突起物5は、固定手段による固定が可能となるような凸形状を有しており、この凸部は、被検査体2の表面側に面している。一方、突起物5の、凸形状の反対側の軸5Bは、基板3の穴3Aを通過する。さらに、コイル4の直下に突起物5を設置する場合、突起物5の穴を有する軸5Bの内部にコイル4を挿入することができる。軸5Bの長さは、基板3の穴3Aに到達する程度以上でよいが、コイル4の位置を保持する保持手段としての機能を備えるために、コイル4の高さまで到達する程度となる。
【0073】
突起物5は、コイル4から発生する磁場分布に影響を与えない(導電性、磁性がない)ことが好ましく、かつ、検査時の走査などによる渦電流探傷プローブ1の磨耗を緩和させることが好ましい。そのため、突起物5は、ダイアモンド、ダイアモンドライクカーボン、ルビーなどの硬い炭素系材料が望ましい。
【0074】
本実施形態の渦電流探傷プローブを製造する際には、図7及び図8に示すように、基板3と基板7を接着させ、基板7の穴7Aと穴7Aと共通軸に設置した基板3の穴3Aに突起物5の軸側5Bを挿入し、基板10を基板7に接着させる。突起物5の穴を有する軸5Bに内部にコイル4を挿入し、基板3などに施されているプリント配線などの電気配線とコイル4とを結線する。
【0075】
また、基板7、基板10に電気配線を設けることもでき、この際、電気配線を避けて容易に穴を開けることができるので、複数のコイルを有するマルチコイル渦電流探傷プローブや、面積の大きい渦電流探傷プローブを製造する際に、突起物を多数設置する必要がある場合にも、設置する複数の突起物5を一度に固定することができ、製造工程が簡略することができる。
【0076】
なお、突起物5の先端の凸部の形状や、突起物5の固定手段については、図7及び図8に示した半球状以外にも、図3(b)〜図3(d)に示した形状のものも用いることができる。
【0077】
以上説明したように,本実施形態によれば、プローブの製作が容易であり、鋭利な凸凹ある被検査体面や、曲率の小さい被検査体面の検査でも、渦電流プローブにスペーサーとして設置する突起物の密着を安定させることができる。
【0078】
また、コイルの保持も容易となる。
【0079】
次に、図9及び図10を用いて、本発明の第4の実施形態による渦電流探傷プローブの構成について説明する。
図9及び図10は、本発明の第4の実施形態による渦電流探傷プローブの構成図である。図9(a)は、本発明の第4の実施形態による渦電流探傷プローブの上面図である。図9(b)は、本発明の第4の実施形態による渦電流探傷プローブの側面断面図である。図9(c)は、本発明の第4の実施形態による渦電流探傷プローブの分解断面図である。図10は、本発明の第4の実施形態による渦電流探傷プローブの分解斜視図である。なお、図9及び図10において、同一符号は、同一部分を示している。
【0080】
図9に示すように、渦電流探傷プローブ1は、被検査体2の表面に面して検査に用いられる。渦電流探傷プローブ1は、コイル4に通電される交流電流より、磁場を発生させ、被検査体2に渦電流を誘導することで欠陥の有無や材質などに関する情報を取得する。
【0081】
渦電流探傷プローブ1は、基板3,7,10、17と、コイル4と、突起物5とから構成されている。凸形状をもつ突起物5は、被検査体2の表面に面している。突起物5は、半球状の凸部と、その凸部の凸面と反対側に一体的に設けられた軸5Cを備えている。突起物5は、被検査体2の表面に接触して、渦電流探傷プローブ1と被検査体2との距離をなるべく一定に保つようにする。また、突起物5は、プローブ1を被検査体2の表面を走査する際に、渦電流探傷プローブ1の磨耗を緩和する役割を果たす。突起物5の軸5Cは、基板3に設けられた穴3Aに挿入される。コイル4は、軸5Cの内部に収納、保持されている。
【0082】
1枚の基板7には、複数の穴7Aが予め形成されている。穴7Aの直径は、突起物5の外径よりも僅かに大きいものである。また、1枚の基板10には、複数の穴10Aが予め形成されている。穴10Aの直径は、突起物5の先端の直径よりも大きく、かつ、突起物5の最大外径よりも小さくなっている。
【0083】
基板17に基板3と基板7を接着固定した時、基板7の穴7Aによって形成される窪みに、複数の突起物5が設置される。また、そのとき、突起物5の被検査体2と反対の面にある軸5Cは、基板3の穴3Aと基板17によって形成される窪みに配置される。このとき、突起物5の被検査体2と反対の面と、基板17が密着し、かつ、基板7の穴7Aで突起物5を嵌め、突起物5の位置を保持する。すなわち、基板7の穴7Aと基板3、及び突起物5の軸5Cと基板3の穴3A、さらに、基板17は、突起物5の「保持手段」として用いられる。
【0084】
なお、上記の説明では、穴3Aを有する基板3と基板17とによって、窪みを形成し、その窪みに軸5Cを挿入保持しているが、1枚の基板にその板厚よりも浅い窪みを形成し、その窪みに軸5Cを挿入保持するようにしてもよいものである。または、基板17に窪みを設け、基板3の穴3Aと基板17の窪みにより軸5Cを挿入保持するようにしてもよいものである。
【0085】
保持手段は、突起物5の外径が嵌るほどの径をもつ穴7Aを有する基板7と突起物5の軸5Cの外径が嵌るほどの径をもつ穴3Aを有する基板3を接着させ、突起物5の被検査体2と反対の面にある軸5Cは、基板3の穴3Aは貫通し、かつ、基板7の穴7Aで突起物5を嵌め、突起物5の位置を保持する。換言すれば、基板7の穴7Aあるいは、基板3の穴3Aで、突起物5のプローブ平面方向に対する位置を保持し、基板3と検査実施時の押圧12の力でプローブ厚み方向に対する位置が保持される。また、保持手段は、コイル4の中心部の空間に、突起物5の軸5Cを挿入しコイル4の位置を保持することによって、設置位置を安定に保持されている。
【0086】
また、基板7の穴7Aに突起物5が保持された状態で、その上から、基板10を接着固定すると、突起物5の先端が基板10の穴10Aから突出した状態で、突起物部5が基板10により固定される。すなわち、基板10とその穴10Aが、突起物5の「固定手段」として用いられる。
【0087】
固定手段は、突起物5の外径より小さく、突起物5凸部先端部の外径より大きい穴10Aを有する基板10と、基板7と基板3の積層基板とを接着させ、基板3と基板7と基板10に作られた空間に突起物5を収納し、基板10の穴10Aで突起物5を固定する。換言すれば、基板10の穴10Aは、被検査体面に直接接触できるだけ突起物5の先端部を渦電流探傷プローブ1の外側へ飛び出させ、かつ、突起物5のプローブ平面方向に対する位置を固定する。基板10と基板7の接着により、基板10と基板3の間に突起物5が挟まれる状態になり、突起物5が固定される。
【0088】
このようにして、複数の突起物5は、複数の穴10Aを有する1枚の基板10によって同時に固定することができるため、プローブの製作が容易となる。
【0089】
基板3,基板7,基板10,基板17は、コイル4から発生する磁場分布に影響を与えない(導電性、磁性がない)アクリル樹脂材、ピーク材、ポリカーボネート、高分子ポリエチレン材などのプラスティック材が望ましい。基板3,基板7,基板10,基板17は、ゴム、スポンジ、ポリイミドフィルムなどの柔軟性を有する材料を用いれば、複雑形状部や曲面を検査に対して好適なプローブを構成することが可能である。
【0090】
基板3として、ポリイミドフィルム等を用いることで、図1(a)に示したようなプリント配線技術でコイル4などとの電気的接続を可能とする。コイル4は、プリント配線などにより電気配線を施した基板3に電気的に接続されており、コイル4の電気エネルギーや信号を送受信することができる。
【0091】
コイル4は、突起物5の穴を有する軸5Cに挿入しコイル4の位置を保持するコイルの保持手段によって、設置位置を安定に保持されている。さらに、突起物5の穴を有する軸5Cにおいて、突起物5の軸5C側に基板17が接着されているため、基板17がコイル4に対する境界壁となる。したがって、渦電流探傷プローブ1に対して外部からの応力がかかった場合でも、その応力がコイル4に及ぶことを防止できる保護手段となる。このようにコイル保護手段によってコイル4は、保護されている。コイル4の外径は、突起物5の穴に挿入できる程度の大きさであり、コイル4の高さは、好ましくは、突起物5の穴5Cより低くすることが望ましい。
【0092】
突起物5は、固定手段による固定が可能となるような凸形状を有しており、この凸部は、被検査体2の表面側に面している。一方、突起物5の、凸形状の反対側の軸5Cは、基板3の穴3Aを通過する。さらに、コイル4の直下に突起物5を設置する場合、突起物5の穴を有する軸5Cの内部にコイル4を挿入することができる。軸5Cの長さは、基板3の穴3Aに到達する程度以上でよいが、コイル4の位置を保持する保持手段としての機能と、渦電流探傷プローブ1に対して外部からの応力から保護されるコイル保護手段としての機能を備えるために、基板17に到達するまでとなる。
【0093】
突起物5は、コイル4から発生する磁場分布に影響を与えない(導電性、磁性がない)ことが好ましく、かつ、検査時の走査などによる渦電流探傷プローブ1の磨耗を緩和させることが好ましい。そのため、突起物5は、ダイアモンド、ダイアモンドライクカーボン、ルビーなどの硬い炭素系材料が望ましい。
【0094】
本実施形態の渦電流探傷プローブを製造する際には、図9及び図10に示すように、基板3と基板7を接着させ、基板7の穴7Aと穴7Aと共通軸に設置した基板3の穴3Aに突起物5の軸側5Cを挿入し、基板10を基板7に接着させる。突起物5の穴を有する軸5Cに内部にコイル4を挿入し、基板3、基板7、基板10、基板17に施されているプリント配線などの電気配線とコイル4とを結線する。さらに、基板3における被検査体側と反対側と基板17を接着する。基板3、基板7、基板10、基板17は、施されている電気配線を避けて容易に穴を開けることができるので、複数のコイルを有するマルチコイル渦電流探傷プローブや、面積の大きい渦電流探傷プローブを製造する際に、突起物を多数設置する必要がある場合にも、設置する数の突起物5を一度に固定することができ、製造工程が簡略することができる。
【0095】
なお、突起物5の先端の凸部の形状や、突起物5の固定手段については、図9及び図10に示した半球状以外にも、図3(b)〜図3(d)に示した形状のものも用いることができる。
【0096】
以上説明したように,本実施形態によれば、プローブの製作が容易であり、鋭利な凸凹ある被検査体面や、曲率の小さい被検査体面の検査でも、渦電流プローブにスペーサーとして設置する突起物の密着を安定させることができる。
【0097】
また、コイルの保持も容易となり、コイルを外部応力に対して保護することができる。
【符号の説明】
【0098】
1…渦電流探傷プローブ
2…被検査体
3、7,10,17…基板
3A,7A,10A…穴
4…コイル
5…突起物
5A,5B,5C…軸
5c…段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板に対して固定された複数のコイルと、被検査体側に配置された複数の突起物とを有し、被検査体表面に密着させて走査して試験する渦電流探傷プローブであって、
前記基板は、
第1の基板と、
該第1の基板に接着固定されるとともに、前記複数の突起物の外径よりも大きな内径の複数の穴を備え、前記複数の突起物をそれぞれ収納保持する保持手段となる第2の基板と、
該第2の基板に接着固定されるとともに、前記複数の突起物の先端の外径よりも小さな内径の複数の穴を備え、前記複数の突起物をそれぞれ固定する固定手段となる第3の基板とからなることを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項2】
請求項1記載の渦電流探傷プローブにおいて、
前記突起物は、被検査体と接触する反対側に軸を有し、
前記第1の基板は複数の穴を有するとともに、該穴に前記軸を挿入保持することを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項3】
請求項1記載の渦電流探傷プローブにおいて、
前記突起物は、被検査体と接触する反対側に軸を有し、
前記第1の基板と前記第2の基板の間に挿入固定されるとともに、複数の穴を有する第4の基板を備え、
前記第4の基板の穴に前記軸を挿入保持することを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項4】
請求項2若しくは請求項3のいずれかに記載の渦電流探傷プローブにおいて、
前記軸は、前記コイルを保持するコイル保持手段であることを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項5】
請求項4記載の渦電流探傷プローブにおいて、
前記コイル保持手段は、前記軸の内部に前記コイルを保持し、前記軸により、コイルの周囲に境界壁を設けて、コイルの保護をするコイル保護手段であることを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項6】
請求項1記載の渦電流探傷プローブにおいて、
前記複数の基板は、それぞれ柔軟性を有する可撓性基板からなることを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項7】
請求項1記載の渦電流探傷プローブにおいて、
前記基板は、前記コイルと結線される電気配線を備えることを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項8】
基板と、該基板に対して固定された複数のコイルと、被検査体側に配置された複数の突起物とを有し、被検査体表面に密着させて走査して試験する渦電流探傷プローブの製造方法であって、
第1の基板に、前記複数の突起物の外径よりも大きな内径の複数の穴を備える第2の基板を接着固定し、
前記複数の穴に、前記複数の突起物をそれぞれ収納保持し、
前記第2の基板に、記複数の突起物の先端の外径よりも小さな内径の複数の穴を備える第3の基板を接着固定して、前記突起物を固定することを特徴とする渦電流探傷プローブの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−230357(P2010−230357A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75817(P2009−75817)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】