渦電流探傷プローブ
【課題】炭素鋼等の磁性材に対する検査を行うパルス渦電流探傷装置の渦電流探傷プルーブにおいて、被検査体に内在する欠陥を、欠陥検出感度を維持しつつ高分解能で検出する。
【解決手段】励磁コイルの周りに発生磁場の拡散を防止する磁性材を配置して渦電流の発生範囲を小さくし、さらに磁性材の外周かつ被検査体近傍に導電性非磁性材を設けることにより、被検査体に発生する渦電流の範囲を抑制し、発生磁場を維持し、渦電流の発生範囲を小さくして、パルス渦電流探傷の高分解能化を可能とする。
【解決手段】励磁コイルの周りに発生磁場の拡散を防止する磁性材を配置して渦電流の発生範囲を小さくし、さらに磁性材の外周かつ被検査体近傍に導電性非磁性材を設けることにより、被検査体に発生する渦電流の範囲を抑制し、発生磁場を維持し、渦電流の発生範囲を小さくして、パルス渦電流探傷の高分解能化を可能とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非破壊検査技術における渦電流探傷プローブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
渦電流探傷装置は正弦波電圧でコイルを励磁することによる発生磁場を利用して、被検査体の欠陥や減肉を検査する電磁非破壊検査技術の一つであり、主に表面検査として利用されている。被検査体の内部に存在する欠陥等に対しては検出感度が低下し、特に炭素鋼等の磁場が浸透しやすい磁性材の場合、内在する欠陥や減肉の検出は非常に困難となる。
【0003】
これに対して、パルス波励磁による渦電流探傷装置(以下、パルス渦電流探傷装置と記す)は、非特許文献1に示すように、正弦波電圧によりコイルを励磁する場合と異なり、瞬間的に大電流をコイルに通電することでき、従来から炭素鋼配管検査等への適用例がある。
【0004】
パルス渦電流探傷装置において、励磁コイルにより発生する磁場を適切に制御して検査精度を向上することが求められる。特許文献1には、励磁コイルを導電体又は磁性材で電磁シールドして励磁コイルと検出コイルによる誘起電圧ノイズを抑制する方法が開示されている。また、特許文献2には、被検査体を貫通させる貫通型コイルを持つ渦電流探傷装置において、励磁コイルと検出コイルを有する探傷コイル全体を鉄材等の磁性材ケースまたはリングで覆い、励磁コイル幅を狭くして漏洩磁束を少なくし検出力を高める構成が開示されている。さらに、特許文献3には、上置き型渦電流探傷プローブにおいて、探傷コイル外周に透磁性材料または導電性材料のシールド体を設け、渦電流のシールド体外への漏洩を抑制し、特にシールド体から移動方向前方への磁束を遮蔽して被検査体端部の不感帯を低減する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−70753号公報
【特許文献2】特開平7−311180号公報
【特許文献3】特開2009−92388号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】非破壊検査協会 平成15春季大会講演概要集、p53−54
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来のパルス渦電流探傷装置は、炭素鋼等の磁性材に対する検査を可能とするが、何れも分解能の点について十分に考慮されていない。パルス渦電流探傷装置は主として大口径配管の減肉検査に利用されることが多く、被検査体に内在する欠陥を高精度に検出するためには励磁コイルおよび検出コイルを有する探傷コイルの分解能を向上させる必要がある。分解能の向上は、励磁コイルおよび検出コイルを小径コイルで形成して渦電流の発生範囲を小さくすることにより可能であるが、一方で発生磁場が減少し欠陥検出感度が低くなるといった相反する特徴を有する。そこで、本発明は発生磁場を維持しつつ渦電流の発生範囲を抑制して分解能を向上し、検出精度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、パルス波で励磁される励磁コイルと磁場検出素子を同軸上に配置し、前記励磁コイルの軸方向が被検査体の表面と直交するパルス渦電流探傷装置に用いる上置型の渦電流探傷プローブにおいて、前記励磁コイルの外周に励磁コイル高さより高い磁性材を前記励磁コイル軸と平行方向に配置したことを特徴とする。
【0009】
また、磁場検出素子として、検出コイル、ホール素子、磁気抵抗素子、巨大磁気抵抗素子、フラックスゲート素子のうち一つを用いたことを特徴とする。
【0010】
また、リング状の導電性非磁性材を前記励磁コイル外周において、前記被検査体に近接して配置したことを特徴とする。
【0011】
また、磁性材として、フェライトコア、電磁鋼板又はパーマロイ箔のうち一つを用いたことを特徴とする。
【0012】
また、磁性材としてフェライトコア、電磁鋼板又はパーマロイ箔のうち一つを用い、前記導電性非磁性材として、銅又はアルミを用いたことを特徴とする。
【0013】
また、上記渦電流探傷プローブを用いたパルス渦電流探傷装置を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、パルス波で励磁される励磁コイルと磁場検出素子を同軸上に配置し、前記励磁コイルの軸方向が被検査体の表面と直交するパルス渦電流探傷装置に用いる上置型の渦電流探傷プローブにおいて、前記励磁コイルの外周に励磁コイル高さより高い磁性材を前記励磁コイル軸と平行方向に配置したことにより発生磁場を維持しつつ、渦電流の発生範囲を小さく出来るので、パルス渦電流探傷装置における高分解能化により検出精度を向上することが可能となる。
【0015】
また、リング状の導電性非磁性材を前記励磁コイル外周において、前記被検査体に近接して配置したことにより、探傷プローブ外側へ拡散する被検査体の渦電流を抑制し高分解能化により検出精度を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】パルス渦電流探傷装置の説明図
【図2A】パルス渦電流探傷方法の説明図
【図2B】パルス渦電流探傷方法の説明図
【図3】本発明の実施例1の探傷プローブ構造の模式図
【図4】本発明の実施例2の探傷プローブ構造の模式図
【図5】従来のパルス渦電流探傷装置の磁場分布図
【図6】本発明のパルス渦電流探傷装置の磁場分布図
【図7】数値計算による従来装置と本発明の磁束密度のグラフ
【図8】数値計算による従来装置と本発明の渦電流のグラフ
【図9】本発明の実施例3の探傷プローブ構造の模式図
【図10】本発明の実施例4の探傷プローブ構造の模式図
【図11】数値計算による従来装置と本発明の渦電流のグラフ
【図12】本発明を適用した渦電流探傷装置の説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
パルス渦電流探傷方法は、従来の正弦波励磁による渦電流探傷方法と異なるものである。そこで、最初にパルス渦電流探傷方法に関して図1、図2A、図2Bにより説明する。パルス渦電流探傷装置は、被検査体1に存在する欠陥や減肉を検出するために用いられる。図1において被検査体1は減肉部2を有している。探傷プローブ36は磁場を発生させる励磁コイル3と渦電流を測定する検出素子4から構成される。励磁コイル3は駆動信号6を発生する励磁装置5に接続されている。検出素子4は検出信号を測定する測定回路7に接続されている。
【0018】
図2A、図2Bに評価原理を示す。図2Aにおいてパルス渦電流探傷装置は励磁コイル3をパルス波8で励磁する。パルス波8が発生している時間は励磁コイル3から磁場が発生する。パルス波8が時間50で電圧を遮断すると発生磁場が急激に減少し、この減少を妨げるように電磁誘導の法則に従い、被検査体1に渦電流が発生する。発生した渦電流はジュール熱損としてエネルギーが消費され減衰する。
【0019】
図2Bはホール素子のような磁場を検出する検出素子4の信号電圧を示したものである。破線は励磁電圧波形を示す。検出素子4は、励磁電圧8が印加されている間に発生する磁場、および時間50以降の電圧遮断後は渦電流の発生にともない生じた磁場を測定する。渦電流は被検査体の板厚が薄いほど速く減衰する特徴を持つことから、減肉の有無は同図の曲線9、10のような信号電圧の減衰特性の変化を分析することで評価する。分解能向上を図るための本発明の実施の形態を以下に示す。
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態を、図3を用いて説明する。本発明の探傷プローブは被検査体1の上部に設けた上置型渦電流探傷プローブからなる。励磁コイル12の外周に磁場の拡散を抑制するために磁性材13を配置し、励磁コイル12と同軸上に検出コイル15を配置したものである。検出コイル15は励磁コイル12の被検査体側に配置してもよい。
【0020】
ここで、励磁コイル12、磁性材13、検出コイル15を中空円筒状に形成し、全て同軸上に配置することによって、被検査体1表面の移動方向に対しもっともコンパクトな断面積を有する探傷プローブを構成する事が出来る。
〔第2の実施形態〕
また、図4に示すように励磁コイル12の被検査体側に、検出コイルの代わりに磁場検出素子51を利用してもよい。磁場検出素子としては、ホール素子、磁気抵抗素子、巨大磁気抵抗素子、フラックスゲート素子を利用することができる。
【0021】
図5は従来の渦電流探傷探傷プローブが作る磁場の模式図である。検出コイルは省略してある。励磁コイル12に励磁信号電圧が印加されると励磁コイル12を貫通するように磁場が発生する。パルス渦電流探傷装置は、発生した磁場を瞬時に遮断した際、電磁誘導の法則に従い磁場の変化を妨げるように発生する渦電流を検出する。励磁コイル12が発生する磁場は空間に拡散するように分布するため、渦電流も励磁コイル12より大きな領域に発生する。そこで、本発明は励磁コイル12から拡散し広く分布する磁場を励磁コイル12の外周に配置した磁性材によりコイル近傍に集束させるようにしたものである。図6はこの作用を示す模式図である。励磁コイル12から発生する磁場は磁性材13を通ることでコイル近傍に集束する。効果的に磁場を集束させるため磁性材の高さをコイルの軸方向高さより高くする。
【0022】
図7は磁場の集束効果の数値計算結果を示すグラフである。励磁コイル12の寸法は、内径5mm、外径10mm、高さ20mmである。励磁コイルの外周に内径11mm、外径13mm、高さ25mmの磁性材を配置している。磁性材はフェライトコアを用いた。評価は、励磁コイル12にパルス波電圧を印加して、被検査体1表面の発生磁場を評価した。
【0023】
グラフ横軸は励磁コイル中心を0mmとした半径方向位置、縦軸は磁束密度(大きさ)の最大値で規格化した値を示す。曲線16は励磁コイルのみの特性、曲線17はコイルとフェライトコアで構成した探傷プローブの特性を示す。これより、磁性材13にフェライトコアを用いると、磁場がコイル中心側に集束することが分かる。
【0024】
図8はパルス波を切断直後の被検査体に発生する渦電流の大きさに関する計算結果を示すグラフである。励磁コイル、磁性材の寸法は図7と同様である。結果の横軸は励磁コイル中心を0mmとした半径方向位置、縦軸は渦電流密度(大きさ)の最大値で規格化した値を示す。曲線18はコイルのみの特性、曲線19はコイルとフェライトコアで構成した探傷プローブの特性を示す。これより、磁性材13にフェライトコアを用いると、渦電流がコイル中心側に集束することが分かる。
【0025】
以上により、本発明の探傷プローブ構造では磁束が励磁コイル近傍へ集束するため、渦電流を励磁コイル近傍に集束させることが出来る。これにより、パルス渦電流探傷装置における探傷プローブの分解能向上が図れる。
〔第3の実施形態〕
本発明の第3の実施形態を図9を用いて説明する。本実施形態の探傷プローブは、励磁コイル21の外周に磁場の拡散を抑制する磁性材23を設け、さらにその外周にリング状の導電性非磁性材24を設け、検出コイル22を励磁コイル12と同軸上に配置したものである。検出コイル22は励磁コイル21の被検査体側に配置してもよい。リング状の材質は、銅、アルミを用いる。
〔第4の実施形態〕
また、図10に示すように励磁コイル21の被検査体側に、検出コイルの代わりに磁場検出素子52を利用してもよい。磁場検出素子としては、ホール素子、磁気抵抗素子、巨大磁気抵抗素子、フラックスゲート素子を利用できる。
【0026】
実施形態3、4において、磁性材23に対向する被検査体1表面には、一定の分布幅をもって渦電流が発生する。この影響により探傷プローブの分解能が十分に向上しない。ここで、リング状の導電性非磁性材24を設けることにより、パルス波遮断後の被検査体11に発生する渦電流を、更に励磁コイル21近傍に集束させる事が出来る。これは、被検査体11に発生する渦電流の一部をリング状の導電性非磁性材24で流すためである。導電性非磁性材24は、励磁コイル21の外周に発生する渦電流に作用するために、磁性材23より大きなリング状とすることが望ましい。但し、被検査体1の渦電流に対応するものであるため、その高さは小さくて良い。
【0027】
図11はパルス波を切断直後の被検査体1に発生する渦電流の大きさに関する計算結果を示すグラフである。励磁コイルは内径5mm、外径10mm、高さ20mmである。励磁コイルの外周に内径11mm、外径13mm、高さ25mmの磁性材を設ける。リング状の導電性非磁性材は内径14mm、外形15mm、高さ2mmである。結果の横軸は励磁コイル中心を0mmとした半径方向位置、縦軸は渦電流密度(大きさ)の最大値で規格化した値を示す。曲線18はコイルのみの特性、曲線60はコイルとフェライトコアで構成した探傷プローブの特性を示す。これより、リング状の導電性非磁性材を利用いた場合に、渦電流がコイル中心側に集束することが分かる。
【0028】
以上述べたように、本発明の探傷プローブ構造により、磁束が励磁コイル近傍へ十分に集束することから、渦電流を励磁コイル近傍に集束させることが出来る。また、被検査体1に発生する渦電流の拡がりを抑制することにより、さらに渦電流探傷装置の分解能向上が図れる。
【0029】
図12は上記した探傷プローブを用いた渦電流探傷装置を示す。渦電流探傷装置はコンピュータ30でメカニズムを駆動し、さらに測定系44を制御する。メカニズムは被検査体32に取付けた軌道33に沿って、モータ34で駆動する走行治具35を有する。走行治具35には本発明の探傷プローブ36を装着している。コンピュータで指定した位置に探傷プローブ36を移動した後、パルス電源40で生成したパルス波を電力増幅器を介して探傷プローブ36の励磁コイルに印加する。探傷プローブ36の磁場検出素子、励磁コイルの検出信号を、プリアンプで増幅しA/Dコンバータでサンプリングする。データはコンピュータのメモリに蓄積、保存する。これを検量線と比較することで減肉や割れを評価する。なお検量線は予め検査部と同様の材質を利用して、模擬欠陥や減肉を付与した対比試験体を利用して作成する。
【符号の説明】
【0030】
8:パルス波
12、21:励磁コイル
13、23:磁性材
15、22:検出コイル
24:導電性非磁性材
36:探傷プローブ
51、52:磁場検出素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、非破壊検査技術における渦電流探傷プローブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
渦電流探傷装置は正弦波電圧でコイルを励磁することによる発生磁場を利用して、被検査体の欠陥や減肉を検査する電磁非破壊検査技術の一つであり、主に表面検査として利用されている。被検査体の内部に存在する欠陥等に対しては検出感度が低下し、特に炭素鋼等の磁場が浸透しやすい磁性材の場合、内在する欠陥や減肉の検出は非常に困難となる。
【0003】
これに対して、パルス波励磁による渦電流探傷装置(以下、パルス渦電流探傷装置と記す)は、非特許文献1に示すように、正弦波電圧によりコイルを励磁する場合と異なり、瞬間的に大電流をコイルに通電することでき、従来から炭素鋼配管検査等への適用例がある。
【0004】
パルス渦電流探傷装置において、励磁コイルにより発生する磁場を適切に制御して検査精度を向上することが求められる。特許文献1には、励磁コイルを導電体又は磁性材で電磁シールドして励磁コイルと検出コイルによる誘起電圧ノイズを抑制する方法が開示されている。また、特許文献2には、被検査体を貫通させる貫通型コイルを持つ渦電流探傷装置において、励磁コイルと検出コイルを有する探傷コイル全体を鉄材等の磁性材ケースまたはリングで覆い、励磁コイル幅を狭くして漏洩磁束を少なくし検出力を高める構成が開示されている。さらに、特許文献3には、上置き型渦電流探傷プローブにおいて、探傷コイル外周に透磁性材料または導電性材料のシールド体を設け、渦電流のシールド体外への漏洩を抑制し、特にシールド体から移動方向前方への磁束を遮蔽して被検査体端部の不感帯を低減する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−70753号公報
【特許文献2】特開平7−311180号公報
【特許文献3】特開2009−92388号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】非破壊検査協会 平成15春季大会講演概要集、p53−54
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来のパルス渦電流探傷装置は、炭素鋼等の磁性材に対する検査を可能とするが、何れも分解能の点について十分に考慮されていない。パルス渦電流探傷装置は主として大口径配管の減肉検査に利用されることが多く、被検査体に内在する欠陥を高精度に検出するためには励磁コイルおよび検出コイルを有する探傷コイルの分解能を向上させる必要がある。分解能の向上は、励磁コイルおよび検出コイルを小径コイルで形成して渦電流の発生範囲を小さくすることにより可能であるが、一方で発生磁場が減少し欠陥検出感度が低くなるといった相反する特徴を有する。そこで、本発明は発生磁場を維持しつつ渦電流の発生範囲を抑制して分解能を向上し、検出精度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、パルス波で励磁される励磁コイルと磁場検出素子を同軸上に配置し、前記励磁コイルの軸方向が被検査体の表面と直交するパルス渦電流探傷装置に用いる上置型の渦電流探傷プローブにおいて、前記励磁コイルの外周に励磁コイル高さより高い磁性材を前記励磁コイル軸と平行方向に配置したことを特徴とする。
【0009】
また、磁場検出素子として、検出コイル、ホール素子、磁気抵抗素子、巨大磁気抵抗素子、フラックスゲート素子のうち一つを用いたことを特徴とする。
【0010】
また、リング状の導電性非磁性材を前記励磁コイル外周において、前記被検査体に近接して配置したことを特徴とする。
【0011】
また、磁性材として、フェライトコア、電磁鋼板又はパーマロイ箔のうち一つを用いたことを特徴とする。
【0012】
また、磁性材としてフェライトコア、電磁鋼板又はパーマロイ箔のうち一つを用い、前記導電性非磁性材として、銅又はアルミを用いたことを特徴とする。
【0013】
また、上記渦電流探傷プローブを用いたパルス渦電流探傷装置を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、パルス波で励磁される励磁コイルと磁場検出素子を同軸上に配置し、前記励磁コイルの軸方向が被検査体の表面と直交するパルス渦電流探傷装置に用いる上置型の渦電流探傷プローブにおいて、前記励磁コイルの外周に励磁コイル高さより高い磁性材を前記励磁コイル軸と平行方向に配置したことにより発生磁場を維持しつつ、渦電流の発生範囲を小さく出来るので、パルス渦電流探傷装置における高分解能化により検出精度を向上することが可能となる。
【0015】
また、リング状の導電性非磁性材を前記励磁コイル外周において、前記被検査体に近接して配置したことにより、探傷プローブ外側へ拡散する被検査体の渦電流を抑制し高分解能化により検出精度を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】パルス渦電流探傷装置の説明図
【図2A】パルス渦電流探傷方法の説明図
【図2B】パルス渦電流探傷方法の説明図
【図3】本発明の実施例1の探傷プローブ構造の模式図
【図4】本発明の実施例2の探傷プローブ構造の模式図
【図5】従来のパルス渦電流探傷装置の磁場分布図
【図6】本発明のパルス渦電流探傷装置の磁場分布図
【図7】数値計算による従来装置と本発明の磁束密度のグラフ
【図8】数値計算による従来装置と本発明の渦電流のグラフ
【図9】本発明の実施例3の探傷プローブ構造の模式図
【図10】本発明の実施例4の探傷プローブ構造の模式図
【図11】数値計算による従来装置と本発明の渦電流のグラフ
【図12】本発明を適用した渦電流探傷装置の説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
パルス渦電流探傷方法は、従来の正弦波励磁による渦電流探傷方法と異なるものである。そこで、最初にパルス渦電流探傷方法に関して図1、図2A、図2Bにより説明する。パルス渦電流探傷装置は、被検査体1に存在する欠陥や減肉を検出するために用いられる。図1において被検査体1は減肉部2を有している。探傷プローブ36は磁場を発生させる励磁コイル3と渦電流を測定する検出素子4から構成される。励磁コイル3は駆動信号6を発生する励磁装置5に接続されている。検出素子4は検出信号を測定する測定回路7に接続されている。
【0018】
図2A、図2Bに評価原理を示す。図2Aにおいてパルス渦電流探傷装置は励磁コイル3をパルス波8で励磁する。パルス波8が発生している時間は励磁コイル3から磁場が発生する。パルス波8が時間50で電圧を遮断すると発生磁場が急激に減少し、この減少を妨げるように電磁誘導の法則に従い、被検査体1に渦電流が発生する。発生した渦電流はジュール熱損としてエネルギーが消費され減衰する。
【0019】
図2Bはホール素子のような磁場を検出する検出素子4の信号電圧を示したものである。破線は励磁電圧波形を示す。検出素子4は、励磁電圧8が印加されている間に発生する磁場、および時間50以降の電圧遮断後は渦電流の発生にともない生じた磁場を測定する。渦電流は被検査体の板厚が薄いほど速く減衰する特徴を持つことから、減肉の有無は同図の曲線9、10のような信号電圧の減衰特性の変化を分析することで評価する。分解能向上を図るための本発明の実施の形態を以下に示す。
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態を、図3を用いて説明する。本発明の探傷プローブは被検査体1の上部に設けた上置型渦電流探傷プローブからなる。励磁コイル12の外周に磁場の拡散を抑制するために磁性材13を配置し、励磁コイル12と同軸上に検出コイル15を配置したものである。検出コイル15は励磁コイル12の被検査体側に配置してもよい。
【0020】
ここで、励磁コイル12、磁性材13、検出コイル15を中空円筒状に形成し、全て同軸上に配置することによって、被検査体1表面の移動方向に対しもっともコンパクトな断面積を有する探傷プローブを構成する事が出来る。
〔第2の実施形態〕
また、図4に示すように励磁コイル12の被検査体側に、検出コイルの代わりに磁場検出素子51を利用してもよい。磁場検出素子としては、ホール素子、磁気抵抗素子、巨大磁気抵抗素子、フラックスゲート素子を利用することができる。
【0021】
図5は従来の渦電流探傷探傷プローブが作る磁場の模式図である。検出コイルは省略してある。励磁コイル12に励磁信号電圧が印加されると励磁コイル12を貫通するように磁場が発生する。パルス渦電流探傷装置は、発生した磁場を瞬時に遮断した際、電磁誘導の法則に従い磁場の変化を妨げるように発生する渦電流を検出する。励磁コイル12が発生する磁場は空間に拡散するように分布するため、渦電流も励磁コイル12より大きな領域に発生する。そこで、本発明は励磁コイル12から拡散し広く分布する磁場を励磁コイル12の外周に配置した磁性材によりコイル近傍に集束させるようにしたものである。図6はこの作用を示す模式図である。励磁コイル12から発生する磁場は磁性材13を通ることでコイル近傍に集束する。効果的に磁場を集束させるため磁性材の高さをコイルの軸方向高さより高くする。
【0022】
図7は磁場の集束効果の数値計算結果を示すグラフである。励磁コイル12の寸法は、内径5mm、外径10mm、高さ20mmである。励磁コイルの外周に内径11mm、外径13mm、高さ25mmの磁性材を配置している。磁性材はフェライトコアを用いた。評価は、励磁コイル12にパルス波電圧を印加して、被検査体1表面の発生磁場を評価した。
【0023】
グラフ横軸は励磁コイル中心を0mmとした半径方向位置、縦軸は磁束密度(大きさ)の最大値で規格化した値を示す。曲線16は励磁コイルのみの特性、曲線17はコイルとフェライトコアで構成した探傷プローブの特性を示す。これより、磁性材13にフェライトコアを用いると、磁場がコイル中心側に集束することが分かる。
【0024】
図8はパルス波を切断直後の被検査体に発生する渦電流の大きさに関する計算結果を示すグラフである。励磁コイル、磁性材の寸法は図7と同様である。結果の横軸は励磁コイル中心を0mmとした半径方向位置、縦軸は渦電流密度(大きさ)の最大値で規格化した値を示す。曲線18はコイルのみの特性、曲線19はコイルとフェライトコアで構成した探傷プローブの特性を示す。これより、磁性材13にフェライトコアを用いると、渦電流がコイル中心側に集束することが分かる。
【0025】
以上により、本発明の探傷プローブ構造では磁束が励磁コイル近傍へ集束するため、渦電流を励磁コイル近傍に集束させることが出来る。これにより、パルス渦電流探傷装置における探傷プローブの分解能向上が図れる。
〔第3の実施形態〕
本発明の第3の実施形態を図9を用いて説明する。本実施形態の探傷プローブは、励磁コイル21の外周に磁場の拡散を抑制する磁性材23を設け、さらにその外周にリング状の導電性非磁性材24を設け、検出コイル22を励磁コイル12と同軸上に配置したものである。検出コイル22は励磁コイル21の被検査体側に配置してもよい。リング状の材質は、銅、アルミを用いる。
〔第4の実施形態〕
また、図10に示すように励磁コイル21の被検査体側に、検出コイルの代わりに磁場検出素子52を利用してもよい。磁場検出素子としては、ホール素子、磁気抵抗素子、巨大磁気抵抗素子、フラックスゲート素子を利用できる。
【0026】
実施形態3、4において、磁性材23に対向する被検査体1表面には、一定の分布幅をもって渦電流が発生する。この影響により探傷プローブの分解能が十分に向上しない。ここで、リング状の導電性非磁性材24を設けることにより、パルス波遮断後の被検査体11に発生する渦電流を、更に励磁コイル21近傍に集束させる事が出来る。これは、被検査体11に発生する渦電流の一部をリング状の導電性非磁性材24で流すためである。導電性非磁性材24は、励磁コイル21の外周に発生する渦電流に作用するために、磁性材23より大きなリング状とすることが望ましい。但し、被検査体1の渦電流に対応するものであるため、その高さは小さくて良い。
【0027】
図11はパルス波を切断直後の被検査体1に発生する渦電流の大きさに関する計算結果を示すグラフである。励磁コイルは内径5mm、外径10mm、高さ20mmである。励磁コイルの外周に内径11mm、外径13mm、高さ25mmの磁性材を設ける。リング状の導電性非磁性材は内径14mm、外形15mm、高さ2mmである。結果の横軸は励磁コイル中心を0mmとした半径方向位置、縦軸は渦電流密度(大きさ)の最大値で規格化した値を示す。曲線18はコイルのみの特性、曲線60はコイルとフェライトコアで構成した探傷プローブの特性を示す。これより、リング状の導電性非磁性材を利用いた場合に、渦電流がコイル中心側に集束することが分かる。
【0028】
以上述べたように、本発明の探傷プローブ構造により、磁束が励磁コイル近傍へ十分に集束することから、渦電流を励磁コイル近傍に集束させることが出来る。また、被検査体1に発生する渦電流の拡がりを抑制することにより、さらに渦電流探傷装置の分解能向上が図れる。
【0029】
図12は上記した探傷プローブを用いた渦電流探傷装置を示す。渦電流探傷装置はコンピュータ30でメカニズムを駆動し、さらに測定系44を制御する。メカニズムは被検査体32に取付けた軌道33に沿って、モータ34で駆動する走行治具35を有する。走行治具35には本発明の探傷プローブ36を装着している。コンピュータで指定した位置に探傷プローブ36を移動した後、パルス電源40で生成したパルス波を電力増幅器を介して探傷プローブ36の励磁コイルに印加する。探傷プローブ36の磁場検出素子、励磁コイルの検出信号を、プリアンプで増幅しA/Dコンバータでサンプリングする。データはコンピュータのメモリに蓄積、保存する。これを検量線と比較することで減肉や割れを評価する。なお検量線は予め検査部と同様の材質を利用して、模擬欠陥や減肉を付与した対比試験体を利用して作成する。
【符号の説明】
【0030】
8:パルス波
12、21:励磁コイル
13、23:磁性材
15、22:検出コイル
24:導電性非磁性材
36:探傷プローブ
51、52:磁場検出素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス波で励磁される励磁コイルと磁場検出素子を同軸上に配置し、前記励磁コイルの軸方向が被検査体の表面と直交するパルス渦電流探傷装置に用いる上置型の渦電流探傷プローブにおいて、
前記励磁コイルの外周に励磁コイル高さより高い磁性材を前記励磁コイル軸と平行方向に配置したことを特徴とする渦電流探傷探傷プローブ。
【請求項2】
請求項1に記載の渦電流探傷プローブにおいて、前記磁場検出素子として、検出コイル、ホール素子、磁気抵抗素子、巨大磁気抵抗素子、フラックスゲート素子のうち一つを用いたことを特徴とする渦電流探傷探傷プローブ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の渦電流探傷プローブにおいて、リング状の導電性非磁性材を前記励磁コイル外周において、前記被検査体に近接して配置したことを特徴とする渦電流探傷探傷プローブ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の渦電流探傷プローブにおいて、前記磁性材として、フェライトコア、電磁鋼板又はパーマロイ箔のうち一つを用いたことを特徴とする渦電流探傷探傷プローブ。
【請求項5】
請求項3に記載の渦電流探傷プローブにおいて、前記磁性材としてフェライトコア、電磁鋼板又はパーマロイ箔のうち一つを用い、前記導電性非磁性材として、銅又はアルミを用いたことを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載の渦電流探傷プローブを用いたことを特徴とするパルス渦電流探傷装置。
【請求項1】
パルス波で励磁される励磁コイルと磁場検出素子を同軸上に配置し、前記励磁コイルの軸方向が被検査体の表面と直交するパルス渦電流探傷装置に用いる上置型の渦電流探傷プローブにおいて、
前記励磁コイルの外周に励磁コイル高さより高い磁性材を前記励磁コイル軸と平行方向に配置したことを特徴とする渦電流探傷探傷プローブ。
【請求項2】
請求項1に記載の渦電流探傷プローブにおいて、前記磁場検出素子として、検出コイル、ホール素子、磁気抵抗素子、巨大磁気抵抗素子、フラックスゲート素子のうち一つを用いたことを特徴とする渦電流探傷探傷プローブ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の渦電流探傷プローブにおいて、リング状の導電性非磁性材を前記励磁コイル外周において、前記被検査体に近接して配置したことを特徴とする渦電流探傷探傷プローブ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の渦電流探傷プローブにおいて、前記磁性材として、フェライトコア、電磁鋼板又はパーマロイ箔のうち一つを用いたことを特徴とする渦電流探傷探傷プローブ。
【請求項5】
請求項3に記載の渦電流探傷プローブにおいて、前記磁性材としてフェライトコア、電磁鋼板又はパーマロイ箔のうち一つを用い、前記導電性非磁性材として、銅又はアルミを用いたことを特徴とする渦電流探傷プローブ。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載の渦電流探傷プローブを用いたことを特徴とするパルス渦電流探傷装置。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−117890(P2011−117890A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277385(P2009−277385)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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