説明

温度差出力回路および温度差出力方法

【課題】直列に接続された多対熱電対で測定試料と標準試料の温度差を高感度に測定するとともに、そのデータ曲線のベースラインをスロープ調整して出力する温度差出力回路および温度差出力方法を提供する。
【解決手段】2種の熱電対材料の熱電対素線を交互に直列接続し、1つおきの接点の集合のうち、一方を標準試料用の接点として標準試料R側に設置し、他方を測定試料用の接点として測定試料S側に設置した多対熱電対10と、標準試料Rの温度を検出する標準試料用の温度検出回路30と、多対熱電対10および標準試料用の温度検出回路30に接続され、多対熱電対10の出力値Vdaから、標準試料用の温度検出回路30の出力値Vraに特定の比率を乗じた値ΔVrを差し引く差引回路40と、を備え、ベースラインを補正して測定試料の温度と標準試料の温度との温度差を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定試料と標準試料との温度差を出力する温度差出力回路および温度差出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DTA(Differential Thermal Analyzer)、DSC(Differential Scanning Calorimeter)等の熱分析装置で精密な測定を行うには、測定試料S側と標準試料R側との間での熱的な対称性が維持される必要がある。しかし、実際には、炉体やセンサを理想状態に製作することはできないため、データ曲線のベースラインに傾きが生じ、ベースラインのスロープ調整が必要となる。
【0003】
図12は、従来の温度差出力回路のブロック図である。図12に示すように、従来の熱分析装置201は、2つの熱電対202、203を測定試料S側と標準試料R側に配置し、それぞれの温度値を入力されたDTA回路204が、温度差を出力している。DTA回路204は、別々に温度の信号を受けているため、熱電対の中点を可変抵抗205により調整し、測定試料S側の信号と標準試料R側の信号の比率を変えることでスロープ調整を行うことが可能となっている。
【0004】
一方、熱分析装置には、多対熱電対を用いて測定感度を高めようとしているものがある(特許文献1参照)。たとえば、特許文献1記載のサーモパイルは、一対の熱電対材料からなる熱電対素線を交互に直列に接続して、渦巻状に形成されている。このようにして、小型で高感度の装置を実現している。また、回路構成により熱電対の中点を調整することにより行われるスロープ調整ではなく、データ処理によるスロープ補正を行う処理装置も提案されている(特許文献2参照)。たとえば、特許文献2記載の熱分析データ処理装置は、表示器にデータ曲線を表示し、操作により画面上に複数のポイントを設定する。そして、設定されたポイントによりベースラインを作成し、その作成されたベースラインによりデータの補正を行なっている。
【特許文献1】特公昭58−8153号公報
【特許文献2】特開平6−167466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、2つの熱電対を用いる熱分析装置201では、熱電対の中点を可変抵抗205により調整することでスロープ調整を行うことができる。
【0006】
しかしながら、熱電対を直列に接続した多対熱電対で、試料の温度差の信号を出力する装置では、測定試料S側と標準試料R側の信号の切り分けができないため、中点調整によりスロープを調整することができない。これに対し、上記の特許文献2の処理装置のように、得られたデータを処理しベースラインを補正することも可能である。しかしながら、データ処理により補正を行おうとすると、熱的な対称性や昇温の条件等を無視して補正をしなければならなくなり、補正の処理が得られる結果に影響を及ぼしてしまう。また、恣意的な操作が介在することになり、必ずしも信頼性の十分な結果が得られない。
【0007】
また、例えば試料を設置せずブランク測定により補正を行うことも考えられるが、この場合には試料測定時に、試料容器も含めてブランク測定時の条件と全く同じ条件で測定しなければならない。しかしながら、試料測定時の条件をブランク測定時の条件に完全に一致させることは困難であり、必ずしも信頼性の十分な結果が得られない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、直列に接続された多対熱電対で測定試料と標準試料の温度差を高感度に測定するとともに、そのデータ曲線のベースラインをスロープ調整して出力する温度差出力回路および温度差出力方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記の目的を達成するため、本発明に係る温度差出力回路は、2種の熱電対材料の熱電対素線を交互に直列接続し、1つおきの接点の集合のうち、一方を標準試料用の接点として標準試料の温度変化が伝わる位置に設置し、他方を測定試料用の接点として測定試料の温度変化が伝わる位置に設置した多対熱電対と、前記標準試料の温度を検出する標準試料用の温度検出回路と、前記多対熱電対および前記標準試料用の温度検出回路に接続され、前記多対熱電対の出力値から、前記標準試料用の温度検出回路の出力値に特定の比率を乗じた値を差し引く差引回路と、を備え、ベースラインを補正して前記測定試料の温度と標準試料の温度との温度差を出力することを特徴としている。
【0010】
このように、本発明の温度差出力回路は、熱電対素線が直列に接続された多対熱電対の出力値から、標準試料用の温度検出回路の出力値に特定の比率を乗じた値を差し引くことにより、測定試料の温度と標準試料の温度との温度差のベースラインを補正している。これにより、高感度で温度差を検出し、回路による調整で検出源の信号のシフトを補正している。多対熱電対から出力される情報には、熱的な対称性や昇温の条件等の情報が含まれるため、上記のように多対熱電対の出力を回路で調整すれば、これらの情報を考慮したベースライン補正を行うことができる。また、測定結果に恣意的な操作を加える必要がなくなるため、結果の信頼性を高めることができる。また、熱電対素線を直列に接続して多対熱電対を構成しているため、多対熱電対の出力がそのまま温度差に対応し、温度差算出回路を不要とすることができる。
【0011】
(2)また、本発明に係る温度差出力回路は、前記標準試料用の温度検出回路が、前記多対熱電対の標準試料用の接点の一つにより温度を検出し出力することを特徴としている。このように、本発明の温度差出力回路は、多対熱電対の一部から得られる信号を利用してベースラインの補正を行うことで、高感度で温度差を検出し、回路上の調整によりベースラインの補正を可能にしている。
【0012】
(3)また、本発明に係る温度差出力回路は、前記標準試料用の温度検出回路が、前記標準試料の温度を検出する標準試料用の熱電対により構成されることを特徴としている。このように、本発明の温度差出力回路は、標準試料用の熱電対により検出された標準試料の温度を利用してベースラインの補正を行うことで、高感度で温度差を検出し、回路上の調整によりベースラインの補正を可能にしている。
【0013】
(4)また、本発明に係る温度差出力回路は、前記差引回路が、前記特定の比率を調整可能にする調整部を備えることを特徴としている。これにより、たとえば画面表示を見ながら、特定の比率を調整しベースラインをゼロにすることが可能となる。
【0014】
(5)また、本発明に係る温度差出力方法は、多対熱電対により測定された測定試料と標準試料との温度差を検出するとともに、前記標準試料の温度を検出するステップと、前記検出された標準試料の温度の値に特定の比率を乗じるステップと、前記検出された温度差から特定の比率を乗じた標準試料の温度を差し引くステップと、を含み、ベースラインを補正して前記測定試料の温度と標準試料の温度との温度差を出力することを特徴としている。
【0015】
これにより、高感度で温度差を検出し、回路上の調整によりデータ曲線のベースラインを補正することができる。そして、熱的な対称性や昇温の条件等を考慮したベースライン補正を行なうことができ、補正による影響が測定結果に及ぶのを防ぐことができる。また、測定結果に恣意的な操作を加える必要がなくなるため、結果の信頼性を高めることができる。また、熱電対素線を直列に接続して多対熱電対を構成しているため、多対熱電対の出力がそのまま温度差に対応し、温度差算出回路を不要とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高感度で温度差を検出し、回路による調整で検出源の信号のシフトを補正することができる。その結果、熱的な対称性や昇温の条件等を考慮したベースライン補正を行なうことができ、結果の信頼性を高めることができる。また、熱電対素線を直列に接続して多対熱電対を構成しているため、多対熱電対の出力がそのまま温度差に対応し、温度差算出回路が不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
(実施形態1)
図1は、温度差出力回路1のブロック図である。温度差出力回路1は、DTA、DSC等の熱分析装置(図示せず)に用いられる回路である。熱分析装置は、炉体をプログラムに従って温度変化させて、炉体内の対称位置に設置された測定試料Sの温度と標準試料Rの温度の差を検出する装置である。温度差出力回路1は、この温度差を検出するための回路であり、温度差出力回路1にはできるだけ測定感度を高めることが望まれている。温度差出力回路1は、多対熱電対10、測定試料用の温度検出回路20、標準試料用の温度検出回路30、差引回路40とから構成されている。
【0019】
多対熱電対10は、2種の熱電対素線を交互に直列に接続したものである。接続の結果形成された1つおきの接点の集合が測定試料用の接点と標準試料用の接点とに分けられて、それぞれ測定試料S、標準試料Rの温度変化が伝わる位置に設置されている。各試料は試料容器に入れられており、試料容器は感熱板(図示せず)に載置される。多対熱電対10の接点は、たとえば、各試料容器を載置する感熱板の裏側にそれぞれ設置される。このようにして、多対熱電対10は、複数の熱電対が直列に接続されることで測定感度を高くしている。ただし、接点が多すぎると設計が難しくなり、ノイズが大きくなるため、接点数は4つ程度とするのが好適である。また、多対熱電対10は、熱電対素線を直列に接続して構成されているため、多対熱電対10の出力がそのまま温度差に対応し、従来の温度差算出回路が不要となっている。熱電対素線の材料は、コンスタンタン−クロメル等が挙げられるが、特に限定されない。
【0020】
多対熱電対10は、2種の熱電対素線が交互に直列に接続されて構成されているが、その両端の熱電対素線の端部および両端以外の熱電対素線の中央部は、絶縁性のベース板(図示せず)に密着されている。ベース板は、たとえば熱伝導性の高いセラミックスで形成されており、炉体から伝導される熱により温度コントロールされている。なお、ベース板を用いる実施形態は一例であって、実施形態はこれに限定されない。たとえば、ベース板なしで、測定試料用の感熱板に測定試料用の接点の集合を密着させ、標準試料用の接点の集合および多対熱電対10の両端の熱電対素線の端部を標準試料側の感熱板に密着させる形態を構成してもよい。ただし、このように標準試料側の接点を基準接点とすると、標準試料側に設けた多対熱電対の両端に引き出し線を接続する必要があり、測定試料側との熱的なバランスをとり難いため、ベース板を用いる形態の方が好ましい。
【0021】
測定試料用の温度検出回路20は、熱電対10a、補償導線21、22、増幅回路24、A/D変換回路27から構成されている。熱電対10aは、多対熱電対10の一部であり、その最も端の熱電対である。このように測定試料用の温度検出回路は、多対熱電対10の一部を利用して測定試料Sの試料温度を測定する。補償導線21、22は、熱電対と近似の熱起電力特性を有する導線であり、熱電対10aと増幅回路24の間を接続する。増幅回路24は、測定試料Sの温度を示す信号Vsを信号Vsaに増幅する。A/D変換回路27は、増幅回路24に接続され、アナログ信号をデジタル信号に変換し、測定試料の温度データを出力する。このように、測定試料用の温度検出回路20は、測定試料Sの温度を検出している。
【0022】
標準試料用の温度検出回路30は、熱電対10b、補償導線31、32、増幅回路34、A/D変換回路37から構成されている。熱電対10bは、多対熱電対10の一部であり、熱電対10aの反対側の最も端の熱電対である。補償導線31、32は、熱電対10bと増幅回路34の間を接続する。増幅回路34は、得られた温度を示す信号VrをVraに増幅する。A/D変換回路37は、増幅回路34に接続され、アナログ信号をデジタル信号に変換し、標準試料Rの温度データを出力する。このように、標準試料用の温度検出回路30は、標準試料Rの温度を検出している。
【0023】
差引回路40は、引き出し線41、42、増幅回路44、加減算回路45、加算回路46およびA/D変換回路47から構成されている。引き出し線41、42は、それぞれその一端が多対熱電対10の両端に接続されており、測定試料Sと標準試料Rの温度差を出力している。また、引き出し線41、42の他端は、増幅回路44に接続されており、検出された温度差信号Vdは、増幅回路44により温度差信号Vdaに増幅され出力される。
【0024】
一方、加減算回路45の一端は、標準試料用の温度検出回路の増幅回路34に接続されており、その他端は、加算回路46に接続されている。加減算回路45は、標準試料Rの温度信号に特定の比率を掛けた値を加算回路46に出力する。特定の比率は、可変抵抗(ボリューム)の操作により決まる比率である。詳細については後述する。なお、測定試料Sの温度信号を用いて補正を行わないのは、測定試料Sは温度変化を生じるからである。
【0025】
加算回路46は、増幅回路44から受けた温度差の増幅値から標準試料Rの温度に特定の比率を掛けたものを加算する。その結果、温度差の信号からスロープ調整分引かれた温度差の値が出力される。A/D変換回路47は、スロープ調整分引かれた温度差の値をアナログ信号からデジタル信号に変換し、測定された温度差のデータ(DTAデータ)を出力する。このように、差引回路40は、多対熱電対10および標準試料用の温度検出回路30に接続され、多対熱電対10の出力値から、標準試料用の温度検出回路30の出力値に特定の比率を乗じた値を差し引く。次に、上記の特定の比率を決定する加減算回路45について説明する。
【0026】
図2は、加減算回路45を示す回路図である。加減算回路45は、演算回路51、52を並列に接続し、それらの出力側に可変抵抗53を接続することで構成されている。演算回路51は、入力信号の+1倍の信号を出力する機能を有している。演算回路52は、入力信号の−1の信号を出力する機能を有している。このようにして、信号Vraを2つの信号に分ける。
【0027】
演算回路51、52の出力側には、可変抵抗53(調整部)が接続されている。可変抵抗53は、加算側または減算側に可動片の位置を調整することが可能になっており、その位置から電圧が取り出される。したがって、上記の2つの信号の比率を変えて信号を足し合わせることが可能となっている。
【0028】
可変抵抗53の加算側の抵抗をR、減算側の抵抗をRとすると、加減算回路45の出力ΔVrは、ΔVr=(R−R)Vra/(R+R)である。たとえば、可動片の位置と抵抗値との関係が線形となるように可変抵抗53が構成されており、加算側から減算側へα:1−αの比で表される位置に可動片が調整されている場合には、ΔVr=(1−2α)Vraの出力が得られる。したがって、可動片の位置により、αを調整することで、−1≦k≦1の範囲でΔVr=kVraを調整することができる。加減算回路45には、標準試料Rの温度の増幅された信号Vraが入力され、測定時に可変抵抗53が調整されることにより、kVraが加算回路46に出力される。そして、加算回路46は、Vda+kVraを出力する。Vda≪Vraであり、特定の比率kは、−1≦k≦1の範囲をとるため、シフト分のみ差し引くことが可能となる。すなわち、検出されたDTA信号Vdaの傾いている方向と反対の極性の信号を足し合わせる調整を行うことでスロープ調整をすることができる。たとえば画面表示を見ながら、特定の比率を調整しベースラインをゼロにすることが可能となる。
【0029】
このようにして、可変抵抗53の調整によりベースラインの傾きをゼロに調整することができる。そして、加減算回路45および加算回路46が機能することにより、特定の比率kが乗ぜられた標準試料温度を温度差から差し引くことができる。なお、シフト分と同じ比率でDTA信号Vdaに信号を加えることになるため、DTA信号に調整による影響は出ない。また、データ処理ではなく回路により調整が可能であるため、測定結果に恣意的な操作を加える必要がなく、結果の信頼性を高めることができる。
【0030】
次に、温度差出力回路1を備える熱分析装置を用いたDTA測定の測定方法を説明する。図3(a)は、スロープ調整を行わない場合に得られるDTA測定結果のグラフ60を示す図である。測定結果は、測定試料Sと標準試料Rとの温度差を時間に対して記録したものである。温度差出力回路1によりスロープ調整を行わずにDTA測定すると、このようにベースラインが傾いたグラフ60が得られる。一方、図3(b)は、スロープ調整を行った場合に得られるDTA測定結果のグラフ61を示している。
【0031】
スロープ調整して測定を行う場合には、まず、測定試料Sについて測定したい変化が生じると予想される温度より十分に低い温度から、その温度に達するように温度プログラムを設定する。そして、昇温中に測定試料Sに吸熱または発熱変化が起こらなければ、測定試料Sと標準試料Rとの間の温度差は一定の傾きで増加または減少する。このような熱的変化のない領域で、可変抵抗53を調整することでベースラインのスロープ調整を行う。図3(b)は、熱的変化の無い範囲Aでスロープ調整を行った場合の例を示している。スロープ調整は、可変抵抗53の可動片の位置を少しずつ変化させて、上昇または下降するグラフの一定の傾きをゼロに合わせることで行われる。このような調整を行うことにより、図3に示すようなベースラインの水平なグラフ61を得ることができる。
【0032】
このとき、温度差出力回路1は、次のように動作する。まず、多対熱電対10により測定された測定試料Sと標準試料Rとの温度差を多対熱電対10が検出し、標準試料用の温度検出回路30が標準試料Rの温度を検出する。そして、加減算回路45は、可変抵抗53の調整に応じて、検出された標準試料Rの温度の値に特定の比率を乗じる。次いで、加算回路46は、上記の検出された温度差の値から標準試料Rの温度に特定の比率を乗じた値を差し引く。このようにして、温度差出力回路1は、データ曲線のベースラインを補正して測定試料Sの温度と標準試料Rの温度との温度差を出力する。
【0033】
(実施形態2)
上記の実施形態では、多対熱電対10の両端の熱電対10a、10bをそれぞれ利用して、測定試料Sの温度および標準試料Rの温度を測定しているが、利用する熱電対は、多対熱電対10の中央部分であってもよい。
【0034】
図4は、中央の熱電対を利用して、各試料の温度を測定する温度差出力回路71のブロック図である。測定試料Sの温度の測定には、熱電対10cおよび補償導線71、72が用いられている。また、標準試料Rの温度の測定には、熱電対10dおよび補償導線81、82が用いられている。このように、多対熱電対10の中央の熱電対を利用しても、回路としての機能は同様であるが、構造上、中央の熱電対を利用した方が熱的に対称性のある回路を構成しやすい。
【0035】
(実施形態3)
また、上記の実施形態では、多対熱電対10の一部を熱電対として利用して、測定試料Sや標準試料Rの温度を測定しているが、別個に熱電対を設置してもよい。
【0036】
図5は、多対熱電対10とは別個に測定試料Sの温度測定用に熱電対92を、標準試料Rの温度測定用に熱電対93をそれぞれ設置した温度差出力回路91のブロック図である。測定試料Sの温度の測定には、熱電対92が用いられ、その両端が増幅回路24に接続されている。また、標準試料Rの温度の測定には、熱電対93が用いられ、その両端が増幅回路34に接続されている。
【0037】
(実施形態4)
次に、上記の実施形態の温度差出力回路1を適用した熱分析装置101を説明する。熱分析装置101は、熱電対を直列に接続して感度を高めた多対熱電対を有している。熱電対を直列に接続しているため、スロープ調整に熱電対の中点を調整する方法を用いることができない。この多対熱電対に温度差出力回路1が適用されることで、信頼性の高い測定結果を得ることができる。
【0038】
図6は、熱分析装置101を模式的に示す断面図である。熱分析装置101は、炉体ユニット110の温度を制御して測定試料Sと標準試料Rとの温度差を検出し、熱流差を出力する熱流束DSCと呼ばれるものである。熱分析装置101は、その他、単に温度差を検出するDTAとして用いることも可能である。
【0039】
図6に示すように、熱分析装置101は、大きく分けて炉体ユニット110、炉体温度制御回路120、センサユニット130および出力回路140から構成されている。炉体ユニット110は、さらに炉体111、ヒータ線112、炉体カバー113、センサ台114、および絶縁シート115から構成されている。
【0040】
炉体111は、銀製であり、中心軸に対称で断面がH形である。そして、H形の一方の凹状空間が、試料を設置するための試料室111aとなっている。炉体111は、ヒータ線112から伝達される熱を試料室内全体に均一に伝えている。ヒータ線112は、炉体111の周囲を巻き回され、発熱により炉体111を加熱する。ヒータ線112は、後述の炉体温度制御回路120により給電が調整され、発熱が制御されている。
【0041】
炉体カバー113は、銀製で円筒形状を有しており、炉体111およびヒータ線112を覆っている。センサ台114は、銀製で長板状をしている。センサ台114の端面は炉体内壁に沿って円周面の形状を有しており、中央には後述する感熱板36の外周に沿って内側に窪んだ側面を有している。センサ台14は、炉体111内の試料室111aの底面にネジ止めされている。絶縁シート115は、センサ台114の上面と同じ外形を有しており、センサ台114の上面を覆って配置されている。絶縁シート115は、熱電対素線が銀製のセンサ台114との間でショートしないように両者を電気的に絶縁している。また、ベース板131の底面と熱電対素線との間に十分な空隙があれば、絶縁シート115を設けなくてもよい。
【0042】
炉体温度制御回路120は、炉体温度センサ121、温度測定回路122、ヒータ温度制御回路123および給電回路124により構成されている。炉体温度センサ121には、たとえば熱電対を用いることができる。炉体温度センサ121は、炉体の温度を表す信号を温度測定回路122に送る。温度測定回路122は、炉体温度センサ121からの信号を温度値として出力する。ヒータ温度制御回路123は、得られた炉体温度の値を参照し、炉体温度を設定された温度パターンに従わせて給電を制御する。給電回路124は、ヒータ温度制御回路123の制御の下で、ヒータ線12に給電する。このように、炉体温度制御回路120は、炉体ユニット110の温度を制御する。
【0043】
センサユニット130は、ベース板131(ベース部)、多対熱電対132、測定試料用の感熱板135(感熱部)および標準試料用の感熱板136(感熱部)から構成されている。センサユニット130は、炉体111から熱を試料に伝えるとともに、試料の温度を検出する機能を有している。
【0044】
ベース板131(ベース部)は、窒化アルミニウム製であり長板状である。ベース板131もセンサ台114と概略同様の外形を有している。ベース板131は、溝等の形状に特徴を有しており、これについては後述する。ベース板131(ベース部)は、絶縁シート115を挟んでセンサ台114にネジ止めされている。このようにベース板131は炉体ユニット110に接触しているが、ベース板131と炉体ユニット110との間に空隙を設ける構成としてもよい。いずれにしてもベース板131は、炉体ユニット110の近傍に設けられている。
【0045】
ベース板131に用いられている窒化アルミニウムは、絶縁体であり、熱伝導率が金属並みに高く、金属との接合性に優れている。ベース板131の材料としては、熱伝導性の高いセラミックスが好適であり、これを用いることで測定感度を高くさせることができる。なお、熱伝導性の高いセラミックスとしては、窒化アルミニウムの他、炭化珪素も適している。なお、ベース板131は、ヒートシンクとしても機能し、各試料容器に熱を伝えることで、両者を熱的に同じ条件に置いている。
【0046】
多対熱電対132は、2種の熱電対材料の素線を交互に接合することにより直列の4対の熱電対として形成されている。したがって、従来のスロープ調整の方法を適用することができないため、測定試料Sと標準試料Rとの温度差から標準試料Rの温度値に所定の比率を掛けた値を差し引くための回路が必要となる。2種の熱電対材料としては、温度差に対して高い電圧を発生するコンスタンタン−クロメルの組み合わせが好適である。ただし、ロジウムの成分比が異なる白金ロジウムの組合せ、白金−白金ロジウムの組合せ、ナイシル−ナイクロシルの組合せ、アルメル−クロメルの組合せ、コンスタンタン−鉄の組合せ、コンスタンタン−銅の組合せ等であってもよく、組合せは限定されない。
【0047】
また、多対熱電対132は、各熱電対材料の平板状素線を接点で重ねて接合することにより形成されており、接合による段差が生じているが、概ね平板状である。これにより、炉体111への収容性が向上する。また、多対熱電対132は、細いワイヤー形状に比べ酸化による影響を受け難い。各素線のうち、ベース板131と重なる領域(特定部分)は、ベース板131に接合されている。この接合により、多対熱電対132は、ベース板131により下面が浮かされ、絶縁シート115との間に空隙が生じる。したがって、炉体111の熱は、主にベース板131を介し、ベース板131と熱電対素線の接合部分から多対熱電対132に伝えられる。
【0048】
一対の感熱板135、136(感熱部)は、窒化アルミニウム製の円板であり、その一方の主面には試料容器それぞれが載置される載置面が存在する。そして、他方の主面には、多対熱電対の接点がそれぞれ電気的に独立して接合されている。電気的に独立しているとは、互いに干渉することなく各電位に影響を及ぼさないということである。少なくとも、各接点は感熱板135、136上で導通しないように構成されている。感熱板135、136は、多対熱電対132によりベース板131から離間して支持されている。したがって、感熱板135、136とベース板131との間に適度な熱抵抗が存在し、測定試料Sに変化があった場合には、測定試料Sと標準試料Rとの間に急な温度勾配が生じ、熱起電力が増大する。その結果、センサの感度やS/N比が向上する。また、感熱板135、136に伝わる熱を逃がさず、試料の温度変化を高感度で検知することができる。
【0049】
その一方で、ベース板131と感熱板135、136とは多対熱電対132により接続されている。したがって、多対熱電対132が熱をベース板131から各感熱板135、136へ伝え、試料温度の時定数を小さく維持することができる。たとえば、試料温度に対してレスポンスが悪すぎて測定試料Sの変化が終わっているにもかかわらず引き続いてピークが検知されるといったことが防止される。多対熱電対によりベース板131と感熱板135、136とが接続されるため、センサ感度を鈍らせることがない。その結果、測定試料Sの吸熱や発熱等の変化を十分に検知することができる。
【0050】
ベース板131の熱は、多対熱電対132および感熱板135、136を介して各試料容器に伝えられる。その一方で、感熱板135、136は、試料の温度変化を高感度で熱電対に伝えている。感熱板135、136の材料としては熱伝導性の高いセラミックスが好適である。たとえば、窒化アルミニウムの他に炭化珪素も適している。
【0051】
出力回路140は、標準試料用熱電対141、引き出し線142、143、ベースライン補正回路145、熱量演算回路146、および出力装置147から構成されている。出力回路140は、多対熱電対132からの信号を補正して温度差を熱量に換算し、画面や紙等に出力する。
【0052】
標準試料用熱電対141は、ベースライン補正用に標準試料Rの近傍に設けられた熱電対である。標準試料用熱電対141は、標準試料Rの温度の信号をベースライン補正回路145に送る。引き出し線142、143は、一端を多対熱電対132に、他端をベースライン補正回路145に接続され、両試料間の温度差をベースライン補正回路145に送る。炉体111には、アルミナ管を挿通させた孔が開けられており、引き出し線142、143は、この孔を通ってベースライン補正回路145に接続されている。ベースライン補正回路145は、標準試料用の温度検出回路30および差引回路40を含み、測定試料Sと標準試料Rとの温度差から標準試料Rの温度値に所定の比率を掛けた値を差し引くことで、ベースラインを補正している。熱量演算回路146は、ベースラインを補正された温度差の値を熱量(熱流差)に換算する。出力装置147は、たとえば表示装置や印刷装置であり、熱流差を画面に表示したり、紙に印刷したりする。熱分析装置101は、このように構成されており、特にセンサユニット130は、温度差検知の感度を高めるための特徴を有している。
【0053】
図7は、センサユニット130を示す(a)平面図、(b)、正面図および(c)底面図である。図7に示すように、センサユニット130は、多対熱電対132が、ベース板131および各感熱板135、136に接合されることで形成されている。センサユニット130は、測定試料側と標準試料側とで対称な形状に設計されており、構造的にバランスがとれている。これにより、熱的な対称性が得られ、測定試料Sの熱的挙動のみを抽出して検知することが可能となる。
【0054】
ベース板131および感熱板135、136は、多対熱電対132の同じ側に配置されている。ただし、ベース板131は、感熱板135、136とは接触せず、ベース板131から感熱板135、136には熱が直接伝わらないように配置されている。感熱板135、136は、ベース板131より薄く形成されており、温度検知に好適な形状となっている。また、多対熱電対132は、ベース板131の溝131b、131cに嵌めこまれており、多対熱電対132と炉体ユニット110との間にはわずかに隙間を生じる。その結果、多対熱電対132は、一対の感熱板135、136を炉体ユニット110およびベース板131から離間させて支持している。
【0055】
また、熱電対素線がベース板131に収容されるため、センサをコンパクトにすることができる。そして、所定位置に熱電対素線が固定されるため、構造上のバランスをとり均一な構造にすることができる。なお、炉体ユニット110からの熱伝達を高く設定すべき場合には、上記の隙間をなくし、多対熱電対132と炉体ユニット110とを密着させてもよい。
【0056】
また、溝131b、131cにより、溝内の接合用のロウ材が流出するのを防止することができる。また、平面領域131dの炉体ユニット110との接触面積を小さくし熱膨張により炉体ユニット110とベース板131との間に発生する応力を緩和することができる。
【0057】
多対熱電対132と溝131b、131cとの接触面は、金のロウ材により接合されている。多対熱電対132を構成するそれぞれの熱電対素線のうち、両端の熱電対素線は、その端部がベース部131に接合されており、それ以外の熱電対素線は、その中央部分がベース部131に接合されている。また、多対熱電対の1つおきの接点が4つずつ集められて測定試料側の感熱板135と標準試料側の感熱板136に接合されている。
【0058】
図8は、ベース板131を示す(a)平面図、(b)正面図および(c)底面図である。ベース板131は、センサ台114にセンサユニット130ごと固定するためのネジ孔131aを有している。ベース板131のセンサ台114側の底面、すなわち炉体ユニット10に対向する面には、深い溝131bおよび浅い溝131cが交互に形成されている。これにより、各材料の熱電対素線をベース板131の溝131b、131cに密着させて収めることができる。その結果、センサユニット130をコンパクトにすることができる。
【0059】
溝の深さに応じて、異なる材料の熱電対素線が嵌めこまれる。センサ台114側の底面で、溝が形成されていない平面領域131dは、絶縁シート115に接触し、そこから炉体111の熱が伝わる。ベース板131は、側面の中央部分が窪んで、括れた形状を有している。この内側に窪んだ側面131eは、感熱板135、136の円周に沿って円周より少し大きい曲率半径で形成されており、ベース板131と感熱板135、136とは互いに接触することはない。これにより、センサユニット130を小型化し炉体111への収容性を高めるとともに、感熱板135、136をベース板131から離間させている。ベース板131の端面131fは、炉体の試料室111aの内壁に沿って収まり易いように、円周面に形成されている。
【0060】
図9は、試料載置側から見た多対熱電対132を示す平面図である。多対熱電対132は、コンスタンタンの熱電対素線とクロメルの熱電対素線とを交互に直列に接合することで、4対の熱電対として形成されている。多対熱電対132は、接点において平板状の熱電対素線を重ねて接合されることで形成されている。両端の熱電対素線の端部には、引き出し線142が接続されている。このように、複数の熱電対を用いて各試料の温度検知の感度を高くする一方で、熱電対数を抑えることによりS/N比の増大を抑制している。また、多対熱電対132の接点数を制限することでセンサユニット130を小型化し炉体111への収容性を高めている。
【0061】
素線同士はスポット溶接されるか、または金のロウ材を用いて接合されている。図9では、材料の違いが白地とハッチング地の違いで示されている。重ねられた熱電対素線のうち試料載置側の熱電対素線132a(白地)の材料は、コンスタンタンであり、炉体側の熱電対素線132b(ハッチング地)の材料はクロメルである。なお、コンスタンタンとクロメルの組合せは好適であるが、これに限定されるものではない。それぞれの素線は長手方向にまっすぐな平板ではなく、幅方向に屈曲する屈曲部Cを有している。これにより、熱電対素線が平板状に薄くても、厚さ方向に屈曲しにくくなり、炉体ユニット110から離間させて感熱板135、136を支持しやすくなる。
【0062】
感熱板135、136は、窒化アルミニウム製で薄い円板形状を有している。感熱板135、136の試料載置面の反対面において、多対熱電対132の1つおきの4つの接点の集合が、それぞれ金のロウ材で接合されている。センサユニット130は、このようにして構成されている。
【0063】
次に、センサユニット130の製造工程および熱分析装置101の組み立て工程を説明する。図10は、センサユニット130の製造工程を示す斜視図である。
【0064】
まず、クロメルおよびコンスタンタンの各熱電対材料により形成された2枚の平板160、170をエッチングにより所定のパターンに形成する。形成方法は、エッチングに限定されない。パターンは、平板を型抜きした形状としておき、各平板の外枠161、171および外枠と熱電対素線132b、132aとのつなぎ部分163、173を残しておく。また、外枠161、171の四つの角には位置合わせのための孔162、172を空けておく。これにより、接合や組み立てが容易になる。
【0065】
続いて、パターン形成された2枚の平板160、170、ベース板131および一対の感熱板135、136の所定部分の表面に接合用金属の金属層を形成する。所定部分とは、熱電対素線132bと熱電対素線132aとが接点を形成する部分の各接触面165、175、熱電対素線132b、132aとベース板131との接触面166、176、180、および熱電対素線132aと感熱板135、136との接触面177、181である。両端の熱電対素線では、その端部がベース板131と密着し、接合されている。両端以外の熱電対素線は、その中央部がベース板131と密着し、接合されている。多対熱電対132のそれぞれの4つの接点は、感熱板135、136と接合されている。金属層の材料としては、金または銀が好適であるが、これに限定されない。また、金属層は、メッキや蒸着等により形成すればよく、特に形成方法は限定されない。
【0066】
次に、ベース板131および一対の感熱板135、136に、パターン形成された2枚の平板160、170を重ねて密着させる。重ねる際には、外枠161、171の角の孔162、172を重ねて位置合わせを行う。そして、密着部分に圧力を加え、所定の温度まで上げて接合する。このように金属層形成処理と接合を行うことにより、接合部分がいずれも均一になる。その結果、測定試料Sと標準試料Rとの間で、熱的な対称性を得ることができ、構造上の影響を排除して測定試料Sの温度変化を捉えることができる。最後に、熱電対材料の平板160、170の外枠161、171およびつなぎ部分163、173を除去する。このようにして、センサユニット130を作製することができる。
【0067】
さらに、熱分析装置101は、炉体ユニット110とセンサユニット130とをネジ止めにより組み立てることで作製できる。図11は、熱分析装置101の組み立て工程を示す斜視図である。まず、2つのネジ191により炉体111に、センサ台114を固定する。そして、絶縁シート115をセンサ台114の上に配置し、センサユニット130を重ねて、2つのネジ192により固定する。このようにして、熱分析装置101を組み立てることができる。なお、上記の締結はネジにより行っているが、それ以外の締結手段を用いてもよい。
【0068】
また、上記の実施形態では、接合用のロウ材として金が用いられているが、銀等その他のロウ材であってもよい。その他のロウ材としては、金属層形成処理や接合金属の表面材に適したものが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る温度差出力回路のブロック図である(実施形態1)。
【図2】加減算回路を示す回路図である。
【図3】(a)スロープ調整を行わない場合に得られるDTA測定結果を示すグラフである。(b)スロープ調整を行った場合に得られるDTA測定結果を示すグラフである。
【図4】本発明に係る温度差出力回路のブロック図である(実施形態2)。
【図5】本発明に係る温度差出力回路のブロック図である(実施形態3)。
【図6】熱分析装置を模式的に示す断面図である(実施形態4)。
【図7】(a)センサユニットを示す平面図である。(b)センサユニットを示す正面図である。(c)センサユニットを示す底面図である。
【図8】(a)ベース板を示す平面図である。(b)ベース板を示す正面図である。(c)ベース板を示す底面図である。
【図9】試料載置側から見た多対熱電対を示す平面図である。
【図10】センサユニットの製造工程を示す斜視図である。
【図11】熱分析装置の組み立て工程を示す斜視図である。
【図12】従来の温度差出力回路のブロック図である。
【符号の説明】
【0070】
1、71、91 温度差出力回路
10 多対熱電対
10a 熱電対
10b 熱電対
10c 熱電対
10d 熱電対
20 測定試料用の温度検出回路
21、22、31、32、71、72、81、82 補償導線
24、34、44 増幅回路
27、37、47 A/D変換回路
30 標準試料用の温度検出回路
40 差引回路
41、42 引き出し線
45 加減算回路
46 加算回路
51、52 演算回路
53 可変抵抗(調整部)
60、61 グラフ
92、93 熱電対
101 熱分析装置
110 炉体ユニット
111 炉体
111a 試料室
112 ヒータ線
113 炉体カバー
114 センサ台
115 絶縁シート
130 センサユニット
131 ベース板(ベース部)
131a ネジ孔
131b、131c 溝
131e 内側に窪んだ側面
131f 端面
131d 平面領域
132 多対熱電対
132a、132b 熱電対素線
135、136 感熱板(感熱部)
140 出力回路
141 標準試料用熱電対
142、143 引き出し線
145 ベースライン補正回路
146 熱量演算回路
147 出力装置
160、170 平板
161 外枠
162 孔
163 つなぎ部分
k 特定の比率
A 熱的変化の無い範囲
Vd 温度差信号
Vda 増幅された温度差信号
Vr 標準試料の温度信号
Vra 増幅された標準試料の温度信号
C 屈曲部
R 標準試料
S 測定試料


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種の熱電対材料の熱電対素線を交互に直列接続し、1つおきの接点の集合のうち、一方を標準試料用の接点として標準試料の温度変化が伝わる位置に設置し、他方を測定試料用の接点として測定試料の温度変化が伝わる位置に設置した多対熱電対と、
前記標準試料の温度を検出する標準試料用の温度検出回路と、
前記多対熱電対および前記標準試料用の温度検出回路に接続され、前記多対熱電対の出力値から、前記標準試料用の温度検出回路の出力値に特定の比率を乗じた値を差し引く差引回路と、を備え、
ベースラインを補正して前記測定試料の温度と標準試料の温度との温度差を出力することを特徴とする温度差出力回路。
【請求項2】
前記標準試料用の温度検出回路は、前記多対熱電対の標準試料用の接点の一つにより温度を検出し出力することを特徴とする請求項1記載の温度差出力回路。
【請求項3】
前記標準試料用の温度検出回路は、前記標準試料の温度を検出する標準試料用の熱電対により構成されることを特徴とする請求項1記載の温度差出力回路。
【請求項4】
前記差引回路は、前記特定の比率を調整可能にする調整部を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の温度差出力回路。
【請求項5】
多対熱電対により測定された測定試料と標準試料との温度差を検出するとともに、前記標準試料の温度を検出するステップと、
前記検出された標準試料の温度の値に特定の比率を乗じるステップと、
前記検出された温度差から特定の比率を乗じた標準試料の温度を差し引くステップと、を含み、ベースラインを補正して前記測定試料の温度と標準試料の温度との温度差を出力することを特徴とする温度差出力方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−89475(P2008−89475A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272176(P2006−272176)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】