説明

温度測定素子、温度測定装置、基板処理装置及び電子デバイスの製造方法

【課題】近年の半導体の高集積化、また画像装置の高精細化に伴ない、基板上の絶対温度を正確に測れることが要請されている。本発明は、基板全面に亘る複数点で、絶対温度を正確に測れる温度測定素子、温度測定装置、基板処理装置及び電子デバイスの製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】基板、該基板の一方の側の一の面に位置する前記基板より大きな熱伝導率を有する電気的絶縁物である第一の膜、上記第一の膜の基板と反対側に位置する第一の熱電対金属及び前記第一の熱電対金属と接触する部分を有する第二の熱電対金属を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度測定素子、温度測定装置、基板処理装置及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置又は表示装置等の製造工程での基板温度測定においては、例えば非特許技術文献1に示されているように、基板に熱電対を埋め込んで作製されたプローブを用いて行われていた。
【0003】
また。特許文献1には、ガラス基板等の絶縁物基板上にパターン化された接触する異種の熱電対金属の構成をリソグフィ法を用いて作製し、該異種熱電対金属の接触を熱電対として使用して、基板の温度を測定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−10130号公開特許公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】工藤 康弘“センサー埋め込み型のワイヤレス・ウエーハ温度測定器を初展示” (平成21年6月8日検索)、インターネット <URL:http://techon.nikkeibp.co.jp/members/NMDNEWS/20031203/100856/?ST=print>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の半導体装置の高集積化、また画像装置の高精細化に伴ない、基板上の絶対温度を正確に測ることが要請されている。本発明は、基板全面に亘る複数点で、絶対温度を正確に測れる温度測定素子、温度測定装置、基板処理装置及び電子デバイスの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係わる温度測定素子は、基板、該基板の一方の側の一の面に位置する前記基板より大きな熱伝導率を有する電気的絶縁物である第一の膜、上記第一の膜の基板と反対側に位置する第一の熱電対金属及び前記第一の熱電対金属と接触する部分を有する第二の熱電対金属を有する構成とする。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の温度測定装置は、上記記載の第一の温度測定素子及び上記記載の第二の温度測定素子を有しており、前記第一の温度測定素子及び前記第二の温度測定素子の間で切り替え手段を有している構成とする。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係わる基板処理装置は、上記記載の温度測定装置を有する構成とする。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係わる電子デバイスの製造方法は、上記温度測定装置を使用して得た温度データを使用する工程を有する電子デバイスの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、基板全面に亘る複数点で、絶対温度を正確に測ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係わる温度測定素子の第一の実施例に関する概略構成図である。
【図2】本発明に係わる温度測定素子の第二の実施例に関する概略構成図である。
【図3】本発明に係わる基板測定素子の第一の実施例のうちの一の温度測定素子の製造工程に関する説明図である。
【図4】本発明に係わる基板測定素子の第二の実施例の製造工程に関する説明図である。
【図5】本発明に係わる温度測定素子を使用する温度測定装置に関する説明図である。
【図6】本発明に係わる温度測定素子を使用する他の温度測定装置に関する説明図である。
【図7】本発明に係わる温度測定装置を使用した基板処理装置に関する説明図である。
【図8】従来の温度測定素子に関する概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
従来の温度測定素子の1つとして、特許文献1に紹介されている図8に示すものがあった。図8において、100は熱電対部、1は例えばガラスからなる絶縁物の基板、3は例えばアルミニウムからなる第一の熱電対金属、4は例えばクロムからなる第二の熱電対金属である。
【0014】
このような構造は、成膜、レジストマスクの塗布、露光、現像及びエッチング等を所要回数繰り返す、いわゆるリソグラフィ技術によって作製される。
【0015】
このような構造なので、基板がガラス等の絶縁物でなく不純物がドープされた比抵抗の小さなSi等に適用すると、第一の熱電対金属3と第二の熱電対金属4とが実質上短絡状態となり、第一の熱電対金属3と第二の熱電対金属4の接触部で発生する熱起電力を測定できないという問題がある。
【0016】
また、熱電対金属が基板と直接接触している為、基板1がSiである場合には、熱電対金属がSi基板に熱拡散し基板を汚染する、あるいは製造処理装置を汚染し以降基板を汚染するという問題もある。
【0017】
また、上述の問題を解決するために、仮に第一の熱電対金属3と第二の熱電対金属4と基板1との間にSi酸化膜等の絶縁膜を位置させた場合には、それを横切って大きな熱量が流れる場合には、基板の温度と該絶縁物の基板と反対側では大きな温度差が生ずることとなる。
【0018】
更に説明すると、熱電対金属(3,4)と基板1との間に熱伝導率の小さい絶縁物が存在すると、そこで熱の流れが絞られる。その結果、一定の熱量が定常的に流れるときには、絶縁物の上面と下面の間で大きな温度差が生じる結果となる。その結果、その基板自体の温度自体も小さな熱伝導率の絶縁部の存在の為に変化してしまう。
【0019】
基板はホルダの上に載置されており、通常は該ホルダにはヒータが埋め込まれているか、又は冷媒を循環させる流路を有しており、温度制御できる構成となっている。
【0020】
しかし、前記絶縁物の熱伝導率が小さいと、直接温度を制御できるホルダの温度と成膜又はエッチング等のプロセスが行われる前記基板の絶縁膜と反対側の温度とが大きく離れてしまうという問題も発生する。
【0021】
例えば、レジスト工程では0.1度の温度が変化すると1.5nm程度の誤差が出る(非特許文献1)といわれている。この事実に象徴的に表れているが、半導体装置の高集積化又は画像表示装置の高精細化が更に進むにつれて、基板の絶対温度を正確に測定し、それに基づいて基板の温度を正確に制御することが重要な課題となっている。
【0022】
ここで、絶対温度とは、異なった位置の温度差ではなく、K、°C、°F等の単位は問わないが、その位置の温度自体をいう。この用語の使い方は、この明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書を通して、そうでない旨の断りが無い限り、一貫するものとする。
【実施例1】
【0023】
以下、図面に基づいて本発明を更に説明する。
【0024】
図1の、(a)から(c)はいずれも温度測定素子からの配線が基板に対して熱電対金属が位置する側と同一の側に配線されている態様の発明を表している。
【0025】
図1(a)は、本発明に係わる温度測定素子100を表している。1はSi基板、2はAlN等の高熱伝導率の電気的絶縁物質よりなる下地膜、3は第一の熱電対金属、4は第二の熱電対金属、5はTi等の高熱伝導率を有する金属又はAlN等の高熱伝導率を有する電気的絶縁物質よりなるキャップ層である。第二の熱電対金属4が直接被測定対象と接触するのを防ぐ機能がある。6は例えば銅等からなる金属膜層で、ここで光を反射して輻射の影響によって測定誤差が生じるのを抑制する働きがある。7は電気的絶縁膜である。9は、接続端子である。
図1(b)が、図1(a)と異なる点は、温度測定素子の配線材料として、第一の熱電対金属3及び第二の熱電対金属4ではなく、通常の半導体装置のように配線専用材料8が使用されていることである。このような材料としては、例えば銅を挙げることが出来る。
この配線8は、 図1(a)においてはAlN膜2の上に第一の熱電対金属3及び第二の熱電対金属4で配線を形成したが、それに変えて配線専用材料で配線8を形成するものである。
図1(c)で示した実施例は、図1(a)で示した実施例に比較して、第一の熱電対金属3及び第二の熱電対金属4を素子内配線材料として使用して点は同一であるが、それらの配線を多層に行っていることである。
配線を多層にする技術は、半導体製造の技術の分野では周知技術であるので、ここでは説明を省略する。
尚、第一に熱電対金属3及び第二の熱電対金属4の組み合わせとしては、白金と白金・ロジウム合金、クロメルとアルメルあるいは銅とコンスタンタン等の組み合わせを挙げることが出来る。
また、図2には、本発明の第二の実施例を示す。本第二の実施例においては、シリコン基板1の表面側と裏面側を貫通するビア(貫通孔)22を形成し、第一の熱電極構成金属3と第二の熱電対構成金属4の接触部がつくる熱起電力の測定端子をシリコン基板1の裏面側に取り出している。ここで、26は第一の熱電対金属3及び第ニの熱電対金属4の間で生じる熱起電力を取り出す為にビア22に埋め込まれている埋め込み金属である。
【0026】
これらの素子構造の製造方法は、半導体の技術分野で普通に用いられる方法であるリソグラフィ技術に拠っている。
【0027】
以下に、図1(a)で示した実施例について、図3(a)〜(i)を用いて簡単にその製造方法を概説する。シリコン基板1上に窒化アルミニウム膜2を反応性スパッタ法などにより0.3マイクロメータ堆積する。次に熱電対構成金属の一つである、例えばコンスタンタン3をスパッタ法により0.5マイクロメータの厚さ堆積する。このコンスタンタン3をリソグラフィ法とドライエッチング法により加工し、配線形状の第一の熱電対金属3を得る。コンスタンタンよりなる配線形状の第一の熱電対金属3形成後、もう一つの熱電対構成金属、例えば銅によりなる配線形状の第二の熱電対金属配線4を得るのにリフトオフ法を使用する。即ち、膜厚1マイクロメータのフォトレジスト40を塗布し、リソグラフィ法により4a(図1(a)参照)と同一平面寸法の開口41をフォトレジストに設ける。引き続き図3(b)のように、例えば銅の第二の熱電対金属4を全面に真空蒸着法で0.5マイクロメータの厚さ被着する。この後、フォトレジストを除去すれば図3(c)のように銅配線4aが残存する。第一の熱電対金属3からなる配線と第二の熱電対金属4からなる配線を形成後、窒化アルミニウム7aをスパッタ法などで0.8マイクロメータ被着する。この窒化アルミニウム層7aにフォトリソグラフィ法とドライエッチング法により図1(d)のビア8を開孔する。ビア8を開孔後、該ビアを含む部分に銅を2マイクロメータ被着し、フォトリソグラフィ法とドライエッチング法により図3(e)4bの第二の熱電対金属である銅のバンプ形状を形成する。バンプ形状の銅領域4bを形成後チタンを0.1マイクロメータの厚さスパッタ被着しフォトリソグラフィ法とドライエッチング法によりTiよりなるキャップ層5でバンプ形状の銅4bを覆う。この後、窒化アルミニウム7bを1.0マイクロメータ堆積し図3(f)を得る。次に、図3(f)の構造でパンプ形状の第二の熱電対金属4bの上の窒化アルミニウムのみ0.5マイクロメータの厚さをCMPで削り、更に0.5マイクロメータの厚さをエッチバックしてキャップ層5上の窒化アルミミウムのみを除去する。次いで、フォトリソグラフィとドライエッチング法の工程により窒化アルミニウム7aと7bにビアを設ける。最後に図3(i)のようにアルミニウムによる接続端子9を取り出し、さらに0.1マイクロメータのチタンをスパッタ成膜し、輻射対策膜である金属膜6を設け完成をみる。
【0028】
図4(a)〜(j)に図2記載の本発明の第二の実施例の温度測定素子の製造方法を概説する。まず、図4(a)の洗浄等を施したクリーンなSiの基板1を準備する。次に、前記基板に反応性スパッタ法により、Alをターゲットとして使用して且つ雰囲気ガスに窒素を導入し、シリコン基板の表面側にAlN膜を0.5マイクロメータの厚さに形成し、AlNからなる下地層2を形成する。また、シリコン基板裏面にも膜厚0.5マイクロメータのAlNからなる裏面層21を形成する。
【0029】
次に図4(b)の裏面側のAlNよりなる裏面層21上に、フォトレジストを塗布し、ビア(貫通孔)22のパターンを焼付け現像する。その後、該パターンに形成されたレジスト使用して、ドライエッチングを行い、ビア22を開孔する。フォトレジストを除去後熱酸化を行いビア側面に熱シリコン酸化膜23を形成する。
次にシリコン基板表面側のAlNよりなる下地層2をリソグラフィ工程とドライエッチング法によりパターン化し、深さ0.3マイクロメータの溝24を形成する(図4(c))。
【0030】
図4(d)では下地層2上に熱電対構成金属、例えば白金―10%ロジウムをスパッタ法などで0.6マイクロメータ被着し、化学的機械研磨CMP法を使用することにより、溝24中に第一の熱電対金属3として白金―10%ロジウムを残存させる。
【0031】
図4(e)は、下地層2をリソグラフィ工程とドライエッチング法によりパターン化し、深さ0.3マイクロメータの溝25を形成したものである。
【0032】
図4(f)は、図3(e)の構造上にもう一つの第二の熱電対金属4、例えば白金を溝25の深さより厚く被着したものである。
【0033】
図4(g)で前記の第二の熱電対金属4をフォトリソグラフィ工程とドライエッチングにより加工し、ウエーハ表面側全面に膜厚0.1マイクロメータのAlNをキャップ層5として形成する。
【0034】
次いで図4(h)のように、シリコン基板裏面側のAlNよりなる裏面膜21をマスクとしてウエーハ全面をエッチバックし、第一の熱電対金属3の白金―10%ロジウム層と第二の熱電対金属4の白金層のそれぞれの底部にビア(貫通孔)22が届くまで開孔する。
【0035】
図4(h)のビアの開孔後CVD法でタングステンを膜厚1マイクロメータ被着し、CMP法で裏面側の埋め込み金属26を除去することにより、ビア(貫通孔)22内にのタングステンが残存する図4(i)の構造を得る。
【0036】
最後に、図4(j)のように白金からなる第二の熱電対金属4と白金−10%ロジウムからなる第一に熱電対金属3に対応する接続端子9aと9bをフォトリソグラフィ法とドライエッチング法で形成し、図2記載の本発明の第二の実施例の熱電対素子を得る。
【0037】
ここで、重要な点は、最低限熱電対金属(3,4)と基板1との間の層の電気的絶縁膜である下地膜2は基板1より大きな熱伝導率を有することである。このような構成にすることにより発明を実施するための形態の最初の部分で述べた熱の流れの絞込みの影響によりホルダ部と温度測定対象物との間での温度の乖離を小さくすることが出来る。
【0038】
具体的に検討すると、基板1がSiの場合、Siの熱伝導率は大きく168Wm−1−1であるので、それより熱伝導率の大きな材料としてはAlN(熱伝導率;200Wm−1−1)がある。また、シリコンより熱伝導率の大きい絶縁物として窒化ホウ素BN、シリコンカーバイトSiC、酸化ベリリウムBeO等も候補である。また、理想的にはダイヤモンド(熱伝導率は約1000Wm−1−1以上)がある。そして、人工的に作製されるCVDダイヤモンドも本発明が必要としている特性を有している。
【0039】
一方、基板1としてガラスを使用した場合には、ガラスの主たる素材であるSi酸化膜の熱伝導率は1.4Wm−1−1であるので、絶縁膜である下地膜2としては前述の熱伝導率の大きい電気的絶縁物の他、酸化アルミニウム(熱伝導率:21Wm−1−1)も候補となる。
【0040】
熱電対金属の基板と反対側に位置する絶縁膜7は、理想的には熱の流れの絞込みの影響及びホルダと温度測定対象物との間の温度の乖離を小さくする観点からは、上記で説明したように熱伝導率の大きなAlN等の熱伝導率の大きな物質を使うのが理想である。
【0041】
しかし、下地膜2と温度測定対象物との間には配線9及び熱電対金属(3,4)等の熱伝導率の大きな物質があり、それらを介してかなりの熱量が移動すると考えられる。従って、絶縁核7の熱伝導率は小さいことは必須事項ではない。
【0042】
また、熱の流れの絞込みの影響及びホルダと温度測定対象物との間の温度の乖離を小さくする観点からは、基板1の材料も大きな検討事項である。先ほどから説明しているように、Si基板はその大きな熱伝導率、更に半導体の製造に関して確立しているSiの加工技術であるリソグラフィ技術の適用が出来る点で望ましい基板材料である。
【0043】
以下で、本発明に係わる温度測定素子を使用した温度測定装置について説明する。
【0044】
本発明に係わる温度測定素子を使用した温度測定装置について説明する。ここで注意したいのは、異なる二つの熱電対金属とこれに対応する外部接続端子を結ぶ配線は熱電対金属と異なる材料で良いが、少なくとも電圧計への最終端は対応する熱電対金属となっている必要があることである。具体的には熱電対金属が例えば白金と白金・ロジウムの場合、これらの金属は高価であり最終端子までは銅線等の安価な配線材料が通常用いられる。この様な場合、最終端部の金属は対応する熱電対金属、即ち白金又は白金・ロジウムにする必要がある。何故ならば、中間に入れた配線材料例えば銅と、白金あるいは白金・ロジウム間でも熱起電力が発生してしまい、白金―白金・ロジウム間でのゼーベック効果による熱起電力を測定できなくなるからである。しかし、それぞれの配線材料部の両端が同一の熱電対金属に繋がっていて且つ両接続部が等温度の雰囲気中にあれば、例えば室温中にあれば、配線材料部の両端部と熱電対金属間で発生する熱起電力は同一で、打ち消しあう方向に発生する。その結果、最終端間で白金―白金・ロジウムのゼーベック効果によって決まる熱起電力が測定可能となる。
【0045】
第二の実施例で記載したようなビアを介して、電圧を基板裏面より取り出せる形態の素子については、温度測定位置に温度測定素子を作製し、温度測定対象物の裏面又は表面に接触させて使用する形態が考えられる。
【0046】
温度測定装置としては図5に示すものが考えられる。図5(a)は温度測定装置を説明する為の断面図、図5(b)は平面図である。
【0047】
ここで、500は本発明の温度測定素子をダイシングしたもの、510はAlN等の高熱伝導率を有する板材、520は該板材510に作りこまれている段差を有する開口である。
【0048】
段差を有する開口520に、段差になっている小さな開口の寸法より大きくダイシングした温度測定素子500を、大きな開口の内側に落とし込んで位置決めして使用する。
【0049】
本温度測定装置のメリットは、温度測定対象物大きさに係われず対応できること及び板材の選択により高強度の温度測定システムを構成できる点等がある。
【0050】
次に、本発明に係わる温度測定素子を使用した他の温度測定装置について図6を使用して説明する。
【0051】
図6(a)において、600lは12インチシリコンウェーハで、12インチシリコンウェーハ6001の上に9個の本発明に係わる温度測定素子601が形成されている。ここで、( )内の数字は、最初のものは下から数えた順番(以降「行数」と呼ぶこととする)、次の数字は左から数えた順番(以降「列数」と呼ぶこととする)を示す。以降、この数字の組をアドレスと呼ぶこともある。
【0052】
温度測定素子601が作製されている600l上には、温度測定対象物である600s(点線で示してある)が載置されている。
【0053】
温度測定対象物600sの各点の温度を測定する為には、各温度測定素子の出力を外部に取り出さなければならない。図5(a)の602Xは、各温度測定素子の第一の熱電対金属の出力端子を配線接続し、外部接続端子として一箇所に集めたものである。同様に、602Yは第二の熱電対金属の出力端子を配線接続し、外部接続端子として一箇所に集めたものである。
【0054】
また、603Yは複数個の第二の熱電対金属の外部出力端子の1個を選択する回路である。また、603Xは複数個の第一の熱電対金属の外部出力端子の1個を選択する回路である。
【0055】
図6(b)は、図6(a)の電気的接続を模式的に示したものである。A11〜A33は、図6(a)で説明した熱接触部配置位置(アドレス)に対応した温度測定素子の第二の熱電対金属配線610につながる外部出力端子を表示する。
【0056】
同様にB11〜B33は第一の熱電対金属配線611につながる外部出力端子を表示するものである。A11〜A33の外部出力端子は603Yのスイッチング回路でこのうちの一つの外部出力端子が選択され、最終出力端子604Yに出力される。同様にB11〜B33の外部出力端子はスイッチング回路603Xでこのうちの一つの外部測定端子が選択され最終出力端子604Xに出力される。
【0057】
602Y及び603Y並びに602X及び603Xの組は、いわゆるマルチプレクサ及びデマルチプレクサの組を構成すると考えることも出来る。
【0058】
温度測定対象物上の測定点の選択は、出力を読む温度測定素子を選択することにより行われる。この選択は、コントローラ620により、信号線612及び613より選択信号をスイッチ603に送り、測定したい温度測定素子が導通するようにスイッチ603が作動することにより行われる。そして、選択した温度測定素子の第一の熱電対金属と第二の熱電対金属間の電位差を測定する。
【0059】
そのようにして得られた電位差から該温度測定素子の位置する場所の温度を求めることが出来る。そして、コントローラにより温度測定素子を切り替えることによって、一定範囲の温度マップを作成することとも出来る。
【0060】
次に本発明の温度測定素子を使用した物を生産する方法に関する説明をする。
【0061】
図7は、本発明の温度測定素子を使用した基板処理装置の説明図である。700は基板処理装置、701は内部を真空に出来る真空容器、702は電極、703は電極702を真空容器701から電気絶縁する電気的絶縁材、704は電極702に対してRF電力を印加するRF電源、705は真空容器701内にプロセスガスを導入するガス導入手段、706は温度測定対象物である基板、707は本発明の温度測定素子からなる温度測定装置、708は基板ホルダ、709は本発明の温度測定素子からの取り出し配線をまとめてホルダの外部に取り出すための孔、710は該取り出し配線を真空容器701の外に取り出すためのフィールドスルー、711は排気口、712がゲートバルブそして713は本発明の温度測定素子を制御し且つ出力信号を受けるコンローラである。ここで、排気孔711に繋がれているターボ分子ポンプ、クライオポンプあるいはドライポンプ等の真空排気手段は描かれていない。
【0062】
本基板処理装置600を使用するためには、不図示の搬送手段により基板706を、ホルダ708上に載置されている本発明の温度測定装置707の上に載置する。次いで、不図示の真空排気手段により真空容器701内を所定の圧力に排気する。
【0063】
次いで、ガス導入手段705より所望のプロセスガスを導入する。そしてRF電源704を作動させて電極702にパワーを印加する。これにより、ガス導入手段705より導入されたプロセスガスがプラズマ化され、イオン、中性活性種等が生成される。
【0064】
例えば上記処理がドライエッチングである場合は、上述のイオン・中性活性種等が基板706上のマスクで覆われていない部分に作用して、選択的にエッチングが進む。
【0065】
この際、本発明の温度測定素子よりなる温度測定装置707を使用して、コントローラ713により指定した温度測定素子の出力電圧より当該部分の温度が分る。また、所定の面に関して温度マップが必要な場合は、コントローラ713により温度測定素子をスキャンしてやれば良い。
【0066】
上記のような本発明の温度測定素子の使用により、その場且つその時に測定したい位置の温度を知ることが出来る。その結果、冒頭で説明したように、たとえ設計ルールが数十nmという微細なデバイスの製造工程において、0.1度の温度差で1.5nmの誤差が生じると言われているレジスト工程においても、十分な精度で加工する為のデータ得ることが出来る。
【0067】
そのようにして、各プロセス条件に対する基板の各点での温度を知ることが出来る。そして、このようにして得られたデータを使用して、各プロセス工程の最適化を容易に行うことが出来る。
【0068】
上記においてはエッチング工程について説明をしたが、正確な温度の測定が有するあらゆる工程に適用が可能である。製品に関しては、DRAM、MRAM等の半導体装置、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL表示装置等の電子表示装置、ハードディスク、ハードディスクヘッド等の電子部品等の電子デバイスに関して適用可能である。
【0069】
また、工程に関しては、既に説明したエッチング工程に限らず、スパッリング又はCVD等の成膜工程、前処理工程或いは後処理工程等の基板のその場・その時の温度を知る必要があるあらゆる工程に適用可能である。
【0070】
実施例を通じて、基板の上に直接高熱伝導率の電気的絶縁膜を形成したが、なんらこの形態の限定される必要はない。例えば、基板の上にTi等の金属膜を一旦形成して、その上に高熱伝導率の電気的絶縁膜を形成しても良い。
【0071】
以上、本発明について実施例に基づいて説明して来たが、本発明は何らかかる実施の形態に拘束されものではない。
【符号の説明】
【0072】
1:基板
2:下地膜
3:第一の熱電対金属
4:第二の熱電対金属
5:キャップ層
6:金属膜
7:電気的絶縁膜
8:配線
9:接続端子
21:裏面膜
22: ビア(貫通孔)
23:シリコン酸化膜
24、25:溝
26:埋め込み金属
100:温度測定素子
500:ダイシングした温度測定素子
510:板材
520:段差を有する開口
600:シリコンウェーハ
601:温度測定素子
602:熱電対金属の外部出力端子の集合
603:熱電対金属の外部出力端子の集合から一個を選択する回路
604:最終出力端子
610:第二の熱電対金属配線
611:第一の熱電対金属配線
612、613:信号線
620:コントローラ
700:基板処理装置
701:真空容器
702:電極
703:電気的絶縁材
704:RF電源
705:ガス導入手段
706:基板
707:温度測定装置
708:基板ホルダ
709:孔
710:フィールドスルー
711:排気口
712:ゲートバルブ
713:コントローラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、
該基板の一方の側の一の面に位置する、前記基板より大きな熱伝導率を有する電気的絶縁物である第一の膜、
上記第一の膜の基板と反対側に位置する第一の熱電対金属及び
前記第一の熱電対金属と接触する部分を有する第二の熱電対金属を有すること特徴とする温度測定素子。
【請求項2】
前記第一の熱電対金属及び第二の熱電対金属はパターンニングされていることを特徴とする請求項1に記載の温度測定素子。
【請求項3】
前記パターニングはリソグラフィ技術によることを特徴とする請求項2に記載の温度測定素子。
【請求項4】
前記第一の熱電対金属及び第二の熱電対金属は、前記第一の膜と反対側に基板より大きな熱伝導率を有する電気的絶縁膜を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の温度測定素子。
【請求項5】
前記温度測定素子は、前記基板を貫く貫通孔を有しており、該貫通孔に埋設された導電物を介して第一の熱電対構成金属及び第二の熱電対金属が配線されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の温度測定素子。
【請求項6】
第一の請求項1乃至5のいずれか一項に記載の第一の温度測定素子及び請求項1乃至5のいずれか一項に記載の第二の温度測定素子を有しており、前記第一の温度測定素子及び前記第二の温度測定素子の間で切り替え手段を有していることを特徴する温度測定装置。
【請求項7】
前記一の面は、前記基板自身の面であることを特徴とする請求項6に記載の温度測定装置
【請求項8】
請求項6又は7に記載の温度測定装置を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
請求項6又は7に記載の温度測定装置を使用して得た温度データを使用する工程を有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−64513(P2011−64513A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213879(P2009−213879)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】