説明

温度補償発振回路の温度補償方法、温度補償発振回路、圧電デバイスおよび電子機器

【課題】 消費電力の少ない温度補償発振回路の温度補償方法、温度補償発振回路、圧電デバイスおよび電子機器を提供する。
【解決手段】 温度補償発振回路は、圧電振動子の周囲温度に応じて補正値データを出力し、この補正値データに基づいて前記圧電振動子の周波数温度特性を温度補償する温度補償発振回路であって、前記補正値データを入力して、そのまま出力する回路と、第1の前記補正値データと第2の前記補正値データとを入力して、これらの補正値データ間を内挿する中間値データを求めて出力する回路と、前記補正値データまたは前記中間値データを入力して保持し、前記圧電振動子の温度時定数にあわせて保持しているデータを遅延させて出力する手段と、を備えた構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度補償発振回路の温度補償方法、温度補償発振回路、圧電デバイスおよび電子機器に係り、特にディジタル温度補償方式の発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術に係る温度補償発振回路1は、図9に示すように、圧電振動子2が接続された発振回路3を備えている。発振回路3には、圧電振動子2の発振周波数を調整する容量アレイが設けられており、容量アレイの容量値を変えることにより発振周波数を変えている。また温度補償発振回路1は、圧電振動子2の周囲温度を測定する温度センサ4を備えている。温度センサ4は、当該測定結果をアナログ信号でアナログ/ディジタル(A/D)変換器5に出力し、A/D変換器5は、アナログ信号をディジタル信号に変換して記憶部6に出力するものである。
【0003】
記憶部6には、補正値データが記憶されている。この補正値データは、温度補償発振回路1から出力される発振信号を一定の周波数にするために、温度センサ4で測定された温度に対応した容量値に容量アレイを設定するデータである。したがって温度センサ4で測定される圧電振動子2の温度と、補正値データとは1対1に対応付けられている。
【0004】
この記憶部6は、A/D変換器5から出力されたディジタル信号を入力すると、その温度に対応した補正値データを読み出して発振回路3に出力する。発振回路3は、補正値データを入力すると、この補正値データに基づいた容量値になるよう容量アレイを設定し、圧電振動子2の発振周波数を調整して、一定の周波数に調整された発振信号を出力する。このようにして、温度補償発振回路1は、圧電振動子2の周波数温度特性を温度補償している。
【0005】
そして温度補償圧電発振回路について開示された文献としては、特許文献1が挙げられる。特許文献1に開示された発振回路(発振器)は、補正テーブル圧縮のために中間値補間によるデータ生成を行っている。
【特許文献1】特開平8−130411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した温度補償発振回路では、温度センサを動作させてディジタル信号を記憶部に出力し、記憶部から補正値データを読み出す度に電力が消費される。また温度補償発振回路を電子機器に搭載した場合、電子機器がスリープモード(省電力モード)中であっても温度補償発振回路を動作させたいときがあるが、温度補償発振回路を動作させ続けると電力が消費されてしまい、また電子機器が電池で動作しているときには電池が早く消耗されてしまう。
【0007】
そして温度補償発振回路の発振回路に圧電振動子を接続してリアルタイムクロックとして構成した場合、温度補償発振回路は、バックアップ中のスリープクロックとして用いられることが多い。しかしながら、温度補償発振回路の温度センサやA/D変換器、記憶部が動作すると、温度補償機能の付いていない低周波(例えば、32.768kHz)発振回路に比べて、定常発振時消費電流が300〜400倍となり、多くの電力を消費するので、バックアップ中に温度センサ等を頻繁に動作させるのは好ましくない。
【0008】
このため温度センサやA/D変換器、記憶部の動作を間欠で行い、平均の消費電流を抑える方法がとられる場合がある。しかしながら、温度センサやA/D変換器、記憶部の間欠動作間隔を長くとると、温度変化に対する追従性が低下し、一回の温度補正量の増大につながる。そして温度補正量が大きくなってしまうことにより、温度補正の前と後とで、温度補償発振回路の出力周波数が大きく変化してしまうことがあった。
【0009】
また圧電振動子は、圧電振動片をパッケージ等の内部に封止した構成であるので、圧電発振器の周囲温度が変化しても圧電振動片の温度がその周囲温度に到達するまでに時間がかかる。同様に、温度センサは、パッケージ等の内部に収容されたICチップ内に形成された回路素子であったり、ICチップに接続された外付け部品であるので、圧電発振器の周囲温度が変化しても温度センサの温度がその周囲温度に到達するまでに時間がかかる。したがって、温度センサの温度と圧電振動子の温度との間で、周囲温度変化に対する時定数(温度時定数)に差がある圧電発振器では、正確な温度補償を行うことができないという問題が生じていた。
本発明は、消費電力の少ない温度補償発振回路の温度補償方法、温度補償発振回路、圧電デバイスおよび電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る温度補償発振回路の温度補償方法は、間欠的に温度測定部で圧電振動子の周囲温度を測定して、予め記憶されている補正値データから、測定された温度に対応した前記補正値データを求め、前記補正値データに基づいて温度測定時から所定時間遅延させて前記圧電振動子の周波数温度特性を温度補償するための手段を調整するとともに、得られた最近2回の前記補正値データから、この間を内挿する中間値データを求め、前記中間値データに基づいて圧電振動子の周波数温度特性を温度補償するための前記手段を調整する、ことを特徴としている。このような方法により温度補償発振回路を動作させると、周囲温度の変化に対する温度補償の追従性がよくなるので、1回の温度補償により温度を変化させる量を小さくすことができる。したがって高精度の温度補償を行うことができ、低消費電力化をはかることができる。
【0011】
また温度補償するための前記手段は、前記補正値データのみに基づいて調整されることを特徴としている。中間値データを求めないので、中間値データを求めるときに必要な電力を削減することができる。したがって温度補償発振回路を、より低消費電力化することができる。
【0012】
また本発明に係る温度補償発振回路は、圧電振動子の周囲温度に応じて補正値データを出力し、この補正値データに基づいて前記圧電振動子の周波数温度特性を温度補償する温度補償発振回路であって、前記補正値データを入力して、そのまま出力する回路と、第1の前記補正値データと第2の前記補正値データとを入力して、これらの補正値データ間を内挿する中間値データを求めて出力する回路と、前記補正値データまたは前記中間値データを入力して保持し、前記圧電振動子の温度時定数にあわせて保持しているデータを遅延させて出力する手段と、を備えたことを特徴としている。前記中間値データは、第1の前記補正値データと第2の前記補正値データとの間に出力される構成である。
【0013】
これにより圧電振動子の周囲温度を測定したときの温度に基づいて補正値データを求めて温度補償することができるとともに、圧電振動子の周囲温度を測定する間においても、この間を内挿補間する中間値データを求めて補間温度補償することができる。また圧電振動子は、温度センサが温度測定したときの温度に到達するまでに時間がかかる。このため、圧電振動子の温度時定数にあわせて補正値データまたは中間値データを出力しているので、温度センサが温度を測定したときの温度に圧電振動子が到達したときに温度補償することができる。したがって正確な温度補償を行うことができる。
【0014】
また前記中間値データは、1つ以上出力されることを特徴としている。補正値データの間に中間値データを出力すれば、温度補償を行う回数が増えるので、周囲温度の変化に対する温度補償の追従性をよくすることができ、1回の温度補償により温度を変化させる量を小さくすることができる。
【0015】
また圧電振動子の周囲温度を測定した測定データをディジタル信号で出力する温度測定部と、前記測定データを入力し、前記測定データに対応した予め記憶されている補正値データを出力する記憶部と、前記補正値データを入力して、前記補正値データまたは中間値データを出力する補正値決定回路と、入力された前記補正値データまたは前記中間値データに応じて温度補償された発振信号を出力する、前記圧電振動子に接続された発振回路と、を備え、前記補正値決定回路は、前記記憶部からの前記補正値データを入力して保持する第1記憶部と、前記第1記憶部の後段に接続され、前記第1記憶部から出力された前記補正値データを入力して一旦保持する第2記憶部と、前記第1記憶部および前記第2記憶部の後段に接続され、前記第1記憶部から出力された前記補正値データおよび前記第2記憶部から出力された前記補正値データを入力して中間値データを求める中間値算出手段と、前記第1記憶部および前記中間値算出手段の後段に接続され、前記補正値データと前記中間値データとを入力し、いずれか一方を出力する選択手段と、前記選択手段の後段に接続され、選択手段から出力されたデータを保持し、前記圧電振動子の温度時定数にあわせて保持している前記データを遅延させて出力する第3記憶部と、を備えた、ことを特徴としている。
【0016】
温度測定部は、間欠的に温度測定をしている。そして温度補償発振回路は、温度測定部で温度測定したときの温度に基づいて補正値データを求めて温度補償することができる。また温度補償発振回路は、温度測定部が温度測定を行っていない間は、中間値算出手段で中間値データを求めて温度補償することができる。すなわち温度補償発振回路は、補正値データに基づいて温度補償する間を、中間値データによって補間温度補償することができる。したがって周囲温度の変化に対する温度補償の追従性をよくすることができ、1回の温度補償により温度を変化させる量を小さくできるので、低消費電力化を図ることができる。さらに圧電振動子の温度時定数にあわせて補正値データまたは中間値データを出力すれば、温度測定部で温度測定をしたときの温度に圧電振動子が到達したときに温度補償を行うことができる。したがって正確な温度補償を行うことができる。
【0017】
また上述した温度補償発振回路に、少なくとも時計機能を備えた計時回路を接続したことを特徴としている。これによりリアルタイムクロックを構成することが可能になる。そしてリアルタイムクロックとした場合でも、上述した特徴を有する温度補償発振回路を備えているので、間欠的に温度補償を行うことができ、電力の消費量を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明に係る温度補償発振回路の温度補償方法、温度補償発振回路、圧電デバイスおよび電子機器の最良の実施形態について説明する。まず第1の実施形態について説明する。図1は補正値決定回路の概略説明図である。図2は温度補償発振回路を説明するブロック図である。温度補償発振回路10は、温度測定部12、記憶部18、補正値決定回路30および圧電振動子20が接続された発振回路22を備えている。
【0019】
図2に示される補正値決定回路30は、記憶部18から補正値データを入力して、そのまま出力する回路(補正値データ出力回路)と、記憶部18から入力した第1の補正値データ、および記憶部18から新たに入力した第2の補正値データとを用いて中間値データを算出し、この中間値データを出力する回路である中間値データ出力回路(図示せず)とを備えている。また補正値決定回路30は、前記補正値データ出力回路から出力される補正値データ、または前記中間値データ出力回路から出力される中間値データを入力して保持するとともに、圧電振動子20の温度時定数にあわせて保持しているデータを遅延させて出力する手段とを備えている。
【0020】
具体的には、図1に示される補正値決定回路30は、第1記憶部32、第2記憶部34、中間値算出手段36、選択手段38、第3記憶部40および制御手段42を備えている。第1記憶部32は、記憶部18から補正値データを入力して、これを次の補正値データが入力されるまで保持するものである。第2記憶部34は、第1記憶部32の後段に接続され、第1記憶部32から出力された補正値データを入力して、次の補正値データが入力されるまで一旦保持するものである。中間値算出手段36は、第1記憶部32および第2記憶部34の後段に接続され、第1記憶部32から出力された補正値データおよび第2記憶部34から出力された次の補正値データを入力して中間値データを求めるものである。選択手段38は、第1記憶部32および中間値算出手段36の後段に接続され、第1記憶部32からの補正値データと中間値算出手段36からの中間値データとを入力し、いずれか一方を出力するものである。そして第1記憶部32および選択手段38が前記補正値データ出力回路を構成している。また第2記憶部34、中間値算出手段36および選択手段38が前記中間値データ出力回路を構成している。第3記憶部40は、選択手段38の後段に接続され、選択手段38から出力された補正値データまたは中間値データを保持し、圧電振動子20の温度時定数にあわせて保持しているデータを遅延させて出力するものである。
【0021】
また補正値決定回路30は、制御手段42を備えており、この制御手段42は遅延手段44を有している。制御手段42は、外部から入力される制御信号に基づいて選択手段38に選択信号を出力するとともに、第3記憶部40に遅延信号を出力する。具体的には、制御手段42は、選択信号を選択手段38に出力して、選択手段38で補正値データおよび中間値データのいずれか一方のデータを選択させるものである。また制御手段42は、遅延手段44に設定されている圧電振動子20の温度時定数にあわせた遅延時間を示す遅延信号を第3記憶部40に出力して、第3記憶部40で保持している補正値データまたは中間値データを圧電振動子20の温度時定数にあわせて遅延させて出力させるものである。
【0022】
そして図2に示される圧電振動子20は、所定の周波数で発振するものであり、例えば音叉型圧電振動子やATカット等の圧電振動子、弾性表面波共振子等であればよい。この圧電振動子20は、圧電基板に電極が設けられてなる圧電振動片が前記パッケージ内に気密封止されたものである。このため前記圧電振動片は、パッケージ内に収められて、気密封止されているので、圧電振動子20の周囲温度が変化してもこの温度変化に直ぐに追従することがなく、ある時間を置いて温度が変化する。すなわち圧電振動子20は、温度時定数を有している。
【0023】
また図2に示される発振回路22は、圧電振動子20を発振させるものである。この発振回路22は、容量アレイや可変容量ダイオード等の周波数調整素子を備えている。前記周波数調整素子は、補正値データや中間値データに応じて素子値(容量値)を変化させて圧電振動子20の発振周波数を調整するものである。すなわち前記周波数調整素子は、圧電振動子の周波数温度特性を温度補償するための手段である。そして前記容量アレイは、複数のコンデンサが並列接続されており、各コンデンサに接続されたスイッチを補正値データや中間値データに応じてON/OFF制御して、容量値を変化させるものである。
【0024】
図2に示される温度測定部12は、温度センサ14およびアナログ/ディジタル(A/D)変換器16を備えている。温度センサ14は、圧電振動子20の周囲温度を測定し、この測定結果をアナログ信号で出力するものである。またA/D変換器16は、温度センサ14から入力したアナログ信号をディジタル信号に変換し、記憶部18に出力するものである。記憶部18には、補正値データが予め記憶されており、この補正値データの中から入力されたディジタル信号に応じた補正値データが出力される。補正値データは、温度と1対1に対応させてあり、このデータに基づいて前記周波数調整素子の素子値を調整すると発振信号の周波数が調整され、圧電振動子20の周波数温度特性が温度補償される。
【0025】
次に、温度補償発振回路10の動作について説明する。図3は温度補償のタイミングを説明する図である。まず温度補償発振回路10は、温度センサ14で圧電振動子20の周囲温度を測定する(図3に示す黒丸A)。この測定結果をアナログ信号でA/D変換器16に出力する。A/D変換器16は、アナログ信号をディジタル信号に変換して記憶部18に出力する。すなわち温度測定部12は、圧電振動子20の周囲温度を測定した測定データをディジタル信号で出力する。記憶部18は、ディジタル信号を入力すると、予め記憶されている補正値データの中から、入力されたディジタル信号に対応した補正値データを読み出して補正値決定回路30に出力する。
【0026】
この補正値データは、補正値決定回路30の第1記憶部32に入力され、第1記憶部32に一旦記憶保持されるとともに、選択手段38と第2記憶部34に出力される。第2記憶部34は、第1記憶部32から入力された補正値データを一旦記憶保持する。また選択手段38は、制御手段42から出力された選択信号によって補正値データを選択するよう設定される。そして選択手段38で選択された補正値データは、第3記憶部40に出力される。
【0027】
第3記憶部40は、入力された補正値データを一旦記憶保持する。そして第3記憶部40は、制御手段42(遅延手段44)から出力された遅延信号に応じて、補正値データを遅延させて出力する。補正値データを遅延させて出力する時間(遅延時間)は、圧電振動子20の温度時定数に応じて任意に設定される。すなわち遅延時間は、圧電振動子20が温度センサ14で温度測定したときの温度に到達するまでの時間と一致またはほぼ一致している。
【0028】
そして第3記憶部40、すなわち補正値決定回路30から出力された補正値データは、発振回路22の前記周波数調整素子に入力され、前記周波数調整素子が補正値データに対応した素子値に設定される。これにより圧電振動子20の発振周波数が調整されて、一定の周波数となった発振信号が発振回路22から出力される。したがって、圧電振動子20の周波数温度特性が温度補償される(図3に示す黒丸Xn−1)。
【0029】
次に、温度測定部12は、圧電振動子20の周囲温度を新たに測定して(図3に示す黒丸B)、この測定データをディジタル信号に変換して出力する。A/D変換器16は、アナログ信号をディジタル信号に変換して記憶部18に出力する。第1記憶部32は、新たな補正値データを入力すると、新たな補正値データを記憶保持するとともに、これを選択手段38および中間値算出手段36に出力する。また第2記憶部34は、記憶保持されている補正値データ(図3に示す黒丸Aの時の測定で得られた補正値データ)を中間値算出手段36に出力する。
【0030】
中間値算出手段36は、第2記憶部34から入力した補正値データと、第1記憶部32から入力した新たな補正値データから中間値データを求める。中間値データは、前回の温度測定(図3に示す黒丸Aの時)と、新たな温度測定(図3に示す黒丸Bの時)との間における温度に対応した、前記周波数調整素子の素子値を調整するデータである。具体的な一例としては、中間値データは、前回の温度測定時の温度と新たな温度測定時の温度とを平均させた温度における補正値データである。そして選択手段38は、制御信号から入力された選択信号によって中間値データを選択しており、これにより中間値データは第3記憶部40に出力される。第3記憶部40は、制御手段42(遅延手段44)から出力された遅延信号に応じて、中間値データを遅延させて出力する。
【0031】
そして第3記憶部40、すなわち補正値決定回路30から出力された補正値データは、発振回路22の前記周波数調整素子に入力され、前記周波数調整素子は、中間値データに対応した素子値に設定される。これにより圧電振動子20の発振周波数が調整されて、一定の周波数となった発振信号が発振回路22から出力される。したがって、圧電振動子20の周波数温度特性が温度補償される(図3に示す白丸Yn)。
【0032】
次に、一定時間経過後(黒丸Bの時に測定した温度に圧電振動子20が到達したとき)、制御手段42は、選択手段38で第1記憶部32から出力される新たな補正値データを選択するように、選択手段38に選択信号を出力する。この新たな補正値データは、第3記憶部40に一旦記憶保持されるとともに、制御手段42(遅延手段44)から出力された遅延信号に応じて、遅延されて第3記憶部40から出力される。そして前記周波数調整素子は、新たな補正値データに対応した素子値に設定される。これにより圧電振動子20の発振周波数が調整されて、一定の周波数となった発振信号が発振回路22から出力される。したがって、圧電振動子20の周波数温度特性が温度補償される(図3に示す黒丸Xn)。そして温度補償発振回路10は、上述した動作を繰り返して、温度補償を行っていく。
【0033】
このような温度補償発振回路10は、温度センサ14で圧電振動子20の周囲温度を間欠的に測定したときの温度に基づいて温度補償を行うとともに、温度測定をしている間においても中間値データを求めて温度補償を行っている。すなわち温度補償発振回路10は、内挿補間を行って温度補償をしている。そして中間値データを、第1の補正値データと第2の補正値データとの平均を取って求めた場合、温度補償Xn−1,XnおよびYnの関係は、Yn=(Xn+Xn−1)/2となる。このため温度変化に対する温度補償の追従性がよくなるので、1回の温度補償の調整量が大きくなることがなく、高精度の温度補償を行うことができ、低消費電力化をはかることができる。また補正値データと中間値データとを用いて温度補償を行う間隔が同一ならば、一回の調整量を減らせるので出力周波数の変化をさらに抑えることができる。
【0034】
また遅延手段44を設けることにより、温度センサ14が温度測定したときの温度に圧電振動子20(圧電振動片)が到達した時にあわせて補正値データまたは中間値データを出力できるので、温度センサ14と圧電振動子20との温度時定数に差があっても、正確な温度補償を行うことができる。
また補正値決定回路30は、複雑な演算回路を必要としない為、機能追加による回路増大・コストアップ・消費電流増大を抑えることができる。
【0035】
なお本実施形態の変形例として、中間値算出手段36は、図4に示すように、前回の温度測定時(図4に示す黒丸A)と新たな温度測定時(図4に示す黒丸B)との間を3つに分割したときにおいて中間値データを求めて出力してもよい。これにより、より正確な温度補償を行うことができる。また中間値算出手段36は、前回の温度測定時と新たな温度測定時との間を、4つ以上に分割させたときにおいて中間値データを求めて出力してもよい。
第1の実施形態で説明した温度補償発振回路10は、圧電デバイスである温度補償型圧電発振器を構成している。
【0036】
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態に係る温度補償発振回路は、第1の実施形態で説明した温度補償発振回路と同様の構成であり、一部の作用が異なっている。したがって第2の実施形態では、第1の実施形態と同構成の部分の説明を省略する。図5は第2の実施形態の補正値決定回路の概略説明図である。第2の実施形態に係る温度補償発振回路は、外部からの補間無効信号を補正値決定回路30に入力することによって、この補間無効信号を検出した場合のみ補間動作を行わないように構成したものである。すなわち第2の実施形態の補正値決定回路30は、補間無効信号を入力すると補正値データのみ出力し、中間値データを出力しない構成であり、補間補償を行わない。
【0037】
また温度補償発振回路は、補間無効信号を入力しないときは、第1の実施形態で説明した作用と同様に動作する。すなわち補正値決定回路30は、補間無効信号を入力しないときは、補正値データと中間値データとを出力し、温度補償発振回路は、補間補償を行う。
【0038】
そして第2の実施形態に係る温度補償発振回路は、外部から補間無効信号を入力した場合、以下のように動作する。すなわち温度補償発振回路は、補間無効信号を制御手段42に入力させる。制御手段42は、補間無効信号を入力すると、この補間無効信号を第2記憶部34および中間値算出手段36に出力して、第2記憶部34および中間値算出手段36を動作させないようにする。また制御手段42は、選択手段38に選択信号を出力して、選択手段38が第1記憶部32から出力された補正値データのみ選択するように設定する。このとき補正値決定回路30は、第2記憶部34や中間値算出手段36、選択手段38を動作させないため、消費電力を削減することが可能になる。これにより、温度補償発振回路は、補正値データのみ出力するようになる。
【0039】
このような温度補償発振回路を構成することにより、さらに消費電力を削減できる。そして温度補償発振回路が電子機器に搭載されている場合、この電子機器がスリープモード(省電力モード)に移行したときに、電子機器本体が温度補償発振回路に対して補間無効信号を出力する構成になっていれば、温度補償発振回路は、通常時には動作している第2記憶部34や中間値算出手段36、選択手段38の動作を停止するため、電子機器の消費電力をさらに低減できる。
なお第2の実施形態で説明した温度補償発振回路は、圧電デバイスである温度補償型圧電発振器を構成している。
【0040】
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、第1および第2の実施形態で説明した温度補償発振器である圧電デバイスについて説明する。第3の実施形態に係る圧電デバイスは、第1および第2の実施形態で説明した温度補償発振回路の後段に時計回路を接続し、リアルタイムクロックを構成したものである。したがって第1および第2の温度補償発振回路と同構成の部分の説明を省略する。
【0041】
図6は第3の実施形態に係る圧電デバイスの説明図である。温度補償発振回路の後段、すなわち発振回路22の後段に接続される時計回路52は、分周器54および時計・カレンダー回路56を備えている。分周器54は、発振回路22から出力された発振信号を、所定の分周比で分周するものである。また時計・カレンダー回路56は、分周器54からの出力信号に基づいて時計またはカレンダーを表示または出力するものである。
【0042】
これにより圧電デバイス50は、源振の発振周波数を調整して、高精度に温度補償の行われた発振信号に基づいて、時計やカレンダーの表示や出力を行うことができる。また圧電デバイス50は、間欠的に温度補償を行うので、電力の消費量を削減することができる。
【0043】
次に、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態では、圧電デバイスであるリアルタイムクロックについて説明する。第4の実施形態では、第1および第2の実施形態で説明した部分と同構成の部分であれば、その説明を省略または簡略する。図7は第4の実施形態に係る圧電デバイスの説明図である。第4の実施形態に係る圧電デバイス60は、温度センサ14、A/D変換器16、記憶部18、補正値決定回路30、圧電振動子20を接続した発振回路22、時計回路62を備えている。時計回路62は、論理緩急回路64および時計・カレンダー回路66を備えている。また温度センサ14、A/D変換器16、記憶部18、補正値決定回路30、圧電振動子20および発振回路22の各部分は、第1および第2の実施形態で説明した各部分と同じ構成である。
【0044】
そして圧電デバイス60では、温度センサ14、A/D変換器16、記憶部18および補正値決定回路30が、第1および第2の実施形態と同様に直列に接続されている。補正値決定回路30の後段は、時計回路62内の論理緩急回路64に接続されている。また圧電振動子20が接続された発振回路22の後段も、時計回路62内の論理緩急回路64に接続されている。論理緩急回路64は、分周器を備えており、補正値決定回路30から出力された補正値データまたは中間値データに基づいて分周比を変化させ、発振回路22から出力された発振信号を分周させて、圧電振動子20の周波数温度特性を温度補償するものである。この論理緩急回路64が圧電振動子20の周波数温度特性を温度補償するための手段となる。時計・カレンダー回路66は、論理緩急回路64からの出力信号に基づいて時計またはカレンダーを表示または出力する。
【0045】
このように圧電デバイス60を構成すると、圧電デバイス60は、補正値決定回路30から出力された補正値データや中間値データに基づいて発振信号を分周しているので圧電振動子20の周波数温度特性が高精度に温度補償され、高精度に温度補償の行われた発振信号に基づいて時計やカレンダーの表示や出力を行うことができる。また圧電デバイス60は、間欠的に温度補償を行うので、電力の消費量を削減することができる。
【0046】
次に、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態では、温度補償発振回路10や圧電デバイス50,60が搭載される電子機器について説明する。第1および第2の実施形態で説明した温度補償発振回路(温度補償型圧電発振器)は、一定の周波数の発振信号が必要な電子機器に搭載されることができる。また第3および第4の実施形態で説明した圧電デバイス(リアルタイムクロック)50,60は、計時信号やカレンダー機能が必要な電子機器に搭載されることができる。すなわち、温度補償型圧電発振器やリアルタイムクロックは、例えば時計用クロック信号の信号源として時間管理が必要なコンピュータやサーバー等の電子機器に搭載されることができる。
【0047】
そして電子機器にスリープモードがある場合は、圧電デバイスは補正値決定回路30から補正値データや中間値データを出力することにより、圧電振動子20の周波数温度特性を温度補償しているので、温度センサ14やA/D変換器16、記憶部18を間欠的に動作させることができ、電子機器の消費電力を低減させることができる。また電子機器が電池で動作している場合は、電池の消耗を遅くすることができる。また圧電デバイスがリアルタイムクロックであれば、電子機器がスリープモード中の低消費電力スリープクロックとして用いることができる。
【実施例】
【0048】
本実施例では、補正値決定回路の実施例について説明する。図8は補正値決定回路の説明図である。本実施例に係る補正値決定回路30は、8ビットの信号を入出力する構成であるが、ビット数は8ビットに限定されることはない。第1記憶部32、第2記憶部34および第3記憶部40には、例えばラッチ回路を用いればよい。また中間値算出手段36は、加算回路であればよい。さらに選択手段38は、スリーステートバッファであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】補正値決定回路の概略説明図である。
【図2】温度補償発振回路を説明するブロック図である。
【図3】温度補償のタイミングを説明する図である。
【図4】温度補償のタイミングの変形例を説明する図である。
【図5】第2の実施形態の補正値決定回路の概略説明図である。
【図6】第3の実施形態に係る圧電デバイスの説明図である。
【図7】第4の実施形態に係る圧電デバイスの説明図である。
【図8】補正値決定回路の説明図である。
【図9】従来技術に係る温度補償発振回路の説明図である。
【符号の説明】
【0050】
10………温度補償発振回路、12………温度測定部、18………記憶部、20………圧電振動子、22………発振回路、30………補正値決定回路、32………第1記憶部、34………第2記憶部、36………中間値算出手段、38………選択手段、40………第3記憶部、42………制御手段、44………遅延手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間欠的に温度測定部で圧電振動子の周囲温度を測定して、予め記憶されている補正値データから、測定された温度に対応した前記補正値データを求め、
前記補正値データに基づいて温度測定時から所定時間遅延させて前記圧電振動子の周波数温度特性を温度補償するための手段を調整するとともに、
得られた最近2回の前記補正値データから、この間を内挿する中間値データを求め、前記中間値データに基づいて圧電振動子の周波数温度特性を温度補償するための前記手段を調整する、
ことを特徴とする温度補償発振回路の温度補償方法。
【請求項2】
温度補償するための前記手段は、前記補正値データのみに基づいて調整されることを特徴とする請求項1に記載の温度補償発振回路の温度補償方法。
【請求項3】
圧電振動子の周囲温度に応じて補正値データを出力し、この補正値データに基づいて前記圧電振動子の周波数温度特性を温度補償する温度補償発振回路であって、
前記補正値データを入力して、そのまま出力する回路と、
第1の前記補正値データと第2の前記補正値データとを入力して、これらの補正値データ間を内挿する中間値データを求めて出力する回路と、
前記補正値データまたは前記中間値データを入力して保持し、前記圧電振動子の温度時定数にあわせて保持しているデータを遅延させて出力する手段と、
を備えたことを特徴とする温度補償発振回路。
【請求項4】
前記中間値データは、1つ以上出力されることを特徴とする請求項3に記載の温度補償発振回路。
【請求項5】
圧電振動子の周囲温度を測定した測定データをディジタル信号で出力する温度測定部と、
前記測定データを入力し、前記測定データに対応した予め記憶されている補正値データを出力する記憶部と、
前記補正値データを入力して、前記補正値データまたは中間値データを出力する補正値決定回路と、
入力された前記補正値データまたは前記中間値データに応じて温度補償された発振信号を出力する、前記圧電振動子に接続された発振回路と、を備え、
前記補正値決定回路は、
前記記憶部からの前記補正値データを入力して保持する第1記憶部と、
前記第1記憶部の後段に接続され、前記第1記憶部から出力された前記補正値データを入力して一旦保持する第2記憶部と、
前記第1記憶部および前記第2記憶部の後段に接続され、前記第1記憶部から出力された前記補正値データおよび前記第2記憶部から出力された前記補正値データを入力して中間値データを求める中間値算出手段と、
前記第1記憶部および前記中間値算出手段の後段に接続され、前記補正値データと前記中間値データとを入力し、いずれか一方を出力する選択手段と、
前記選択手段の後段に接続され、選択手段から出力されたデータを保持し、前記圧電振動子の温度時定数にあわせて保持している前記データを遅延させて出力する第3記憶部と、を備えた、
ことを特徴とする温度補償発振回路。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれかに記載の温度補償発振回路に、少なくとも時計機能を備えた計時回路を接続したことを特徴とする温度補償発振回路。
【請求項7】
請求項3ないし6のいずれかに記載の温度補償発振回路に、圧電振動子を接続したことを特徴とする圧電デバイス。
【請求項8】
請求項7に記載の圧電デバイスを搭載したことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−303764(P2006−303764A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−120768(P2005−120768)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】