温度調節機能障害の治療ための5HT2a受容体の拮抗
本発明は、5HT濃度を調節することにより5HT2a受容体を活性化する化合物およびこの化合物を含む組成物を投与することにより、体温調節疾患を治療する方法に関する。本発明は、また、5HT1aアンタゴニストおよびSRIの併用剤、該併用剤を含有する医薬組成物および製品に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血管運動の不安定を治療、予防、軽減、または阻害する方法、およびそのような効果を達成する組成物に関する。特に、本発明は、セロトニン(5HT)レベルを調節することにより5HT2a受容体を活性化する化合物、該化合物の組成物、およびそれらの使用に関する。本発明は、さらに、温度調節障害の治療のための組み合わせ療法、5HT2a拮抗剤およびセロトニン再取り込み阻害剤(SRI)の組み合わせ、並びにこれらを含有する医薬品組成物および医薬品を用いた、5HT2a受容体を経由した5HTシグナル伝達を上昇させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットフラッシュ(Hot Flush)は性ステロイドの変動によって引き起こされ、男性および女性のいずれにおいても分裂的で無能力にし得ることがよく知られている。ホットフラッシュは30分間継続し、一週間に数回から一日に10数回の頻度で変動し得る。患者は、顔から胸や背中、さらに体の他の部分に急に広がる突然の熱感として、ホットフラッシュを経験する。これらの発作は通常、大量の発汗の発生を伴う。それは時々一時間に数回起こり、よく夜に起こる。夜間に起こるホットフラッシュと発汗は睡眠不足を引き起こし、結果として神経過敏、疲労、異常興奮、不眠症、抑圧性記憶喪失、不安、神経性内気や集中不能のような精神的および感情的症状の原因となる(Murphy et al., 3rd Int’l symposium on Recent Advances in Urological Cancer Diagnosis and Treatment Proceedings. Paris, France: SCI: 3-7 (1992))。
【0003】
ホットフラッシュは、乳癌を経験した女性において、以下のいくつかの理由からより重症となり得る。すなわち、1)多くの乳癌の生存者はタモキシフェンを投与されているため、最も多い副作用はホットフラッシュであり、2)乳癌治療の多くの女性は化学療法のため早期月経閉止を経験し、3)乳癌を経験した女性は一般的に乳癌再発の可能性の関心からエストロゲン療法を否定されてきたことによる(Waldinger et al, Maturitas, 2000, 36(3): p. 165- 168)。
【0004】
男性もステロイドホルモン(アンドロジェン)の投与中止の後にホットフラッシュを経験する。これは、前立腺癌治療に関連するホルモン欠乏の極端な症例(Berendsen et al, European Journal of Pharmacology, 2001. 419(1): p. 47-54)と同様に年齢と関係したアンドロジェン低下の症例(Katovich et al., Proceeding of the Society for Experimental Biology & Medicine, 1990. 193(2): p.129-35)でも当てはまることである。これらの患者の3分の1は、重大な不安や不自由を引き起こすほど継続的で頻発する症状を経験することになる。
【0005】
月経閉止によるホットフラッシュは、最も一般的にはホルモン代替療法(経口的、経皮、または移植による)により治療されているが、エストロジェンまたはアンドロジェン治療に耐えられない患者もいる(Berendsen, Maturitas, 2000. 36(3): p. 155-164, Finket al., Nature, 1996, 383(6598): p. 306)。さらに、ホルモン代替療法は通常ホルモンに敏感な癌(例えば、乳癌または前立腺癌)に罹患または罹患の可能性のある女性または男性には推奨されない。したがって、非ステロイド療法(例えば、フルオキセチン(fluoxetine)、パロキセチン(paroxetine)、クロニジン(clonidine))が臨床的に評価されている。WO9944601はフロキセチン投与によりヒト女性におけるホットフラッシュを減少させる方法について開示している。ステロイド、α−アドレナリン作働薬、β−ブロッカーを含めて、ホットフラッシュ治療のための他の方法が、様々な成功レベルで研究されてきている。
【0006】
ベレンツェン(Berendsen)ら(european Journal of Pharmacology, 2001, 419(1): p.47-54)およびフィンク・ジー(Fink, G.)ら(Clinical & Experimental Pharmacology & Physiology, 1998, 25(10): p. 764-75)は、5−HT2a受容体アンタゴニストがホットフラッシュ治療の可能性を示唆することを報告した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ホットフラッシュは大きな肉体的および精神的なストレスの原因である。性ホルモンおよび神経伝達物質のバランスは正常な体温調節に極めて重要だが、温度調節の機能障害に関与するメカニズムは本質的に全く不明である。温度調節障害はよく医学的治療を正当化するが、副作用のほとんどない満足できる治療にはまだ遠い。したがって、温度調節の多面的な性質を想定すると、多面的な治療およびアプローチは血管運動の不安定を対象として用いることができる。
【解決するための手段】
【0008】
本発明は、5HT2a受容体のシグナリングを促進し血管運動の不安定を軽減する新規なメカニズムに関する。
【0009】
本発明の概要
本発明は、5HT2a受容体に作働する(agonize)1または複数の化合物の治療有効量を患者に投与することを含む、温度調節障害に罹患し、または感受性のある患者を治療する方法を提供する。
【0010】
また本発明は、セロトニンのような化合物を内因性に産生することにより5HT2a受容体に作働する方法も提供する。本発明には、内因性に産生されるセロトニンが5HT2a拮抗剤およびSRIによって調節される方法が含まれる。本発明のある態様において5HT2a拮抗剤およびSRIは、二つの活性をもつ単一の化合物によって提供され得る。また本発明は、5HT2a拮抗剤、その誘導体、またはそれらの薬学的に許容される塩である有効量の第一成分と、セロトニン再取り込み阻害剤、その誘導体、またはそれらの薬学的に許容される塩である有効量の第二成分とを組み合わせて患者に投与することを含む組み合わせ療法を用いる方法を提供する。さらに他の態様では、例えば、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン(sertraline);フルボキサミン(fluvoxamine)、アモキサピン(amoxapine)、ドキセピン(doxepine)、ブプロピオン(bupropion);アミトリプチリン(amitriptyline)のいずれかを5HT2a拮抗剤を併用して投与ことにより5HT2a受容体を作働する方法も提供する。
【0011】
本発明は、5HT2a受容体が外因性に投与される化合物により作働される方法も提供する。
【0012】
本発明は、また、体温調節障害の治療および/または予防における、同時の、分離した、または連続的な使用のための組み合わせ調製物として、有効量のセロトニン再取り込み阻害剤(SRI)と5HT2a拮抗剤とを含む製品も提供する。
【0013】
本発明のさらなる態様は、体温調節障害の治療および/または予防のための医薬製品における5HT2a拮抗剤の使用に関する。
【0014】
本発明は、さらに、体温調節障害の治療および/または予防における、同時の、分離した、または連続的な使用のための組み合わせ製品における、SRIおよび5HT2a拮抗剤の使用を提供する。前記5HT2a作働剤は、好ましくは、1−(2,5−ジメトキシ−4−ヨードフェニル)−2−アミノプロパン(DOI)、および(±)−2,5−ジメトキシ−4−ブロモアンフェタミン臭化水素塩(DOB)から構成される群から選択される。前記SRIは、好ましくは、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、フルボキサミン、デュロキセチン(duloxetine)、アモキサピン、ドキセピン、ブプロピオン、シタロプロム(citaloprom)、およびアミトリプチリンから構成される群から選択される。前記5HT2a拮抗剤は、好ましくは、N−[2−[4−(2−メトキシフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−N−2−ピリジニルシクロヘキサンカルボキサミド(WAY−100635)、(R)−N−(2−メチル−(4−インドリル−1−ピペラジニル)エチル)−N−(2−ピリジニル)シクロヘキサンカルボキサミド、およびNAD−299(アストラゼネカ社)から構成される群から選択される。前記5HT2a拮抗剤としては、N−[2−[4−(2−メトキシフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−N−2−ピリジニルシクロヘキサンカルボキサミドが最も好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図面の簡単な説明
本発明は、本願の一部をなす、以下の詳細な説明および添付図面からより完全に理解されることができる。
【0016】
図1Aおよび1Bは、体温調節における5HT2a受容体の効果を示す(実施例1において記述)。
【0017】
図2A及び2Bは、5HT2a受容体が血管運動不安定のモルヒネ依存性ラットモデルにおける体温調節に関与することを示す(*は無投与対照に比較したp<0.05を表す。)(実施例2において記述)。
【0018】
図3Aおよび3Bは、ホットフラッシュの軽減における、SRIと5HT2aとを組み合わせて用いて5HT2a受容体に5HTシグナリングを再方向付ける効果を示す(*は無投与対照に比較したp<0.05を表す。)(実施例3において記述)。
【0019】
図4Aおよび4Bは、ホットフラッシュの軽減における、SRIと組み合わせた5HT2a受容体拮抗の効果を示す(実施例4において記述)。図4A:*は無投与対照に比較したp<0.05を表し、Ωはフルオキセチン10mg/kgと比較したp<0.05を表す。図4B:*は無投与対照に比較したp<0.05を表し、ψはWAY−100635に0.1mg/kgと比較したp<0.05を表し、ΦはWAY−100635に1.0mg/kgと比較したp<0.05を表す。
【0020】
図5Aは、例えばフルオキセチンのようなSRIと、5HT2a受容体拮抗剤(WAY−100635)との組み合わせをブロックする5HT2a受容体拮抗剤(MDL−100907)の性能を示す。図5Bは、ホットフラッシュの軽減に無効果であるが、5HT2a受容体拮抗剤によって活性化されるフルオキセチン(SRI化合物)の投与量(10mg/kg)を表す。図5Cは、フルオキセチン(SRI化合物)の有効投与量(30mg/kg)が同様に5HT2a受容体拮抗剤によって活性化されることを示す(実施例5において記述)。*は無投与対照に比較したp<0.05を表し、Φは0.01mg/kgMDL−100907比較したp<0.05を表し、ψはMDL−1009070.1mg/kg比較したp<0.05を表す。
【0021】
本発明の詳細な説明
本発明は、被験動物、好ましくはヒト患者における血管運動の不安定を治療、予防、軽減または抑制する方法を含み、該方法は5HT2a受容体を作働する治療有効量の1つまたは複数の化合物を投与することを含む。5HT2a受容体は内因性または外因性に産生された化合物により作働させることができる。本発明は、さらに内因性に産生された化合物がセロトニンである方法を含む。この内因性に産生されたセロトニンは5HT1a拮抗剤とSRIとの組み合わせ、これらと同様のものを含む医薬組成物または製品により調節することができる。
【0022】
本発明は、月経閉止により引き起こされたホットフラッシュ、化学的または手術的に引き起こされたステロイド欠乏(癌生存者)、アンドロジェン除去療法、および抗エストロジェン療法などの治療に有益である。本発明は、特にステロイドを基礎とする療法を採用することができない患者に有益である。
【0023】
以下に示す定義は本明細書で用いられる用語および略号の完全な理解のために提供される。
【0024】
本明細書中の略号は以下の通り、測定単位、技術、性質または化合物に相当する。“min”は分、“h”は時間、“μL”はマイクロリッター、“mL”はミリリッター、“μM”はマイクロマル、“mM”はミリモル、“M”はモル、“mmole”はミリモル、“SEM”は平均標準誤差、および“IU”は国際単位を意味する。“Δ℃”は、ナロキソン惹起フラッシュ前の15分間ベースラインTSTの間の規格化された尻尾皮膚温度における変化を意味する。“ΔTST”はベースラインからTSTにおける変化を意味し、“ED50 value”は母集団の50%に終点読み取りをもたらす投与量を意味する。
【0025】
“尻尾皮膚温度”はTSTと省略される。
【0026】
“セロトニン再取り込み阻害剤”はSRIと省略される。選択的なセロトニン再取り込み阻害剤はSRIsの1つのクラスであり、SRIと省略される。SRIsの具体例には、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、デュロキセチン、フルボキサミン、アモキサピン、ドキセピン、ブプロピオン、シタロプラム、およびアミトリプチリンが含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
“セロトニン”は5HTと省略される。
【0028】
“皮下的”はscと省略される。
【0029】
本開示の文脈には多くの用語が利用される。ここで用いられる用語“治療(treatment)”には予防的(例えば、疾病予防的)、治癒的、および一時的治療が含まれ、ここで用いられる“処置(treating)”にも予防的、治癒的、および一時的治療が含まれる。
【0030】
ここで用いられるように、用語“被験動物(subject)”は本発明の組成物および方法で治療可能なヒトを含む動物について言及する。用語“被験動物(単数または複数)”は、一方の性が特記されていない限り、雄および雌の両方の性について言及するものである。
【0031】
用語“患者(patient)”は血管運動障害の治療または予防により利益を得ることができる、いかなる動物も含む。用語患者はヒトを含む雌の動物を含み、ヒトにおいては、月経閉止を過ぎた老齢の女性ばかりでなく、若年性月経閉止を経過し、子宮切除術を受け、または長期にわたるコルチコステロイド投与を受けカッシング症候群または性ホルモン腺発育障害を発症した患者のように他の理由からエストロジェン産生が抑制された女性も含む。この用語“患者”は女性に限定されるものではない。
【0032】
用語“若年性月経閉止”は40歳前に起こり得る原因未知の卵巣疾患のことを言う。これは、喫煙、高所での生活、または栄養欠乏状態に関連する可能性がある。人為的な月経閉止は、卵巣切除術、化学療法、骨盤の放射線療法、または卵巣の血液供給を該する何らかの処置に関連する可能性がある。
【0033】
卵巣摘出術はステロイド欠乏をもたらす卵巣の除去のことをいう(Merchenthaler et al., Maturitas, 1998, Nov 16; 30(3): 307-316)。
【0034】
用語“月経閉止前(premenoposal)”は月経閉止の前のことをいい、前記用語の月経閉止間(perimenoposal)は月経閉止の期間のことをいい、前記用語の月経閉止後は月経閉止の後のことをいう。
【0035】
用語“ホットフラッシュ”は、典型的には皮膚体温の急激な上昇からなり、通常患者における発汗(sweating and perspiration)を伴う、体温の偶発的障害のことをいう技術的に認められたものである。
【0036】
用語“ホットフラッシュ”は、血管運動不安定、血管運動機能障害、体温調節障害、夜間発汗、ホットフラッシュ、血管運動障害、または血管運動疾患の用語によって互換的に用いることができる。
【0037】
“治療有効量”は望ましい結果を達成するために必要な期間の投与における有効量のことをいう。選択された特定の化合物、成分または組成物、投与経路、および個々の患者の望ましい反応を引き出すための成分の性能(単独で、または1つまたは複数の併用薬の組み合わせで)ばかりでなく、病気の状態、軽減された病気の重篤性、個々の患者の年齢・性・体重、患者の状態、および治療される生理的状態の重篤性、併用医薬または特定の患者で次に続けられる特別の食餌療法、当業者が認識する他の因子、担当の医者の判断による最終的な適切投与量で、本発明の成分の治療有効量は患者により変動する。投薬摂生は最適治療反応を得るために調整することができる。治療有効量は、成分の毒性や有害性のある効果を治療上の有益な効果がまさる量でもある。
【0038】
好ましくは、本発明の化合物は治療前のホットフラッシュ数に比べて、ホットフラッシュ数が減少するような投与量および期間、投与される。そのような治療は、治療開始前のホットフラッシュの重篤度と比較して、既に経験したホットフラッシュの全体的な重篤度または強度分布を減少させるのに有益であり得る。被験動物、好ましくはヒトは女性であり、より好ましくは月経閉止間、月経閉止、または月経閉止後の女性である。男性機能停止の男性患者も、本発明によって治療できる。
【0039】
本発明により使用される医薬には、5HT2a作働薬、二つの活性をもつ単一化合物における5HT2a拮抗剤とセロトニン再取り込み阻害剤との組み合わせ、化合物の組み合わせ、および薬学的に許容される担体を伴った薬学的に許容され得るそれらの塩が含まれる。前記組成物は、1つまたは複数の5HT2a作働薬または1つまたは複数の各セロトニン再取り込み阻害剤と活性成分として5HT2a拮抗剤と、或いは、薬学的に許容される担体を伴った、セロトニン再取り込み阻害活性と5HT2a拮抗活性をもつ1つまたは複数の化合物とを含むことができる。
【0040】
用語“調節”は、例えば受容体結合またはシグナリング活性のような、生物学的活性または過程の機能的な特性を増強または阻害する能力のことをいう。そのような増強または阻害は、シグナル伝達経路の活性化が特定の細胞タイプでのみ現れるように、特定の事象の発生に左右されるものである。前記調節剤は、例えば抗体、小分子、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質のようないずれかの化合物を含み、好ましくは小分子またはペプチドを含む。
【0041】
用語“阻害する”は、部分的または全体的、機能または活性に関わらず、消失、抑制、軽減、防止、減少、または除去する活動のことをいう。用語“阻害する”はin vivoの系と同様にin vitroの系にも適用できる。ここで用いられるように、用語“阻害剤”は阻害するどんな化合物のこともいう。
【0042】
本発明のなかで、5HT2a拮抗剤と各セロトニン再取り込み阻害剤とは薬学的に許容され得る塩の形態で調製することができる。ここで用いられるように、用語“薬学的に許容され得る塩”は、薬学的に許容され得る無機塩および有機塩を含む無毒性の酸から調製される塩のことをいう。好ましい非有機塩には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオニック酸、酪酸、マリック酸、マレイン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、硝酸、パモイック酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などのような無機および有機の酸を含まれる。特に好ましいのは、塩酸、臭化水素酸、リン酸、および硫酸であり、最も好ましいのは塩酸塩である。
【0043】
さらに、本発明の化合物は、水、エタノールなどのような薬学的に許容され得る溶媒と溶媒和の形態と同様に、非溶媒和の形態でも存在し得る。一般的に、本発明の目的にとって、溶媒和の形態は非溶媒和の形態と同等と考えられる。
【0044】
本発明の化合物のいくつかは光学中心をもち、そのような化合物は異性体(例えば、エナンチオマー)の形態で存在し得る。本発明はそのようなあらゆる異性体およびラセミ混合物を含む、それらのあらゆる混合物を含む。
【0045】
投与経路は、5HT2a作働剤または5HT1a拮抗剤とセロトニン再取り込み阻害剤とを、経口、経鼻、肺、経皮のように、受動的またはイオン浸透療法的な送達、或いは、例えば、直腸、デポー製剤、皮下、静脈内、尿道内、筋肉内、鼻腔内、眼内溶液、または軟膏のような非経口的に適切または望ましい活動部位に効果的に輸送するものであれば、どのような経路でも可能である。さらに、5HT1a拮抗剤およびセロトニン再取り込み阻害剤の投与は併用してまたは同時に行うことができる。
【0046】
用語“組み合わせ療法”は、本開示で記載されている、例えば、ホットフラッシュ、発汗、体温調節に関連する状態または疾患、またはその他の治療的な状態または疾患を治療するための2またはそれ以上の治療薬剤または化合物のことをいう。そのような投与には、例えば、5HT1a拮抗剤およびセロトニン再取り込み阻害剤の両方の活性をもつ単一の化合物により、または5HT1a拮抗剤およびセロトニン再取り込み阻害剤の活性のそれぞれの複数の別々の化合物により、これらの治療薬剤または化合物を同時に行う併用投与が含まれる。さらに、そのような投与には、併用したそれぞれの治療薬剤の使用も含まれる。いずれの場合にも、その治療摂生はここに記載する状態や疾患の治療において薬剤の組み合わせの有益な効果をもたらす。
【0047】
用語“中枢神経系”または“CNS”は脳および脊髄を含む。用語“末梢神経系”または“PNS”は頭蓋および脊髄の神経、および自律神経系のようなCNSの部分ではない神経系のすべての部分を含む。
【0048】
用語“成分”、“薬剤”、“薬学的に活性な薬剤”、“薬剤”および“医薬”は、ここでは互換的に、例えば、抗体、小分子、核酸分子、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはそのようなものを含む組成物であって、器官(ヒトまたは動物)に投与されると、局所的および/または系統的働きにより望ましい薬理的および/または生理的効果をもたらす単一の化合物または複数の化合物のことをいう。ここで前記薬剤は、5HT2a受容体に直接働くか、または5HT2a受容体のシグナリングを調整するためにセロトニン再取り込み阻害作用と5HT1a拮抗作用とを併せて提供する。
【0049】
5HT2a受容体の活性は5−HTのような内因性の作働薬により内因的に作働され、或いは薬剤または他の合成リガンドのような5HT2a作働剤の投与により外因的に作働され得る。“5HT2a受容体活性”には、(1)内因性作働剤、(2)外因性作働剤、および(3)内因性および外因性の作働剤の組み合わせにより誘発される活性が含まれる。さらに、この受容体の活性化は、自然の、変異した、または修飾された受容体に関連した構成的な活性化によっている。前記受容体はin vitroまたはin vivoの系で精製され、または存在することができる。
【0050】
本発明の前記薬剤は、必要とされる基本点に基づき、または継続的な摂生により投与できる。変化および次に起こる反応への治療の間隔を観察するために必要な時間は、望まれる効果によって異なり得る。複数の薬剤による組み合わせ療法にとって、前記薬剤は併用して投与することができ、また分離して時間差にした時間に投与することもできる。
【0051】
1つの態様において、5HT1a拮抗剤はげっ歯類の体温調節モデルでフラッシングを引き起こし、一方、5HT1a作働剤は予想に反してこの引き起こされたフラッシュを減少させた。しかしながら、いくつかの5HT1a作働剤は望ましくない幻覚性の副作用をもっている。したがって、本発明の他の態様において、DOIまたはDOBのような化合物より親和性の比較的低い作働剤、部分作働剤、または5HT2a受容体の内因性作働剤は、血管運動症状を減少させる治療上の有益性を保持しつつ、5HT2a作働剤の望ましくない副作用を除去する。例えば、5HT濃度は、内因性リガンドを介して5HT2a受容体を活性化することにより調節され得る。
【0052】
他の態様において、DOI(5HT2a・2c作働剤)を用いた5HT2a受容体作働剤は、ナロキソン誘発性の尻尾皮膚温度の上昇を予防する望ましい効果をもっていた。DOIおよびDOBは5HT2a作働剤の非限定的な具体例である。この効果は、このモデルで上昇しているホットフラッシュの他の臨床的治療法で観察される効果と同様のものである(Merchenthaler et al., Maturitas., 1988. 30(3): p. 307-16)。さらに、5HT2a作働剤と拮抗剤はこのモデルで効果がなく、5HT2a受容体が調節されていることが示された。
【0053】
さらに他の態様において、内因性リガンドであるセロトニン(5−HT)による5HT2a受容体の活性化の上昇は、望ましくない幻覚性の副作用なしでホットフラッシュの軽減手段(正常化体温調節)を提供する。5HT2a受容体拮抗剤およびSRIを含む組み合わせ療法は、ホットフラッシュの軽減に十分な5HT2a受容体を介した5HTシグナリングを上昇させることができる。
【0054】
さらに他の態様において、5HT2a作働剤は、1−(2,5−ジメトキシ−4−ヨードフェニル)−2−アミノプロパン塩酸塩(DOI)および(±)−2,5−ジメトキシ−4−ブロモアンフェタミン臭化水素酸塩(DOB)から構成される群から選択される。他の態様において、前記SRIは、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、フルボキサミン、デュロキセチン、アモキサピン、ドキセピン、ブプロピオン、シタロプロム、およびアミトリプチリンから構成される群から選択される。さらに他の態様において、5HT2a拮抗剤は、N−[2−[4−(2−メトキシフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−N−2−ピリジニルシクロヘキサンカルボキサミド(WAY−100635)、(R)−N−(2−メチル−(4−ヨードリル−1−ピペラジニル)エチル)−N−(2−ピリジニル)シクロヘキサンカルボキサミド、およびNAD−299(アストラゼネカ社)から構成される群から選択される。
【0055】
好ましい態様において、化合物は5HT2a受容体への末梢様式の活動を介して働く。
【実施例】
【0056】
本発明は、さらに次の実施例で定義される。ここで別に記載しない限り、全ての部およびパーセントは重量に基づき、度は摂氏である。これらの実施例は本発明の好ましい態様を示すが、単なる一例のみを示すものと理解されるべきである。上述の記載およびこれらの実施例により、当業者は本発明の本質的な性質を把握でき、それらの精神や範囲を離れずに様々な利用法や条件に適用させるため本発明の様々な変更や修正をすることができる。
【0057】
一般的方法
試薬
MDL−100907(5HT2aアンタゴニスト)はWO91/18602に記載されているように合成された。次の試薬は市販のものを購入した。フルオキセチン(SRI、シグマ社)、1−(2,5−ジメトキシ−4−ヨードフェニル)−2−アミノプロパン(5HT2aアゴニスト、DOI、シグマ社)、WAY−100635(5HT1aアンタゴニスト、US6,127,357に記載、参照により本発明に組み込まれる。)、モルヒネアルカロイド丸薬(マーティ・ファーマシューティカルズ社、レキシントン、ケンタッキー州)、ケタミン(フェニックス・ファーマシューティカルズ社、ベルモント、カリフォルニア州)およびナロキソン(リサーチ・バイオケミカルズ・インターナショナル社、セントルイス、ミズーリ州)
投与
全ての化合物は、Tween80に溶解したMDL−100907を除いて、無菌水に溶解し、次の投与量で皮下注射により投与した。フルオキセチン(10mg/kg)、WAY−100635(0.01、0.1および1.0mg/kg)、DOI(1mg/kg)、MDL−100907(0.3および1mg/kg)およびナロキソン(1.0mg/kg)。ケタミン(ケタジェクト、フェニックス・ファーマシューティカルズ社、ベルモント、カリフォルニア州)は、穏やかな鎮静作用をもち、尻尾皮膚温度(TST)に変化を生じない投与量である40mg/kgを筋肉内投与した。
【0058】
動物
卵巣切除術を施したSprague−Dawleyラット(180−220g)を業者(タコニック社、ジャーマンタウン、ニューヨーク州)より入手し、25℃に維持した部屋で12時間の照明/暗闇サイクル下に個々に飼育した。動物には随意に標準ラット食および水を与えた。
【0059】
モルヒネ依存性実験モデル
卵巣切除術を施したラットに、ストレス反応を最小化するため、対照を8−9日間、一日一回注射し、次に試験日に化合物を投与した。背部肩甲骨部位に2つの徐放性モルヒネ丸薬(75mg/kg)を皮下(sc)移植することにより、投与4日目にモルヒネ依存性が誘発された。このモデルは、エストロジェン治療により可逆的な確立されたモルヒネ依存性のナロキソン誘発フラッシュの範例に基づいている(Katovich et al., Proceedings of the Society for Experimental Biology & Medicine, 1990. 193(2): p.129-35)。移植の4から6日後に、TSTの一時的な上昇を引き起こすオピオイド・アンタゴニスト(ナロキソン)によりモルヒネ禁断症状が誘発された。典型的な実験において、ナロキソン注射の1時間前に最終投与量のテスト化合物が投与された。ラットはケタミンで軽く沈静化され、マックラブ(MacLab)データ取得システムに接続したサーミスターを尻尾の基部にテープでとめた。次に、ベースラインの温度を確定するために尻尾皮膚温度を35分間連続的にモニターした。ナロキソンを続いて投与し、さらに60分間、TSTを測定した(全体記録時間は95分間)。
【0060】
OVX誘発体温調節機能障害モデル
被験化合物の体温調節に関する効果を判断するために、遠隔計測法を用いてTSTを卵巣切除ラットにおいてモニターした。このモデルは、昼間のTSTパターンのエストロジェン調節に基づいた既に報告されたプロトコールを修正したものである(Berendsen et al., European Journal of Pharmacology, 2001. 419(1): p. 47-57)。新環境順応に続いて、体温と生理的活動の発信装置(フィジオテンプTA10TA−F40、データ・サイエンス・インターナショナル社)を背部肩甲骨部位に皮下移植し、体温測定子のチップを尻尾皮下に潜らせて、基部から2cmの位置に固定した。7日間の回復期間の後に、ベースラインを確保するためにTST記録を3日間までモニターした。次にラットに被験化合物または対照のいずれかを一回投与し、TSTを12時間まで継続的にモニターした。TSTは24時間の間に、活動相(暗闇)と非活動相(照明)との間で変動するため、化合物の効果は、照明サイクルまたは暗闇サイクルのちょうど前の時間に投与することによりこれらの相のいずれかの時間に試験した。
【0061】
統計的解析
モルヒネ依存性ラットにおいてナロキソンにより誘発されたTSTの変化を解析するために、全てのデータを2因子繰り返し測定により解析した。これらのファクターは“治療”および“時間”(繰り返し)である。前記モデルは、治療群間に反応の有意な相違があるか否かに関わらず、試験に適していた。前記データはナロキソン投与(0時間という)の20分前(−20)から治療後60分まで、5分間隔で解析した。最初の3点の読みは平均してベースラインのTSTスコアとして用いた。全てのデータをΔTST(各時間点におけるTST−ベースライン)として解析した。各時間点の治療群の中での多重比較(最小二乗偏差(LSD)p値)を解析に用いたが、TSTの変化はナロキソン投与後15分で最大であり、この時間点はフラッシュ低減の最良の指針を提供する。適当な場合には、ED50値を算出した。ED50値は対数スケールを用いて決定し、線は最大応答(ナロキソン15分後のΔTST)と最小応答(ナロキソン前の平均ベースライン温度)の間に当てはまった。ED50値はナロキソン誘発フラッシュを50%低減させる被験化合物の投与量として報告されている。
【0062】
体温調節機能障害モデルにおける被験化合物によるTSTの変化を解析するために、繰り返し測定解析をおこなった。解析に用いたモデルは、非構造誤差共分散行列(unstructured error covariance matrix)を用いた、TST=((GRP(group)+HR(hour))+((GRP*HR)+ベースライン))である。したがって、報告されている最小二乗平均は、仮に両方の群が同じベースライン値をもつような予想平均値である。このため一時間後とのGRP*HR間隔は本質的にそれぞれ一時間後との群の差異のt−テストである。慎重に考慮して、結果はp値が0.025未満でなければ有意と判断しなかった。全ての解析は、SAS PROC MIXED(SAS、カレー社、ノースカロライナ州)を用いて実行した。それぞれの化合物について、それぞれのラットに対するベースライン温度は投与前日の12時間をかけた温度読み取りを平均することにより評価した。
【0063】
実施例1
体温調節に対する5HT2a受容体の作用
ラットに対照(無菌水)およびDOI(5HT2a/2cアゴニスト、シグマ社)(無菌水に溶解し1mg/kg投与)を皮下(sc)注射した。5HT2aアンタゴニストMDL−100907はUS5,134,149、US5,561,144、US5,700,812、US5,700,813、US5,721,249、US5,874,445およびUS6,004,980(これらは参照により本発明に組み込まれる。)に記載されているように合成し、無菌水で溶解して0.3および1mg/kgで投与した。全ての薬剤はナロキソンの20分前に投与した。
【0064】
MDL−100907(5HT2aアンタゴニスト)はナロキソン投与前の尻尾皮膚温度を有意に上昇させた(図1A)。反対に、DOI(5HT2a/2cアゴニスト)は基部の尻尾皮膚温度に影響を与えずに、有意にナロキソン誘発フラッシュを低減させた(図1B)。これらのデータにより、DOIの血管運動不安定を軽減する作用が選択的に5HT2a受容体によることが証明された。
【0065】
実施例2
血管運動不安定の2つのラットモデルにおける5HT2c受容体および体温調節
以下の例外を除いて、一般的方法の項で記載したような方法でおこなった。
【0066】
ラットに対照(無菌水)を皮下(sc)注射し、(7bR,10aR)−1,2,3,4,8,9,10,10a−オクタヒドロ−7bH−シクロペンタ[b][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−hi]インドール(5HT2cアゴニスト)はWO02/42304に記載のように合成し、無菌水に溶解して0.1および3.0mg/kg投与し、5HT2cアンタゴニスト(6−クロロ−5−メチル−1−[[2−[(2−メチル−3−ピリジル)オキシ]−5−ピリジル]カルバモイル]インドリン)(Bromidge et al., J. Med. Chem., 1997, 40, 3494-3496)は無菌水に溶解し0.1および1.0mg/kg投与した。全ての薬剤はナロキソンの20分前に投与した。
【0067】
モルヒネ依存性ラットモデルにおける時間を越えたTSTの変化(Δ℃、平均)は、(7bR,10aR)−1,2,3,4,8,9,10,10a−オクタヒドロ−7bH−シクロペンタ[b][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−hi]インドール(5HT2cアゴニスト)(パネルA)または6−クロロ−5−メチル−1−[[2−[(2−メチル−3−ピリジル)オキシ]−5−ピリジル]カルバモイル]インドリン(5HT2cアンタゴニスト)(パネルB)はナロキソン誘発フラッシュを有意に軽減しなかった。5HT2c受容体に特異的な化合物の活性の欠如は、DOI(5HT2aアゴニスト)の作用が5HT2c受容体におけるその働きによっていることを示している。
【0068】
実施例3
SRIおよび5HT1a受容体アンタゴニストの組み合わせを用いた5HTシグナリングの5HT2a受容体への再方向付け
ラットに対照(無菌水)を皮下注射し、フルオキセチン(シグマ社、セントルイス、ミズーリ州)を無菌水に溶解して10mg/kg投与し、5HT1aアンタゴニストであるWAY−100635(シグマ社、セントルイス、ミズーリ州)を無菌水に溶解して1mg/kg投与、またはフルオキセチンおよびWAY−100635と併用して投与した。フルオキセチンはナロキソン注射の1時間前に投与し、WAY−100635はナロキソンの20分前に投与した。
【0069】
モルヒネ依存性ラットモデルにおける時間を越えたTSTの変化(Δ℃、平均)は、投与されたフルオキセチンまたはWAY−100635が単独ではナロキソン誘発フラッシュを有意に低減させないことを示した(図3A)。しかしながら、フルオキセチンおよびWAY−100635の併用はナロキソン誘発フラッシュを有意に低減させた。最大フラッシュ(ナロキソン後15分;Δ℃、平均±SEM)においては、併用療法のみがナロキソン誘発フラッシュを低減させた。これらのデータは、血管運動の不安定性の低減においてSRIおよび5HT1a受容体アンタゴニストの間の共働作用を示している。さらに5HT2a受容体活性化に関連した典型的な“ウェット−ドッグ振戦(wet−dog shakes)”が注目された。これらのデータは、前記併用が5HTの働きの一般的な現象ではない5HT2a受容体を介した5HTシグナリングを再方向付けすることを示している。
【0070】
実施例4
SRIと組み合わせた5HT1a受容体拮抗の効果
ラットに、対照(無菌水)またはフルオキセチン(シグマ社、無菌水に溶解、0.1、1.0または10mg/kg)、および5HT1aアンタゴニストWAY−100635(無菌水に溶解し、1.0mg/kgで投与)またはフルオキセチン(10mg/kg)、およびWAY−100635(0.01、0.1または1.0mg/kg)を皮下注射した。フルオキセチンはナロキソン注射1時間前に投与し、WAY−100635はナロキソンの20分前に投与した。
【0071】
最大フラッシュ(ナロキソン後15分;Δ℃、平均±SEM)において、フルオキセチンはWAY−100635(1.0mg/kg)と混合した場合に容量依存的にナロキソン誘発フラッシュを、ED50値が0.20±0.11で低減させた(図4A)。最大フラッシュ(ナロキソン後15分;Δ℃、平均±標準誤差)において、WAY−100635はフルオキセチン(10mg/kg)と混合した場合に容量依存的にナロキソン誘発フラッシュを、ED50値が0.01±0.009で低減させた(図4B)。これらのデータは、5HT1a受容体アンタゴニストが低容量でフルオキセチンの働きを促進することができるためSRIの急性活動の活性化において重要な寄与をしていることを示している。WAY−100635の存在下におけるフルオキセチン(10mg/kg)の効果上昇は、5HT2a受容体を介した5HTシグナリングのより効果的な再方向付けの結果によるものと考えられる。
【0072】
実施例5
5HT2a拮抗
ラットに、対照(無菌水)またはフルオキセチン(シグマ社、無菌水に溶解、10mg/kg)、および5HT1aアンタゴニストWAY−100635(無菌水に溶解し、0.01mg/kgで投与)またはフルオキセチン(10または30mg/kg)、およびMDL−100907(5HT2aアンタゴニスト、0.01または0.1mg/kg)を皮下注射した。MDL−100907はナロキソン注射の55分前に投与し、ナロキソン注射の15分後にフルオキセチンまたは組み合わせ(フルオキセチン10mg/kg+WAY−100635:0.01mg/kg)を投与した。
【0073】
最大フラッシュ(ナロキソン後15分;Δ℃、平均±SEM)において、MDL−100907はナロキソン誘発フラッシュの薬物併用による低減を容量依存的に逆転させた(図5A)。反対に、最大フラッシュ(ナロキソン後15分;Δ℃、平均±SEM)において、MDL−100907はフルオキセチンの無効容量を上昇させた(10mg/kg)(図5B)。さらに、フルオキセチン(30mg/kg)投与前のMDL−100907の投与は、ナロキソン誘発ホットフラッシュを軽減し、また軽減効果を増強した。
【0074】
これらのデータにより、5HT2a受容体拮抗がフルオキセチン(10mg/kg)/WAY−100635の組み合わせ、およびフルオキセチン10または30mg/kgに相違する影響を与えることが判明した。したがって、フルオキセチンとの併用における5HT1a受容体拮抗は、低容量および高容量のフルオキセチン投与とは異なり、異なる反応様式をもつことを示唆している。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1A】図1Aは、体温調節における5HT2a受容体の効果を示す図である。
【図1B】図1Bは、体温調節における5HT2a受容体の効果を示す図である。
【図2A】図2Aは、5HT2a受容体が血管運動不安定のモルヒネ依存性ラットモデルにおける体温調節に関与することを示す図である。
【図2B】図2Bは、5HT2a受容体が血管運動不安定のモルヒネ依存性ラットモデルにおける体温調節に関与することを示す図である。
【図3A】図3Aは、ホットフラッシュの軽減における、SRIと5HT2aとを組み合わせて用いて5HT2a受容体に5HTシグナリングを再方向付ける効果を示す図である。
【図3B】図3Bは、ホットフラッシュの軽減における、SRIと5HT2aとを組み合わせて用いて5HT2a受容体に5HTシグナリングを再方向付ける効果を示す図である。
【図4A】図4Aは、ホットフラッシュの軽減における、SRIと組み合わせた5HT2a受容体拮抗の効果を示す図である。
【図4B】図4Bは、ホットフラッシュの軽減における、SRIと組み合わせた5HT2a受容体拮抗の効果を示す図である。
【図5A】図5Aは、SRIと、5HT2a受容体拮抗剤との組み合わせをブロックする5HT2a受容体拮抗剤の性能を示す図である。
【図5B】図5Bは、5HT2a受容体拮抗剤によって活性化されるフルオキセチンの投与量を表す図である。
【図5C】図5Cは、フルオキセチンの有効投与量が5HT2a受容体拮抗剤によって活性化されることを示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は血管運動の不安定を治療、予防、軽減、または阻害する方法、およびそのような効果を達成する組成物に関する。特に、本発明は、セロトニン(5HT)レベルを調節することにより5HT2a受容体を活性化する化合物、該化合物の組成物、およびそれらの使用に関する。本発明は、さらに、温度調節障害の治療のための組み合わせ療法、5HT2a拮抗剤およびセロトニン再取り込み阻害剤(SRI)の組み合わせ、並びにこれらを含有する医薬品組成物および医薬品を用いた、5HT2a受容体を経由した5HTシグナル伝達を上昇させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットフラッシュ(Hot Flush)は性ステロイドの変動によって引き起こされ、男性および女性のいずれにおいても分裂的で無能力にし得ることがよく知られている。ホットフラッシュは30分間継続し、一週間に数回から一日に10数回の頻度で変動し得る。患者は、顔から胸や背中、さらに体の他の部分に急に広がる突然の熱感として、ホットフラッシュを経験する。これらの発作は通常、大量の発汗の発生を伴う。それは時々一時間に数回起こり、よく夜に起こる。夜間に起こるホットフラッシュと発汗は睡眠不足を引き起こし、結果として神経過敏、疲労、異常興奮、不眠症、抑圧性記憶喪失、不安、神経性内気や集中不能のような精神的および感情的症状の原因となる(Murphy et al., 3rd Int’l symposium on Recent Advances in Urological Cancer Diagnosis and Treatment Proceedings. Paris, France: SCI: 3-7 (1992))。
【0003】
ホットフラッシュは、乳癌を経験した女性において、以下のいくつかの理由からより重症となり得る。すなわち、1)多くの乳癌の生存者はタモキシフェンを投与されているため、最も多い副作用はホットフラッシュであり、2)乳癌治療の多くの女性は化学療法のため早期月経閉止を経験し、3)乳癌を経験した女性は一般的に乳癌再発の可能性の関心からエストロゲン療法を否定されてきたことによる(Waldinger et al, Maturitas, 2000, 36(3): p. 165- 168)。
【0004】
男性もステロイドホルモン(アンドロジェン)の投与中止の後にホットフラッシュを経験する。これは、前立腺癌治療に関連するホルモン欠乏の極端な症例(Berendsen et al, European Journal of Pharmacology, 2001. 419(1): p. 47-54)と同様に年齢と関係したアンドロジェン低下の症例(Katovich et al., Proceeding of the Society for Experimental Biology & Medicine, 1990. 193(2): p.129-35)でも当てはまることである。これらの患者の3分の1は、重大な不安や不自由を引き起こすほど継続的で頻発する症状を経験することになる。
【0005】
月経閉止によるホットフラッシュは、最も一般的にはホルモン代替療法(経口的、経皮、または移植による)により治療されているが、エストロジェンまたはアンドロジェン治療に耐えられない患者もいる(Berendsen, Maturitas, 2000. 36(3): p. 155-164, Finket al., Nature, 1996, 383(6598): p. 306)。さらに、ホルモン代替療法は通常ホルモンに敏感な癌(例えば、乳癌または前立腺癌)に罹患または罹患の可能性のある女性または男性には推奨されない。したがって、非ステロイド療法(例えば、フルオキセチン(fluoxetine)、パロキセチン(paroxetine)、クロニジン(clonidine))が臨床的に評価されている。WO9944601はフロキセチン投与によりヒト女性におけるホットフラッシュを減少させる方法について開示している。ステロイド、α−アドレナリン作働薬、β−ブロッカーを含めて、ホットフラッシュ治療のための他の方法が、様々な成功レベルで研究されてきている。
【0006】
ベレンツェン(Berendsen)ら(european Journal of Pharmacology, 2001, 419(1): p.47-54)およびフィンク・ジー(Fink, G.)ら(Clinical & Experimental Pharmacology & Physiology, 1998, 25(10): p. 764-75)は、5−HT2a受容体アンタゴニストがホットフラッシュ治療の可能性を示唆することを報告した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ホットフラッシュは大きな肉体的および精神的なストレスの原因である。性ホルモンおよび神経伝達物質のバランスは正常な体温調節に極めて重要だが、温度調節の機能障害に関与するメカニズムは本質的に全く不明である。温度調節障害はよく医学的治療を正当化するが、副作用のほとんどない満足できる治療にはまだ遠い。したがって、温度調節の多面的な性質を想定すると、多面的な治療およびアプローチは血管運動の不安定を対象として用いることができる。
【解決するための手段】
【0008】
本発明は、5HT2a受容体のシグナリングを促進し血管運動の不安定を軽減する新規なメカニズムに関する。
【0009】
本発明の概要
本発明は、5HT2a受容体に作働する(agonize)1または複数の化合物の治療有効量を患者に投与することを含む、温度調節障害に罹患し、または感受性のある患者を治療する方法を提供する。
【0010】
また本発明は、セロトニンのような化合物を内因性に産生することにより5HT2a受容体に作働する方法も提供する。本発明には、内因性に産生されるセロトニンが5HT2a拮抗剤およびSRIによって調節される方法が含まれる。本発明のある態様において5HT2a拮抗剤およびSRIは、二つの活性をもつ単一の化合物によって提供され得る。また本発明は、5HT2a拮抗剤、その誘導体、またはそれらの薬学的に許容される塩である有効量の第一成分と、セロトニン再取り込み阻害剤、その誘導体、またはそれらの薬学的に許容される塩である有効量の第二成分とを組み合わせて患者に投与することを含む組み合わせ療法を用いる方法を提供する。さらに他の態様では、例えば、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン(sertraline);フルボキサミン(fluvoxamine)、アモキサピン(amoxapine)、ドキセピン(doxepine)、ブプロピオン(bupropion);アミトリプチリン(amitriptyline)のいずれかを5HT2a拮抗剤を併用して投与ことにより5HT2a受容体を作働する方法も提供する。
【0011】
本発明は、5HT2a受容体が外因性に投与される化合物により作働される方法も提供する。
【0012】
本発明は、また、体温調節障害の治療および/または予防における、同時の、分離した、または連続的な使用のための組み合わせ調製物として、有効量のセロトニン再取り込み阻害剤(SRI)と5HT2a拮抗剤とを含む製品も提供する。
【0013】
本発明のさらなる態様は、体温調節障害の治療および/または予防のための医薬製品における5HT2a拮抗剤の使用に関する。
【0014】
本発明は、さらに、体温調節障害の治療および/または予防における、同時の、分離した、または連続的な使用のための組み合わせ製品における、SRIおよび5HT2a拮抗剤の使用を提供する。前記5HT2a作働剤は、好ましくは、1−(2,5−ジメトキシ−4−ヨードフェニル)−2−アミノプロパン(DOI)、および(±)−2,5−ジメトキシ−4−ブロモアンフェタミン臭化水素塩(DOB)から構成される群から選択される。前記SRIは、好ましくは、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、フルボキサミン、デュロキセチン(duloxetine)、アモキサピン、ドキセピン、ブプロピオン、シタロプロム(citaloprom)、およびアミトリプチリンから構成される群から選択される。前記5HT2a拮抗剤は、好ましくは、N−[2−[4−(2−メトキシフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−N−2−ピリジニルシクロヘキサンカルボキサミド(WAY−100635)、(R)−N−(2−メチル−(4−インドリル−1−ピペラジニル)エチル)−N−(2−ピリジニル)シクロヘキサンカルボキサミド、およびNAD−299(アストラゼネカ社)から構成される群から選択される。前記5HT2a拮抗剤としては、N−[2−[4−(2−メトキシフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−N−2−ピリジニルシクロヘキサンカルボキサミドが最も好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図面の簡単な説明
本発明は、本願の一部をなす、以下の詳細な説明および添付図面からより完全に理解されることができる。
【0016】
図1Aおよび1Bは、体温調節における5HT2a受容体の効果を示す(実施例1において記述)。
【0017】
図2A及び2Bは、5HT2a受容体が血管運動不安定のモルヒネ依存性ラットモデルにおける体温調節に関与することを示す(*は無投与対照に比較したp<0.05を表す。)(実施例2において記述)。
【0018】
図3Aおよび3Bは、ホットフラッシュの軽減における、SRIと5HT2aとを組み合わせて用いて5HT2a受容体に5HTシグナリングを再方向付ける効果を示す(*は無投与対照に比較したp<0.05を表す。)(実施例3において記述)。
【0019】
図4Aおよび4Bは、ホットフラッシュの軽減における、SRIと組み合わせた5HT2a受容体拮抗の効果を示す(実施例4において記述)。図4A:*は無投与対照に比較したp<0.05を表し、Ωはフルオキセチン10mg/kgと比較したp<0.05を表す。図4B:*は無投与対照に比較したp<0.05を表し、ψはWAY−100635に0.1mg/kgと比較したp<0.05を表し、ΦはWAY−100635に1.0mg/kgと比較したp<0.05を表す。
【0020】
図5Aは、例えばフルオキセチンのようなSRIと、5HT2a受容体拮抗剤(WAY−100635)との組み合わせをブロックする5HT2a受容体拮抗剤(MDL−100907)の性能を示す。図5Bは、ホットフラッシュの軽減に無効果であるが、5HT2a受容体拮抗剤によって活性化されるフルオキセチン(SRI化合物)の投与量(10mg/kg)を表す。図5Cは、フルオキセチン(SRI化合物)の有効投与量(30mg/kg)が同様に5HT2a受容体拮抗剤によって活性化されることを示す(実施例5において記述)。*は無投与対照に比較したp<0.05を表し、Φは0.01mg/kgMDL−100907比較したp<0.05を表し、ψはMDL−1009070.1mg/kg比較したp<0.05を表す。
【0021】
本発明の詳細な説明
本発明は、被験動物、好ましくはヒト患者における血管運動の不安定を治療、予防、軽減または抑制する方法を含み、該方法は5HT2a受容体を作働する治療有効量の1つまたは複数の化合物を投与することを含む。5HT2a受容体は内因性または外因性に産生された化合物により作働させることができる。本発明は、さらに内因性に産生された化合物がセロトニンである方法を含む。この内因性に産生されたセロトニンは5HT1a拮抗剤とSRIとの組み合わせ、これらと同様のものを含む医薬組成物または製品により調節することができる。
【0022】
本発明は、月経閉止により引き起こされたホットフラッシュ、化学的または手術的に引き起こされたステロイド欠乏(癌生存者)、アンドロジェン除去療法、および抗エストロジェン療法などの治療に有益である。本発明は、特にステロイドを基礎とする療法を採用することができない患者に有益である。
【0023】
以下に示す定義は本明細書で用いられる用語および略号の完全な理解のために提供される。
【0024】
本明細書中の略号は以下の通り、測定単位、技術、性質または化合物に相当する。“min”は分、“h”は時間、“μL”はマイクロリッター、“mL”はミリリッター、“μM”はマイクロマル、“mM”はミリモル、“M”はモル、“mmole”はミリモル、“SEM”は平均標準誤差、および“IU”は国際単位を意味する。“Δ℃”は、ナロキソン惹起フラッシュ前の15分間ベースラインTSTの間の規格化された尻尾皮膚温度における変化を意味する。“ΔTST”はベースラインからTSTにおける変化を意味し、“ED50 value”は母集団の50%に終点読み取りをもたらす投与量を意味する。
【0025】
“尻尾皮膚温度”はTSTと省略される。
【0026】
“セロトニン再取り込み阻害剤”はSRIと省略される。選択的なセロトニン再取り込み阻害剤はSRIsの1つのクラスであり、SRIと省略される。SRIsの具体例には、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、デュロキセチン、フルボキサミン、アモキサピン、ドキセピン、ブプロピオン、シタロプラム、およびアミトリプチリンが含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
“セロトニン”は5HTと省略される。
【0028】
“皮下的”はscと省略される。
【0029】
本開示の文脈には多くの用語が利用される。ここで用いられる用語“治療(treatment)”には予防的(例えば、疾病予防的)、治癒的、および一時的治療が含まれ、ここで用いられる“処置(treating)”にも予防的、治癒的、および一時的治療が含まれる。
【0030】
ここで用いられるように、用語“被験動物(subject)”は本発明の組成物および方法で治療可能なヒトを含む動物について言及する。用語“被験動物(単数または複数)”は、一方の性が特記されていない限り、雄および雌の両方の性について言及するものである。
【0031】
用語“患者(patient)”は血管運動障害の治療または予防により利益を得ることができる、いかなる動物も含む。用語患者はヒトを含む雌の動物を含み、ヒトにおいては、月経閉止を過ぎた老齢の女性ばかりでなく、若年性月経閉止を経過し、子宮切除術を受け、または長期にわたるコルチコステロイド投与を受けカッシング症候群または性ホルモン腺発育障害を発症した患者のように他の理由からエストロジェン産生が抑制された女性も含む。この用語“患者”は女性に限定されるものではない。
【0032】
用語“若年性月経閉止”は40歳前に起こり得る原因未知の卵巣疾患のことを言う。これは、喫煙、高所での生活、または栄養欠乏状態に関連する可能性がある。人為的な月経閉止は、卵巣切除術、化学療法、骨盤の放射線療法、または卵巣の血液供給を該する何らかの処置に関連する可能性がある。
【0033】
卵巣摘出術はステロイド欠乏をもたらす卵巣の除去のことをいう(Merchenthaler et al., Maturitas, 1998, Nov 16; 30(3): 307-316)。
【0034】
用語“月経閉止前(premenoposal)”は月経閉止の前のことをいい、前記用語の月経閉止間(perimenoposal)は月経閉止の期間のことをいい、前記用語の月経閉止後は月経閉止の後のことをいう。
【0035】
用語“ホットフラッシュ”は、典型的には皮膚体温の急激な上昇からなり、通常患者における発汗(sweating and perspiration)を伴う、体温の偶発的障害のことをいう技術的に認められたものである。
【0036】
用語“ホットフラッシュ”は、血管運動不安定、血管運動機能障害、体温調節障害、夜間発汗、ホットフラッシュ、血管運動障害、または血管運動疾患の用語によって互換的に用いることができる。
【0037】
“治療有効量”は望ましい結果を達成するために必要な期間の投与における有効量のことをいう。選択された特定の化合物、成分または組成物、投与経路、および個々の患者の望ましい反応を引き出すための成分の性能(単独で、または1つまたは複数の併用薬の組み合わせで)ばかりでなく、病気の状態、軽減された病気の重篤性、個々の患者の年齢・性・体重、患者の状態、および治療される生理的状態の重篤性、併用医薬または特定の患者で次に続けられる特別の食餌療法、当業者が認識する他の因子、担当の医者の判断による最終的な適切投与量で、本発明の成分の治療有効量は患者により変動する。投薬摂生は最適治療反応を得るために調整することができる。治療有効量は、成分の毒性や有害性のある効果を治療上の有益な効果がまさる量でもある。
【0038】
好ましくは、本発明の化合物は治療前のホットフラッシュ数に比べて、ホットフラッシュ数が減少するような投与量および期間、投与される。そのような治療は、治療開始前のホットフラッシュの重篤度と比較して、既に経験したホットフラッシュの全体的な重篤度または強度分布を減少させるのに有益であり得る。被験動物、好ましくはヒトは女性であり、より好ましくは月経閉止間、月経閉止、または月経閉止後の女性である。男性機能停止の男性患者も、本発明によって治療できる。
【0039】
本発明により使用される医薬には、5HT2a作働薬、二つの活性をもつ単一化合物における5HT2a拮抗剤とセロトニン再取り込み阻害剤との組み合わせ、化合物の組み合わせ、および薬学的に許容される担体を伴った薬学的に許容され得るそれらの塩が含まれる。前記組成物は、1つまたは複数の5HT2a作働薬または1つまたは複数の各セロトニン再取り込み阻害剤と活性成分として5HT2a拮抗剤と、或いは、薬学的に許容される担体を伴った、セロトニン再取り込み阻害活性と5HT2a拮抗活性をもつ1つまたは複数の化合物とを含むことができる。
【0040】
用語“調節”は、例えば受容体結合またはシグナリング活性のような、生物学的活性または過程の機能的な特性を増強または阻害する能力のことをいう。そのような増強または阻害は、シグナル伝達経路の活性化が特定の細胞タイプでのみ現れるように、特定の事象の発生に左右されるものである。前記調節剤は、例えば抗体、小分子、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質のようないずれかの化合物を含み、好ましくは小分子またはペプチドを含む。
【0041】
用語“阻害する”は、部分的または全体的、機能または活性に関わらず、消失、抑制、軽減、防止、減少、または除去する活動のことをいう。用語“阻害する”はin vivoの系と同様にin vitroの系にも適用できる。ここで用いられるように、用語“阻害剤”は阻害するどんな化合物のこともいう。
【0042】
本発明のなかで、5HT2a拮抗剤と各セロトニン再取り込み阻害剤とは薬学的に許容され得る塩の形態で調製することができる。ここで用いられるように、用語“薬学的に許容され得る塩”は、薬学的に許容され得る無機塩および有機塩を含む無毒性の酸から調製される塩のことをいう。好ましい非有機塩には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオニック酸、酪酸、マリック酸、マレイン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、硝酸、パモイック酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などのような無機および有機の酸を含まれる。特に好ましいのは、塩酸、臭化水素酸、リン酸、および硫酸であり、最も好ましいのは塩酸塩である。
【0043】
さらに、本発明の化合物は、水、エタノールなどのような薬学的に許容され得る溶媒と溶媒和の形態と同様に、非溶媒和の形態でも存在し得る。一般的に、本発明の目的にとって、溶媒和の形態は非溶媒和の形態と同等と考えられる。
【0044】
本発明の化合物のいくつかは光学中心をもち、そのような化合物は異性体(例えば、エナンチオマー)の形態で存在し得る。本発明はそのようなあらゆる異性体およびラセミ混合物を含む、それらのあらゆる混合物を含む。
【0045】
投与経路は、5HT2a作働剤または5HT1a拮抗剤とセロトニン再取り込み阻害剤とを、経口、経鼻、肺、経皮のように、受動的またはイオン浸透療法的な送達、或いは、例えば、直腸、デポー製剤、皮下、静脈内、尿道内、筋肉内、鼻腔内、眼内溶液、または軟膏のような非経口的に適切または望ましい活動部位に効果的に輸送するものであれば、どのような経路でも可能である。さらに、5HT1a拮抗剤およびセロトニン再取り込み阻害剤の投与は併用してまたは同時に行うことができる。
【0046】
用語“組み合わせ療法”は、本開示で記載されている、例えば、ホットフラッシュ、発汗、体温調節に関連する状態または疾患、またはその他の治療的な状態または疾患を治療するための2またはそれ以上の治療薬剤または化合物のことをいう。そのような投与には、例えば、5HT1a拮抗剤およびセロトニン再取り込み阻害剤の両方の活性をもつ単一の化合物により、または5HT1a拮抗剤およびセロトニン再取り込み阻害剤の活性のそれぞれの複数の別々の化合物により、これらの治療薬剤または化合物を同時に行う併用投与が含まれる。さらに、そのような投与には、併用したそれぞれの治療薬剤の使用も含まれる。いずれの場合にも、その治療摂生はここに記載する状態や疾患の治療において薬剤の組み合わせの有益な効果をもたらす。
【0047】
用語“中枢神経系”または“CNS”は脳および脊髄を含む。用語“末梢神経系”または“PNS”は頭蓋および脊髄の神経、および自律神経系のようなCNSの部分ではない神経系のすべての部分を含む。
【0048】
用語“成分”、“薬剤”、“薬学的に活性な薬剤”、“薬剤”および“医薬”は、ここでは互換的に、例えば、抗体、小分子、核酸分子、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはそのようなものを含む組成物であって、器官(ヒトまたは動物)に投与されると、局所的および/または系統的働きにより望ましい薬理的および/または生理的効果をもたらす単一の化合物または複数の化合物のことをいう。ここで前記薬剤は、5HT2a受容体に直接働くか、または5HT2a受容体のシグナリングを調整するためにセロトニン再取り込み阻害作用と5HT1a拮抗作用とを併せて提供する。
【0049】
5HT2a受容体の活性は5−HTのような内因性の作働薬により内因的に作働され、或いは薬剤または他の合成リガンドのような5HT2a作働剤の投与により外因的に作働され得る。“5HT2a受容体活性”には、(1)内因性作働剤、(2)外因性作働剤、および(3)内因性および外因性の作働剤の組み合わせにより誘発される活性が含まれる。さらに、この受容体の活性化は、自然の、変異した、または修飾された受容体に関連した構成的な活性化によっている。前記受容体はin vitroまたはin vivoの系で精製され、または存在することができる。
【0050】
本発明の前記薬剤は、必要とされる基本点に基づき、または継続的な摂生により投与できる。変化および次に起こる反応への治療の間隔を観察するために必要な時間は、望まれる効果によって異なり得る。複数の薬剤による組み合わせ療法にとって、前記薬剤は併用して投与することができ、また分離して時間差にした時間に投与することもできる。
【0051】
1つの態様において、5HT1a拮抗剤はげっ歯類の体温調節モデルでフラッシングを引き起こし、一方、5HT1a作働剤は予想に反してこの引き起こされたフラッシュを減少させた。しかしながら、いくつかの5HT1a作働剤は望ましくない幻覚性の副作用をもっている。したがって、本発明の他の態様において、DOIまたはDOBのような化合物より親和性の比較的低い作働剤、部分作働剤、または5HT2a受容体の内因性作働剤は、血管運動症状を減少させる治療上の有益性を保持しつつ、5HT2a作働剤の望ましくない副作用を除去する。例えば、5HT濃度は、内因性リガンドを介して5HT2a受容体を活性化することにより調節され得る。
【0052】
他の態様において、DOI(5HT2a・2c作働剤)を用いた5HT2a受容体作働剤は、ナロキソン誘発性の尻尾皮膚温度の上昇を予防する望ましい効果をもっていた。DOIおよびDOBは5HT2a作働剤の非限定的な具体例である。この効果は、このモデルで上昇しているホットフラッシュの他の臨床的治療法で観察される効果と同様のものである(Merchenthaler et al., Maturitas., 1988. 30(3): p. 307-16)。さらに、5HT2a作働剤と拮抗剤はこのモデルで効果がなく、5HT2a受容体が調節されていることが示された。
【0053】
さらに他の態様において、内因性リガンドであるセロトニン(5−HT)による5HT2a受容体の活性化の上昇は、望ましくない幻覚性の副作用なしでホットフラッシュの軽減手段(正常化体温調節)を提供する。5HT2a受容体拮抗剤およびSRIを含む組み合わせ療法は、ホットフラッシュの軽減に十分な5HT2a受容体を介した5HTシグナリングを上昇させることができる。
【0054】
さらに他の態様において、5HT2a作働剤は、1−(2,5−ジメトキシ−4−ヨードフェニル)−2−アミノプロパン塩酸塩(DOI)および(±)−2,5−ジメトキシ−4−ブロモアンフェタミン臭化水素酸塩(DOB)から構成される群から選択される。他の態様において、前記SRIは、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、フルボキサミン、デュロキセチン、アモキサピン、ドキセピン、ブプロピオン、シタロプロム、およびアミトリプチリンから構成される群から選択される。さらに他の態様において、5HT2a拮抗剤は、N−[2−[4−(2−メトキシフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−N−2−ピリジニルシクロヘキサンカルボキサミド(WAY−100635)、(R)−N−(2−メチル−(4−ヨードリル−1−ピペラジニル)エチル)−N−(2−ピリジニル)シクロヘキサンカルボキサミド、およびNAD−299(アストラゼネカ社)から構成される群から選択される。
【0055】
好ましい態様において、化合物は5HT2a受容体への末梢様式の活動を介して働く。
【実施例】
【0056】
本発明は、さらに次の実施例で定義される。ここで別に記載しない限り、全ての部およびパーセントは重量に基づき、度は摂氏である。これらの実施例は本発明の好ましい態様を示すが、単なる一例のみを示すものと理解されるべきである。上述の記載およびこれらの実施例により、当業者は本発明の本質的な性質を把握でき、それらの精神や範囲を離れずに様々な利用法や条件に適用させるため本発明の様々な変更や修正をすることができる。
【0057】
一般的方法
試薬
MDL−100907(5HT2aアンタゴニスト)はWO91/18602に記載されているように合成された。次の試薬は市販のものを購入した。フルオキセチン(SRI、シグマ社)、1−(2,5−ジメトキシ−4−ヨードフェニル)−2−アミノプロパン(5HT2aアゴニスト、DOI、シグマ社)、WAY−100635(5HT1aアンタゴニスト、US6,127,357に記載、参照により本発明に組み込まれる。)、モルヒネアルカロイド丸薬(マーティ・ファーマシューティカルズ社、レキシントン、ケンタッキー州)、ケタミン(フェニックス・ファーマシューティカルズ社、ベルモント、カリフォルニア州)およびナロキソン(リサーチ・バイオケミカルズ・インターナショナル社、セントルイス、ミズーリ州)
投与
全ての化合物は、Tween80に溶解したMDL−100907を除いて、無菌水に溶解し、次の投与量で皮下注射により投与した。フルオキセチン(10mg/kg)、WAY−100635(0.01、0.1および1.0mg/kg)、DOI(1mg/kg)、MDL−100907(0.3および1mg/kg)およびナロキソン(1.0mg/kg)。ケタミン(ケタジェクト、フェニックス・ファーマシューティカルズ社、ベルモント、カリフォルニア州)は、穏やかな鎮静作用をもち、尻尾皮膚温度(TST)に変化を生じない投与量である40mg/kgを筋肉内投与した。
【0058】
動物
卵巣切除術を施したSprague−Dawleyラット(180−220g)を業者(タコニック社、ジャーマンタウン、ニューヨーク州)より入手し、25℃に維持した部屋で12時間の照明/暗闇サイクル下に個々に飼育した。動物には随意に標準ラット食および水を与えた。
【0059】
モルヒネ依存性実験モデル
卵巣切除術を施したラットに、ストレス反応を最小化するため、対照を8−9日間、一日一回注射し、次に試験日に化合物を投与した。背部肩甲骨部位に2つの徐放性モルヒネ丸薬(75mg/kg)を皮下(sc)移植することにより、投与4日目にモルヒネ依存性が誘発された。このモデルは、エストロジェン治療により可逆的な確立されたモルヒネ依存性のナロキソン誘発フラッシュの範例に基づいている(Katovich et al., Proceedings of the Society for Experimental Biology & Medicine, 1990. 193(2): p.129-35)。移植の4から6日後に、TSTの一時的な上昇を引き起こすオピオイド・アンタゴニスト(ナロキソン)によりモルヒネ禁断症状が誘発された。典型的な実験において、ナロキソン注射の1時間前に最終投与量のテスト化合物が投与された。ラットはケタミンで軽く沈静化され、マックラブ(MacLab)データ取得システムに接続したサーミスターを尻尾の基部にテープでとめた。次に、ベースラインの温度を確定するために尻尾皮膚温度を35分間連続的にモニターした。ナロキソンを続いて投与し、さらに60分間、TSTを測定した(全体記録時間は95分間)。
【0060】
OVX誘発体温調節機能障害モデル
被験化合物の体温調節に関する効果を判断するために、遠隔計測法を用いてTSTを卵巣切除ラットにおいてモニターした。このモデルは、昼間のTSTパターンのエストロジェン調節に基づいた既に報告されたプロトコールを修正したものである(Berendsen et al., European Journal of Pharmacology, 2001. 419(1): p. 47-57)。新環境順応に続いて、体温と生理的活動の発信装置(フィジオテンプTA10TA−F40、データ・サイエンス・インターナショナル社)を背部肩甲骨部位に皮下移植し、体温測定子のチップを尻尾皮下に潜らせて、基部から2cmの位置に固定した。7日間の回復期間の後に、ベースラインを確保するためにTST記録を3日間までモニターした。次にラットに被験化合物または対照のいずれかを一回投与し、TSTを12時間まで継続的にモニターした。TSTは24時間の間に、活動相(暗闇)と非活動相(照明)との間で変動するため、化合物の効果は、照明サイクルまたは暗闇サイクルのちょうど前の時間に投与することによりこれらの相のいずれかの時間に試験した。
【0061】
統計的解析
モルヒネ依存性ラットにおいてナロキソンにより誘発されたTSTの変化を解析するために、全てのデータを2因子繰り返し測定により解析した。これらのファクターは“治療”および“時間”(繰り返し)である。前記モデルは、治療群間に反応の有意な相違があるか否かに関わらず、試験に適していた。前記データはナロキソン投与(0時間という)の20分前(−20)から治療後60分まで、5分間隔で解析した。最初の3点の読みは平均してベースラインのTSTスコアとして用いた。全てのデータをΔTST(各時間点におけるTST−ベースライン)として解析した。各時間点の治療群の中での多重比較(最小二乗偏差(LSD)p値)を解析に用いたが、TSTの変化はナロキソン投与後15分で最大であり、この時間点はフラッシュ低減の最良の指針を提供する。適当な場合には、ED50値を算出した。ED50値は対数スケールを用いて決定し、線は最大応答(ナロキソン15分後のΔTST)と最小応答(ナロキソン前の平均ベースライン温度)の間に当てはまった。ED50値はナロキソン誘発フラッシュを50%低減させる被験化合物の投与量として報告されている。
【0062】
体温調節機能障害モデルにおける被験化合物によるTSTの変化を解析するために、繰り返し測定解析をおこなった。解析に用いたモデルは、非構造誤差共分散行列(unstructured error covariance matrix)を用いた、TST=((GRP(group)+HR(hour))+((GRP*HR)+ベースライン))である。したがって、報告されている最小二乗平均は、仮に両方の群が同じベースライン値をもつような予想平均値である。このため一時間後とのGRP*HR間隔は本質的にそれぞれ一時間後との群の差異のt−テストである。慎重に考慮して、結果はp値が0.025未満でなければ有意と判断しなかった。全ての解析は、SAS PROC MIXED(SAS、カレー社、ノースカロライナ州)を用いて実行した。それぞれの化合物について、それぞれのラットに対するベースライン温度は投与前日の12時間をかけた温度読み取りを平均することにより評価した。
【0063】
実施例1
体温調節に対する5HT2a受容体の作用
ラットに対照(無菌水)およびDOI(5HT2a/2cアゴニスト、シグマ社)(無菌水に溶解し1mg/kg投与)を皮下(sc)注射した。5HT2aアンタゴニストMDL−100907はUS5,134,149、US5,561,144、US5,700,812、US5,700,813、US5,721,249、US5,874,445およびUS6,004,980(これらは参照により本発明に組み込まれる。)に記載されているように合成し、無菌水で溶解して0.3および1mg/kgで投与した。全ての薬剤はナロキソンの20分前に投与した。
【0064】
MDL−100907(5HT2aアンタゴニスト)はナロキソン投与前の尻尾皮膚温度を有意に上昇させた(図1A)。反対に、DOI(5HT2a/2cアゴニスト)は基部の尻尾皮膚温度に影響を与えずに、有意にナロキソン誘発フラッシュを低減させた(図1B)。これらのデータにより、DOIの血管運動不安定を軽減する作用が選択的に5HT2a受容体によることが証明された。
【0065】
実施例2
血管運動不安定の2つのラットモデルにおける5HT2c受容体および体温調節
以下の例外を除いて、一般的方法の項で記載したような方法でおこなった。
【0066】
ラットに対照(無菌水)を皮下(sc)注射し、(7bR,10aR)−1,2,3,4,8,9,10,10a−オクタヒドロ−7bH−シクロペンタ[b][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−hi]インドール(5HT2cアゴニスト)はWO02/42304に記載のように合成し、無菌水に溶解して0.1および3.0mg/kg投与し、5HT2cアンタゴニスト(6−クロロ−5−メチル−1−[[2−[(2−メチル−3−ピリジル)オキシ]−5−ピリジル]カルバモイル]インドリン)(Bromidge et al., J. Med. Chem., 1997, 40, 3494-3496)は無菌水に溶解し0.1および1.0mg/kg投与した。全ての薬剤はナロキソンの20分前に投与した。
【0067】
モルヒネ依存性ラットモデルにおける時間を越えたTSTの変化(Δ℃、平均)は、(7bR,10aR)−1,2,3,4,8,9,10,10a−オクタヒドロ−7bH−シクロペンタ[b][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−hi]インドール(5HT2cアゴニスト)(パネルA)または6−クロロ−5−メチル−1−[[2−[(2−メチル−3−ピリジル)オキシ]−5−ピリジル]カルバモイル]インドリン(5HT2cアンタゴニスト)(パネルB)はナロキソン誘発フラッシュを有意に軽減しなかった。5HT2c受容体に特異的な化合物の活性の欠如は、DOI(5HT2aアゴニスト)の作用が5HT2c受容体におけるその働きによっていることを示している。
【0068】
実施例3
SRIおよび5HT1a受容体アンタゴニストの組み合わせを用いた5HTシグナリングの5HT2a受容体への再方向付け
ラットに対照(無菌水)を皮下注射し、フルオキセチン(シグマ社、セントルイス、ミズーリ州)を無菌水に溶解して10mg/kg投与し、5HT1aアンタゴニストであるWAY−100635(シグマ社、セントルイス、ミズーリ州)を無菌水に溶解して1mg/kg投与、またはフルオキセチンおよびWAY−100635と併用して投与した。フルオキセチンはナロキソン注射の1時間前に投与し、WAY−100635はナロキソンの20分前に投与した。
【0069】
モルヒネ依存性ラットモデルにおける時間を越えたTSTの変化(Δ℃、平均)は、投与されたフルオキセチンまたはWAY−100635が単独ではナロキソン誘発フラッシュを有意に低減させないことを示した(図3A)。しかしながら、フルオキセチンおよびWAY−100635の併用はナロキソン誘発フラッシュを有意に低減させた。最大フラッシュ(ナロキソン後15分;Δ℃、平均±SEM)においては、併用療法のみがナロキソン誘発フラッシュを低減させた。これらのデータは、血管運動の不安定性の低減においてSRIおよび5HT1a受容体アンタゴニストの間の共働作用を示している。さらに5HT2a受容体活性化に関連した典型的な“ウェット−ドッグ振戦(wet−dog shakes)”が注目された。これらのデータは、前記併用が5HTの働きの一般的な現象ではない5HT2a受容体を介した5HTシグナリングを再方向付けすることを示している。
【0070】
実施例4
SRIと組み合わせた5HT1a受容体拮抗の効果
ラットに、対照(無菌水)またはフルオキセチン(シグマ社、無菌水に溶解、0.1、1.0または10mg/kg)、および5HT1aアンタゴニストWAY−100635(無菌水に溶解し、1.0mg/kgで投与)またはフルオキセチン(10mg/kg)、およびWAY−100635(0.01、0.1または1.0mg/kg)を皮下注射した。フルオキセチンはナロキソン注射1時間前に投与し、WAY−100635はナロキソンの20分前に投与した。
【0071】
最大フラッシュ(ナロキソン後15分;Δ℃、平均±SEM)において、フルオキセチンはWAY−100635(1.0mg/kg)と混合した場合に容量依存的にナロキソン誘発フラッシュを、ED50値が0.20±0.11で低減させた(図4A)。最大フラッシュ(ナロキソン後15分;Δ℃、平均±標準誤差)において、WAY−100635はフルオキセチン(10mg/kg)と混合した場合に容量依存的にナロキソン誘発フラッシュを、ED50値が0.01±0.009で低減させた(図4B)。これらのデータは、5HT1a受容体アンタゴニストが低容量でフルオキセチンの働きを促進することができるためSRIの急性活動の活性化において重要な寄与をしていることを示している。WAY−100635の存在下におけるフルオキセチン(10mg/kg)の効果上昇は、5HT2a受容体を介した5HTシグナリングのより効果的な再方向付けの結果によるものと考えられる。
【0072】
実施例5
5HT2a拮抗
ラットに、対照(無菌水)またはフルオキセチン(シグマ社、無菌水に溶解、10mg/kg)、および5HT1aアンタゴニストWAY−100635(無菌水に溶解し、0.01mg/kgで投与)またはフルオキセチン(10または30mg/kg)、およびMDL−100907(5HT2aアンタゴニスト、0.01または0.1mg/kg)を皮下注射した。MDL−100907はナロキソン注射の55分前に投与し、ナロキソン注射の15分後にフルオキセチンまたは組み合わせ(フルオキセチン10mg/kg+WAY−100635:0.01mg/kg)を投与した。
【0073】
最大フラッシュ(ナロキソン後15分;Δ℃、平均±SEM)において、MDL−100907はナロキソン誘発フラッシュの薬物併用による低減を容量依存的に逆転させた(図5A)。反対に、最大フラッシュ(ナロキソン後15分;Δ℃、平均±SEM)において、MDL−100907はフルオキセチンの無効容量を上昇させた(10mg/kg)(図5B)。さらに、フルオキセチン(30mg/kg)投与前のMDL−100907の投与は、ナロキソン誘発ホットフラッシュを軽減し、また軽減効果を増強した。
【0074】
これらのデータにより、5HT2a受容体拮抗がフルオキセチン(10mg/kg)/WAY−100635の組み合わせ、およびフルオキセチン10または30mg/kgに相違する影響を与えることが判明した。したがって、フルオキセチンとの併用における5HT1a受容体拮抗は、低容量および高容量のフルオキセチン投与とは異なり、異なる反応様式をもつことを示唆している。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1A】図1Aは、体温調節における5HT2a受容体の効果を示す図である。
【図1B】図1Bは、体温調節における5HT2a受容体の効果を示す図である。
【図2A】図2Aは、5HT2a受容体が血管運動不安定のモルヒネ依存性ラットモデルにおける体温調節に関与することを示す図である。
【図2B】図2Bは、5HT2a受容体が血管運動不安定のモルヒネ依存性ラットモデルにおける体温調節に関与することを示す図である。
【図3A】図3Aは、ホットフラッシュの軽減における、SRIと5HT2aとを組み合わせて用いて5HT2a受容体に5HTシグナリングを再方向付ける効果を示す図である。
【図3B】図3Bは、ホットフラッシュの軽減における、SRIと5HT2aとを組み合わせて用いて5HT2a受容体に5HTシグナリングを再方向付ける効果を示す図である。
【図4A】図4Aは、ホットフラッシュの軽減における、SRIと組み合わせた5HT2a受容体拮抗の効果を示す図である。
【図4B】図4Bは、ホットフラッシュの軽減における、SRIと組み合わせた5HT2a受容体拮抗の効果を示す図である。
【図5A】図5Aは、SRIと、5HT2a受容体拮抗剤との組み合わせをブロックする5HT2a受容体拮抗剤の性能を示す図である。
【図5B】図5Bは、5HT2a受容体拮抗剤によって活性化されるフルオキセチンの投与量を表す図である。
【図5C】図5Cは、フルオキセチンの有効投与量が5HT2a受容体拮抗剤によって活性化されることを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管運動不安定の治療および/または予防における同時の、分離した、または連続的な使用のための、混合調製物としてのセロトニン再取り込み阻害剤(SRI)と5HT1aアンタゴニストとを含有する製品。
【請求項2】
前記SRIが、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、フルボキサミン、デュロキセチン、アモキサピン、ドキセピン、ブプロピオン、シタロプロムおよびアミトリプチリンから構成される群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記5HT1aアンタゴニストが、N−[2−[4−(2−メトキシフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−N−2−ピリジニルシクロヘキサンカルボキサミド、(R)−N−(2−メチル−(4−インドリル−1−ピペラジニル)エチル)−N−(2−ピリジニル)シクロヘキサンカルボキサミド、およびNAD−299から構成される群から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の製品。
【請求項4】
血管運動不安定の治療および/または予防のための医薬の製造における5HT2aアゴニストの使用方法。
【請求項5】
前記5HT2aアゴニストが、セロトニン、1−(2,5−ジメトキシ−4−ヨードフェニル)−2−アミノプロパン塩酸塩(DOI)および(±)−2,5−ジメトキシ−4−ブロモアンフェタミン臭化水素塩(DOB)から構成される群から選択されることを特徴とする請求項4に記載の使用方法。
【請求項6】
血管運動不安定の治療および/または予防における同時の、分離した、または連続的な使用のための混合調製物の製造における、セロトニン再取り込み阻害剤(SRI)と5HT1aアンタゴニストとの使用方法。
【請求項7】
前記SRIが、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、フルボキサミン、デュロキセチン、アモキサピン、ドキセピン、ブプロピオン、シタロプロムおよびアミトリプチリンから構成される群から選択されることを特徴とする請求項6に記載の使用方法。
【請求項8】
前記5HT1aアンタゴニストが、N−[2−[4−(2−メトキシフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−N−2−ピリジニルシクロヘキサンカルボキサミド、(R)−N−(2−メチル−(4−インドリル−1−ピペラジニル)エチル)−N−(2−ピリジニル)シクロヘキサンカルボキサミド、およびNAD−299から構成される群から選択されることを特徴とする請求項6または7に記載の使用方法。
【請求項1】
血管運動不安定の治療および/または予防における同時の、分離した、または連続的な使用のための、混合調製物としてのセロトニン再取り込み阻害剤(SRI)と5HT1aアンタゴニストとを含有する製品。
【請求項2】
前記SRIが、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、フルボキサミン、デュロキセチン、アモキサピン、ドキセピン、ブプロピオン、シタロプロムおよびアミトリプチリンから構成される群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記5HT1aアンタゴニストが、N−[2−[4−(2−メトキシフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−N−2−ピリジニルシクロヘキサンカルボキサミド、(R)−N−(2−メチル−(4−インドリル−1−ピペラジニル)エチル)−N−(2−ピリジニル)シクロヘキサンカルボキサミド、およびNAD−299から構成される群から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の製品。
【請求項4】
血管運動不安定の治療および/または予防のための医薬の製造における5HT2aアゴニストの使用方法。
【請求項5】
前記5HT2aアゴニストが、セロトニン、1−(2,5−ジメトキシ−4−ヨードフェニル)−2−アミノプロパン塩酸塩(DOI)および(±)−2,5−ジメトキシ−4−ブロモアンフェタミン臭化水素塩(DOB)から構成される群から選択されることを特徴とする請求項4に記載の使用方法。
【請求項6】
血管運動不安定の治療および/または予防における同時の、分離した、または連続的な使用のための混合調製物の製造における、セロトニン再取り込み阻害剤(SRI)と5HT1aアンタゴニストとの使用方法。
【請求項7】
前記SRIが、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、フルボキサミン、デュロキセチン、アモキサピン、ドキセピン、ブプロピオン、シタロプロムおよびアミトリプチリンから構成される群から選択されることを特徴とする請求項6に記載の使用方法。
【請求項8】
前記5HT1aアンタゴニストが、N−[2−[4−(2−メトキシフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−N−2−ピリジニルシクロヘキサンカルボキサミド、(R)−N−(2−メチル−(4−インドリル−1−ピペラジニル)エチル)−N−(2−ピリジニル)シクロヘキサンカルボキサミド、およびNAD−299から構成される群から選択されることを特徴とする請求項6または7に記載の使用方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【公表番号】特表2006−500366(P2006−500366A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−529482(P2004−529482)
【出願日】平成15年8月14日(2003.8.14)
【国際出願番号】PCT/US2003/025650
【国際公開番号】WO2004/016256
【国際公開日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【出願人】(505088569)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年8月14日(2003.8.14)
【国際出願番号】PCT/US2003/025650
【国際公開番号】WO2004/016256
【国際公開日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【出願人】(505088569)
【Fターム(参考)】
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