説明

温水パネルと温水パネルを用いた暖房床の施工方法

【課題】従来の温水パネルの接合方法によると、床下地の穴が温水パネルと重なるように開けられる必要がある場合に、貫通孔の位置調整が難しい。さらに、配管工事を行う際に床下から配管を引っ張ったときに配管を傷つける可能性ががあった。
【解決手段】床下地材を面一に敷設した床下地を形成する床下地施設工程と、該床下地上に温水パネルを一体化する温水パネル施設工程と、ヘッダー部材を変形中心とし、該ヘッダー部材に接続された引出パイプを折り曲げない程度に変形させたときに、該引出パイプの先端に接続された直角エルボーが通過することのできる床下地上の任意位置に、室内空間と床下空間とを連通するように貫通孔を設ける孔開け工程と、該貫通孔上に直角エルボーを位置させるとともに連通パイプを貫通孔に挿入する配管落とし工程と、該連通パイプの先端に接続されたエルボー継手をボイラー連結管と接続する床下配管工程とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、専門性の高い配管工事と、大工工事とを効率よく進めることができる床暖房に使用される温水パネルと温水パネルの施工方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来の温水マットとして、特許文献1のような温水式床暖房パネルの施工方法が提案されている。すなわち、断熱材の上側に木質材を捨て貼りして床下地を構成する一方、予め、床暖房パネルにおける温水パイプの端部を引き出す位置で裏面材に設けられている開口部から上記温水パイプの端部をパネル下面に引き出しておき、上記床暖房パネルを上記床下地材上に施工する際に、床下地材において上記パネル下面から引き出された温水パイプの端部の位置に相当する箇所に床下まで貫通する孔部を設け、上記パネルの下面に引き出された温水パイプの端部を上記孔部を通して床下側に引き出した後、上記パネルを床下地材に固着し、全てのパネルの床下地材への固着後に、上記床下に引き出した温水パイプの端部を接続することを特徴とする温水式床暖房パネルの施工方法である。
【0003】
このとき使用される温水パイプとヘッダー部材、温水パイプ同士の接続等には、タケノコ継手と呼ばれる抜け止め防止部を有する金属継手が一般的に用いられる。このタケノコ継手と温水パイプの接続には、専用工具を必要とし、配管業者等の専門業者が行う必要があった。専用工具が無くとも接合は可能であるが、10年以上という長期使用に耐えるため、手作業ではかなり手間と根気を必要とする接合作業が必要であった。
【0004】
従って、特許文献1のような温水式床暖房パネルの施工方法によると、温水パネルを設置するときに、予め床下地材に室内と床下空間を連通する貫通孔を設け、この貫通孔を通して引き出した温水パイプを、貫通孔を通して床下に引き出しておくので、全ての大工による工程を終えた後に、床下に引き出した配管接続の工程を配管業者が行なえるため、大工による工程と配管業者等の専門業者による工程を完全に分離することができ、効率的である。
【0005】
しかしながら、このような温水式床暖房パネルの施工方法によると、あらかじめ温水パネルから温水パイプを引き出した位置に合うように床下地に貫通孔を設けておく必要がある。この場合、貫通孔は、できるだけ小さいほうが強度的に好ましく、穴の位置の調整が難しかった。さらに、貫通孔を開けたときに、軸材である大引きや根太と干渉してしまったときに、位置をずらす必要がある。このような場合、貫通孔に合うように、さらに温水パイプを引き出す必要があり、温水パイプを引き出した位置の床表面は、温まらないという問題があった。
【0006】
暖まらない部分を無くすために配管を延長して任意位置まで延出することも可能であるが、このような場合、さらに配管業者による配管工事が必要であり、大工による工程と配管業者による工程を分離できないという問題があった。
【0007】
上記問題を解決するために、特許文献2のような連結温水床暖房パネルが提案されている。すなわち、床板材の裏面に形成された収容凹溝に温水パイプが埋め込まれた温水床暖房パネルを二枚以上有し、互いの温水パイプが連結されて成る連結温水床暖房パネルであって、少なくとも一つの温水床暖房パネルにおいては、床下地を貫通してその裏面側に突き出ることになる落とし込みパイプ部がパネル面に対して直交し得るように前記温水パイプに接続されており、前記落とし込みパイプ部に繋がる前記温水パイプの所定長パイプ部が収容凹溝に非固定でパネル面の水平方向に引出し及び収容可能に設けられていることを特徴とする。また、この連結温水床暖房パネルを使った施工方法は、床下地に貫通丸穴を形成する工程と、二枚の温水床暖房パネルにおける表面を互いに向かい合わせて重ねた状態で上側の温水床暖房パネルの所定長パイプ部を引出して落とし込みパイプ部の先端部を前記貫通丸穴に差し込む工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
このような連結温水床暖房パネルを使うことにより、貫通孔を温水パネルが覆っていない床下地の任意位置に設けることができ、さらに、穴を開けたときに、軸材である大引きや根太と干渉してしまったときに、位置を簡単にずらすことが可能である。温水パイプを任意長さ引き出して、貫通孔を通して床下に落としておけばよい。この部分の強度が弱い場合は、必要に応じて温水パネルと略同厚のカバー部材等を設けておけばよい。
【0009】
しかし、特許文献2の発明を実現するためには、落とし込みパイプ部に繋がる温水パイプの所定長パイプ部が収容凹溝に非固定でパネル面の水平方向に引出し及び収容可能に設けられている必要がある。この場合、温水パネル内を温水パイプが自由に移動可能なため、床下配管時に床下から引っ張ったり、押し込んだりすることにより、温水パイプが貫通孔や温水パネルの角部にこすれて、温水パイプを傷つける可能性があるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−304169号公報
【特許文献2】特開平2002−228171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされた発明であり、専門性の高い配管工事と、大工工事とを効率よく進めることができるだけでなく、施工性に優れ、配管を傷つけることなく配管工事ができる温水パネルと温水パネルを用いた暖房床の施工方法に関する発明である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成すべく、請求項1にかかる発明においては、板材表面または板材裏面に形成された収容凹溝に温水パイプが埋め込まれ、該板材端部には上記温水パイプを接続可能なヘッダー部材が接続され、該ヘッダー部材には可撓性樹脂からなる引出パイプが接続され、該引出パイプの他端には直角エルボーが接続され、該直角エルボーの他端には連通パイプが接続され、該連通パイプの先端にはエルボー継手が接続されていることを特徴とする。
【0013】
上記構成によると、温水パネル端部に設けられたヘッダー部材には引出パイプが接続され、床下地と平行に配置される。さらにこの引出パイプと連通パイプは、貫通孔上に位置する直角エルボーを介して直角に配置されるため、予め床下地上に固着された温水パネルから引き出された配管を、床下にて配管業者が配管をする際に、下から引っ張った場合も、床下地材の貫通孔角部で配管がこすれて破損したり、折れ曲がったりすることがない。
【0014】
請求項2にかかる発明においては、請求項1に記載の温水パネルを用いた暖房床の施工方法であって、床下地材を面一に敷設した床下地を形成する床下地施設工程と、該床下地上に温水パネルを一体化する温水パネル施設工程と、ヘッダー部材を変形中心とし、該ヘッダー部材に接続された引出パイプを折り曲げない程度に変形させたときに、該引出パイプの先端に接続された直角エルボーが通過することのできる床下地上の任意位置に、室内空間と床下空間とを連通するように貫通孔を設ける孔開け工程と、該貫通孔上に直角エルボーを位置させるとともに連通パイプを貫通孔に挿入する配管落とし工程と、該連通パイプの先端に接続されたエルボー継手をボイラー連結管と接続する床下配管工程とからなることを特徴とする。
【0015】
上記施工方法によると、温水パネルを設置するときに、予め床下地材に室内と床下空間を連通する貫通孔を設け、この貫通孔を通して引き出した連通パイプを、貫通孔を通して床下に引き出しておくので、全ての大工による工程を終えた後に、床下に引き出した配管接続の工程を配管業者が行なえるため、大工による工程と配管業者等の専門業者による工程を完全に分離することができ、効率的である。
【0016】
請求項3にかかる発明においては、請求項2に記載の温水パネルを用いた暖房床の施工方法における前記配管落とし工程の後の工程において、 表面側に化粧シートが貼着一体化された床仕上材を用いて、前記温水パネルと、前記引出パイプと、前記直角エルボーと、前記貫通孔とを覆うように上記床仕上材を施設する床仕上工程を有することを特徴とする。ここで、上記配管落とし工程の後の工程とは、配管落とし工程に続いても良いし、続かなくても良いという意味であり、配管落とし工程よりも後の工程であることを意味する。
【0017】
上記施工方法によると、床仕上材により表面が被覆されるため、美麗な暖房床を提供することができる。この場合、予め連通パイプが床下空間に引き出されているため、床仕上工程を終えた後に床下に引き出した配管とボイラーとの配管接続工程を行っても良いし、床仕上工程と配管接続工程を同時進行することもでき、いずれの場合も、大工による作業工程と、配管業者による作業工程を分離することが出来、効率的である。
【0018】
請求項4にかかる発明においては、請求項2に記載の温水パネルを用いた暖房床の施工方法における前記配管落とし工程の後の工程において、裏面側に収納凹部を設け且つ温水パネルと略同一厚みのカバー部材を用いて、前記温水パネルと、前記引出パイプと、前記直角エルボーと、前記貫通孔とを上記収納凹部に収納するようにカバー部材を施設するカバー工程と、上記温水パネル及び上記カバー部材を覆うように前記床仕上材を施設する床仕上工程とを有することを特徴とする。ここで、上記配管落とし工程の後の工程とは、配管落とし工程に続いても良いし、続かなくても良いという意味であり、配管落とし工程よりも後の工程であることを意味する。
【0019】
上記施工方法によると、引出パイプや直角エルボー、貫通孔等がカバー部材により覆われるため、床仕上材を施工する場合にも、部分的な強度不安を解消することが出来る。さらに、温水パネルと同厚であるので、床仕上工程において、美麗に床仕上材を施工することができる。
【0020】
請求項5にかかる発明においては、前記貫通孔が、連通パイプが通過し、且つ直角エルボーが通過しない大きさであることを特徴とする。
【0021】
上記施工方法によると、貫通孔を通じて床下に引き出された貫通パイプを、床下から引っ張ったときも、直角エルボーが貫通孔を通過することがない。従って、床下にて配管業者が配管をする際に、下から引っ張った場合も、床下地材の貫通孔角部で配管がこすれて破損したり、折れ曲がったりすることがない。
【発明の効果】
【0022】
以上の説明のように、請求項1の温水パネルでは、引出パイプと貫通パイプが直角エルボーを介して接続されているため、床下にて配管業者が配管をする際に、下から引っ張った場合も、床下地材の貫通孔角部で配管がこすれて破損したり、折れ曲がったりすることがない。さらに、予め引出パイプと、連通パイプとが直角エルボーを介して接続されているため、床下地より上で実施される大工が行う施工工事において、配管業者が必要とするような専門工具を必要としない。
【0023】
請求項2〜4の温水パネルを用いた暖房床の施工方法によると、予め引出パイプと、連通パイプとが直角エルボーを介して予め温水パイプに一体に接続されているため、大工の床上工事において、配管業者が必要とするような専門工具を必要としない。また、温水パネルを設置するときに、予め床下地材に室内と床下空間を連通する貫通孔を設け、この貫通孔を通して引き出した連通パイプを、貫通孔を通して床下に引き出しておくので、全ての大工による工程を終えた後に、床下に引き出した配管接続の工程を配管業者が行なえるため、大工による工程と配管業者等の専門業者による工程を完全に分離することができ、効率的である。
【0024】
請求項5の温水パネルを用いた暖房床の施工方法によると、前記貫通孔の大きさが、エルボー継手と連通パイプとが通過し、且つ引き出しパイプ及び連通パイプを接続した状態の直角エルボーが通過しない大きさであることを特徴とするので、配管業者が床下での配管作業時に、貫通孔を通じて床下に引き出された貫通パイプを、床下から引っ張ったときも、直角エルボーが貫通孔を通過することがない。従って、配管をする際に、下から引っ張った場合も、床下地材の貫通孔角部で配管がこすれて破損したり、折れ曲がったりすることがない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1に係る温水パネルの正面図である。
【図2】本発明の別の実施例2に係る温水パネルの正面図である。
【図3】本発明の実施例1にかかる温水パネルを用いた暖房床の施工方法を示すフロー図である。
【図4】本発明の実施例2にかかる温水パネルを用いた暖房床の施工方法を示すフロー図である。
【図5】本発明の実施例2に係る温水パネルの部分拡大正面図である。
【図6】本発明の実施例2に係る温水パネルの部分断面図である。
【図7】本発明の実施例2に係る温水パネルの部分拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の温水パネルとその施工方法の実施形態を、図面に基づき説明する。尚、本発明は本実施形態の記載内容に限られるものではない。
【0027】
図1は、本発明の実施形態1に係る温水パネル1を示し、図2は、本発明の実施形態2に係る温水パネル1を示す。本発明の温水パネルは、板材2表面(または裏面)に形成された収容凹溝3に温水パイプ10が埋め込まれ、該板材2端部には上記温水パイプ10を接続可能なヘッダー部材21が接続され、該ヘッダー部材21には可撓性樹脂からなる引出パイプ11が接続され、該引出パイプ11の他端には直角エルボー22が接続され、該直角エルボー22の他端には連通パイプ12が接続され、該連通パイプ12の先端にはエルボー継手23が接続されていることを特徴とする。
【0028】
(板材)
板材2は、一般的な合板、インシュレーションボード、MDF、ハードボード等の木質繊維板やパーティクルボード等の木質板材、ロックウール、グラスウール等の無機質板材、ポリエチレン、ポリプロピレンやポリスチレン等の樹脂発泡板材等が使用される。成形性、断熱性、施工性等を考慮すると、樹脂発泡板体や低密度繊維板が好適に用いられる。このとき、小根太部材27の間に設けられる隙間部材4は、板材2と同厚・同質材料で構成されることが好ましく、さらに予め板材2と一体的に設けられても良い。
【0029】
(収容凹溝)
収容凹溝3は、熱圧成型、切削加工等により設けられる。熱圧成型は、例えば樹脂発泡体の場合は、予め所望の凹溝が設けられるように成型された金型により熱圧成型する。
【0030】
また、例えば繊維板の場合は、予め所望の凹溝が設けられるように成型された金型により熱圧成型する。この場合、溝が設けられる部分に熱硬化性樹脂水溶液を塗布し、熱圧プレスすることにより、凹溝を固定化するようにしてもよい。このとき使用される熱硬化性樹脂としては、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等の水溶液または水分散液が好適に用いられる。
【0031】
収容凹溝3の深さ及び幅は適宜選択すればよいが、例えば開口側半部が断面略正方形状で且つ奥側半部が断面半円形状のもので、その深さ及び幅は7〜9mm程度にされるのが一般的である。また、収容凹溝3内には、均熱を目的としたアルミ箔等の金属薄膜が溝形状に沿うように、または板材2および温水パネル1の全面を面均一に覆うように設けられていても良い。
【0032】
(温水パイプ)
温水パイプ10としては、加工性、熱伝導性、耐久性等を考慮し、架橋ポリエチレン製のパイプが最も好適に用いられる。ここで、凹溝内に施設される温水パイプ10、引出パイプ11、連通パイプ12は、それぞれ、必要に応じた太さの温水パイプ10が選択される。これらを全て同じ外径の架橋ポリエチレン管を使用してもよいし、一部を太くしてもよい。好適には、外径6.5mm〜8.5mm程度のものを温水パイプ10、引出パイプ11、連通パイプ12として使用すればよい。
【0033】
引出パイプ11の長さは、50mm〜300mm程度であることが好ましく、好適には、100〜250mm程度である。引出パイプ11の長さが50mmに満たない場合は、貫通孔40の位置をずらす効果がほとんど期待できない。一方、300mmを超えると、施工時に邪魔になるだけで無く、例えば引出パイプ11を覆うようにカバー部材60を設ける場合に、大きなカバー部材60が必要になる。
【0034】
連通パイプ12は、少なくとも床仕上材50と、温水パネル10(または温水パネル10と同厚のボーダー部材70)と、床下地30との厚みを総じた長さより長ければよい。これにより、床下地30の所望位置に設けられた貫通孔40を通して、床下空間Aに連通パイプ12及びヘッダー部材23を引き出すことが出来る。
【0035】
(ヘッダー部材)
また、板材2の端部には、ヘッダー部材21が設けられる。ヘッダー部材21には、温水パイプ10の両端がヘッダー部材入水側、ヘッダー部材排水側にそれぞれ接続され、さらにクリップ24によりそれぞれ抜け止めされている。さらに、ヘッダー部材入水側、ヘッダー部材排水側に対応した接続部には、それぞれ引出パイプ11が接続され、それぞれクリップ24により抜け止めされている。
【0036】
(直角エルボー)
引出パイプ11の、ヘッダー部材21と接続された他端部には直角エルボー22が接続され、クリップ24により抜け止めされている。直角エルボー22の他端部には、連通パイプ12が接続され、クリップ24により抜け止めされており、引出パイプ11と連通パイプ12とは直角に接続されている。
【0037】
(エルボー継手)
連通パイプ12の直角エルボー22と接続された他端部には、エルボー継手23が接続され、クリップ24により抜け止めされている。これらの連通パイプ12およびエルボー継手23は、床下地30上に設けられた貫通孔40を通して床下空間Aに引き出されている。配管業者は、この引き出されたエルボー継手23を、床下空間Aにおいて、ボイラー100と接続されている配水管15と接続する。このとき、配水管15の先端に設けられている継手25は、本発明のエルボー継手23と、ワンタッチ式で接続されるようになっており、CHクリップ26で外れないように固定される。
【0038】
(カバー部材)
カバー部材60は、収納凹部61とカバー柱62とを有する。収納凹部61には、裏面に引出パイプ及び直角エルボー(直角エルボーは収納しない場合もある)を収納可能であり、温水パネルと略同一厚みに形成されている。材質は、樹脂製、金属製、木製等どのような材料でも良いが、好ましくは成形性が容易な樹脂製のものが良く用いられる。特に、床仕上材が3〜6のような薄い仕上材を使用する場合は、樹脂の中でも硬質なポリエステル系、ポリオレフィン系等の硬質且つ耐熱性のある樹脂や、アルミやステンレス等の金属製のカバー部材を用いるのが好ましい。カバー柱62を床下地材30上に当接した状態で収納凹部61内に引出パイプ及び直角エルボー(直角エルボーは収納しない場合もある)を収納した状態で、温水パネル1とカバー部材60とは、略面一の状態であることが肝要である。
【0039】
(ボーダー部材)
この場合、該温水パネル1及びカバー部材60と面一となるように、これらと同じ厚みのボーダー部材70を周辺に設置してもよい。ボーダー部材70は、木質材料、樹脂発泡体をはじめ、どのような材料でも良いが、施工性に優れた板状材が好ましく、温水パネル1及びカバー部材60と略同一厚みであることが肝要である。ボーダー部材70は、ビスや釘により(場合によっては接着剤を併用しても良い)、床下地30と一体化される。
【0040】
(床仕上材)
床仕上材50は、合板(針葉樹合板、熱帯林材合板、早生樹合板、植林木合板等)、単板積層板、木質繊維板(インシュレーションボード、MDF、ハードボード等)、パーティクルボード等をはじめとした木質基材や、無機繊維板、石膏ボード、木毛セメント板等の無機基材や、リノリューム、オレフィン、塩化ビニル等の樹脂基材等を基材とし、この表面に紙、樹脂含浸化粧紙、樹脂化粧シート、突板等の化粧シートを貼着一体化した化粧材が使用される。
【0041】
床仕上材50の厚みは、1mm〜15mm程度、好ましくは、3〜12mm程度のものが使用される。この場合、3〜6mm程度の薄い厚みの床仕上材50を使用する場合は、引出パイプ11や貫通孔40が裏面に位置する部分の強度不足が懸念されるため、前記カバー部材60を併用し、引出パイプ11や貫通孔40をカバーするのが好ましい。
【0042】
(施工方法)
本発明に係る施工方法は、図3に示すように、(a)床下地施設工程、(b)温水パネル施設工程、(c)孔開け工程、(d)配管落とし工程、(e)床仕上工程、(f)床下配管工程からなる。または、図4に示すように、(e)床仕上工程と(f)床下配管工程とを同時進行させても良い。(a)〜(e)の工程は床上空間Bで大工が行い、(f)の工程のみ床下空間Aで配管業者が行う。
【0043】
(a)床下地施設工程は、床上空間Bで大工が行い、床スラブ上または大引きや根太等の軸材上に合板やパーティクルボード等からなる床下地材30を面均一に施設し、床下地を形成する。
【0044】
次に(b)温水パネル施設工程は、床上空間Bで大工が行い、温水パネル1の端部に設けられたヘッダー部材21に接続された引出パイプ11を引き出した状態で、温水パネル1の小根太部材27の部分と床下地材30とを釘、ビス等を用いて固定する。
【0045】
さらに(c)孔開け工程は、床上空間Bで大工が行い、おおよその軸材の位置から判断して、貫通孔40を設ける。この場合、引出パイプ11の先端に設けられた直角エルボー22を持って、引出パイプ11が折り曲がらないように移動させ、直角エルボー22が直上になる位置にドリル等で貫通孔40を形成する。貫通孔の直径は、連通パイプ12またはエルボー継手23を床下空間Aから引っ張ったときに、直角エルボー22が通過しない大きさとし、例えば、連通パイプ12を1本のみ引き出す場合は直径15〜25mm程度、連通パイプ12を2本引き出す場合は直径30〜40mm程度とするのが好ましい。これにより、配管業者が床下空間Aで配管接続作業を行う際に引っ張っても、直角エルボー22が床下空間Aまで引き出されることなく、引出パイプ11が貫通孔40角部等で傷つくのを防ぐことが出来る。例えば図5に示すように、貫通孔40を形成したときに、土台や大引き等の軸材と重なった場合は、例えば図7に示すように貫通孔40の位置を変更すればよい。
【0046】
次に(d)配管落とし工程は、床上空間Bで大工が行い、床上空間Bから床下空間Aに向かってエルボー継手23及び連通パイプ12を、貫通孔40に落とし込み、直角エルボー22を貫通孔40の真上になるように配置する。
【0047】
次に(e)床仕上工程は、床上空間Bで大工が行い、前述のようにして得られた引出パイプ11、直角エルボー22、貫通孔40を覆うように床仕上材50を釘、接着剤等で一体化する。
【0048】
最後に(f)床下配管工程は、床下空間Aで配管業者が行い、例えば図6に示すように、床下空間Aに貫通孔40を通じて引き出された連通パイプ12の先端のエルボー継手23と、継手25とを接続し、CHクリップ26で固定する。これにより、ボイラー100と温水パネル1は完全に接続される。
【0049】
このとき、床上空間Bにおいて大工により行われる(e)床仕上工程と、床下空間Aにおいて配管業者により行われる(f)床下配管工程とは、順不同の工程であり、どちらを先に行っても良いし、同時に進行させてもよい。好ましくは、(e)床仕上工程の前に(f)床下配管工程を行うことで、配管工程終了後の水漏れ検査において、温水パイプ10、ヘッダー部材21、引出パイプ11、直角エルボー22、連通パイプ12、エルボー継手23、継手25、配水管15等に接続不良が発見された場合も、確認作業が容易となる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の温水パネルとその施工方法の実施例を、図面に基づき説明する。尚、本発明は本実施例の記載内容に限られるものではない。
【0051】
(実施例1)
実施例1に係る発明の温水パネル1として、図1に示すように、11.5mm厚さの発泡ポリスチレンからなる板材2と、小根太部材27及び隙間部材4とを交互に配し、この裏面側に全体を覆うように0.5mmの木質薄単板を積層一体化した。さらに、板材2及び隙間部材4表面側に、所定形状に収容凹溝3を形成した。その後、収容凹溝3を含む板材2の全表面に収容凹溝3に沿う形状で、0.1mmのアルミニウム箔を貼着一体化した。さらに、この収容凹溝3内に温水パイプ10を配管した。片方の板材2の端部にはヘッダー部材21を設け、温水パイプ10の両端をそれぞれ入水側ヘッダー部材、排水側ヘッダー部材と接続し、クリップ24、24で抜け止めした。さらに、ヘッダーからは入水用の引出パイプ11と排水用の引出パイプ11をそれぞれ対応した位置に接続した。このとき、引出パイプ11、11は、それぞれ170mm、190mmの長さとした。さらに、それぞれの引出パイプ11、11の他端部には、それぞれ、直角エルボー22、22を接続し、クリップ24、24で抜け止めした。さらに、直角エルボー22、22の他端部には、300mm長さの連通パイプ12、12を接続し、クリップ24、24で抜け止めした。さらに、連通パイプ12、12の先には、エルボー継手23、23をそれぞれ接続し、クリップ24、24で抜け止めした。こうして、温水パネル1を得た。
【0052】
こうして得られた温水パネル1を、図3に示す施工方法で施工した。すなわち、まず、土台上に12mmの床用構造合板からなる床下地材30を釘着し、面均一な床下地を形成した。こうして得られた床下地の所定位置に温水パネル1を配置し、引出パイプ11を引き出した状態で小根太部27部分をビスにて床下地30に固定した。さらに、引出パイプ11先端の直角エルボー22を持って移動させ、土台と重ならないであろう位置に直径30mmの貫通孔40を設けた。さらに、貫通孔40にエルボー継手23及び連通パイプ12を床下空間A向けて落とし込み、貫通孔40上に直角エルボー22が位置するように調整した。
【0053】
次に、温水パネルと同じ厚みである12mmのボーダー部材70を引出パイプ11、直角エルボー22を除く部分の床下地30にビスにて固定し、面均一な暖房床面を得た。さらに、この温水パネル1、ボーダー部材70、引出パイプ11、直角エルボー22、貫通孔40を覆うように床仕上材50を釘と接着剤を併用し、施工した。
【0054】
次に、床下空間Aにおいて、ボイラー100に接続された配管15の先端に設けられた継手25と、床下空間Aに貫通孔40より引き出された連通パイプ12の先端に設けられたエルボー継手23とを接続し、CHクリップ26で接合した。
【0055】
(実施例2)
実施例2に係る発明の温水パネル1として、図2に示すように、12mm厚さの発泡ポリスチレンからなる板材2と、小根太部材27及び隙間部材4とを交互に配し、この裏面側に全体を覆うように0.1mmのポリサンド紙を積層一体化した。さらに、板材2及び隙間部材4表面側に、所定形状に収容凹溝3を形成した。その後、収容凹溝3を含む板材2の全表面に収容凹溝3に沿う形状で、0.1mmのアルミニウム箔を熱融着した。さらに、この収容凹溝3内に温水パイプ10を配管した。最後に、これらの温水パイプ12、板材2、隙間部材4及び小根太部材27の表面全体を覆うように0.1mmのアルミニウム箔からなるシート状物を積層一体化した。板材2の端部にはヘッダー部材を設け、それぞれ入水側ヘッダー部材21、排水側ヘッダー部材21とした。温水パイプ10の両端をそれぞれ入水側ヘッダー部材21、排水側ヘッダー部材21と接続し、クリップ24、24で抜け止めした。さらに、ヘッダーからは入水用の引出パイプ11と排水用の引出パイプ11をそれぞれ対応した位置に接続した。このとき、引出パイプ11、11は、それぞれ180mmの長さとした。さらに、それぞれの引出パイプ11、11の他端部には、それぞれ、直角エルボー22、22を接続し、クリップ24、24で抜け止めした。さらに、直角エルボー22、22の他端部には、300mm長さの連通パイプ12、12を接続し、クリップ24、24で抜け止めした。さらに、連通パイプ12の先には、エルボー継手23、23をそれぞれ接続し、クリップ24、24で抜け止めした。こうして、温水パネル1を得た。
【0056】
こうして得られた温水パネル1を、図4に示す施工方法で施工した。すなわち、まず、土台上に12mmの床用構造合板からなる床下地材30を釘着し、面均一な床下地を形成した。こうして得られた床下地の所定位置に温水パネル1を配置し、引出パイプ11を引き出した状態で小根太部材27部分をビスにて床下地30に固定した。さらに、引出パイプ11先端の直角エルボー22を持って移動させ、土台と重ならないであろう位置に直径30mmの貫通孔40を設けた。さらに、貫通孔40にエルボー継手23及び連通パイプ12を床下空間A向けて落とし込み、貫通孔40上に直角エルボー22が位置するように調整した。
【0057】
次に、床上空間Bにおける大工による床仕上工程と、床下空間Aにおける配管業者による配管工程とを同時に進行させた。
【0058】
床仕上工程としては、引出パイプ11、直角エルボー22及び貫通孔40を覆うようにカバー部材60を取り付けた。カバー部材60は、収納凹部61とカバー柱部材62からなり、温水パネル1と略同一厚みの12mmである。さらに、温水パネル1と同じ厚みである12mmのボーダー部材70をカバー部材60を除く部分の床下地30にビスで固定し、温水パネル1、カバー部材60、ボーダー部材70からなる面均一な暖房床面を得た。次に、この温水パネル1、ボーダー部材70、カバー部材60を覆うように12mm厚の合板からなる床仕上材50を釘と接着剤を併用し、施工した。
【0059】
次に、床下空間Aにおいて、ボイラー100に接続された配管15の先端に設けられた継手25と、床下空間Aに貫通孔40より引き出された連通パイプ12の先端に設けられたエルボー継手23とを接続し、CHクリップ26で接合した。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、床下地上に施工される温水式床暖房下地材に使用される温水パネルと、この温水パネルを使用した効率の良い温水式の温水パネルを用いた暖房床の施工方法に関する発明である。
【符号の説明】
【0061】
A 床下空間
B 床上空間
1 温水パネル
2 板材
3 収容凹溝
4 隙間部材
10 温水パイプ
11 引出パイプ
12 連通パイプ
15 配水管
21 ヘッダー部材
22 直角エルボー
23 エルボー継手
24 クリップ
25 継手
26 CHクリップ
27 小根太部材
30 床下地材
40 貫通孔
50 床仕上材
60 カバー部材
61 収納凹部
62 カバー柱
70 ボーダー部材
100 ボイラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材表面または板材裏面に形成された収容凹溝に温水パイプが埋め込まれ、該板材端部には上記温水パイプを接続可能なヘッダー部材が接続され、該ヘッダー部材には可撓性樹脂からなる引出パイプが接続され、該引出パイプの他端には直角エルボーが接続され、該直角エルボーの他端には連通パイプが接続され、該連通パイプの先端にはエルボー継手が接続されていることを特徴とする温水パネル
【請求項2】
請求項1に記載の温水パネルを用いた暖房床の施工方法であって、
床下地材を面一に敷設した床下地を形成する床下地施設工程と、
該床下地上に温水パネルを一体化する温水パネル施設工程と、
ヘッダー部材を変形中心とし、該ヘッダー部材に接続された引出パイプを折り曲げない程度に変形させたときに、該引出パイプの先端に接続された直角エルボーが通過することのできる床下地上の任意位置に、室内空間と床下空間とを連通するように、貫通孔を設ける孔開け工程と、
該貫通孔上に直角エルボーを位置させるとともに連通パイプを貫通孔に挿入する配管落とし工程と、
該連通パイプの先端に接続されたエルボー継手をボイラー連結管と接続する床下配管工程と、からなることを特徴とする温水パネルを用いた暖房床の施工方法
【請求項3】
前記配管落とし工程の後の工程において、
表面側に化粧シートが貼着一体化された床仕上材を用いて、
前記温水パネルと、前記引出パイプと、前記直角エルボーと、前記貫通孔とを覆うように上記床仕上材を施設する床仕上工程を有することを特徴とする請求項2に記載の温水パネルを用いた暖房床の施工方法
【請求項4】
前記配管落とし工程の後の工程において、
裏面側に収納凹部を設け且つ温水パネルと略同一厚みのカバー部材を用いて、
前記温水パネルと、前記引出パイプと、前記直角エルボーと、前記貫通孔とを上記収納凹部に収納するようにカバー部材を施設するカバー工程と、
上記温水パネル及び上記カバー部材を覆うように前記床仕上材を施設する床仕上工程とを有することを特徴とする請求項3に記載の温水パネルを用いた暖房床の施工方法
【請求項5】
前記貫通孔の大きさが、エルボー継手と連通パイプとが通過し、且つ引き出しパイプ及び連通パイプを接続した状態の直角エルボーが通過しない大きさであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の温水パネルを用いた暖房床の施工方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−261681(P2010−261681A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114404(P2009−114404)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】