説明

温水暖房装置

【課題】燃焼量可変の温水暖房装置において、熱交換器や排気経路での結露の発生防止を図る。
【解決手段】水を加熱する熱交換器12と、熱交換器12を加熱する燃焼部9と、温水の温度を検出する温水温度検出手段11と、温水の温度を設定する温水温度設定手段18と、加熱された温水を循環させる循環ポンプ14とを備え、放熱器3との間に温水循環回路5を形成し、熱交換器12にて加熱された温水を循環ポンプ14により温水循環回路5を循環させて暖房運転を行うものであって、予め設定された下限燃焼量以上且つ上限燃焼量以下の範囲内で燃焼部9の燃焼量を可変させ、温水温度検出手段11の検出する温度が温水温度設定手段18で設定された設定温度になるよう燃焼量を制御する制御部21を備えた温水暖房装置において、制御部21は、温水温度設定手段18により設定された設定温度が低い程、下限燃焼量を高く設定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、温水暖房装置に関し、熱交換器や排気経路の結露発生の防止を図ったものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の温水暖房装置においては、図4に示すようなものがあった。101は温水暖房装置本体で、この温水暖房装置本体101で熱交換して加熱した温水を、往き管102から床暖房パネルやパネルヒータや融雪用の放熱器等の放熱器103を通過させて放熱した後、戻り管104から温水暖房装置本体101に戻す温水循環回路105を形成するものである。また、106は燃焼量を可変可能なバーナ、107は温水循環回路105を循環させる温水を貯湯する缶体、108は缶体107内に設けられ、バーナ106の燃焼炎及び燃焼排ガスにより加熱されて缶体107内の温水と熱交換する熱交換器、109は缶体107内の温水の温度を検出する温水サーミスタ、110は缶体107内の温水を温水循環回路105に循環させる循環ポンプ、111は熱交換器108を通過した燃焼排ガスを温水暖房装置本体101の外部へと導く排気筒等の排気経路である。
【0003】
112は前記温水暖房装置本体101の暖房運転の発停を指示するリモコンであり、運転スイッチ113を有していると共に、熱交換器108で加熱する缶体107内の温水の温度を設定する温水温度設定スイッチ114を有しているものである。また、115はマイクロコンピュータを主体としてこの温水暖房装置本体101の制御を行う制御部で、リモコン112と温水サーミスタ109からの入力を受け、循環ポンプ110の駆動とバーナ106での燃焼量の調整を制御するものである。
【0004】
次に、作動について説明すると、リモコン112の運転スイッチ113の操作により、暖房運転が指示されると、制御部115はバーナ106の燃焼を開始させ、熱交換器108を加熱し缶体107内の温水を加熱すると共に、循環ポンプ110を駆動させて温水循環回路105に温水を循環させ、放熱器103に温水を供給して被空調空間の暖房が行われるものである。この暖房運転の際に、缶体107内の温水の温度がリモコン112の温水温度設定スイッチ114によって設定された設定温度近傍に維持されるように、制御部115はバーナ106での燃焼量を調整するものであった。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−116267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この従来の温水暖房装置は、前記暖房運転の際に、制御部115は温水サーミスタ109の検出する缶体107内の温水温度を監視し、温水サーミスタ109の検出する温度が、温水温度設定スイッチ114によって設定された設定温度に近づくと、燃焼量を徐々に下げていき、缶体107内の温水温度を設定温度付近に維持するのが可能であれば予め設定された下限燃焼量まで燃焼量を下げて燃焼を行うものであるが、前記温水温度設定スイッチ114で設定する設定温度が高い場合は、バーナ106での燃焼量が下限燃焼量に下がったとしても、缶体107内の温水温度と燃焼排ガスとの温度差が小さく熱交換効率が低いため、熱交換器108及び排気経路111を通過する燃焼排ガスの温度は結露が発生する程に低くなることはないが、設定温度が低い場合においては、バーナ106での燃焼量が下限燃焼量まで下がると、缶体107内の温水温度と燃焼排ガスとの温度差が大きく熱交換効率が高いため、熱交換器108及び排気経路111を通過する燃焼排ガスの温度は低くなって、熱交換器108や排気経路111で結露することがあり、それにより、熱交換器108や排気経路111が腐食してしまうおそれがあると共に、寒冷地等においては、熱交換器108や排気経路111で発生した結露が凍結する可能性があり、熱交換器108や排気経路111が詰まってしまい燃焼不良を生じるおそれがあるものであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上記課題を解決するために、特に請求項1ではその構成を、水を加熱する熱交換器と、該熱交換器を加熱する燃焼部と、温水の温度を検出する温水温度検出手段と、温水の温度を設定する温水温度設定手段と、加熱された温水を循環させる循環ポンプとを備え、放熱器との間に温水循環回路を形成し、前記熱交換器にて加熱された温水を前記循環ポンプにより前記温水循環回路を循環させて暖房運転を行うものであって、予め設定された下限燃焼量以上且つ上限燃焼量以下の範囲内で前記燃焼部の燃焼量を可変させ、前記温水温度検出手段の検出する温度が前記温水温度設定手段で設定された設定温度になるよう燃焼量を制御する制御部を備えた温水暖房装置において、前記制御部は、前記温水温度設定手段により設定された設定温度が低い程、前記下限燃焼量を高く設定するものとした。
【発明の効果】
【0008】
この発明の請求項1によれば、設定温度が低い程、下限燃焼量を高く設定したことで、温水の設定温度が低く設定されたときの暖房運転において、下限燃焼量で燃焼した場合であっても、熱交換器や燃焼排ガスの排気経路を通過する燃焼排ガスの温度は高くなるので、熱交換器や排気経路で発生する結露を抑制することができ、結露による熱交換器や排気経路の腐食や、寒冷地において結露の凍結による熱交換器や排気経路の詰まりを防止することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の一実施形態の温水暖房装置の概略構成図。
【図2】同一実施形態の要部ブロック図。
【図3】同一実施形態の設定温度に対する燃焼量の範囲を示す図。
【図4】従来の温水暖房装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、この発明の一実施形態の温水暖房装置を図1に基づき説明する。
1は本実施形態における温水暖房装置本体で、この温水暖房装置本体1で熱交換して加熱した温水を、往き管2から床暖房パネルやパネルヒータや融雪用の放熱器等の放熱器3を通過させて放熱させた後、戻り管4から温水暖房装置本体1に戻す温水循環回路5を形成するものである。
【0011】
前記温水暖房装置本体1は、燃焼用空気を送風する送風機6と、灯油を常に一定量貯めている定油面器7と、この定油面器7の灯油を供給する燃料ポンプ8と、送風機6により送風された燃焼用空気と燃料ポンプ8により供給された灯油とによって燃焼を行う燃焼部としてのバーナ9と、温水循環回路5を循環する温水を貯湯する缶体10と、往き管2側の缶体10内の温水の温度を検出する温水温度検出手段としての温水サーミスタ11と、缶体10内に設けられ、バーナ9の燃焼炎及びバーナ9の燃焼により発生した燃焼排ガスにより加熱されて缶体10内の温水と熱交換する熱交換器12と、熱交換器12を通過した燃焼排ガスを温水暖房装置本体1の外部へと導く排気筒等の排気経路13と、缶体10内の温水を温水循環回路5に循環させる循環ポンプ14と、循環ポンプ14と缶体10との間に設けられ、温水中の空気を温水と分離する気水分離器15とが内蔵されているものである。
【0012】
16は温水暖房装置本体1を遠隔操作するリモコンで、リモコン16には、バーナ9の燃焼により熱交換器12を加熱し缶体10内の温水を加熱すると共に、缶体10内の温水を放熱器3に循環させて室内等の被空調空間の暖房を行わせる暖房運転の開始または停止を指示する運転スイッチ17と、熱交換器12で加熱する缶体10内の温水の温度を設定する温水温度設定手段としての温水温度設定スイッチ18と、温水温度設定スイッチ18で設定した温度を表示する表示部19とを備えているものである。なお、この実施形態では温水の設定温度は温水温度設定スイッチ18で20℃〜80℃の間で設定することができるものである。また、20は温水暖房装置本体1に設けられた操作部で、前記リモコン16と同様、運転スイッチ、温水温度設定スイッチ、表示部を備えているものである。
【0013】
21はマイクロコンピュータを主体としてこの温水暖房装置本体1の制御を行う制御部で、図2に示すように、リモコン16または操作部20の各種スイッチの信号や温水サーミスタ11からの信号を受け、送風機6、燃料ポンプ8、循環ポンプ14の制御を行うものである。
【0014】
前記制御部21は、送風機6及び燃料ポンプ8をそれぞれ能力制御して、予め設定された下限燃焼量以上且つ上限燃焼量以下の範囲内で燃焼量を可変できるものであり、前記暖房運転の際は、温水サーミスタ11の検出する缶体10内の温水温度がリモコン16の温水温度設定スイッチ18で設定された設定温度付近の温度になるよう燃焼量を制御するものであり、前記暖房運転開始時は、缶体10内の温水温度が温水温度設定スイッチ18で設定された設定温度に素早く上昇するように、バーナ9の燃焼量を上限燃焼量にし、その後、缶体10内の温水温度が設定温度に近づいてきたらバーナ9の燃焼量を徐々に下げていき、缶体10内の温水温度を設定温度に維持するのが可能であれば予め設定された下限燃焼量まで燃焼量を下げて燃焼を行い、缶体10内の温水温度が設定温度より所定温度高い温度に達したら、バーナ9の燃焼を停止し、缶体10内の温水温度が設定温度より所定温度低い温度に達したら、バーナ9の燃焼を開始させ、缶体10内の温水温度を設定温度に近づけるべく燃焼量を適宜制御するものである。
【0015】
また、前記制御部21は、図3に示すように、温水温度設定スイッチ18で設定される設定温度に応じた燃焼量の範囲を記憶しているものであり、図3中の一点鎖線で示した直線は上限燃焼量を表し、二点鎖線で示した直線は下限燃焼量を表すものである。例えば、設定温度が20℃に設定された場合は、上限燃焼量が23kWで下限燃焼量が15kWであり、制御部21は前記暖房運転の際に、15kW〜23kWの範囲内でバーナ9での燃焼量を可変させ、設定温度が40℃に設定された場合は、上限燃焼量が23kWで下限燃焼量が11kWであり、制御部21は前記暖房運転の際に、11kW〜23kWの範囲内でバーナ9での燃焼量を可変させ、設定温度が80℃に設定された場合は、上限燃焼量が23kWで下限燃焼量が7kWであり、制御部21は前記暖房運転の際に、7kW〜23kWの範囲内でバーナ9での燃焼量を可変させるものである。
【0016】
上述した図3の説明から、温水温度設定スイッチ18で設定される設定温度が低い程、設定温度が高い場合に比べて、下限燃焼量が高く設定されることが分かるが、これによって、温水の設定温度が低く設定されたときの暖房運転において、下限燃焼量で燃焼された場合であっても、下限燃焼量が高く設定されている分、熱交換器12及び排気経路13を通過する燃焼排ガスの温度は高くなるので、熱交換器12や排気経路13で発生する結露を抑制することができ、結露による熱交換器12や排気経路13の腐食や、寒冷地において結露の凍結による熱交換器12や排気経路13の詰まりを防止することができるものである。なお、設定温度毎の下限燃焼量は、その下限燃焼量でバーナ9を燃焼させたときに、熱交換器12から排出される燃焼排ガスの温度が結露を生じる温度よりも少々高い温度となるような燃焼量となっており、予め実験により定められたものである。
【0017】
次に、暖房運転時の作動について説明する。
リモコン16の運転スイッチ17が操作され、暖房運転開始の指示がなされると、制御部21は送風機6及び燃料ポンプ8を駆動させバーナ9での燃焼を開始させ、熱交換器12を加熱し缶体10内の温水を加熱すると共に、循環ポンプ14を駆動させて温水循環回路5に温水を循環させ、放熱器3に温水を供給して被空調空間の暖房を行う暖房運転が実行される。なお、暖房運転開始の際は、制御部21には、リモコン16から温水温度設定スイッチ18によって設定された設定温度の信号が送られ、制御部21はその設定温度と図3に示すような予め記憶された設定温度に応じた燃焼量の範囲とから、上限燃焼量及び下限燃焼量を設定するものである。
【0018】
また、前記暖房運転の際、制御部21は、温水サーミスタ11の検出する缶体10内の温水温度がリモコン16の温水温度設定スイッチ18で設定された設定温度付近の温度になるよう燃焼量を制御するものであり、ここで、設定温度が40℃である場合、前記暖房運転開始時は、缶体10内の温水温度が温水温度設定スイッチ18で設定された設定温度40℃に素早く上昇するように、バーナ9の燃焼量を上限燃焼量である23kWにし、その後、缶体10内の温水温度が設定温度に近づいてきたらバーナ9の燃焼量を徐々に下げていき、缶体10内の温水温度を設定温度に維持するのが可能であれば予め設定された下限燃焼量である11kWまで燃焼量を下げ、下限燃焼量で燃焼を行い、缶体10内の温水温度が設定温度より所定温度高い温度に達したら、バーナ9の燃焼を停止し、缶体10内の温水温度が設定温度より所定温度低い温度に達したら、バーナ9の燃焼を開始させ、缶体10内の温水温度を設定温度に近づけるべく燃焼量を適宜制御するものである。
【0019】
なお、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、本実施形態では、温水を缶体10内に貯湯し、この缶体10内の温水を熱交換器12にて熱交換により加熱し、その加熱された缶体10内の温水温度を温水サーミスタ11で検出する貯湯式のものであったが、熱交換器12はフィンチューブ式の熱交換器でもよく、フィンチューブ式の熱交換器の場合は、該熱交換器から流出する温水の温度を検出できる位置に温水サーミスタ11を設ければよいものであり、本発明の要旨を変更しない範囲で様々な変形が可能であり、これを妨げるものではない。
【0020】
また、本実施形態では、燃料として灯油を用いて燃焼を行わせる燃焼量可変のバーナ9としたが、これに限らず、バーナ9はガス燃料を用いる燃焼量可変のガスバーナであってもよいものである。
【符号の説明】
【0021】
3 放熱器
5 温水循環回路
9 バーナ
11 温水サーミスタ
12 熱交換器
14 循環ポンプ
18 温水温度設定スイッチ
21 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を加熱する熱交換器と、該熱交換器を加熱する燃焼部と、温水の温度を検出する温水温度検出手段と、温水の温度を設定する温水温度設定手段と、加熱された温水を循環させる循環ポンプとを備え、放熱器との間に温水循環回路を形成し、前記熱交換器にて加熱された温水を前記循環ポンプにより前記温水循環回路を循環させて暖房運転を行うものであって、予め設定された下限燃焼量以上且つ上限燃焼量以下の範囲内で前記燃焼部の燃焼量を可変させ、前記温水温度検出手段の検出する温度が前記温水温度設定手段で設定された設定温度になるよう燃焼量を制御する制御部を備えた温水暖房装置において、前記制御部は、前記温水温度設定手段により設定された設定温度が低い程、前記下限燃焼量を高く設定するようにしたことを特徴とする温水暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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