説明

温水洗浄暖房トイレシステム

【課題】快適な手洗いと快適な局部洗浄を行いたい時にすぐ温水を吐出することができる快適な温水洗浄暖房トイレシステムを提供すること。
【解決手段】加熱手段を備え所定の温水を貯湯する低温側貯湯手段22と、加熱手段を備え温度の高い温水を貯湯する高温側貯湯手段21と、高温側貯湯手段21と低温側貯湯手段22のうちいずれか一方へ流入、流出する流れに切替える流入側切替手段1と、流出側切替手段2と、を備える温水供給源20と、流出側切替手段2から流出する温水で便座43を暖房する暖房手段60と、温水で体の部分を洗浄する洗浄手段40、50と、温水の流れを暖房手段60、または洗浄手段40,50のいずれか一方に切替える主切替手段30と、を備え、低温貯湯手段22の温水は、洗浄手段40,50では排出され、暖房手段60では低温貯湯手段22に戻り、高温貯湯手段21の温水は、暖房手段60を通って高温貯湯手段21に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房便座、局部洗浄及び手洗いを温水によって行う温水洗浄暖房トイレシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の温水洗浄暖房便座として、局部洗浄用のノズル装置と、内部に温水の通過流路を形成して表面を暖房可能な便座と、外部の給水源及び給湯源に接続され水と温水とを混合するバルブユニットとを備え、ノズル装置及び便座をバルブユニットの下流側に設けて流路を接続すると共に便座には供給した温水を外部に排出する流路系を設け、バルブユニットは、ノズル装置及び便座側へ向かう流路を独立して開閉制御可能な弁機構を備えている温水暖房便座が開示されている。(特許文献1)
また、便器や手洗器等のトイレ用器具を予め一体に設けたトイレユニットに温水器を設けて、その温水器を給湯用循環ポンプを介在させ、温水式床暖房、温水式暖房便座、局部洗浄及び手洗いに利用する床暖房一体型トイレユニットが開示されている。(特許文献2)
【特許文献1】実開平6−12578号公報
【特許文献2】特開平9−273322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の温水暖房便座は、外部の給水源及び給湯源から供給される水と温水とを混合し、局部洗浄に適した温度の温水にして局部洗浄と便座暖房の両方に使用する。従って、温度の高い温水を水と混合して低い温度にする分、熱エネルギーが損失する。さらに、混合温水を便座暖房に使用し、局部洗浄には使用しないような場合、混合温水は多量の水を必要とするため、給湯源の貯湯タンクに戻る混合温水量が増加する。そして戻り混合温水の量が貯湯タンクの容積を越えると、戻り混合温水を排水しなければならなくなり、無駄な排水による熱エネルギー損失が生じる。また、局部洗浄に適した比較的低い温度の温水で冷えた便座を暖めるため短時間で暖めることが出来ない。
【0004】
特許文献2の床暖房一体型トイレユニットは、適宜給湯を行う場合、温水の保温貯湯機能がないため、循環流路内の温水は毎回冷えてしまい、温水を適温にするため多量の熱エネルギーを投入しなければならない。また、冷えた便座を短時間で暖めることが出来ない。さらに、手洗いを行う部材と局部洗浄用のノズルとの配管が離れているので、いずれか一方(通常は手洗いを行う部材)は給湯源との間の配管長がながくなる。従って、配管内に残った冷水が使用開始直後に吐出することになり不快感を感じる。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、温水と水との混合と、無駄な排水をとをなくし、温水と水との混合による熱エネルギーの損失と、無駄な排水による熱エネルギーの損失とをなくす。さらに、貯湯タンクの温水を保温にするための投入熱エネルギーを少なくするとともに、短時間で便座を快適な温度に暖房することができ、また手洗いと局部洗浄を行いたい時にすぐ温水を吐出することができる快適な温水洗浄暖房トイレシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、加熱手段と断熱手段を備え所定の温水を貯湯する低温側貯湯手段と、加熱手段と断熱手段を備え低温側貯湯手段の温水より温度の高い温水を貯湯する高温側貯湯手段と、高温側貯湯手段と低温側貯湯手段のいずれか一方へ流入する流れに切替える流入側切替手段と、高温側貯湯手段と低温側貯湯手段のいずれか一方から流出する流れに切替える流出側切替手段と、を備える温水供給源と、流出側切替手段から流出する温水を圧送する圧送手段と、圧送手段により圧送される温水で便座を暖房する便座に設けた暖房手段と、圧送手段により圧送される温水で体の部分を洗浄する洗浄手段と、圧送手段により圧送される温水の流れを暖房手段、または洗浄手段のいずれか一方に切替える主切替手段と、を備え、低温貯湯手段の温水は、洗浄手段では排出され、暖房手段では低温貯湯手段に戻り、高温貯湯手段の温水は、暖房手段を通って高温貯湯手段に戻す。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、便座暖房時において、流出側切替手段と流入側切替手段との間に残存する低温側貯湯手段から送られていた温水を高温側貯湯手段からの温水で低温側貯湯手段に送込む。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、便座暖房時において、流出側切替手段と流入側切替手段との間に残存する高温側貯湯手段から送られていた温水を低温側貯湯手段からの温水で高温側貯湯手段に送込む。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、洗浄手段は、人の局部を洗浄するノズルを備えた局部洗浄手段と、手を洗浄する手洗い洗浄手段と、を備え、手洗い洗浄手段は、主切替手段からの温水の流れを二方向に切替える手洗い切替手段と、手洗い切替手段の一方の流出側に接続され、主切替手段からの温水の流れを制御する手洗い用水栓と、手洗い切替手段の他方の流出側に接続され、主切替手段からの温水を排出する排出配管と、を備え、手洗い用の温水を使用する前に、主切替手段と前記手洗い切替手段との間に残存する水を流出側切替手段と主切替手段との間に残存する温水を介在して、低温側貯湯手段の温水で排出する。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、流出側切替手段と前記主切替手段との間に低温側貯湯手段から送込まれた温水が存在する場合にのみ、低温側貯湯手段の温水を前記洗浄手段に供給する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明では、高温側貯湯手段の温水は、暖房手段に供給し、高温側貯湯手段に戻す。一方、低温貯湯手段の温水は、暖房手段と洗浄手段に供給する。低温側貯湯手段の温水のうち、暖房手段に供給した温水は低温側貯湯手段に戻し、低温側貯湯手段の温水として利用する。洗浄手段に供給した温水は体の部分を洗浄し、有効に活用して排水される。従って、従来技術のように、温水と水とを混合して混合前の温水よりも低い温度の温水を供給温水とすることはしていなので、混合による熱エネルギーの損失は生じない。
【0012】
また、上述と同様、従来技術のように、温水と水とを混合して混合前の温水よりも低い温度の温水を供給温水にしていなので、温水と水の混合よる所定値を越える温水量の増大は生じず、無駄な排水はない。従って、無駄な排水による熱エネルギーの損失は生じない。
【0013】
さらに、暖房手段と洗浄手段に供給する温水は、貯湯する高温側貯湯手段と低温側貯湯手段に貯湯され、さらに、高温側貯湯手段と低温側貯湯手段は、共に断熱手段を備えるため、両貯湯手段の温水が周囲に放出する熱量は少なく、貯湯された温水を保温するに要する投入熱エネルギーを従来より少なくすること可能である。
【0014】
また、低温側貯湯手段の温水は、人の部分を洗浄するのに適した温度に設定されることで、使用者が部分を洗浄する時、快適感な洗浄が可能になる。
【0015】
また、暖房手段には、高温側貯湯手段の温水と低温側貯湯手段の温水とを使分けて流す。
【0016】
従って、高温側貯湯手段の温水を暖房手段に流して便座を昇温することにより、便座の座面を所定の温度に短時間で昇温することができ、低温側貯湯手段の温水を暖房手段に流すことで、使用者が着座した時、便座表面を快適感を感じる温度にすることが可能になる。
【0017】
また、請求項2に記載の発明では、高温側貯湯手段からの温水で、流出側切替手段と流入側切替手段に至る間に残存する低温側貯湯手段からすでに送られていた温水を高温側貯湯手段からの温水に置換え、低温側貯湯手段に送込むことで、温水に投入しなければならない熱エネルギーは、高温側貯湯手段に残存していた温水を送込む場合と比較すると、温水に投入する熱エネルギーは少なくできる。
【0018】
また、残存していた温水を外部に排水すると、排出量分、温水洗浄暖房トイレシステムの温水量が不足し、外部から水を低温側貯湯手段に補給し、低温側貯湯手段の温水の温度まで加温しなければならず、加温の熱エネルギー投入が必要となる。この加温に要する熱エネルギーは、残存温水を低温側貯湯手段に送込む場合に投入する熱エネルギーより大きい。即ち、残存温水を低温側貯湯手段に送込むことで、温水の熱エネルギーが有効に活用され、低温側貯湯手段の温水に投入する熱エネルギーを少なくすることが可能になる。
【0019】
また、請求項3に記載の発明では、流出側切替手段と流入側切替手段との間に残存する高温側貯湯手段から送られていた温水は、低温側貯湯手段からの温水に置換えられ、高温側貯湯手段に送込まれ、高温側貯湯手段の温水として使われる。残存した温水の温度と温水量は、それぞれ高温側貯湯手段の温水の温度とほぼ同じであり、請求項2に記載の残存温水の量と等しいので、高温側貯湯手段に送込まれる温水の温度と温水量も、それぞれ高温側貯湯手段の温水の温度にほぼ同じで、請求項2に記載の残存温水の量に等しい。従って、外部の水や、低温側貯湯手段の温水を高温側貯湯手段に供給する必要はなく、また、高温側貯湯手段に送込まれた温水にはほとんど加温する必要がないので、高温側貯湯手段の温水に投入する熱エネルギーを少なくすることが可能になる。
【0020】
また、請求項4に記載の発明では、手洗い用水栓を使用する前に、低温側貯湯手段の温水で、主切替手段から手洗い切替手段に至る間に残存する冷えた温水を外部に排出し、流入側切替手段から主切替手段の間の温水(低温側貯湯手段の温水の温度とほぼ同じ)や、低温側貯湯手段からの温水(局部洗浄や手洗いに快適な温度)に置換えられるので、行いたい時すすぐに適切な温度の温水を手洗い栓から吐出することができ、快適な手洗いをすることが可能になる。
【0021】
また、請求項5に記載の発明では、流出側切替手段と記主切替手段との間に低温側貯湯手段から送込まれた温水が存在する場合にのみ、低温側貯湯手段の温水を洗浄手段に供給するので、人の部分を洗浄のに使用される温水は、洗浄に適した温度に設定された低温側貯湯手段から供給された温水である。従って、快適な部分洗浄が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明の実施形態に係わる図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係わる温水洗浄暖房トイレシステムの配置と温水回路(略図)を示したものである。図1において、点線は温水が流れる配管を示し、矢印方向に温水が流れる方向を示す。
【0024】
温水洗浄暖房トイレシステム70は、略箱形の空間71に納められ、壁部材74を挟んで、図中左側に温水供給源20と圧送手段10が配置され、図中右側に便器本体45が配置される。手洗器53は、温水供給源20、便器本体45から離れた棚75に配置されている。
【0025】
図2は、本発明の実施形態に係わる図1に示される温水回路の詳細を示したものである。各種の切替手段1〜8は、1つの流入口と2つの流出口をもち、流入口からの流れをいずれか一方の流出口への流れにする機能と、流入口から2つの流出口への流れを全て閉鎖する機能とを持つ。
【0026】
温水供給源20は、高温タンク(高温側貯湯手段)21と、低温タンク(低温側貯湯手段)22と、流入側切替手段1と、流出側切替手段2とから構成される。高温タンク21と低温タンク22は、それぞれ真空断熱による断熱手段25、26を備える。また、高温タンク21と低温タンク22は、それぞれ内部にヒータ(加熱手段)23、ヒータ(加熱手段)24が備えられ、温水を所定の温度に加温して、貯湯し、長時間、保温する。低温タンク22の温水は、局部洗浄と手洗いに適した所定の温度に設定され、高温タンク21の温水は低温タンク22の温水より所定の温度、高く設定される。
【0027】
流入側切替手段1は、高温タンク21と、低温タンク22と、導入配管15とに接続され、導入配管15からの流れを高温タンク21と低温タンク22のうちいずれか一方への流れにする機能と、両方のタンク21、22への流れを閉鎖する機能とを持つ。
【0028】
流出側切替手段2は、高温タンク21と、低温タンク22と、ポンプ10(圧送手段)とに接続され、高温タンク21と低温タンク22のうちいずれか一方から流出し、圧送手段10へ流入する流れにする機能と、両方のタンク21、22からの流れを閉鎖する機能とを持つ。
【0029】
ポンプ(圧送手段)10は、流出側切替手段2から流出する温水を加圧し、主切替手段30に圧送する圧送手段であり、ポンプ10の吐出側は、配管12を介し主切替手段30の流入側に接続される。
【0030】
主切替手段30は、切替手段3の一方の流出側を切替弁手段4の流入側に接続して構成する。切替手段3の他方の流出側は、局部側配管18を介し洗浄手段の一つである局部洗浄手段40に接続され、切替手段4の2つの流出側は、それぞれ暖房側配管13と、手洗い側配管16を介し暖房手段である暖房用熱交換器60と洗浄手段の一つである手洗い手段50に接続される。
【0031】
局部洗浄手段(洗浄手段)40は、局部切替手段7と、おしり用ノズル(ノズル)41と、ビデ用ノズル42(ノズル)とを備える。局部切替手段7は、流れ方向の切替と流出量の調整とができる機能を有する弁である。局部切替手段7の2つ流出側は、それぞれ温水を噴射して局部を洗浄するおしり用ノズル41とビデ用ノズル42に接続される。
【0032】
手洗い洗浄手段(洗浄手段)50は、手洗い用水栓51と、手洗い切替手段5と、排出配管17とを備える。手洗い切替手段5の流入側は、手洗い側配管16を介し主切替手段30の切替手段4に接続される。手洗い切替手段5の2つの流出側には、手洗い用水栓51と排出配管17に接続される。手洗い用水栓51は、洗浄ボタン52が備えられ、洗浄ボタン52により開く弁を持つ。手洗い切替手段5は、手洗い側配管16から流入する温水の流れを手洗い用水栓51及び排出配管17のうちいずれか一方へ導くように切替える弁である。排出配管17は、ドレイン72へと繋がる。体の部分の洗浄手段は、少なくとも局部洗浄手段40と手洗い洗浄手段50のいずれかである。
【0033】
暖房用熱交換器(暖房手段)60は、便座43に熱接触しており、主切替手段30の切替手段4から流出する温水を暖房用熱交換器60に流すことにより、便座43を暖める暖房手段である。暖房用熱交換器60の流出側は、配管14を介し導入切替手段8の流入側に接続される。導入切替手段8の2つの流出側は、それぞれ導入配管15とドレイン72に接続される。
【0034】
開閉弁9は、温水供給源20に水を給水するための弁で、両端は、それぞれ上水道73と給水切替手段6の流入側に接続され、給水切替手段6の流出側は導入配管15の途中と暖房側配管13の途中にそれぞれ配管19、配管61を介し接続される。
【0035】
安全弁11は、ポンプ10と切替弁3とを接続する配管12の途中と、配管14との間で、配管12側から配管14側にリリーフするように設けられ、ポンプ10の吐出圧が規定値以上に高くなった場合や何らかの原因でノズルや手洗いの出口が閉止する等で水路内の圧力が上昇した時の安全確保のために設けられる。
【0036】
本実施形態の作用と効果について説明する。
【0037】
図3は、切替手段の流れ方向の表記を説明した図である。図中、矢印は流れの方向を示し、上流側から下流側に左回りで流れる場合をL(ケース1)、右回りで流れる場合をR(ケース2)とし、上流側から下流側に真直ぐ流れ、左回りが閉の場合をR(ケース3)、上流側から下流側に真直ぐ流れ、上流側から右回りが閉の場合をL(ケース4)、上流側から2つの下流側への流れがない場合を−(ケース5、ケース6)で表す。
【表1】

【0038】
表1は、本発明の実施形態に係わる温水洗浄暖房トイレシステムの図2の温水回路における各種切替手段1〜8と開閉弁9とポンプ10の制御パターンを示す。
【0039】
本実施形態においては、使用者の所定動作を検地する動作検知センサ(図略)からの検知信号、温度センサ(図略)などの検知信号、あるいは所定時間を設定したタイマー(図略)からの信号で制御装置(図略)を介し、各切替手段1〜8と、開閉弁9と、ポンプ10と、ヒータ23,24を作動させる。
【0040】
高温タンク21と低温タンク22の温水は、上水道73から給水後、それぞれヒータ23,24により所定の温度に加温される。各々のタンク21、22の温水の温度が所定の温度より低い場合は、各々のヒータ23、24がオンになり加温され、所定の温度より高くなると各々のヒータ23、24は切られ、各々のタンク21、22の温水の温度は、所定の温度範囲内を維持し、保温される。
【0041】
高温タンク21の温水は、ポンプ10により流出側切替手段2からポンプ10と、主切替手段30と、暖房用熱交換器60を流れ、その際、便座43を昇温し、高温タンク21に戻る。低温タンク22の温水は、ポンプ10で流出側切替手段2からポンプ10と、主切替手段30に圧送され、主切替手段30により暖房用熱交換器60と洗浄手段40(又は50)のうちいずれか一方に流入する。暖房用熱交換器60に流入した高温タンク21からの温水は、便座43を暖め、低温タンク22に戻る。一方、洗浄手段40(又は50)に流入した低温タンク22からの温水は、人の部分を洗浄して、外部へ排出される。即ち、人の部分の洗浄は低温タンク22の温水を使い、便座43の暖房は低温側タンク22の温水と高温タンクの温水を使う。各タンク21、22に貯湯した温度の異なる温水を使い分けて便座暖房と体の部分洗浄を行う。従って、従来技術のように、温水と水とを混合し、混合前の温水よりも低い温度の温水を供給水とすることはなく、混合による熱エネルギーの損失は生じない(温水に水を加えた混合温水の持つ熱エネルギーは、混合前の温水の持つ熱エネルギーより小く、混合前後の熱エネルギーの差分が熱エネルギー損失である)。
【0042】
外部に排出される温水は、低温タンク22から洗浄手段40(又は50)に供給された温水で、この温水は人の部分を洗浄し、有効活用して外部に排水される。また、前述したように、従来技術のように、温水と水とを混合し、混合前の温水よりも低い温度の温水を供給水とすることはなく、温水と水の混合による所定値を越える温水量の増大に伴なう無駄な排水もなくなるので、無駄な排水による熱エネルギーの損失は生じない。
【0043】
さらに、高温タンク21、低温タンク22とも真空断熱の断熱手段25,26を備えているので、両タンク21、22の温水が周囲に放出する熱量は少なく、両タンク21,22の温水を保温するために投入する熱エネルギーは少なくできる。
【0044】
次に、使用者が温水洗浄暖房トイレシステム70を使用する場合の一連の作動とその効果について説明する。
【0045】
(便座の暖房について)
使用者が空間71に入ると動作検知センサが検知し、便座43の暖房が開始される。便座43の暖房は、高温水置換、昇温、低温水置換、保温の順に作動される。
【0046】
(便座の高温水置換)
各切替手段1〜8、開閉弁9、ポンプ10(以後、各機器)の制御パターンは、表1に示す高温水置換の欄の状態になり、直ちに暖房用熱交換器60へ温水が供給される。即ち、ポンプ10により高温タンク21の温水は、順次、流出側切替手段2、ポンプ10、切替手段3、切替手段4、暖房用熱交換器60、導入切替弁8を通って、流入側切替手段1の流入口に至ると、流出側切替手段2と流入側切替手段1との間に残存するすでに低温タンク22から送られていた温水(低温タンク22の温水より低い温度の温水)を低温タンク22に送込み、温水置換を終了する。高温水置換終了時、高温タンク21からの温水は、流入側切替手段入口1に到達しており、高温タンク21には、まだ流入していない。
【0047】
前述の残水温水を低温タンク22に送込んだ場合は、高温側貯湯手段21に送込む場合より、残存温水の温度が低温タンク22の温水の温度より低いので、温水に投入する熱エネルギーを少なくすることが可能である。
【0048】
また、前述の残存した温水は、低温タンク22に回収され、外部に排出することはない。外部に排出すると、排出量分、温水洗浄暖房トイレシステム70の温水量が不足し、外部から水を低温タンク22に補給し、低温タンク22の温水の温度まで加温しなければならず、加温の熱エネルギー投入が必要となる。前記の残存温水の温度は、低温タンク22の温度より低く、周囲温度(供給水の温度)以上である。従って、残存温水と供給水の温度差に相当する熱エネルギー量分、低温タンク22の温水に投入する熱エネルギーを少なくすることが可能になる。
【0049】
(便座の昇温)
温水置換が終了すると昇温に移行する。各機器の制御パターンは、表1の昇温の欄に示すように、高温水置換時と比較すると、流入側切替手段1を除いて、他は、便座昇温時の作動状態と同一である。即ち、温水置換時、流入側切替手段1の流入口に至った温水は、高温タンク21に戻り、再び、流出側切替手段2から暖房用熱交換器60を経由し高温タンク21へと循環する。この時、暖房用熱交換器60を流れる温水により便座43は所定の温度に昇温される。便座43の着座面が所定の温度に達すると昇温は終了する。
【0050】
高温タンク21の温水の温度とポンプ10の吐出量の所定の設定は、高温タンク21の温水が低温タンク22の温水より高い温度にあるので、使用者が空間71に入り、便座43に着座するまでの必然的に行われる所定の作動に要する時間よりも短い時間で、高温水置換と昇温と低温水置換(後述)の一連の作動の終了を可能にする。
【0051】
低温タンク22の局部洗浄に適した所定の温水温度より高い温度の高温タンク21の温水を暖房手段60に即座に供給し便座昇温を行う。従って、従来技術のように、局部洗浄に適した温水で便座を昇温することはないので、使用者が便座に着座する前に、短時間で所定の温度に便座を昇温させることが可能になる。
【0052】
尚、昇温終了は、便座43の温度を検知したり、所定の時間設定したタイマーからの信号に基づき行う。
【0053】
(便座の低温水置換)
便座の昇温が終了すると引続き温水置換に移る。各機器の制御パターンは、表1の低温水置換の欄に示すように、便座昇温時と比較すると、流出側切替手段2を除いて、他は、便座昇温時の作動状態と同一である。即ち、すでに流入側切替手段1の流れ方向が便座昇温時に対し切替り、低温タンク22から流出して、流出側切替手段2を通り、暖房手段60を経由して、流入側切替手段1を通って、高温タンク21に流れる。昇温終了直後、流出側切替手段2と流入側切替手段1との間に残存する高温タンク21からの温水は、低温タンク22からの温水で押込まれ高温タンク21に送込まれる。即ち、残存していた高温タンク21からの温水が、低温タンク22からの温水に置換えられる。終了時、残存温水を押出した低温タンク22からの温水は、流入側切替手段1の流入口に来ているが、低温タンク22には、まだ流入しない。
【0054】
昇温終了直後、流出側切替手段2から暖房手段60を経由して流入側切替手段1に至る間に残存する高温タンク21からの温水の温度は、高温タンク21の温水の所定温度にほぼ同じで、高温タンク21に送込まれた温水も高温タンク21の温水の所定温度にほぼ同じとなる。また、残存温水の量は、高温水置換の残存温水の量と同じである。従って、高温タンク21に新たに上水道73の水、あるいは低温タンク22の温水を高温タンク21に供給する必要はなく、また、高温タンク21に送込まれた温水はほとんど加温する必要もない。従って、高温タンクの温水に投入する熱エネルギーを少なくすることが可能になる。
【0055】
(便座の保温)
各機器の制御パターンは、表1の保温の欄に示すように、温水置換時と比較すると、流入側切替手段1を除いて、他は、便座昇温時の作動状態と同一である。即ち、流入側切替手段1の流れ方向が温水置換時に対し切替わり、低温タンク22の温水が、流出側切替手段2を通り、暖房用熱交換器60を経由し、導入切替手段8、流入側切替手段1を通って低温タンク22に戻り、再び循環する。暖房用熱交換器60の温度が、所定の温度範囲より高くなると保温作動を停止し、低くなると保温作動を再開し、暖房用熱交換器60を流れる温水で便座43の座面が所定の温度範囲に保温される。
【0056】
便座保温に使用する温水と、局部洗浄や手洗い洗浄とに使用する温水は、共に低温タンク22の温水を使用する。便座43を快適な温度にする温水の温度は、快適な局部洗浄、手洗い洗浄に供給する温水の温度とほぼ同じである。低温タンク22の温水の温度は、局部洗浄、手洗い洗浄時、使用者が快適感を感じられるように温度設定しているので、便座43の座面を快適な温度に保温できる。
【0057】
尚、保温作動の開始・停止・再開は、便座43の温度を検知したり、所定の時間設定したタイマーからの信号に基づき行う。
【0058】
(局部洗浄について)
局部切替弁手段7の流れ方向の違いにより、局部洗浄はおしり洗浄とビデ洗浄の場合があるが、両方とも作用は同じであるので、おしり洗浄について説明する。便座保温中、あるいは保温後、洗浄おしり作動の信号を制御装置(図略)から受けると、各機器の制御パターンは、表1に示すおしりの欄の状態になり、直ちにおしり用ノズル41へ温水が供給される。即ち、ポンプ10により低温タンク22の温水が、流出側切替手段2、ポンプ10、切替弁手段3と通って、局部側配管18に残存する冷えた温水をおしり用ノズル41から押出し、おしり用ノズル41を洗浄し(おしり洗浄には使わない)、その後、流出側切替手段2からポンプ10を経由し切替弁3に至る間に残存する温水、次に低温タンク10からの温水の順におしり用ノズル41から局部に向け噴射して、局部を洗浄する。
【0059】
局部側配管18に残存する冷えた温水は、おしり用ノズル41の洗浄に使われ、局部洗浄には使わない。局部洗浄に使われる温水は、流出側切替手段2からポンプ10と切替弁3との間に残存する温水と、新たに低温タンク22から供給される温水とであり、いずれの温水の温度もほぼ低温タンク22の温水の温度(局部洗浄や手洗いに快適な温度)と同じである。従って、快適な局部洗浄が可能になる。また、局部側配管18の長さは比較的短く、局部側配管18に残存する冷えた温水の量も少なのでノズル洗浄も短時間で済み、すぐに局部洗浄を行うことが出来る。尚、ノズル洗浄に使われる残存水は、ノズル洗浄に必要であり、無駄に排水しない。
【0060】
(手洗い洗浄について)
手洗い洗浄前に捨水作動が行われる。使用者の作動を検知して手洗い洗浄の開始時を使用者が手洗いを行う前に必然的に行う所定の動作から予測して捨水作動を開始する。各機器の制御パターンを表1の捨水の欄に示す。ポンプ10により低温タンク21の温水で、手洗い側配管16に残存する冷えた温水を手洗い切替手段5、排水配管17を通って外部に排出すると、手洗い側配管16の温水は、流出側切替手段2から主切替手段3の間の温水(低温タンク22の温水とほぼ同温度)や、低温タンク22からの温水(局部洗浄や手洗いに快適な温度)に置換えられ、捨水は終了する。
【0061】
捨水の終了は、手洗い側配管16の温度を検知したり、所定の時間設定したタイマーからの信号に基づき行う。
【0062】
手洗いを事前に予測して、手洗い側配管16の冷えた温水は外部に排出され、流入側切替手段1から主切替手段30の間の温水(低温タンク22の温水とほぼ同温度)や、低温タンク22からの温水(局部洗浄や手洗いに快適な温度)に置換えられるので、適切な温度の温水を手洗い栓51から吐出でき、行いたい時にすぐに快適な手洗いをすることが可能になる。捨てられる温水は、温度も低く、保有熱エネルギーも小さい。
【0063】
また、捨水終了後、手洗い切替手段5の流れが手洗い用水栓51側に切替られる。手洗い水用栓51の洗浄ボタン52を押すと手洗い水栓51から低温タンク22の温水が流出されて手洗いが行われる。
【0064】
(便座暖房の優先につて)
便座43の高温水置換、昇温、低温水置換のいずれかが終了する前に、使用者が想定外の動作をし、人の部分の洗浄が開始される信号が制御装置(図略)から送られる場合、流出側切替手段2と主切替手段30との間には高温タンク21から送られた温水が存在する。低温水置換終了後、流出側切替手段2と主切替手段30との間の温水は、低温タンク22からの温水に置換わるので、低温水置換を優先して終了させた後、人の部分の洗浄を開始することで、おし用りノズル41、ビデ用ズル42や手洗い用水栓51からは、タンク22の洗浄に適した温度の温水が吐出される。従って、快適な局部洗浄や手洗いを行うことが可能になる。
【0065】
(給水について)
各機器の制御パターンを表1の給水の欄に示す。給水は、上水道73から、開閉弁9、給水切替手段6、配管19を通って水が流入側切替手段1に送られ、流入側切替手段1によって高温タンク21、あるいは低温タンク22に選択され、給水される。
【0066】
(便座の冷却について)
本実施形態では、便座43の冷却も出来る。各機器の制御パターンを表1の便座暖房の降温の欄に示す。便座43の冷却は、上水道73から、開閉弁9、給水切替手段6、配管61、暖房用熱交換器60、配管14、導入切替手段8を通り、ドレイン72に水が流れ、暖房用熱交換器60を流れる水によって便座43が冷却される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施形態に係わる温水洗浄暖房トイレシステムの配置と温水回路示した図である。
【図2】図1の温水洗浄暖房トイレシステムの温水回路の詳細図である。
【図3】図1と図2の各種切替手段の流れ方向の表記を説明した図である。
【符号の説明】
【0068】
1 流入側切替手段
2 流出側切替手段
5 手洗い切替手段
10 ポンプ(圧送手段)
17 排出配管
20 温水供給源
21 高温タンク(高温側貯湯手段)
22 低温タンク(低温側貯湯手段)
23、24 ヒータ(加熱手段)
25、26 断熱手段
30 主切替手段
40 局部洗浄手段(洗浄手段)
43 便座
50 手洗い洗浄手段(洗浄手段)
51 手洗い用水栓
60 暖房用熱交換器(暖房手段)
70 温水洗浄暖房トイレシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段と断熱手段を備え所定の温水を貯湯する低温側貯湯手段と、加熱手段と断熱手段を備え前記低温側貯湯手段の温水より温度の高い温水を貯湯する高温側貯湯手段と、前記高温側貯湯手段と前記低温側貯湯手段のいずれか一方へ流入する流れに切替える流入側切替手段と、前記高温側貯湯手段と前記低温側貯湯手段のいずれか一方から流出する流れに切替える流出側切替手段と、を備える温水供給源と、
前記流出側切替手段から流出する温水を圧送する圧送手段と、
前記圧送手段により圧送される温水で便座を暖房する前記便座に設けた暖房手段と、
前記圧送手段により圧送される温水で体の部分を洗浄する洗浄手段と、
前記圧送手段により圧送される温水の流れを前記暖房手段、または前記洗浄手段のいずれか一方に切替える主切替手段と、を備え、
前記低温貯湯手段の温水は、前記洗浄手段では排出され、前記暖房手段では前記低温貯湯手段に戻り、
前記高温貯湯手段の温水は、前記暖房手段を通って前記高温貯湯手段に戻すこと、を特徴する温水洗浄暖房トイレシステム。
【請求項2】
便座暖房時において、前記流出側切替手段と前記流入側切替手段との間に残存する前記低温側貯湯手段から送られていた温水を前記高温側貯湯手段からの温水で前記低温側貯湯手段に送込むこと、を特徴とする請求項1に記載の温水洗浄暖房トイレシステム。
【請求項3】
便座暖房時において、前記流出側切替手段と前記流入側切替手段との間に残存する前記高温側貯湯手段から送られていた温水を前記低温側貯湯手段からの温水で前記高温側貯湯手段に送込むこと、を特徴とする請求項1に記載の温水洗浄暖房トイレシステム。
【請求項4】
前記洗浄手段は、人の局部を洗浄するノズルを備えた局部洗浄手段と、手を洗浄する手洗い洗浄手段と、を備え、
前記手洗い洗浄手段は、前記主切替手段からの温水の流れを二方向に切替える手洗い切替手段と、前記手洗い切替手段の一方の流出側に接続され、前記主切替手段からの温水の流れを制御する手洗い用水栓と、前記手洗い切替手段の他方の流出側に接続され、前記主切替手段からの温水を排出する排出配管と、を備え、
前記手洗い用の温水を使用する前に、前記主切替手段と前記手洗い切替手段との間に残存する水を前記流出側切替手段と前記主切替手段との間に残存する温水を介在して、前記低温側貯湯手段の温水で排出すること、を特徴とする請求項1に記載の温水洗浄暖房トイレシステム。
【請求項5】
前記流出側切替手段と前記主切替手段との間に前記低温側貯湯手段から送込まれた温水が存在する場合にのみ、前記低温側貯湯手段の温水を前記洗浄手段に供給すること、を特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の温水洗浄暖房トイレシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−223266(P2008−223266A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60347(P2007−60347)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】