説明

測位システム

【課題】高精度の測位ができ、かつ大きな情報量の識別子を伝達でき、さらに低コストで構築することができる測位システムを提供すること。
【解決手段】タグ1は、自タグのID情報を電波信号により送信し、該電波信号と同時または一定時間差で光点滅信号を送信する。リーダ装置の電波信号受信機3は、電子タグ1からの電波信号を受信する。カメラ2-1,2-2は、電子タグ1が存在する領域を撮影する。位置算出装置4は、カメラ画像における光点滅信号の位置から電子タグ1の位置を算出するとともに、光点滅信号と電波信号が受信されるタイミングの関係から、電子タグ1の位置に電波信号のID情報を対応付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位システムに関し、特に、対象物に電子タグを取り付け、該電子タグからの信号を受信して対象物の位置検出および識別を行う測位システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子タグによる測位システムには、電波を利用するものと光を利用するものがある。電波を利用する測位システムには、無線LANやUWB(ultra wide band)を用いる方式があり、光を利用する側位システムには、赤外線や可視光を使用する方式がある。
【0003】
電波を利用する測位システムでは、位置検出対象物に取り付けた電子タグから電波を送信し、この電波を環境に設置された複数の受信装置(リーダ)で受信する。そして、複数の受信装置の物理的位置関係と各受信装置へ電波が到達する時間差をもとに、三角測量の原理により、対象物の位置を特定する。電波を利用する測位システムは、特許文献1,非特許文献1に記載されている。
【0004】
一方、光を利用する測位システムでは、位置検出対象物に取り付けた電子タグから光を送信(発光)し、電子タグが存在する位置検出対象エリアを1台あるいは複数台のカメラ(リーダ)で受信(撮影)する。そして、これにより得られた画像を解析し、画像内での発光点位置をもとに、対象物の位置を特定する。複数台のカメラを用いた場合には、各カメラ間の距離と視差をもとに、対象物の位置を特定することができる。光を利用する測位システムは、特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−140752号公報
【特許文献2】特開2008−70208号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】電子情報通信学会総合大会講演論文集 Proceedings of the IEICE General Conference Vol.2004年 通信, No.1(20040308) p.627 「B-5-140 無線LAN位置検出システム「Air Location」におけるアクセスポイントの開発(B-5.無線通信システム(移動通信))」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電波を利用する測位システムは、使用する電波の周波数や強度にもよるが、障害物の影響を受けにくく、また、対象物を個別に識別する場合に、比較的大きな情報量の識別子を伝達できるという長所がある。
【0008】
しかしながら、電波を利用する測位システムでは、測位精度を上げることが難しいという課題がある。無線LANを用いる方式では、測位精度が数m程度までであり、反射や回折の影響による誤差もある。また、UWBを用いる方式では、微弱電波を用いるので、電子タグからの電波を受信できるエリアが狭く、10cm程度の測位精度を実現するには、エリア分けして多くのリーダを設置する必要があり、コスト高になる。
【0009】
一方、光を利用する測位システムは、障害物がなければ少数台のカメラで比較的広範囲のエリアをカバーでき、しかも、高精度の測位ができるという長所がある。例えば、電子タグがカメラから10m程度の距離に位置し、35万画素,水平画角65°のカメラで電子タグを撮影した場合、約2cmの測位精度を実現できる。
【0010】
しかしながら、光を利用する測位システムでは、障害物の影響を受けやすく、電子タグとカメラとの間に障害物があると測位できないという課題がある。このため、複数台のカメラで位置検出対象エリアをカバーするという対処が一般的に行われる。また、光を利用する測位システムでは、比較的大きな情報量の識別子の伝達に適さないという課題もある。
【0011】
光を利用する測位システムでは、光点滅を対象物を個別に識別するための識別子とすることができるが、光点滅の情報量は、カメラの撮影速度(時間解像度:fps)により制約される。例えば、60fps程度のカメラを用いた場合、128bitの情報量の識別子が識別可能に撮影されるには、電子タグが10秒程度の時間をかけて識別子を伝達する必要がある。この識別子の伝達の時間中に対象物が移動すると、障害物の影響により測位できなくなることもあるので、識別子の伝達に要する時間は短い方がよい。比較的短時間で多くの情報量の識別子を伝達することを可能にするため、高撮影速度の特別なカメラを用いることも考えられるが、高撮影速度の特別なカメラは高価である。
【0012】
本発明の目的は、上記課題を解決し、高精度の測位ができ、かつ大きな情報量の識別子を伝達でき、さらに低コストで構築することができる測位システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明は、電子タグと、電子タグからの信号を受信して該電子タグの位置を検出するリーダ装置を備える測位システムにおいて、前記電子タグは、自タグのID情報を電波信号により送信する電波送信手段と、該電波信号と同時または一定時間差を持って光点滅信号を送信する光送信手段を有し、前記タグリーダ装置は、電子タグからの電波信号を受信する受信手段と、電子タグが存在する領域を撮影するカメラと、前記カメラの画像における光点滅信号の位置から電子タグの位置を算出するとともに、光点滅信号と電波信号が受信されるタイミングの関係から、電子タグの位置に前記受信手段により受信された電波信号のID情報を対応付ける位置算出手段を有する点に第1の特徴がある。
【0014】
また、本発明は、前記電波送信手段が、ID情報とともに識別子を送信し、前記光送信手段は、該識別子に対応する点滅パターンの光点滅信号を送信し、前記位置算出手段は、光点滅信号の点滅パターンと電波信号の識別子の対応をも用いて、電子タグの位置に前記受信手段により受信された電波信号のID情報を対応付ける点に第2の特徴がある。
【0015】
また、本発明は、前記電波送信手段が送信する識別子が、ランダムに生成される点に第3の特徴がある。
【0016】
また、本発明は、前記電子タグが、さらに他電子タグが送信する電波信号の識別子を受信して復号する受信部と、自電子タグの識別子を変更する識別子変更部を有し、前記識別子変更部は、自電子タグの識別子が前記受信部で受信復号された識別子と一致しないように識別子を変更する点に第4の特徴がある。
【0017】
また、本発明は、前記電子タグが、さらに他タグが送信する電波信号を受信する電波受信手段を有し、前記電波送信手段および前記光送信手段は、前記電波受信手段での電波受信処理から他タグが光点滅信号を送信しないと予想されるタイミングで電波信号および光点滅信号を送信する点に第5の特徴がある。
【0018】
また、本発明は、前記受信部が、他電子タグが送信する電波信号のID情報を受信して復号し、前記識別子変更部は、該ID情報と自電子タグのID情報との大小関係に基づいて自電子タグの識別子を変更するか否かを決定する点に第6の特徴がある。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、電波を利用する測位システムと光を利用する測位システムを、それぞれの長所が生かされるようにして組み合わせているので、高精度の測位と大きな情報量の識別子の伝達を両立させることができ、また、低コストの測位システムを構築することができる。
【0020】
また、ID情報とともにランダムに生成した識別子を利用したり、光点滅信号の送信タイミングを他電子タグと異ならせたり、他電子タグの識別子と同じにならないように識別子を変更したりすることにより、ID情報が何れの電子タグのものであるかを確実に識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態のタグとリーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態の動作を示すシーケンス図である。
【図4】本発明の第2実施形態の構成を示すブロック図である。
【図5】第2実施形態のタグとリーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図6】第2実施形態の動作を示すシーケンス図である。
【図7】本発明の第3実施形態の構成を示すブロック図である。
【図8】第3実施形態のタグとリーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図9】第3実施形態の動作を示すシーケンス図である。
【図10】第4実施形態のタグとリーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図11】第4実施形態の動作を示すシーケンス図である。
【図12】第1〜第4実施形態での、電波で送信する情報、光で送信する情報、タグの動作、リーダ側でのタグ識別方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明を説明する。まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態の構成を示すブロック図である。
【0023】
第1実施形態の測位システムは、電子タグ(以下、単にタグと称する。)1、カメラ2-1,2-2、電波信号受信機3および位置算出装置4を備える。カメラ2-1,2-2、電波信号受信機3および位置算出装置4は、リーダ装置を構成する。
【0024】
タグ1は、屋内などの位置検出対象エリア内に存在する人や装置などの測位対象物に取り付けられる。ここでは、1つだけのタグを図示しているが、測対象物の数だけのタグが位置検出対象エリア内に存在する。タグ1は、自タグを識別するためのID情報を電波信号により周期的に送信し、また、電波信号の送信のタイミングと同時または一定時間差を持たせて、既定点滅パターンの光点滅信号を送信(発光)する。電波信号送信の周期は、一定時間間隔でもよいし、動的に変動する時間間隔でもよい。また、電波信号と光点滅信号を一定時間差を持たせて送信する場合、どちらを先行させてもよい。
【0025】
カメラ2-1,2-2は、タグ1が存在する位置検出対象エリアを撮影し、タグ1が送信する光点滅信号を受信する。カメラは、1台でも複数台でもよい。カメラが1台の場合、該カメラの撮影領域は、位置検出対象エリア全てをカバーする。また、カメラが複数台の場合、各カメラの撮影領域各々が位置検出対象エリア全てをカバーする必要はなく、位置検出対象エリアを分割してカバーするようにすることができる。同じ領域を複数台のカメラで撮影するようにすれば、あるカメラとタグの間に障害物が入り込んだような場合でも、他のカメラによりタグの画像を得ることができ、対象物の測位が不可能な状況の発生確率を減らすことができる。
【0026】
電波信号受信機3は、位置検出対象エリア内に存在するタグ1が送信する電波信号を受信する。電波信号は、障害物の影響を受けにくく、電波信号受信機3は、タグ1との間に障害物が入り込んだような状況でも、タグ1が送信する電波信号を受信することができる。また、電波信号によれば、多くの情報量のID情報を伝達することができる。
【0027】
位置算出装置4は、カメラ2-1,2-2の画像を解析し、点滅発光しているタグ1の位置を算出し、これにより算出された位置と電波信号受信機3により受信されたID情報との対応付けを行う。位置算出装置4は、光信号を基にしてタグ1の位置を計算するので、高精度の測位が可能であり、それに多くの情報量のID情報を対応付けることができる。
【0028】
図2は、第1実施形態のタグとリーダ装置の構成を示すブロック図である。なお、図2において、図1と同一あるいは同等部分には同じ符号を付してある。
【0029】
タグ1は、ID情報記憶部1-1、ID符号化部1-2、タイマー1-3、送信指示部1-4、電波送信部1-5および光送信部1-6を有する。
【0030】
ID情報記憶部1-1は、タグ1のID情報を記憶し、ID情報符号化部1-2は、ID情報を符号化して電波送信部1-5へ送出する。ID情報は、例えば、128bitのシリアル番号である。タイマー1-3は、タグ1から電波信号を送信する周期を定める。この周期は、一定時間間隔でもよいし、動的に変動する時間間隔でもよい。
【0031】
送信指示部1-4は、電波送信部1-5に対して電波信号の送信を指示し、また、光送信部1-6に対して光点滅信号の送信を指示する。電波信号の送信と光点滅信号の送信のタイミングは、同時または一定時間差を持っている。なお、この一定時間差はリーダ装置側で既知であるとする。
【0032】
送信指示部1-4からの指示に従って、電波送信部1-5は、ID情報を電波信号として送信し、光送信部1-6は、既定点滅パターンの光点滅信号を送信する。
【0033】
リーダ装置は、図1のカメラ2-1,2-2、電波信号受信機3および位置検出装置4に相当し、カメラ2-1,2-2、電波受信部3-1、ID情報復号部3-2、画像記憶部4-1、光信号抽出部4-2、位置計算部4-3、同期判定部4-4および測位結果出力部4-5を有する。ここでは、電波信号受信機3(図1)は、電波受信部3-1およびID情報復号部3-2を含み、位置計算装置4(図1)は、画像記憶部4-1、光信号抽出部4-2、位置計算部4-3、同期判定部4-4および測位結果出力部4-5を含むとするが、電波信号受信機3、カメラ2-1,2-2と位置計算装置4が担う機能は、適宜変更することができる。
【0034】
電波受信部3-1は、タグ1の電波送信部1-5から送信される電波信号を受信し、ID情報復号部3-2は、受信された電波信号のID情報を復号する。
【0035】
カメラ2-1,2-2は、タグ1が存在する位置検出対象エリアを撮影し、画像記憶部4-1は、これにより得られた画像を記憶する。光信号抽出部4-2は、画像記憶部4-1に記憶された画像を解析し、光信号送信部1-6が送信する光点滅信号を抽出する。この抽出に際し、点滅パターンにより他の光と区別することができる。
【0036】
位置計算部4-3は、画像内での光点滅信号の位置をもとに、測位対象物の位置を特定する。位置計算部4-3は、カメラが1台の場合、カメラ画像の各位置と位置検出対象エリアの各位置との対応関係を予め計測しておくことで、タグ1が存在する二次元位置の座標を得ることができる。また、カメラが複数台の場合には、立体視の原理(視角度差を利用した測距)により、タグ1が存在する三次元位置の座標を得ることができる。
【0037】
同期判定部4-4は、位置計算部4-3により計算されたタグ1の位置とID情報復号部3-2により復号されたID情報との対応付けを行う。電波信号と光点滅信号は、同時または一定時間差を持って送信されるので、電波信号と光点滅信号が受信されるタイミングの関係から、位置計算部4-3により計算されたタグ1の位置とID情報復号部3-2により復号されたID情報とを対応付けることができる。
【0038】
測位結果出力部4-5は、以上により側位されたタグ1の位置を、そのID情報とともに出力する。複数のタグは、ID情報により個別に識別される。
【0039】
図3は、第1実施形態の動作を示すシーケンス図である。ここでは、特に、タグ1とリーダ装置間での電波信号と光点滅信号の送受について示している。
【0040】
まず、タグ1は、電波信号(ID情報)を周期的に送信し(S31)、電波信号の送信と同時または一定時間差を持って、既定点滅パターンの光点滅信号を送信する(S32)。リーダ装置は、この電波信号(ID情報)および光点滅信号を受信し、光点滅信号を基にしてタグ1の位置を算出し、これにID情報を対応付ける。この対応付けは、電波信号の送信と光点滅信号の送信のタイミング関係(同時または一定時間差)から可能である。
【0041】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態では、複数のタグが光点滅信号を送信するタイミングはそれぞれ独立しており、互いに異なるタイミングとなることを保証していない。したがって、複数のタグが同時に光点滅信号を送信する可能性を否定できず、たまたま複数のタグが同時に光点滅信号を送信してID情報が何れタグものもであるかを識別することができないという事態が起こり得る。
【0042】
第2実施形態は、複数のタグが同時に光点滅信号を送信した場合でも、ID情報が何れタグものもであるかを識別することができるようにする仕組みを組み込んだものである。
【0043】
図4は、第2施形態の構成を示すブロック図であり、図1と同一あるいは同等部分には同じ符号を付してある。ここでは、タグ1に加えてタグ5を図示している。以下では、第1実施形態と相違する点だけについて説明する。
【0044】
タグ1は、自タグを識別するためのID情報A1とともに識別子B1を電波信号により周期的に送信し、また、識別子B1に対応した点滅パターンの光点滅信号を送信する。同様に、タグ5は、自タグを識別するためのID情報A2と識別子B2を送信し、また、識別子B2に対応した点滅パターンの光点滅信号を電波信号により周期的に送信する。識別子B1,B2は、光点滅信号と電波信号を対応付けるためのものであり、例えば、乱数などを用いた既定の方法によりランダムに生成されるものを使用できる。各タグ1,5においてランダムに生成される識別子は、同時に同一になる可能性は少ないので、少ない情報量で各タグを識別する情報として有効である。
【0045】
位置算出装置4は、カメラ2-1,2-2の画像を解析し、点滅発光しているタグ1,5の位置を算出し、これにより算出された位置と電波信号受信機3により受信されたID情報A1,A2との対応付けを行う。光点滅信号の点滅パターンは、電波信号の識別子B1,B2に対応しているので、タグ1,5が同時に光点滅信号を送信した場合でも、点滅パターンの違いにより、位置算出装置4により算出された位置と電波信号受信機3により受信されたID情報A1,A2との対応付けを行うことができる。
【0046】
図5は、第2実施形態のタグとリーダ装置の構成を示すブロック図である。なお、図5において、図2と同一あるいは同等部分には同じ符号を付してある。
【0047】
タグ1は、図2の構成に加えて、識別子記憶部1-7および識別子符号化部1-8を有する。識別子記憶部1-7は、光点滅信号と電波信号を対応付けるための識別子B1を記憶し、識別子符号化部1-8は、識別子B1を符号化して電波送信部1-5および光送信部1-6へ送出する。識別子記憶部1-8に記憶される識別子B1は、乱数などを用いた既定の方法によりランダムに生成される。
【0048】
電波送信部1-5は、自タグを識別するためのID情報A1と識別子B1を電波信号により周期的に送信する。また、光送信部1-6は、識別子B1に対応した点滅パターンの光点滅信号を送信する。タグ5も同様である。
【0049】
一方、リーダ装置は、図2の構成と同様であるが、ID情報復号部3-2は、電波信号のID情報A1,A2とともに識別子B1,B2を復号する。また、光信号抽出部4-2は、光点滅信号を抽出し、その識別子B1,B2(点滅パターン)を復号する。
【0050】
位置計算部4-3は、画像内での点滅光信号の位置をもとに、測位対象物の位置を特定し、同期判定部4-4は、位置計算部4-3により計算されたタグ1の位置とID情報復号部3-2により復号されたID情報との対応付けを行う。この対応付けは、第1実施形態と同様に、電波信号と光点滅信号が受信されるタイミングの関係から可能であるが、タグ1,5が同時に光点滅信号を送信した場合でも、点滅パターンの違いにより、位置算出装置4により算出された位置と電波信号受信機3により受信されたID情報A1,A2を個々に対応付けることができる。
【0051】
図6は、第2実施形態の動作を示すシーケンス図である。
【0052】
タグ1は、電波信号(ID情報A1,識別子B1)を周期的に送信し(S61)、電波信号の送信と同時または一定時間差を持って、識別子B1に対応する点滅パターンの光点滅信号を送信する(S62)。一方、タグ5は、電波信号(ID情報A2,識別子B2)を周期的に送信し(S63)、電波信号の送信と同時または一定時間差を持って、識別子B2に対応する点滅パターンの光点滅信号を送信する(S64)。
【0053】
リーダ装置は、タグ1,5からの電波信号および光点滅信号を受信し、光点滅信号を基にしてタグ1,5の位置を算出し、これにID情報A1,A2を対応付ける。この対応付けは、電波信号が受信されるタイミングと光点滅信号が受信されるタイミングの関係に加えて、点滅パターンの違いを基づいて行うことができる。
【0054】
この場合、複数のタグが同時に光点滅信号を送信し、各タグが送信する光点滅信号の点滅パターンが同じになる確率は極めて小さいが、各タグはそれぞれ独自に識別子を生成するので、光点滅信号の点滅パターンが同じになる可能性は0ではない。しかし、複数のタグから送信される光点滅信号の点滅パターンが同じになって互いの識別子が同一(識別子衝突)になった時には、その時のデータを捨てることにより、実用上、問題は回避できる。
【0055】
以上のように、第2実施形態においては、乱数を基に識別子をランダムに生成し、これを電波信号によりID情報とともに送出し、また、光点滅信号の点滅パターンを識別子に対応させているので、複数のタグが同時に光点滅信号を送信した場合でも、識別子を用いてID情報が何れタグものもであるかを識別することができる。
【0056】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態は、複数のタグの光点滅信号の送信タイミングが互いに異なることを保証したものであり、このために、複数のタグの各々が互いに異なるタイミングで光点滅信号を送信する仕組みを組み込んでいる。
【0057】
図7は、第3施形態を示す構成図であり、図4と同一あるいは同等部分には同じ符号を付してある。以下では、第2実施形態と相違する点だけについて説明する。
【0058】
タグ1,5は、電波信号(ID情報)および光点滅信号を送信するに先立ち、自分以外のタグが電波信号を送信中でないかどうかを確認する。そして、送信中でないことが確認できた場合に電波信号を送信する。
【0059】
図8は、第3実施形態のタグとリーダ装置の構成を示すブロック図である。なお、図8において、図2と同一あるいは同等部分には同じ符号を付してある。
【0060】
タグ1は、図2の構成に加えて、他タグが送信する電波信号を受信し、送信指示部1-4を制御する電波受信(信号検出)部1-9を備える。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0061】
図9は、第3実施形態の動作を示すシーケンス図であり、特に、タグ1の動作を示している。
【0062】
タグ1,5は、電波信号(ID情報A1、ID情報A2)を周期的に送信し(S91,S94)、電波信号の送信と同時または一定時間差を持って、既定点滅パターンの光点滅信号を送信する(S92)。なお、タグ5からの光点滅信号の送信は、図示省略している。
【0063】
この場合、タグ1,5は、電波信号および光点滅信号を送信するに先立ち、自分以外のタグが電波信号を送信中でないかどうかを確認する。そして、送信中でないことが確認できた場合に、電波信号および光点滅信号を送信する。
【0064】
このために、タグ1は、電波信号(ID情報A1)および光点滅信号(既定点滅パターン)を送信するに先立ち、受信処理に入り、電波受信部1-9が電波信号を受信するかどうかを確認する。
【0065】
電波受信部1-9が電波信号を受信する場合(S94)には、タグ1がタグ5と同時に光点滅信号を送信すること(衝突)が予想される。そこで、タグ1は、電波信号および光点滅信号を送信せず、一定または動的に変動する時間だけ待って(S93)、再度受信処理から始める。この一定または動的に変動する時間は、タグ1が電波信号(ID情報A1)を送信する時間間隔とする。また、電波受信部1-9が電波信号を受信しない場合には、タグ1がタグ5と同時に光点滅信号を送信すること(衝突)が予想されないので、タグ1は、電波信号および光点滅信号を送信する(S91,S92)。その他の動作は、第2実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0066】
以上のように、第3実施形態では、複数のタグが光点滅信号を同時に送信しないように制御しているので、光点滅信号の衝突を確実になくし、ID情報が何れタグものもであるかを確実に識別することができる。
【0067】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態は、複数のタグが同じ点滅パターンの光点滅信号を送信することがないことを保証する仕組みを組み込んだものであり、これにより、ID情報が何れタグものもであるかを確実に識別することができるようにする。第4施形態の構成は、図7と同様であるので図示省略する。
【0068】
図10は、第4実施形態のタグとリーダ装置の構成を示すブロック図である。なお、図10において、図5と同一あるいは同等部分には同じ符号を付してある。
【0069】
タグ1は、図5の構成に加えて、電波受信部1-9、電波受信部1-9が受信した電波信号のID情報および識別子を復号する復号部1-10、自タグが送信する電波信号の識別子と復号部1-10で復号された識別子が一致するかどうかを判定する一致判定部1-11、および一致判定部1-11で一致と判定された場合、自タグが送信する電波信号のID情報と復号部1-10で復号されたID情報の比較結果により、自識別子を変更する識別子変更部1-12を備える。その他の構成は、第2実施形態と同様である。
【0070】
図11は、第4実施形態の動作を示すシーケンス図である。
【0071】
タグ1,5は、電波信号(ID情報A1と識別子B1、ID情報A2と識別子B2)を周期的に送信し(S111,S113)、電波信号の送信と同時または一定時間差を持って、識別子B1,B3に対応する点滅パターンの光点滅信号を送信する(S112)。なお、タグ5からの光点滅信号の送信は、図示省略している。
【0072】
この場合、タグ1,5は、電波信号および光点滅信号を送信するに先立ち、自分以外のタグが電波信号を送信中でないかどうかを調べ、送信中であれば、さらにその電波信号の識別子が自タグが送信する電波信号の識別子と一致するかどうかを判定する。そして、一致しない場合には、そのまま電波信号および光点滅信号を送信するが、一致する場合には、両者の識別子が一致しないように制御し、自タグと他タグが送信する光点滅信号の点滅パターンが異なるようにする。
【0073】
このために、タグ1,5の電波受信部1-9および復号部1-10は、他タグの電波信号のID情報(受信ID情報)および識別情報(受信識別子)を受信して復号し、一致判定部1-11は、自タグが送信する電波信号の識別子(自識別子)を識別子記憶部1-7から取得し、自識別子と受信識別子が一致するかどうかを判定する。識別子変更部1-12は、一致判定部1-11で自識別子と受信識別子が一致すると判定された場合において、自タグが送信する電波信号のID情報(自ID情報)と受信ID情報の大小関係により自識別子の変更の要否を決定する。例えば、自ID情報>受信ID情報ならば、自識別子の変更を必要と決定し、識別子をB′に変更した後、電波信号を送信する。その他の動作は、第3実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0074】
図12に、第1〜第4実施形態それぞれでの、電波で送信する情報、光で送信する情報、タグの動作、リーダ側でのタグ識別方法をまとめて示す。
【0075】
以上のように、第4実施形態では、複数のタグが光点滅信号の点滅パターンが同じにならないように制御しているので、光点滅信号の衝突を確実になくし、ID情報が何れのタグのものであるかを確実に識別することができる。
【0076】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、種々に変形することができる。例えば、位置検出対象エリア内に存在する対象物を個別に識別する必要がない場合には、光点滅信号の点滅の有無のみをカメラ側で認識するだけでよい。
【0077】
本発明は、工場/事業所やイベント会場などの、屋内や特定エリア内での人の位置把握、動物の位置や行動把握、駐車場内や交差点での自動車の位置把握、機材や什器などの位置管理などに適用できる。
【符号の説明】
【0078】
1,5・・・電子タグ、1-1・・・ID情報記憶部、1-2・・・ID符号化部、1-3・・・タイマー、1-4・・・送信指示部、1-5・・・電波送信部、1-6・・・光送信部、1-7・・・識別子記憶部、1-8・・・識別子符号化部、1-9・・・電波受信(信号検出)部、1-10・・・復号部、1-11・・・一致判定部、1-12・・・識別子変更部、2-1,2-2・・・カメラ、3・・・電波信号受信機、3-1・・・電波受信部、3-2・・・ID情報復号部、4・・・位置検出装置、4-1・・・画像記憶部、4-2・・・光信号抽出部(識別子復号部)、4-3・・・位置計算部、4-4・・・同期判定部、4-5・・・測位結果出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子タグと、電子タグからの信号を受信して該電子タグの位置を検出するリーダ装置を備える測位システムにおいて、
前記電子タグは、自タグのID情報を電波信号により送信する電波送信手段と、該電波信号と同時または一定時間差を持って光点滅信号を送信する光送信手段を有し、
前記タグリーダ装置は、電子タグからの電波信号を受信する受信手段と、電子タグが存在する領域を撮影するカメラと、前記カメラの画像における光点滅信号の位置から電子タグの位置を算出するとともに、光点滅信号と電波信号が受信されるタイミングの関係から、電子タグの位置に前記受信手段により受信された電波信号のID情報を対応付ける位置算出手段を有することを特徴とする測位システム。
【請求項2】
前記電波送信手段は、ID情報とともに識別子を送信し、前記光送信手段は、該識別子に対応する点滅パターンの光点滅信号を送信し、前記位置算出手段は、光点滅信号の点滅パターンと電波信号の識別子の対応をも用いて、電子タグの位置に前記受信手段により受信された電波信号のID情報を対応付けることを特徴とする請求項1に記載の測位システム。
【請求項3】
前記電波送信手段が送信する識別子は、ランダムに生成されることを特徴とする請求項2に記載の測位システム。
【請求項4】
前記電子タグは、さらに他電子タグが送信する電波信号の識別子を受信して復号する受信部と、自電子タグの識別子を変更する識別子変更部を有し、前記識別子変更部は、自電子タグの識別子が前記受信部で受信復号された識別子と一致しないように識別子を変更することを特徴とする請求項2に記載の測位システム。
【請求項5】
前記電子タグは、さらに他タグが送信する電波信号を受信する電波受信手段を有し、前記電波送信手段および前記光送信手段は、前記電波受信手段での電波受信処理から他タグが光点滅信号を送信しないと予想されるタイミングで電波信号および光点滅信号を送信することを特徴とする請求項1に記載の測位システム。
【請求項6】
前記受信部は、他電子タグが送信する電波信号のID情報を受信して復号し、前記識別子変更部は、該ID情報と自電子タグのID情報との大小関係に基づいて自電子タグの識別子を変更するか否かを決定することを特徴とする請求項5に記載の測位システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−217093(P2010−217093A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66254(P2009−66254)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】