説明

測定システム

【課題】被測定物の内部の複数の測定位置について短時間で測定を行う。
【解決手段】測定システム1は、被測定物IPに磁場を印加することにより被測定物IP内部の測定を行って、測定信号Smdを出力することができるセンサ部42,44,46であって、被測定物IPの互いに異なる測定位置WP2,WP4,WP6について測定を行うための複数のセンサ部42,44,46と、複数のセンサ部42,44,46からの測定信号Smdに基づいて被測定物IPの内部構造に関する情報処理を行う情報処理部10と、情報処理の結果を出力する出力部30と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物体に磁場を印加して、物体の内部の構造を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、部材の溶接部分を検査するための技術が存在する。たとえば、ある従来技術の装置は、被測定物である鉄鋼板に静磁場を印加し遮断して、鉄鋼板の複数位置における微分磁束密度の過渡変化を測定する測定部と、鉄鋼板から比較的遠い第1の位置から被測定物に比較的近い第2の位置に測定部が移動することができるように測定部をガイドするガイド部と、を備える。そして、ガイド部は、測定部が第1の位置にある状態において、測定部が第2の位置にあるときに測定部に覆われる溶接部分を外部から視認できる窓を有する。
【0003】
【特許文献1】特開2006−300881号公報
【0004】
近年、自動車の車体構造においては、溶接される部分の数が増加している。このため、自動車の車体の製造工程において、人間が各溶接点にセンサをあてがって溶接点の検査していたのでは、検査に多大な時間を要する。よって、複数の溶接点を短時間で検査することができる技術が望まれている。このような要請は、溶接点の検査に限らず、被測定物の内部を複数の測定位置について測定する技術において、広く存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、被測定物の内部の複数の測定位置について短時間で測定を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、被測定物の内部の複数の測定位置について測定を行うための測定システムにおいて以下のような構成を採用する。
すなわち、この測定システムは、
被測定物の内部の互いに異なる測定位置について測定を行うための複数のセンサユニットであって、前記被測定物の内部を通過する磁束に関する測定を行って、それぞれ測定信号を出力することができるセンサユニットと、
前記複数のセンサユニットからの測定信号に基づいて前記被測定物の内部構造に関する情報処理を行う情報処理部と、
前記情報処理の結果を出力する出力部と、を備える。
【0007】
このような態様とすれば、複数のセンサユニットによって、被測定物の内部の複数の測定位置について短時間で測定を行うことができる。
【0008】
なお、各センサユニットが行う測定は、被測定物の内部の各測定位置を通過する磁束に関する測定とすることができる。たとえば、センサユニットは、磁束密度の変化率を測定する構成とすることができる。なお、測定信号は、デジタル信号であってもよいし、アナログ信号であってもよい。また、測定信号は、有線による通信によってセンサユニットから情報処理部に送信されてもよく、無線通信によってセンサユニットから情報処理部に送信されてもよい。
【0009】
なお、前記センサユニットは、前記測定信号を無線通信によって前記情報処理部に送信するための送信部を備え、
前記情報処理部は、前記センサユニットから無線通信で送信された前記測定信号を受け取るための受信部を備える態様とすることが好ましい。
【0010】
情報処理部は、複数のセンサユニットから測定信号を受け取る。このため、センサユニットと情報処理部とが測定信号を送受信する際に有線による通信を行う態様においては、情報処理部の近傍においては、通信のためのケーブルが複数存在することになる。このため、測定システムの構成が煩雑となり、また、ケーブルの接続の間違いも生じやすい。
【0011】
しかし、上記のような態様とすれば、測定信号の送受信のためのケーブルが存在しない。このため、測定システムの構成を単純にすることができ、回線接続のミスが生じる可能性も低減することができる。
【0012】
また、上記の測定システムは、前記情報処理部の前記受信部が、前記複数のセンサユニットからの測定信号を、順に受信することができる態様とすることができる。
【0013】
このような態様とすれば、受信部が、複数のセンサユニットからの測定信号を並列的に受信する態様に比べて、情報処理部の処理の負荷を低減することができる。
【0014】
なお、上記の測定システムは、前記情報処理部の前記受信部が、前記複数のセンサユニットからの測定信号を、並列的に受信することができる態様とすることができる。
【0015】
このような態様とすれば、測定信号を順に受信する態様に比べて、より短時間で被測定物の内部構造を測定することができる。
【0016】
なお、上記の測定システムは、
前記センサユニットの前記送信部が、前記測定信号としてのデジタル信号を前記情報処理部に送信することができ、
前記情報処理部の前記受信部が、前記測定信号としての前記デジタル信号を受け取ることができる、態様とすることも好ましい。
【0017】
このような態様においては、センサユニットと情報処理部との間でデジタル通信を行うため、センサユニットと情報処理部との間の通信における測定信号の劣化または欠落の可能性を低減することができる。また、前記複数のセンサユニットからの測定信号を並列的に受信する態様においては、複数の測定信号の干渉の防止をしやすい。
【0018】
また、上記の測定システムであって、さらに、
前記複数のセンサユニットを保持しており、前記被測定物内部の内部の測定を行う際に、前記内部の測定を行わないときよりも前記複数のセンサユニットを前記被測定物に相対的に近づけられる1以上のセンサ配置部であって、前記測定時に、前記複数のセンサユニットのうちの少なくとも一部を、互いに異なる角度で前記被測定物に対して配することができる1以上のセンサ配置部を備えることが好ましい。
【0019】
このような態様とすれば、内部構造の測定のために異なる向きでセンサユニットを近づける必要がある被測定物の複数の測定位置についての測定においても、測定の際にセンサと被測定物の相対的な角度を変えて複数回の測定を行う必要がない。このため、そのような測定を短時間で行うことができる。
【0020】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、被測定物の内部構造の測定方法および測定装置、測定装置の制御方法および制御装置、それらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
A.第1実施例:
図1は、本発明の実施例である測定システム1を示す図である。測定システム1は、コンピュータ10と、ユーザがコンピュータ10に指示を与えるための入力部20と、コンピュータ10の情報を出力するための出力部30と、コンピュータ10に制御されて被測定物内部の測定を行うセンサユニット群40と、コンピュータ10に制御されてセンサユニット群40を被測定物IPに接近させ、または遠ざけるためのセンサ配置部50と、を備える。
【0022】
コンピュータ10は、CPU110と、ROM120と、RAM130等を備える。RAM130には、半導体メモリと、ハードディスクとを含む。RAM130に格納されたアプリケーションソフトウェアおよび各種のドライバがCPU110によって実行されることによって、コンピュータ10において様々な機能が実現される。
【0023】
入力部20は、キーボード22と、マウス24とを含む。ユーザは、入力部20としてのキーボード22およびマウス24を介して、コンピュータ10に指示を与える。
【0024】
出力部30は、液晶ディスプレイ32と、プリンタ34とを含む。コンピュータ10は、
出力部30としての液晶ディスプレイ32に情報を表示し、出力部30としてのプリンタ34を使用して情報を印刷媒体に印刷する。
【0025】
センサユニット群40は、複数のセンサユニットを備える。図1の例では、一例として3個のセンサユニット42,44,46を示す。センサユニット42,44,46は、それぞれ被測定物IPの異なる位置に配されて、被測定物IPの異なる位置の内部構造を測定することができる。本実施例においては、被測定物IPは、溶接された部分である溶接部WP2,WP4,WP6を有する。センサユニット42,44,46は、それぞれ被測定物IPの溶接部WP2,WP4,WP6の構造に関する測定を行う。
【0026】
図2は、センサユニット42,44,46と、センサ配置部50を示す図である。センサ配置部50は、ロボットアーム51,52を備える。ロボットアーム51は、センサ保持部511と、並進関節512と、曲げ関節514,516,518と、ねじり関節513,515,517と、アームベース519を備えている。センサ保持部511は、センサユニット42,44を保持している。関節512〜518はコンピュータ10によって制御される。その結果、センサ保持部511上のセンサユニット42,44が、被測定物IPの溶接部WP2,WP4の近傍の位置に所定の角度で配される。
【0027】
ロボットアーム52も、センサ保持部521と、関節522〜528、アームベース529とを備えている。センサ保持部521は、センサユニット46を保持している。関節522〜528、アームベース529の構成は、それぞれ関節512〜518、アームベース519と同じである。
【0028】
関節522〜528はコンピュータ10によって制御される。その結果、センサ保持部521上のセンサユニット46が、被測定物IPの溶接部WP6の近傍の位置に所定の角度で配される。なお、本実施例では、センサユニット42,44は、被測定物IPに向かって互いに平行に配される(図2の矢印A2,A4参照)。一方、センサユニット46は、センサユニット42,44とは異なる向きで、被測定物IPに向かって配される(同、矢印A6参照)。
【0029】
このような態様とすることで、被測定物IP内の異なる位置に存在し、異なる向きでセンサユニットを配する必要がある複数の溶接部WP2,WP4,WP6について、同時にセンサユニットを配することができる。すなわち、センサユニットと被測定物の相対的な角度を変えて、複数回にわたってセンサユニットを被測定物に接近させる必要がない。このため、被測定物IP内部の測定の準備に要する時間を短くすることができる。
【0030】
図1に示すように、センサユニット42,44,46は、それぞれセンサ部422,442,462と、制御部424,444,464とを備える。以下では、センサユニット42を例にセンサユニットの説明を行う。センサユニット44,46も、センサユニット42と同じ構成を有する。
【0031】
センサ部422は、被測定物IPに磁場を印加し、その後、磁場を遮断することができる。そして、センサ部422は、磁場を遮断した後の磁束の変化率を測定することができる。その磁束の変化率に応じた測定信号Smaが制御部424に出力される。センサ部422が出力する測定信号Smaは、アナログ信号である。
【0032】
制御部424は、センサ部422から受け取った測定信号としてのアナログ信号Smaをデジタル信号Smdに変換する。そして、センサユニット42を特定することができるID情報を付加して、デジタル無線通信によりコンピュータ10に送信する。ここでは、センサユニット42,44,46とコンピュータ10との間の無線通信は、Bluetoothによって行われるものとする。
【0033】
本実施例においては、センサユニット46は、センサユニット42,44とは異なる向きで、被測定物IPに向かって配される(図2の矢印A2,A4,A6参照)。このため、センサユニット42,44,46とコンピュータ10との間で有線による通信を行う場合には、異なる向きに伸びる通信線が測定システム1の構成を煩雑にする。すなわち、センサユニット42,44,46の近傍においては、それらのセンサユニットに向かう通信線を一つに束ねることができないため、測定システム1の構成が煩雑になる。しかし、本実施例においては、センサユニット42とコンピュータ10との間で無線通信を行う。このため、有線通信のための通信線により測定システム1の構成が煩雑になることがない。
【0034】
また、アナログによる無線通信を行う態様においては、障害物や他の電磁波発生源によるノイズ等によって、測定信号が正確にコンピュータ10に受信されない可能性がある。しかし、本実施例の測定システム1は、センサユニット42内に測定信号Smaをデジタル変換する制御部424を備える。そして、センサユニット42とコンピュータ10との間においてデジタル通信を行う。このため、無線通信における信号の劣化や欠落の可能性が、アナログ通信を行う態様に比べて低い。
【0035】
制御部424は、コンピュータ10からデジタル無線通信によって制御信号を受け取る。そして、制御信号に応じてセンサ部422を制御して、被測定物IPに磁場を印加させ、その後、磁場を遮断させる。また、コンピュータ10から受け取った制御信号に応じて、所定のタイミングで、上述の測定信号としてのデジタル信号SmdとID情報をコンピュータ10に送信する。
【0036】
このように、本実施例においては、コンピュータ10とセンサユニットとの間のデータ通信を無線通信で行う。このため、コンピュータ10が多数のセンサユニットを制御し、それら多数のセンサユニットからの信号を受け取る場合にも、有線通信を行う態様のように多数のケーブルによってコンピュータ10近傍の機器の構成が煩雑になることがない。また、ケーブルの誤接続によって、誤った制御が行われることもない。
【0037】
図3は、被測定物IPの内部を測定する際のコンピュータ10による処理を示すフローチャートである。ステップS110では、被測定物IPの内部の測定を行うセンサユニットを決定する。たとえば、センサユニット42(図1参照)が選択されたものとする。なお、ステップS110の処理を行うコンピュータ10の機能部を、図1においてセンサユニット選択部102として示す。センサユニット選択部102の機能は、具体的には、コンピュータ10のCPUによってアプリケーションソフトウェアが実行されることによって実現される。
【0038】
ステップS120では、センサユニットの駆動条件が決定される。たとえば、ステップS120では、被測定物IPに印加する磁場の強さの変化のさせ方が決定される。より具体的には、磁場を発生させるコイルの駆動電圧の時間軸に沿った変化のさせ方を表すパターンがあらかじめRAM130内に複数、用意されている。ステップS120では、その中から一つの駆動パターンが選択される。
【0039】
ステップS130では、ステップS110で決定されたセンサユニットに、ステップS120で決定された駆動電圧のパターンとを表す制御信号が、無線通信により送信される。ステップS130の処理を実行する通信部140を図1に示す。なお、図1において、通信部140が、ステップS110で選択されたセンサユニット42と通信を行っていることを示すために、通信部140からセンサユニット42に向かう線を実線で示す。一方、通信部140から、選択されていないセンサユニット44,46に向かう線を破線で示す。
【0040】
制御信号を受信したセンサユニット(ここではセンサユニット42)は、制御信号に応じて磁場を発生させ、磁束密度を測定する。そして、測定信号としてのデジタル信号SmdとセンサユニットのID情報を、無線通信によりコンピュータ10に送信する。
【0041】
ステップS140では、コンピュータ10は、センサユニットから送信された測定信号としてのデジタル信号SmdとセンサユニットのID情報とを受信する。ステップS140の処理を行うのは、具体的には、通信部140である。
【0042】
ステップS150では、コンピュータ10は、測定信号Smdを解析する。そして、ステップS110で選択されたセンサユニットが測定した溶接部の溶接の品質が、合格であるか不良であるかを判定する。ステップS160では、その検査結果が、センサユニットのID情報ならびに溶接部(ここでは溶接部WP2)を特定する情報とともに、RAMに記録される。なお、ステップS150,160の処理を行うコンピュータ10の機能部を、図1においてデータ処理部106として示す。データ処理部106の機能は、具体的には、コンピュータ10のCPUによってアプリケーションソフトウェアが実行されることによって実現される。
【0043】
ステップS170では、ステップS150で得られた検査結果が出力される。より具体的には、検査結果が液晶ディスプレイ32に表示され、プリンタ34によって印刷媒体に印刷される。液晶ディスプレイ32およびプリンタ34を制御してステップS170の処理を行うコンピュータ10の機能部を、図1において出力部108として示す。出力部108の機能は、具体的には、コンピュータ10のCPUによってアプリケーションソフトウェア、ディスプレイドライバ、およびプリンタドライバが実行されることによって実現される。
【0044】
ステップS180では、各溶接部に対応するすべてのセンサユニットによる測定が完了したか否かが判定される。まだ測定を行っていないセンサユニットが存在する場合には、処理は、ステップS110に戻る。ステップS110では、まだ測定を行っていないセンサユニットの中から次に測定を行うべきセンサユニットが決定される。ステップS180において、各溶接部に対応するすべてのセンサユニットによる測定が完了している場合には、処理は終了する。
【0045】
本実施例のような態様とすることで、被測定物IPの複数箇所の溶接部について、溶接の品質が合格であるか不良であるかを短時間で判定することができる。より具体的には、本実施例では磁気を用いた測定を行うために、短時間で各溶接部の内部構造の測定を行うことができる。そして、本実施例では、被測定物の異なる位置に存在し、異なる向きでセンサユニットを配する必要がある複数の溶接部について、同時にセンサユニットを配することができる。このため、検査工程において他の処理に比べて時間を要する複数のセンサの配置の工程を、短時間で行うことができる。その結果、全体として、被測定物IPの複数箇所の溶接部についての合否を短時間で判定することができる。
【0046】
B.第2実施例:
図4は、第2実施例の検査システムを示す図である。第2実施例の検査システムは、複数の測定システム1a〜1cと、生産管理用コンピュータ2と、事務用コンピュータ3と、を備える。
【0047】
測定システム1a〜1cは、製品の生産ラインにおいて互いに異なる工程にある被測定物IPa,IPb,IPcのそれぞれの溶接部を検査するための測定システムである。測定システム1a〜1cは、第1実施例の測定システム1と略同様の構成を備えている。
【0048】
ただし、第1実施例の測定システム1がセンサユニットを3個備えているのに対して(図1参照)、測定システム1bは、センサユニットを2個備えている。測定システム1cは、センサユニットを4個備えている。他の点は、測定システム1a〜1cは、第1実施例の測定システム1と同じである。
【0049】
なお、測定システム1aにおいて、第1実施例の測定システム1と対応する構成には、第1実施例の測定システム1の構成を表す符号に「a」を付して示す。同様に、測定システム1b,1cにおいて、第1実施例の測定システム1と対応する構成には、それぞれ第1実施例の測定システム1の構成を表す符号に「b」、「c」を付して示す。図4において、測定システム1a〜1cが備えるキーボード22、マウス24、液晶ディスプレイ32、プリンタ34は、第2実施例の技術内容の理解を容易にするために図示を省略されている。
【0050】
生産管理用コンピュータ2は、測定システム1a〜1cから被測定物IPa,IPb,IPcの各溶接部の検査結果のデータを受け取って、管理するためのコンピュータである。生産管理用コンピュータ2は、CPU210と、ROM220と、RAM230等を備える。RAM230には、半導体メモリと、ハードディスクとを含む。RAM230に格納されたアプリケーションソフトウェアおよび各種のドライバがCPU210によって実行されることによって、様々な機能が実現される。
【0051】
生産管理用コンピュータ2は、測定システム1a〜1cと専用のデータ通信回線1000で結ばれている。生産管理用コンピュータ2は、データ通信回線1000を介して測定システム1a〜1cから検査結果のデータを受け取る。測定システム1a〜1cから受け取った検査結果のデータは、生産管理用コンピュータ2において、被測定物IPa,IPb,IPcの各工程ごとにRAM220内に記憶され、管理される。
【0052】
事務用コンピュータ3は、生産管理用コンピュータ2にアクセスして、RAM220内に蓄積された検査結果を閲覧するためのコンピュータである。ただし、事務用コンピュータ3は、製品の生産ラインにおける被測定物IPa,IPb,IPcの溶接部の検査以外の業務にも使用される。
【0053】
事務用コンピュータ3は、CPU310と、ROM320と、RAM330等を備える。RAM330には、半導体メモリと、ハードディスクとを含む。RAM330に格納されたアプリケーションソフトウェアおよび各種のドライバがCPU310によって実行されることによって、様々な機能が実現される。
【0054】
事務用コンピュータ3は、生産管理用コンピュータ2と、たとえば、社内用LAN(Local area network)2000で結ばれている。事務用コンピュータ3は、LAN2000を介して生産管理用コンピュータ2にアクセスすることができる。このため、ユーザは、事務用コンピュータ3を介して、生産管理用コンピュータ2のRAM220内に蓄積された検査結果を閲覧することができる。
【0055】
第2実施例のような態様とすることで、ユーザは、製品の生産ラインの異なる工程における検査結果を事務用コンピュータ3によって把握することができる。
【0056】
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0057】
C1.変形例1:
上記実施例では、センサ部422は、被測定物IPに磁場を印加し、その後、磁場を遮断することができる。しかし、センサ部422は、被測定物IPに磁場を印加し、その後、磁場を遮断する機能を有さない態様とすることもできる。たとえば、センサ部422,444,464とは別の構成要素が、被測定物IPに磁場を印加し、その後、磁場を遮断する態様とすることもできる。そして、センサ部422は、磁場を遮断した後の磁束の変化率を測定する。
【0058】
すなわち、センサユニットは、被測定物の内部の測定位置について測定を行うことができる構成であって、被測定物の内部を通過する磁束に関する測定を行って、測定信号を出力することができる構成を有していればよい。
【0059】
C2.変形例2:
上記実施例においては、図3のステップS110で測定を行うセンサユニットを選択し、ステップS120〜S170の処理は、センサユニットごとに順に行われる。しかし、ステップS120〜S170の処理を、複数のセンサユニットについて並行して行うこともできる。そのような態様においては、複数のセンサユニットとコンピュータ10との間で同時に通信が行われる。そのような態様とすれば、被測定物の内部構造の測定に要する時間をより短くすることができる。
【0060】
なお、複数のセンサユニットとコンピュータ10との間で同時に通信が行われる態様においては、アナログ無線通信を行う態様よりも、デジタル無線通信を行う態様がより好ましい。デジタル無線通信を行う態様とすれば、アナログ無線通信を同時に行う場合に比べて、大量の情報を、複数のチャネル間の干渉を生じさせずに、センサユニットとコンピュータ10との間で行うことができる。
【0061】
C3.変形例3:
上記実施例の図3のステップS120の処理では、あらかじめRAM130内に複数、用意されている駆動電圧パターンの中から一つの駆動電圧パターンが選択されている。しかし、図ステップS120においては、センサユニットの駆動条件を定める2以上のパラメータを、キーボードを介してユーザが入力する対応とすることもできる。
【0062】
C4.変形例4:
上記第1実施例においては、測定システム1は、センサユニット42,44,46を備える。しかし、測定システムは、第2実施例に示すように、2個のセンサユニットを備える態様とすることもでき、4個のセンサユニットを備える態様とすることもできる(図4参照)。すなわち、測定システムは、複数のセンサユニットを備える態様とすることができる。
【0063】
C5.変形例5:
上記実施例では、センサユニットを被測定物IPに接近させ遠ざけるためのセンサ配置部50は、2本のロボットアーム51,52を備えている。しかし、センサ配置部は、測定時にセンサユニットを被測定物IPに接近させ、測定終了後にセンサユニットを測定時よりも被測定物IPから遠ざけることができる構成を、1個備える態様とすることもできる。また、センサ配置部は、そのような構成を3個以上備える態様とすることもできる。すなわち、センサ配置部は、測定時にセンサユニットを被測定物IPに接近させ、測定終了後にセンサユニットを測定時よりも被測定物IPから遠ざけることができる構成を、1以上備えることができる。
【0064】
ただし、センサ配置部は、測定時にセンサユニットを被測定物IPに接近させ、測定終了後にセンサユニットを被測定物IPから遠ざけることができる構成を、複数備えることが好ましい。そして、互いに異なる向きやタイミングで、被測定物IPにセンサユニットを接近させ、測定終了後にセンサユニットを被測定物IPから遠ざけることができる、複数の構成を備えることがより好ましい。
【0065】
C6.変形例6:
上記実施例においては、ロボットアーム51は、関節512〜518を備えている。そして、ロボットアーム52は、関節522〜528を備えている。しかし、測定時にセンサユニットを被測定物IPに接近させ、測定終了後にセンサユニットを測定時よりも被測定物IPから遠ざけることができる構成においては、並進関節、曲げ関節、ねじり関節の構成および数は任意の態様とすることができる。
【0066】
C7.変形例7:
上記実施例では、測定時にロボットアーム51,52によって、センサユニット42,44,46と被測定物IPとが相対的に接近させられる。しかし、測定時に、被測定物をセンサユニットに近づける態様とすることもできる。たとえば、あらかじめ所定の位置に所定の角度で複数のセンサユニットが配されたジグに対して、被測定物を接近させる態様とすることもできる。そのような態様においては、測定時に、複数のセンサユニットを被測定物に相対的に近づけるセンサ配置部は、たとえば、製造ラインにおける製品の搬送装置(たとえば、ベルトコンベアやAGV(Autoamtic Guided Vehicle))であってもよい。
【0067】
C8.変形例8:
上記第1実施例では、センサユニット42,44,46とコンピュータ10との間の通信は、Bluetoothによって行われる。しかし、センサユニットと制御装置との間の通信は、赤外線通信や無線LANなど、他の無線通信とすることもできる。また、センサユニットと制御装置との間で、アナログ無線通信を行うこととしてもよい。さらに、センサユニットと制御装置との間の通信は、有線通信とすることもできる。ただし、センサユニットと制御装置との間の通信は、デジタル無線通信とすることがより好ましい。
【0068】
C9.変形例9:
上記実施例では、測定信号SmaのA/D変換を行う制御部は、センサユニット内に設けられている(図1参照)。しかし、測定信号のA/D変換を行う手段は、センサユニット外に設けられていてもよい。
【0069】
ただし、測定信号SmaのA/D変換を行う制御部は、情報処理部(たとえば、コンピュータ10)よりも、センサ部(たとえば、センサ部422)に近い位置に配されることが好ましい。そのような態様とすれば、デジタル通信を行う区間(たとえば、第1実施例において、制御部424とコンピュータ10の間の区間)にくらべて、アナログ通信を行う区間(たとえば、第1実施例において、センサ部422と制御部424の間の区間)を短くすることができる。このため、測定信号の通信において情報が劣化する可能性を低減することができる。
【0070】
C10.変形例10:
上記第2実施例においては、検査システムは、3個の測定システム1a〜1cを備える。しかし、検査システムは、2個の測定システムを備える態様とすることもでき、4個以上の測定システムを備える態様とすることもできる。すなわち、検査システムは、1以上の測定システムを備える態様とすることができる。
【0071】
また、上記第2実施例においては、測定システム1a〜1cは、測定信号Smdを処理するためのコンピュータ10a〜10cを備えている。しかし、測定システム1a〜1cは、測定信号を処理するためのコンピュータ10a〜10cを備えない態様とすることもできる。そのような態様においては、センサユニット群40a〜40cからの測定信号は、生産管理用コンピュータ2に送信される。生産管理用コンピュータ2は、各センサユニットからの測定信号を、ID情報に基づいて、測定システムごとおよびセンサユニットごとに整理して、情報処理を行い、RAM230に格納する。
【0072】
また、上記第2実施例においては、生産管理用コンピュータ2と事務用コンピュータ3とは、異なるコンピュータである。しかし、それらのコンピュータは、一つの筐体内に収納されている一つの装置であってもよい。また、コンピュータは、その構成要素が、互いにデータ通信回線で結ばれている3以上の装置として構成されるものとすることもできる。
【0073】
C11.変形例11:
上記実施例では、測定システム1は、被測定物IP内部の溶接部WP2,WP4,WP6を検査するために使用されている。しかし、本発明は、被測定物内部の溶接部の検査に限らず、様々な対象物を対象として被測定物の表面および内部の複数の測定位置について測定を行う際に適用することができる。たとえば、本発明の一態様としての測定システムを、被測定物の表面および内部の複数の測定位置について空隙や割れ(空隙があるものと、空隙がない亀裂とを含む)などの欠陥を測定または検査する際に使用することもできる。
【0074】
C12.変形例12:
上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、制御部424の機能の一部をコンピュータ10が実行するようにすることもできる。
【0075】
このような機能を実現するコンピュータプログラムは、フロッピディスクやCD−ROM等の、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された形態で提供される。ホストコンピュータは、その記録媒体からコンピュータプログラムを読み取って内部記憶装置または外部記憶装置に転送する。あるいは、通信経路を介してプログラム供給装置からホストコンピュータにコンピュータプログラムを供給するようにしてもよい。コンピュータプログラムの機能を実現する時には、内部記憶装置に格納されたコンピュータプログラムがホストコンピュータのマイクロプロセッサによって実行される。また、記録媒体に記録されたコンピュータプログラムをホストコンピュータが直接実行するようにしてもよい。
【0076】
この明細書において、ホストコンピュータとは、ハードウェア装置とオペレーションシステムとを含む概念であり、オペレーションシステムの制御の下で動作するハードウェア装置を意味している。コンピュータプログラムは、このようなホストコンピュータに、上述の各部の機能を実現させる。なお、上述の機能の一部は、アプリケーションプログラムでなく、オペレーションシステムによって実現されていても良い。
【0077】
なお、この発明において、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピュータに固定されている外部記憶装置も含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施例である測定システム1を示す図。
【図2】センサユニット42,44,46と、センサ配置部50を示す図。
【図3】被測定物IPの内部を測定する際のコンピュータ10による処理を示すフローチャート。
【図4】第2実施例の検査システムを示す図。
【符号の説明】
【0079】
1,1a〜1c…測定システム
2…生産管理用コンピュータ
3…事務用コンピュータ
10,10a〜10c…コンピュータ
20…入力部
22…キーボード
24…マウス
30…出力部
32…液晶ディスプレイ
34…プリンタ
40,40a〜40c…センサユニット群
42,44,46…センサユニット
50…センサ配置部
51,52…ロボットアーム
102…センサユニット選択部
106…データ処理部
108…出力部
110…CPU
120…ROM
130…RAM
140…通信部
422,442,462…センサ部
424,444,464…制御部
511…センサ保持部
512〜518…関節
512…並進関節
513,515,517…ねじり関節
514,516,518…曲げ関節
521…センサ保持部
523,525,527…ねじり関節
524,526,528…曲げ関節
1000…データ通信回線
2000…社内LAN
IP,IPa〜IPc…被測定物
WP2,WP4,WP6…溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定システムであって、
被測定物の内部の互いに異なる測定位置について測定を行うための複数のセンサユニットであって、前記被測定物の内部を通過する磁束に関する測定を行って、それぞれ測定信号を出力することができるセンサユニットと、
前記複数のセンサユニットからの前記測定信号に基づいて前記被測定物の内部構造に関する情報処理を行う情報処理部と、
前記情報処理の結果を出力する出力部と、を備える測定システム。
【請求項2】
請求項1記載の測定システムであって、
前記センサユニットは、前記測定信号を無線通信によって前記情報処理部に送信するための送信部を備え、
前記情報処理部は、前記センサユニットから無線通信で送信された前記測定信号を受け取るための受信部を備える、測定システム。
【請求項3】
請求項2記載の測定システムであって、
前記受信部は、前記複数のセンサユニットからの前記測定信号を、順に受信することができる測定システム。
【請求項4】
請求項2記載の測定システムであって、
前記受信部は、前記複数のセンサユニットからの前記測定信号を、並列的に受信することができる測定システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の測定システムであって、
前記送信部は、前記測定信号としてのデジタル信号を前記情報処理部に送信することができ、
前記情報処理部の前記受信部は、前記測定信号としての前記デジタル信号を受け取ることができる、測定システム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の測定システムであって、さらに、
前記複数のセンサユニットを保持しており、前記被測定物の内部の測定を行う際に、前記内部の測定を行わないときよりも前記複数のセンサユニットを前記被測定物に相対的に近づけられる1以上のセンサ配置部であって、前記測定時に、前記複数のセンサユニットのうちの少なくとも一部を、互いに異なる角度で前記被測定物に対して配することができる1以上のセンサ配置部を備える、測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−38776(P2010−38776A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203209(P2008−203209)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000231154)日本高圧電気株式会社 (38)
【Fターム(参考)】