説明

測定チップの固定化膜の膜厚測定方法および測定チップ

【課題】多数の測定チップの固定化膜の膜厚が短時間で検査できる測定チップの固定化膜の膜厚測定方法および測定チップ。
【解決手段】金属膜4と固定化膜6とが形成された第1領域4Aと、基準となる反射率を有する第2領域4Bとを備え、固定化膜6が所定の膜厚を有する校正用チップ10を作製し、第1ステップで作製された校正用チップ10の固定化膜6の膜厚を測定し、同時に第1領域4Aと第2領域4Bとの反射光量比を求め、前記反射光量比と固定化膜6の膜厚との関係を求め、固定化膜6の膜厚が未知の被検査チップ10について前記第1領域と前記第2領域との反射光量比を求め、前記第3ステップで求めた校正用チップ10の反射光量比と、前記第4ステップで求めた被検査チップ10の反射光量比とに基づいて前記被検査チップ10の固定化膜6の膜厚を求める測定チップの固定化膜の膜厚測定方法、および前記固定化膜の膜厚測定方法に使用される測定チップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面プラズモン共鳴(SPR)測定装置に用いられる測定チップにおいて、表面にリガンドを固定する固定化膜の膜厚を測定する測定チップの固定化膜の膜厚測定方法、および前記固定化膜の膜厚測定方法を実現する手段を内包した測定チップに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、蛋白質やDNAなどの生化学物質の相互作用を調べたり、薬品のスクリーニングを行ったりする場合において、試料の反応を測定する測定装置としてSPRを利用した測定装置が知られている。
【0003】
表面プラズモンは、金属中の自由電子が集団的に振動することによって生じ、その金属の表面に沿って進む自由電子の疎密波の量子のことを指す。
【0004】
SPR測定装置は、透明な誘電体上に形成された薄膜としての金属膜を使用し、前記金属膜の一方の面をセンサ面とし、このセンサ面にSPRを発生させ、これを検出することにより、前記センサ面で生じる物質の反応状況を測定する。
【0005】
金属膜におけるセンサ面の裏側に、全反射条件を満足するように光を入射すると、光入射面において全反射が起こるが、入射光のうち、わずかな光は反射せずに金属膜内を通過してセンサ面に染み出す。このセンサ面に染み出した光波がエバネッセント波と呼ばれる。エバネッセント波と表面プラズモンの振動数とが一致して共鳴すると、反射光の強度が大きく減少する。SPR測定装置は、前記光入射面で反射する反射光の減衰を捕らえることにより、その裏側のセンサ面で発生するSPRを検出する。
【0006】
SPRを発生させるための光の入射角即ち共鳴角は、エバネッセント波および表面プラズモンが伝播する媒質の屈折率に依存する。言い換えると、媒質の屈折率が変化すれば、SPRを発生させる共鳴角も変化する。センサ面と接する物質は、エバネッセント波および表面プラズモンを伝播させる媒質となるので、たとえばセンサ面において2種類の分子間の結合や乖離などの化学反応が生じると、それが媒質の屈折率の変化として現れて共鳴角が変化する。SPR測定装置は、この共鳴角の変化を捉えることにより、分子間の相互作用を測定する。
【0007】
生化学分野の実験や研究においては、蛋白質、DNA,薬品などがリガンドやアナライトとして使用される。たとえば、薬品をスクリーニングする場合には、リガンドとして蛋白質などの生体物質を使用し、これをセンサ面に固定して前記センサ面をアナライトである複数種の薬品を接触させ、それらの相互作用を調べる。
【0008】
測定チップは、一般的に、ガラスやプラスチックなどの透明な誘電体ブロック、前記誘電体ブロックの表面に形成された金属膜、およびその上に形成され、リガンドを固定できる官能基を有する固定化膜からなる。前記測定チップにおいては、固定化膜の官能基を介してリガンドが金属膜に固定される。
【0009】
SPR測定装置においては、金属膜に光を入射させるための光学系としてKreschmann配置を採用しているものがある(特許文献1)。前記SPR測定装置は、光ビームを発生させる光源と、前記光源で発生した光ビームを、測定チップの誘電体ブロックと金属膜との界面で全反射するように前記誘電体ブロックに種々の角度で入射させる光学系と、前記界面で全反射した光ビームの強度を測定してSPRの状態、即ち全反射減衰の状態を検出する光検出手段とを備える。
【0010】
なお、前記SPR測定装置において種々の入射角を得るために、光ビームに種々の角度で入射する成分が含まれるように、たとえば比較的太い光ビームを前記界面に収束状態で入射させてもよい。この場合は、種々の反射角で反射した光ビームを全て受光できる方向に伸びるエリアセンサによって検出することができる(たとえば特許文献2)。
【0011】
また、試料の2次元的な物性情報を得たい場合があるが、SPR測定装置をこのような用途に応用することが検討されている。
【0012】
たとえば、SPR測定装置による試料の2次元的な物性分析を例に挙げると、界面の2次元的な広がりを有する領域に所定の入射角で所定波長の平行光束を入射させた場合、前記領域のうち、試料の屈折率が、前記入射角および前記波長で全反射減衰を生じる屈折率である領域が暗転として検出される。そこで、ある程度広い光束断面を有する複数の波長の平行光束を用い、この平行光束から所望の単一波長の平行光束を選択し、測定チップの誘電体ブロックと金属膜との界面に入射させ、前記界面で全反射した平行光束の断面の光強度分布を検出すれば、上記界面に沿った面内での試料の2次元的な屈折率分布に関連する特性を測定できる(特許文献3〜5)。
【特許文献1】特開平6−167443号公報
【特許文献2】特開平11−326194号公報
【特許文献3】特表2004−531719号公報
【特許文献4】特表2005−515424号公報
【特許文献5】特開2004−117298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述のように、SPR測定技術は、測定チップの金属膜近傍の屈折率変化を測定するものであるため、アナライトの結合量はもちろん、リガンドを固定する固定化膜の膜厚によっても測定値が異なる。
【0014】
したがって、測定しようとするアナライトの結合量が同一であっても固定化膜の厚さが異なるとその近傍の屈折率も異なるから、固定化膜の厚さが一定でないと信頼性の高い測定値が得られないという問題がある。
【0015】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたものであり、SPRを利用してアナライトの定量を行うのに使用される測定チップにおいて、製造される測定チップの固定化膜の膜厚が所定の誤差範囲内であるかどうかを判別して規定外の測定チップを除外し、信頼性の高い測定チップのみを提供するために簡便な方法で多数の測定チップの膜厚を検査するのに使用できる測定チップの固定化膜の膜厚測定方法、および前記固定化膜の膜厚測定方法を実現する手段を内包した測定チップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に記載の発明は、基体の表面の少なくとも一部の領域に形成され、所定の波長および入射角の光によって表面プラズモン共鳴を生じさせるのに最適な厚さを有する金属膜と、前記金属膜の表面に所定のアナライトと相互作用するリガンドを固定する固定化膜が形成された第1領域と、前記第1領域に隣接して設けられ、前記波長および入射角の光に対して基準となる反射率を有する第2領域とを備える測定チップであって、前記第1領域における固定化膜が所定の膜厚を有する校正用チップを作製する第1ステップと、第1ステップで作製された校正用チップの第1領域における固定化膜の膜厚を測定する第2ステップと、前記校正用チップについて、第1領域および第2領域における反射光量を同時に測定し、前記第2領域と前記第1領域との反射光量の比である反射光量比を求め、次いで、前記反射光量比と固定化膜の膜厚との関係を求める第3ステップと、前記測定チップであって前記固定化膜の膜厚が未知の被検査チップについて、第1領域および第2領域における反射光量を同時に測定し、前記第2領域に対する前記第1領域の反射光量比を求める第4ステップと、前記第3ステップで求めた校正用チップの反射光量比と、前記第4ステップで求めた被検査チップの反射光量比とに基づいて前記被検査チップの膜厚を求める第5ステップとを有することを特徴とする測定チップの固定化膜の膜厚測定方法に関する。
【0017】
前記固定化膜の膜厚測定方法においては、前記測定チップのうち、第1領域の固定化膜が所定の膜厚を有する校正用チップについて、前記固定化膜の膜厚を測定するとともに、第1領域と第2領域との反射光量比を測定し、前記固定化膜の膜厚と反射光量比との関係を求める。
【0018】
次に、前記測定チップのうち、第1領域における固定化膜の膜厚が未知の被検査チップについて第1領域と第2領域との反射光量比を測定する。
【0019】
最後に、被検査チップにおいて測定された反射光量比と、校正用チップについて求められた前記固定化膜の膜厚と反射光量比との関係とから、前記被検査チップの第1領域における固定化膜の膜厚を求める。
【0020】
このように被検査チップについて実際に測定するのは反射光量比のみであり、固定化膜の膜厚を直接には測定していないから、多数の被検査チップを短時間で処理できる。
【0021】
したがって、多数の測定チップについて、固定化膜の膜厚が所定の誤差範囲内のものと、膜厚が規定外のものとに短時間で分別できるから、信頼性の高い測定チップのみを提供できる。
【0022】
また、前記固定化膜の膜厚の測定方法は、このように反射光量比に基づいて被検査チップの膜厚を求めているから、入射光の光量によって測定結果が左右されることがない。したがって、得られる測定結果は信頼性が高い。
【0023】
請求項2に記載の発明は、前記第1ステップにおいて、前記所定の波長および入射角の光を入射したときに表面プラズモン共鳴を生じさせるのに最適な厚さの金属膜で基体が被覆された第1領域と、前記基体が金属膜で被覆されていないか、または前記第1領域に形成された金属膜とは厚さの異なる金属膜で被覆されてなる第2領域とを有するとともに、前記第1および第2領域は厚さの均一な固定化膜で被覆されてなる校正用チップを作製する請求項1に記載の測定チップの固定化膜の膜厚測定方法に関する。
【0024】
前記膜厚測定方法の第1ステップで作製される校正用チップにおいては、第1領域は、所定の波長および入射角の光に対してSPRが生じるように最適化されているのに対し、第2領域は、このような最適化がなされていない。
【0025】
したがって、前記校正用チップを前記波長および入射角の光で照射すると、第1領域ではSPRが生じて反射光量が顕著に低下するのに対し、第2領域ではSPRが殆ど生じないから、反射光量は、第1領域ほど顕著には低下しない。
【0026】
また、前記校正用チップにおいては、固定化膜に固定されたリガンドがアラナイトと相互作用した場合だけでなく、固定化膜の厚さが変化することによってもSPRが生じる入射角即ち共鳴角は増減する。そして、入射光の波長と入射角とを固定すれば、固定化膜の厚さが変化することによって生じる共鳴角の増減は、反射光量の増加または減少として観測される。
【0027】
したがって、前記校正用チップにおいては、第1領域においては固定化膜の膜厚が変化すると反射光量が顕著に増大または減少するのに対し、第2領域では固定化膜の膜厚が変化しても反射光量は殆ど変化しないから、第1領域と第2領域との反射光量比は、固定化膜の膜厚が変化すると顕著に増大または減少する。
【0028】
そこで、固定化膜の膜厚の異なる複数の校正用チップを作製し、夫々の校正用チップについて第1領域と第2領域との反射光量比を求め、前記反射光量比を固定化膜の膜厚に対してプロットすれば、固定化膜の膜厚と反射光量比との関係を求めることができる。
【0029】
前記固定化膜の膜厚の測定方法において使用される校正用チップにおいては、基板の全面に、記所定の波長および入射角の光に対してSPRを生じさせるのに最適な厚さよりも薄い厚さの金属膜を形成して第2領域とし、前記基板の一部の領域において、前記金属膜に更に重ねて金属膜を形成して記所定の波長および入射角の光に対してSPRを生じさせるのに最適な厚さにすることにより、第1領域を形成できる。また、基板の一部の領域のみを記所定の波長および入射角の光に対して表面プラズモン共鳴を生じさせるのに最適な厚さの金属膜で被覆して第1領域とし、残りの領域を第2領域としてもよい。
【0030】
次に、第1領域と第2領域とが形成された基板をSAM溶液、エポキシ化剤、デキストラン溶液、ブロモ酢酸溶液の順に浸漬して第1領域と第2領域とを均一な厚さの固定化膜で被覆することにより、校正用チップを作製できる。
【0031】
このように、前記校正用チップにおいては、全体を均一な厚さの固定化膜で被覆すればよいから固定化膜の作製が容易である。
【0032】
請求項3に記載の発明は、前記第1ステップにおいて、前記所定の波長および入射角の光に対して表面プラズモン共鳴を生じさせるのに最適な厚さの金属膜で基体が被覆されてなるとともに、前記金属膜の表面が固定化膜で覆われた第1領域と、前記金属膜の表面が固定化膜で被覆されていない第2領域とを有する校正用チップを作製する請求項1に記載の測定チップの固定化膜の膜厚測定方法に関する。
【0033】
前記固定化膜の膜厚測定方法の第1ステップで作製される校正用チップにおいては、第1領域では金属膜が固定化膜で被覆され、第2領域では金属膜が露出しているから、第2領域では、共鳴角で入射する光に対してSPRを生じ、反射光量が低下する。これに対して、第1領域においては、前記光に対してSPRが生じるものの、前記第2領域とは共鳴角が異なる。したがって入射光の波長および入射角を第2領域でSPRが生じる波長および入射角に固定すれば、固定化膜の膜厚の変化に伴う共鳴角の変化は、反射光量の増減として捉えられる。
【0034】
したがって、前記校正用チップにおいても、固定化膜の膜厚の異なる複数の第1領域を形成するか、または第1領域に形成される固定化膜の膜厚の異なる複数の校正用チップを形成し、第1領域と第2領域とにおける反射光量比を求めて固定化膜の膜厚に対してプロットすれば、固定化膜の膜厚と反射光量比との関係が求められる。
【0035】
前記固定化膜の膜厚測定方法においては、基材の全面を、所定の共鳴角でSPRが生じるような膜厚の金属膜で被覆し、前記金属膜の一部の領域を固定化膜で被覆して第1領域とすることにより、校正用チップを作製しているから、請求項2に記載の固定化膜の膜厚測定方法において使用される校正用チップよりも更に少ない手順で校正用チップを作製できる。
【0036】
請求項4に記載の発明は、前記第4ステップにおいて、被検査チップについて前記第2領域と前記第1領域との反射光量比の2次元分布を求め、前記第5ステップにおいて、前記第3ステップで求めた校正用チップの反射光量比と、前記第4ステップで求めた被検査チップの反射光量比の二次元分布とに基づいて前記被検査チップの第1領域における膜厚の二次元分布を求める請求項1〜3の何れか1項に記載の測定チップの固定化膜の膜厚測定方法に関する。
【0037】
前記固定化膜の膜厚測定方法においては、被検査チップの第1領域における固定化膜の膜厚の二次元分布を求めているから、測定チップの固定化膜の膜厚検査に前記固定化膜の膜厚測定方法を適用すれば、固定化膜の膜厚分布が不均一な測定チップを効果的に排除できる。
【0038】
請求項5に記載の発明は、基体の表面の少なくとも一部の領域に形成され、所定の波長および入射角の光によって表面プラズモン共鳴を生じさせるのに最適な厚さを有する金属膜と、前記金属膜の表面に所定のアナライトと相互作用するリガンドを固定する固定化膜が形成された第1領域と、前記第1領域に隣接して設けられ、前記波長および入射角の光に対して基準となる反射率を有する第2領域とを備える測定チップに関する。
【0039】
前記測定チップにおいては、第1領域においては固定化膜の厚さが変化すれば反射光量も増減するのに対し、第2領域においては固定化膜の厚さが変化しても反射光量は実質的に一定である。したがって、第1領域と第2領域との反射光量比もまた、第1領域における固定化膜の厚さが変化すると増大または減少する。
【0040】
ここで、前記反射光量比は入射光の光量には左右されない。
【0041】
したがって、第1領域における固定化膜の膜厚を変化させた校正用チップを作製して請求項1〜4に記載の固定化膜の膜厚測定方法を実施すれば、入射光の光量に左右されることなく、測定チップの膜厚を測定できる。
【0042】
また、固定化膜とアナライトとを相互作用させれば、第1領域においては反射光量が変化するが、第2領域においては反射光量は一定であるから、第1領域と第2領域との反射光量比を求めることにより、入射光の光量の大小に影響されることなくアナライトを検出できる。
【0043】
請求項6に記載の発明は、前記第1領域においては、前記所定の波長および入射角の光を入射したときに表面プラズモン共鳴を生じさせるのに最適な厚さの金属膜で基体が被覆され、前記第2領域においては、前記基体が金属膜で被覆されていないか、または前記第1領域に形成された金属膜とは厚さの異なる金属膜で被覆されてなるとともに、前記第1および第2領域は厚さの均一な固定化膜で被覆されてなる請求項5に記載の測定チップに関する。
【0044】
請求項2のところでも述べたように、前記測定チップにおいては、前記波長および入射角の光に対して第1領域ではSPRが生じるが、第2領域ではSPRが生じない。そして、第1領域では、固定化膜の膜厚が変化すれば、SPRが生じる共鳴角も変化し、その結果、反射光量が増大または減少するが、第2領域では、固定化膜の膜厚の如何に係わらず反射光量は一定である。
【0045】
したがって、前記測定チップにおいても、第1領域と第2領域との反射光量比は、固定化膜の厚さに対応して変化するから、前記測定チップにおいて固定化膜の厚さが既知のものは、請求項1〜4に記載の固定化膜の膜厚測定方法における校正用チップとして好適に使用される。
【0046】
請求項7に記載の発明は、前記所定の波長および入射角の光を入射したときに表面プラズモン共鳴を生じさせるのに最適な厚さの金属膜で基体が被覆されてなるとともに、前記第1領域においては前記金属膜の表面に固定化膜が形成され、前記第2領域においては、前記金属膜の表面は固定化膜で被覆されていない請求項5に記載の測定チップに関する。
【0047】
前記測定チップにおいては、第2領域では、前記波長および入射角の光に対してSPRが生じ、反射光量が顕著に低下する。しかしながら、第2領域には固定化膜は形成されていないから、反射光量は固定化膜の膜厚の影響を受けることがなく、入射光の波長、入射角、および光量が一定であれば一定の反射光量が得られる。
【0048】
したがって、前記測定チップにおいても、第1領域と第2領域との反射光量比は、固定化膜の厚さに対応して変化するから、前記測定チップにおいて固定化膜の厚さが既知のものは、請求項1〜4に記載の固定化膜の膜厚測定方法における校正用チップとして好適に使用される。
【発明の効果】
【0049】
以上説明したように本発明によれば、測定チップの固定膜の膜厚が簡便に測定、検査できる測定チップの固定化膜の膜厚測定方法、および前記測定方法を実現する手段を有する測定チップが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
1.実施形態1
実施形態1に係る測定チップ10は、図1に示すように長尺板状の基体2と、基体2の一方の面に形成された金属膜4と、金属膜4の表面に形成された固定化膜6とを備える。
【0051】
基体2は、本発明の光の一例である波長532nmの入射光に対して透明な誘電体、たとえば石英ガラスや硼珪酸ガラスなどの光学ガラス類、およびポリカーボネート樹脂や環状ポリオレフィン樹脂などの光学用樹脂から形成できる。そして、図2に示すように、幅方向に沿った平面X−X’で切断した断面は、金属膜4が形成された側の面から金属膜4の形成されていない側の面に向かって縮小するプリズム状である。
【0052】
金属膜4は、SPRが生じ得るものであれば特に限定はされず、たとえば金、銀、銅、アルミニウムから選択された金属を基体2の幅の広い側の面にスパッタリングして形成されるが、プラズモンの減衰のし難さの点から金および銀が好ましく、特に酸化に対する安定性に優れている点から金が好ましい。
【0053】
金属膜4は、所定の入射角たとえば反射面に対して54度の入射角で波長532nmの入射光を入射させたときに表面プラズモン共鳴を生起する厚さに形成された第1領域4Aと、前記第1領域4Aよりも厚さの薄い第2領域4Bとからなる。金属膜4における第1領域4Aの厚さt1はたとえば45nmであり、第2領域4Bの厚さt2はたとえば15nmである。
【0054】
測定チップ10は、以下の手順に従って作製できる。
【0055】
先ず、図3に示すように、24本の基体2を、基体2の幅の広い側がスパッタターゲット(図示せず。)に相対するようにスパッタ成膜装置(図示せず。)のサンプル台200の上に載置する。24本の基体2は4つの組に分けられ、各組は夫々等間隔に配列される。各組において、基体2は、幅方向に6本づつ密着して配列される。
【0056】
スパッタ成膜装置のサンプル台200の上に基体2を配列したら、マスク20を基体2に密着させて被せる。マスク20は、図4に示すように略半径方向に沿って等間隔に連続スリット22が6本形成された連続スリット領域21が等間隔に4個形成されている。連続スリット22は基体2の全長に亘って連続するように形成されている。そして、隣り合う2つの連続スリット領域21の丁度中間に、略半径方向に沿って等間隔に断続スリット24が6本形成された断続スリット領域23が形成されている。したがって、断続スリット領域23も、連続スリット領域21と同様に等間隔に4個形成されている。断続スリット24は、連続スリット22とは異なり、破線状に断続するように形成されている。
【0057】
マスク20は、先ず、図5において(A)に示すように、断続スリット領域23が基体2の上方に位置するように配置される。これにより、断続スリット24が夫々の基体2の上方に位置する。この状態で金を30nmの厚さにスパッタリングすることにより、図5において(B)に示すように基体2の幅の広い側の面に第1領域4Aが断続的に形成される。
【0058】
第1領域4Aが形成されたら、マスク20を図5の状態から45度回転させ、図6において(A)に示すように、連続スリット領域21が基体2の上方に位置するように配置される。これにより、連続スリット22が夫々の基体2の上方に位置する。この状態で金を15nmの厚さにスパッタリングすることにより、図6において(B)に示すように基体2の幅の広い側の面に第1領域4Aと第2領域4Bとが形成される。
【0059】
基体2に金属膜4が形成されたら、図7に示す手順に従って金属膜4の表面に固定化膜6を形成して測定チップ10を作製する。以下に、測定チップ10を作製した手順について説明する。
【0060】
エタノール/水(80/20)中、11−ヒドロキシ−1−ウンデカンチオールの5.0mM溶液を、金属膜4に接触するように添加し、25℃で18時間表面処理を行った。その後、エタノールで5回、エタノール/水混合溶媒で1回、水で5回洗浄した。
【0061】
次に、11−ヒドロキシ−1−ウンデカンチオールで被覆した表面を10重量%のエピクロロヒドリン溶液(溶媒:0.4M水酸化ナトリウムとジエチレングリコールジメチルエーテルとの1:1混合溶液)に接触させ、25℃の震盪インキュベータ中で4時間反応を進行させた。その後、表面をエタノールで2回、水で5回洗浄した。
【0062】
次に、25重量%のデキストラン(T500、Pharmacia社製)水溶液40.5mlに4.5mlの水酸化ナトリウムを添加し、その溶液をエピクロロヒドリン処理表面に接触させた。次に震盪インキュベータ中で25℃、20時間インキュベートした。そして、表面を50度の水で10回洗浄した。
【0063】
続いてブロモ酢酸3.5gを27gの2M水酸化ナトリウム溶液に溶解した混合物を上記デキストラン処理表面に接触させ、震盪インキュベータ中で28℃16時間インキュベートした。インキュベート後、表面を水で洗浄し、上述の手順を1回繰り返した。
【0064】
このようにして作製された測定チップ10のうちの1つを校正用チップ10として用い、エリプソメータで固定化膜の膜厚を測定する。
【0065】
エリプソメータで膜厚を測定した校正用チップ10を測定装置100に装着して反射光量の二次元分布を測定し、膜厚と反射光量との関係を求めた。
【0066】
測定装置100は、図8に示すように、校正用チップ10が装着される測定チップホルダ102と、測定チップホルダ102に装着された校正用チップ10に向かって平行な光を照射する光源104と、校正用チップ10からの反射光の強度を測定するCCDカメラ106と、校正用チップ10からの反射光をCCDカメラ106に収束させるテレセントリックレンズ108とを備える。光源104の出射面にはp偏光光のみを透過させる偏光フィルタ110が、テレセントリックレンズ108の入射面には波長532nmの光のみを透過させる干渉フィルタ112が設けられている。更に、光源104の出射面と偏光フィルタ110との間には光源104から出射される光の幅を規制するマスク114が挿入されている。
【0067】
校正用チップ10は、基体2の幅の小さい側の面、言い換えれば金属膜4および固定化膜6が形成された側とは反対側の面が、光源104およびCCDカメラ106に臨むように測定チップホルダ102に装着される。
【0068】
以下、測定装置100の作用について説明する。図8に示すように、光源104から出射された光は、校正用チップ10の金属膜4を有しない側の面から金属膜4に向かって入射角θで入射し、金属膜4で反射して同様の出射角でテレセントリックレンズ108およびCCDカメラ106に入射する。測定チップ10の基体2はプリズムとして機能し、基体2に入射した光を金属膜4の基体2に接する側に入射角θで誘導する。
【0069】
図9に示すように、光の金属膜4に対する入射角θが特定の値、たとえば約48〜52度のとき、金属膜4の第1領域4A、即ち厚さが45nmの領域では、入射した光によってSPRが起こり、反射光量が大きく減衰する。反射光量が最低値を示す入射角θは、同図において太い実線で示すように校正用チップ10に固定化膜6を形成しない場合は48度であり、厚さ5nmの固定化膜6を形成した場合は同図において太い破線で示すように50度であり、厚さが10nmの固定化膜6を形成した場合は同図において太い一点鎖線で示すように52度である。
【0070】
入射角θが前記角度よりも大きくなると、固定化膜6の厚さによらず、反射率は上昇するが、固定化膜6を形成しない場合と固定化膜6の厚さが5nmの場合と固定化膜6の厚さが10nmの場合との反射率の差は、入射角θが54度近辺で最大になる。
【0071】
これに対し、金属膜の厚さが15nmである第2領域4Bにおいては、入射角θが54においては、図9で細い実線、破線、および一点鎖線で示すように、反射率は約0.4と固定化膜6の厚さによらず殆ど同一である。
【0072】
入射角θが54度のときの反射率と固定化膜6の膜厚との関係を、金属膜4における厚さが45nmの第1領域4Aと厚さが15nmの第2領域4Bとについて図10の(A)に示す。図10の(A)において、第1領域4Aについては破線で、第2領域4Bについては実線で示す。図10の(A)から判るように、第1領域4Aの反射率は、固定化膜6の厚さが0nmのとき約0.205であり、5nmのときは約0.14であり、10nmのときは約0.08であり、固定化膜6の厚さが増加すると直線的に低下している。これに対し、第2領域4Bにおいては、固定化膜6の厚さによらず、反射率は0.41でほぼ一定である。実際の測定では、1枚の2次元画像の反射光分布からは反射率を直接求めることはできない。そこで、第1領域4Aと第2領域4Bとの反射率の比である反射光量比を求めた。反射光量比は、値が低くなればなるほど第1領域4Aと第2領域4Bとのコントラストが強くなることを示す。反射光量比と固定化膜6の膜厚との関係を図10の(B)に示す。図10の(B)に示すように、反射光量比は、固定化膜6の厚さが0nmのとき約0.5であり、5nmのときは約0.35であり、10nmのときは約0.2と、固定化膜6の厚さが増加すると直線的に低下していた。このように、固定化膜6の厚みが増加したときの反射光量比の低下は反射率の低下よりも著しいことが判る。
【0073】
次に、図11に示す固定化膜6の厚みが未知の測定チップ10について図8に示す測定装置で金属膜4の反射率を測定して第1領域4Aと第2領域4Bとの反射光量比を求めた。なお、図11の測定チップも幅方向の切断面X−X’で切断した断面は図2に示す通りであり、第1領域4Aは4個設けられている。そして固定化膜6は、第2領域4Bによって、第1領域4Aの4つの領域に対応する膜厚評価ライン1、膜厚評価ライン2、膜厚評価ライン3、膜厚評価ライン4の4領域に区分されている。図11において、膜厚評価ライン1、膜厚評価ライン2、膜厚評価ライン3、膜厚評価ライン4の色の濃度の高い部分は膜厚が厚いことを、色の濃度の低い部分は膜厚が薄いことを示す。
【0074】
膜厚評価ライン1、膜厚評価ライン2、膜厚評価ライン3、膜厚評価ライン4の各領域における反射率の分布を図12の(A)に示す。そして、図12の(A)に示す測定チップ10の各領域における反射率の分布と、図11の(A)に示す反射率と固定化膜6の膜厚との関係とから、各領域における固定化膜6の膜厚の分布を求めた。結果を図12の(B)に示す。
【0075】
以上、実施形態1に示す方法によれば、測定チップ10において金属膜4の反射光量を測定するだけで固定化膜6の厚さの分布が求めらる。
2.実施形態2
実施形態2に係る測定チップ11は、図13に示すように、長尺板状の基体12と、基体12の一方の面に形成された金属膜14と、金属膜14の表面に形成された固定化膜16とを備える。
【0076】
基体12は、実施形態1に係る測定チップ10の備える基体2と同様に測定装置100の光源104から出射される光に対して透明な誘電体から形成され、金属膜14が形成される側の面から反対側の面に向かって縮小するプリズム状の断面を有する。基体12を形成するのに使用される誘電体については実施形態1のところで述べたのと同様のものが使用される。
【0077】
金属膜14は、実施形態1における金属膜4とは異なり、厚さ45nmの均一な金、銀、銅、またはアルミニウムの膜である。金属膜14の材質は金または銀が好ましく、中でも金が最も好ましい。
【0078】
金属膜14の表面には固定化膜16が形成されているが、固定化膜16は、6個の領域に分割されている。
【0079】
測定チップ11は、以下の手順に従って作製できる。
【0080】
先ず、図3に示すように、24本の基体12を、基体2の幅の広い側がスパッタターゲット(図示せず。)に相対するようにスパッタ成膜装置(図示せず。)のサンプル台200の上に載置する。24本の基体12は4つの組に分けられ、各組は夫々等間隔に配列される。各組において、基体12は、幅方向に6本づつ密着して配列される。
【0081】
スパッタ成膜装置のサンプル台200の上に基体12を配列したら、図15において(A)に示すようにマスク30を基体12に密着させて被せる。マスク30は、図14に示すように略半径方向に沿って等間隔に連続スリット32が6本形成された連続スリット領域31が等間隔に4個形成されている。
【0082】
マスク30を基体12に密着させた状態で金を45nmの厚さにスパッタリングすることにより、図15において(B)に示すように基体12の幅の広い側の面に金属膜14が形成される。
【0083】
金属膜14が形成されたら、図16において(A)に示すように、弗素樹脂のシートにマスク20の断続スリット24と同様の形状および大きさの孔を穿設したキュベット本体にシリコーンゴムのシール材を重ねたものを、基体12の固定化膜16を形成すべき領域に重ね、前記領域に対応する6個のキュベット18を形成した。なお、シリコーンゴムや弗素ゴムなどの耐薬品性の高いゴムに孔を穿設してキュベット本体とシール材とを一体化したものを、前記弗素樹脂のシートとシリコーンゴムとの積層体の代わりに用いてもよい。
【0084】
次に、各キュベット18にエタノール/水(80/20)中、11−ヒドロキシ−1−ウンデカンチオールの5.0mM溶液を注入し、25℃で18時間表面処理を行った。その後、エタノールで5回、エタノール/水混合溶媒で1回、水で5回洗浄した。
【0085】
そして、11−ヒドロキシ−1−ウンデカンチオールで被覆した表面を10重量%のエピクロロヒドリン溶液(溶媒:0.4M水酸化ナトリウムとジエチレングリコールジメチルエーテルとの1:1混合溶液)に接触させ、25℃の震盪インキュベータ中で4時間反応を進行させた。その後、表面をエタノールで2回、水で5回洗浄した。
【0086】
次に、25重量%のデキストラン(T500、Pharmacia社製)水溶液40.5mlに4.5mlの水酸化ナトリウムを添加し、その溶液をエピクロロヒドリン処理表面に接触させた。次に震盪インキュベータ中で25℃、20時間インキュベートした。そして、表面を50度の水で10回洗浄した。
【0087】
続いてブロモ酢酸3.5gを27gの2M水酸化ナトリウム溶液に溶解した混合物を上記デキストラン処理表面に接触させ、震盪インキュベータ中で28℃16時間インキュベートした。インキュベート後、表面を水で洗浄し、上述の手順を1回繰り返した。
【0088】
このようにして形成された測定チップ11においては、金属膜14における固定化膜16が形成されていない領域を基準領域として固定化膜16の厚さと金属膜14における反射率との関係を求めることができる。前記関係を求める手順および測定装置は、実施形態1のところで述べたとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、実施形態1に係る測定チップの構成を示す長手方向の断面図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る測定チップの構成を示す幅方向の断面図である。
【図3】図3は、実施形態1に係る測定チップの備える基体に金属膜を作製する手順を示す工程図である。
【図4】図4は、実施形態1に係る測定チップの備える基体に金属膜を作製するのに使用されるマスクを示す平面図である。
【図5】図5は、実施形態1に係る測定チップの備える基体に金属膜を作製する手順を示す工程図である。
【図6】図6は、実施形態1に係る測定チップの備える基体に金属膜を作製する手順を示す工程図である。
【図7】図7は、基体に形成された金属膜の表面に固定化膜を形成する手順を示す工程図である。
【図8】図8は、図1に示す測定チップが装着される測定装置の構成を示す概略図である。
【図9】図9は、図1に示す測定チップの金属膜において厚さの厚い第1領域と厚さの薄い第2領域とにおける光の入射角と反射率との関係を示すグラフである。
【図10】図10は、図1に示す測定チップにおける固定化膜の厚さと反射率および反射光量比との関係を示すグラフである。
【図11】図11は、金属膜における反射率と固定化膜の厚さとの関係から固定化膜そのものの厚さを求めるのに使用された測定チップの概要を示す平面図である。
【図12】図12は、図11に示す測定チップにおける第1領域と第2領域との反射光量比の分布、および前記反射光量比の分布から求めた膜厚分布を示すグラフである。
【図13】図13は、実施形態2に係る測定チップの構成を示す長手方向の断面図である。
【図14】図14は、実施形態2に係る測定チップの備える基体に金属膜を作製するのに使用されるマスクを示す平面図である。
【図15】図15は、実施形態2に係る測定チップの備える基体に金属膜を作製する手順を示す工程図である。
【図16】図16は、実施形態2に係る測定チップにおいて基体に形成された金属膜の表面に固定化膜を形成する手順を示す工程図である。
【符号の説明】
【0090】
2 基体
4 金属膜
4A 第1領域
4B 第2領域
6 固定化膜
10 測定チップ
11 測定チップ
12 基体
14 金属膜
16 固定化膜
18 キュベット
20 マスク
21 連続スリット領域
22 連続スリット
23 断続スリット領域
24 断続スリット
30 マスク
31 連続スリット領域
32 連続スリット
100 測定装置
102 測定チップホルダ
104 光源
106 CCDカメラ
108 テレセントリックレンズ
110 偏光フィルタ
112 干渉フィルタ
114 マスク
200 サンプル台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の表面の少なくとも一部の領域に形成され、所定の波長および入射角の光によって表面プラズモン共鳴を生じさせるのに最適な厚さを有する金属膜と、前記金属膜の表面に所定のアナライトと相互作用するリガンドを固定する固定化膜が形成された第1領域と、前記第1領域に隣接して設けられ、前記波長および入射角の光に対して基準となる反射率を有する第2領域とを備える測定チップであって、前記第1領域における固定化膜が所定の膜厚を有する校正用チップを作製する第1ステップと、
第1ステップで作製された校正用チップの第1領域における固定化膜の膜厚を測定する第2ステップと、
前記校正用チップについて、第1領域および第2領域における反射光量を同時に測定し、前記第1領域と前記第2領域との反射光量の比である反射光量比を求め、次いで、前記反射光量比と固定化膜の膜厚との関係を求める第3ステップと、
前記測定チップであって前記固定化膜の膜厚が未知の被検査チップについて、第1領域および第2領域における反射光量を同時に測定し、前記第1領域と前記第2領域との反射光量比を求める第4ステップと、
前記第3ステップで求めた校正用チップの反射光量比と、前記第4ステップで求めた被検査チップの反射光量比とに基づいて前記被検査チップの第1領域における固定化膜の膜厚を求める第5ステップと
を有することを特徴とする測定チップの固定化膜の膜厚測定方法。
【請求項2】
前記第1ステップにおいて、前記所定の波長および入射角の光に対して表面プラズモン共鳴を生じさせるのに最適な厚さの金属膜で基体が被覆された第1領域と、前記基体が金属膜で被覆されていないか、または前記第1領域に形成された金属膜とは厚さの異なる金属膜で被覆されてなる第2領域とを有するとともに、前記第1および第2領域は厚さの均一な固定化膜で被覆されてなる校正用チップを作製する請求項1に記載の測定チップの固定化膜の膜厚測定方法。
【請求項3】
前記第1ステップにおいて、前記所定の波長および入射角の光に対して表面プラズモン共鳴を生じさせるのに最適な厚さの金属膜で基体が被覆されてなるとともに、
前記金属膜の表面が固定化膜で覆われた第1領域と、前記金属膜の表面が固定化膜で被覆されていない第2領域とを有する校正用チップを作製する請求項1に記載の測定チップの固定化膜の膜厚測定方法。
【請求項4】
前記第4ステップにおいて、被検査チップについて前記第2領域と前記第1領域との反射光量比の2次元分布を求め、
前記第5ステップにおいて、前記第3ステップで求めた校正用チップの反射光量比と、前記第4ステップで求めた被検査チップの反射光量比の二次元分布とに基づいて前記被検査チップの第1領域における膜厚の二次元分布を求める
請求項1〜3の何れか1項に記載の測定チップの固定化膜の膜厚測定方法。
【請求項5】
基体の表面の少なくとも一部の領域に形成され、所定の波長および入射角の光によって表面プラズモン共鳴を生じさせるのに最適な厚さを有する金属膜と、
前記金属膜の表面に所定のアナライトと相互作用するリガンドを固定する固定化膜が形成された第1領域と、
前記第1領域に隣接して設けられ、前記波長および入射角の光に対して基準となる反射率を有する第2領域とを備えてなることを特徴とする測定チップ。
【請求項6】
前記第1領域においては、前記所定の波長および入射角の光を入射したときに表面プラズモン共鳴を生じさせるのに最適な厚さの金属膜で基体が被覆され、
前記第2領域においては、前記基体が金属膜で被覆されていないか、または前記第1領域に形成された金属膜とは厚さの異なる金属膜で被覆されてなるとともに、前記第1および第2領域は厚さの均一な固定化膜で被覆されてなる
請求項5に記載の測定チップ。
【請求項7】
前記所定の波長および入射角の光を入射したときに表面プラズモン共鳴を生じさせるのに最適な厚さの金属膜で基体が被覆されてなるとともに、
前記第1領域においては前記金属膜の表面に固定化膜が形成され、
前記第2領域においては、前記金属膜の表面は固定化膜で被覆されていない
請求項5に記載の測定チップ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−256103(P2007−256103A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81391(P2006−81391)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】