説明

測定プローブ及びこれを有する証明装置

【課題】1つの磁性セキュリティ材料を有するセキュリティ書類のような少なくとも1つの品目の磁化データを測定するための測定プローブ及び測定プローブを有する証明装置を提供する。
【解決手段】測定プローブは少なくとも1つのコア無し磁化コイル3を有し、少なくとも2つの磁場センサ4sおよび4cが磁化コイル3の両端でその内部に配置されている。証明装置は測定プローブを用いて磁気セキュリティ印刷物を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書類又は物品の磁気特徴を記録及び比較して、磁気特徴が書類又は物品内に含まれるか若しくはインク、コーティング組成物又は箔により書類又は物品に施された磁性材料に結びつけられる、セキュリティ書類又は物品を証明するための、測定プローブ及びこれを有する証明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性インクはセキュリティ印刷の技術分野において既知である。一世紀以上もずっとドル紙幣に印刷されている「米国紙幣ブラック」は黒色顔料として使用される磁鉄鉱粉末Fe34を基礎としている。鉄、コバルト及びニッケル粉末、褐色酸化鉄Fe23、二酸化クロムCrO2、フェライトMFe23(ここに、MはMg2+、Mn2+、Co2+、Ni2+、Zn2+等の如き二価鉄)、例えばZnFe23、ガーネットA3512(ここに、Aは三価希土類鉄、BはAl3+、Fe3+、Ga3+、Bi3+等)、例えばイットリウム/鉄/ガーネットY3Fe512(YIG)その他の如き多くの他の磁性材料が提案され、インク及びコーティング組成内で顔料として使用されてきた。
【0003】
磁性材料は適用された外部の磁場Hの関数におけるその磁化強度Bの依存性により顕著に特徴づけられる。低磁場Hでは、磁化BはHに概略的に比例し、即ち、B=μ・Hであり;比例定数μは相対透磁率と呼ばれる。磁化関数B(H)の非線形挙動は高磁場Hにおいてほぼ観察され、ここでは、μは最終的には1に実質的に等しくなる、磁気飽和時となる。すべての磁性材料は磁気飽和を示す。
【0004】
多くの磁性材料は更に非往復磁化機能を示し、すなわち、磁場強度Hが飽和値からゼロへ減少すると、Bはある一定の値Br(磁気残留)に留まる。Bを再度ゼロに戻すためには、材料に負の磁場−Hc(磁気保磁)を適用しなければならない。この非往復磁気挙動はヒステレシスと呼ばれ、このような材料のB(H)曲線即ち磁化特徴はヒステレシス曲線と呼ばれる。
【0005】
図1aは保持磁性材料のヒステレシス曲線を示し、ここでは、磁化強度Bは磁場強度Hに対してプロットされている。B(H)磁化関数の非線形特性は、磁性材料の保磁性Hc、外部の場の除去後の残留磁化Br及び材料の飽和磁化(μ=1)Bsと共に、示されいる。Hcは材料特有の、そして量独立性の強度(intensive)値であり、一方、Br及びBsは量依存性の容量(extensive)値である。
【0006】
実践的な応用においては、Hの関数としての磁化B又は磁気誘導即ちH(t)の関数としての時間変数dB(H)/dtは適当な感知装置を使用して測定することができる。図1bは感知コイルにより得られ、図1aに示すヒステレシス曲線上の点bから点dまでの道程に対応するような磁気誘導dB/dtを示す。
【0007】
磁性インク又はコーティングを担持するセキュリティ書類又は物品の証明目的のため、磁気特性の材料関連磁化(例えばヒシテレシス)曲線B(H)=μ・Hを利用することが重要である。磁化即ちヒステレシス曲線の測定は普通重量のある実験設備を必要とする。このような設備即ちヒステレシスメーターは磁場の形成及び感知のための測定プローブと、これと一緒に、必要なドライバ及びデータ処理電子機器とを有する。
【0008】
当業界で知られ、実験用ヒステレシスメーターと一緒に使用されるような磁気測定プローブのレイアウトは図2aに概略的に示す。磁性材料M´のサンプルが磁化コイル3の第1の部分の内部に置かれる。コイル3はシリンダ形状で磁気コアの無いコイル、即ち周期的に変化する電流I(t)により駆動されそれにより周期的に変化する磁場H(t)を発生させるソレノイドである。コイルの内部の磁性材料M´は場H(t)により磁化され、磁場H(t)に付加的な要素B(t)=A・μ(H)・H(t)を生じさせる。Aは存在する磁性材料の量に関連する比例定数である。
【0009】
感知コイル4sは磁化コイルの第1の部分の頂部に配置されて、サンプルM´を収容する。補償コイル4cは磁化コイルの第2の部分の頂部に配置されて、サンプルを収容しない。変化する磁場H(t)はそれぞれ感知及び補償コイル内に電圧Us、Ucを発生させる:
【数1】


感知及び補償コイルは機械的に対称的な方法で配置され、互いに関して電気的に平衡にされ、これら両方は、感知コイルの内部に磁性材料が存在しない場合にUs−Ucがゼロになるように、共通の接地(Gnd)に接続される。感知コイル4sの内部に磁性材料が存在する場合は、非対称的な寄与A・μ(H)=dBM/dtが生じ、これはUs−Ucの差として検出できる。
【0010】
この測定を遂行するためには、全体のサンプル容積にわたって均等な磁場状態を保証するために、磁性サンプル材料を磁化コイルの内部に置かなければならない。このような状態はシリンダコイルの内部に顕著に存在し、この場合、磁力線は平行で、一定の密度を有する。コイルの外部では、磁力線は拡散し、場は不均質になる。従って、バルク材料の磁化特徴の測定は通常磁化コイルの外部で起こらないようにする。その理由は、試験下にあるサンプルのすべての部分が同じ場強度を受ないからである。この欠点を治すため、ある器具は整合したその軸線を有する同様の対の大きなコイルを使用する。ヘルムホルツコイルとして知られるこのようなコイルは自由空間内にある容積の均質な磁場を生じさせることができるが、これらは両方のコイル部分間にサンプルを挿入することを必要とする。
【0011】
上述した幾何学的な制約のため、磁気印刷物又は磁気的にコーティングされた物品の如き広がった平坦な磁気物体はサンプルとして取り扱うのが困難である。ヒステレシスメーターの利用できる測定空間内へはめ込むようにこれらを部片に切断しなければならないか(破壊的分析方法)又は測定すべきサンプルの頂部及び下側にコイルを有する極めて特殊な器具を設けなければならない。
【0012】
非破壊的なM(H)磁気測定プローブは例えば米国特許第4,843,316号明細書、米国特許第4,901,016号明細書、JP02,248,879号明細書、FR−A−2,686980号明細書及びDE−A−3138887号明細書に開示されている。しかし、これらのプローブはいずれも磁気印刷物又はコーティングを担持する紙の如き広がったシートの「頂部上の」証明には適さない。従来の測定プローブは特に平坦な表面を有する記録媒体の特徴化のために考えられてきた;このプローブは磁気凹版により代表されるような組織化された表面に首尾よく適用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第4,843,316号明細書
【特許文献2】米国特許第4,901,016号明細書
【特許文献3】JP02,248,879号明細書
【特許文献4】FR−A−2,686980号明細書
【特許文献5】DE−A−3138887号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
磁気印刷物又はコーティングを担持する紙の如きシート様の広がった組織材料の磁気特徴の非破壊的な評価に利用できる手段を得ることが望ましい。更に、書類の両側での2つの整合した磁化コイルの必要性なしに、印刷された価値ある書類又は物品上の磁気特徴の「頂部上の」証明を可能とするために利用できる方法及び装置を得ることが特に望ましい。
【0015】
本発明の目的は材料シートの広がりに関して制限無しにシート様の材料の磁気特徴の測定を可能とする測定プローブを提供することである。このような測定プローブは書類又は物品の表面上及び(又は)上方で測定プローブを簡単に位置決めし及び(又は)移動させることにより、シート様の材料の信頼性があり、履行が容易で、高速の証明を顕著に可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のこの目的は、磁気測定プローブ及びこれを有する証明装置により、及び特許請求の範囲の特徴に係る上記装置を使用して実行される証明方法により、解決される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1a】図1aは保磁磁場Hcと共に、残留及び飽和磁化値Br、Bsを示す保磁磁性材料の典型的な磁化(ヒステレシス)曲線B(H)を示す図である。
【図1b】図1bは図1aのヒステレシス曲線の点bから点cまでの道程に対応する磁気誘導曲線dB(H)/dtを示す図である。
【図2a】図2aは磁化コイルの内部に位置する磁気サンプルM´の磁化即ちヒステレシスデータの取得のための標準的な磁気測定プローブの概略的なレイアウトを示す図である。
【図2b】図2bは磁化コイルの前面でその外部に位置するシート様の磁気サンプルMの磁化即ちヒステレシスデータの「頂部上の」取得のために使用されるような新規な磁気測定プローブの概略的なレイアウトを示す図である。
【図3a】図3aはその両端で磁化コイル3の空洞内に配置された誘導感知コイル4s及び補償コイル4cによりシート様の材料7の磁気誘導データを測定するための磁気測定プローブの第1の好ましい実施の形態の縦断面図である。
【図3b】図3bはその両端で磁化コイル3の空洞内に配置された場感知素子8s及び補償素子8cによりシート様の材料7の磁化データを測定するための磁気測定プローブの第2の好ましい実施の形態の縦断面図である。
【図4】本発明に係る磁気測定プローブを使用する証明装置の実施の形態の一部の電気的な線図である。
【図5】品目の磁気特徴を取得し、取得したデータを連通リンク1、1´、1´´を介して遠隔証明のための保障サーバーへアップロードする、本発明に係る3つの証明装置MD、MD´、MD´´を有する実施の形態の一部を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を図面により説明する。
本発明はシート様の材料のB(H)ヒステレシス又はdB(H)/dt磁化特徴の如き磁気特徴の「頂部上の」取得を可能にする磁気測定プローブの大幅な改善を基礎とする。ここでは、材料は組織地又は平坦とすることができる。
【0019】
事実、驚いたことには、特殊で新規なコイル又はセンサ構成を使用した場合、インク又は磁気セキュリティ顔料で構成されたコーティング組成物により作られた印刷物又はコーティングの如き薄いシート様の材料の磁化特性が磁化コイルのボアの外部において信頼性をもって迅速に取得できることが判明した。このような発見に係る測定プローブは図3a、3bに2つの例示的な実施の形態として示す。
【0020】
絶縁された電気的に電導性のワイヤで作られたシリンダ形状のコアの無い磁気ソレノイドコイル3は磁場H(t)を発生させるために磁化コイルとして使用される。この磁場は磁化コイル3の内部で均質であり(場区域H1)、磁化コイル3の外部で不均質である(場区域H2)。また、コイルの磁極の近傍の両終端において、磁化コイル3の外部に実質的な場均質性の2つの小さな場区域H3が存在する。この場合、実質的な場均質性とは、H3区域における磁場強度が磁化コイル3の内部で有する値H1から15%好ましくは10%以上逸れないことを意味すべきである。これはH3区域の定義として受け取るべきである。
【0021】
本発明は平坦で広がった品目7、特に磁気セキュリティマーキングMを担持するセキュリティ書類の磁気特徴を調べるためにこのような極区域H3の使用に依存する。本発明の1つの態様によれば、図2bに係るレイアウトにおいて概略的に示すように、2又はそれ以上の磁気センサが、好ましくは磁化コイル3の極区域H3の近傍で、その両終端において磁化コイル3の内部に配置される。
【0022】
図3aに係る磁気測定プローブの第1の実施の形態においては、磁気センサは誘導感知コイル4s及び補償コイル4cである。これらは好ましくはその両端において磁化コイル3の内部で対称的に位置し、磁化コイル3のコイル軸線CCに実質上整合したその磁気コイル軸線を有する。本発明によれば、感知及び補償コイル4s、4cの外径は磁化コイル3の内径よりも小さくなければならない。更に、感知及び補償コイルは好ましくは薄く保たれる;すなわち、それらの外径はそれらの内径に近くなるように保たれる。誘導コイルの使用は磁化変化dB/dtの動的測定を遂行するのを可能とする。
【0023】
代わりに、図3bに係る磁気測定プローブの第2の実施の形態において示すように、磁気センサは場感知素子8s及び補償素子8cであり、もって、場感知素子8s及び補償素子8cは磁化コイルの内径よりも小さくなければならない。これらの素子は好ましくは磁化コイル3の内部でその両端において対称的に位置し、磁化コイル3のコイル軸線CCに実質上整合したその磁気軸線を有する。場感知素子8s及び補償素子8cは当業界で既知の任意の形式とすることができ;特に、これらはホール効果センサ又は磁気抵抗(MR、GMR)センサとすることができる。両方の形式の小さなセンサは当業界で既知であり、商業的に入手できる。磁場センサの使用は磁化Bの静的測定を遂行するのを可能とする。
【0024】
正しい操作のため、磁性材料Mを担持するシート様の品目7は好ましくはプローブホルダにより磁気測定プローブに関して適当な位置に保たれて、誘導感知コイル又は磁場センサが磁気セキュリティ材料Mに対面するようにする。磁化コイル3の磁力線はその表面に実質上垂直にシート様の品目7へ侵入すべきである。誘導感知コイル又は磁場センサは、磁性セキュリティ材料Mに直接触れる必要はない。必要なら、磁性セキュリティ材料Mは、関連のある測定領域内の磁場H3が上述の均質状態を依然として満たすならば、すなわち、コイル3内でのその値H1から15%好ましくは10%以上逸れないならば、磁気センサから離れる方向への磁化コイルの内径の半分までの距離に位置することができる。
【0025】
事実、開示された測定プローブの正しい作業のための重要な要件は、磁気センサの検出領域内の磁性材料が磁化コイル3の磁場区域H3内にあり、磁場強度が磁化コイル3の内部で有する値H1から15%好ましくは10%以上逸れないことである。
【0026】
プローブホルダは、特に磁化コイルの遠い場区域内に位置する磁性材料から発生する磁気的変動を排除するために、サンプルの磁気特徴からは発生しない磁気的変動から測定を回避するように、十分な厚さの非磁性サンプル支持体を提供する付加的な機能を有することができる。サンプル支持体はプラスチック、木材、ガラス等の如き任意の非磁性材料とすることができる。しかし、アルミニウム又は他の金属の如き強い電導性の支持体は避けるべきである;その理由は、これらがうず電流寄与によって動的な磁気測定と干渉するからである。
【0027】
図4を参照すれば、本発明の方法に使用すべき証明装置は、駆動(2、6)、感知(5)及び処理電子機器(1)に結合された、磁化値B又は誘導値dB/dtのいずれかを測定するための測定プローブ(P)を有する。この装置は更に本発明に係る方法を遂行するための少なくとも1つのソフトウエアで実行されるアルゴリズムを有する。測定された磁化又は誘導信号値はそれぞれプロセッサのA/Dコンバータ(1b)によりデジタル化され、デジタル値Vsとしてメモリー(1c、1d)内に記憶される。磁場Hの引き続く値に対して取得された複数のこのような値Vsは最終的にサンプルの誘導又は磁化曲線のそれぞれのデジタル点対点表示を形成する。
【0028】
図4に示すように駆動、感知及び処理電子機器に結合された測定プローブを有する本発明に係る証明装置の実施の形態においては、感知及び補償誘導又は場センサ4s、4c;8s、8cの測定された電気的応答Us、Ucはそれぞれ平衡調整器5csにより平衡させられ(差し引きされ)、作動増幅器5により増幅され、最終的には、デジタルサンプル誘導又は磁化値Vsを得るためにプロセッサのA/Dコンバータ1bによりデジタル化される。磁場Hの引き続く値に対して複数のこのような値Vsを取得することにより、サンプルの誘導又は磁化曲線のそれぞれのデジタル点対点表示を得ることができる。
【0029】
品目7の証明は、所定の複数のサンプルの誘導又は磁化値Vsを取得し、磁性セキュリティ材料の誘導又は磁化(例えばヒステレシス)曲線のサンプル曲線部分Csを形成し、予め決めた比較アルゴリズム及び所定の公差基準を使用して、サンプル曲線部分Csの値を対応する参照曲線部分CRの先に記憶された値と比較することにより、達成される。公差基準はここでは単一値の基準又は満たさねばならない数個の条件の結合のいずれかとすることができる。
【0030】
本発明はホール効果又はジャイアント磁気抵抗(GMR)センサにより得ることのできるものの如きB(H)磁化値のシーケンス、又は誘導コイルセンサにより得ることのできるものの如き、セキュリティ書類又は物品のための証明表示手段としてセキュリティ書類又は物品に含まれるか又はその上に印刷されるか又はそれに適用された磁性材料の対応するdB(H(t))/dt誘導値のシーケンスのいずれかの使用に基礎をおく方法を開示する。H(t)が時間の既知の関数である場合、誘導値dB(H(t))/dtは顕著に得ることができ、証明のために有利に使用することができる。試験中の材料の磁化又は誘導関数は最終的に複数(H、B)の又は(H、dB/dt)値の対を含む数値テーブルとして又は、Hが既知の方法で変化する場合は、B又はdB/dt値の簡単なリストとして表される。
【0031】
本発明に係る証明方法の特徴とするところは、参照サンプル磁化特徴及び試験サンプル磁化特徴を取得し、従って「習得モード」及び「試験モード」を支持するのに同じ形式の装置及び測定プロトコルの使用に頼ることである。ここでは、この参照及び試験サンプル特徴はデジタル値のテーブルとして表され、予め決めた比較アルゴリズムを使用して比較され、もって、真正又は虚偽についての決定が予め確立された証明基準を使用してこの比較の結果から導き出される。
【0032】
本発明に係る証明方法はモデル無しで十分に働き、証明装置内に生じることのある系統的な測定誤差に影響されず;従って、装置のハードウエアは精密な絶対測定を必要とするものよりも著しく簡単に保つことができる。従って、本発明の方法は、個々の絶対物理値の測定及び比較ではなく、本発明の装置により「見られる」もののような相対値のシーケンスにより表される誘導又は磁化「曲線形状」の比較に頼る。
【0033】
参照「曲線形状」とのこのサンプル磁化又は誘導「曲線形状」との比較は、好ましくは曲線の標準化の後に、点対点ベースで行われる。標準化は、サンプル及び参照曲線の両方が同じ予め決めた最大強度値を有するように線形的に縮尺調整されることを意味する。しわくちゃにしたり使用したりすることが印刷物上に存在する磁性材料の量を減少させることがあるという事実を仮定すれば、このような標準化は濃度独立比較、即ち紙幣の証明に関して特に有用であると判明した特徴を与える。標準化された磁化又は誘導曲線を比較することは、印刷物上に実際に存在する材料の量とは独立に、そのような磁性セキュリティ材料の単なる特定化に対応する。標準化はまたデータ取得(測定)工程におけるサンプルと測定プローブとの間の小さな距離変化の影響を排除するという点で有用であることが判明している。
【0034】
比較は、対応するサンプル値と参照値とを差し引きし、結果としての差又はそれらから導き出されたある量を真正又は虚偽のための表示として使用するような、当業界で既知の標準の数学的な方法に従って遂行することができる。
【0035】
本発明の方法及び装置は、保磁性であると否とに拘わらず、すべての形式の磁性材料に適用することができる。特に、これらはゼロ保磁性を有する(即ち、ヒステレシスループを有しない)が異なる磁気飽和場を有する磁性材料を識別するために使用することができる。従って、異なる保磁値を有する種々の磁性材料は本発明の方法により識別することができる。更に、一層複雑なdB/dt曲線形状を生じさせるためにこのような磁性材料の混合物を使用することも可能である。いかなる曲線形状も本発明の方法及び装置により顕著に証明することができる。
【0036】
走査場の最大値Hmaxは特定の応用に容易に適合させることができ、例えば、異なるEAS材料間を区別するために100ガウスもの低さとして又は異なる硬質磁性フェライト間を区別するために1テスラもの高さに選択することができる。
【0037】
証明装置のメモリーは、装置が1又はそれ以上の異なる磁性材料を証明する(及び特定する)のを可能にするように、1又はそれ以上の参照データセットを記憶するためのスペースを提供することができる。更に、「習得モード」及び「試験モード」は同じ物理的な装置での履行を必要とせず;実際には、証明装置は、別個の「参照定義装置」により提供された参照データセットを使用して、サンプルをもっぱら証明するために設けることができる。これらの参照データは証明装置の永久メモリー内にダウンロードすることができるか、又は、代わりに、参照データはこれらを含む物理的なメモリーユニットの形で証明装置へ移送することができる。また、安全サーバーの如き安全な場所内に参照データを保持し、安全サーバーでの安全で独立した比較のために少なくとも1つの測定したサンプル誘導又は磁化値をアップロードすることが可能である。
例示的な実施の形態
誘導値dB/dtの感知のための測定プローブの実施の形態によれば、そして図3aを参照すると、コイル本体は繊維で補強したフェノール樹脂であり、10mmの全長と30mmの全体直径とを有する。感知及び補償コイル4s、4cは磁化コイル3の両端において内周辺の内部に位置し、それぞれ7.5mmの内径と1.5mmの長さとを有する。これらのコイルは各々0.1mmΦの「エナメル」絶縁銅ワイヤの100個の巻回体で構成される。磁化コイル3は10mmの内径を有し、0.6mmΦの「エナメル」絶縁銅ワイヤの200個の巻回体で構成される。これは感知及び補償コイルの頂部上に置かれ、コイル本体の残りの空間を満たす。3つのコイル巻回体は、機械的又は電気機械的な変形によるコイルの不安定化を阻止するために、エポキシ樹脂内に埋設される。
【0038】
本発明の実施の形態によれば、測定プローブPを有する証明装置は図4を参照して組立てられる。この証明装置は更にアナログ・デバイス社のADuC812 MicroConverter(商標名)により具体化される処理装置1を有する。ADuC812チップは8052マイクロプロセッサCPU1aと、12ビットのアナログ/デジタル(A/D)コンバータ1bと共に、内部RAMと、プログラム及びデータ記憶のための電気的に消去可能な永久EE/フラッシュメモリー1cとを有する。証明装置はまた32Kの外部のランダムアクセスメモリー(RAM)1dを有する。
【0039】
証明装置は更に必要なコイルドライバ電圧を生じさせるための貯蔵コンデンサを備えた電圧アップ・コンバータ6と;三角形の電流傾斜で又は簡単化された{+U(Δt);−U(2Δt);+U(Δt)}電圧シーケンス(ここに、Δtは基本時間間隔)でプローブの磁化コイル3を駆動するために切換えブリッジとして実施され、マイクロプロセッサにより制御されるコイルドライバ装置2と;マイクロコントローラのA/Dコンバータ1bへ出力を供給される感知コイル/補償コイル差し引き作動増幅器5とを有する。作動増幅器5の入力は平衡調整器5csに顕著に接続され、補償(「ゼロ誘導」)点の微調整を可能とする。処理電子機器1は更に習得/試験モードL/Tの選択のためのモードスイッチSLTに及び測定サイクルを開始させるための押しボタンBに接続されると共に、オン/オフ及び認可/失敗状態を表示するための黄色、緑色及び赤色のLED81、82、83に接続される。押しボタンBは回路の主電源Vccをオンするためのものである。プロセッサで制御される電源スイッチ9が設けられ、プロセッサが測定サイクルを完了させるためのそれ自身のパワーを保持し、良好な状態でそれ自身をオフするのを可能にする。
【0040】
磁化コイル3を駆動するための必要な最大電流は典型的には200個の巻回体のコイルに対しては20A又はそれ以上の程度であり、2000ガウス程度の磁場を生じさせる。全体の測定サイクルは1ミリ秒又はそれ以下程度続き、それに続いて一層長い待機時間があり、そのため、コイルの冷却を必要としない。電子回路は簡単な切換え装置により提供される形{0/+U(Δt中)/−(2Δt中)/+U(Δt中)/0}の矩形の電圧シーケンスでコイルを駆動することにより、著しく簡単化できることが判明した。Δtはここでは適当に短く選択された基本時間間隔である。このような状況の下で、コイル内の電流は、誘導法則d(I(t))=(U/L)dtのため、ほぼ矩形の波形を追従する。
【0041】
一例において、誘導曲線が200KHzの割合でサンプリングされ、デジタル化され、記憶される。他の一層迅速又は遅鈍なサンプリング割合も使用することができる。生のデータの処理は好ましくはバックグラウンド(ゼロ)補正及び、必要なら、ノイズ濾波を含むことができる。弱い信号の場合は、2又はそれ以上の測定走査の結果は蓄積し、信号対ノイズ比を改善するために一緒に平均化できる。
【0042】
本発明の実施の形態によれば、方法は、開示された証明装置及び測定プローブにより、磁性材料の薄い層を担持するセキュリティ書類又は物品を証明するために、処理装置1a内で実施される。この証明方法は、
a)デジタルメモリー内に、参照データ(VR)として、磁性参照材料の磁化曲線B(H)又は誘導曲線dB(H(t))/dtの少なくとも一部のデジタル点対点表示を提供する工程と;
b)その表面の少なくとも一部内又は上に磁性材料の薄い層を有する、証明すべきセキュリティ書類又は物品を提供する工程と;
c)本発明に係る証明装置及び測定プローブを使用して、デジタルメモリー内に、サンプルデータ(Vs)として、工程b)で提供された書類又は物品内又は上の磁性材料の薄い層の磁化曲線B(H)又は誘導曲線dB(H(t))/dtの少なくとも一部のデジタル点対点表示を取得する工程と;
d)測定関連環境のために修正を行うように、工程(c)で取得したデジタルデータを処理する工程と;
e)予め決めた比較アルゴリズム及び予め決めた公差基準を使用して、工程(d)で得たデータを工程(a)で提供された記憶された参照データと比較し、それにより、証明「イエス/ノー」表示を導き出す工程と;
を有する。
【0043】
本発明によれば、参照データ(VR)及びサンプルデータ(Vs)の定義のために同じ形式のハードウエアを使用することができる:「習得モード」においては、参照サンプルからのデータが取得され、参照データとして記憶される。「試験モード」においては、証明すべき書類又は物品からのデータが取得され、処理され、参照データと比較されて、真正/虚偽表示を導き出す。
【0044】
好ましい例においては、装置の習得及び試験モードを使用して、多数の異なる磁気サンプルプリントを互いに区別することができた。ゼロから700エルステッドまでの範囲の保磁性を有する一組の4つの標準の磁性顔料M1ないしM4が磁気セキュリティ装置を得るために印刷インクとして異なる比で混合された:
顔料 保磁性[エルステッド]
M1: 〜 1 (軟質磁性鉄)
M2: 〜 100
M3: 〜 300
M4: 〜 700
異なる比率で磁性顔料M1ないしM4を含み、インク内での合計顔料重量40ないし50%を使用した15個の凹版インクサンプルS1ないしS15を準備した。顔料は当業者にとって既知の形式の凹版ニスとなるように混合された:
M1:M M1:M3 M1:M4 M2:M3 M2:M4 合計(重量%)
S1 1.00 40.00
S2 1.03 47.20
S3 1.00 40.00
S4 4.00 40.00
S5 4.13 42.57
S6 4.00 40.00
S7 0.25 40.00
S8 0.26 53.09
S9 0.25 40.00
S10 1.03 47.20
S11 0.26 53.09
S12 4.13 42.57
S13 1.00 40.00
S14 0.25 40.00
S15 4.00 40.00
標準の凹版プレス及び100μmのグラビア深さの彫板を使用して、出来上がったインクを紙幣形式の紙上に印刷して、異なる磁気特徴を有する磁気凹版プリントを得た。これらのインクサンプルS1ないしS15で実現された凹版プリントはすべて本発明において開示された方法及び装置により互いに区別することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの磁化コイル(3)を有する、特に少なくとも1つの磁気印刷物又はコーティングを有するセキュリティ書類又は物品のような磁気品目(7)の磁化データの取得のための磁気測定プローブにおいて、
少なくとも2つの磁気センサ(4s、4c、8s、8c)が上記磁化コイル(3)の磁極近くでそれぞれその内側に位置し、当該コイル(3)の内部の磁場に実質上整合するその磁気軸線を有し、
上記磁化コイル(3)は、時間変化する磁場に適用されるために操作可能であり、
上記磁気測定プローブは、更に、上記磁気センサの検出領域内で上記磁気品目(7)に担持された磁性材料Mが上記磁化コイル(3)の実質上場均質性の磁場区域(H3)内にあるように、当該磁化コイル(3)及び当該センサ(4s、4c;8s、8c)に関して適当な位置及び距離で当該磁気品目(7)を維持するためのプローブホルダを更に有し、当該磁場区域においては、磁場強度が当該磁化コイル(3)の内部での磁場強度の値(H1)から15%以上好ましくは10%以上逸れない、ことを特徴とする磁気測定プローブ。
【請求項2】
上記磁化コイル(3)が磁気コアの無いコイルであることを特徴とする請求項1に記載の磁気測定プローブ。
【請求項3】
上記磁化コイル(3)がシリンダコイルであることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1つに記載の磁気測定プローブ。
【請求項4】
上記磁気センサがそれぞれ感知コイル(4s)及び補償コイル(4c)の形をした誘導センサであり、当該感知コイル(4s)及び当該補償コイル(4c)の外径が上記磁化コイル(3)の内径よりも小さいことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の磁気測定プローブ。
【請求項5】
上記磁気センサがそれぞれ感知素子(8s)及び補償素子(8c)の形をした磁場センサであり、当該感知素子(8s)及び当該補償素子(8c)の外径が上記磁化コイル(3)の内径よりも小さいことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の磁気測定プローブ。
【請求項6】
低導電率の非磁性材料で作られたサンプル支持体を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の磁気測定プローブ。
【請求項7】
少なくとも1つの磁性材料(M)を有する、特にセキュリティ書類又は物品のような磁気品目(7)であって、当該磁気品目(7)を証明するための磁気品目(7)の少なくとも一部の磁化特徴を測定するための方法において、
a)上記磁気品目(7)をプローブホルダ上に配置して、上記材料(M)がプローブの磁化コイル(3)の実質上場均質性の区域H3内にあるように、当該磁気品目(7)上で請求項1ないし6のいずれか1つに記載の測定プローブ(P)を位置決めする工程であって、当該磁場区域においては、磁場強度が当該磁化コイル(3)の内部での磁場強度の値(H1)から15%以上好ましくは10%以上逸れない、工程と;
b)上記磁化コイル(3)により、時間変化する磁場を上記磁気品目(7)に適用する工程と;
c)上記磁気センサ(4s;4c;8s;8c)を使用して、上記材料(M)の磁気特徴の少なくとも1つの値を測定する工程と;
を有することを特徴とする方法。
【請求項8】
上記材料(M)へ上記時間変化する磁場Hを適用するときに当該材料(M)の対応する磁化値B(Vs)が測定されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記材料(M)への上記時間変化する磁場の適用時に当該材料(M)の対応する誘導値dB/dt(Vs)が測定されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項7ないし9のいずれか1つに記載の方法において、
a)証明装置のデジタルメモリー内に、磁気参照品目の磁気特徴値を提供する工程と;
b)上記証明装置のデジタルメモリー内に、上記磁気品目(7)の磁気特徴値を取得する工程と;
c)測定関連環境のために修正するように上記工程(b)で取得したデジタルデータを上記証明装置の処理装置内で処理する工程と;
d)予め決められた比較アルゴリズム及び予め決められた公差基準を使用して、上記工程(c)で得たデータを上記工程(a)で提供された対応する記憶された参照データと上記処理装置内で比較して、これにより、証明の「イエス/ノー」表示を導き出す工程と;
を有することを特徴とする方法。
【請求項11】
上記参照データが上記証明装置により取得されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの磁性材料(M)を有する磁気品目(7)であって、特にセキュリティ書類のような少なくとも1つの磁気品目(7)を証明するための証明装置において、
a)請求項1ないし6のいずれか1つに記載の測定プローブ及び、それと一緒に、対応する駆動及びサンプリング用電子機器と;
b)上記プローブを駆動し、磁気特徴値をサンプリングし、デジタル化し、処理し、比較するための実行されるアルゴリズムを備えた処理装置(1)と;
c)サンプル及び参照磁気特徴値を記憶するための少なくとも1つのメモリー装置(1c、1d)と;
を有し、
上記証明装置は、磁気参照品目(7R)の参照磁気特徴を取得し、記憶するための「習得モード」及び証明信号を導き出すために上記磁気品目(7)からのサンプル磁気特徴値を取得し、記憶し、比較するための「試験モード」を支持する、
ことを特徴とする証明装置。
【請求項13】
上記サンプルの測定された磁気特徴値と、対応する先に記憶された参照値との上記比較を遂行し、遠隔地で上記証明「イエス/ノー」表示を導き出すための及び当該証明表示を証明箇所へ戻すように伝達するためのデータ移送手段を更に有することを特徴とする請求項12に記載の証明装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−81012(P2011−81012A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280200(P2010−280200)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【分割の表示】特願2003−573437(P2003−573437)の分割
【原出願日】平成14年3月4日(2002.3.4)
【出願人】(500269417)シクパ・ホールディング・ソシエテ・アノニム (23)
【Fターム(参考)】