説明

測定装置および測定方法

【課題】薄膜の蛍光を測定する技術において、当該蛍光を増強するための技術を提供すること。
【解決手段】薄膜12の蛍光を測定するための測定装置であって、薄膜12を含む薄膜試料13が積層されているプリズム10を、任意の媒質または真空からなる環境内において支持するための透光部材支持部と、プリズム10と薄膜試料13との界面に対し、プリズム10側から、プリズム10と環境との界面における臨界角以上の特定の入射角で光L1を照射して、薄膜試料13における光吸収を増大させる励起手段と、当該光吸収を増大させることによって増強された、薄膜12からの蛍光L3を測定する蛍光測定手段と、を備えている測定装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜の蛍光を測定する測定装置および測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、薄膜発光素子、薄膜トランジスタ、薄膜太陽電池などの無機電子材料または有機電子材料の薄膜を用いた薄膜電子デバイスの技術開発が盛んに行われている。これらのデバイスにおいて使用される薄膜部材の厚さは、例えば、100nm程度またはそれ以下であり、非常に薄いものが要求されている。このように厚さ100nm程度以下の薄膜の物性を評価することは、試料が微量なため容易ではない。例えば、光物性評価法の一つである蛍光測定においても、以下のような問題がある。
【0003】
蛍光測定は、一般に、図10に示すように、試料に励起光L11を照射し、試料から放出される蛍光L13を分光器92でスペクトル検出することにより行われる。市販の蛍光分光計の多くは溶液を対象としており、薄膜の蛍光を測定するためには感度が十分でない。薄膜の蛍光測定を行う際には、例えば、図10に示すように、ガラス板91に測定対象の薄膜90を積層し、非常に高輝度の光源および高感度の分光検出器を用いる。
【0004】
なお、表面プラズモン共鳴を利用した蛍光測定技術がいくつか報告されている(特許文献1および2ならびに非特許文献1参照)が、これらは溶液の蛍光を測定することを目的としており、薄膜の蛍光を測定するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−257731号明細書(平成14年9月11日公開)
【特許文献2】特開2004−61211号明細書(平成16年2月26日公開)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Colloids and Surfaces A: Physicochem.Eng.Aspects (2000) 171: 115-130
【非特許文献2】J.Opt.Soc.Am.B (2007) 24(9): 2307-2313
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、例えば、膜厚が励起光の波長よりも薄く、励起光の吸収率が小さい薄膜試料の蛍光分光測定を行うためには、薄膜からの蛍光が微弱であるため、例えば、数十〜数百mW以上の高輝度レーザー光源、F値の小さい明るい分光器、マイナス数十度まで冷却可能な高感度光検出器などの高価な装置が必要となる。それゆえ、薄膜からの蛍光を増強するための技術が強く求められている。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、薄膜の蛍光を測定する技術において、当該蛍光を増強するための技術を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、プリズム−金属薄膜−空気の積層構造に対してプリズム側から波長よりも薄い金属薄膜へ光を入射させたときの、全反射臨界角以上の特定の入射角において生じる減衰(ATRディップ)について、フレネルの式を用いて波動光学計算を行った結果、フレネルの式がATRディップをよく説明することを見出している。本発明者らは、さらに、波動光学による解析を進め、ATRディップの原因は、屈折率の異なる薄膜構造において光電場が増強され、これによって薄膜における吸収が増大することであることを見出している(以上、非特許文献2を参照のこと)。
【0010】
本発明者らは、さらに検討を続け、薄膜の蛍光を測定する際、測定対象の薄膜を積層構造に組み入れ、ATRディップを生じさせる入射条件下で光を照射して、光電場を増強することにより、増強された光電場によって当該薄膜における吸収を増加させて、効率よく薄膜の蛍光を増強し得ることを見出し、発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明に係る測定装置は、薄膜の蛍光を測定するための測定装置であって、該薄膜を含む薄膜試料が積層されている透光部材を任意の媒質または真空からなる環境内において支持するための透光部材支持部と、該透光部材と該薄膜試料との界面に対し、該透光部材側から、該透光部材と該環境との界面における臨界角以上の特定の入射角で光を照射して、該薄膜試料における光吸収を増大させる励起手段と、該光吸収を増大させることによって増強された、該薄膜からの蛍光を測定する蛍光測定手段と、を備えていることを特徴としている。
【0012】
上記の構成によれば、薄膜試料における光電場を増強することにより、薄膜に励起光のエネルギーを効率よく吸収させ、薄膜の蛍光を増強して、首尾よく薄膜の蛍光を測定することができる。そればかりか、上記構成による蛍光の増強効果は非常に優れているため、薄膜の吸収帯から離れた、弱い吸収の波長領域の光を励起光として用いても効率的に薄膜の蛍光を測定することができる。
【0013】
上述したように、積層構造、例えば、プリズム(透光部材)と、薄膜試料と、空気(環境)とからなる三層構造において、プリズムと空気との界面における臨界角以上の特定の入射角で、プリズムから薄膜に光が入射したとき、フレネルの式に従い、薄膜から空気に至るまでの空間における光電場(エバネッセント場)が増強される。薄膜における光電場が増強されるため、薄膜におけるエネルギーの吸収量が増大し、結果、薄膜から出射される蛍光が増強される。
【0014】
また、本発明に係る測定装置は、上記透光部材と上記薄膜試料との界面に対して、上記透光部材側から上記光を照射し、その反射光を検出して、入射角毎の反射率を測定する反射率測定手段を備え、上記励起手段は、上記臨界角以上の入射角であって、該反射率測定手段の測定結果において該反射率の減衰が生じていた入射角を含む入射条件下で上記光を照射することが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、薄膜試料における光電場を増強するための入射角を首尾よく取得することができる。これにより、上記の構成によれば、薄膜試料における光吸収を好適に増大させることができる。
【0016】
また、本発明に係る測定装置は、上記光を、s偏光とp偏光との間で切り替える切替え手段を備え、上記反射率測定手段は、該切替え手段を制御して、照射する上記光をs偏光とp偏光との間で切り替えるものであってもよい。
【0017】
光吸収の増大は、後述する実施例において示すように、s偏光またはp偏光の何れかの偏光によってのみ生じる場合がある。しかし、上記の構成によれば、反射率測定手段が、励起光をs偏光とp偏光との間で切り替えて反射率を測定するため、光吸収の増大を生じさせる偏光がs偏光またはp偏光に限られていたとしても、光吸収を増大させる偏光および入射角を首尾よく取得することができる。これにより、上記の構成によれば、光吸収の増大を好適に生じさせることができる。
【0018】
また、本発明に係る測定装置では、上記透光部材と上記薄膜試料との界面に照射する上記光の光量を調整する入射光量調整手段を備えていることが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、上記界面に対して適切な光量の光を照射することができるため上記薄膜の蛍光を効果的に増強させることができる。
【0020】
また、本発明に係る測定装置では、上記薄膜の膜厚は、上記光の波長よりも薄いことが好ましい。
【0021】
上述したように、薄膜試料における光電場の増強は、透光部材と薄膜試料との界面に対して、透光部材と環境との界面における臨界角以上の入射角で光を入射させることを前提としている(非特許文献2を参照のこと)。これは、透光部材と薄膜試料との界面に入射した光が薄膜試料を透過して環境へと出射されることを避け、その代わりに、当該界面近傍においてエバネッセント光を生じさせることを目的としている。そして、ATRディップが生じる特定の入射角で、上記界面に光を入射させることにより、上記エバネッセント光に係る光電場を増強して、測定対象の薄膜に光のエネルギーを効率よく吸収させ、薄膜からの蛍光を増強することができる。
【0022】
ここで、上述したような、透光部材と薄膜試料との界面に入射した光が薄膜試料を透過して環境へと出射されることを避けるための条件としては、測定対象の薄膜の膜厚が励起光の波長よりも薄いことが好ましく、薄膜試料全体の膜厚が励起光の波長よりも薄いことがより好ましい。薄膜試料の膜厚が励起光の波長よりも厚い場合、透光部材と薄膜試料との界面に入射した光が全反射条件を満たさず、エバネッセント光が生じないためである。
【0023】
また、本発明に係る測定装置では、上記薄膜試料は、さらに金属薄膜を含み、該金属薄膜の方が、上記薄膜よりも、上記透光部材側に積層されていることが好ましい。
【0024】
上記の構成によれば、複素誘電率の実数部の大きさ(絶対値)が大きい金属薄膜が、透光部材と薄膜との間に挟まることにより、薄膜試料に励起光を効率よく閉じ込めて、薄膜の光吸収を増大させ、それゆえに薄膜の蛍光をより増強させることができる。
【0025】
また、図10に示すような従来技術に係る測定装置では、透光部材(ガラス板)上に測定対象の薄膜を直接積層している。そのため、薄膜からの蛍光が透光部材へ導波して逃げてしまい、蛍光を効率よく測定することができないという問題がある。上記の構成によれば、透光部材と薄膜との間に金属薄膜が挟まっているため、薄膜からの蛍光が透光部材へ直接逃げることがなく、蛍光を効率よく測定することができる。
【0026】
なお、金属薄膜が存在することによって、薄膜における励起分子から金属へエネルギー移動し、蛍光が弱まることも考えられるが、屈折率の大きく異なる金属薄膜の積層によって光電場がさらに増強され、それ以上に薄膜の光吸収増大の効果が得られるので、結果的に、より増強した蛍光を発生させることができる。
【0027】
また、本発明に係る測定装置では、上記光の波長が、上記薄膜の吸収帯の外にあってもよい。
【0028】
本発明に係る測定装置は、上述したように、非常に効率よく薄膜の蛍光を増強することができるため、励起光として、薄膜の吸収帯の外に波長を有する光を用いることができる。これにより、励起光の波長について、励起効率以外の観点(例えば、コスト、安全性など)に基づいて選択することができる。例えば、薄膜の吸収帯が紫外領域にあるとき、安全性の観点から励起光として可視光を用いることができる。
【0029】
また、本発明に係る測定装置では、上記蛍光測定手段は、上記薄膜が上記透光部材に積層されている側とは反対側に、上記薄膜から出射された蛍光を測定することが好ましい。
【0030】
図10に示すような従来技術に係る測定装置では、測定対象の薄膜において、励起光が入射する面から出射される蛍光を測定している。そのため、薄膜試料の微弱な蛍光をSN比よく測定するためには、反射光、透過光および散乱光を十分考慮した光学系を設計し、蛍光の測定器に入射する励起光を除去するための仕組みが必要である。上記の構成によれば、全反射が起きる面の裏面から出射される蛍光を測定するため、蛍光の測定器に入射する励起光を除去するための仕組みなどは必要なく、首尾よく蛍光を測定することができる。
【0031】
本発明に係る測定方法は、薄膜の蛍光を測定するための測定方法であって、任意の媒質または真空からなる環境内に配置された、該薄膜を含む薄膜試料が積層されている透光部材と該薄膜試料との界面に対し、該透光部材側から、該透光部材と該環境との界面における臨界角以上の特定の入射角で光を照射して、該薄膜試料における光吸収を増大させる励起工程と、該光吸収を増大させることによって増強された、該薄膜からの蛍光を測定する蛍光測定工程と、を包含することを特徴としている。
【0032】
また、上記測定方法は、上記励起工程の前に、上記透光部材と上記薄膜試料との界面に対して、上記透光部材側から上記光を照射し、その反射光を検出して、入射角毎の反射率を測定する反射率測定工程を包含し、上記励起工程では、上記臨界角以上の入射角であって、該反射率測定工程の測定結果において該反射率の減衰が生じていた入射角を含む入射条件下で上記光を照射することが好ましい。
【0033】
また、上記測定方法は、上記反射率測定工程では、照射する上記光をs偏光とp偏光との間で切り替えるものであってもよい。
【0034】
また、上記測定方法は、上記反射率測定工程および上記励起工程では、上記透光部材と上記薄膜試料との界面に照射する上記光の光量を、入射光量調整手段を用いて調整することが好ましい。
【0035】
また、上記測定方法では、上記薄膜の膜厚は、上記光の波長よりも薄いことが好ましい。
【0036】
また、上記測定方法では、上記薄膜試料は、さらに金属薄膜を含み、該金属薄膜の方が、上記薄膜よりも、上記透光部材側に積層されていることが好ましい。
【0037】
また、上記測定方法では、上記光の波長が、上記薄膜の吸収帯の外にあってもよい。
【0038】
また、上記測定方法は、上記蛍光測定工程では、上記薄膜が上記透光部材に積層されている側とは反対側に、上記薄膜から出射された蛍光を測定するものであることが好ましい。
【0039】
上記の各測定方法によれば、本発明に係る測定装置と同等の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係る測定技術によれば、測定対象の薄膜における光電場を増強することにより、薄膜に励起光のエネルギーを効率よく吸収させて、当該薄膜の蛍光を増強することができるため、当該蛍光を首尾よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態における蛍光測定の様子を説明する模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る測定装置の概略構成を示す上面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る測定装置の概略機能を示すブロック図である。
【図4】フローチャート
【図5】測定対象の薄膜の吸収スペクトルの一例を示すグラフである。
【図6】透光部材に薄膜試料が積層されているときの、界面における入射角毎の反射率の一例を示すグラフであり、点は測定値を示し、実線は理論計算によるフィッティングカーブを示す。
【図7】本発明の一実施形態に係る測定方法による蛍光の測定結果の一例と、従来技術に係る測定方法による蛍光の測定結果の一例とを比較して示すグラフである。
【図8】透光部材に薄膜試料が積層されているときの、界面における入射角毎の反射率の一例を示すグラフである。
【図9】本発明の一実施形態に係る測定方法による蛍光の測定結果の一例と、従来技術に係る測定方法による蛍光の測定結果の一例とを比較して示すグラフである。
【図10】従来技術における蛍光測定の様子を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は薄膜の蛍光を測定するための測定装置および測定方法を提供する。本発明に係る測定装置は、本発明に係る測定方法を実施するものである。以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0043】
図2は、本発明の一実施形態に係る測定装置1の概略構成を示す上面図であり、図3は、測定装置1の概略機能を示すブロック図である。なお、図3において、ブロック間を結ぶ実線は制御の流れを、破線は光の流れをそれぞれ示している。
【0044】
測定装置1は、光源(励起手段、反射率測定手段)30、入射光調整部(切替え手段、入射光量調整手段)31、ミラー32、ビームスプリッタ33、入射モニター光検出部34、ミラー35、測定試料部(透光部材支持部)36、集光レンズ37、蛍光分光検出部(蛍光測定手段)38、反射光検出部(反射率測定手段)39、反射光検出補助部(反射率測定手段)40、入射角制御部(励起手段、反射率測定手段)41、制御計測部(励起手段、反射率測定手段)42、および表示操作部43を備えている。
【0045】
また、図2に示すように、測定試料部36は、測定対象の薄膜12を含む薄膜試料13が積層されたプリズム(透光部材)10を固定支持している。プリズム10としては、誘電体であれば特に形状は限定されないが、例えば、半円柱状、三角柱状、板状等であってもよく、半円柱状のATRプリズムを好適に用いることができる。測定試料部36による薄膜試料13が積層されたプリズム10の固定方法は、薄膜試料13を損傷しないものであれば、特に限定されない。
【0046】
また、プリズム10と、薄膜試料13との積層方法も特に限定されず、例えば、薄膜12を、ガラス板上に形成し、当該ガラス板とプリズム10とを屈折率マッチングオイルを介して光学的に接続させる方法等を用いることができる。
【0047】
測定対象の薄膜12としては、特に限定されないが、励起光として用いる光の波長よりも膜厚が薄いことが好ましく、光の波長の100%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下であり得る。
【0048】
入射角制御部41は、測定試料部36を任意の角度に回転させる回転ステージである。入射角制御部41には、測定試料部36の他、集光レンズ37および蛍光分光検出部38が配置されている。
【0049】
光源30は、励起光を出射し得るものであれば特に限定されないが、例えば、単色光レーザーを出射する光源を好適に用いることができる。励起光の波長は、特に限定されず、測定する試料に応じて選択してもよい。また、本発明を用いれば、試料において吸収が小さい波長の励起光を用いても首尾よく蛍光の測定が可能である。
【0050】
光源30から出射された光は、入射光調整部31を介して、ミラー32に到達する。ミラー32において、上記光の向きが変化し、ビームスプリッタ33に入射する。ビームスプリッタ33において反射された光は、入射モニター光検出部34によって検出され、検出結果が、制御計測部42に提供される。入射モニター光検出部34による検出結果は、例えば、光源30の異常検知に用いることができる。
【0051】
一方、ビームスプリッタ33を透過した光は、ミラ−35において反射され、プリズム10に入射する。
【0052】
制御計測部42は、光源30、入射光調整部31、および入射角制御部41を制御し、入射モニター光検出部34、反射光検出部39、および蛍光分光検出部38からのフィードバックを受けて反射率測定工程、励起工程、および蛍光測定工程を実行する。なお、制御計測部42は、例えば、コンピュータによって実現することができる。また、制御計測部42は、ユーザからの入力を受け付ける表示操作部43からの信号に従って、これらの工程を実行するようになっていてもよい。表示操作部43は、ユーザとの間で入出力を行うための機構を備えていればよく、例えば、ユーザへの情報の提示のための表示画面およびユーザから入力を受け付けるためのキーボードを備えている。
【0053】
反射率測定工程は、以下のように実行される。光源30が光を出射し、出射された光は、入射光調整部31においてs偏光またはp偏光の何れか一方の偏光に切替えられ、反射率測定及び蛍光測定に適する光量に強度調整したのち、測定試料部36に固定支持されているプリズム10へと入射し、プリズム10から薄膜試料13へと入射する。入射光調整部31は、例えば、偏光フィルタ、減衰フィルタ等を備えている。そして、反射光検出部39が、プリズム10と、薄膜試料13との界面における反射光を検出する。入射光の薄膜試料13への入射角は、入射角制御部41によって調整される。反射光検出補助部40は、回転駆動可能なアームであり、調整された入射角で薄膜試料13へ入射した入射光の反射光を、反射光検出部39が首尾よく検出し得るように反射光検出部39の位置を調整する。
【0054】
制御計測部42は、入射角制御部41を制御して上記入射角を変化させながら、反射光検出部39から提供される反射光の検出結果に基づき、入射角毎の反射率を測定する。入射角の変化させる範囲としては、例えば、プリズム10と空気(環境)との界面における臨界角以上とすることができる。また、入射光調整部31を制御して、入射光としてp偏光を用いた場合の入射角毎の反射率と、入射光としてs偏光を用いた場合の入射角毎の反射率とを測定する。測定した結果は、表示操作部43によって表示してもよい。
【0055】
励起工程および蛍光測定工程は、以下のように実行される。制御計測部42は、まず、全反射が起こる条件、すなわち、プリズム10と空気(環境)との界面における臨界角以上の入射角において、反射率の減衰(ATRディップ)が生じている箇所を検出する。ATRディップの検出は、制御計測部42が公知のピーク検出技術を用いて自動的に行ってもよいし、図6又は図8に示すようなグラフを表示操作部43に表示させて、表示操作部43が、ユーザからのATRディップの位置の入力を受け付け、制御計測部42がその値を取得してもよい。
【0056】
続いて、制御計測部42は、入射光調整部31および入射角制御部41を制御して、ATRディップが生じていた偏光および入射角の励起光を薄膜試料13に照射させる。これにより、薄膜試料13における光電場が増強され、薄膜12が励起光のエネルギーを効率よく吸収して、薄膜12の蛍光が増強される。そして、増強された蛍光を、プリズム10がある側とは反対側に配置された集光レンズ37および蛍光分光検出部38が検出し、結果を制御計測部42に提供する。制御計測部42は、提供された結果を、例えば、表示操作部43に表示させることができる。
【0057】
図4は、一実施形態における測定方法の流れの一部を示すフローチャートである。図4を参照して、測定方法の一例について詳細に説明する。
【0058】
ステップS1において、表示操作部43は、反射率測定工程において用いる各種パラメータ(入射角の初期角度、ステップ角度、および終了角度)の入力を受け付ける。なお、これらのパラメータは、測定時にユーザからの入力を受け付ける代わりに、制御計測部42に予め入力されているものを用いてもよい。
【0059】
ステップS2において、制御計測部42は、光源30から入射光調整部31を介してプリズム10および薄膜試料13に入射する光の入射角が、上記初期角度になるように入射角制御部41を制御する(回転させる)。また、制御計測部42は、上記初期角度で入射した光の薄膜試料13における反射光を検出可能な位置に反射光検出部39が位置するように、反射光検出補助部40を制御する(回転させる)。
【0060】
ステップS3において、制御計測部42は、光源30から励起光を出射させ、反射光検出部39による反射光の検出結果を取得して、反射率を測定する。
【0061】
ステップS4において、制御計測部42が測定した反射率を制御計測部42が備える記憶(図示せず)に保存するとともに、表示制御部43が当該反射率を表示する。
【0062】
ステップS5において、制御計測部42は、上記ステップ角度分だけ、光の入射角が変化するように、入射角制御部41を制御する(回転させる)。また、これに伴い、反射光検出部39が薄膜試料13における反射光を検出可能なように、反射光検出補助部40を制御する(回転させる)。
【0063】
ステップS6において、制御計測部42は、変化させた入射角が上記終了角度より大きくなっているか否かを判定し、当該入射角が上記終了角度より小さい場合には、ステップS3に戻って、反射率の測定を行う。変化させた入射角が上記終了角度より大きくなっている場合には、ステップS7に進む。
【0064】
ステップS7において、制御計測部42は、測定データ(これまでに保存された反射率の測定結果)から、公知のピーク検出技術等を用いてATRディップの生じる入射角を検出する。なお、表示操作部43が反射率の測定結果を表示し、ユーザからATRディップの生じる入射角の入力を受け付けてもよい。
【0065】
ステップS8において、制御計測部42は、光源30から入射光調整部31を介してプリズム10および薄膜試料13に入射する光の入射角が、ステップS7において取得したATRディップの生じる入射角になるように入射角制御部41を制御する(回転させる)。また、制御計測部42は、上記ATRディップの生じる入射角で入射した光の薄膜試料13における反射光を検出可能な位置に反射光検出部39が位置するように、反射光検出補助部40を制御する(回転させる)。この状態で、制御計測部42が、光源30から励起光を出射させることにより、薄膜12の蛍光を増強し、蛍光分光検出部38によって蛍光を測定することができる。なお、励起工程においても、ATRディップの確認のため反射率を測定してもよい。励起工程において反射率を測定しない場合には、ステップS8において、反射光検出補助部40を制御しなくともよい。
【0066】
図1は、本発明の一実施形態における励起工程および蛍光測定工程の様子を説明する模式図である。図1では、薄膜試料13が、測定対象の薄膜12と、金属薄膜11とからなる場合について説明する。
【0067】
本実施形態では、薄膜12の蛍光を増強するため、励起光L1を、プリズム10を介し、プリズム10と薄膜試料13との界面に、入射角θで照射する。入射角θは、プリズム10と空気(媒質)との界面における臨界角以上であって、上述したATRディップが生じる入射角である。このような条件で励起光L1が入射すると、プリズム10、金属薄膜11、薄膜12、および空気からなる積層構造のプリズム10と空気とによって挟まれた領域において光電場が増強され、当該領域における光吸収が増大する。
【0068】
詳細に述べれば、このような光吸収の増大は、プリズムなどの透光部材と、当該透光部材と異なる屈折率をもった単一薄膜との積層構造、または、透光部材と、各層の屈折率の大きく異なる多層膜(例えば、金属薄膜/薄膜)との積層構造において、透光部材と周囲の環境(空気など)との全反射条件下で生じると考えられる(非特許文献2を参照のこと)。このような条件下では、透光部材と薄膜試料との界面に入射した光は、薄膜試料を透過して環境へと出射せず、その代わりに、当該界面近傍においてエバネッセント光を生じさせる。そして、ATRディップが生じる特定の入射角で、上記界面に光を入射させることにより、上記エバネッセント光に係る光電場が増強され、測定対象の薄膜が光のエネルギーを効率よく吸収して、薄膜からの蛍光が増強される。
【0069】
なお、上述したような、透光部材と薄膜試料との界面に入射した光が薄膜試料を透過して環境へと出射されることを避けるための条件としては、測定対象の薄膜の膜厚が励起光の波長よりも薄いことが好ましく、薄膜試料全体の膜厚が励起光の波長よりも薄いことがより好ましい。薄膜試料の膜厚が励起光の波長よりも厚い場合、透光部材と薄膜試料との界面に入射した光が透光部材と周囲の環境(空気など)との全反射条件を満たさず、エバネッセント光が生じないからである。
【0070】
透光部材10と空気との間の領域において光電場が増強されることにより、薄膜12が励起光のエネルギーを効率よく吸収することができる。これにより、薄膜12の蛍光を増強することができる。後述する実施例に示すように、蛍光の増強率は50倍〜100倍ほどもあり、本発明を用いることにより、微量な薄膜であっても、首尾よく蛍光を測定することができる。
【0071】
なお、図1では、金属薄膜11が、薄膜12と透光部材10との間に挟まっている構成について言及した。このような構成をとることにより、薄膜試料13に好適に励起光を閉じ込め、薄膜12を励起することができる他、薄膜12からの蛍光がプリズム10に直接導波して逃げることを抑制し、蛍光分光検出部38において検出される蛍光L3をさらに増強することができる。
【0072】
金属薄膜11の材料としては、複素誘電率の実数部が大きく、かつ虚数部の小さい金属であれば好適に用いることができるが、例えば、高反射率である銀、金、アルミニウム等の金属が特に好適に用いることができる。
【0073】
(変形例)
上記では、金属薄膜11が測定対象の薄膜12と透光部材10とに挟まれた状態で測定を行う構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。薄膜12が金属薄膜11と透光部材10とに挟まれた状態で測定を行う構成であってもよい。この構成であっても、励起光を薄膜12に効率よく閉じ込めることが可能である。なお、薄膜12が金属薄膜11と透光部材10とに挟まれた状態で測定を行う場合には、薄膜12から透光部材10側に出射される蛍光を測定することが好ましい。
【0074】
上記では、反射率測定工程において、入射角を変化させながら、入射角毎の反射率を測定する構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、非平行の光をプリズム10に照射して、各反射角における反射光の強度を検出することにより、入射角毎の反射率を測定してもよい。
【0075】
また、上記では、励起光として、偏光を用い、s偏光とp偏光との間で切替える構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、無偏光の光を用いても効率は落ちるものの、本発明を実施することができる。また、測定対象の薄膜のATRディップがs偏光において観察されるか、p偏光において観察されるか、予め判明しているときには、その判明した偏光のみを用いてもよい。すなわち、本発明に係る測定装置は、一実施形態において、s偏光の励起光を用いるものであり、一実施形態においてp偏光の励起光を用いるものであり、一実施形態において、無偏光の励起光を用いるものである。
【0076】
また、上記では、薄膜試料13が積層されたプリズム10が配置される環境が空気である場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、窒素等の空気以外の気体または水溶液等の任意の媒質であってもよく、真空であってもよい。
【0077】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0078】
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【0079】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されない。
【実施例】
【0080】
(実施例1)
まず、測定装置として、図2に示すような測定装置1を用意した。光源30としては、波長473nmの励起光L1を出射する、出力15mWの青色半導体レーザーを使用した。また、入射光調整部31としては、偏光フィルタおよびNDフィルタを備えたものを用い、励起光L1の偏光をs偏光またはp偏光の一方とするとともに、出力を50μWに減衰させた。
【0081】
また、プリズム10として、屈折率が1.52339(波長473nm)であるBK−7ガラス製の半円柱形状のATRプリズムを用いた。予め、プリズム10を、測定試料部36に設置し、プリズム10と空気(環境)との界面における臨界角を実験的に求めた。結果、上記臨界角は41.1度であることがわかった。なお、理論臨界角は、41.03度である。
【0082】
本実施例における測定対象の薄膜としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)からなる薄膜を用いた。Alq3は、有機EL素子等に用いられる蛍光材料であり、水に不溶の黄色粉末体である。
また、図5に、Alq3の吸光スペクトルを示す。Alq3は、吸収帯が紫外から青色領域に存在し、本実施例において用いる励起光L1の波長473nmにおける吸収は小さい。しかしながら、励起光として紫外光ではなく可視光を用いることは、安全性の観点から見て好ましい。
【0083】
本実施例において、薄膜試料13は、以下のように調製した。まず、顕微鏡用カバーガラス上に、真空蒸着法により厚さ63nmのAg薄膜11を形成した後、測定対象となる厚さ85nmのAlq3薄膜12を形成して、薄膜試料13とした。プリズム10と薄膜試料13との光学的接続は、屈折率マッチングオイルを介して行った。
【0084】
続いて、薄膜試料13が積層しているプリズム10を、測定試料部36に設置した。そして、励起光L1としてp偏光またはs偏光を用い、入射角毎の反射率を測定した。結果を図6に示す。
【0085】
励起光L1としてp偏光を用いたときには、図6(a)に示すように、明確なATRディップは観察されなかった。一方、励起光L1としてs偏光を用いたとき、図6(b)に示すように、入射角41.4度に深いATRディップが観察された。
【0086】
図6(b)において、点は測定値を示す。また、実線は、ガラスプリズムの誘電率を2.320717とし、Agの膜厚を63nmとし、Agの複素誘電率を−8.02+i0.39とし、Alq3の膜厚を85nmとし、Alq3の複素誘電率を2.34+i0.001として理論計算を行ったフィッティングカーブを示す。
【0087】
図6(b)に示すように、s偏光を用い、入射角が41.4度付近のときに深いATRディップが観察されたので、同条件の励起光L1を用いて薄膜試料13の蛍光分光測定を行った。その結果を、図7に示す。なお、図7では、同じ光源30を用いて図10に示すような従来技術に係る測定装置により薄膜試料13の蛍光分光測定を行ったときの結果を併せて示す。図7に示すように、本実施例の結果は、従来測定法の結果に対して顕著に増強されており、蛍光強度(480〜800nmの積分値)は、52倍となっていた。
【0088】
また、蛍光を測定する際、薄膜試料13において励起光L1が導波されている様子は観察されなかった。
【0089】
なお、顕微鏡用カバーガラス上に、真空蒸着法により63nmのAg薄膜11を形成しただけの比較試料を作成し、当該比較試料が積層しているプリズム10を、測定試料部36に設置し、入射角毎の反射率を測定したところ、比較試料を用いた場合には、p偏光を用いたときにATRディップが観察され、s偏光を用いたときにはATRディップは観察されなかった(データ示さず)。
【0090】
(実施例2)
次に、いくつかの条件を変えて、実施例1と同様に測定を行った。以下、実施例1と異なる部分についてのみ説明する。
【0091】
まず、光源30としては、波長473nmの励起光L1を出射する、青色半導体レーザーを使用した。また、入射光調整部31としては、偏光フィルタおよびNDフィルタを備えたものを用い、励起光L1の偏光をs偏光またはp偏光の一方とするとともに、出力を90μWに減衰させた。
【0092】
プリズム10としては、実施例1と同様のものを用いた。また、測定対象の薄膜も、実施例1と同様、Alq3からなる薄膜を用いた。
【0093】
本実施例において、薄膜試料13は、以下のように調製した。まず、顕微鏡用カバーガラス上に、真空蒸着法により厚さ50nmのAg薄膜11を形成した後、測定対象となる厚さ168nmのAlq3薄膜12を形成して、薄膜試料13とした。プリズム10と薄膜試料13との光学的接続は、実施例1と同様、屈折率マッチングオイルを介して行った。
【0094】
続いて、薄膜試料13が積層しているプリズム10を、測定試料部36に設置した。そして、励起光L1としてp偏光またはs偏光を用い、入射角毎の反射率を測定した。結果を図8に示す。
【0095】
励起光L1としてp偏光を用いたときには、図8(a)に示すように、57.6度に非常に浅いATRディップが観察された。一方、励起光L1としてs偏光を用いたとき、図8(b)に示すように、57.9度に深いATRディップが観察された。
【0096】
図8(b)に示すように、s偏光を用い、入射角が57.9度に深いATRディップが観察されたので、同条件の励起光L1を用いて薄膜試料13の蛍光測定を行った。その結果を、図9に示す。なお、図9では、同じ光源30を用いて図10に示すような従来技術に係る測定装置により薄膜試料13の蛍光測定を行ったときの結果を併せて示す。図9に示すように、本実施例の結果は、従来測定法の結果に対して顕著に増強されており、蛍光強度(480〜800nmの積分値)は、約90倍となっていた。なお、図9において本実施例の結果を示すグラフでは、ピーク波長周辺において蛍光飽和が観察され、実際にはさらに増強されていると考えられる。
【0097】
また、蛍光を測定する際、薄膜試料13において励起光L1が導波されている様子は観察されなかった。
【0098】
なお、顕微鏡用カバーガラス上に、真空蒸着法により厚さ50nmのAg薄膜11を形成しただけの比較試料を作成し、当該比較試料が積層しているプリズム10を、測定試料部36に設置し、入射角毎の反射率を測定したところ、比較試料を用いた場合には、p偏光を用いたときにATRディップが観察され、s偏光を用いたときにはATRディップは観察されなかった(データ示さず)。
【0099】
以上のように、何れの実施例においても、顕著な薄膜の蛍光の増強が観察された。両実施例では、十数mWの出力の光源を用い、さらにNDフィルタによって入射光の出力を0.1mW程度に減衰させ、励起光として用いた。さらに、Alq3の吸収が小さい波長を励起光として用いた。それでもなお、両実施例において、図7および図9に示すように、十分な強度の蛍光スペクトルが得られた。このように、本発明によれば、蛍光が微弱な薄膜の蛍光を増強して首尾よく蛍光測定を行うことができ、例えば、出力が小さい光源や、測定対象の薄膜の吸収帯の外の波長の励起を用いたとしても、十分な強度の蛍光を確保することができる。本発明によれば、出力0.1mW程度の励起光で、光波長よりも薄い薄膜の蛍光を効率良く測定することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、各種材料の研究開発分野、製造および品質管理の分野ならびに測定装置の製造分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 測定装置
10 透光部材
11 金属薄膜
12 薄膜
13 薄膜試料
30 光源(励起手段、反射率測定手段)
31 入射光調整部(切替え手段、入射光量調整手段)
32、35 ミラー
33 ビームスプリッタ
34 入射モニター光検出部
36 測定試料部(透光部材支持部)
37 集光レンズ
38 蛍光分光検出部(蛍光測定手段)
39 反射光検出部(反射率測定手段)
40 反射光検出補助部(反射率測定手段)
41 入射角制御部(励起手段、反射率測定手段)
42 制御計測部(励起手段、反射率測定手段)
43 表示操作部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜の蛍光を測定するための測定装置であって、
該薄膜を含む薄膜試料が積層されている透光部材を、任意の媒質または真空からなる環境内において支持するための透光部材支持部と、
該透光部材と該薄膜試料との界面に対し、該透光部材側から、該透光部材と該環境との界面における臨界角以上の特定の入射角で光を照射して、該薄膜試料における光吸収を増大させる励起手段と、
該光吸収を増大させることによって増強された、該薄膜からの蛍光を測定する蛍光測定手段と、を備えていることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
上記透光部材と上記薄膜試料との界面に対して、上記透光部材側から上記光を照射し、その反射光を検出して、入射角毎の反射率を測定する反射率測定手段を備え、
上記励起手段は、上記臨界角以上の入射角であって、該反射率測定手段の測定結果において該反射率の減衰が生じていた入射角を含む入射条件下で上記光を照射することを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
上記光を、s偏光とp偏光との間で切り替える切替え手段を備え、
上記反射率測定手段は、該切替え手段を制御して、照射する上記光をs偏光とp偏光との間で切り替えることを特徴とする請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
上記透光部材と上記薄膜試料との界面に照射する上記光の光量を調整する入射光量調整手段を備えていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の測定装置。
【請求項5】
上記薄膜の膜厚は、上記光の波長よりも薄いことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の測定装置。
【請求項6】
上記薄膜試料は、さらに金属薄膜を含み、
該金属薄膜の方が、上記薄膜よりも、上記透光部材側に積層されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の測定装置。
【請求項7】
上記光の波長が、上記薄膜の吸収帯の外にあることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の測定装置。
【請求項8】
上記蛍光測定手段は、上記薄膜が上記透光部材に積層されている側とは反対側に、上記薄膜から出射された蛍光を測定することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の測定装置。
【請求項9】
薄膜の蛍光を測定するための測定方法であって、
任意の媒質または真空からなる環境内に配置された、該薄膜を含む薄膜試料が積層されている透光部材と該薄膜試料との界面に対し、該透光部材側から、該透光部材と該環境との界面における臨界角以上の特定の入射角で光を照射して、該薄膜試料における光吸収を増大させる励起工程と、
該光吸収を増大させることによって増強された、該薄膜からの蛍光を測定する蛍光測定工程と、を包含することを特徴とする測定方法。
【請求項10】
上記励起工程の前に、上記透光部材と上記薄膜試料との界面に対して、上記透光部材側から上記光を照射し、その反射光を検出して、入射角毎の反射率を測定する反射率測定工程を包含し、
上記励起工程では、上記臨界角以上の入射角であって、該反射率測定工程の測定結果において該反射率の減衰が生じていた入射角を含む入射条件下で上記光を照射することを特徴とする請求項9に記載の測定方法。
【請求項11】
上記反射率測定工程では、照射する上記光をs偏光とp偏光との間で切り替えることを特徴とする請求項10に記載の測定方法。
【請求項12】
上記反射率測定工程および上記励起工程では、上記透光部材と上記薄膜試料との界面に照射する上記光の光量を、入射光量調整手段を用いて調整することを特徴とする請求項10または11に記載の測定方法。
【請求項13】
上記薄膜の膜厚は、上記光の波長よりも薄いことを特徴とする請求項9〜12の何れか1項に記載の測定方法。
【請求項14】
上記薄膜試料は、さらに金属薄膜を含み、
該金属薄膜の方が、上記薄膜よりも、上記透光部材側に積層されていることを特徴とする請求項9〜13の何れか1項に記載の測定方法。
【請求項15】
上記光の波長が、上記薄膜の吸収帯の外にあることを特徴とする請求項9〜14の何れか1項に記載の測定方法。
【請求項16】
上記蛍光測定工程では、上記薄膜が上記透光部材に積層されている側とは反対側に、上記薄膜から出射された蛍光を測定することを特徴とする請求項9〜15の何れか1項に記載の測定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−53001(P2012−53001A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197638(P2010−197638)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り ・「第57回応用物理学関係連合講演会」 発行日 平成22年3月3日 発行所 社団法人応用物理学会 ・「第71回分析化学討論会講演要旨集」 発行日 平成22年5月1日 発行所 社団法人日本分析化学会 ・ 「平成22年度電気関係学会東北支部連合大会講演論文集」 発行日 平成22年8月26日 発行所 平成22年度電気関係学会東北支部連合大会実行委員会
【出願人】(591072411)西進商事株式会社 (10)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】