説明

測定装置

【課題】 試料の持つ厚みと屈折率に起因する測定誤差を低減する。
【解決手段】 テラヘルツ光発生器3から発生したテラヘルツパルス光L4は、放物面鏡9及び集光レンズ10からなる第1の集光光学系により集光される。この集光位置付近に試料100が配置される。第1の集光光学系により集光された後に発散光束となったテラヘルツパルス光L5は、集光レンズ11及び放物面鏡12からなる第2の集光光学系によりテラヘルツ光検出器6に集光される。集光レンズ11の光軸方向位置は、ステージ13により調整し得る。制御・演算処理部7は、試料100を透過したテラヘルツパルス光L5がテラヘルツ光検出器6に合焦するようにステージ13を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テラヘルツ分光装置などのテラヘルツ光を用いた測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、テラヘルツ光発生器から発生したテラヘルツパルス光を集光させる第1の集光光学系と、前記第1の集光光学系により集光された後に発散するテラヘルツパルス光をテラヘルツ光検出器に集光させる第2の集光光学系と、を備え、試料が前記第1の集光光学系による前記テラヘルツパルス光の集光位置付近に配置されて、前記試料を透過したテラヘルツパルス光が前記テラヘルツ光検出器により検出される測定装置が提供されている(例えば、下記特許文献1,2)
【0003】
このような従来の測定装置では、特許文献1,2に開示されているように、前記第1の集光光学系は、テラヘルツ光発生器から発生したテラヘルツパルス光を平行光束にする第1の放物面鏡と、この平行光束を焦点に集光させる第2の放物面鏡とから構成されている。また、前記第2の集光光学系は、第2の放物面鏡で集光された後に発散するテラヘルツパルス光を平行光束にする第3の放物面鏡と、この平行光束をテラヘルツ光検出器に集光させる第4の放物面鏡とから構成されている。そして、装置の製造時に、テラヘルツ光発生器は第1の放物面鏡の焦点に配置され、テラヘルツ光検出器は第4の放物面鏡の焦点に配置されて、これらの位置関係が固定されている。すなわち、従来の測定装置では、試料がない状態において、テラヘルツパルス光が最も良い合焦状態でテラヘルツ光検出器の有効受光領域に集光するように、設定されている。
【0004】
このように、テラヘルツ分光装置などのテラヘルツ光を用いた測定装置では、試料の小領域について透過測定を行う場合、前述した第1及び第2の集光光学系を用いるのが一般的である。これは、テラヘルツ光の波長が長いため(例えば、周波数1THzの場合の波長は約300μm)、回折効果が大きく作用し、小さな径のテラヘルツ光の平行光を作ることができないためである。
【0005】
【特許文献1】特開2003−75251号公報
【特許文献2】特開2004−212110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の測定装置では、試料を前記第1の集光光学系の集光位置付近に配置すると、当該試料の持つ厚みと屈折率のために、テラヘルツ光検出器に対するテラヘルツパルス光の集光状態が低下し、いわばピントのボケが生ずることが、判明した。
【0007】
ここで、試料100がない場合の、前記従来の測定装置における第2及び第3の放物面鏡102,103の付近のテラヘルツパルス光の様子を、図1に模式的に示す。また、試料100を配置した場合の、前記従来の測定装置における第2及び第3の放物面鏡102,103の付近のテラヘルツパルス光の様子を、図2に模式的に示す。なお、両者の比較を容易にするため、図2中には、図1中の点Aの後のテラヘルツパルス光の様子も点線で示している。
【0008】
図1及び図2に示すように、第1の放物面鏡(図示せず)からの平行光束のテラヘルツパルス光が第2の放物面鏡102に入射され、第2の放物面鏡102により反射されて図1及び図2中の点Aに集光される。点Aは第2の放物面鏡102の焦点であり、第3の放物面鏡103の焦点と一致している。
【0009】
図1に示すように試料100がない場合、点Aに集光されたテラヘルツパルス光は、点Aから発した発散光束となって、第3の放物面鏡103に入射され、第3の放物面鏡103により反射されて平行光束となる。この平行光束は、第4の放物面鏡(図示せず)で反射され、第4の放物面鏡の焦点に配置されたテラヘルツ光検出器(図示せず)に理想的に集光される。
【0010】
一方、図2に示すように試料100が点A付近に配置されている(図2に示す例では、試料100は、その前側の面が点Aと一致するように配置されている)場合、第2の放物面鏡102で反射されたテラヘルツパルス光が試料100により屈折されるため、試料100を透過したテラヘルツパルス光は、見かけ上、点Aからずれた点Bから発した発散光束と同じ発散光束となって、第3の放物面鏡103に入射される。点Bは点A(第3の放物面鏡103の焦点)からずれているので、放物面鏡103により反射されたテラヘルツパルス光は、平行光束にならない。このため、その後に第4の放物面鏡により反射されたテラヘルツパルス光は、第4の放物面鏡の焦点に理想的に集光し得ず、したがって、第4の放物面鏡の焦点に配置されたテラヘルツ光検出器に対するテラヘルツパルス光の集光状態が低下し、いわばピントのボケが生ずる。
【0011】
その結果、試料がない場合と試料が配置された場合とでは、テラヘルツ検出器の有効受光領域に対するテラヘルツパルス光の入射状況が変化してしまう。このとき、テラヘルツパルス光の各波長成分毎にその入射状況の変化の様子も異なる。このような傾向は、テラヘルツ光検出器として、ダイポールアンテナ等を用いた光伝導アンテナなどの、有効受光領域の小さい検出器を用いた場合に、大きくなる。
【0012】
したがって、前記従来の測定装置では、テラヘルツ光検出器に対するテラヘルツパルス光の集光状態の変化によって、SN比が低下したり、測定により得られる分光特性が本来の分光特性から変化したりする。このため、前記従来の測定装置では、試料の持つ厚みと屈折率に起因して、測定誤差が大きくなる。
【0013】
例えば、分光測定を行う場合、一般的に、試料を配置した状態で得た検出信号を試料がない状態で得た検出信号(リファレンス信号)と比較するため、試料の持つ厚みと屈折率に起因するピントのボケが、測定誤差の大きな要因となる。また、分光測定を行う場合、試料を配置した状態で得た検出信号を、当該試料に代えて参照用試料(例えば、ガラス板等)を配置した状態で得た検出信号と比較する場合もある。この場合にも、本来の測定の対象としての試料と参照用試料とで厚みや屈折率が異なることによって、本来の試料を配置した場合と参照用試料を配置した場合とで、テラヘルツ検出器の有効受光領域に対するテラヘルツパルス光の入射状況が変化してしまう。よって、参照用試料を用いて分光測定を行う場合にも、試料の持つ厚みと屈折率に起因して、測定誤差が大きくなる。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、試料の持つ厚みと屈折率に起因する測定誤差を低減することができる測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するため、本発明の第1の態様による測定装置は、テラヘルツパルス光を発生するテラヘルツ光発生器と、テラヘルツパルス光を検出するテラヘルツ光検出器と、前記テラヘルツ光発生器から発生したテラヘルツパルス光を集光させる第1の集光光学系と、前記第1の集光光学系により集光された後に発散するテラヘルツパルス光を前記テラヘルツ光検出器に集光させる第2の集光光学系と、を備え、試料が前記第1の集光光学系による前記テラヘルツパルス光の集光位置付近に配置されて、前記試料を透過したテラヘルツパルス光が前記テラヘルツ光検出器により検出される測定装置であって、前記第1及び第2の集光光学系のうちの少なくとも一方の集光光学系が、正又は負の屈折力を有する少なくとも1つの光学素子を含み、前記少なくとも1つの光学素子の光軸方向位置を調整する位置調整機構を備えたものである。
【0016】
本発明の第2の態様による測定装置は、前記第1の態様において、前記試料を透過したテラヘルツパルス光が前記テラヘルツ光検出器に合焦する方向に前記位置調整機構を制御する制御部を、備えたものである。
【0017】
本発明の第3の態様による測定装置は、前記第1又は第2の態様において、前記制御部は、前記試料の厚みと屈折率とに応じて前記位置調整機構を制御するものである。
【0018】
本発明の第4の態様による測定装置は、前記第1乃至第3のいずれかの態様において、前記制御部は、前記試料を透過したテラヘルツパルス光の前記テラヘルツ光検出器に対する合焦状態が、前記試料がない場合の前記テラヘルツ光検出器に対するテラヘルツパルス光の合焦状態と同じになるように、前記位置調整機構を制御するものである。
【0019】
本発明の第5の態様による測定装置は、前記第1の態様において、前記テラヘルツ光発生器は、自身に入射されるポンプパルス光に応答してテラヘルツパルス光を発生し、前記テラヘルツ光検出器は、自身に入射されるプローブパルス光に応答してテラヘルツパルス光を検出し、前記ポンプパルス光の光路の光路長と前記プローブパルス光の光路の光路長とを相対的に変え得るようにする光路長可変部を備えたものである。
【0020】
本発明の第6の態様による測定装置は、前記第2乃至第4のいずれかの態様において、前記テラヘルツ光発生器は、自身に入射されるポンプパルス光に応答してテラヘルツパルス光を発生し、前記テラヘルツ光検出器は、自身に入射されるプローブパルス光に応答してテラヘルツパルス光を検出し、前記ポンプパルス光の光路の光路長と前記プローブパルス光の光路の光路長とを相対的に変え得るようにする光路長可変部を備えたものである。
【0021】
本発明の第7の態様による測定装置は、前記第6の態様において、前記試料がない状態で、前記光路長可変部により前記ポンプパルス光の前記光路の光路長と前記プローブパルス光の光路の光路長とを相対的に変えながら得られる前記テラヘルツ光検出器からの検出信号に基づいて、前記テラヘルツ光検出器に入射するテラヘルツパルス光の電場強度の時系列波形を得る第1の時系列波形取得手段と、前記試料が前記第1の集光光学系による前記テラヘルツパルス光の集光位置付近に配置された状態で、前記光路長可変部により前記ポンプパルス光の前記光路の光路長と前記プローブパルス光の光路の光路長とを相対的に変えながら得られる前記テラヘルツ光検出器からの検出信号に基づいて、前記テラヘルツ光検出器に入射するテラヘルツパルス光の電場強度の時系列波形を得る第2の時系列波形取得手段と、前記第1の時系列波形取得手段により得られた時系列波形のピークと前記第2の時系列波形取得手段により得られた時系列波形のピークとの間の時間差に基づいて、前記少なくとも1つの光学素子の移動量を演算する演算手段と、を備え、前記制御部は、前記演算手段により得られた移動量に従って前記位置調整機構を制御するものである。
【0022】
本発明の第8の態様による測定装置は、前記第6の態様において、前記試料の代わりに参照用試料が前記第1の集光光学系による前記テラヘルツパルス光の集光位置付近に配置された状態で、前記光路長可変部により前記ポンプパルス光の前記光路の光路長と前記プローブパルス光の光路の光路長とを相対的に変えながら得られる前記テラヘルツ光検出器からの検出信号に基づいて、前記テラヘルツ光検出器に入射するテラヘルツパルス光の電場強度の時系列波形を得る第1の時系列波形取得手段と、前記試料が前記第1の集光光学系による前記テラヘルツパルス光の集光位置付近に配置された状態で、前記光路長可変部により前記ポンプパルス光の前記光路の光路長と前記プローブパルス光の光路の光路長とを相対的に変えながら得られる前記テラヘルツ光検出器からの検出信号に基づいて、前記テラヘルツ光検出器に入射するテラヘルツパルス光の電場強度の時系列波形を得る第2の時系列波形取得手段と、前記第1の時系列波形取得手段により得られた時系列波形のピークと前記第2の時系列波形取得手段により得られた時系列波形のピークとの間の時間差に基づいて、前記少なくとも1つの光学素子の移動量を演算する演算手段と、を備え、前記制御部は、前記演算手段により得られた移動量に従って前記位置調整機構を制御するものである。
【0023】
本発明の第9の態様による測定装置は、前記第6の態様において、前記制御手段は、(i)前記試料が前記第1の集光光学系による前記テラヘルツパルス光の集光位置付近に配置された状態で、前記光路長可変部により前記ポンプパルス光の前記光路の光路長と前記プローブパルス光の光路の光路長とを相対的に変えながら得られる前記テラヘルツ光検出器からの検出信号をモニタし、そのモニタ結果に基づいて、前記光路長可変部により前記各光路の光路長を当該検出信号が最大となるような光路長に固定し、(ii)この固定状態において、前記位置調整機構により前記光学素子を移動させながら得られる前記テラヘルツ光検出器からの検出信号をモニタし、そのモニタ結果に基づいて、当該検出信号が最大となるような位置に前記光学素子が位置するように前記位置調整機構を制御するものである。
【0024】
本発明の第10の態様による測定装置は、前記第1乃至第9のいずれかの態様において、前記少なくとも1つの光学素子は、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、石英、サファイア、シリコン、ガリウム砒素、MgO、Ge及びダイヤモンドのうちのいずれかの材料で構成されたものである。
【0025】
前記第1乃至第10の態様において、前記光学素子は透過光学素子であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、試料の持つ厚みと屈折率に起因する測定誤差を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明による測定装置について、図面を参照して説明する。
【0028】
[第1の実施の形態]
【0029】
本発明の第1の実施の形態の説明に先立って、本実施の形態における測定誤差低減の原理の理解を容易にするために、図3を参照して、図2中の点Aと点Bとの間の距離(点A,B間のずれ量)δLを求めておく。図3は、図2中の試料100付近のテラヘルツパルス光の光線の様子を示す図である。先の説明からわかるように、点Aは、試料100がない場合に第3の放物面鏡103に入射するテラヘルツパルス光の発散光束の発散点である。点Bは、試料100を配置した場合に第3の放物面鏡103に入射するテラヘルツパルス光(試料100を透過した透過光)の発散光束の見かけ上の発散点である。
【0030】
今、図3に示すように、試料100が真空中に設置され、試料100の屈折率がn、試料100の厚みがDであるものとする。そして、この試料100に点Aから入射角度θで入射する光線を考える。この光線は、点Aで屈折した後、点Cで試料100から出射する。図3に示すように、試料100の後側の面における光軸上の点をE、∠BACをθ’、点Bと点Eとの間の距離をδD、点Cと点Eとの間の距離をdとする。点A,Bは光軸上にある。スネルの法則に従って、∠CBE=θとなる。
【0031】
図3からわかるように、点A,B間のずれ量δLは、下記の数1で与えられる。
【0032】
【数1】

【0033】
また、図2中の距離dは、下記の数2及び数3によりそれぞれ表される。数2及び数3から、δDは下記の数4で与えられる。
【0034】
【数2】

【0035】
【数3】

【0036】
【数4】

【0037】
また、スネルの法則から、下記の数5が成立する。
【0038】
【数5】

【0039】
数4及び数5を数1に代入すると、下記の数6を得る。数6においてθ→0の極限をとると、ずれ量δLは下記の数7で示す通りとなる。
【0040】
【数6】

【0041】
【数7】

【0042】
図2及び図3に示す例では、試料100は、その前側の面が点Aと一致するように配置されているが、試料100がその位置から前後にずれても、数7はそのまま成立する。
【0043】
以上を一般化すると、テラヘルツパルス光が集光されることでその後に発散光束となる状況において、試料100がない場合の発散光束の発散点Aと、試料100を集光位置付近に配置した場合の発散光束の見かけ上の発散点Bとの間のずれ量δLは、数7で与えられることが、わかる。
【0044】
図4は、本発明の第1の実施の形態による測定装置を模式的に示す概略構成図である。
【0045】
本実施の形態による測定装置は、テラヘルツ分光装置、特に、時系列変換テラヘルツ分光装置として構成されている。この時系列変換テラヘルツ分光装置では、試料を透過したテラヘルツパルス光の電場の時系列波形を測定し、この時系列波形をフーリエ変換することにより、試料の分光特性を測定する。
【0046】
本実施の形態による測定装置では、図4に示すように、フェムト秒パルス光源1からフェムト秒パルス光L1が、ビームスプリッタ2で2つのパルス光L2,L3に分割される。
【0047】
ビームスプリッタ2で分割された一方のパルス光L2は、ダイポールアンテナ等を用いた光伝導アンテナ等の光スイッチ素子又はEO結晶などのテラヘルツ光発生器3を励起してこの発生器3にテラヘルツパルス光を発生させるための、ポンプパルス光(パルス励起光)となる。このポンプパルス光L2は、テラヘルツ光発生器3へ導かれる。その結果、ポンプパルス光L2に応答して、テラヘルツ光発生器3が励起されてテラヘルツパルス光L4を放射する。なお、テラヘルツ光発生器3として光スイッチ素子を用いる場合には、図示しないバイアス電源によりバイアス電圧がテラヘルツ光発生器3に印加される。
【0048】
ビームスプリッタ2で分割された他方のパルス光L3は、テラヘルツパルス光を検出するタイミングを定めるプローブパルス光となる。このプローブパルス光L3は、2枚もしくは3枚の平面鏡が組み合わされてなる可動鏡4、更には平面鏡5を経て、テラヘルツ光検出器6へ導かれる。本実施の形態では、テラヘルツ光検出器6として、ダイポールアンテナを用いた光スイッチ素子が用いられているが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0049】
プローブパルス光L3の光路上に配置された可動鏡4は、制御・演算処理部7による制御下で、光路長可変用の移動機構としてのステージ8により図4中の左右方向に移動可能となっている。可動鏡4の移動量に応じて、プローブパルス光L3の光路長が変わり、プローブパルス光L3がテラヘルツ光検出器6へ到達する時間が遅延する。すなわち、本実施の形態では、可動鏡4及び光路長可変用ステージ(遅延ステージ)8が、プローブパルス光L3の光路長をポンプパルス光L2の光路長に対して相対的に変え得るようにする光路長可変部を構成している。テラヘルツ光発生器3から発生するテラヘルツパルス光の発生期間とプローブパルス光L3がテラヘルツ光検出器6に到達するタイミングを一致させる必要がある。また、いわゆるポンプ−プローブ法により、テラヘルツパルス光の時系列波形を得るためには、テラヘルツ光発生器3から発生したテラヘルツパルス光がテラヘルツ光検出器6に到達している期間内におけるプローブパルス光L3のタイミングを変える必要がある。このため、本実施の形態では、前記光路長可変部が設けられている。
【0050】
テラヘルツ光発生器3で発生するテラヘルツパルス光L4としては、概ね0.1×1012から100×1012ヘルツまでの周波数領域の光が望ましい。このテラヘルツパルス光L4は、放物面鏡9及び正の屈折力を有する光学素子(本実施の形態では、透過光学素子)としての集光レンズ10を経て、集光位置に集光される。放物面鏡9は、テラヘルツパルス光L4を平行光束に変換し、集光レンズ10は、その焦点に、平行光束となったテラヘルツパルス光L4を集光させる。本実施の形態では、放物面鏡9及び集光レンズ10が、テラヘルツ光発生器3から発生したテラヘルツパルス光を集光させる第1の集光光学系を構成している。集光レンズ10の焦点付近には、測定対象物としての試料100の測定部位が配置される。ただし、後述するリファレンス測定等の際には、試料100が配置されなかったり、参照用試料(図示せず)が配置されたりする。試料100を透過等したテラヘルツパルス光L5は、当初は発散光束となるが、正の屈折力を有する透過光学素子としての集光レンズ11により平行光束に変換され、更に、放物面鏡12によりテラヘルツ光検出器6の有効受光領域に集光される。本実施の形態では、集光レンズ11及び放物面鏡12が、前記第1の集光光学系により集光された後に発散するテラヘルツパルス光L5をテラヘルツ光検出器6に集光させる第2の集光光学系を、構成している。
【0051】
前記第1及び第2の集光光学系に含まれる透過光学素子(本実施の形態では、集光レンズ10,11)を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、石英、サファイア、シリコン、ガリウム砒素、MgO、Ge、ダイヤモンドなどを挙げることができる。これらの材料はテラヘルツパルス光の透過率が比較的高いので、好ましい。
【0052】
そして、本実施の形態では、集光レンズ11の光軸方向の位置を調整する位置調整機構として、ステージ13が設けられている。後に詳述するが、本実施の形態では、制御・演算処理部7による制御下で、集光レンズ11の光軸方向の位置が調整されることで、試料100を配置した場合、試料100を配置しない場合、試料100に代えて参照用試料を配置した場合のいずれの場合であっても、集光レンズ11を透過したテラヘルツパルス光L5は、常に実質的に平行光束となり、これにより、テラヘルツ光検出器6に対するテラヘルツパルス光L5の集光状態が低下することがなく、ピントのボケが生じない。
【0053】
テラヘルツ光検出器6に集光されたテラヘルツパルス光L5は、テラヘルツ光検出器6により検出されて電気信号に変換される。この電気信号は、増幅器やA/D変換器やコンピュータ等からなる制御・演算処理部7に供給され、増幅やA/D変換等がなされてテラヘルツパルス光の電場強度の検出信号として内部メモリ内に取り込まれる。
【0054】
フェムト秒パルス光源1から放射されるフェムト秒パルス光L1の繰り返し周期は、数kHzから100MHzオーダーである。したがって、テラヘルツ光発生器3から放射されるテラヘルツパルス光L4も、数kHzから100MHzオーダーの繰り返しで放射される。現在のテラヘルツ光検出部6では、このテラヘルツパルス光の波形を瞬時に、その形状のまま計測することは不可能である。
【0055】
したがって、本実施の形態では、同じ波形のテラヘルツパルス光L5が数kHzから100MHzオーダーの繰り返しで到来することを利用して、ポンプパルス光L2とプローブパルス光L3との間に時間遅延を設けてテラヘルツパルス光L5の波形を計測する、いわゆるポンプ−プローブ法を採用している。すなわち、ポンプパルス光L2により作動されたテラヘルツ光発光器3から発生したテラヘルツパルス光がテラヘルツ光検出器6に到達するタイミングに対して、プローブパルス光によりテラヘルツ光検出器6を作動させるタイミングを時間τだけ遅らせることにより、時間τだけ遅れた時点でのテラヘルツパルス光L5の電場強度をテラヘルツ光検出器6で測定できる。言い換えれば、プローブ光L3は、テラヘルツ光検出器6に対してゲートをかけていることになる。また、可動鏡4を徐々に移動させることは、遅延時間τを徐々に変えることにほかならない。前記光路長可変部によってゲートをかけるタイミングをずらしながら、繰り返し到来するテラヘルツパルス光L5の各遅延時間τごとの時点の電場強度をテラヘルツ光検出器6から電気信号として順次得ることによって、テラヘルツパルス光L5の電場強度の時系列波形E(τ)を計測することができる。
【0056】
本実施の形態では、テラヘルツパルス光の電場強度の時系列波形E(τ)の計測時には、制御・演算処理部7が、ステージ8に制御信号を与えて、前記遅延時間τを徐々に変化させながら、テラヘルツ光検出器6から電気信号を増幅及びA/D変換したデータを制御・演算処理部7内の図示しないメモリに順次格納する。これによって、最終的に、テラヘルツパルス光L5の電場強度の時系列波形E(τ)を示すデータ全体をメモリに格納する。このような時系列波形E(τ)を示すデータを、試料100を図4に示す位置に配置した場合と、試料100を配置しない場合又は試料100に代えて参照用試料(例えば、ガラス板等)を配置した場合について取得する。制御・演算処理部7は、これらのデータに基づいて、試料100の分光データを求め、これを液晶パネルやCRT等の表示部14に表示させる。
【0057】
本実施の形態では、制御・演算処理部7は、キーボード又はその他の操作器等からなる入力部15からの指令に応じて、図5乃至図9に示す第1乃至第5の測定モードの動作を実現する。もっとも、本発明では、第1乃至第5の測定モードのうちのいずれか1つ又は2つ以上の測定モードのみを実現するように、制御・演算処理部7を構成してもよい。
【0058】
第1の測定モードは、リファレンス測定を試料100がない状態(集光レンズ10,11間に何も配置しない状態)で行い、試料100の屈折率nが既知である場合に、試料100の分光データを得る測定モードである。図5は、第1の測定モードの動作を示す概略フローチャートである。
【0059】
制御・演算処理部7は、入力部15から第1の測定モードが指令されると、その動作を開始し、まず、測定者に試料100の厚みDと屈折率nの入力を促す表示を表示部14に表示させ、入力部15からそれらが入力される(ステップS1)と、ステップS2へ移行する。なお、試料100の厚みDは、予め計測しておく。
【0060】
ステップS2において、制御・演算処理部7は、ステージ13を制御して、集光レンズ11を基準位置に位置させる。この基準位置は、集光レンズ11の前側焦点が集光レンズ10の後側焦点と一致する位置であり、試料100がない場合にテラヘルツ光検出器6に対するテラヘルツパルス光の合焦状態が良くなる位置である。基準位置は、予め制御・演算処理部7のメモリに記憶させておく。
【0061】
次に、制御・演算処理部7は、試料100がない状態でリファレンス測定を行う(ステップS3)。すなわち、制御・演算処理部7は、試料100がない状態で、前述したようにステージ8に制御信号を与えて前記遅延時間τを徐々に変化させながらテラヘルツ光検出器6からの検出信号のデータを内部メモリに取り込んでいくことで、テラヘルツパルス光L5の電場強度の時系列波形を取得する。
【0062】
次いで、制御・演算処理部7は、集光レンズ11の移動量として、数7で表されるずれ量δLを、数7に従って演算する(ステップS4)。このとき、ステップS1で入力された試料100の厚みD及び屈折率nを用いる。
【0063】
その後、制御・演算処理部7は、ステージ13を制御して、前記基準位置から、ステップS3で得た移動量(ずれ量δL)だけ、集光レンズ11を試料100の設置位置から遠ざかる方向へ移動させて、その位置で集光レンズ11を停止させる(ステップS5)。前述した図1乃至図3に関連した説明から理解できるように、集光レンズ11がこの位置に位置すると、集光レンズ11の焦点が、試料100を図4に示す位置に配置した状態におけるテラヘルツパルス光L5の見かけ上の発散点と一致するので、試料100を図4に示す位置に配置した状態で、テラヘルツパルス光L5は集光レンズ11によって平行光束となって、放物面鏡12に入射する。したがって、ステップS5の集光レンズ11の位置調整後では、試料100を図4に示す位置に配置した場合のテラヘルツ光検出器6に対するテラヘルツパルス光L5の集光状態は、集光レンズ11が前記基準位置に位置していて試料100がない場合のテラヘルツ光検出器6に対するテラヘルツパルス光L5の集光状態と同様となり、良好な合焦状態を維持することができる。この状態が、集光レンズ11が前記基準位置に位置していて試料100が図4に示す位置に配置された場合のテラヘルツ光検出器6に対するテラヘルツパルス光L5の合焦状態に比べて良くなることは、言うまでもない。
【0064】
引き続いて、制御・演算処理部7は、試料100が図4に示す位置に配置された状態で試料測定を行う(ステップS6)。すなわち、制御・演算処理部7は、試料100が図4に示す位置に配置された状態で、前述したようにステージ8に制御信号を与えて前記遅延時間τを徐々に変化させながらテラヘルツ光検出器6からの検出信号のデータを内部メモリに取り込んでいくことで、テラヘルツパルス光L5の電場強度の時系列波形を取得する。
【0065】
次に、制御・演算処理部7は、ステップS3で得た参照用時系列波形及びステップS6で得た時系列波形をそれぞれフーリエ変換する。フーリエ変換により得られた各波長成分毎に、ステップS6で得た時系列波形の成分をステップS3で得た時系列波形の成分で除算することで、分光データを作成する(ステップS7)。その後、制御・演算処理部7は、この分光データを表示部14に表示させ、第1の測定モードを終了する。
【0066】
この第1の測定モードでは、ステップS3のリファレンス測定においてもステップS6の試料測定においても、テラヘルツパルス光L5のテラヘルツ光検出器6に対する集光状態は、互いに同じように良好な合焦状態となる。したがって、試料100の厚みD及び屈折力nに起因する測定誤差を低減することができる。
【0067】
第2の測定モードは、リファレンス測定を試料100がない状態で行い、試料100の屈折率nが未知である場合に、試料100の分光データを得る測定モードである。図6は、第2の測定モードの動作を示す概略フローチャートである。
【0068】
制御・演算処理部7は、入力部15から第2の測定モードが指令されると、その動作を開始し、まず、測定者に試料100の厚みDの入力を促す表示を表示部14に表示させ、入力部15からそれが入力される(ステップS11)と、ステージ13を制御して、集光レンズ11を前記基準位置に位置させる(ステップS12)。
【0069】
次に、制御・演算処理部7は、前述したステップS3と同じく試料100がない状態でリファレンス測定を行い、テラヘルツパルス光L5の電場強度の時系列波形を取得する(ステップS13)。
【0070】
次いで、制御・演算処理部7は、集光レンズ11が前記基準位置に位置した状態のままで、前述したステップS6の試料測定と同様の試料予備測定を行う(ステップS14)。すなわち、制御・演算処理部7は、集光レンズ11が前記基準位置に位置しかつ試料100が図4に示す位置に配置された状態で、テラヘルツパルス光L5の電場強度の時系列波形を取得する。
【0071】
図11は、ステップS13のリファレンス測定で得られる時系列波形及びステップS14の試料予備測定で得られる時系列波形の例を示す図である。既に説明したように試料100の厚みをD、試料100の屈折率をnとし、更に、図11に示すように両時系列波形のピーク間の時間差をδt、光速をcとすると、下記の数8が成立する。
【0072】
【数8】

【0073】
ステップS14の後に、制御・演算処理部7は、ステップS13,14で得られた各時系列波形のピーク間の時間差δtを求め、この時間差δtを用いて、試料100の屈折率nを数8に従って算出する(ステップS15)。このとき、ステップS11で入力された試料100の厚みDを用いる。
【0074】
次いで、制御・演算処理部7は、集光レンズ11の移動量として、数7で表されるずれ量δLを、数7に従って演算する(ステップS16)。このとき、ステップS11で入力された試料100の厚みD、及び、ステップS15で算出された試料100の屈折率nを用いる。
【0075】
その後、制御・演算処理部7は、ステージ13を制御して、前記基準位置から、ステップS16で得た移動量(ずれ量δL)だけ、集光レンズ11を試料100の設置位置から遠ざかる方向へ移動させて、その位置で集光レンズ11を停止させる(ステップS17)。集光レンズ11がこの位置に位置すると、前述したステップS5の場合と同様に、試料100を図4に示す位置に配置した場合のテラヘルツ光検出器6に対するテラヘルツパルス光L5の集光状態は、集光レンズ11が前記基準位置に位置していて試料100がない場合のテラヘルツ光検出器6に対するテラヘルツパルス光L5の集光状態と同様となり、良好な合焦状態を維持することができる。
【0076】
引き続いて、制御・演算処理部7は、前述したステップS6〜S8と同様のステップS18〜S20の処理を行い、第2の測定モードを終了する。なお、ステップS19における分光データの作成は、ステップS13のリファレンス測定で得た参照時系列波形、及び、ステップS18の試料測定で得た時系列波形を用いて行い、ステップS14の試料予備測定で得た時系列波形は用いない。
【0077】
この第2の測定モードでは、前記第1の測定モードと同様に、ステップS13のリファレンス測定においてもステップS18の試料測定においても、テラヘルツパルス光L5のテラヘルツ光検出器6に対する集光状態は、互いに同じように良好な合焦状態となる。したがって、試料100の厚みD及び屈折力nに起因する測定誤差を低減することができる。
【0078】
第3の測定モードは、リファレンス測定を参照用試料を配置した状態で行い、試料100の屈折率n及び参照用試料の屈折率n’が既知である場合に、試料100の分光データを得る測定モードである。図7は、第3の測定モードの動作を示す概略フローチャートである。
【0079】
制御・演算処理部7は、入力部15から第3の測定モードが指令されると、その動作を開始し、まず、測定者に試料100の厚みDと屈折率n及び参照用試料の厚みD’と屈折率n’の入力を促す表示を表示部14に表示させ、入力部15からそれらが入力される(ステップS21)と、ステージ13を制御して、集光レンズ11を前記基準位置に位置させる(ステップS22)。
【0080】
次に、制御・演算処理部7は、集光レンズ11の移動量として、下記の数9で表される参照用試料に関するずれ量δL’を、数9に従って演算する(ステップS23)。このとき、ステップS21で入力された参照用試料の厚みD’及び屈折率n’を用いる。なお、数9は、数7を参照用試料に合わせて書き換えたものである。
【0081】
【数9】

【0082】
その後、制御・演算処理部7は、ステージ13を制御して、前記基準位置から、ステップS23で得た移動量(ずれ量δL’)だけ、集光レンズ11を参照用試料や試料100の設置位置から遠ざかる方向へ移動させて、その位置で集光レンズ11を停止させる(ステップ24)。
【0083】
引き続いて、制御・演算処理部7は、参照用試料が図4に示す試料100の位置に試料100の代わりに配置された状態でリファレンス測定を行い、テラヘルツパルス光L5の電場強度の時系列波形を取得する(ステップS25)。
【0084】
次に、制御・演算処理部7は、集光レンズ11の移動量として、下記の数10で表される値ΔLを演算する(ステップS26)。このとき、ステップS21で入力された試料100の厚みD及び屈折率n、並びに、参照用試料の厚みD’及び屈折率n’を用いる。この移動量ΔLは、現在はステップS9によって集光レンズ11が前記基準位置から参照用試料に関するずれ量δL’だけ離れた位置に位置していることを考慮したものであり、前記基準位置から試料100に関するずれ量δLだけ離れた位置に集光レンズ11を位置させるのに必要な、現在位置からの移動量である。
【0085】
【数10】

【0086】
次いで、制御・演算処理部7は、ステージ13を制御して、集光レンズ11を現在位置から、ステップS26で得た移動量ΔLだけ移動させて、その位置で集光レンズ11を停止させる(ステップ27)。このとき、ΔLが正であれば、集光レンズ11を試料100の設置位置から遠ざかる方向へ移動させ、ΔLが負であれば、逆方向へ移動させる。
【0087】
その後、制御・演算処理部7は、前述したステップS6〜S8と同様のステップS28〜S30の処理を行い、第3の測定モードを終了する。なお、ステップS29における分光データの作成は、ステップS25のリファレンス測定で得た参照時系列波形、及び、ステップS28の試料測定で得た時系列波形を用いて行う。
【0088】
この第3の測定モードでは、リファレンス測定において参照用試料を用いているが、ステップS25のリファレンス測定においてもステップS28の試料測定においても、テラヘルツパルス光L5のテラヘルツ光検出器6に対する集光状態は、互いに同じように良好な合焦状態となる。したがって、試料100の厚みD及び屈折力nや参照試料の厚みD’及び屈折力n’に起因する測定誤差を低減することができる。
【0089】
第4の測定モードは、リファレンス測定を参照用試料を配置した状態で行い、試料100の屈折率nが未知であり参照用試料の屈折率n’が既知である場合に、試料100の分光データを得る測定モードである。図8は、第4の測定モードの動作を示す概略フローチャートである。
【0090】
制御・演算処理部7は、入力部15から第4の測定モードが指令されると、その動作を開始し、まず、測定者に試料100の厚みD及び参照用試料の厚みD’と屈折率n’の入力を促す表示を表示部14に表示させ、入力部15からそれらが入力される(ステップS31)と、ステージ13を制御して、集光レンズ11を前記基準位置に位置させる(ステップS32)。
【0091】
次に、制御・演算処理部7は、集光レンズ11の移動量として、数9で表される参照用試料に関するずれ量δL’を、数9に従って演算する(ステップS33)。このとき、ステップS31で入力された参照用試料の厚みD’及び屈折率n’を用いる。
【0092】
その後、制御・演算処理部7は、ステージ13を制御して、前記基準位置から、ステップS33で得た移動量(ずれ量δL’)だけ、集光レンズ11を参照用試料や試料100の設置位置から遠ざかる方向へ移動させて、その位置で集光レンズ11を停止させる(ステップ34)。
【0093】
引き続いて、制御・演算処理部7は、参照用試料が図4に示す試料100の位置に試料100の代わりに配置された状態でリファレンス測定を行い、テラヘルツパルス光L5の電場強度の時系列波形を取得する(ステップS35)。
【0094】
次に、制御・演算処理部7は、集光レンズ11がステップS34で調整された位置に位置した状態のままで、前述したステップS6の試料測定と同様の試料予備測定を行う(ステップS36)。すなわち、制御・演算処理部7は、集光レンズ11がその位置に位置しかつ試料100が図4に示す位置に配置された状態で、テラヘルツパルス光L5の電場強度の時系列波形を取得する。
【0095】
次いで、制御・演算処理部7は、ステップS35で得られた時系列波形のピークとステップS36で得られた時系列波形のピークとの間の時間差δt’を求め、この時間差δt’を用いて、試料100の屈折率nを下記の数11に従って算出する(ステップS37)。このとき、ステップS31で入力された試料100の厚みD及び参照用試料の厚みD’と屈折率n’を用いる。なお、数11において、cは光速である。
【0096】
【数11】

【0097】
引き続いて、制御・演算処理部7は、集光レンズ11の移動量として、数10で表される値ΔLを演算する(ステップS38)。このとき、ステップS31で入力された試料100の厚みD並びに参照用試料の厚みD’及び屈折率n’と、ステップS37で算出された試料100の屈折率nを用いる。
【0098】
次に、制御・演算処理部7は、ステージ13を制御して、集光レンズ11を現在位置から、ステップS38で得た移動量ΔLだけ移動させて、その位置で集光レンズ11を停止させる(ステップ39)。このとき、ΔLが正であれば、集光レンズ11を試料100の設置位置から遠ざかる方向へ移動させ、ΔLが負であれば、逆方向へ移動させる。
【0099】
その後、制御・演算処理部7は、前述したステップS6〜S8と同様のステップS40〜S42の処理を行い、第4の測定モードを終了する。なお、ステップS41における分光データの作成は、ステップS35のリファレンス測定で得た参照時系列波形、及び、ステップS40の試料測定で得た時系列波形を用いて行い、ステップS36の試料予備測定で得た時系列波形は用いない。
【0100】
この第4の測定モードでは、リファレンス測定において参照用試料を用いているが、前記第3の測定モードと同様に、ステップS25のリファレンス測定においてもステップS28の試料測定においても、テラヘルツパルス光L5のテラヘルツ光検出器6に対する集光状態は、互いに同じように良好な合焦状態となる。したがって、試料100の厚みD及び屈折力nや参照試料の厚みD’及び屈折力n’に起因する測定誤差を低減することができる。
【0101】
第5の測定モードは、リファレンス測定を参照用試料を配置した状態で行い、試料100の屈折率n及び参照用試料の屈折率n’が未知である場合に、試料100の分光データを得る測定モードである。図9及び図10は、第5の測定モードの動作を示す概略フローチャートである。
【0102】
制御・演算処理部7は、入力部15から第5の測定モードが指令されると、その動作を開始し、まず、測定者に試料100の厚みD及び参照用試料の厚みD’の入力を促す表示を表示部14に表示させ、入力部15からそれらが入力される(ステップS51)と、ステージ13を制御して、集光レンズ11を前記基準位置に位置させる(ステップS52)。
【0103】
次に、制御・演算処理部7は、前述したステップS3のリファレンス測定と同様の予備測定を行う(ステップS53)。すなわち、制御・演算処理部7は、試料100がない状態で、テラヘルツパルス光L5の電場強度の時系列波形を取得する。
【0104】
次いで、制御・演算処理部7は、集光レンズ11が前記基準位置に位置した状態のままで、前述したステップS25のリファレンス測定と同様の参照用試料予備測定を行う(ステップS54)。すなわち、制御・演算処理部7は、集光レンズ11が前記基準位置に位置しかつ参照用試料が図4に示す試料100の位置に試料100の代わりに配置された状態で、テラヘルツパルス光L5の電場強度の時系列波形を取得する。
【0105】
その後、制御・演算処理部7は、ステップS53で得られた時系列波形のピークとステップS54で得られた時系列波形のピークとの間の時間差δt”を求め、この時間差δt”を用いて、参照用試料の屈折率n’を下記の数12に従って算出する(ステップS55)。このとき、ステップS51で入力された参照用試料の厚みD’を用いる。なお、数12において、cは光速である。
【0106】
【数12】

【0107】
次に、制御・演算処理部7は、集光レンズ11の移動量として、数9で表される参照用試料に関するずれ量δL’を、数9に従って演算する(ステップS56)。このとき、ステップS51で入力された参照用試料の厚みD’、及び、ステップS55で算出された参照用試料の屈折率n’を用いる。
【0108】
その後、制御・演算処理部7は、ステージ13を制御して、前記基準位置から、ステップS56で得た移動量(ずれ量δL’)だけ、集光レンズ11を参照用試料や試料100の設置位置から遠ざかる方向へ移動させて、その位置で集光レンズ11を停止させる(ステップ57)。
【0109】
引き続いて、制御・演算処理部7は、参照用試料が図4に示す試料100の位置に試料100の代わりに配置された状態でリファレンス測定を行い、テラヘルツパルス光L5の電場強度の時系列波形を取得する(ステップS58)。
【0110】
次に、制御・演算処理部7は、集光レンズ11がステップS57で調整された位置に位置した状態のままで、前述したステップS6の試料測定と同様の試料予備測定を行う(ステップS59)。すなわち、制御・演算処理部7は、集光レンズ11がその位置に位置しかつ試料100が図4に示す位置に配置された状態で、テラヘルツパルス光L5の電場強度の時系列波形を取得する。
【0111】
次いで、制御・演算処理部7は、ステップS58で得られた時系列波形のピークとステップS59で得られた時系列波形のピークとの間の時間差δt’を求め、この時間差δt’を用いて、試料100の屈折率nを数11に従って算出する(ステップS60)。このとき、ステップS31で入力された試料100の厚みD及び参照用試料の厚みD’、並びに、ステップS55で算出された参照用試料の屈折率n’を用いる。
【0112】
引き続いて、制御・演算処理部7は、集光レンズ11の移動量として、数10で表される値ΔLを演算する(ステップS61)。このとき、ステップS51で入力された試料100の厚みD及び参照用試料の厚みD’と、ステップS60で算出された試料100の屈折率n、並びに、ステップS55で算出された参照用試料の屈折率n’を用いる。
【0113】
次に、制御・演算処理部7は、ステージ13を制御して、集光レンズ11を現在位置から、ステップS61で得た移動量ΔLだけ移動させて、その位置で集光レンズ11を停止させる(ステップ62)。このとき、ΔLが正であれば、集光レンズ11を試料100の設置位置から遠ざかる方向へ移動させ、ΔLが負であれば、逆方向へ移動させる。
【0114】
その後、制御・演算処理部7は、前述したステップS6〜S8と同様のステップS63〜S65の処理を行い、第5の測定モードを終了する。なお、ステップS64における分光データの作成は、ステップS58のリファレンス測定で得た参照時系列波形、及び、ステップS63の試料測定で得た時系列波形を用いて行う。
【0115】
この第5の測定モードでは、リファレンス測定において参照用試料を用いているが、前記第3の測定モードと同様に、ステップS25のリファレンス測定においてもステップS28の試料測定においても、テラヘルツパルス光L5のテラヘルツ光検出器6に対する集光状態は、互いに同じように良好な合焦状態となる。したがって、試料100の厚みD及び屈折力nや参照試料の厚みD’及び屈折力n’に起因する測定誤差を低減することができる。
【0116】
以上説明したように、本実施の形態によれば、試料100の厚みD及び屈折力nに起因する測定誤差を低減することができる。
【0117】
また、本実施の形態では、前述したように、試料100の厚みD及び屈折力nに起因する、テラヘルツ光検出器6に対するテラヘルツパルス光L5の集光状態の低下(いわば、ピントのボケ)を、前記第1及び第2の集光光学系のうちの透過光学素子である集光レンズ11の光軸方向の位置を調整することによって、防止し、これにより、試料100の厚みD及び屈折力nに起因する測定誤差を低減している。このように測定誤差低減のために位置調整するものが透過光学素子であるので、その位置調整を行っても、テラヘルツ光発生器3からテラヘルツ光検出器6までの光路長は全く変化せず、リファレンス測定も試料測定も同じ光路長で行うことができ、ポンプ−プローブ法によるテラヘルツパルス光の時系列波形の取得に全く影響がない。したがって、ポンプ−プローブ法によるテラヘルツパルス光の時系列波形の取得に際して、可動鏡4の位置を変えていくときに、リファレンス測定と試料測定とで全く同じようにすることができ、測定誤差低減のための位置調整に連動した量のオフセットを可動鏡の位置に与えるような必要がなくなるという、利点が得られる。
【0118】
さらに、本実施の形態によれば、測定誤差低減のために位置調整するものが集光レンズ11のみであるため、多数の光学素子をブロックとして位置調整を行うような場合に比べて、位置調整機構(本実施の形態では、ステージ13)が小型でかつ安価となるという、利点も得られる。
【0119】
[第2の実施の形態]
【0120】
図12及び図13は、本発明の第2の実施の形態による測定装置の第6及び第7の測定モードの動作をそれぞれ示す概略フローチャートである。
【0121】
本実施の形態が前記第1の実施の形態と異なる所は、前記第1の実施の形態では、制御・演算処理部7が図5乃至図9に示す第1乃至第5の測定モードを行うように構成されているのに対し、本実施の形態では、制御・演算処理部7が図12乃至図13に示す第6及び第7の測定モードを行うように構成されている点のみである。なお、本発明では、第6及び第7の測定モードのいずれか一方のみを行うように制御・演算処理部7を構成してもよい。
【0122】
前記第1の実施の形態では、前述したように、演算により集光レンズ11の移動量を予め求めて集光レンズ11の位置調整を行うのに対し、本実施の形態では、このような演算を行うことなく、テラヘルツ光検出器6に対するテラヘルツパルス光L5の合焦状態が良いほどテラヘルツ光検出器6の検出信号が大きくなるということを利用して、集光レンズ11の位置調整を行う。
【0123】
第6の測定モードは、リファレンス測定を試料100がない状態で行う場合に、試料100の分光データを得る測定モードである。
【0124】
制御・演算処理部7は、入力部15から第6の測定モードが指令されると、その動作を開始し、図12に示すように、まず、前述したステップS2,S3とそれぞれ同じステップS71,S72の処理を行う。
【0125】
次に、制御・演算処理部7は、試料100が図4に示す位置に配置された状態で、光路長可変用ステージ8に制御信号を与えて、前記遅延時間τを徐々に変化させながら、テラヘルツ光検出器6からの検出信号をモニタし(ステップS73)、そのモニタ結果に基づいて、テラヘルツ光検出器6の検出信号が最も大きくなる位置に光路長可変用ステージ8を固定する(ステップS74)。
【0126】
次いで、制御・演算処理部7は、試料100が図4に示す位置に配置された状態で、ステージ13に制御信号を与えて、集光レンズ11の位置を変化させながら、テラヘルツ光検出器6からの検出信号をモニタし(ステップS75)、そのモニタ結果に基づいて、テラヘルツ光検出器6の検出信号が最も大きくなる位置に集光レンズ11を固定する(ステップS76)。
【0127】
その後、制御・演算処理部7は、前述したステップS6〜S8と同様のステップS77〜S79の処理を行い、第6の測定モードを終了する。なお、ステップS78における分光データの作成は、ステップS72のリファレンス測定で得た参照時系列波形、及び、ステップS77の試料測定で得た時系列波形を用いて行う。
【0128】
テラヘルツ光検出器6に対するテラヘルツパルス光L5の合焦状態が良いほどテラヘルツ光検出器6の検出信号が大きくなるので、前記第6の測定モードでは、ステップS72のリファレンス測定においてもステップS77の試料測定においても、テラヘルツパルス光L5のテラヘルツ光検出器6に対する集光状態は、互いに同じように良好な合焦状態となる。したがって、試料100の厚みD及び屈折力nに起因する測定誤差を低減することができる。
【0129】
第7の測定モードは、リファレンス測定を参照用試料を配置した状態で行う場合に、試料100の分光データを得る測定モードである。
【0130】
制御・演算処理部7は、入力部15から第7の測定モードが指令されると、その動作を開始し、図13に示すように、まず、ステージ13を制御して、集光レンズ11を前記基準位置に位置させる(ステップS81)。
【0131】
次に、制御・演算処理部7は、参照用試料が図4に示す試料100の位置に試料100の代わりに配置された状態で、光路長可変用ステージ8に制御信号を与えて、前記遅延時間τを徐々に変化させながら、テラヘルツ光検出器6からの検出信号をモニタし(ステップS82)、そのモニタ結果に基づいて、テラヘルツ光検出器6の検出信号が最も大きくなる位置に光路長可変用ステージ8を固定する(ステップS83)。
【0132】
次いで、制御・演算処理部7は、参照用試料がそのまま配置された状態で、ステージ13に制御信号を与えて、集光レンズ11の位置を変化させながら、テラヘルツ光検出器6からの検出信号をモニタし(ステップS84)、そのモニタ結果に基づいて、テラヘルツ光検出器6の検出信号が最も大きくなる位置に集光レンズ11を固定する(ステップS85)。
【0133】
その後、制御・演算処理部7は、参照用試料がそのまま配置された状態でリファレンス測定を行い、テラヘルツパルス光L5の電場強度の時系列波形を取得する(ステップS86)。
【0134】
次に、制御・演算処理部7は、前述したステップS73〜S79と同様のステップS87〜S93の処理を行い、第7の測定モードを終了する。なお、ステップS92における分光データの作成は、ステップS86のリファレンス測定で得た参照時系列波形、及び、ステップS91の試料測定で得た時系列波形を用いて行う。
【0135】
この第7の測定モードでは、リファレンス測定において参照用試料を用いているが、テラヘルツ光検出器6に対するテラヘルツパルス光L5の合焦状態が良いほどテラヘルツ光検出器6の検出信号が大きくなるので、ステップS86のリファレンス測定においてもステップS91の試料測定においても、テラヘルツパルス光L5のテラヘルツ光検出器6に対する集光状態は、互いに同じように良好な合焦状態となる。したがって、試料100の厚みD及び屈折力nや参照試料の厚みD’及び屈折力n’に起因する測定誤差を低減することができる。
【0136】
本実施の形態によっても、前記第1の実施の形態と同様の利点が得られる。
【0137】
[第3の実施の形態]
【0138】
図14は、本発明の第3の実施の形態による測定装置を模式的に示す概略構成図である。図14において、図4中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0139】
本実施の形態が前記第1の実施の形態と基本的に異なる所は、前記第1の実施の形態では、ステージ13が集光レンズ11の光軸方向位置を調整するようになっているのに対し、本実施の形態では、ステージ13が集光レンズ10の光軸方向位置を調整するようになっている点のみである。
【0140】
なお、本実施の形態では、制御・演算処理部7は、前述した第1乃至第5の測定モードに相当する各測定モードを行うように構成されているが、その代わりに、前述した第6及び第7の測定モードに相当する各測定モードを行うように構成してもよい。本実施の形態の場合は、前述した第1乃至第7の測定モードの説明において、集光レンズ11を集光レンズ10と読み替えられたい。なお、本実施の形態では、集光レンズ10の基準位置は、集光レンズ10の後側焦点が集光レンズ11の前側焦点と一致する位置となる。
【0141】
本実施の形態によっても、前記第1の実施の形態と同様の利点が得られる。
【0142】
[第4の実施の形態]
【0143】
図15は、本発明の第4の実施の形態による測定装置を模式的に示す概略構成図である。図15において、図4中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0144】
本実施の形態が前記第1の実施の形態と基本的に異なる所は、本実施の形態では、集光レンズ10の代わりに放物面鏡21が用いられ、これに伴って、平面鏡22〜25が追加され、各要素が図15に示すように配置されている点のみである。放物面鏡21は、放物面鏡9から入射された平行光束となったテラヘルツパルス光L4を集光させる。本実施の形態では、放物面鏡9,21が、テラヘルツ光発生器3から発生したテラヘルツパルス光を集光させる第1の集光光学系を構成している。試料100の測定部位は、放物面鏡21の焦点付近に配置される。
【0145】
なお、本実施の形態では、制御・演算処理部7は、前述した第1乃至第5の測定モードに相当する各測定モードを行うように構成されているが、その代わりに、前述した第6及び第7の測定モードに相当する各測定モードを行うように構成してもよい。なお、本実施の形態では、集光レンズ11の基準位置は、集光レンズ11の前側焦点が放物面鏡21の焦点と一致する位置となる。
【0146】
本実施の形態によっても、前記第1の実施の形態と同様の利点が得られる。
【0147】
[第5の実施の形態]
【0148】
図16は、本発明の第5の実施の形態による測定装置を模式的に示す概略構成図である。図16において、図4中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0149】
本実施の形態が前記第1の実施の形態と基本的に異なる所は、(i)前記第1の実施の形態では、ステージ13が集光レンズ11の光軸方向位置を調整するようになっているのに対し、本実施の形態では、前記第3の実施の形態と同様にステージ13が集光レンズ10の光軸方向位置を調整するようになっている点と、(ii)本実施の形態では、集光レンズ11の代わりに放物面鏡31が用いられ、これに伴って、平面鏡32,33が追加され、各要素が図16に示すように配置されている点のみである。本実施の形態では、放物面鏡31,12が、第1の集光光学系(本実施の形態では、放物面鏡9及び集光レンズ10)により集光された後に発散するテラヘルツパルス光L5をテラヘルツ光検出器6に集光させる第2の集光光学系を、構成している。
【0150】
なお、本実施の形態では、制御・演算処理部7は、前述した第1乃至第5の測定モードに相当する各測定モードを行うように構成されているが、その代わりに、前述した第6及び第7の測定モードに相当する各測定モードを行うように構成してもよい。本実施の形態の場合は、前述した第1乃至第7の測定モードの説明において、集光レンズ11を集光レンズ10と読み替えられたい。なお、本実施の形態では、集光レンズ10の基準位置は、集光レンズ10の後側焦点が放物面鏡31の焦点と一致する位置となる。
【0151】
本実施の形態によっても、前記第1の実施の形態と同様の利点が得られる。
【0152】
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0153】
例えば、前記第1の実施の形態において、集光レンズ11と試料100の設置位置との間又は集光レンズ11と放物面鏡12との間に、正又は負の比較的小さい屈折力を有する透過光学素子(例えば、凸レンズ又は凹レンズ)を追加し、ステージ13で集光レンズ11の光軸方向位置を調整する代わりに、ステージ13で前記追加した透過光学素子の光軸方向位置を調整するようにしてもよい。
【0154】
また、例えば、第1の実施の形態において、前記第2の集光光学系を、集光レンズ11及び放物面鏡12の代わりに、楕円面鏡及び正又は負の比較的小さい屈折力を有する透過光学素子(例えば、凸レンズ又は凹レンズ)で構成し、ステージ13で集光レンズ11の光軸方向位置を調整する代わりに、ステージ13で前記透過光学素子の光軸方向位置を調整するようにしてもよい。この場合、例えば、前記楕円面鏡の第1焦点が前記集光レンズ10の後側焦点から光軸方向へずれた位置に位置するように前記楕円面鏡を配置し、前記透過光学素子を前記第1焦点と前記楕円面鏡との間に配置し、テラヘルツ光検出器6の有効受光領域を前記楕円面鏡の第2焦点に配置すればよい。
【0155】
また、前述した各実施の形態は、本発明を時系列変換テラヘルツ分光装置に適用した例であるが、本発明は、他のテラヘルツ分光装置や、テラヘルツ光を用いたその他の測定装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】試料がない場合の、従来の測定装置における第2及び第3の放物面鏡の付近のテラヘルツパルス光の様子を模式的に示す図である。
【図2】試料を配置した場合の、従来の測定装置における第2及び第3の放物面鏡の付近のテラヘルツパルス光の様子を模式的に示す図である。
【図3】図2中の試料付近のテラヘルツパルス光の光線の様子を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態による測定装置を模式的に示す概略構成図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態による測定装置の第1の測定モードの動作を示す概略フローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施の形態による測定装置の第2の測定モードの動作を示す概略フローチャートである。
【図7】本発明の第1の実施の形態による測定装置の第3の測定モードの動作を示す概略フローチャートである。
【図8】本発明の第1の実施の形態による測定装置の第4の測定モードの動作を示す概略フローチャートである。
【図9】本発明の第1の実施の形態による測定装置の第5の測定モードの動作を示す概略フローチャートである。
【図10】図9に引き続く概略フローチャートである。
【図11】リファレンス測定で得られる時系列波形及び試料予備測定で得られる時系列波形の例を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態による測定装置の第6の測定モードの動作を示す概略フローチャートである。
【図13】本発明の第2の実施の形態による測定装置の第7の測定モードの動作を示す概略フローチャートである。
【図14】本発明の第3の実施の形態による測定装置を模式的に示す概略構成図である。
【図15】図15は、本発明の第4の実施の形態による測定装置を模式的に示す概略構成図である。
【図16】本発明の第5の実施の形態による測定装置を模式的に示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0157】
1 フェムト秒パルス光源
2 ビームスプリッタ
3 テラヘルツ光発生器
4 可動鏡
6 テラヘルツ光検出器
7 制御・演算処理部
8 光路長可変用ステージ
9,12 放物面鏡
10,11 集光レンズ
13 ステージ(位置調整機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テラヘルツパルス光を発生するテラヘルツ光発生器と、テラヘルツパルス光を検出するテラヘルツ光検出器と、前記テラヘルツ光発生器から発生したテラヘルツパルス光を集光させる第1の集光光学系と、前記第1の集光光学系により集光された後に発散するテラヘルツパルス光を前記テラヘルツ光検出器に集光させる第2の集光光学系と、を備え、試料が前記第1の集光光学系による前記テラヘルツパルス光の集光位置付近に配置されて、前記試料を透過したテラヘルツパルス光が前記テラヘルツ光検出器により検出される測定装置であって、
前記第1及び第2の集光光学系のうちの少なくとも一方の集光光学系が、正又は負の屈折力を有する少なくとも1つの光学素子を含み、
前記少なくとも1つの光学素子の光軸方向位置を調整する位置調整機構を備えたことを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記試料を透過したテラヘルツパルス光が前記テラヘルツ光検出器に合焦する方向に前記位置調整機構を制御する制御部を、備えたことを特徴とする請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記試料の厚みと屈折率とに応じて前記位置調整機構を制御することを特徴とする請求項1又は2記載の測定装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記試料を透過したテラヘルツパルス光の前記テラヘルツ光検出器に対する合焦状態が、前記試料がない場合の前記テラヘルツ光検出器に対するテラヘルツパルス光の合焦状態と同じになるように、前記位置調整機構を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の測定装置。
【請求項5】
前記テラヘルツ光発生器は、自身に入射されるポンプパルス光に応答してテラヘルツパルス光を発生し、
前記テラヘルツ光検出器は、自身に入射されるプローブパルス光に応答してテラヘルツパルス光を検出し、
前記ポンプパルス光の光路の光路長と前記プローブパルス光の光路の光路長とを相対的に変え得るようにする光路長可変部を、備えたことを特徴とする請求項1記載の測定装置。
【請求項6】
前記テラヘルツ光発生器は、自身に入射されるポンプパルス光に応答してテラヘルツパルス光を発生し、
前記テラヘルツ光検出器は、自身に入射されるプローブパルス光に応答してテラヘルツパルス光を検出し、
前記ポンプパルス光の光路の光路長と前記プローブパルス光の光路の光路長とを相対的に変え得るようにする光路長可変部を、備えたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の測定装置。
【請求項7】
前記試料がない状態で、前記光路長可変部により前記ポンプパルス光の前記光路の光路長と前記プローブパルス光の光路の光路長とを相対的に変えながら得られる前記テラヘルツ光検出器からの検出信号に基づいて、前記テラヘルツ光検出器に入射するテラヘルツパルス光の電場強度の時系列波形を得る第1の時系列波形取得手段と、
前記試料が前記第1の集光光学系による前記テラヘルツパルス光の集光位置付近に配置された状態で、前記光路長可変部により前記ポンプパルス光の前記光路の光路長と前記プローブパルス光の光路の光路長とを相対的に変えながら得られる前記テラヘルツ光検出器からの検出信号に基づいて、前記テラヘルツ光検出器に入射するテラヘルツパルス光の電場強度の時系列波形を得る第2の時系列波形取得手段と、
前記第1の時系列波形取得手段により得られた時系列波形のピークと前記第2の時系列波形取得手段により得られた時系列波形のピークとの間の時間差に基づいて、前記少なくとも1つの光学素子の移動量を演算する演算手段と、
を備え、
前記制御部は、前記演算手段により得られた移動量に従って前記位置調整機構を制御することを特徴とする請求項6記載の測定装置。
【請求項8】
前記試料の代わりに参照用試料が前記第1の集光光学系による前記テラヘルツパルス光の集光位置付近に配置された状態で、前記光路長可変部により前記ポンプパルス光の前記光路の光路長と前記プローブパルス光の光路の光路長とを相対的に変えながら得られる前記テラヘルツ光検出器からの検出信号に基づいて、前記テラヘルツ光検出器に入射するテラヘルツパルス光の電場強度の時系列波形を得る第1の時系列波形取得手段と、
前記試料が前記第1の集光光学系による前記テラヘルツパルス光の集光位置付近に配置された状態で、前記光路長可変部により前記ポンプパルス光の前記光路の光路長と前記プローブパルス光の光路の光路長とを相対的に変えながら得られる前記テラヘルツ光検出器からの検出信号に基づいて、前記テラヘルツ光検出器に入射するテラヘルツパルス光の電場強度の時系列波形を得る第2の時系列波形取得手段と、
前記第1の時系列波形取得手段により得られた時系列波形のピークと前記第2の時系列波形取得手段により得られた時系列波形のピークとの間の時間差に基づいて、前記少なくとも1つの光学素子の移動量を演算する演算手段と、
を備え、
前記制御部は、前記演算手段により得られた移動量に従って前記位置調整機構を制御することを特徴とする請求項6記載の測定装置。
【請求項9】
前記制御手段は、(i)前記試料が前記第1の集光光学系による前記テラヘルツパルス光の集光位置付近に配置された状態で、前記光路長可変部により前記ポンプパルス光の前記光路の光路長と前記プローブパルス光の光路の光路長とを相対的に変えながら得られる前記テラヘルツ光検出器からの検出信号をモニタし、そのモニタ結果に基づいて、前記光路長可変部により前記各光路の光路長を当該検出信号が最大となるような光路長に固定し、(ii)この固定状態において、前記位置調整機構により前記光学素子を移動させながら得られる前記テラヘルツ光検出器からの検出信号をモニタし、そのモニタ結果に基づいて、当該検出信号が最大となるような位置に前記光学素子が位置するように前記位置調整機構を制御することを特徴とする請求項6記載の測定装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの光学素子は、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、石英、サファイア、シリコン、ガリウム砒素、MgO、Ge及びダイヤモンドのうちのいずれかの材料で構成されたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−133178(P2006−133178A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325264(P2004−325264)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(592171153)株式会社栃木ニコン (34)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】