説明

測定装置

【課題】被測定面の形状を高精度に測定することができる技術を提供する。
【解決手段】被測定面の形状を測定する測定装置であって、前記被測定面に接触する接触部材を含むプローブを保持するプローブハウジングと、前記被測定面に対する位置及び姿勢が固定され、前記被測定面の形状を測定するための基準となる基準ミラーと、前記基準ミラーと前記プローブとの間の第1距離を測定する第1距離測定部と、前記プローブハウジングと前記プローブとの間の第2距離を測定する第2距離測定部と、前記第2距離測定部で測定される前記第2距離が一定距離となるように前記プローブハウジングを駆動させながら前記第1距離測定部で測定される前記第1距離から前記接触部材の位置を特定し、当該接触部材の位置に基づいて前記被測定面の形状を算出する処理部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定面の形状を測定する測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズやミラーなどの被測定面にプローブを接触させながら、かかるプローブを駆動(走査)することで被測定面の形状を測定する測定装置が提案されている(特許文献1参照)。このような測定装置では、被測定面及びXYZステージはベースに固定され、プローブはXYZステージに取り付けられたプローブハウジングに保持されている。また、プローブハウジングには、ベースに対するプローブハウジングの位置及び姿勢を測定する第1干渉計、及び、プローブハウジングに対するプローブの位置及び姿勢を測定する第2干渉系が設けられている。そして、第1干渉計で測定されたベースに対するプローブハウジングの位置及び姿勢{P}と第2干渉計で測定されたプローブハウジングに対するプローブの位置及び姿勢{Q}との和({P}+{Q})をベースに対するプローブの位置{R}として求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−25024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術から求まるプローブの位置{R}には、第1干渉計の測定誤差{δP}と第2干渉計の測定誤差{δQ}とが誤差{δR}(=δP+δR)として含まれてしまうため、被測定面の形状を高精度に測定することができない。
【0005】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、被測定面の形状を高精度に測定することができる技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての測定装置は、被測定面の形状を測定する測定装置であって、前記被測定面に接触する接触部材を含むプローブを保持するプローブハウジングと、前記被測定面に対する位置及び姿勢が固定され、前記被測定面の形状を測定するための基準となる基準ミラーと、前記プローブに対する位置及び姿勢が固定された第1部材と前記基準ミラーとの間の距離を測定することで前記基準ミラーと前記プローブとの間の第1距離を測定する第1距離測定部と、前記プローブに対する位置及び姿勢が固定された第2部材と前記プローブハウジングとの間の距離を測定することで前記プローブハウジングと前記プローブとの間の第2距離を測定する第2距離測定部と、前記第2距離測定部で測定される前記第2距離が一定距離となるように前記プローブハウジングを駆動させながら前記第1距離測定部で測定される前記第1距離から前記接触部材の位置を特定し、当該接触部材の位置に基づいて前記被測定面の形状を算出する処理部と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、被測定面の形状を高精度に測定する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態における測定装置の構成を示す図である。
【図2】Z1干渉計、X1干渉計、X2干渉計、Y1干渉計及びY2干渉計として用いられる干渉計の構成を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施形態における測定装置の構成を示す図である。
【図4】ターゲットベースの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態における測定装置100の構成を示す図である。測定装置100は、光学素子や金型などの被測定物の被測定面の形状(表面形状)を測定する3次元測定装置である。
【0012】
測定装置100では、図1に示すように、床1の上に除振台2が設けられ、除振台2の上にベース3が配置されている。これにより、床1の微小振動は減衰し、ベース3までは伝わらない。ベース3は、被測定物4を保持する保持面3aを有する。また、ベース3には、被測定物4の被測定面4aに対する位置及び姿勢が固定され、被測定面4aの形状を測定するための基準となるX軸基準ミラー5、Y軸基準ミラー(不図示)及びZ軸基準ミラー6が設けられている。本実施形態では、X軸基準ミラー5及びY軸基準ミラーのそれぞれは、被測定面4aの形状を測定する際の水平方向(X軸方向及びY軸方向)の測定基準となり、Z軸基準ミラー6は、被測定面4aの形状を測定する際の鉛直方向(Z軸方向)の測定基準となる。
【0013】
測定装置100は、プローブハウジング12を駆動する駆動部として、Xステージ7、Yステージ8及びZステージ9を有する。Xステージ7は、ベース3(保持面3a)の上に配置され、X軸方向に移動可能に構成されている。Yステージ8は、Xステージ7の上に配置され、Y軸方向に移動可能に構成されている。Zステージ9は、Yステージ8の上に配置され、Z軸方向に移動可能に構成されている。Xステージ7、Yステージ8及びZステージ9で構成される駆動部は、プローブハウジング12(即ち、プローブハウジング12が保持するプローブPB)をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の3次元方向に駆動することができる。
【0014】
プローブPBは、プローブシャフト10と、プローブシャフト10の先端に設けられたプローブ球11とを含む接触式プローブである。なお、接触式プローブは、触針、触針子、フィラーなどと呼ばれることもある。プローブ球11は、被測定面4aの形状を測定する際に、被測定面4aに接触する接触部材である。プローブハウジング12は、アーム13を介して、Zステージ9に固定されている。プローブハウジング12は、弾性部材14及び15を介して、プローブシャフト10(プローブPB)を保持する。弾性部材14及び15は、例えば、板バネで構成される。弾性部材14及び15を構成する板バネの剛性と間隔とを適当に選択することで、プローブPBのZ軸並進方向、X軸周りの回転方向及びY軸周りの回転方向の剛性を低く、プローブPBのX軸並進方向及びY軸並進方向の剛性を高く設定することができる。
【0015】
測定装置100では、主に、2つの目的でプローブPB(プローブ球11)の位置を測定(特定)する。第1の目的は、被測定面4aとプローブ球11との相対的な位置関係から被測定面4aの形状を算出するためである。第2の目的は、被測定面4aに対するプローブ球11の接触力を保証するためである。例えば、プローブ球11の接触力が変わると、プローブ球11の変形量やプローブシャフト10のたわみ量が変化して測定誤差が生じてしまう。
【0016】
第1の目的に対して、本実施形態では、プローブハウジング12に設けられた干渉計(第1距離測定部)を用いて、ベース3に設けられたX軸基準ミラー5、Y軸基準ミラー及びZ軸基準ミラー6とプローブPBとの間の距離(第1距離)を測定する。また、第2の目的に対して、本実施形態では、プローブハウジング12に設けられた変位計(第2距離測定部)を用いて、プローブハウジング12とプローブPBとの間の距離(第2距離)を測定する。測定装置100は、従来技術と異なり、X軸基準ミラー5、Y軸基準ミラー及びZ軸基準ミラー6に対するプローブPBの位置(基準ミラーとプローブとの間の距離)を直接測定しているため、プローブPBの位置を高精度に求めることができる。以下では、X軸基準ミラー5、Y軸基準ミラー及びZ軸基準ミラー6とプローブPBとの間の距離の測定を「座標測定」と称し、プローブハウジング12とプローブPBとの間の距離の測定を「接触変位測定」と称する。
【0017】
本実施形態では、ナノメートルオーダーの測定精度を有する干渉計(レーザ測長器)を用いて、座標測定を5軸測定で行う。これは、プローブ球11の位置を干渉計で直接測定することは非常に困難であるため、アッベの条件を満たさないプローブシャフト10の部分に設けた干渉計用ミラーの位置を測定する必要があるからである。但し、プローブシャフト10が延在する方向、即ち、プローブPBの測定軸(プローブ軸、本実施形態では、Z軸)周りの回転(θz)はプローブ球11の位置を求める際に誤差にならないため、座標測定を6軸測定で行う必要はなく、5軸測定で行えばよい。
【0018】
また、本実施形態では、マイクロメートルオーダーの測定精度(干渉計の測定精度よりも低い測定精度)を有する変位計(例えば、静電容量センサ)を用いて、接触変位測定を3軸測定で行う。測定装置100では、プローブ球11の接触変位が所定量になるように、被測定面4aに対するプローブ球11の接触力を一定に制御する必要がある。上述したように、プローブ球11の接触力が変わると、プローブ球11の変形量やプローブシャフト10のたわみ量が変化して測定誤差が生じてしまう。
【0019】
例えば、長さ20mm、直径1mmの鉄製のプローブシャフトの先端に直径1mmの鉄製のプローブ球を設け、かかるプローブ球を被測定面に0.3mNの接触力で接触させる場合を考える。この場合、プローブ球11の接触変位が所定量から1μmずれたとすると、プローブ球の変形量の変化は0.2nm程度、プローブシャフトのたわみ量の変化は0.7nm程度であり、十分に小さい。従って、接触変位測定は、マイクロメートルオーダーの測定精度でよい。更に、プローブの回転中心を設定し、かかる回転中心をシミュレーションや原器測定による校正などで保証した上で3軸測定を行えば、マイクロメートルオーダーの測定精度を満たすことができるため、5軸測定を行う必要はない。
【0020】
上述したように、測定装置100は、座標測定によって、被測定面の形状の測定精度の高精度化を実現している。また、測定装置100は、座標測定と接触変位測定とを独立して行うことで、接触変位測定で必要とする測定精度の緩和及び測定軸の低減を実現している。以下、測定装置100における座標測定のための干渉計や接触変位測定のための変位計の具体的な構成について説明する。
【0021】
プローブシャフト10には、プローブPBに対する位置及び姿勢が固定され、各基準ミラーとプローブPBとの間の距離を測定するためのミラーキューブ(第1部材)16及び17が設けられている。ミラーキューブ16は、Z軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに、Z1干渉計20、X1干渉計21及びY1干渉計(不図示)の干渉計用ミラーとして機能するミラー面(反射面)を有する。また、ミラーキューブ16には、Z軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに、プローブハウジング12とプローブPBとの間の距離を測定するためのZターゲット18、Xターゲット19及びYターゲット(不図示)が設けられている。なお、Zターゲット18、Xターゲット19及びYターゲットのそれぞれは、Z変位計23、X変位計24及びY変位計(不図示)のターゲット(第2部材)として機能する。ミラーキューブ17は、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに、X2干渉計22及びY2干渉計(不図示)の干渉計用ミラーとして機能するミラー面(反射面)を有する。
【0022】
Z1干渉計20、X1干渉計21、X2干渉計22、Y1干渉計及びY2干渉計は、プローブハウジング12に保持(固定)される。Z1干渉計20は、Z軸基準ミラー6とミラーキューブ16との間の距離を直接測定する。X1干渉計21は、X軸基準ミラー5とミラーキューブ16との間の距離を直接測定し、X2干渉計22は、X軸基準ミラー5とミラーキューブ17との間の距離を直接測定する。Y1干渉計は、Y軸基準ミラーとミラーキューブ16との間の距離を直接測定し、Y2干渉計は、Y軸基準ミラーとミラーキューブ17との間の距離を直接測定する。
【0023】
このように、本実施形態では、各基準ミラーとプローブPBとの間の距離を測定する第1距離測定部として、Z1干渉計20、X1干渉計21、X2干渉計22、Y1干渉計及びY2干渉計を含む。Z1干渉計20は、プローブPBの測定軸と平行な第1軸方向(Z軸方向)に沿った距離を測定する1つの測定部として機能する。また、X1干渉計21及びX2干渉計22は、第1軸方向に直交する第2軸方向(X軸方向)に沿った距離を測定する2つの測定部として機能する。また、Y1干渉計及びY2干渉計は、第1軸方向及び第2軸方向に直交する第3軸方向(Y軸方向)に沿った距離を測定する2つの測定部として機能する。
【0024】
Z変位計23、X変位計24及びY変位計は、プローブハウジング12に保持(固定)される。Z変位計23は、プローブハウジング12とZターゲット18との間の距離を測定する。X変位計24は、プローブハウジング12とXターゲット19との間の距離を測定する。Y変位計は、プローブハウジング12とYターゲットとの間の距離を測定する。
【0025】
このように、本実施形態では、プローブハウジング12とプローブPBとの間の距離を測定する第2距離測定部として、Z変位計23、X変位計24及びY変位計を含む。Z変位計23は、第1軸方向(Z軸方向)に沿った距離を測定する1つの測定部として機能する。また、X変位計24は、第2軸方向(X軸方向)に沿った第2距離を測定する1つの測定部として機能する。また、Y変位計は、第3軸方向(Y軸方向)に沿った距離を測定する1つの測定部として機能する。
【0026】
図2は、Z1干渉計20、X1干渉計21、X2干渉計22、Y1干渉計及びY2干渉計として用いられる干渉計200の構成を示す図である。干渉計200は、ヘテロダイン方式を採用したダブルパスタイプの干渉計である。
【0027】
ヘテロダイン光源201は、周波数fのP偏光の光束(点線)と、周波数fからわずかにシフトした周波数f’のS偏光の光束(実線)とを射出する。ヘテロダイン光源201から射出された各偏光の光束は、共通光路を通って偏光ビームスプリッタ202に導光される。
【0028】
P偏光の光束は、偏光ビームスプリッタ202を透過し、コーナーキューブ203で反射され、偏光ビームスプリッタ202を再び透過して、参照光として射出する。
【0029】
一方、S偏光の光束は、偏光ビームスプリッタ202で反射され、λ/4波長板204を透過して円偏光に変換され、ミラーキューブ206で反射されてλ/4波長板204を再び透過してP偏光に変換され、偏光ビームスプリッタ202を透過する。偏光ビームスプリッタ202を透過した光束は、λ/4波長板205を透過して円偏光に変換され、基準ミラー207で反射されてλ/4波長板205を再び透過してS偏光に変換され、偏光ビームスプリッタ202で反射される。偏光ビームスプリッタ202を反射した光束は、コーナーキューブ203で反射され、偏光ビームスプリッタ202で再び反射され、同様に、ミラーキューブ206及び基準ミラー207で反射される。基準ミラー207を反射した光束は、偏光ビームスプリッタ202で反射され、被検光として射出する。
【0030】
参照光と被検光とは干渉して干渉光を形成する。かかる干渉光は、検出器208によって、基準ミラー207とミラーキューブ206との間の相対距離情報を有する計測ビート信号として検出される。また、ヘテロダイン光源201では、図示しない検出器によって、基準ビート信号が検出される。このようにして検出された計測ビート信号及び基準ビート信号を用いて、解析部209は、基準ミラー207とミラーキューブ206との間の距離を算出する。
【0031】
ここで、例えば、干渉計200をX1干渉計21に置き換えて考えると、基準ミラー207がX軸基準ミラー5に相当し、ミラーキューブ206がミラーキューブ16に相当する。従って、X1干渉計21がX軸基準ミラー5とミラーキューブ16との間の距離(基準ミラー207とミラーキューブ206との間の距離に相当)を測定できることが理解されるであろう。なお、干渉計200をZ1干渉計20、X2干渉計22、Y1干渉計又はY2干渉計に置き換えて考えれば、Z1干渉計20、X2干渉計22、Y1干渉計及びY2干渉計も同様に、各基準ミラーとミラーキューブとの間の距離を測定できることは言うまでもない。
【0032】
処理部50において、Z1干渉計20、X1干渉計21、X2干渉計22、Y1干渉計及びY2干渉計の出力(測定結果)からプローブ球11の位置が特定される。例えば、Z1干渉計20の出力をz1、X1干渉計21の出力をx1、X2干渉計22の出力をx2、Y1干渉計の出力をy1、Y2干渉計の出力をy2とする。また、X1干渉計21とX2干渉計22とのZ軸方向に沿った間隔、及び、Y1干渉計とY2干渉計とのZ軸方向に沿った間隔をL1とし、X2干渉計22とプローブ球11とのZ軸方向に沿った間隔をL2とする。この場合、プローブPBの傾き(ωX、ωY)及びプローブ球11の中心座標(X、Y、Z)は、以下の式で表される。
【0033】
ωX=(y2−y1)/L1
ωY=(x2−x1)/L1
X=x1+(x2−x1)×(L1+L2)/L1
Y=y1+(y2−y1)×(L1+L2)/L1
Z=z1−(L1+L2)×(1−cos(ωX))×(1−cos(ωY))
【0034】
また、処理部50では、Z変位計23、X変位計24及びY変位計の出力(測定結果)から、被測定面4aに対するプローブ球11の接触力も算出される。例えば、プローブPBのZ軸方向の剛性をKz、プローブPBのX軸方向の剛性をKx、プローブPBのY軸方向の剛性をKyとする。また、プローブ球11を被測定面4aに接触させていないときの各変位計の出力に対して、プローブ球11を被測定面4aに接触させたときの各変位計の出力変化をΔで表すものとする。ここでは、Z変位計23の出力変化をΔzm、X変位計24の出力変化をΔxm、Y変位計の出力変化をΔymとする。
【0035】
Kzに関しては、プローブ球11に対してZ軸方向に既知の力を加えたときのプローブ球11(プローブPB)のZ軸方向の移動量ΔZmから求めることができる。Kxに関しては、プローブ球11に対してX軸方向に既知の力を加えたときのプローブ球11(プローブPB)のX軸方向の移動量ΔXmから求めることができる。Kyに関しては、プローブ球11に対してY軸方向に既知の力を加えたときのプローブ球11(プローブPB)のY軸方向の移動量ΔYmから求めることができる。
【0036】
従って、プローブ球11を被測定面4aに接触させたときの接触力ベクトル{Fn}は、以下の式で表される。
{Fn}={Kx×Δxm、Ky×Δym、Kz×Δzm}
被測定面4aに対するプローブ球11の接触力の目標値をF0とすると、接触力偏差ベクトル{F1}は、以下の式で表される。
{F1}=(|{Fn}|−F0)×({Fn}/|{Fn}|)
測定装置100では、接触力偏差ベクトル{F1}がゼロとなるように、被測定面4aにプローブ球11を接触させながらプローブPBを駆動(走査)する。これにより、被測定面4aに対するプローブ球11の接触力(即ち、プローブハウジング12とプローブPBとの間の距離)を一定にすることができる。
【0037】
処理部50は、各変位計で測定されるプローブハウジング12と各ターゲットとの間の距離(プローブハウジング12とプローブPBとの間の距離)が一定距離となるように、プローブPBを保持するプローブハウジング12を駆動させる。また、処理部50は、各干渉計で測定される各基準ミラーと各ミラーキューブとの間の距離(各基準ミラーとプローブPBとの間の距離)から、上述したように、プローブ球11の位置を特定する。そして、処理部50は、特定したプローブ球11の位置に基づいて、被測定面4aの形状を算出する。なお、プローブ球11の位置から被測定面4aの形状を算出する方法には、当業界で周知のいかなる方法をも適用することができるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0038】
このように、本実施形態の測定装置100は、各基準ミラーとプローブPBとの間の距離を直接測定しているため、プローブ球11(プローブPB)の位置を高精度に特定することが可能であり、被測定面4aの形状を高精度に測定することができる。
【0039】
<第2の実施形態>
図3は、本発明の第2の実施形態における測定装置100Aの構成を示す図である。測定装置100Aは、測定装置100と同じ測定原理で構成されているが、干渉計や変位計の配置が異なる。測定装置100Aは、測定装置100と比較して、プローブPBを保持する際の設計自由度の向上及びプローブPBの軽量化を実現している。
【0040】
プローブシャフト10には、ターゲットベース301が設けられている。図4は、ターゲットベース301の構成を示す図であって、ターゲットベース301をZ軸方向から示している。ターゲットベース301には、図4に示すように、プローブPBに対する位置及び姿勢が固定され、各基準ミラーとプローブPBとの間の距離を測定するためのミラーキューブ302が設けられている。ミラーキューブ302は、その中心がプローブPBの測定軸(プローブ軸)と一致し、Z軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに、Z1干渉計20、X1干渉計21及びY1干渉計(不図示)の干渉計用ミラーとして機能するミラー面(反射面)を有する。また、ターゲットベース301には、プローブPBに対する位置及び姿勢が固定され、Z2干渉計309及びZ3干渉計(不図示)のそれぞれの干渉計用ミラーとして機能するZ2ミラー303及びZ3ミラー304が設けられている。Z2ミラー303は、プローブPBの測定軸に対してX軸+方向に配置され、Z3ミラー304は、プローブPBの測定軸に対してY軸+方向に配置されている。
【0041】
また、ミラーキューブ302の上面には、プローブPBに対する位置及び姿勢が固定され、プローブハウジング12とプローブPBとの間の距離を測定するためのZm1ターゲット305が設けられている。Zm1ターゲット305は、Zm1変位計310のターゲットとして機能する。また、ターゲットベース301には、プローブPBに対する位置及び姿勢が固定され、プローブハウジング12とプローブPBとの間の距離を測定するためのZm2ターゲット306及びZm3ターゲット307が設けられている。Zm2ターゲット306は、プローブPBの測定軸に対してX軸−方向に配置され、Zm2変位計311のターゲットとして機能する。Zm3ターゲット307は、プローブPBの測定軸に対してY軸−方向に配置され、Zm3変位計(不図示)のターゲットとして機能する。
【0042】
Z1干渉計20、Z2干渉計309、Z3干渉計、X1干渉計21及びY1干渉計は、プローブハウジング12に保持(固定)される。Z1干渉計20は、Z軸基準ミラー6とミラーキューブ302との間の距離を直接測定する。Z2干渉計309は、Z軸基準ミラー6とZ2ミラー303との間の距離を直接測定する。Z3干渉計は、Z軸基準ミラー6とZ3ミラー304との間の距離を直接測定する。X1干渉計21は、X軸基準ミラー5とミラーキューブ302との間の距離を直接測定する。Y1干渉計は、Y軸基準ミラーとミラーキューブ302との間の距離を直接測定する。
【0043】
このように、本実施形態では、各基準ミラーとプローブPBとの間の距離を測定する第1距離測定部として、Z1干渉計20、Z2干渉計309、Z3干渉計、X1干渉計21及びY1干渉計を含む。Z1干渉計20、Z2干渉計309及びZ3干渉計は、プローブPBの測定軸と平行な第1軸方向(Z軸方向)に沿った距離を測定する3つの測定部として機能する。また、X1干渉計21は、第1軸方向に直交する第2軸方向(X軸方向)に沿った距離を測定する1つの測定部として機能する。また、Y1干渉計は、第1軸方向及び第2軸方向に直交する第3軸方向(Y軸方向)に沿った距離を測定する1つの測定部として機能する。
【0044】
Zm1変位計310、Zm2変位計311及びZm3変位計は、プローブハウジング12に保持(固定)される。Zm1変位計310は、プローブハウジング12とZm1ターゲット305との間の距離を測定する。Zm2変位計311は、プローブハウジング12とZm2ターゲット306との間の距離を測定する。Zm3変位計は、プローブハウジング12とZm3ターゲット307との間の距離を測定する。
【0045】
このように、本実施形態では、プローブハウジング12とプローブPBとの間の距離を測定する第2距離測定部として、Zm1変位計310、Zm2変位計311及びZm3変位計を含む。Zm1変位計310、Zm2変位計311及びZm3変位計は、第1軸方向(Z軸方向)に沿った距離を測定する3つの測定部として機能する。
【0046】
処理部50において、Z1干渉計20、Z2干渉計309、Z3干渉計、X1干渉計21及びY1干渉計の出力(測定結果)からプローブ球11の位置が特定される。例えば、Z1干渉計20の出力をz1、Z2干渉計309の出力をz2、Z3干渉計の出力をz3、X1干渉計21の出力をx1、Y1干渉計の出力をy1とする。また、Z1干渉計20とZ2干渉計309とのX軸方向に沿った間隔、及び、Z1干渉計20とZ3干渉計とのY軸方向に沿った間隔をL1とする。また、X1干渉計22とプローブ球11とのZ軸方向に沿った間隔、及び、Y1干渉計とプローブ球11とのZ軸方向に沿った間隔をL2とする。この場合、プローブPBの傾き(ωX、ωY)及びプローブ球11の中心座標(X、Y、Z)は、以下の式で表される。
【0047】
ωX=(z3−z1)/L1
ωY=(z2−z1)/L1
X=x1+L2×tan(ωY)
Y=y1+L2×tan(ωX)
Z=z1−L2×(1−cos(ωX))×(1−cos(ωY))
【0048】
また、処理部50では、Zm1変位計310、Zm2変位計311及びZm3変位計の出力(測定結果)から、被測定面4aに対するプローブ球11の接触力も算出される。例えば、プローブPBのZ軸方向の剛性をKz、プローブPBのX軸方向の剛性をKx、プローブPBのY軸方向の剛性をKyとする。また、プローブ球11を被測定面4aに接触させていないときの各変位計の出力に対して、プローブ球11を被測定面4aに接触させたときの各変位計の出力変化をΔで表すものとする。ここでは、Zm1変位計310の出力変化をΔzm1、Zm2変位計311の出力変化をΔzm2、Zm3変位計の出力変化をΔzm3とする。
【0049】
Kzに関しては、プローブ球11に対してZ軸方向に既知の力を加えたときのZm1変位計310の出力変化から求めることができる。Kxに関しては、プローブ球11に対してX軸方向に既知の力を加えたときのZm2変位計311の出力変化から求めることができる。Kyに関しては、プローブ球11に対してY軸方向に既知の力を加えたときのZm3変位計の出力変化から求めることができる。
【0050】
従って、プローブ球11を被測定面4aに接触させたときの接触力ベクトル{Fn}は、以下の式で表される。
{Fn}={Kx×Δzm2、Ky×Δzm3、Kz×Δzm1}
被測定面4aに対するプローブ球11の接触力の目標値をF0とすると、接触力偏差ベクトル{F1}は、以下の式で表される。
{F1}=(|{Fn}|−F0)×({Fn}/|{Fn}|)
測定装置100Aでは、接触力偏差ベクトル{F1}がゼロとなるように、被測定面4aにプローブ球11を接触させながらプローブPBを駆動(走査)する。これにより、被測定面4aに対するプローブ球11の接触力(即ち、プローブハウジング12とプローブPBとの間の距離)を一定にすることができる。
【0051】
処理部50は、各変位計で測定されるプローブハウジング12と各ターゲットとの間の距離(プローブハウジング12とプローブPBとの間の距離)が一定距離となるように、プローブPBを保持するプローブハウジング12を駆動させる。また、処理部50は、各干渉計で測定される各基準ミラーと各ミラーキューブとの間の距離(各基準ミラーとプローブPBとの間の距離)から、上述したように、プローブ球11の位置を特定する。そして、処理部50は、特定したプローブ球11の位置に基づいて、被測定面4aの形状を算出する。
【0052】
このように、本実施形態の測定装置100Aは、各基準ミラーとプローブPBとの間の距離を直接測定しているため、プローブ球11(プローブPB)の位置を高精度に特定することが可能であり、被測定面4aの形状を高精度に測定することができる。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、各基準ミラーとプローブとの間の距離を測定する干渉計の配置は、第1の実施形態に示す配置及び第2の実施形態に示す配置に限定されるものではない。具体的には、プローブの測定軸と平行な第1軸方向(Z軸方向)に沿った距離を測定する2つの測定部として、Z1干渉計及びZ2干渉計を配置することも可能である。この場合には、第1軸方向に直交する第2軸方向(X軸)に沿った距離を測定する2つの測定部としてX1干渉計及びX2干渉計、第1軸方向及び第2軸方向に直交する第3軸方向(Y軸)に沿った距離を測定する1つの測定部としてY1干渉計を配置すればよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定面の形状を測定する測定装置であって、
前記被測定面に接触する接触部材を含むプローブを保持するプローブハウジングと、
前記被測定面に対する位置及び姿勢が固定され、前記被測定面の形状を測定するための基準となる基準ミラーと、
前記プローブに対する位置及び姿勢が固定された第1部材と前記基準ミラーとの間の距離を測定することで前記基準ミラーと前記プローブとの間の第1距離を測定する第1距離測定部と、
前記プローブに対する位置及び姿勢が固定された第2部材と前記プローブハウジングとの間の距離を測定することで前記プローブハウジングと前記プローブとの間の第2距離を測定する第2距離測定部と、
前記第2距離測定部で測定される前記第2距離が一定距離となるように前記プローブハウジングを駆動させながら前記第1距離測定部で測定される前記第1距離から前記接触部材の位置を特定し、当該接触部材の位置に基づいて前記被測定面の形状を算出する処理部と、
を有することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記第1距離測定部は、前記第1距離を5軸測定することを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記第1距離測定部は、
前記プローブの測定軸と平行な第1軸方向に沿った前記第1距離を測定する1つの測定部と、
前記第1軸方向に直交する第2軸方向に沿った前記第1距離を測定する2つの測定部と、
前記第1軸方向及び前記第2軸方向に直交する第3軸方向に沿った前記第1距離を測定する2つの測定部と、
を含み、
前記第2距離測定部は、
前記第1軸方向に沿った前記第2距離を測定する1つの測定部と、
前記第2軸方向に沿った前記第2距離を測定する1つの測定部と、
前記第3軸方向に沿った前記第2距離を測定する1つの測定部と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項4】
前記第1距離測定部は、
前記プローブの測定軸と平行な第1軸方向に沿った前記第1距離を測定する3つの測定部と、
前記第1軸方向に直交する第2軸方向に沿った前記第1距離を測定する1つの測定部と、
前記第1軸方向及び前記第2軸方向に直交する第3軸方向に沿った前記第1距離を測定する1つの測定部と、
を含み、
前記第2距離測定部は、前記第1軸方向に沿った前記第2距離を測定する3つの測定部を含むことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項5】
前記第1距離測定部は、
前記プローブの測定軸と平行な第1軸方向に沿った前記第1距離を測定する2つの測定部と、
前記第1軸方向に直交する第2軸方向に沿った前記第1距離を測定する2つの測定部と、
前記第1軸方向及び前記第2軸方向に直交する第3軸方向に沿った前記第1距離を測定する1つの測定部と、
を含み、
前記第2距離測定部は、
前記第1軸方向に沿った前記第2距離を測定する1つの測定部と、
前記第2軸方向に沿った前記第2距離を測定する1つの測定部と、
前記第3軸方向に沿った前記第2距離を測定する1つの測定部と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項6】
前記第2距離測定部は、前記第1距離測定部の測定精度よりも低い測定精度であることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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