説明

測長装置

【課題】 基準尺(1)が筐体内に保護された形で収容されている測長装置に関する。
【解決手段】 筐体は、中空体(21)を有し、その側端が、それぞれ蓋(22)によって閉鎖されている。蓋(22)と中空体(21)の間には、導電性材料から成るパッキン(4)が配置されている。このパッキン(4)には、基準尺(1)と接触して、それにより基準尺(1)を中空体(21)と電気を通す形で接続する接続素子(41)が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に基づく測長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような測長装置は、特許文献1に記載されている。それらの測長装置は、長さ及び行程を測定する役割を有し、特に、工作機械では、座標測定機として、処理すべき加工物に対する工具の相対的な動きを測定する役割を果たしており、半導体産業でも益々採用されてきている。
【0003】
これらの周知の測長装置は、周囲環境による影響から基準尺を保護する筐体を備えている。そのために、筐体は、長く延びる筒状の形状をしており、その側端は、それぞれ蓋によって閉鎖されている。少なくとも一方の蓋には、基準尺と付勢する形で接触し、そのため基準尺の測定目盛と蓋の間の電気的な接続を形成する付勢式薄板トングが螺子止めされている。
【0004】
そのような薄板トングは、扱い難い部品であり、その製造と組立には、比較的負担がかかっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ特許公開第19746532号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のことから、本発明の課題は、構造が簡単で簡単に組み立てられる故障し難い測長装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本課題は、本発明による請求項1の特徴によって解決される。
【0008】
従属請求項には、本発明の有利な実施形態が記載されている。
【0009】
本発明による測長装置は、長く延びる中空体と中空体の側端に配置された少なくとも一つの蓋とから構成された筐体を有する。中空体の内部空間には、位置測定のために、測定方向に沿って筐体に対して相対的に移動可能な走査機器によって走査することが可能な測定目盛を有する基準尺が配置されている。基準尺の表面上には、表面に集まった電荷を誘導するための導電素子が、基準尺に沿って延びる形で配備されている。導電性接続素子が、基準尺の導電素子と筐体部分である中空体と蓋の中の少なくとも一方との間の電気的な接続を実現している。そのような導電性接続素子は、中空体と蓋の間を密閉するために使用されているパッキンの構成部分である。そのような本発明に基づき実現された通電構成は、少なくとも中空体の一方の側端で実施される。しかし、有利には、そのような構成は、両方の側端で実施される。
【0010】
接続素子を導電性エラストマーから構成するのが、特に有利である。更に、接続素子をパッキンと一体的に成形するのが有利である。そうすることによって、射出成形法による共通の製造方法で、パッキンと接続素子をエラストマーから製作することができる。
【0011】
有利には、パッキンは、板状に構成されており、パッキンを蓋に押し込むことによって、中空体の側端と当接する。そのような板状のパッキンは、少なくとも一つの突起を有し、その突起は、接続素子を構成するとともに、基準尺と付勢した形で接触する。
【0012】
測定目盛は、特に、光電式走査用に設計されたものであり、測定方向に沿って互いに間隔を開けて配置された、導電性材料から成るマークで構成されており、それらのマークは、基準尺の導電性被膜によって電気を通す形で互いに接続されている。その被膜は、中空体の側端にまで達する導電素子を形成しており、その側端において、その導電素子は、接続素子と電気的に接続されている。
【0013】
更に、有利には、本発明では、パッキンの材料の付勢特性が、基準尺の導電素子と付勢する形で接触させるために利用される。パッキンも導電性材料から構成することによって、導電素子の良好な電気的接触及び筐体部分である中空体と蓋の中の少なくとも一方との電気的な接続が保証される。少なくともそのような筐体部分は、基準電位と電気的に接触するように構成されている。従って、そのような筐体部分は、有利には、導電性材料から構成されており、その結果、機械に取り付けた場合に、機械と電気的に接触し、そのため、取り付け、例えば、螺子止めだけで、基準電位と接続されることとなる。
【0014】
実施例を用いて、本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】組立前の本発明による測長装置
【図2】図1の測長装置の組み立てた状態での斜視図
【図3】本発明による測長装置の基準尺の平面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
光電式測長装置に基づき、本発明を詳しく説明する。この測長装置は、測定方向Xに沿って互いに相対的に移動可能な基準尺1と走査ユニットの主要な構成要素から構成されている。走査ユニットは、位置測定時に、基準尺1の測定目盛11を走査して、その目盛から位置信号を発生させる。本発明は、走査ユニットに関する発明ではないので、見易くするために、走査ユニットは図面に図示されていない。
【0017】
測定目盛11の光電式走査のために、測定目盛は、被膜の形の不透明なマーク111,112から構成され、基準尺1は、透明な材料から構成されている(図3)。更に、基準尺1は、電気絶縁材料、特に、ガラス又はセラミックガラスから構成されており、その上に、測定目盛11が配設されている。
【0018】
基準尺1は、筐体内に保護された形で収容されている。そのために、筐体は、長く延びる中空体21から構成されている。中空体21は、測定方向Xに延びるシールリップ3を有し、走査ユニットが固定されているタペットが、周知の手法でシールリップと係合する。中空体21の両方の側端は、それぞれ蓋22で閉鎖されている。中空体21と蓋22の間には、パッキン4が挿入されている。
【0019】
基準尺1は、中空体21内に配置されており、弾力的な接着剤層12を用いて、中空体と固定されている。そうすることによって、温度が変化した場合に、基準尺1は、中空体21と独立して全く自由に膨張することができる。
【0020】
外部の電界やローラー又はスライドシューを用いた基準尺1に対する走査ユニットの滑動などの様々な影響によって、基準尺1の表面が帯電してしまい、それによって、測長装置の別の導電部品、特に、基準尺1に対して短い間隔を開けて滑動する走査ユニットに対する電位差が発生する可能性が有る。そのような電位差は、パルス状の放電を発生させる可能性が有る。そのような放電は、電気走査信号に重なり合って、そのことが、測定誤差を生じさせる可能性が有る。
【0021】
そのような基準尺1の表面の帯電を基準尺1の出来る限り全長に渡って除去するために、有利には、基準尺1の長さに渡って拡がる導電素子13が、基準尺1の表面上に配設されている。導電素子13は、有利には、基準尺1の表面上において、測定方向Xに沿って切れ目無く続く、導電性材料から成る層である。この場合、測定目盛11と導電素子13を構成する層とは、共通の成膜方法で基準尺1の表面上に配設される。測定目盛11が、導電性の被膜の形で構成されている場合、その層は、測定目盛11の個々のマーク111,112を互いに電気的に接続するとともに、少なくとも基準尺1の一方の側端にまで延びている。それに代わって、或いはそれに追加して、図3に図示されている通り、測定目盛11の側を測定方向Xに延びる導電性材料から成る帯の形の、測定目盛11から分離され、間隔を開けて配置された導電素子13を配備することができる。
【0022】
それに代わって、導電素子13は、基準尺1の表面上に引き延ばした、或いは別の手法で基準尺の表面と密接に接触させた金属製の帯とすることができる。
【0023】
図示されていない手法では、導電素子13は、金属層の代わりに、透明な導電層として構成することもできる。その利点は、そのような透明な層が測定目盛11のマーク111,112を光学的に遮らず、そのため、それらのマーク111,112の下又は上に大きな面積で配設する、特に、蒸着することができることである。
【0024】
ここで、導電性の接続素子41が、導電素子13、即ち、導電層と接触しており、そのため、筐体、即ち、筐体部分である中空体21と蓋22の中の少なくとも一方との電気的な接続が実現されている。そのような筐体部分である中空体21と蓋22の中の少なくとも一方は、電気を通すように構成されており、特に、アルミニウムや鋼鉄などの導電性金属から構成されている。測定動作時の筐体と走査ユニットは、通常機械の導電性の機械部品に取り付けられているので、筐体は、機械に取り付けられた状態において、走査ユニットと同じ基準電位と接続されており、その結果、電位差は生じ得ない。
【0025】
導電性の接続素子41は、中空体21と蓋22の間に密閉する形で挿入されているパッキン4の構成部分である。中空体21の側端と蓋22の間にパッキンを配置することによって、パッキン4は、中空体21の側端を密閉することとなる。蓋22は、螺子5によって、中空体21と固定されるとともに、パッキン4を中空体21の側端に押し込むこととなる。そのために、パッキン4は、板状に構成されており、その一部の領域が中空体21の側端と当接する。パッキン4の別の領域は、基準尺1の導電素子13と付勢する形で接触する接続素子41を構成する突起を有する。特に、図2から明らかな通り、そのような突起は、組み立てた場合に、導電層として構成された導電素子13と当接する。そのような弾力的に付勢する実施形態によって、確実な機械的接触が保証され、そのため電気的接触も保証されることとなる。
【0026】
パッキン4及びそれと一体的に構成された、特に、射出成形によって形成された接続素子41の材料としては、例えば、NBR(ニトリルゴム)、EPDM(エチレン−プロピレン三量体)、ACM(アクリルゴム)などの導電性エラストマーが、特に適している。その場合、エラストマーは、特に、炭素をベースとする導電性の充填物によって、優れた導電率を有することとなる。
【0027】
図3には、基準尺1の平面図が拡大して図示されている。この場合、測定目盛11は、一連のマーク111が等間隔に配置された増分トラックと、その側に置かれた、別のマーク112が不規則に配置された絶対トラックとから構成されている。これらのマーク111と112は、導電性材料、例えば、クロムから成る層で構成されており、導電層として構成された導電素子13を用いて、互いに電気的に接続されている。それに代わって、或いはそれに追加して、図3に図示されている通り、測定目盛11の側に測定目盛から間隔を開けて配置された帯の形の層が、導電素子13としての役割を果たすことができる。接続素子41は、導電素子13、即ち、少なくとも測定方向Xに延びる導電層と接触しており、そのため、基準電位との電気を通す形の接続が実現されている。
【0028】
図3に図示されている通り、比較的幅の広い測定目盛11を本発明に基づき構成された接続素子41と電気的に接触させることが可能である。エラストマーは、基準尺1と最適に適合して、偏差を補償し、その結果、確実な接触が保証される。更に、エラストマーは、振動時にも、層として構成された導電素子13の磨耗を引き起こすこと無く、接触を維持するという特性を有する。
【符号の説明】
【0029】
1 基準尺
3 シールリップ
4 パッキン
5 螺子
11 測定目盛
111 マーク
112 マーク
12 接着剤層
13 導電素子
21 中空体
22 蓋
41 接続素子
X 測定方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長く延びる中空体(21)とその中空体の側端に配置された少なくとも一つの蓋(22)とから成る筐体と、
この筐体内に配置された、測定方向(X)に沿って筐体に対して相対的に移動可能な走査機器によって走査することが可能な測定目盛(11)を有する、非導電性材料から成る基準尺(1)と、
基準尺(1)上に配設された、測定方向(X)に延びる、導電性材料から成る導電素子(13)と、
導電素子(13)と筐体部分である中空体(21)と蓋(22)の中の少なくとも一方との間の電気的な接続を実現する導電性の接続素子(41)と、
を備えた測長装置において、
導電性の接続素子(41)が、中空体(21)と蓋(22)の間に密閉する形で配置されたパッキン(4)の構成部分であることを特徴とする測長装置。
【請求項2】
接続素子(41)が、パッキン(4)上に形成されており、接続素子(41)とパッキン(4)が、共通して導電性エラストマーから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の測長装置。
【請求項3】
パッキン(4)が、板状に構成されており、中空体(21)の側端と当接し、更に、接続素子(41)を形成して、導電素子(13)と付勢する形で接触する少なくとも一つの突起を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の測長装置。
【請求項4】
導電素子(13)が、基準尺(1)上に配設された導電層であることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の測長装置。
【請求項5】
測定目盛(11)が、測定方向(X)に沿って互いに間隔を開けて配置された、導電性材料から成るマーク(111,112)で構成されており、それらのマークは、導電素子(13)を構成する導電層によって互いに電気を通す形で接続されており、接続素子(41)が、その導電層と接触していることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の測長装置。
【請求項6】
基準尺(1)が、透明な材料から構成されており、基準尺(1)の上には、不透明なマーク(111,112)の形の測定目盛(11)が配設されていることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の測長装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−75557(P2011−75557A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216383(P2010−216383)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(390014281)ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (115)
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】