説明

湯水混合バルブ

【課題】同一のバルブにて吐水の温度調節ができ且つ水吐水と所望温度に温度設定された混合水吐水との切替えを行うことのできる湯水混合バルブを提供する。
【解決手段】水流入通路40及び湯流入通路42と、水側主弁50及び湯側主弁52を備え、それらの弁開度を互いに逆の関係で大小変化させて湯水の混合比率を変化させる混合弁58とを有し、混合水温度を設定ないし設定変更するようになした湯水混合バルブ24において、混合弁58を、湯と水とを混合して混合水を吐水する湯水混合位置と、湯側主弁52を全閉、水側主弁50を全開として水のみを吐水する水吐水位置との間で交互に切替可能となし、且つ湯水混合位置では、前回の混合水吐水時における位置調節済みの設定温調位置に自動的に混合弁58を位置させるようになす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、湯と水とを混合して混合水を吐水する湯水混合バルブに関し、詳しくは1つの混合弁にて水吐水と混合水吐水とを切り替えることのできる湯水混合バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、湯水混合バルブとしてシングルレバー式湯水混合バルブが公知である。
このシングルレバー式湯水混合バルブは、固定ディスクと可動ディスクとを備え、操作部としてのシングルレバーの左右回動操作により可動ディスクを固定ディスク上で対応する方向に摺動させて湯水の混合比率を変化させ、また上下回動操作により可動ディスクを固定ディスク上で対応する方向に摺動させることによって吐水の流量調節を行う。
【0003】
このシングルレバー式湯水混合バルブは、水のみ吐水を行うこともできるし、また湯水を混合して混合水吐水を行うこともできる。
しかしながら一旦水吐水した後に混合水吐水する際、その都度所望温度で吐水させるための温度調節の操作が必要で、操作が煩雑であり、また所望温度の混合水が吐水されるまでの間に多くの水を無駄にしてしまうといった問題を有している。
【0004】
湯水混合バルブとしては、他に図23に示すようなものも公知である。
図23において、304はバルブケーシングで、300,302はそれぞれ水流入口,湯流入口であり、305,306はそれぞれ水流入口300,湯流入口302に続く水流入通路,湯流入通路である。
308は混合弁で、水側主弁310と湯側主弁312とを有しており、それら水側主弁310及び湯側主弁312を開いた状態の下で、水流入通路305及び湯流入通路306を通じて水と湯とを内部に流入させ、それらを混合室314で混合して混合水を流出口316から流出し、所定の吐水部から吐水させる。
【0005】
318は混合室314内に設けられた形状記憶合金製のコイルばねから成る感温ばね(感温体)で、図中右端を混合弁308に当接させ、混合弁308に対して水側主弁310を開く方向に付勢力を及ぼしている。
この感温ばね318は、混合室314内の混合水温度が設定温度よりも上昇すると軸方向に伸長して、混合弁308に対する図中右向きの付勢力を増大させる。
【0006】
混合弁308にはまた、第1バイアスばね320,第2バイアスばね322による付勢力が、感温ばね318による付勢方向とは逆向きに及ぼされており、混合弁308は、それら感温ばね318による付勢力と、第1バイアスばね320及び第2バイアスばね322による付勢力が釣り合う位置で位置停止され、そこに保持される。
【0007】
324は図示しない回転ハンドルに一体回転状態に連結され、回転ハンドルに加えられた操作力で回転する回転軸で、この回転軸324が正方向又は逆方向に回転することで、これにねじ結合された進退部材326が図中左右方向に進退移動させられる。
そして進退部材326の進退移動により、第1バイアスばね320,第2バイアスばね322を介して混合弁308が図中左右方向に強制的に位置移動させられる。
【0008】
そしてこの操作(吐水の温度の設定操作)によって、混合弁308が設定された温調位置に位置させられる。
この状態の下で水流入通路305,湯流入通路306から水と湯とが所定比率で流入して設定された所望温度の混合水となり、吐水部から吐水される。
【0009】
図23に示す湯水混合バルブは自動温度調節機能付きのもので、その自動温度調節は次のようにして行われる。
即ち、混合室314内部の混合水の温度が設定温度よりも高くなると、感温ばね318が伸長して付勢力を増大させ、混合弁308をその増大した付勢力によって図中右向きに位置を微動させる。
即ち感温ばね318による付勢力と第1バイアスばね320及び第2バイアスばね322とによる、互いに逆向きの付勢力の釣り合い位置を図中右側にシフトさせ、混合弁308を同方向に微小に位置移動させる。
【0010】
この結果水側主弁310の弁開度が増大、湯側主弁312の弁開度が減少して湯流入量が少なく、水流入量が増大し、混合水温度即ち吐水温度が低下せしめられ、吐水の温度が自動的に設定温度に調節される。
【0011】
一方混合室314内の混合水温度が設定温度よりも低い場合には感温ばね318が収縮し、そのことによって水側弁部310の弁開度を減少,湯側主弁312の弁開度を増大変化させて、吐水の温度を設定温度に自動的に調節する。
尚、この種の湯水混合バルブは例えば下記特許文献1に開示されている。
【0012】
しかしながらこの図23に示す湯水混合バルブもまた、水のみを吐水する水吐水と、湯水の混合水吐水とを切り替えることが出来ない問題がある。
もっとも湯側主弁312を全閉,水側主弁310を全開とすることで、水のみを吐水することも可能であるが、この水吐水の操作は、吐水温度の変更操作の延長としてのものであり、従って水吐水した後において再び混合水を吐水する際、改めてそこで混合水温度が所望温度となるように設定操作をしなければならず、その間に時間を費やし、また無駄に多くの水を消費してしまう問題を生ずる。
【0013】
水吐水と所望温度の(設定した温度の)混合水の吐水とを切り替えるようにできれば、こうした問題を解決できるが、そのためにはかかる湯水混合バルブとは別途に、水吐水と混合水吐水とを切り替えるための切替バルブを必要とする。
例えば下記特許文献2,特許文献3には、そのような湯水混合バルブと切替バルブとを別々に備えたものが開示されている。
【0014】
図23は自動温度調節機能付き(サーモスタット式)の湯水混合バルブの例を示したものであるが、湯水混合バルブとしては感温ばね218,バイアスばね320,322を備えていない、即ち自動温度調節機能を有していない、所謂ミキシングバルブと称される湯水混合バルブも用いられているが、このミキシングタイプの湯水混合バルブにおいても基本的に上記と同様の問題を内包する。
【0015】
【特許文献1】特開2000−2360号公報
【特許文献2】特開2003−106673号公報
【特許文献3】特開2006−144321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は以上のような事情を背景とし、同一のバルブにて吐水の温度調節ができ、また水吐水と所望温度に温度設定された混合水吐水との切替えを行うことのできる湯水混合バルブを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
而して請求項1のものは、(イ)水流入通路及び湯流入通路と、(ロ)水側主弁及び湯側主弁を備え、それら水側主弁及び湯側主弁の弁開度を互いに逆の関係で大小変化させて湯水の混合比率を変化させる混合弁と、を有し、操作部の操作により該混合弁を位置移動させることによって、混合水温度を設定ないし設定変更するようになした湯水混合バルブにおいて、前記混合弁を、湯と水とを混合して混合水を吐水する湯水混合位置と、前記湯側主弁を全閉、前記水側主弁を全開として水のみを吐水する水吐水位置との間で交互に切替可能となし、且つ該混合弁を前記水吐水位置に位置させて水吐水した後において前記湯水混合位置に切り替えたときに、前回の混合水吐水時における位置調節済みの設定温調位置に自動的に該混合弁を位置させるようになしてあることを特徴とする。
【0018】
請求項2のものは、請求項1において、前記混合弁を連続的に進退移動させ、進退移動量に応じて湯水混合位置を変化させて温調を行う温調機構と、水吐水及び混合水吐水を切り替える切替機構とが設けてあり、且つ該切替機構は、前記混合弁を、前記湯側主弁を全閉とし前記水側主弁を全開とする前記水吐水位置と、前記設定温調位置との2位置の間で位置切替えするものとなしてあることを特徴とする。
【0019】
請求項3のものは、請求項2において、前記温調機構及び切替機構が共通の伸縮軸を有しており、該温調機構は、該伸縮軸を連続的に伸縮させることにより前記混合弁を連続的に位置移動させて温調動作を行い、前記切替機構は、該伸縮軸を伸縮させることなく全体的に2位置の間で軸方向位置を変化させることで、前記混合弁を前記水吐水位置と前記設定温調位置とに位置切替えするものとなしてあることを特徴とする。
【0020】
請求項4のものは、請求項3において、前記伸縮軸が第1部分と第2部分とに分割されていて、それら第1部分と第2部分とがねじ結合され、ねじ部のねじ送りで全体が伸縮するようになしてあることを特徴とする。
【0021】
請求項5のものは、請求項3,4の何れかにおいて、前記切替機構が、前記伸縮軸を前記水吐水位置に対応した第1位置と、前記設定温調位置に対応した第2位置とに交互に切り替え且つ保持するロック機構を備えていることを特徴とする。
【0022】
請求項6のものは、請求項1〜5の何れかにおいて、混合室内に混合水温度の上昇に感応して前記水側主弁を開く方向に前記混合弁を移動させる感温体が設けられていることを特徴とする。
【0023】
請求項7のものは、請求項1〜6の何れかにおいて、前記湯水混合バルブが、前記混合弁の移動を制御するパイロット弁を有し、該パイロット弁の移動に追従して該混合弁を該パイロット弁と同方向に移動させるパイロット式のバルブであり、前記切替機構が、該パイロット弁の位置を、前記混合弁における前記水吐水位置と前記設定温調位置とに各対応した2位置の間で切り替えて該混合弁の位置切替えを行うものとなしてあることを特徴とする。
【0024】
請求項8のものは、請求項7において、(a)前記水側主弁,湯側主弁の各背後に且つ導入小孔を通じて前記水流入通路,湯流入通路に連通し、内部の圧力を該水側主弁,湯側主弁に対し閉弁方向の押圧力として作用させる水側背圧室及び湯側背圧室と、(b)該水側背圧室,湯側背圧室の水,湯を各下流側に抜く圧抜通路としての水側パイロット通路及び湯側パイロット通路と、を有しているとともに、前記パイロット弁として、(c)前記水側パイロット通路,湯側パイロット通路の開度を互いに逆の関係で大きく又は小さく変化させる方向に進退移動する水側パイロット弁及び湯側パイロット弁、を有し、それら水側パイロット弁,湯側パイロット弁の進退移動に追従して前記水側主弁,湯側主弁を進退移動させるようになしてあることを特徴とする。
【0025】
請求項9のものは、請求項1〜5の何れかにおいて、前記湯水混合バルブが、混合室内に混合水温度の上昇に感応して前記水側主弁を開く方向に前記混合弁を移動させる感温体が設けられる一方、該混合弁を該水側主弁が閉じる方向に付勢するバイアスばねが設けられて成る自動温度調節機能付きのものであって、且つ前記混合弁の移動を制御するパイロット弁を有し、該パイロット弁の移動に追従して前記混合弁を該パイロット弁と同方向に移動させるパイロット式のバルブとなしてあり、前記切替機構が該パイロット弁の位置を、前記混合弁における前記水吐水位置と前記設定温調位置とに各対応した2位置の間で切り替えて該混合弁の位置切替えをなすものとしてあり、更に温調軸を有していて、該温調軸により前記パイロット弁を該温調軸に沿って軸方向に相対移動可能に保持しているとともに、前記感温体としての感温ばね及び前記バイアスばねを該パイロット弁に対し互いに逆向きに付勢力を及ぼす状態に該温調軸に組み付けて保持させ、それら感温ばね,バイアスばね,パイロット弁及び温調軸を含んで、全体が一体に移動するパイロット弁ユニットを構成してあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0026】
以上のように請求項1のものは、混合弁を、湯と水とを混合して混合水を吐水する湯水混合位置と、湯側主弁を全閉,水側主弁を全開として水のみを吐水する水吐水位置との間で交互に切替可能となし、且つ混合弁を水吐水位置に位置させて水吐水した後において湯水混合位置に切り替えたとき、前回の混合水吐水時における位置調節済みの設定温調位置に自動的に混合弁を位置させるようになしたものである。
【0027】
本発明の湯水混合バルブは、水吐水と混合水吐水とを切り替えることができ、且つ混合水吐水に切り替えたときに、予め位置調節済みの設定温調位置に自動的に混合弁を位置させるものであるため、水吐水した後において混合水としたときに、改めて吐水温度が所望の設定温度となるように混合弁を位置調節するといったことを行わなくてもよく、操作が極めて簡便となって使い勝手が向上する。
【0028】
また混合水吐水に切り替えたときに、混合弁の位置を所望の設定温調位置に位置合せするために時間を要してしまい、またその間に水を多く無駄に消費してしまうといった問題も解決することができる。
更に本発明では単一のバルブにて吐水の温度調節及び温度設定済みの混合水吐水と水吐水との切替えができるため、従来のように混合バルブと切替バルブとをそれぞれ別々に設けておかなくてもよく、装置を簡素化できるとともにコストを低減することができる。
【0029】
この場合において、上記混合弁を連続的に進退移動させ、進退移動量に応じて湯水混合位置を変化させて温調を行う温調機構と、水吐水及び混合水吐水を切り替える切替機構とを設け、且つその切替機構は、混合弁を湯側主弁を全閉とし水側主弁を全開とする水吐水位置と、上記設定温調位置との2位置の間で位置切替えするものとなしておくことができる(請求項2)。
【0030】
この請求項2では、温調機構と切替機構とを設け、温調機構にて温調動作を、切替機構にて切替動作を行わせるようになしていることから、それぞれの動作即ち温調動作と切替動作とを適正に行わせることができる。
換言すればこのような温調機構と切替機構とを設けることで、同一の混合弁を用いながら、混合弁の連続的な位置移動による温度調節と、混合弁の位置切替えによる水吐水及び混合水吐水の切替えとを容易に実現することができる。
【0031】
更にこの場合において、温調機構及び切替機構に共通の伸縮軸を設け、そして温調機構は、その伸縮軸を連続に伸縮させることにより混合弁を連続的に位置移動させて温調動作を行うものとなし、また切替機構は、伸縮軸を伸縮させることなく全体的に2位置の間で軸方向位置を変化させることで、混合弁を水吐水位置と設定温調位置とに位置切替えするものとなしておくことができる(請求項3)。
このようにすることで、同じ混合弁を用いながら水吐水と温度設定済みの混合水吐水との切替えを更に容易に実現することができる。
【0032】
更にこの場合において、伸縮軸を第1部分と第2部分とに分割し、それら第1部分と第2部分とをねじ結合して、ねじ部のねじ送りで全体を伸縮するようになしておくことができる(請求項4)。
【0033】
本発明では、請求項3,請求項4の何れかにおいて、切替機構を、伸縮軸を水吐水位置に対応した第1位置と、設定温調位置に対応した第2位置とに交互に切替え且つ保持するロック機構を備えたものとなしておくことができる(請求項5)。
【0034】
このようにすれば、水吐水と設定温度での混合水吐水との切替えを簡単に行うことができ、しかも水吐水,混合水吐水の切替えを行った後に操作力を除いても水吐水状態,混合水吐水状態にそのまま保つことができ、切替操作の際の操作性を良好となすことができる。
【0035】
本発明は、混合水温度の上昇に感応して水側主弁を開く方向に混合弁を移動させる感温体が混合室内に設けられている自動温度調節機能付きの湯水混合バルブに好適に適用可能である(請求項6)。
【0036】
本発明ではまた、湯水混合バルブを、パイロット弁の移動に追従して混合弁を同方向に移動させるパイロット式のバルブとなし、切替機構を、そのパイロット弁の位置を混合弁における水吐水位置と、設定温調位置とに各対応した2位置の間で切り替えて、混合弁の位置切替えをなすものとしておくことができる(請求項7)。
【0037】
この請求項7によれば、極めて弱い力で混合弁を移動操作及び位置切替えすることができ、軽い操作を可能とするとともに、モータ等アクチュエータを用いる場合においては、そのモータ等アクチュエータを小型化でき、ひいては湯水混合バルブを容易に電動式のものとなすことができる。
【0038】
このように湯水混合バルブをパイロット式バルブとなす場合において、水側主弁,湯側主弁の各背後の水側背圧室,湯側背圧室と、水側パイロット通路及び湯側パイロット通路とを設け、そして上記パイロット弁として、水側及び湯側の各パイロット弁を設け、それら水側パイロット弁,湯側パイロット弁の進退移動に追従して水側主弁,湯側主弁をそれぞれ進退移動させるようになしておくことができる(請求項8)。
【0039】
次に請求項9は、湯水混合バルブを自動温度調節機能付き且つパイロット式のバルブとなすとともに、かかる湯水混合バルブに温調軸を設けて、その温調軸によりパイロット弁を温調軸に沿って軸方向に相対移動可能に保持するとともに、感温ばね及びバイアスばねを、パイロット弁に対し互いに逆向きに付勢力を及ぼす状態に温調軸に組み付けて保持させ、それら感温ばね,バイアスばね,パイロット弁及び温調軸を含んで、全体が一体に移動するパイロット弁ユニットを構成したものである。
【0040】
例えば図23に示す自動温度調節機能付きの湯水混合弁の場合、感温ばね及びバイアスばねを撓ませながら混合弁を移動操作しなければならず、その際に感温ばね,温調ばねによる変形抵抗力に抗して混合弁を移動させなければならないことから操作が重くなってしまう問題を生ずる。
【0041】
しかるにこの請求項9では、湯水混合バルブを軽操作が可能なパイロット式バルブとなしてあるのに加えて、かかる感温ばね及びバイアスばねを、パイロット弁及び温調軸とともにパイロット弁ユニットとなし、全体を一体に移動させるようになしていることから、パイロット弁の移動操作に際して感温ばねやバイアスばねによる変形抵抗を受けることがなく、操作をより軽いものとなすことができる利点が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は水栓で、12は水栓本体である。
水栓本体12からは、先端に吐水口14を有するグースネック形状をなす吐水管16が延び出している。
吐水管16の先端部には、吐止水と流調(流量調節)とを行うバルブが内蔵されており、そしてその外部に露出する状態で押ボタン式の吐止水操作部18と、ダイヤル式の流調操作部20とが設けられている。
一方水栓本体12の内部には、本実施形態の湯水混合バルブ24が内蔵されている。
図中28は温度調節を行う回転式の温調ハンドルであり、30は水吐水と混合水吐水との切替えを行うための切替操作部である。
【0043】
図2及び図3は湯水混合バルブ24の具体的構造を表している。
図2において、26は水栓本体12のボデーで、27は湯水混合バルブ24におけるバルブボデーである。
31,32はキャップで、このうちキャップ31は直接バルブボデー27に結合され、またキャップ32は、結合部材を兼ねた後述の背圧室形成部材67を介してバルブボデー27に結合されている。
更にキャップ32は、固定ナット34にてバルブボデー27に強固に固定されている。
【0044】
バルブボデー27には、水流入口36と湯流入口38、及びそれらに続いて水流入通路40及び湯流入通路42が設けられている。
水流入通路40,湯流入通路42を通じて流入した水と湯とは混合室44で混合された上、流出通路46を通じ流出口48から流出する。
尚、図2は後述の混合弁58が水吐水位置に切り替った状態を表しており、従ってこのときには流出口48から水が流出する。
【0045】
一方図3は、混合弁58が湯水混合位置、特に予め位置調節済みの設定温調位置に切り替った状態を表しており、このときには水と湯とが混合室44に流入してそこで混合され、温度設定済みの混合水が流出口48から流出する。
【0046】
水流入通路40上及び湯流入通路42上には、それぞれダイヤフラム弁から成る水側主弁50及び湯側主弁52が設けられている。
これら水側主弁50,湯側主弁52は、それぞれ樹脂製の硬質の主弁本体54と、これにより保持されたゴム製のダイヤフラム膜56とから成っている。
本実施形態では、これら水側主弁50と湯側主弁52とが混合弁58を成している。
【0047】
水側主弁50は、水側主弁座60に向けて図中上下方向に進退移動し、弁開度を変化させる。
詳しくは水側主弁50は、水側主弁座60への着座によって閉弁状態となり、また水側主弁座60から図中下向きに離間することによって開弁し、そしてその開弁量に応じて混合室44への水流入量を変化させる。
【0048】
一方湯側主弁52は、湯側主弁座62に向けて図中上下方向に進退移動し、弁開度を変化させる。
詳しくは、湯側主弁座62への着座によって閉弁状態となり、また湯側主弁座62から図中上向きに離間することによって開弁し、そしてその開弁量に応じて混合室44への湯の流入量を変化させる。
但しこの湯水混合バルブ24では、水側主弁50と湯側主弁52とが互いに逆の関係でその開弁量を大小変化させ、水と湯との流入量を互いに逆の関係で増減変化させる。
【0049】
水側主弁50の図中下側の背後には水側背圧室64が形成され、また湯側主弁52の図中上側の背後には湯側背圧室66が形成されている。
水側背圧室64,湯側背圧室66は、内部の圧力を水側主弁50,湯側主弁52に対してそれぞれ閉弁方向の押圧力として作用させる。
【0050】
尚、湯側背圧室66は背圧室形成部材67の内側に形成されている。この背圧室形成部材67はまた、湯側主弁52に対する主弁押えも兼ねている。
また上述のようにこの背圧室形成部材67は、キャップ32をバルブボデー27に結合する結合部材も兼ねている。
【0051】
水側主弁50には、これを貫通して水側背圧室64と水流入通路40、詳しくはその1次側通路(水側主弁座60よりも上流側通路)とを連通させる導入小孔68が設けられ、また湯側主弁52には、これを貫通して湯側背圧室66と湯流入通路42(詳しくはその1次側通路)とを連通させる導入小孔70が設けられている。
導入小孔68は、水流入通路40からの水を水側背圧室64に導入して水側背圧室64の圧力を増大させる。
また導入小孔70は、湯流入通路42からの湯を湯側背圧室66に導入して湯側背圧室66の圧力を増大させる。
【0052】
水側主弁50にはまた、その中心部でこれを貫通して水側背圧室64と水側主弁座60よりも下流側の2次側通路とを連通させる水側パイロット通路72が設けられており、同様に湯側主弁52においても、その中心部を貫通して湯側背圧室66と湯側主弁座62よりも下流側の2次側通路とを連通させる湯側パイロット通路74が設けられている。
これら水側パイロット通路72,湯側パイロット通路74のそれぞれは、水側背圧室64,湯側背圧室66の水,湯をそれぞれ2次側流路に抜いて水側背圧室64,湯側背圧室66の圧力を減少させる。
【0053】
水側主弁50,湯側主弁52のそれぞれには、水側パイロット通路72,湯側パイロット通路74の周りに環状をなす、シール部材としてのOリング76,78を保持した水側パイロット弁座80,湯側パイロット弁座82がそれぞれ一体に設けられている。
【0054】
84,86はこれらに対応した水側パイロット弁,湯側パイロット弁で、これら水側パイロット弁84,湯側パイロット弁86は、それぞれ水側パイロット弁座80,湯側パイロット弁座82に対して図中上下方向、即ち水側主弁50,湯側主弁52の軸心に沿って図中上下方向に進退移動可能に嵌合するようになっている。
【0055】
これら水側パイロット弁84,湯側パイロット弁86は、断面円形をなし且つ図中上下方向即ち進退方向において外径が同径の形状をなしており、そして水側パイロット弁84は、閉弁状態で水側パイロット弁座80のOリング76に全周に亘り弾性嵌合して水側パイロット通路72を閉鎖する。
また湯側パイロット弁86は、閉弁状態で湯側パイロット弁座82のOリング78に全周に亘り弾性嵌合して湯側パイロット通路74を閉鎖する。
【0056】
図2は上記のように混合弁58が水吐水位置に切り替った状態を表しており、このとき湯側パイロット弁86は閉弁状態にあって、水側パイロット弁84が開弁状態となっている。
また一方、図3に示すように混合弁が湯水混合位置(設定温調位置)に切り替った状態の下では、水側パイロット弁84,湯側パイロット弁86の何れも開弁状態となっている。
【0057】
尚、水側パイロット弁84,湯側パイロット弁86の開弁状態の下で、それら水側パイロット弁84と水側パイロット弁座80との間、及び湯側パイロット弁86と湯側パイロット弁座82との間には一定の微小な追従間隙が保持され、水側主弁50,湯側主弁52は、それぞれその一定の微小な追従間隙を保持しながら、水側パイロット弁84,湯側パイロット弁86の進退移動に追従して同じ距離だけ同方向に進退移動する。以下この点を詳しく説明する。
【0058】
図6及び図7は、湯側パイロット弁86の移動による湯側主弁52の動作を表している。
この実施形態では、図2及び図8に示す湯側主弁52の閉弁状態の下で、図6(I)に示しているように湯側パイロット弁86が図中上向きに後退移動すると、湯側パイロット弁86と湯側パイロット弁座82との間の隙間が一時的に大となり、湯側背圧室66内の湯が湯側パイロット通路74を通じて2次側通路に抜け出し、湯側背圧室66の圧力が減少する。
【0059】
すると湯流入通路42の1次圧が打ち勝つに到って、湯側主弁52がそれらの圧力差により図中上向きに後退移動し、そして図6(II)に示しているように湯側背圧室66と湯流入通路42の圧力がバランスする位置で、湯側主弁52の後退移動が停止する。
即ち湯側主弁52が、湯側パイロット弁86の後退移動に追従するようにして共に後退移動し、そして湯側パイロット弁86の停止とともに湯側主弁52もまた停止する。
尚この停止時において、湯側パイロット弁86と湯側パイロット弁座82との間には上記の一定の微小な追従間隙が保持される。
この湯側主弁52の後退移動によって、湯側主弁52と湯側主弁座62との間の隙間が増大し、湯流入通路42から混合室44に流入する湯の流入量が増大する。
【0060】
この状態から、湯側パイロット弁86が更に図中上向きに後退移動させられると、湯側背圧室66の圧力と湯流入通路42の圧力をバランスさせるようにして、湯側主弁52が上記の追従間隙を保持しつつ湯側パイロット弁86の後退移動に追従して後退移動し、湯側主弁座62との間の隙間を更に広くして、即ち湯側主弁52の弁開度を更に大として、混合室44への湯流入量を増大させる(図9及び図6(III)参照)。
【0061】
一方、湯側パイロット弁86が図7(I)に示しているように図中下向きに前進移動すると、湯側パイロット弁86と湯側パイロット弁座82との間、詳しくは湯側パイロット弁座82のOリング78との間の隙間が一時的に小さくなって、即ち湯側パイロット通路74の開度が一時的に小さくなって、湯側背圧室66から2次側通路へと抜ける湯の量が少なくなり、湯側背圧室66の圧力が増大する。
【0062】
このためこの増大した圧力により、湯側主弁52が今度は図中下向きに前進移動して、湯側背圧室66の圧力と湯流入通路42との圧力をバランスさせる位置で停止する。
このとき、湯側主弁52と湯側主弁座62との間の隙間が小さくなって、即ち湯側主弁52の弁開度が小さくなって、混合室44へと流入する湯の流入量が減少する(図7(II)参照)。
そしてこの状態から更に湯側パイロット弁86が図中下向きに前進移動すると、湯側主弁52の開度が更に小さくなり、混合室44へと流入する湯の流入量が更に減少する(図7(III)参照)。
【0063】
上記水側主弁50もまた、水側パイロット弁84の進退移動に追従して同方向に同じ距離だけ進退移動し、弁開度を変化させて水流入通路40を通じ混合室44に流入する水の流入量を変化させる。
【0064】
但しこの実施形態において、水側主弁50は、湯側主弁52が開弁方向に後退移動したときには閉弁方向に前進移動し、また湯側主弁52が閉弁方向に前進移動したときには、水側主弁50は開弁方向に後退移動する。
従って水側主弁50と湯側主弁52とは、互いに逆の関係で弁開度をそれぞれ大小変化させ、混合室44への水の流入量と湯の流入量とを互いに逆の関係で大小変化させる。
【0065】
図2において、88は加えられた操作力に基づいて水側パイロット弁84及び湯側パイロット弁86を共通に進退移動させる伸縮軸で、この伸縮軸88は、軸状をなす第1部分としての温調軸90と、筒状をなす第2部分92とに2分割されている。
そしてその第1部分をなす温調軸90の上下2個所に上記の水側パイロット弁84と、湯側パイロット弁86とが一体に構成されている。
一方筒状の第2部分92には、その内周面に雌ねじ94が設けられている。
【0066】
温調軸90は、図4にも示しているようにその上端部に、ボールジョイント96にて3次元的に相対移動可能な大径の頭部98を有しており、その頭部98の外周面に雄ねじ100が設けられている。
そしてこの雄ねじ100が、第2部分92の雌ねじ94に螺合されている。
【0067】
伸縮軸88は、雄ねじ100と雌ねじ94とのねじ部のねじ送り作用で全体に図中上下方向に伸縮動作する。
具体的には、第1部分としての温調軸90が雄ねじ100と雌ねじ94とのねじ送りによって、図中上下方向に連続的に進退移動し、その位置を変化させる。
【0068】
尚、温調軸90の頭部98には、図4に示しているように互いに平行をなす平坦な係合面102が形成されており、この係合面102を、回止め部材104の一対の挟持片106が挟持しており、これら挟持片106の挟持作用によって、温調軸90が回転防止されている。
即ちこの回止め部材104の回転防止作用によって、第2部分92の回転により、温調軸90が図中上下方向に進退移動させられる。
【0069】
そしてこの温調軸90の図中上下方向の進退移動に伴って、これに一体に構成された上記の水側パイロット弁84及び湯側パイロット弁86が、一体に図中上下方向に進退移動させられる。
ここで回止め部材104は円形の台座部108を有しており、この台座部108が、その下側の背圧室形成部材67に固定されている。
【0070】
図2において、110は水側パイロット弁84,湯側パイロット弁86を駆動する働きをなす駆動機構で、有底円筒形状をなす押ボタン112と、回転スリーブ114、及びスラストロック機構の要素をなす回転子116とを有している(図4参照)。
回転スリーブ114は、回転により伸縮軸88を伸縮させ、これにより温調軸90をその回転量に応じて軸方向(図中上下方向)に連続的に位置移動させる。
【0071】
この結果温調軸90に一体に構成された水側パイロット弁84及び湯側パイロット弁86が、回転スリーブ114の回転量に応じて図中上下方向に連続的に進退移動し、そしてこれにより水側主弁50,湯側主弁52をこれに追従して同方向に進退移動させる。
即ち回転スリーブ114は、回転により混合弁58を図中上下方向に位置移動させ、水側主弁50と湯側主弁52の弁開度を互いに逆の関係で大小変化させ、湯水の混合比率を連続的に変化させる。
【0072】
つまり回転スリーブ114を回転操作することで、水側主弁50,湯側主弁52がその回転量に応じて同じ距離だけ同方向に連続的に位置移動し、これにより湯水の混合比率を連続的に変化させて、混合水の設定温度を連続的に変化させる。
この回転スリーブ114は上記の温調ハンドル28と一体回転するようになしてあり、温調ハンドル28の回転操作によって混合水温度(吐水温度)の設定ないし設定変更が行われる。
【0073】
一方押ボタン112は、1回の押込みごとに伸縮軸88の全体を前進位置(第1位置)と後退位置(第2位置)とに位置切替えする。
ここで前進位置は図2に示す位置であって、混合弁58を水吐水位置、即ち湯側主弁52を全閉、水側主弁50を全開状態として水のみを吐水させる位置である。
また後退位置は図3に示す位置であって、混合弁58を、湯と水を混合して混合水吐水する湯水混合位置とする位置である。
【0074】
この実施形態では、伸縮軸88が図中上側の後退位置に位置切替えされたとき、混合弁58が、前回の混合水吐水時における位置調節済みの設定温調位置(目的とする設定温度で混合水吐水する位置)に自動的に位置した状態となる。
尚回転スリーブ114は、図2に示しているようにその下部がキャップ32に内嵌状態で回転可能且つ抜止状態に組み付けられている。
【0075】
押ボタン112は、回転スリーブ114に内嵌されて、回転スリーブ114に対し軸方向即ち図中上下方向に移動可能とされている。
この押ボタン112の外周面には縦の凸条118(図4参照)が設けられていて、この凸条118が、回転スリーブ114の内面の縦の凹条120に嵌り込んでおり、押ボタン112が回転スリーブ114の回転とともに一体に回転するようになっている。
即ち回転スリーブ114の回転運動が、押ボタン112に伝えられるようになっている。
ここで押ボタン112は、上記切替操作部30への押込みの入力により図中下向きに押し込まれる。
【0076】
押ボタン112にはまた、その内周面に縦の凹条122が形成されていて、そこに伸縮軸88における雌ねじ部材としての第2部分92の外周面に設けられた縦の凸条124が嵌り込んでおり、第2部分92が、押ボタン112と一体に回転するようになっている。
即ち回転スリーブ114を回転させると、その回転運動が押ボタン112を介して第2部分92に伝えられ、第2部分92が回転運動する。
尚、押ボタン112の外周面にはガイド突起126が設けられている。
このガイド突起126は、回転スリーブ114の嵌入溝128に嵌入して、押ボタン112の上下方向の摺動時の案内をなす。
【0077】
押ボタン112の下端には、図4にも示しているように山形状をなす係合歯130が、周方向に沿って所定ピッチで連設されている。
この係合歯130の下面には、直下の回転子116を押ボタン112の上下運動、即ち下向きの前進移動と上向きの後退移動とによって、カム作用で回転させるための駆動カム面132(図5参照)が形成されている。
【0078】
回転子116はリング状の部材から成るもので、周方向の複数箇所(ここでは4箇所)に、図中上向きに山形状に突出する係合歯134が設けられている。
また周方向の同じ箇所において、その外側に突出する形態で鋸歯状をなす係合歯136が、同じく上向きに設けられている。
【0079】
内側の係合歯134は、一方の斜辺に沿った上面が押ボタン112の駆動カム面132に対応した第1従動カム面138とされている。
ここで第1従動カム面138の傾斜角度θ1は、ここでは押ボタン112側の駆動カム面132と同一角度とされている。
【0080】
一方外側の係合歯136においてもまた、その斜辺に沿った上面が角度θ2で傾斜した第2従動カム面140とされている。
この実施形態では、第1従動カム面138と第2従動カム面140との傾斜角度が異ならせてあり、第2従動カム面140の傾斜角度θ2が急角度をなし、これに対して第1従動カム面138の傾斜角度θ1が小角度とされている。
この回転子116は、図2に示しているようにその下面を第2部分92の外向きのフランジ部142の上面にて支持されており、かかるフランジ部142の上面を図5で示す矢印方向に回転摺動する。
【0081】
図2及び図4に示しているように、第2部分92のフランジ部142の下面には、金属製のコイルスプリング(付勢手段)144の上端が当接させられており、かかるコイルスプリング(以下単にスプリングとする)144による付勢力が、第2部分92に対して上向きに及ぼされている。
即ちこの第2部分92を介して回転子116、押ボタン112に対して、更には第2部分92に螺合された第1部分としての温調軸90に対し、スプリング144による付勢力が後退方向の図中上向きに及ぼされている。
【0082】
上記回転スリーブ114には、図5に詳しく示しているようにその上部内周面にガイド部146が内方に突出する状態で設けられている。
このガイド部146は下端に係合歯148を有している。
この係合歯148の下面にもまた、回転子116をカム作用で回転させるための、回転子116の第2従動カム面140に対応した傾斜形状の案内カム面150が形成されている。
ここで案内カム面150の傾斜角度は、回転子116の第2従動カム面140と同じ傾斜角度とされている。
このガイド部146にはまた、上記のように上下方向に延びる嵌入溝128が周方向に所定間隔で形成されている。回転子116は外方への突出形状をなす係合歯136を嵌入溝128に位置させる回転位置となったとき、かかる係合歯136を嵌入溝128の内部に嵌入させることによって図中上方への後退運動が許容される。
【0083】
一方係合歯148は、係合歯136に噛み合ってこれをその前進状態、即ち図中下降状態に保持してロックする働きをなす。即ち混合弁58を、伸縮軸88及びその温調軸90に一体に構成された水側パイロット弁84及び湯側パイロット弁86を介して水吐水位置に保持し、ロックする働きをなす。
本実施形態では、図5に示すガイド部146及びこれを備えた回転スリーブ114、下端に係合歯130及び駆動カム面132を備えた押ボタン112、その直下の回転子116、更にこれらを上向きに付勢するスプリング144にてスラストロック機構が構成されている。
【0084】
この実施形態では、第2部分92の下側に、押ボタン112の押し込み時に回転子116を強制回転させる機能を備えた強制回転リング152が設けられている。
この強制回転リング152は、図2に示すように回止め部材104の台座部108上に載置されている。
この強制回転リング152は、全体として円筒形状をなしているとともに,その下端には内向きのフランジ部154が設けられていて、このフランジ部154と、第2部分92の外向きのフランジ部142との間にスプリング144が介装されている。
【0085】
この強制回転リング152はまた、そのフランジ部154がスリップワッシャとしての働きもなしており、回転スリーブ114の回転時,即ちこれと一体に回転する第2部分92の回転時に、強制回転リング152が回止め部材104の台座部108上をスリップ回転して、第2部分92の回転に伴ってスプリング144が捩れ変形するのを防止する。
その結果として、スプリング144の上向きの弾発力を、設定した適性な弾発力で作用させることができる。
【0086】
この強制回転リング152には、その上端に沿って周方向に所定間隔で複数の爪156が上向きに突出状態で一体に設けられている。これら爪156の上面は傾斜形状のカム面158とされている。
これらカム面158は、押ボタン112により回転子116に対して下向きの力が及ぼされたとき、回転子116の突出形状の第2係合歯136の下面のコーナー部160(図5参照)に当接して、回転子116をそのカム作用で強制的に図5中反時計方向に回転させる働きをなす。
【0087】
但し回転子116はその回転抵抗、即ち第2部分92におけるフランジ部142の上面に対する摺動抵抗、及び押ボタン112の駆動カム面132に対する摺動抵抗が小さいときには、スプリング144の付勢力に基づいて、強制回転リング152のカム面158に接する前に、押ボタン112の駆動カム面132と、回転子116の第1従動カム面138とのカム作用で、強制回転リング152のカム面158に接する前に回転運動する。
【0088】
しかしながら回転子116は長期使用すると、摺動面で発生する磨耗粉などによって摺動抵抗が次第に増大するようになる。
そこで押ボタン112を下向きに押しても、回転子116が軽く円滑に回転しない恐れが生じてくる。
このとき、回転子116が円滑に回転しない場合であっても、押ボタン112を下向きに強く押し込むと、回転子116の係合歯136のコーナー部160が、強制回転リング152のカム面158に当ることによって、強制回転リング152が強制回転リング152のカム面158により強制的に回転駆動される。
【0089】
本実施形態では、回転スリーブ114を介して押ボタン112を回転させると、これと一体に伸縮軸88における第2部分92が回転し、そしてその回転により雌ねじ94と雄ねじ100とのねじ送りにて、伸縮軸88における第1部分としての温調軸90が、即ち水側パイロット弁84及び湯側パイロット弁86が、図2中上下方向に連続的に進退移動し、これにより吐水の温度調節(温度設定ないし設定変更)が行われる。
一方押ボタン112を押込操作すると、1回の押し込みごとに押ボタン112が押込位置と突出し位置とに移動して、それぞれの位置に上記のスラストロック機構により位置保持される。
そしてこれとともに伸縮軸88の全体が図2に示す前進位置(第1位置)と、図3に示す後退位置(第2位置)とに位置切替えされる。
【0090】
詳しくは、混合弁58を水吐水位置とする第1位置と、混合弁58を湯水混合位置且つ前回の混合水吐水時における温度設定済みの設定温調位置とする第2位置に位置切替えされる。
即ち本実施形態では伸縮軸88が、温調機構と切替機構との共通の部材とされており、そしてこの伸縮軸88と押ボタン112,回転スリーブ114とによって温調機構が構成され、また伸縮軸88と上記のスラストロック機構とによって切替機構が構成されている。
【0091】
図10及び図11は、押ボタン112に対する1回の押し込みごとに伸縮軸88、即ち水側パイロット弁84及び湯側パイロット弁86を位置切替えして、それぞれの位置に位置保持するスラストロック機構の作用を具体的に表している。
図10(I)は水吐水状態を表しており、このとき回転子116における係合歯136が回転スリーブ114のガイド部146の係合歯148に噛み合った状態にあって、回転子116は図2に示す下降位置即ち前進位置にロック状態に保持される。即ち混合弁58が水吐水位置に保持される。
【0092】
この状態で(II)に示しているように押ボタン112を図中下向に押し込むと、回転子116がスプリング144による上向きの付勢力に抗して下向きに押し下げられ、回転子116の係合歯136とガイド部146の係合歯148との係合が外れる。
すると押ボタン112の駆動カム面132と回転子116の第1従動カム面138とのカム作用で、回転子116が図中左方向に所定角度回転させられ、そして押ボタン112の係合歯130と回転子116の係合歯134とが丁度噛み合った位置で回転停止させられる。図10(III)(A)はこのときの状態を表している。
【0093】
このとき、(III)(B)に示しているように回転子116の第2従動カム面140はガイド部146の回転方向の次の案内カム面150に対向した状態となり、そこで(IV)に示しているように回転子116に加えていた押込力を除くと、スプリング144の付勢力で回転子116が押ボタン112及び第2部分92即ち伸縮軸88とともに微小距離上昇して係合歯136の第2従動カム面140が、ガイド部146の案内カム面150に当接する。
【0094】
そしてそれら案内カム面150と第2従動カム面140とのカム作用で、回転子116が更に同図中矢印で示す方向に回転移動して、図10(V)(B)に示すように係合歯136がガイド部146の嵌入溝128の位置に至る。
ここにおいて係合歯136が嵌入溝128に嵌入するに至って、回転子116が押ボタン112及び伸縮軸88とともにスプリング144の付勢力によって上向きに後退運動させられ(図11(VI))、押ボタン112が図中上向きに突き出されて、その突出し位置に位置保持されるとともに、混合弁58が湯水混合位置(設定温調位置)に位置した状態(混合水の吐水状態)となって混合水吐水が行われる。
【0095】
この状態から再び押ボタン112を押し込むと、回転子116が上昇位置から下降せしめられ、そして係合歯136が嵌入溝128から外れると、回転子116が駆動カム面132と第1従動カム面138とのカム作用で、図11(VII)中矢印方向(左方向)に回転移動して、回転子116の係合歯134が押ボタン112の回転方向の次の係合歯130に噛み合うに至って、ここに回転子116の次の1ピッチの回転運動がそこで停止せしめられる(図11(VIII))。
【0096】
この状態で押ボタン112に対する押込力を除くと、スプリング144の付勢力で回転子116が最下位置から微小距離上昇して、係合歯136の第2従動カム面140がガイド部146の案内カム面150に当接するに至り(図11(IX))、更にそれらのカム作用で回転子116が引き続いて図中左方向に回転移動して、回転子116の係合歯136がガイド部146の次の係合歯148に噛み合う位置となり、ここに回転子116の回転運動がそこで停止させられる(図11(X))。
この図11(X)に示す状態は、図10(I)に示すのと同じ状態であって、ここにおいて混合弁58が水吐水状態となる。
【0097】
以上のように本実施形態によれば、回転スリーブ114を回転させることで、その回転量に応じて混合弁58を連続的に位置変化させ、混合水温度を変化させることができる。即ち混合水の温度を設定しまた設定変更することができる。
また押ボタン112を押込操作するごとに、混合弁58を水吐水位置と湯水混合位置、詳しくは予め調節済みの設定温調位置とに位置切替えし、水吐水と予め設定してある温度での混合水吐水とに切り替えることができる。
【0098】
以上のように本実施形態によれば、水吐水と混合水吐水とに切り替えることができ、且つ混合水吐水に切り替えたとき、予め位置調節済みの設定温調位置に自動的に混合弁58を位置させることができる。
このため、水吐水した後において混合水としたときに、改めて吐水温度が所望の設定温度となるように混合弁58を位置調節するといったことを行わなくてもよく、操作が極めて簡便となって使い勝手が向上する。
【0099】
また混合水吐水に切り替えたときに、混合弁58の位置を所望の設定温調位置に位置合せするために時間を要してしまい、またその間に水を多く無駄に消費してしまうといった問題も解決することができる。
更に本実施形態では、単一の湯水混合バルブ24にて吐水の温度調節及び混合水吐水と水吐水との切替えができるため、従来のように混合バルブと切替バルブとを、それぞれ別々に設けておかなくてもよく、装置を簡素化できるとともにコストを低減することができる。
【0100】
更に本実施形態では、湯水混合バルブ24をパイロット式バルブとなし、そして切替機構を、パイロット弁の位置切替えにより主弁たる混合弁58を位置切替えするようになしていることから、極めて軽い力で混合弁58をその連続的な移動と併せて位置切替えすることができ、軽い操作を可能とするとともに、モータ等アクチュエータを駆動源として用いる場合において、モータ等のアクチュエータを小型化でき、ひいては湯水混合バルブを容易に電動式のものとなすことができる。
【0101】
以上本発明の実施形態を詳述したが、これはあくまで一例示であり、本発明の湯水混合バルブは他の様々な形態で構成することが可能である。図12〜図22はその例を示している。
このうち図12〜図14は、本発明を所謂ミキシングタイプの湯水混合バルブに適用した場合の例を示している。
この例では、混合弁58が円筒体にて一体に構成され、この混合弁58に、水側主弁50と湯側主弁52とが一体に備えられている。
そしてこれら水側主弁50,湯側主弁52が、それぞれ水側主弁座60,湯側主弁座62に向けて進退移動するようになしてある。
【0102】
混合弁58には径方向に貫通の通孔161,162が形成されており、水流入通路40,湯流入通路42を通じて流入してきた水と湯とが、これら通孔161,162を通じて混合弁58内部に流入し、そして混合室44で水と湯とが混合されて、混合水が図中左端の流出口48から流出する。
混合弁58には、図中右側に軸部164が設けられ、この軸部164に対し、伸縮軸88における第1部分としての温調軸90が緩衝ばね166を介して連結されている。
【0103】
この例では、回転スリーブ114を回転させると、伸縮軸88における雌ねじ部材としての第2部分92にその回転が伝えられて、第1部分としての温調軸90がねじ送り作用で図中左向きに押し出され、これにより混合弁58が緩衝ばね166を介して図中左向きに移動させられる。
また回転スリーブ114を逆方向に回転させると、温調軸90が図中右方向に移動させられ、これにより混合弁58が同じ右方向に移動させられる。
【0104】
そして混合弁58の連続的な移動により、水側主弁50,湯側主弁52の弁開度が互いに逆の関係で連続的に変化せしめられ、これにより混合室44への水流入量と湯流入量とが連続的に変化して、混合水温度が変化させられる。
即ち混合弁58の移動により混合水の温度が設定されないし設定変更される。
【0105】
一方押ボタン112を押込操作するごとに、押ボタン112が図中左向きの押込位置と、図中右方への突き出し位置とに交互に位置変化し、且つそれぞれの位置に上記のスラストロック機構により位置保持される。
またこれに伴って混合弁58が、図12に示す湯水混合位置と図13に示す水吐水位置又はその逆に位置切替えされる。
ここで図12に示す湯水混合位置は、前回の混合水吐水時において既に混合弁58が位置調節済みの、即ち既に設定されている温度で混合水吐水する設定温調位置である。
【0106】
一方図13に示す水吐水位置は、湯側主弁52が全閉、水側主弁50が全開となる位置であり、このとき混合室44へは水のみが流入し、湯の流入は遮断されている。
従って流出口48からは水が単独で流出する。
【0107】
この実施形態においても、回転スリーブ114を回転させることで、混合弁58を連続的に図中左右方向に位置変化させることができ、これにより混合水の設定温度を自在に変化させることができる一方で、即ち吐水の温度を連続的に変化させることができる一方で、押ボタン112を押込操作するごとに、混合弁58を図13に示す水吐水状態から、図12に示す混合水の吐水状態に若しくはその逆に切り替えることができ、且つ図12に示す混合水の吐水状態に切り替えたとき、混合弁58を予め調節してある位置、即ち設定温調位置に自動的に位置させることができ、設定した所望温度で混合水吐水することができる。
【0108】
尚、回転スリーブ114の回転によって伸縮軸88の温調軸90を図中左右方向に前進後退移動させる際、湯側主弁52が湯側主弁座62に当接して移動阻止された後においては、図14(C)に示すように緩衝ばね166が収縮変形することによって、過剰な操作力が吸収される。
また逆に水側主弁50が水側主弁座60に当接した後においては、図14(B)に示すように緩衝ばね166が収縮変形することで過剰な操作力が吸収される。
尚、図14(A)は図12に示す状態を拡大して示したものである。
【0109】
図15及び図16は、本発明を自動温度調節機能付き(サーモスタット式)の湯水混合バルブに適用した場合の実施形態を示している。
この例では、伸縮軸88における第1部分としての温調軸90に雄ねじ168が設けられ、この雄ねじ168が、円筒形状をなす進退部材170の内周面の雌ねじ172に螺合されている。
この実施形態では、水流入口36,湯流入口38,水流入通路40,湯流入通路42,水側主弁50,湯側主弁52、更に水側主弁座60,湯側主弁座62の位置が図12とは逆位置となっている。
【0110】
また混合室44内には形状記憶合金製のコイルばねから成る感温ばね174が収容され、感温ばね174にて混合弁58が図中右向き、即ち水側主弁50の弁開度を大とする方向に付勢されている。
また混合弁58と進退部材170との間に介挿されたコイルばねから成るバイアスばね176により、混合弁58が図中左向き、即ち水側主弁50の弁開度を小とする方向に付勢されている。
【0111】
この例の湯水混合バルブ24においても、回転スリーブ114を回転させることで混合弁58の位置を連続的に変化させ、混合水の設定温度を連続的に変化させることができる。
また押ボタン112を押込操作するごとに、混合弁58の位置を図16に示す水吐水位置と図15に示す混合水の吐水位置とに切り替えることができる。
【0112】
この実施形態の湯水混合バルブ24は自動温度調節機能付きのもので、図15に示す設定温調位置に混合弁58を位置させた状態で、混合室44内の混合水温度が設定温度に対して高くなると、感温ばね174がこれに感応して伸長し、混合弁58に対する付勢力を増大させる。
【0113】
その結果感温ばね174による付勢力とバイアスばね176による付勢力との釣合位置が図中右方向にシフトし、これに従って混合弁58の位置が図中右方向に微動される。
その結果湯側主弁52の弁開度が小さく、水側主弁50の弁開度が広く変化して水の流入量が多く、湯の流入量が少なくなり、混合水温度が低くなる。即ち混合水が設定温度となるように自動調整される。
【0114】
図17〜図21は、本発明をパイロット式の湯水混合バルブに適用した場合の実施形態を示している。
但しこの実施形態ではパイロット弁がパイロット弁ユニットとして構成してある。
【0115】
図17に示しているようにこの実施形態においては、図2に示す実施形態と同様に水側主弁50,湯側主弁52のそれぞれがダイヤフラム弁となしてある。
但しこの実施形態では、水側主弁50,湯側主弁52のそれぞれに、円環状の突起から成る絞り部178,180が設けられており、それら絞り部178,180が、対応する水側主弁座60,湯側主弁座62に当接することで水側主弁50,湯側主弁52が閉弁するようになっている。
【0116】
この実施形態の場合、水流入通路40における絞り部178よりも上流側が1次側通路となり、下流側が2次側通路となる。
同じく湯流入通路42における絞り部180よりも上流側の部分が1次側通路となり、下流側部分が2次側通路となる。
尚、水側主弁50,湯側主弁52のそれぞれの背後に水側背圧室64,湯側背圧室66が形成されている点は、図2に示す実施形態と同様である。
【0117】
この実施形態ではまた、水側主弁50,湯側主弁52のそれぞれの中心部が円筒形状に形成されている。図中182,184はその円筒部を表している。
本実施形態では、伸縮軸88における第1部分としての温調軸90が分割軸90-1と90-2とに軸方向に分割され、それらが緩衝ばね166を介して軸方向に弾性的に結合されている。
【0118】
分割軸90-2は細径をなしており、その径方向外側にスリーブ188が嵌装されている。
そして図19に示しているようにこのスリーブ188に水側パイロット弁84,湯側パイロット弁86が一体に構成されている。
ここでスリーブ188は分割軸90-2に対して、図中左右方向即ち軸方向に相対移動可能である。
【0119】
分割軸90-2には、スリーブ188の軸方向外側の位置において大径のフランジ部190と、リング192とが軸方向に位置決状態で設けられている。
リング192とスリーブ188の図中左端との間には感温ばね174が介挿されていて、その感温ばね174による付勢力がスリーブ188に対して図中右向きに作用せしめられている。
【0120】
またフランジ部190とスリーブ188の図中右端との間にはバイアスばね176が介挿され、かかるバイアスばね176の付勢力が、スリーブ188に対して図中左向きに作用せしめられている。
即ち分割軸90-2には水側パイロット弁84,湯側パイロット弁86が軸方向に相対移動可能に保持されているとともに、感温ばね174とバイアスばね176とが、それらに対して付勢力を逆向きに作用させる状態で、スリーブ188の両側位置に保持されている。
【0121】
この実施形態では、これら水側パイロット弁84,湯側パイロット弁86,感温ばね174,バイアスばね176が温調軸の一部をなす分割軸90-2に一体に組み付けられ、全体が一体に移動するパイロット弁ユニット194を構成している。
【0122】
図20に拡大して示しているように、この例では水側背圧室64,湯側背圧室66のそれぞれの外側に且つ2次側通路上に、水側パイロット弁84,湯側パイロット弁86が位置させられている。
ここで水側パイロット弁84は水側パイロット弁座80に向けて進退移動し、水側パイロット通路72の開度を変化させる。
また湯側パイロット弁86は湯側パイロット弁座82に向けて軸方向に進退移動し、これにより湯側パイロット通路74の開度を変化させる。
【0123】
この実施形態では、水側パイロット弁84,湯側パイロット弁86のそれぞれが、水側背圧室64,湯側背圧室66内部に位置しておらず、従ってそれら水側パイロット弁84,湯側パイロット弁86に対して水側背圧室64,湯側背圧室66の圧力が直接作用しない。
それ故給水圧や給湯圧の変動により水側背圧室64,湯側背圧室66内部の圧力変動が生じた場合であっても、その圧力変動を水側パイロット弁84,湯側パイロット弁86が直接に受けず、即ちそれらの圧力変動によって水側パイロット弁84,湯側パイロット弁86が位置ずれを生じず、温度調節動作を高精度で安定して行い得る特長を有する。
【0124】
尚水側パイロット弁84に追従して水側主弁50が進退移動し、また湯側パイロット弁86に追従して湯側主弁52が進退移動する点は上記実施形態と同様である。
図20及び図21は、それら水側パイロット弁84,湯側パイロット弁86の進退移動に追従して水側主弁50,湯側主弁52が進退移動する際の作用を表している。
この実施形態においても、回転スリーブ114を回転操作することで混合水の温度調節、即ち温度設定を行うことができ、また押ボタン112を1回押し込むごとに、図18に示す水吐水状態と図17に示す設定温度での混合水の吐水状態とに切り替えることができる。
尚図17及び図20において、196は水側背圧室64と湯側背圧室66との間を水密にシールするシール部材としてのOリングである。
【0125】
本実施形態においては、混合弁58に対する軽操作が可能なパイロット式バルブとなしてあるのに加えて、感温ばね174及びバイアスばね176を、パイロット弁(水側パイロット弁84,湯側パイロット弁86)及び温調軸90とともにパイロット弁ユニット194となし、全体を一体に移動させるようになしていることから、パイロット弁の移動操作に際して感温ばね174やバイアスばね176による変形抵抗を受けることがなく、操作をより軽いものとなすことができる利点が得られる。
【0126】
本発明の湯水混合バルブは、様々な水栓装置に対して適用することが可能である。
図22(A)は、例えば浴室の水栓装置に適用した場合の例で、この例ではハウジング198内部に、吐止水と流調とを行うバルブと並んで本実施形態の湯水混合バルブ24(図示省略)が内蔵され、そして吐止水及び流調を行うバルブを操作するための押ボタン式の吐止水操作部18と回転ダイヤル式の流調ハンドル20とが設けられ、また湯水混合バルブ24の操作のための押ボタン式の切替操作部30と、回転ダイヤル式の温調操作部28とが外部に現れる状態で設けられている。
【0127】
また図22(B)の例は通常の湯水混合水栓への適用例を示したもので、図中200は湯水混合水栓を、202は吐水管204からの吐水とシャワー吐水とを切り替え且つ吐水流量を調節するための流調及び切替ハンドルであり、また28は反対側の位置に設けられた本実施形態の湯水混合バルブ24における温調ハンドルであり、30は押ボタン式の切替操作部である。
【0128】
以上本発明の様々な実施形態を例示したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、感温体として感温ばね以外の感温体を用いることも可能であるなど、本発明は他の様々な形態で湯水混合バルブを構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明の一実施形態の湯水混合バルブを備えた水栓を示す図である。
【図2】同実施形態の湯水混合バルブを混合弁が水吐水位置に切り替った状態で表わした図である。
【図3】同実施形態の湯水混合バルブを混合弁が湯水混合位置に切り替った状態で表わした図である。
【図4】同実施形態の要部の各部材を分解して示す図である。
【図5】図4の更に要部を拡大して示す図である。
【図6】同実施形態の作用説明図である。
【図7】図6に続く作用説明図である。
【図8】同実施形態の他の作用説明図である。
【図9】図8とは異なる作用状態を示す作用説明図である。
【図10】同実施形態におけるスラストロック機構の作用説明図である。
【図11】図10に続く作用説明図である。
【図12】本発明の他の実施形態を示した図である。
【図13】同実施形態を図12とは異なる作用状態で示した図である。
【図14】同実施形態における緩衝ばねの作用を説明する図である。
【図15】本発明の更に他の実施形態を示した図である。
【図16】同実施形態を図15とは異なる作用状態で示した図である。
【図17】本発明の更に他の実施形態を示した図である。
【図18】同実施形態を図17とは異なる作用状態で示した図である。
【図19】同実施形態におけるパイロット弁ユニットの構成を示した図である
【図20】同実施形態の作用説明図である。
【図21】図20に続く作用説明図である。
【図22】本発明の湯水混合バルブを他の水栓装置に適用した例を示した図である。
【図23】従来の湯水混合バルブの一例を示した図である。
【符号の説明】
【0130】
18 吐止水操作部
20 流調操作部
24 湯水混合バルブ
40 水流入通路
42 湯流入通路
50 水側主弁
52 湯側主弁
58 混合弁
64 水側背圧室
66 湯側背圧室
68,70 導入小孔
72 水側パイロット通路
74 湯側パイロット通路
84 水側パイロット弁
86 湯側パイロット弁
88 伸縮軸
90 温調軸(第1部分)
92 第2部分
94 雌ねじ
100 雄ねじ
174 感温ばね
176 バイアスばね
194 パイロット弁ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)水流入通路及び湯流入通路と、(ロ)水側主弁及び湯側主弁を備え、それら水側主弁及び湯側主弁の弁開度を互いに逆の関係で大小変化させて湯水の混合比率を変化させる混合弁と、を有し、操作部の操作により該混合弁を位置移動させることによって、混合水温度を設定ないし設定変更するようになした湯水混合バルブにおいて
前記混合弁を、湯と水とを混合して混合水を吐水する湯水混合位置と、前記湯側主弁を全閉、前記水側主弁を全開として水のみを吐水する水吐水位置との間で交互に切替可能となし、
且つ該混合弁を前記水吐水位置に位置させて水吐水した後において前記湯水混合位置に切り替えたときに、前回の混合水吐水時における位置調節済みの設定温調位置に自動的に該混合弁を位置させるようになしてあることを特徴とする湯水混合バルブ。
【請求項2】
請求項1において、前記混合弁を連続的に進退移動させ、進退移動量に応じて湯水混合位置を変化させて温調を行う温調機構と、水吐水及び混合水吐水を切り替える切替機構とが設けてあり
且つ該切替機構は、前記混合弁を、前記湯側主弁を全閉とし前記水側主弁を全開とする前記水吐水位置と、前記設定温調位置との2位置の間で位置切替えするものとなしてあることを特徴とする湯水混合バルブ。
【請求項3】
請求項2において、前記温調機構及び切替機構が共通の伸縮軸を有しており、
該温調機構は、該伸縮軸を連続的に伸縮させることにより前記混合弁を連続的に位置移動させて温調動作を行い、
前記切替機構は、該伸縮軸を伸縮させることなく全体的に2位置の間で軸方向位置を変化させることで、前記混合弁を前記水吐水位置と前記設定温調位置とに位置切替えするものとなしてあることを特徴とする湯水混合バルブ。
【請求項4】
請求項3において、前記伸縮軸が第1部分と第2部分とに分割されていて、それら第1部分と第2部分とがねじ結合され、ねじ部のねじ送りで全体が伸縮するようになしてあることを特徴とする湯水混合バルブ。
【請求項5】
請求項3,4の何れかにおいて、前記切替機構が、前記伸縮軸を前記水吐水位置に対応した第1位置と、前記設定温調位置に対応した第2位置とに交互に切り替え且つ保持するロック機構を備えていることを特徴とする湯水混合バルブ。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかにおいて、混合室内に混合水温度の上昇に感応して前記水側主弁を開く方向に前記混合弁を移動させる感温体が設けられていることを特徴とする湯水混合バルブ。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかにおいて、前記湯水混合バルブが、前記混合弁の移動を制御するパイロット弁を有し、該パイロット弁の移動に追従して該混合弁を該パイロット弁と同方向に移動させるパイロット式のバルブであり、前記切替機構が、該パイロット弁の位置を、前記混合弁における前記水吐水位置と前記設定温調位置とに各対応した2位置の間で切り替えて該混合弁の位置切替えを行うものとなしてあることを特徴とする湯水混合バルブ。
【請求項8】
請求項7において、(a)前記水側主弁,湯側主弁の各背後に且つ導入小孔を通じて前記水流入通路,湯流入通路に連通し、内部の圧力を該水側主弁,湯側主弁に対し閉弁方向の押圧力として作用させる水側背圧室及び湯側背圧室と、(b)該水側背圧室,湯側背圧室の水,湯を各下流側に抜く圧抜通路としての水側パイロット通路及び湯側パイロット通路と、を有しているとともに、
前記パイロット弁として、(c)前記水側パイロット通路,湯側パイロット通路の開度を互いに逆の関係で大きく又は小さく変化させる方向に進退移動する水側パイロット弁及び湯側パイロット弁、を有し、それら水側パイロット弁,湯側パイロット弁の進退移動に追従して前記水側主弁,湯側主弁を進退移動させるようになしてあることを特徴とする湯水混合バルブ。
【請求項9】
請求項1〜5の何れかにおいて、前記湯水混合バルブが、混合室内に混合水温度の上昇に感応して前記水側主弁を開く方向に前記混合弁を移動させる感温体が設けられる一方、該混合弁を該水側主弁が閉じる方向に付勢するバイアスばねが設けられて成る自動温度調節機能付きのものであって、
且つ前記混合弁の移動を制御するパイロット弁を有し、該パイロット弁の移動に追従して前記混合弁を該パイロット弁と同方向に移動させるパイロット式のバルブとなしてあり、前記切替機構が該パイロット弁の位置を、前記混合弁における前記水吐水位置と前記設定温調位置とに各対応した2位置の間で切り替えて該混合弁の位置切替えをなすものとしてあり、
更に温調軸を有していて、該温調軸により前記パイロット弁を該温調軸に沿って軸方向に相対移動可能に保持しているとともに、前記感温体としての感温ばね及び前記バイアスばねを該パイロット弁に対し互いに逆向きに付勢力を及ぼす状態に該温調軸に組み付けて保持させ、それら感温ばね,バイアスばね,パイロット弁及び温調軸を含んで、全体が一体に移動するパイロット弁ユニットを構成してあることを特徴とする湯水混合バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−52677(P2009−52677A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220434(P2007−220434)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】