説明

湯水混合弁

【課題】パイロット弁が背圧室内で圧力を受けて、その圧力変動により適正位置から位置ずれし、そのことにより温度調節特性が悪影響を受ける問題を解消し、精度高く温度調節動作を行うことのできる自動温度調節機能付きの湯水混合弁を提供する。
【解決手段】自動温度調節機能付きのパイロット式の湯水混合弁において、水側主弁20,湯側主弁22には水側,湯側の背圧室38,40の圧力を軸方向に受ける背圧受面62,64と、水流入通路16,湯流入通路18における絞り部58,60より上流側の1次圧を軸方向且つ背圧とは逆方向に受ける1次圧受面66,68が備えてあり、且つ水側,湯側のパイロット弁54,56は水側,湯側の背圧室38,40の外側で水側,湯側のパイロット通路46,48を開度制御するように設けておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、弁ケースの内部で水側主弁と湯側主弁とを軸方向に移動させて湯水の混合比率を変化させ、混合水の温度を調節する湯水混合弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、弁ケースの内部で水側主弁と湯側主弁とを軸方向に移動させることで水と湯との混合比率を変化させ、混合水温度を調節する湯水混合弁が広く用いられている。
図15はこの種湯水混合弁の具体例を示している。
同図において200,202は筒形の弁ケース204内部に形成された水流入通路,湯流入通路で、206は流入した水と湯とを混合し流出させる混合室である。
208,210は軸方向に離隔して温調軸(温度調節軸)212に設けられた水側主弁,湯側主弁であり、また214,216はそれら水側主弁208,湯側主弁210に対応して設けられた水側主弁座,湯側主弁座である。
【0003】
この湯水混合弁では、温調軸212を図中左向きに一杯まで移動させると、(A)に示しているように湯側主弁210が湯側主弁座216に着座して水側主弁208が一杯まで開かれ、水流入通路200からの水が混合室206へと流入して吐水部に向け流出する。
また逆に温調軸212を図中右向きに一杯まで移動させると、(B)に示しているように水側主弁208が水側主弁座214に着座して湯側主弁210が一杯まで開かれ、湯流入通路202からの湯が混合室206へと流入して吐水部に向け流出する。
【0004】
またその中間の位置、即ち水側主弁208と湯側主弁210とが水側主弁座214,湯側主弁座216から離間してそれぞれ開いた状態の下では、水流入通路200からの水と湯流入通路202からの湯とが混合室206に流入して混合され、吐水部に向けて流出する。
更に温調軸212を図中左右方向に移動させて水側主弁208,湯側主弁210の開度をそれぞれ変化させることで、それぞれの開度に応じた流量で水,湯が混合室206に流入して混合水の温度が調節され、混合水が吐水部に向けて流出する。
【0005】
この湯水混合弁は、温調軸212の図中左右方向の操作量、即ちこれに連結したハンドルの操作量に応じて水側主弁208,湯側主弁210の位置が定まり、その位置に応じて水と湯とを混合して流出する、いわゆるミキシングタイプの湯水混合弁であるが、この湯水混合弁の場合、給水圧,給湯圧に抗して水側主弁208,湯側主弁210を移動させなければならず、特に給水圧が高い場合等において操作抵抗が大きく、操作が重いといった問題があった。
また操作抵抗が大きいことから小型アクチュエータにて水側主弁208,湯側主弁210を駆動するといったことが難しい問題があった。
【0006】
湯水混合弁には、このようなミキシングタイプの湯水混合弁のほか、自動温度調節機能付きの湯水混合弁、詳しくは混合水温度の上昇に感応して水側主弁を開く方向に温調軸を移動させる感温体を混合室に備える一方、その温調軸を水側主弁が閉じる方向に付勢するバイアスばねを備え、その感温体による混合水の温度感知に基づいて水側主弁,湯側主弁を微動させて、それぞれ水側主弁,湯側主弁の開度を自動的に調節し、混合水の温度を設定温度に自動的に調節する機能を備えた自動温度調節機能付きの湯水混合弁がある。
例えば下記特許文献1に、この種の自動温度調節機能付きの湯水混合弁が開示されている。
この自動温度調節機能付(サーモスタット式)の湯水混合弁にあっても、上記ミキシングタイプの湯水混合弁と同様に操作抵抗が重いといった問題が内在している。
【0007】
そこで本出願人は先の特許願(下記特許文献2)において、 (イ)筒形の弁ケースと、(ロ)弁ケースに且つ軸方向の隔たった位置に設けられた水流入口及び湯流入口と、(ハ)それら水流入,湯流入口に続く水流入通路及び湯流入通路と、(ニ)筒形をなし、弁ケースの内面に沿って軸方向に移動し、水流入通路,湯流入通路の開度を互いに逆の関係で大きく又は小さくさせる水側主弁及び湯側湯弁と、(ホ)水側主弁,湯側主弁のそれぞれの背後に形成され、内部の圧力を水側主弁,湯側主弁に対する背圧且つ閉弁方向の押圧力として作用させる水側,湯側の背圧室と、(ヘ)水流入口,湯流入口からの水,湯を各背圧室に導いて背圧室の圧力をそれぞれ増大させる水側,湯側の導入通路と、(ト)水側主弁,湯側主弁よりも下流側の2次側通路と各背圧室とを連通させる圧抜通路としての水側,湯側のパイロット通路と、(チ)水側主弁,湯側主弁の進退移動方向に進退移動し、各パイロット通路の開度を制御する水側,湯側のパイロット弁と、を有し、それらパイロット弁の進退移動に追従して水側主弁,湯側主弁を進退移動させて湯水の混合比率を変化させ、混合水の温度調節を行う湯水混合弁を提案している。
図16はその具体例を示している(この例は自動温度調節機能付きの湯水混合弁の例)。
【0008】
同図において、218は筒形を成す弁ケースで、220,222は軸方向に離隔して設けられた水流入口,湯流入口であり、そしてこれら水流入口220,湯流入口222に続いて水流入通路200,湯流入通路202が径方向に設けられている。
【0009】
224,226は筒形をなし、弁ケース218の内面に沿って軸方向に移動し、その軸方向の移動により水流入通路200,湯流入通路202の開度を互いに逆の関係で大きく又は小さく変化させるピストン式の水側主弁,湯側主弁である。
【0010】
228,230は水側主弁224,湯側主弁226のそれぞれの背後に形成された水側,湯側の各背圧室で、これら背圧室228,230は内部の圧力を水側主弁224,湯側主弁226に対する背圧且つ閉弁方向の押圧力として作用させる。
【0011】
232,234は水側主弁224,湯側主弁226をそれぞれ貫通して設けられ、水流入口220,湯流入口222からの水,湯をそれぞれ背圧室228,230に導入して圧力を増大させる導入通路であり、また236,238は水側主弁224,湯側主弁226より下流側の2次側通路と背圧室228,230とを連通させ、背圧室228,230の圧力を抜いて圧力減少させる圧抜通路としてのパイロット通路である。
【0012】
240,242は、水側主弁224,湯側主弁226と同じ方向に進退移動してパイロット通路236,238の開度を変化させる水側,湯側の各パイロット弁で、それぞれ背圧室228,230内に配置されている。
そしてそれらパイロット弁240と242とが、水側主弁224及び湯側主弁226を貫通する共通の温調軸244にて連結され一体化されている。
【0013】
246は混合室206内部に収容された、形状記憶合金製のコイルばねから成る感温ばねで、この感温ばね246は、温調軸244を介してパイロット弁240及び242に対し図中右向きの付勢力を作用させ、そして混合室206内部の混合水の温度が上昇すると軸方向に伸長して図中右向きの付勢力を増大させる。
【0014】
水側の背圧室228内にはコイルばねからなるバイアスばね248が配設され、このバイアスばね248がパイロット弁240及び242に対し、感温ばね246とは逆向きの付勢力、即ち図中左向きの付勢力を及ぼしている。
【0015】
250は回転式の温調(温度調節)ハンドルで、この温調ハンドル250を回転操作すると軸部252が弁ケース218とのねじ結合に基づいて図中左右方向に進退移動する。
この軸部252と湯側のパイロット弁242との間にはコイルばね254が介設されており、湯側及び水側のパイロット弁242,240に対し図中右向きの付勢力を作用させている。
ここでコイルばね254の付勢力はバイアスばね248の付勢力よりも弱く設定されており、そのばね力の差が温調軸244を感温ばね246とは反対方向に付勢する実際のバイアスの付勢力となる。
【0016】
この自動温度調節機能付きの湯水混合弁では、温調ハンドル250を回転操作して温調軸244を例えば図中右方向に移動させると、水側のパイロット弁240が水側主弁224から離れてパイロット通路236の開度が大となり、これにより水側の背圧室228の水がパイロット通路236を通じて混合室206側へと流れ、背圧室228の圧力が減少する。
すると水側主弁224が水流入通路200の給水圧により図中右方向に押されて移動し、背圧室228の圧力と水流入通路200の給水圧とがバランスする位置で停止する。
即ちパイロット弁240の移動に追従して水側主弁224が同方向に移動し、水流入通路200の開度を大として混合室206への水の流入量を増大させる。
【0017】
このとき湯側のパイロット弁242が図中右方向に移動することによって、湯側のパイロット通路238の開度が小となり、これに応じて背圧室230の圧力が高くなって、湯流入通路202からの給湯圧と背圧室230の圧力とがバランスする位置まで湯側主弁226が図中右方向に移動し、湯流入通路202の開度を小とする。即ち混合室206への湯の流入量を減少させる。
【0018】
また一方、温調ハンドル250を上記とは逆方向に回転操作すると、温調軸244が図中左方向に移動して水側主弁224の開度を小さく、湯側主弁226の開度を大きく変化させ、混合室206への水流入量を少なく、湯流入量を多くする。
【0019】
この自動温度調節機能付きの湯水混合弁は、水側及び湯側のパイロット弁240,242の移動によって水側及び湯側の背圧室228,230の圧力を変化させ、これにより水側主弁224,湯側主弁226の開度を制御するもので、水,湯の流動圧に抗して直接水側主弁224,湯側主弁226を開閉動作させなくてもよく、そのため操作抵抗が小さく、軽い操作が可能である。
【0020】
しかしながらこの図16に示す湯水混合弁の場合、水側及び湯側の各パイロット弁240,242のそれぞれが背圧室228,230内に挿入されていて、それら背圧室228,230内部でパイロット通路236,238の開度を制御するものとなしてあるため、水側のパイロット弁240に対し背圧室228内でその圧力が図中左向きに作用し、詳しくはパイロット弁240と水側主弁224に形成されたパイロット弁座の各軸直角方向の径の差に対応した面積に対する圧力が図中左向きに作用し、また同様に湯側の背圧室230内でその圧力がパイロット弁242に対し図中右方向に作用する。
【0021】
その結果、温調軸244を操作してパイロット弁240,242を図中左右方向に操作する際に、それらパイロット弁240,242に対する各背圧室228,230の圧力が作用する分、操作が重くなってしまう問題がある。
【0022】
この問題は、図16に示す自動温度調節機能付きの湯水混合弁に限らず、共通の温調軸を軸方向に移動操作して水側及び湯側の各パイロット弁を移動させることで水側主弁224,湯側主弁226を移動させるミキシングタイプの湯水混合弁においても生じる問題である。
【0023】
特に図16に示す自動温度調節機能付きの湯水混合弁にあっては、給水圧,給湯圧の圧力変化によって背圧室228,230の圧力変動が生じると、その圧力変動の影響を受けてパイロット弁240,242が位置ずれを生じ、それにより温度調節に狂いを生じてしまう問題が生ずる。
【0024】
【特許文献1】特開2001−4050号公報
【特許文献2】特開2006−57761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は以上のような事情を背景とし、パイロット弁が背圧室内でその圧力を受けて、パイロット弁の移動に対する操作力が重くなる問題を解決することを目的としてなされたものである。
また本発明の他の目的は、自動温度調節機能付きの湯水混合弁において、背圧室内で圧力変動が生じることによってパイロット弁が適正位置から位置ずれし、そのことによって温度調節特性が損われるのを防止して、精度高く温度調節動作を行うことのできる自動温度調節機能付きの湯水混合弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
而して請求項1のものは、(イ)筒形の弁ケースと、(ロ)該弁ケースに且つ軸方向の隔たった位置に設けられた水流入口及び湯流入口と、(ハ)それら水流入,湯流入口に続く水流入通路及び湯流入通路と、(ニ)筒形をなし、前記弁ケースの内面に沿って軸方向に移動し、前記水流入通路,湯流入通路の開度を互いに逆の関係で大きく又は小さく変化させる水側主弁及び湯側主弁と、(ホ)該水側主弁,湯側主弁のそれぞれの背後に形成され、内部の圧力を該水側主弁,湯側主弁に対する背圧且つ閉弁方向の押圧力として作用させる水側,湯側の背圧室と、(ヘ)前記水流入口,湯流入口からの水,湯を前記水側,湯側の背圧室に導いて該背圧室の圧力をそれぞれ増大させる導入通路と、(ト)前記水側主弁,湯側主弁よりも下流側の2次側通路と前記水側,湯側の背圧室とを連通させる圧抜通路としての水側,湯側のパイロット通路と、(チ)前記水側主弁,湯側主弁の進退移動方向に進退移動し、前記水側,湯側のパイロット通路の開度を制御する水側,湯側のパイロット弁と、を有し、該水側,湯側のパイロット弁の進退移動に追従して前記水側主弁,湯側主弁を進退移動させて湯水の混合比率を変化させ、混合水の温度調節を行う湯水混合弁において、前記水側主弁,湯側主弁には前記水側,湯側の背圧室の圧力を軸方向に受ける背圧受面が備えてあるとともに、前記水流入通路,湯流入通路上には流れを絞る絞り部が設けてあって、前記水側主弁,湯側主弁には該水流入通路,湯流入通路における該絞り部よりも上流側の1次圧を軸方向且つ前記背圧とは逆方向に受ける1次圧受面が備えてあり、且つ前記水側,湯側のパイロット弁は前記水側,湯側の背圧室の外側に配置してあって、該背圧室の外側で前記水側,湯側のパイロット通路を開度制御するものとなしてあることを特徴とする。
【0027】
請求項2のものは、請求項1において、前記水側主弁,湯側主弁は互いに軸方向に分離されていて、該水側主弁,湯側主弁がそれぞれ互いに独立して移動するものとなしてあることを特徴とする。
【0028】
請求項3のものは、(イ)筒形の弁ケースと、(ロ)該弁ケースに且つ軸方向の隔たった位置に設けられた水流入口及び湯流入口と、(ハ)それら水流入,湯流入口に続く水流入通路及び湯流入通路と、(ニ)前記弁ケースの内部で軸方向に移動して前記水流入通路,湯流入通路の開度を互いに逆の関係で大きく又は小さく変化させる水側主弁及び湯側主弁と、を有し、該水側主弁,湯側主弁の移動により湯水の混合比率を変化させて混合水の温度調節を行う湯水混合弁において、前記水側主弁及び湯側主弁を一体に軸方向に移動するものとなすとともに、該水側主弁又は湯側主弁の何れか一方の主弁を前記弁ケースの内面に沿って軸方向に移動する筒形のパイロット駆動式の駆動弁となして、(a)該駆動弁の背後に、内部の圧力を該駆動弁に対する背圧且つ閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室を設けるとともに、(b)該駆動弁に対応した前記水流入通路又は湯流入通路からの水又は湯を該背圧室に導入して該背圧室の圧力を増大させる導入通路と、(c)前記駆動弁よりも下流側の2次側通路と前記背圧室と連通させる圧抜通路としてのパイロット通路と、(d)該駆動弁の進退移動方向に進退移動し、該パイロット通路の開度を制御するパイロット弁と、を設けて、該パイロット弁の進退移動に追従して前記駆動弁を進退移動させることにより、該駆動弁をなす前記水側主弁又は湯側主弁の一方と他方とを一体に移動させるようになし、且つ前記駆動弁には前記背圧室の圧力を軸方向に受ける背圧受面が備えてあるとともに、該駆動弁に対応する前記水流入通路又は湯流入通路には流れを絞る絞り部が設けてあって、該駆動弁には該絞り部よりも上流側の1次圧を軸方向且つ前記背圧とは逆方向に受ける1次圧受面が備えてあり、更に前記パイロット弁は前記背圧室の外側に配置してあって、該背圧室の外側で前記パイロット通路を開度制御するものとなしてあることを特徴とする。
【0029】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記絞り部が前記水流入通路又は湯流入通路に突出する状態で前記駆動弁に設けた突出部にて構成してあることを特徴とする。
【0030】
請求項5のものは、請求項1〜4の何れかにおいて、前記湯水混合弁が、混合水温度の上昇に感応して軸方向に伸び、前記水側主弁を開く方向に前記パイロット弁に対する付勢力を増大させる感温体が混合室に設けられる一方、該水側主弁が閉じる方向に該パイロット弁を付勢するバイアスばねが設けられて成る自動温度調節機能付のものであることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0031】
以上のように請求項1のものは、水側主弁,湯側主弁に背圧室の圧力を軸方向に受ける背圧受面を備えるとともに、水流入通路,湯流入通路上には絞り部を設けて、これより上流側の1次圧を軸方向且つ背圧とは逆方向に受ける1次圧受面を水側主弁,湯側主弁のそれぞれに備え、且つ水側,湯側の各パイロット弁を背圧室の外側に配置して、その背圧室の外側で水側,湯側のパイロット通路を開度制御するようになしたものである。
【0032】
かかる請求項1の湯水混合弁においては、パイロット弁が背圧室の外側に位置していて、背圧室の外側でパイロット通路を開度制御するため、パイロット弁に働く背圧室の圧力に基づく力の影響が小さく、従ってパイロット弁に対し背圧室の圧力が作用することによって、パイロット弁を移動させる際の操作が重くなるのを回避することができる。
【0033】
また請求項5に従って、湯水混合弁を自動温度調節機能付きのものとなした場合において、給水圧や給湯圧の変動により水側,湯側の背圧室の圧力変動が生じた場合においても、その圧力変動によって水側,湯側のパイロット弁が調節位置から位置ずれするのを防止でき、これにより混合水温度を設定した温度に精度高く自動調節することが可能となる。
【0034】
本発明において、水側主弁,湯側主弁は背圧室の圧力を軸方向に受ける背圧受面と、水流入通路,湯流入通路における絞り部よりも上流側の1次圧を軸方向且つ背圧室とは逆方向に受ける1次圧受面を備えたものとして構成してある。
従ってこの請求項1では、水側主弁,湯側主弁はそれぞれ背圧室の背圧及び1次圧をバランスさせるように軸方向に位置移動して水流入通路,湯流入通路の開度を変化させ、水流入通路,湯流入通路の開度を制御する。
【0035】
それ故この請求項1では、水側主弁及び湯側主弁を軸方向に一体移動する状態に構成することもできるし、或いはまた請求項2に従って水側主弁,湯側主弁を軸方向に分離し、それら水側主弁,湯側主弁を軸方向に互いに独立して移動するように構成することもできる。
【0036】
例えば水側湯弁,湯側主弁が1次圧を軸方向且つ背圧と逆方向に受ける1次圧受面を備えていない場合、水側主弁,湯側主弁を軸方向に一体移動する状態に構成しておくことが必要となる。
このようにすることによって、水側主弁と湯側主弁とを水側及び湯側の各背圧室の圧力バランスによって軸方向に移動させ、水側主弁,湯側主弁の移動により水側流入通路と湯側流入通路との開度を互いに逆の関係で大きく又は小さく変化させることが可能となる。
【0037】
しかるにこの請求項1に従って水側主弁,湯側主弁に背圧受面とは逆方向に1次圧を受ける1次圧受面を備えておいた場合、水側主弁,湯側主弁を軸方向移動に関して一体化させることは必要でなく、それぞれを分離して、互いに独立して軸方向に移動させるようになしておくことが可能となる。
【0038】
而して請求項2に従ってこのように水側主弁,湯側主弁をそれぞれ独立に軸方向に移動可能となしておいた場合、給水圧や給湯圧が変化した場合において、それぞれの圧力変化に応じて水側主弁,湯側主弁を独立して適正位置に位置移動させることが可能となる。
【0039】
次に請求項3は、水側主弁及び湯側主弁を一体に軸方向に移動するものとなすとともに、何れか一方の主弁を弁ケースの内面に沿って軸方向に移動する筒形のパイロット駆動式の駆動弁となして、その駆動弁の側に背圧室と、背圧室の圧力を増大させる導入通路と、背圧室の圧力を減少させるパイロット通路と、パイロット通路の開度を制御するパイロット弁と、を設けて湯水混合弁を構成し、そしてその駆動弁に、請求項1と同様にして背圧受面と、1次圧受面とを備え、且つ上記パイロット弁を背圧室の外側においてパイロット通路を開度制御するものとなしたものである。
この請求項3においても、パイロット弁に働く背圧室の圧力に基づく力の影響を小さくし、給水圧又は給湯圧の圧力変動によってパイロット弁が位置ずれを起して、そのことにより温調特性に悪影響が及ぶのを有効に防止することが可能となる。
【0040】
この請求項3では、背圧室,導入通路,パイロット通路,パイロット弁を水側,湯側の何れか一方にだけ設けておけば良く、従って湯水混合弁の構成を簡素化することができる。
【0041】
また1つのパイロット弁で水側主弁又は湯側主弁の何れか一方の主弁を位置制御するだけで、自動的に他方の主弁を連動して位置制御でき、水側主弁,湯側主弁のそれぞれに対する水側,湯側のパイロット弁の微妙な位置ずれによる温調特性への悪影響を抑制することができる。
【0042】
この請求項3においても、湯水混合弁を請求項5に従って自動温度調節機能付きの湯水混合弁となしておくができる。
この場合において、パイロット弁に働く背圧室の圧力に基づく力の影響は小さいので、背圧室の圧力変動によってパイロット弁が適正位置から位置ずれし、そのことによって温調特性に悪影響が及ぶのを回避することができる。
【0043】
またこの自動温度調節機能付の湯水混合弁にあっては、主弁の移動をパイロット弁にて制御できることから、感温体として形状記憶合金製のコイルばねから成る感温ばねを用いた場合において、感温ばね及びバイアスばねは、ばね力の小さいもので良いためにこれらばねとして小型のものを用いることができ、加えてパイロット弁は背圧室の外側に配置されるために、パイロット弁自体も小型化することができ、全体として湯水混合弁をより一層コンパクト化することができる。
【0044】
上記請求項1〜3において、流入通路側に突出する状態で主弁に突出部を設けて、この突出部にて上記絞り部を構成しておくことができる(請求項4)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は本発明の実施形態の自動温度調節機能付きの湯水混合弁を概念的に表したもので、図中10は円筒形をなす弁ケースで、軸方向の隔たった位置に水流入口12と湯流入口14、及びそれらに続く水流入通路16,湯流入通路18がそれぞれ径方向に設けられている。
【0046】
20,22は円筒形をなし、弁ケース10の内面に沿って軸方向に移動可能に設けられた水側主弁,湯側主弁で、ここではこれら水側主弁20,湯側主弁22が軸方向に分離されており、それぞれが独立して軸方向に移動可能となしてある。
これら水側主弁20,湯側主弁22はそれぞれ大径部24,26及び小径部28,30を有しており、そしてその大径部24,26が、弁ケース10に形成された環状の凹所32,34内を軸方向に移動可能とされている。
【0047】
また小径部28,30において、これに嵌着されたシールリング36を介し弁ケース10の内面に水密に且つ軸方向に摺動可能に嵌合している。
【0048】
水側主弁20と弁ケース10との間、及び湯側主弁22と弁ケース10との間には、水側主弁20,湯側主弁22のそれぞれの背後に水側の背圧室38及び湯側の背圧室40が形成されている。
これら背圧室38,40は、内部の圧力を水側主弁20,湯側主弁22に対する背圧且つ閉弁方向の押圧力として作用させる。
【0049】
図3に示しているように、水側主弁20における大径部24の外周面と弁ケース10との間には、水流入口12からの水を背圧室38に導く水側の導入通路42が形成されており、また湯側主弁22における大径部26の外周面と弁ケース10との間には、湯流入口14からの湯を背圧室40に導く湯側の導入通路44が形成されている。
背圧室38,40は、これら導入通路42,44を通じて水流入口12からの水,湯流入口14からの湯が導入されることで内部の圧力を増大させる。
【0050】
水側主弁20,湯側主弁22のそれぞれには、背圧室38,40と水側主弁20,湯側主弁22よりも下流側の2次側通路とを連通させる圧抜通路としての水側のパイロット通路46,湯側のパイロット通路48が、水側主弁20,湯側主弁22を径方向に貫通する状態で設けられている。
【0051】
ここでパイロット通路46,48は図3に示しているようにそれぞれ断面L字状をなしていて、2次側通路への開口50,52が横向きをなしている。即ち水側のパイロット通路46は開口50が図中左向きをなしており、また湯側のパイロット通路48は開口52が図中右向きをなしている。
【0052】
尚、この例では水側のパイロット通路46,湯側のパイロット通路48は、それぞれ水側主弁20,湯側主弁22の軸心周りに環状に形成してある。但しこれらパイロット通路46,48は周方向の所定個所に、部分的に小孔として形成しておくことも可能である。
【0053】
図3において54は水側のパイロット弁で、弁ケース10の軸方向に移動可能に設けられており、このパイロット弁54が軸方向、即ち図3中左右方向に進退移動することで、パイロット通路46の開度(2次側通路への解放度)が変化せしめられる。
【0054】
56は湯側のパイロット弁で、同じく弁ケース10の軸方向に移動可能に設けられており、そしてこのパイロット弁56が軸方向即ち図3中左右方向に進退移動することで、湯側のパイロット通路48の開度が変化せしめられる。
【0055】
図3に示しているように、水側主弁20には水流入通路16側に突出する突起が設けられていて、その突起により、水流入通路16の流れを絞る絞り部58が形成されている。
また同様に湯側主弁22においても湯流入通路18側に突出する突起が設けられていて、その突起により、湯流入通路18の流れを絞る絞り部60が形成されている。
【0056】
この絞り部58の存在によって水流入通路16は、絞り部58よりも上流側が1次側通路となり、絞り部58の上流側において水側主弁20には1次圧が軸方向且つ図中左向きに作用する。図中66は水側主弁20における、1次圧を軸方向に受ける1次圧受面を表している。
尚水側主弁20の絞り部58よりも下側の部分の図中右面は、2次圧を図中左方向に受ける2次圧受面70を表している。
【0057】
他方湯流入通路18もまた、湯側主弁22に絞り部60が設けられることによって、この絞り部60よりも上流側の部分が1次側通路となり、また絞り部60より下流側の部分が2次側通路となる。
湯側主弁22はこの絞り部60よりも上側の部分で1次圧を図中右方向に受ける。図中68はその1次圧を軸方向に受ける1次圧受面を表している。
尚72は、絞り部60の下側に形成された、湯側主弁の2次圧受面を表している。
【0058】
この実施形態において、水側主弁20は図中右側の1次圧受面66,2次圧受面70で1次圧と2次圧とを図中左方向に受け、また図中左側の背圧受面62で背圧室38からの背圧を図中右向きに受ける結果、水側主弁20はそれら1次圧,2次圧及び背圧をバランスさせるようにして図中左右方向に位置移動する。
【0059】
また同様に、湯側主弁22も図中左側の1次圧受面68,2次圧受面72で1次圧及び2次圧を図中右向きに受け、また右側の背圧受面64で背圧室40からの背圧を図中左向きに受ける結果、湯側主弁22はそれら1次圧,2次圧及び背圧をバランスさせるようにして図中左右方向に、且つ水側主弁20とは独立して位置移動する。
【0060】
そして水側の背圧室38の圧力は、水側のパイロット弁54が図中左右方向に進退移動し、背圧室38から抜ける水の量が増減することで変化せしめられる。
同様に湯側の背圧室40の圧力もまた、湯側パイロット弁56が図中左右方向に進退移動し、これにより背圧室40から抜ける水(湯)の量が増減することで変化せしめられる。
即ち水側主弁20は、水側のパイロット弁54が図中左右方向に進退移動することで、これに追従してパイロット弁54と同じ方向に進退移動せしめられる。
【0061】
同様に湯側主弁22もまた、湯側パイロット弁56が図中左右方向に進退移動することで、これに追従して同じ方向に進退移動せしめられる。
そして水側主弁20の図中左右方向の進退移動によって、水流入通路16の開度が大小変化せしめられ、また湯側主弁22の進退移動によって、湯流入通路18の開度が大小変化せしめられる。
【0062】
図2において、74はパイロット弁54,56を軸方向に移動させて混合水の温度を設定ないし設定変更するための温調軸(温度調節軸)で、この温調軸74に対し、円筒形状のスリーブ76-1,76-2,76-3が外嵌状態に嵌合されている。
ここで図中真中のスリーブ76-1は、温調軸74に対し軸方向に摺動可能に嵌合されており、また図中左側のスリーブ76-2は、止め輪80によって図中左端位置が規定され、また右側のスリーブ76-3は、止め輪78により図中右端位置が規定されている。
【0063】
スリーブ76-1には、円筒形状をなすパイロット弁体82が径方向に延びるアーム84を介して一体に構成されており、パイロット弁体82、即ち水側のパイロット弁54と湯側のパイロット弁56とが、スリーブ76-1と一体に温調軸74に対し図中左右方向に相対移動可能とされている。
【0064】
このスリーブ76-1の図中左端側と右端側とには、段付部88と90が形成されている。
そしてこの段付部90と図中右側のスリーブ76-3の大径のフランジ部96との間に、形状記憶合金製のコイルばねからなる感温ばね98が介装され、この感温ばね98による付勢力がスリーブ76-1に対して、即ちこれと一体の水側パイロット弁54及び湯側パイロット弁56に対し図中左向きに及ぼされている。
即ち水側主弁20を開弁させ、また湯側主弁22を閉弁させる方向にその付勢力が及ぼされている。
【0065】
この感温ばね98は、図1に示す弁ケース10内の混合室102内の混合水温度が上昇すると、これに伴って軸方向に伸長し、図中左向きの付勢力を増大させる。
即ち水側主弁20を開弁させ、また湯側主弁22を閉弁させる方向の付勢力を増大させる。
【0066】
一方スリーブ76-1の図中左端側の段付部88と、左側のスリーブ76-2の大径のフランジ部92との間には、コイルばねからなるバイアスばね94が介装されており、このバイアスばね94による付勢力がスリーブ76-1に対して、即ち水側のパイロット弁54及び湯側のパイロット弁56に対し、感温ばね98による付勢力とは逆向きの図中右向きに及ぼされている。
【0067】
この実施形態では、パイロット弁54,56に対し軸方向の両側に感温ばね98とバイアスばね94とが、それぞれの付勢力を互いに逆向きに作用させる状態で配置されていて、それらがパイロット弁54,56を一体に備えたスリーブ76-1とともに温調軸74により保持されており、パイロット弁54,56が、感温ばね98による付勢力とバイアスばね94による付勢力とを均衡させるように、温調軸74に対し図中左右方向に移動するようになっている。
ここで感温ばね98とバイアスばね94とは、合計の長さを一定に保ちつつパイロット弁54,56に対しその付勢力を互いに逆向きに作用させる。
【0068】
この実施形態では温調軸74,これに嵌装されたスリーブ76-1及びこれと一体をなすパイロット弁54,56、スリーブ76-2,76-3,感温ばね98,バイアスばね94が、全体として1つの組付体としてのパイロット弁ユニット100を構成している。
【0069】
図1に示しているように、温調軸74はその両端部が弁ケース10の嵌合孔104に嵌合されるとともに、雄ねじ部106において弁ケース10の雌ねじ部108に螺合されている。
従って温調軸74を回転操作すると、パイロット弁ユニット全体が図中左右方向に進退移動し、これによって水側のパイロット弁54及び湯側のパイロット弁56を軸方向に位置移動させる。
尚、温調軸74の図中左端部と弁ケース10の嵌合孔104との間は、リング状のシール部材110にて水密にシールされている。
【0070】
次にこの実施形態の湯水混合弁の作用を説明する。
図1及び図3(I)は、水側主弁20,湯側主弁22が何れも開弁した状態、またこれに対応した水側のパイロット弁54,湯側のパイロット弁56が何れも開弁した状態を示している。
この状態では、水流入口12からの水と、湯流入口14からの湯とが弁ケース10内部に流入して混合室102で混合され、その混合水が図1中矢印で示す右向きに流出される。
【0071】
このとき、混合室102内の混合水温度が温調軸74の操作によって設定された温度よりも高いときには、感温ばね98が温度に感応して伸長し、図中左向きの付勢力を増大させる。
その結果水側及び湯側のパイロット弁54,56が図中左向きに移動し、水側のパイロット通路46の開度を大きく、また湯側のパイロット通路48の開度を小さく変化させる。
【0072】
すると水側の背圧室38の圧力が低下して、相対的に水流入通路16における1次側通路の1次圧が高くなり、水側主弁20が図3(I)に示す位置から図3(II)に示しているように図中左方向に移動し、そして背圧室38の圧力と1次側圧力及び2次側圧力とがバランスする位置で位置停止する。
【0073】
また一方、湯側のパイロット通路48の開度が小さくなることによって背圧室40の圧力が高まり、この結果湯側主弁22は、背圧室40の圧力と湯流入通路18における1次側圧力、及び絞り部60より下流側の2次側圧力とをバランスさせるように図中左方向に移動して、湯流入通路18の開度を小さく変化させ、湯流入口14からの湯の流入量を減少させ、混合水温度を低下せしめる(図4(III))。
そして混合水温度が設定温度に一致したところで、パイロット弁54,56及び水側主弁20,湯側主弁22が位置停止し、混合水温度が設定温度に維持される。
【0074】
また温調軸74を回転操作して軸方向位置を変化させ、設定温度を変更すると、これに伴って移動したパイロット弁54,56の位置に応じて水側主弁20,湯側主弁22が軸方向位置を変化させ、水流入口12からの水の流入量と湯流入口14からの湯流入量との比率を設定温度に対応して変化させ、混合水温度を設定温度に一致させる。
【0075】
以上のような本実施形態の湯水混合弁にあっては、水側及び湯側のパイロット弁54,56が、それぞれ水側及び湯側の背圧室38,40の外側に位置していて、それら背圧室38,40の圧力に基づく力の影響が小さいため、パイロット弁54,56を移動操作する際の抵抗が小さく、軽やかにこれを操作することができるのに加えて、給水圧や給湯圧の変動により背圧室38,40の圧力変動が生じた場合においても、その圧力変動によってパイロット弁54,56が調節位置から位置ずれしてしまう不具合を生じず、そのような圧力変動にも拘らず混合水温度を設定温度に適正に且つ精度高く調節することが可能となる。
【0076】
また本実施形態では、水側主弁20及び湯側主弁22のそれぞれが背圧受面62,64、1次圧受面66,68、2次圧受面70,72を備えて、それらの圧力バランスにより位置制御されるため、水側主弁20及び湯側主弁22を軸方向に分離して、それぞれを独立して移動可能に構成しておくことができる。
【0077】
而してこのようにすれば、給水圧や給湯圧が変化して水流入口12,湯流入口14から流入する水,湯の流入量に変化を生じた場合においても、これに伴って圧力変化する背圧室38,40の圧力に応じて水側主弁20,湯側主弁22をそれぞれ独立して適性位置に位置移動させることができ、混合水温度を設定温度に良好に精度高く自動調節することが可能となる。
【0078】
次に図5及び図6は、本発明の他の実施形態の湯水混合弁を概念的に表したものである。
この例は、円筒形状をなすパイロット弁体82の外面を、弁ケース10の内面にシールリング36を介して水密に且つ摺動可能に嵌合し、そしてこのパイロット弁体82、詳しくは水側,湯側のパイロット弁54,56と、水側主弁20,湯側主弁22との間に水側,湯側のパイロット通路46,48を形成した例である。
この例においても水側,湯側のパイロット弁54,56が軸方向に移動することで、水側,湯側のパイロット通路46,48の開度が互いに逆の関係で大小変化せしめられる。
尚他の点については上記と同様である。
【0079】
図7及び図8は、本発明の他の実施形態の湯水混合弁を概念的に表している。
この例は、円筒状をなす水側主弁20を湯側主弁22と一体に構成し、それら水側主弁20,湯側主弁22を軸方向に一体に移動させるようになした例である。
この例において、湯側主弁22は駆動弁としての働きをなし、この湯側主弁22が、湯側のパイロット弁56の軸方向移動に追従移動することで、湯側主弁22及び水側主弁20の全体が軸方向に移動(駆動)される。
【0080】
従ってこの実施形態では、図8に示す円筒状のパイロット弁体82に、湯側のパイロット弁56だけが設けられ、またこれに対応して湯側の背圧室40,これに連通した湯側の導入通路44のみが設けられている。即ち水側については上記実施形態における背圧室38,導入通路42,絞り部58等は設けられていない。
【0081】
この実施形態では、湯側の1つのパイロット弁56で湯側主弁22を位置制御するだけで、自動的に他方の水側主弁20を連動して位置移動させることができるため、水側主弁20,湯側主弁22に対応して一対のパイロット弁を設けた場合のように、各パイロット弁と水側及び湯側の各主弁の位置関係が複雑化せず、従って各パイロット弁と各主弁との相対的な位置関係が微妙に位置ずれを生じて、このことが温度調節特性に影響を及ぼしてしまうのを回避することができる。また湯水混合弁の構成も簡単化することができる。
【0082】
図9及び図10は、図5及び図6に示す第2の実施形態の湯水混合弁を具体的な形状,構造で表したもので、基本的な機能及び構造については同第2の実施形態のものと同様であり、対応する部分に符号のみを示して、同様の部分については詳しい説明は省略し、相違点のみ以下に説明する。
【0083】
図において112は回転操作軸で、円筒部114を有しており、その内側に同じく円筒状をなす操作力の伝達部材118が設けられている。
ここで回転操作軸112における円筒部114の内面には雌ねじ116が、また伝達部材118の外面には雄ねじ120が設けられていて、それらが螺合されている。
【0084】
この伝達部材118の内面にはまた軸方向に延びる係合凸部122が設けられ、この係合凸部122が、弁ケース10の外面に形成された軸方向の係合溝124に摺動可能に係合しており、これら係合凸部122と係合溝124との係合によって、伝達部材118が弁ケース10に対し回転規制されている。
従って操作軸112を回転操作すると、伝達部材118が雄ねじ120と雌ねじ116との螺合に基づいて、ねじ送りで図中左右方向に進退移動せしめられる。
【0085】
この伝達部材118の更に内側には、同じく円筒状をなす第2の伝達部材126が設けられており、その伝達部材126に対して、弁ケース10を軸方向に貫通して突き出した温調軸74の図中左端部が、軸方向に一体移動する状態に締結固定されている。
【0086】
ここで伝達部材118と126との間には、コイルばねからなる緩衝ばね128が介装されており、伝達部材118から伝達部材126への軸方向の力の伝達が、この緩衝ばね128を介して行われる。
尚この実施形態において、伝達部材118,126はそれぞれ回転操作軸112の回転操作時に、非回転で軸方向に進退移動する。
【0087】
この実施形態では、回転操作軸112を回転操作すると、その操作力が伝達部材118,緩衝ばね128,伝達部材126を介して温調軸74に伝えられ、かかる温調軸74即ちパイロット弁ユニット100が図中左右方向に進退移動せしめられる。
【0088】
次に図11及び図12は、図1に示す実施形態の湯水混合弁を具体的な形状,構造で示したもので、基本的な機能及び構造については同第1の実施形態と同様である。
また温調軸74に対する操作装置については図9に示したものと同様であり、従って対応する部分については符号のみを付して詳しい説明は省略し、相違点についてのみ以下に説明する。
【0089】
この実施形態では、図11及び図12に示しているように水側主弁20及び湯側主弁22が、中心側に設けられてスリーブ76-1に外嵌する円筒部129に対し放射方向のアーム130にて連結されており、そして図12(A)の水側,湯側のパイロット通路46,48が、周方向の所定個所において孔形状でそれぞれ1つだけ径方向に設けられ、先端の開口50,52が軸方向の横向きで開口せしめられている。
【0090】
一方、温調軸74に摺動可能に外嵌されたスリーブ76-1には、軸方向の略中間部に円環状の突出部が設けられて、この突出部がパイロット弁体82とされ、その図中右端と左端とにそれぞれ水側,湯側のパイロット弁54,56が構成されている。
図12(A)に示しているように、これらパイロット弁54,56は対応する水側,湯側の各パイロット通路46,48の開口50,52に対して軸方向に対向せしめられている。
この実施形態では、パイロット弁体82が小径をなしており、そしてこのパイロット弁体82の径方向外側において、水側主弁20,湯側主弁22の内側に通路134(図12(B)参照)が形成されている。
【0091】
図1の実施形態ではパイロット弁体82が大径となり、これに伴ってパイロット弁体82とスリーブ76-1とを径方向に連結するアームが必要となって、そのアーム等に、流入した湯等の流れが当って、流動圧が軸方向に作用してしまう問題を生じるが、この実施形態ではパイロット弁54,56が小径に構成されて、パイロット弁54,56の外側に湯水の流れの通路134が形成されているため、パイロット弁54,56に湯水の流れが当って位置ずれしてしまう問題を効果的に回避することができる。
【0092】
次に図13及び図14は、図7及び図8に概念的に示した湯水混合弁を具体的な形状,構造で表したもので、その基本的な機能,構造についてはそれらと同様であり、対応する部分についてだけ符号を付して詳しい説明は省略する。
尚、温調軸74に対する操作装置は図9に示したものと同様である。
【0093】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば上記実施形態では絞り部をなす突起を何れも主弁側に設けているが、場合によって弁ケースの側に突起を設けてこれを絞り部となすことも可能である。
また上記実施形態では、感温体として形状記憶合金製のコイルばねを用いているが、場合によってサーモワックスその他の感温体を用いることも可能である。
更に図8,図13及び図14に示す例において、水側主弁を駆動弁となして非駆動弁となる湯側主弁をこれと一体に構成することもでき、また本発明は自動温度調節機能を有しないミキシングタイプの湯水混合弁に適用することも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の一実施形態である湯水混合弁の断面図である。
【図2】同実施形態の湯水混合弁におけるパイロット弁ユニットを示した図である。
【図3】同実施形態の湯水混合弁の作用説明図である。
【図4】図3に続く作用説明図である。
【図5】本発明の他の実施形態の図である。
【図6】図5の要部拡大図である。
【図7】本発明の更に他の実施形態の図である。
【図8】本発明の更に他の実施形態の要部拡大図である。
【図9】図5の実施形態を具体的な形状,構造で表した他の実施形態の図である。
【図10】図9の要部拡大図である。
【図11】図1の実施形態を具体的な形状,構造で表した他の実施形態の図である。
【図12】図11の要部拡大図および主弁の正面図である。
【図13】図7の実施形態を具体的な形状,構造で表した他の実施形態の図である。
【図14】図13の要部拡大図および主弁の正面図である。
【図15】従来の湯水混合弁の一例を示した図である。
【図16】従来の湯水混合弁の他の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0095】
10 弁ケース
12 水流入口
14 湯流入口
16 水流入通路
18 湯流入通路
20 水側主弁
22 湯側主弁
38,40 背圧室
42,44 導入通路
46,48 パイロット通路
54,56 パイロット弁
58,60 絞り部
62,64 背圧受面
66,68 1次圧受面
82 パイロット弁体
94 バイアスばね
96 感温ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)筒形の弁ケースと、(ロ)該弁ケースに且つ軸方向の隔たった位置に設けられた水流入口及び湯流入口と、(ハ)それら水流入,湯流入口に続く水流入通路及び湯流入通路と、(ニ)筒形をなし、前記弁ケースの内面に沿って軸方向に移動し、前記水流入通路,湯流入通路の開度を互いに逆の関係で大きく又は小さく変化させる水側主弁及び湯側主弁と、(ホ)該水側主弁,湯側主弁のそれぞれの背後に形成され、内部の圧力を該水側主弁,湯側主弁に対する背圧且つ閉弁方向の押圧力として作用させる水側,湯側の背圧室と、(ヘ)前記水流入口,湯流入口からの水,湯を前記水側,湯側の背圧室に導いて該背圧室の圧力をそれぞれ増大させる導入通路と、(ト)前記水側主弁,湯側主弁よりも下流側の2次側通路と前記水側,湯側の背圧室とを連通させる圧抜通路としての水側,湯側のパイロット通路と、(チ)前記水側主弁,湯側主弁の進退移動方向に進退移動し、前記水側,湯側のパイロット通路の開度を制御する水側,湯側のパイロット弁と、を有し、該水側,湯側のパイロット弁の進退移動に追従して前記水側主弁,湯側主弁を進退移動させて湯水の混合比率を変化させ、混合水の温度調節を行う湯水混合弁において
前記水側主弁,湯側主弁には前記水側,湯側の背圧室の圧力を軸方向に受ける背圧受面が備えてあるとともに、前記水流入通路,湯流入通路上には流れを絞る絞り部が設けてあって、前記水側主弁,湯側主弁には該水流入通路,湯流入通路における該絞り部よりも上流側の1次圧を軸方向且つ前記背圧とは逆方向に受ける1次圧受面が備えてあり、且つ前記水側,湯側のパイロット弁は前記水側,湯側の背圧室の外側に配置してあって、該背圧室の外側で前記水側,湯側のパイロット通路を開度制御するものとなしてあることを特徴とする湯水混合弁。
【請求項2】
請求項1において、前記水側主弁,湯側主弁は互いに軸方向に分離されていて、該水側主弁,湯側主弁がそれぞれ互いに独立して移動するものとなしてあることを特徴とする湯水混合弁。
【請求項3】
(イ)筒形の弁ケースと、(ロ)該弁ケースに且つ軸方向の隔たった位置に設けられた水流入口及び湯流入口と、(ハ)それら水流入,湯流入口に続く水流入通路及び湯流入通路と、(ニ)前記弁ケースの内部で軸方向に移動して前記水流入通路,湯流入通路の開度を互いに逆の関係で大きく又は小さく変化させる水側主弁及び湯側主弁と、を有し、該水側主弁,湯側主弁の移動により湯水の混合比率を変化させて混合水の温度調節を行う湯水混合弁において、
前記水側主弁及び湯側主弁を一体に軸方向に移動するものとなすとともに、該水側主弁又は湯側主弁の何れか一方の主弁を前記弁ケースの内面に沿って軸方向に移動する筒形のパイロット駆動式の駆動弁となして、(a)該駆動弁の背後に、内部の圧力を該駆動弁に対する背圧且つ閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室を設けるとともに、(b)該駆動弁に対応した前記水流入通路又は湯流入通路からの水又は湯を該背圧室に導入して該背圧室の圧力を増大させる導入通路と、(c)前記駆動弁よりも下流側の2次側通路と前記背圧室と連通させる圧抜通路としてのパイロット通路と、(d)該駆動弁の進退移動方向に進退移動し、該パイロット通路の開度を制御するパイロット弁と、を設けて、該パイロット弁の進退移動に追従して前記駆動弁を進退移動させることにより、該駆動弁をなす前記水側主弁又は湯側主弁の一方と他方とを一体に移動させるようになし、
且つ前記駆動弁には前記背圧室の圧力を軸方向に受ける背圧受面が備えてあるとともに、該駆動弁に対応する前記水流入通路又は湯流入通路には流れを絞る絞り部が設けてあって、該駆動弁には該絞り部よりも上流側の1次圧を軸方向且つ前記背圧とは逆方向に受ける1次圧受面が備えてあり、
更に前記パイロット弁は前記背圧室の外側に配置してあって、該背圧室の外側で前記パイロット通路を開度制御するものとなしてあることを特徴とする湯水混合弁。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記絞り部が前記水流入通路又は湯流入通路に突出する状態で前記駆動弁に設けた突出部にて構成してあることを特徴とする湯水混合弁。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、前記湯水混合弁が、混合水温度の上昇に感応して軸方向に伸び、前記水側主弁を開く方向に前記パイロット弁に対する付勢力を増大させる感温体が混合室に設けられる一方、該水側主弁が閉じる方向に該パイロット弁を付勢するバイアスばねが設けられて成る自動温度調節機能付のものであることを特徴とする湯水混合弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−267515(P2008−267515A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112410(P2007−112410)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】