説明

湯水混合水栓

【課題】水栓本体部と湯水混合バルブユニットとの当接面における水密性を確保することができ、温度表示部を一定位置に設定することができる湯水混合水栓を提供する。
【解決手段】湯水混合水栓10内の湯水混合バルブユニット13は、下部バルブ押さえ部材15を、水栓本体19に螺合させることにより螺合部Sを介して水栓本体19に固定されている。湯水混合バルブユニット13を構成する操作ロッド13aや回動部材18などを覆うため、下部バルブ押さえ部材15の上方に上部バルブ押さえ部材16が取り付けられ、その外周に温度表示部が設けられている。上部バルブ押さえ部材16の内周面および下部バルブ押さえ部材15上端の突起部15aの外周面にそれぞれ互いに噛合するスプライン部16s,15sが設けられている。上部バルブ押さえ部材16と下部バルブ押さえ部材15との対向部分にはリング状パッキン20が嵌入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シングルレバー式の湯水混合水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
シングルレバー式の湯水混合水栓は、一般に操作レバーの上下回動操作によって吐水止水および吐水量調節が行われ、左右回動操作によって吐水される湯水の温度調節が行われる。このようなシングルレバー式の湯水混合水栓において、温度表示用のインデックス(温度表示部)が操作レバー側(可動部材側)に設けられていると、使用者が見たとき、操作レバーの操作とともに温度表示部が動いてしまうため、吐水温度が分かり難い。
【0003】
一方、スパウト部が固定されている湯水混合水栓の場合、湯水混合水栓の正面位置はスパウト部が向いている方向であると判断することができ、湯水混合水栓の正面位置に対する操作レバーの位置を認識することができるが、スパウト部が左右に回動可能な湯水混合水栓の場合は、湯水混合水栓の正面位置自体が分かり難いため、操作レバーが現在どのような吐水温度位置にあるのか、より一層、判断し難い。
【0004】
そこで、固定部材である水栓本体側にインデックスを設けたものがある(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1記載の「シングルレバー式混合水栓」においては、リング状をしたインデックス表示部材(表示リング)が、係止爪や圧入などの係止手段を用いて水栓本体に取り付けられている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−262644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の「シングルレバー式混合水栓」の場合、水栓本体に湯水混合バルブユニットを固定する手段として、雄ネジ部材(バルブ押さえ)が用いられ、さらに、湯水混合バルブユニットを覆うために合成樹脂製カバーが用いられている。一方、部品点数の削減の観点から、バルブ押さえとカバーとを一体化させ、カバー自体にバルブ押さえの機能を持たせることが多い。この場合、水栓本体と湯水混合バルブユニットとの当接面における水密性を確保するため、バルブ押さえは螺合機構によって水栓本体に固定されている。
【0007】
このようなバルブ押さえに特許文献1記載の温度表示機能を持たせた場合、バルブ押さえが水栓本体に対して螺合固定される構造であるため、温度表示部を一定位置に定めることが困難であり、前述したように、操作レバーが現在どのような吐水温度位置にあるのか使用者にとって分かり難い温度表示となってしまう。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、水栓本体と湯水混合バルブユニットとの当接面における水密性を確保することができ、温度表示部を一定位置に設定することができる湯水混合水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の湯水混合水栓は、操作レバーの上下回動操作で吐水止水および吐水量調節を行い、左右回動操作で吐水の温度調節を行う湯水混合バルブユニットが内蔵された湯水混合水栓であって、
水栓本体に螺合することによって前記湯水混合バルブユニットを前記水栓本体に固定する下部バルブ押さえ部材と、前記湯水混合バルブユニットの上部を覆うため前記下部バルブ押さえ部材の上方に取り付けられた上部バルブ押さえ部材と、
前記上部バルブ押さえ部材に設けられた温度表示部と、を備え、
前記上部バルブ押さえ部材および前記下部バルブ押さえ部材に、取り付け方向の移動により装着可能であって、前記取り付け方向周りに回転不能に嵌合する嵌合部を設けたことを特徴とする。
【0010】
このような構成とすれば、湯水混合バルブユニットは水栓本体に螺合する下部バルブ押さえ部材によって水栓本体に固定されるため、水栓本体と湯水混合バルブユニットとの当接面における水密性を確保することができる。また、水栓本体に螺合された下部バルブ押さえ部材の嵌合部に、上部バルブ押さえ部材の嵌合部を嵌合させることにより、上部バルブ押さえ部材を、下部バルブ押さえ部材の周方向の所定位置に取り付けることができる。このため、上部バルブ押さえ部材の温度表示部を湯水混合バルブユニットに対して一定位置に設定することができる。
【0011】
なお、前記嵌合部としては、下部バルブ押さえ部材に対する上部バルブ押さえ部材の取り付け方向の移動(例えば、操作レバーの回動中心線に沿った方向の移動)により装着可能、且つ、互いの装着位置を前記回動中心線周りに変更可能であって、前記回動中心線周りに回転不能に嵌合するものが望ましく、例えば、セレーション構造、スプライン構造あるいは多角形構造などを用いることができる。
【0012】
ここで、前記湯水混合バルブユニットの操作ロッドと前記上部バルブ押さえ部材との間に、予め定められた所定位置にある前記操作レバーの左右への回動を抑制する抵抗手段を設けることができる。このような構成とすれば、使用者が操作レバーを操作するときに受ける抵抗力により操作レバーが予め規定された所定位置にあることを認識することができるため、使用者が吐水させたい吐水温度と異なる温度の湯水が吐水されてしまう誤操作を防止することができる。また、所定位置から左右に回動させた位置にある操作レバーを所定位置に戻すときも、使用者が受ける抵抗力により正確な位置に戻ったことを認識することができる。
【0013】
一方、前記上部バルブ押さえ部材を前記下部バルブ押さえ部材に着脱可能に係止するための係止手段を、前記上部バルブ押さえ部材と前記下部バルブ押さえ部材の少なくとも一方に設けることができる。このような構成とすれば、上部バルブ押さえ部材のガタつきあるいは離脱を防止することができる。
【0014】
この場合、前記係止手段として、前記上部バルブ押さえ部材と前記下部バルブ押さえ部材との対向部分に嵌入されるリング状パッキンを設けることが望ましい。このような構成とすれば、構造の複雑化を回避しつつ、上部バルブ押さえ部材のガタつきあるいは離脱を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、水栓本体と湯水混合バルブユニットとの当接面における水密性を確保することができ、温度表示部を一定位置に設定することができる湯水混合水栓を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施の形態である湯水混合水栓を示す斜視図、図2は図1に示す湯水混合水栓の分解斜視図、図3は図1に示す湯水混合水栓の一部切欠側面図、図4は図3の一部拡大図、図5は図4の一部省略分解図、図6は図1に示す湯水混合水栓の操作状態を示す一部省略平面図である。
【0017】
図1〜図4に示すように、本実施形態の湯水混合水栓10においては、操作レバー11の上下回動操作により吐水口12からの吐水止水および吐水量調節を行い、左右回動操作で吐水の温度調節を行う湯水混合バルブユニット13が内蔵されている。湯水混合バルブユニット13は、その上方から下部バルブ押さえ部材15を被せるようにして、スパウト14の上端部から突出する水栓本体19に螺合させることによって水栓本体19に固定されている。即ち、湯水混合バルブユニット13と水栓本体19とは螺合部Sを介して密接している。
【0018】
また、湯水混合バルブユニット13を構成し、操作レバー11に連動して動く操作ロッド13aや、操作ロッド13aとともに左右方向に回動し、操作レバー11の左右への回動時に抵抗感を持たせる機構を構成する回動部材18などを覆うため、下部バルブ押さえ部材15の上方に上部バルブ押さえ部材16が、互いの対向部分に嵌入されるリング状パッキン20を用いることで着脱可能に取り付けられている。この上部バルブ押さえ部材16の外周には温度表示部17が設けられている。
【0019】
温度表示部17は、印刷により横長の帯状に設けられ、横方向の長さは操作レバー11の左右回動操作範囲と略一致するように設けられている。そして、温度表示部17は、湯のみが吐水される高温領域17a、湯と水が混合される混合領域17b、水のみが吐水される低温領域17cに区分されている。湯のみの領域17aは赤色、湯と水が混合される領域17bは橙色、水のみの領域17cは青色に表示されている。温度表示部17の高温領域17aと混合領域17bとの境界上、混合領域17bの中央部、混合領域17bと低温領域17cの境界上の裏側には少なくとも1箇所、後述する抵抗手段としての凹部22aが設けられている。湯水混合バルブユニット13は下部バルブ押さえ部材15内に配置され、水栓本体19の下端部および上端部を除く部分を包囲するようにスパウト14が取り付けられている。
【0020】
図5に示すように、上部バルブ押さえ部材16の内周面および下部バルブ押さえ部材15上端の突起部15aの外周面にそれぞれ互いに噛合するスプライン部16s,15sが設けられている。また、上部バルブ押さえ部材16を下部バルブ押さえ部材15に着脱可能に係止する係止手段として、上部バルブ押さえ部材16と下部バルブ押さえ部材15との対向部分に嵌入されるリング状パッキン20を設けている。リング状パッキン20は、下部バルブ押さえ部材15の突起部15aの外周に設けられた周溝15bと、上部バルブ押さえ部材16の内周に形成された周溝16bとの間に嵌入されている。周溝15bはスプライン部15sの直下に設けられ、周溝16bはスプライン部16sの直下に設けられている。
【0021】
湯水混合水栓10において、湯水混合バルブユニット13は、水栓本体19に螺合する下部バルブ押さえ部材15によって水栓本体19に固定されているため、湯水混合バルブユニット13と水栓本体19との当接面19aにおける水密性を確保することができる。湯水混合水栓10を組み立てる場合、水栓本体19に湯水混合バルブユニット13を固定した後、湯水混合バルブユニット13の上方に後述する回動部材18を載置する。次に、操作ロッド13aを湯側あるいは水側の何れかの方向に最大限可動させ、操作ロッド13aの正面部13bの方向と温度表示部17の端部とが略一致するように上部バルブ押さえ部材16の位置決めを行う。
【0022】
そして、上部バルブ押さえ部材16の取り付け位置が決まった後、水栓本体19に螺合された下部バルブ押さえ部材15のスプライン部15sに、上部バルブ押さえ部材16のスプライン部16sを噛合させることにより、上部バルブ押さえ部材16を下部押さえ部材15に取り付ける。これによって、上部バルブ押さえ部材16の温度表示部17を一定位置に設定し、装着することができる。なお、上部バルブ押さえ部材16は、下部押さえ部材15に対して取り付け方向の移動により装着可能であって、且つ取り付け方向周りに回転しない構造であれば良いので、スプライン部15s,16sの代わりにセレーション構造あるいは多角形構造などの嵌合構造を採用することもできる。
【0023】
上部バルブ押さえ部材16と下部バルブ押さえ部材15との対向部分である周溝15b,16bにリング状パッキン20を嵌入させることにより、上部バルブ押さえ部材15を下部バルブ押さえ部材16に着脱可能に係止している。従って、構造の複雑化を回避しつつ、上部バルブ押さえ部材15のガタつきあるいは離脱を確実に防止することができる。
【0024】
一方、図6(a)に示すように、操作ロッド13aとともに左右方向に回動する回動部材18と上部バルブ押さえ部材16との間には、予め定められた所定位置にある操作レバー11(図1参照)の左右への回動を抑制する抵抗手段21を設けている。抵抗手段21は、上部バルブ押さえ部材16内周に沿って設けられた円弧状の係止部22内周の凹部22aと、回動部材18の外周に取り付けられた略V字状の板バネ23とによって形成されている。係止部22内周の凹部22aは湯水混合水栓10の正面位置に配置され、板バネ23の突起部は凹部22aに嵌入離脱可能である。操作レバー11(図1参照)が正面位置にあるとき、板バネ20の突起部は凹部21a内に嵌入している。
【0025】
正面位置にある操作レバー11を左右方向へ回動させようとすると、図6(a)に示すように、凹部22a内に嵌入している板バネ23がそれを抑制する抵抗手段21として機能する。このため、操作レバー11が所定位置にあることを使用者に確実に認識させることができ、使用者は操作レバー11の位置を誤認することはない。
【0026】
一方、操作レバー11(図1参照)を左側(時計方向)に少し回動させると、図6(b)に示すように、板バネ23は凹部22aから離脱して係止部22の内周に摺動可能に接触しているため、操作レバー11の回動操作を妨げることはない。また、操作レバー11を正面位置に戻すときは、板バネ23の突起部が凹部22a内に嵌入してクリック音およびクリック感を生じるので、使用者は操作レバー11が正確に正面位置に戻ったことを認識することができる。
【0027】
また、前述したように、温度表示部17の高温領域17aと混合領域17bの境界上の裏側に凹部22aを設けた場合には、板バネ23の突起部が凹部22a内に嵌入してクリック音およびクリック感を生じるので、使用者に「高温の湯が出ること」に対する注意を促すことができる。さらに、混合領域17bと低温領域17cとの境界上の裏側に凹部22aを設けた場合には、板バネ23の突起部が凹部22a内に嵌入してクリック音およびクリック感を生じるので、使用者に「水のみが吐水されること」を知らせることができ、無駄な湯が吐水されることを防ぐことができる。
【0028】
なお、温度表示部17の構成は、本実施形態に限定するものではないので、例えば、水側から湯側に向けて青色から赤色へのグラデーションで構成するなど種々の形態が可能である。また、温度表示部17の設置機構についても、例えば、係止爪を設けた樹脂部品に温度表示部17を設け、係止孔を設けた上部バルブ押さえ部材16に合成樹脂部品を係止するなど種々の機構が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態である湯水混合水栓を示す斜視図である。
【図2】図1に示す湯水混合水栓の分解斜視図である。
【図3】図1に示す湯水混合水栓の一部切欠側面図である。
【図4】図3の一部拡大図である。
【図5】図4の一部省略分解図である。
【図6】図1に示す湯水混合水栓の操作状態を示す一部省略平面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 湯水混合水栓
11 操作レバー
12 吐水口
13 湯水混合バルブユニット
13a 操作ロッド
13b 操作ロッドの正面部
14 スパウト
15 下部バルブ押さえ部材
15a 突起部
15b,16b 周溝
15s,16s スプライン部
16 上部バルブ押さえ部材
17 温度表示部
17a 高温領域
17b 混合領域
17c 低温領域
18 回動部材
19 水栓本体
19a 当接面
20 リング状パッキン
21 抵抗手段
22 係止部
22a 凹部
23 板バネ
S 螺合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作レバーの上下回動操作で吐水止水および吐水量調節を行い、左右回動操作で吐水の温度調節を行う湯水混合バルブユニットが内蔵された湯水混合水栓であって、
水栓本体に螺合することによって前記湯水混合バルブユニットを前記水栓本体に固定する下部バルブ押さえ部材と、前記湯水混合バルブユニットの上部を覆うため前記下部バルブ押さえ部材の上方に取り付けられた上部バルブ押さえ部材と、
前記上部バルブ押さえ部材に設けられた温度表示部と、を備え、
前記上部バルブ押さえ部材および前記下部バルブ押さえ部材に、取り付け方向の移動により装着可能であって、前記取り付け方向周りに回転不能に嵌合する嵌合部を設けたことを特徴とする湯水混合水栓。
【請求項2】
前記湯水混合バルブユニットの操作ロッドと前記上部バルブ押さえ部材との間に、予め定められた所定位置にある前記操作レバーの左右への回動を抑制する抵抗手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の湯水混合水栓。
【請求項3】
前記上部バルブ押さえ部材を前記下部バルブ押さえ部材に着脱可能に係止するための係止手段を、前記上部バルブ押さえ部材と前記下部バルブ押さえ部材の少なくとも一方に設けたことを特徴とする請求項1または2記載の湯水混合水栓。
【請求項4】
前記係止手段として、前記上部バルブ押さえ部材と前記下部バルブ押さえ部材との対向部分に嵌入されるリング状パッキンを設けたことを特徴とする請求項3記載の湯水混合水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−88678(P2008−88678A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269599(P2006−269599)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】