説明

湯水混合装置及びそれを備えた湯水混合水栓

【課題】温度調節性能を向上させることができる湯水混合装置及びそれを備えた湯水混合水栓を提供する。
【解決手段】本発明は、供給された湯及び水を混合して吐出させる湯水混合装置(20)であって、湯水混合装置本体(21)と、この湯水混合装置本体内で移動されることにより、流入する湯及び水の流量を変化させる主弁体(30)と、主弁体が所定方向に摺動されるように、付勢力を発生する付勢手段(32)と、主弁体が摺動されるように、付勢手段とは逆方向の付勢力を発生し、混合された湯の温度に応じて付勢力が変化する感温付勢手段(34)と、付勢手段又は感温付勢手段の少なくとも一部を覆うことによって、湯水混合装置本体内に流入した水及び湯の動圧力が、付勢手段又は感温付勢手段に直接作用するのを抑制するシールド部材(64)と、を有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯水混合装置及びそれを備えた湯水混合水栓に関し、特に、供給された湯及び水を混合し、適温に調整された湯を吐出させる湯水混合装置及びそれを備えた湯水混合水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平8−42744号公報(特許文献1)には、湯水混合装置が記載されている。この湯水混合装置は、円筒状の湯水混合装置本体内部に摺動可能に配置された円筒状の主弁体の両側に感温ばねとバイアスばねが配置され、これらのばねによる付勢力が釣り合う位置に主弁体が移動されるように構成されている。この構造により、主弁体は、混合された湯の温度が上昇すると、感温ばねの付勢力が増加して湯水混合装置本体に形成された湯側シート面と主弁体との間の隙間が狭くなり、水側シート面と主弁体との間の隙間が広くなるように移動される。これにより、湯水混合装置から吐出される湯の温度が所定の温度に調整される。
【0003】
【特許文献1】特開平8−42744公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開平8−42744公報に記載の湯水混合装置では、湯水混合装置本体内に流入した湯及び水の流れが、その中の主弁体、バイアスばね、感温ばね等に衝突し、湯及び水の動圧力により主弁体が移動されてしまうという問題がある。即ち、特開平8−42744公報に記載されたタイプの湯水混合装置では、主弁体に作用するバイアスばね及び感温ばねの付勢力が釣り合う位置に主弁体を移動させ、混合された湯の温度を調節している。これらの付勢力の他に、湯及び水の動圧力が主弁体等に作用して主弁体が移動されると、湯水混合装置から吐出される湯の温度が設定温度からずれたり、湯の温度が不安定になる等、温度調節性能が低下するという問題がある。
【0005】
また、湯水混合装置本体内に流入した湯及び水の流れが、その中の主弁体、バイアスばね、感温ばね等に衝突すると、湯水混合装置の流路抵抗が増大し、吐出される湯の流量が低下するという問題がある。
【0006】
従って、本発明は、温度調節性能を向上させることができる湯水混合装置及びそれを備えた湯水混合水栓を提供することを目的としている。
また、本発明は、吐出される湯の流量を増加させることができる湯水混合装置及びそれを備えた湯水混合水栓を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、供給された湯及び水を混合し、適温に調整された湯を吐出させる湯水混合装置であって、湯水混合装置本体と、この湯水混合装置本体の内部に移動可能に配置され、移動されることにより、湯水混合装置本体内に流入する湯及び水の流量を変化させる主弁体と、湯水混合装置本体内に配置され、主弁体が所定方向に摺動されるように、付勢力を発生する付勢手段と、湯水混合装置本体内に配置され、主弁体が摺動されるように、付勢手段とは逆方向の付勢力を発生し、湯水混合装置本体内に流入して混合された湯の温度に応じて付勢力が変化する感温付勢手段と、湯水混合装置本体内に配置され、付勢手段又は感温付勢手段の少なくとも一部を覆うことによって、湯水混合装置本体内に流入した水及び湯の動圧力が、付勢手段又は感温付勢手段に直接作用するのを抑制するシールド部材と、を有することを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明においては、湯水混合装置本体の内部に移動可能に配置された主弁体が、付勢手段及び感温付勢手段の発生する付勢力によって移動され、主弁体が移動されることにより湯水混合装置本体内に流入する湯及び水の流量が変化されて、吐出される湯の温度が調整される。また、湯水混合装置本体内には、シールド部材が、付勢手段又は感温付勢手段の少なくとも一部を覆うように配置されている。このシールド部材は、湯水混合装置本体内に流入した水及び湯の動圧力が、付勢手段又は感温付勢手段に直接作用するのを抑制する。
【0009】
このように構成された本発明によれば、シールド部材が、湯水混合装置本体内に流入した水及び湯の動圧力が付勢手段又は感温付勢手段に直接作用するのを抑制するので、付勢手段又は感温付勢手段に作用する動圧力が主弁体の移動に悪影響を与えるのを防止し、温度調節性能を向上させることができる。また、このように構成された本発明によれば、流速の大きい湯及び水が付勢手段又は感温付勢手段に直接衝突することが防止されるので、湯水混合装置本体内の流路抵抗が低減され、湯水混合装置からの吐出流量を増大させることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、シールド部材は、その感温付勢手段を覆う部分に、混合された湯を流入させるための流入孔が形成されている。
このように構成された本発明においては、湯水混合装置本体内で混合された湯は、流入孔を通ってシールド部材の内部に流入し、感温付勢手段に接触する。
【0011】
このように構成された本発明によれば、混合された湯の大きな動圧力が感温付勢手段に直接作用するのを防止しつつ、感温付勢手段が混合された湯の温度変化に急速に応答することができ、湯の温度に応じた付勢力を発生して、吐出される湯の温度を調整することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、シールド部材は、湯水混合装置本体に対して固定されている。
このように構成された本発明によれば、主弁体の移動に悪影響を与えることなく、付勢手段又は感温付勢手段に大きな動圧力が作用するのを防止することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、主弁体及びシールド部材は概ね筒状であり、シールド部材は、主弁体の内側に、主弁体に対して概ね同心円状に配置され、主弁体は、その内壁面からシールド部材を貫通して内方に延びる脚部を備え、シールド部材は脚部の周囲の少なくとも一部を覆う脚部包囲部を有する。
【0014】
このように構成された本発明においては、主弁体の内壁面から内方に延びる脚部がシールド部材の脚部包囲部によって覆われ、主弁体の脚部に大きな動圧力が作用するのが防止される。
【0015】
このように構成された本発明によれば、主弁体の脚部に大きな動圧力が作用するのが防止されるので、主弁体に作用する動圧力のうちの、主弁体をその摺動方向に移動させる方向成分が低減され、主弁体に作用する動圧力が温度調節性能に悪影響を及ぼすのを防止することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、湯水混合装置本体内部は概ね円筒状に形成されており、付勢手段及び感温付勢手段は、湯水混合装置本体内のほぼ中心軸線上に配置され、シールド部材は、付勢手段及び感温付勢手段の外側を概ね同心円状に覆っている。
【0017】
このように構成された本発明においては、湯水混合装置本体内に流入した湯及び水は、主に、湯水混合装置本体の内壁面とシールド部材の外側との間の環状の空間を流れながら混合され、吐出される。
【0018】
このように構成された本発明によれば、流入した湯及び水は、主に湯水混合装置本体とシールド部材の間の環状の空間を流れるので、流路抵抗が更に低減され、湯水混合装置からの吐出流量を増大させることができる。
【0019】
また、本発明の湯水混合水栓は、本発明の湯水混合装置と、この湯水混合装置を収納する水栓本体と、湯水混合装置によって混合された湯の吐水状態と止水状態を切替える開閉弁と、混合された湯を吐出させる吐出部と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の湯水混合装置及びそれを備えた湯水混合水栓によれば、温度調節性能を向上させることができる。
また、本発明の湯水混合装置及びそれを備えた湯水混合水栓によれば、吐出される湯の流量を増加させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による湯水混合水栓を説明する。
まず、図1乃至図5を参照して、本発明の第1実施形態による湯水混合水栓を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による湯水混合水栓全体を示す斜視図である。図2は本実施形態による湯水混合水栓に内蔵されている湯水混合装置の断面図であり、図3は、図2のIII−III線に沿う断面図である。
【0022】
図1に示すように、本発明の実施形態による湯水混合水栓1は、水栓本体2と、この水栓本体2に給湯器(図示せず)からの湯を供給する湯供給脚4と、水栓本体2に水道水を供給する水供給脚6と、を有する。さらに、湯水混合水栓1は、水栓本体2左端部に取り付けられた湯温調節用ダイヤル8と、右端部に取り付けられた吐止水切替ハンドル10と、を有する。また、湯水混合水栓1は、温度調節された湯を吐出させる吐出部であるカラン12及びシャワーヘッド14を有する。さらに、水栓本体2には、開閉弁である切替バルブ16が内蔵されている。本実施形態の湯水混合水栓1は、湯供給脚4及び水供給脚6から夫々供給された湯及び水を、湯温調節用ダイヤル8によって設定された温度になるように混合し、吐止水切替ハンドル10の操作により、カラン12又はシャワーヘッド14から吐出させるように構成されている。
【0023】
湯供給脚4は、壁面に設けられた給湯管(図示せず)と水栓本体2とを連結し、水栓本体2に湯を供給するように構成されている。
水供給脚6は、壁面に設けられた水道管(図示せず)と水栓本体2とを連結し、水栓本体2に水を供給するように構成されている。
【0024】
水栓本体2には、湯供給脚4及び水供給脚6を介して導入された湯及び水を、適宜混合して所望の温度に調節する湯水混合装置20(図2)が内蔵されている。また、水栓本体2に取り付けられた吐止水切替ハンドル10は、これを回転操作することによって、水栓本体2に内蔵された切替バルブ16を切替え、止水状態、カラン12からの吐水状態、シャワーヘッド14からの吐水状態が切替えられるようになっている。吐止水切替ハンドル10をカランの側に回転させると、湯水混合装置20(図2)によって適温に混合された湯がカラン12から吐水され、吐止水切替ハンドル10をシャワーの側に回転させると、適温に混合された湯が、シャワーヘッド14から吐水される。
【0025】
また、湯温調節用ダイヤル8は、これを廻すことによって水栓本体2に内蔵された湯水混合装置20を操作し、湯水混合装置20によって調節される湯の温度を変化させることができるように構成されている。
【0026】
次に、図2乃至図5を参照して、本実施形態の湯水混合水栓1に内蔵された湯水混合装置20を説明する。図4は湯水混合装置20の分解斜視図である。また、図5は湯水混合装置20に内蔵されたシールド部材の斜視図である。
【0027】
図2及び図3に示すように、湯水混合装置20は、第1本体部材22と、この第1本体部材22に嵌め込まれる第2本体部材24と、湯温調節用ダイヤル8に連結される送りねじ26と、この送りねじ26に螺合され、送りねじ26が回転されると第1本体部材22内で摺動する摺動部材28と、を有する。また、湯水混合装置20は、第1本体部材22の内部に移動可能に配置された主弁体30と、主弁体30を図2及び図3における右方向に付勢する付勢手段であるバイアスばね32と、バイアスばね32とは反対方向の図2及び図3における左方向に主弁体30を付勢する感温付勢手段である感温ばね34と、を有する。本実施形態においては、感温ばね34として、形状記憶合金製のコイルばねを使用している。
【0028】
図2乃至図4に示すように、第1本体部材22は、概ね円筒状の形態であり、図2及び図3において右側に位置する第2本体部材24が嵌め込まれることにより湯水混合装置本体21を構成している。また、第1本体部材22には、湯を流入させるための湯導入口22a及び水を流入させるための水導入口22bが夫々円周方向に設けられている。また、湯導入口22aの図3における左側の端面は、主弁体30と当接する湯側シート面22cとして形成されている。
【0029】
第2本体部材24は概ね円筒状の形態であり、その中心には、一方の端部から他方の開放された端部に向けて軸線方向に延びる支柱24aが形成されている。また、第2本体部材24は、開放された端部を、第1本体部材22の端部に嵌め込むことによって、第1本体部材22に取り付けられている。また、第2本体部材24の開放した端部の先端は、主弁体30と当接する水側シート面24bとして形成されている。さらに、第2本体部材24の水側シート面24bとは反対側の端部には、湯水混合装置本体21内で混合された湯を流出させる吐出口24cが形成されている。
【0030】
送りねじ26は、第1本体部材22の内部に回転可能に配置されている。送りねじ26の一方の端部には、湯温調節用ダイヤル8が取り付けられるスプライン部26aが形成され、他方の端部には、摺動部材28と螺合される送り雄ねじ部26bが形成されている。
【0031】
摺動部材28は、概ね円筒形の形態であり、第1本体部材22の内部に摺動可能に配置されている。また、摺動部材28の外側には、軸線方向の溝28a(図4)が形成されており、この溝28aが、第1本体部材22の内部に形成された軸線方向に延びる突起(図示せず)を受け入れることによって、摺動部材28の第1本体部材22に対する回転が拘束されている。さらに、摺動部材28の内側には、送りねじ26の送り雄ねじ部26bと螺合される送り雌ねじ部28bが形成されている。これにより、送りねじ26を回転させると、摺動部材28は第1本体部材22の軸線方向に摺動される。
【0032】
次に、湯水混合装置本体21内で混合された湯の温度に応じて、主弁体30を移動させる機構を説明する。
図2及び図3に示すように、主弁体30は概ね円筒状の部材であり、概ね円筒状の湯水混合装置本体21の内壁面に沿って軸線方向に摺動可能に配置されている。また、主弁体30の両端には、軸線方向に摺動されることにより湯側シート面22c又は水側シート面24bと当接するシート部が形成されている。また、主弁体30の中心軸線上には、概ね円柱形のボス部30aが形成されている。さらに、3本の脚部30b(図2には1本のみ図示)が、主弁体30の内壁面からボス部30aに延びるように形成されている。これら3本の脚部30bは、中心のボス部30aから120゜ずつ間隔を隔てて放射方向に延びるように形成されている。また、ボス部30aの中心から軸線方向に延びるように、ガイドシャフト30cが形成されている。このガイドシャフト30cは、支柱24aに形成された軸線方向のボア24dに、摺動可能に受け入れられている。これにより、主弁体30の湯水混合装置本体21内における摺動がガイドされる。
【0033】
また、主弁体30の、図2及び図3における左側には、可動支柱38と、バイアスばね32と、ばね押え金具36が配置されている。可動支柱38は円柱状の部材であり、その主弁体30側の端部には拡径部38aが形成されている。また、ばね押え金具36は、中央部が隆起したドーナツ板状の金具である。可動支柱38の、主弁体30とは反対側の端部には、Cクランプ36aが取り付けられ、ばね押え金具36を位置決めしている。バイアスばね32は、可動支柱38の拡径部38aとばね押え金具36の間に挟まれて、可動支柱38の周囲に配置される。
【0034】
また、主弁体30の、図2及び図3における右側には、第2本体部材24の支柱24aを取り囲むように、付勢力均衡部材である可動スリーブ40と、感温ばね34が配置されている。可動スリーブ40は、概ね円筒状の部材であり、支柱24aの周囲に摺動可能に配置されている。さらに、感温ばね34は、支柱24aを取り囲むように配置され、その図2及び図3における左側の端部は可動スリーブ40に当接し、右側の端部は第2本体部材24の内壁面の端部に当接するように配置されている。
【0035】
また、図2に示すように、主弁体30の脚部30bの両側面には、可動支柱38及び可動スリーブ40が当接されている。摺動部材28が、図2及び図3における右方向に移動され、摺動部材28とばね押え金具36が当接するようになると、可動支柱38の拡径部38aは、バイアスばね32の付勢力により、右方向に付勢される。一方、この状態では、可動スリーブ40は、感温ばね34の付勢力により、図2及び図3における左方向に付勢される。このため、可動支柱38と可動スリーブ40の間に挟まれた脚部30bは、可動支柱38の拡径部38a及び可動スリーブ40の先端部から、互いに反対方向の付勢力を受けることになる。
【0036】
湯水混合装置20の使用時においては、可動支柱38及び可動スリーブ40は、バイアスばね32の付勢力と感温ばね34の付勢力が釣り合う位置まで移動される。この可動支柱38及び可動スリーブ40の移動に伴って、それらの間に挟まれた脚部30bが押圧され、主弁体30が軸線方向に移動される。
【0037】
一方、図2及び図3に示すように、湯水隔離手段であるゴム製のOリング42が、主弁体30の外周に配置されている。このOリング42は、主弁体30の外周と第1本体部材22の内壁面との間に位置し、湯水混合装置本体21内に流入した湯及び水が主弁体30の外側で混合されるのを防止している。また、Oリング42に隣接して、位置規制部材である脚付スペーサーリング46が配置されている。図4に示すように、脚付スペーサーリング46は、軸線方向に延びる6本の脚部46aを備えた、環状のリングである。図3に示すように、この脚部46aの先端は、第2本体部材24の水側シート面24bに当接するように配置されている。また、脚付スペーサーリング46の反対側には、第1本体部材22の内壁に設けられた段部22dが形成されている。これにより、Oリング42の位置は、第1本体部材22の内壁の段部22d及び脚付スペーサーリング46によって規制され、第1本体部材22内の所定の位置に位置決めされる。
【0038】
一方、第1本体部材22の、図2及び図3における左側の端面には、ばね金具48が配置されている。このばね金具48は、送りねじ26と共に回転されるように、スプライン部26aの基端部に係合されている。さらに、ばね金具48をスプライン部26aの基端部に押付けるために、Oリング50がスプライン部26aの基端の周囲に配置されている。ばね金具48は、円弧状に延びる2本の板ばね部48aと、その先端に夫々形成された、山形に折り曲げられた係合部48bと、を有する(図4)。
【0039】
また、図4に示すように、第1本体部材22の端面には、その外周部に設けられた放射状のスプライン部22eが形成されている。このスプライン部22eには、ばね金具48の係合部48bが、板ばね部48aを介して押付けられている。この構成により、送りねじ26を回転させると、ばね金具48が共に回転され、その際、スプライン部22eに押付けられた係合部48bが、スプラインの山を乗り越えることにより、送りねじ26の回転にクリック感が与えられる。
【0040】
一方、第1本体部材22の外側には、湯導入口22a及び水導入口22bを覆うように、円筒状のフィルター52、54が夫々配置されており、湯又は水に混入したゴミ等が、湯水混合装置20内に流入するのを防止している。
【0041】
さらに、図2及び図3に示すように、湯水混合装置本体21の内部には、バイアスばね32、感温ばね34等を取り囲むように筒状のシールド部材64が配置されている。また、シールド部材64は、筒状の主弁体30を貫通するように、主弁体30及び湯水混合装置本体21の内壁面に対して同心円状に配置される。
【0042】
図5(a)はシールド部材64を分解した状態の斜視図であり、(b)は組み立てた状態の斜視図である。図5(a)に示すように、シールド部材64は、シールド部材本体64aとシールド部材キャップ64bから組み立てられている。また、図5(b)に示すように、シールド部材64の側面には、主弁体30の脚部30bを通すための3つの長円形穴66が形成されている(図5には2つのみ図示)。この長円形穴66の周囲には、脚部30bの周囲を覆う脚部包囲部である外周包囲壁67が形成されている。さらに、シールド部材64の側面の、感温ばね34を覆う部分には、湯水混合装置本体21内で混合された湯を、シールド部材64の内部に流入させるための流入孔である9つの丸穴68が形成されている(図5には6つのみ図示)。
【0043】
また、シールド部材64の側面には、3つのスペーサー突起70が形成されている(図5には2つのみ図示)。さらに、シールド部材64の端部外周には、スペーサー環71が形成されている。これらのスペーサー突起70及びスペーサー環71が湯水混合装置本体21の内壁面に当接することにより、シールド部材64を湯水混合装置本体21内のほぼ中央に位置決めしている。さらに、シールド部材64の一方の端部には、半径方向内方に向かって延びるフランジ部72(図2)が形成されている。図2及び図3に示すように、このフランジ部72は、感温ばね34と第2本体部材24の端部との間に挟まれており、シールド部材64の湯水混合装置本体21に対する位置が固定されている。
【0044】
次に、図1乃至図5を参照して、本発明の実施形態による湯水混合水栓1の作用を説明する。
まず、湯水混合水栓1の使用者は、湯温調節用ダイヤル8を所望の温度に設定する。ここで、湯温調節用ダイヤル8を最低温度に設定した場合には、摺動部材28は図2及び図3における左端に位置される。この状態では、摺動部材28がばね押え金具36から離間するのでバイアスばね32による付勢力は作用せず、主弁体30の湯側のシート部は、感温ばね34の付勢力により湯側シート面22cに当接される。即ち、湯水混合装置本体21内には、水のみが流入できる状態となる。
【0045】
次に、使用者が設定温度を上昇させるために、湯温調節用ダイヤル8を操作して送りねじ26を回転させると、摺動部材28は図2及び図3における右方向に移動され、摺動部材28はばね押え金具36と当接する。これにより、バイアスばね32による付勢力も主弁体30に作用するようになり、可動スリーブ40及び可動支柱38は、バイアスばね32の付勢力と感温ばね34の付勢力が釣り合う位置に移動される。この移動に伴って、主弁体30の脚部30bが可動スリーブ40又は可動支柱38によって押圧され、主弁体30も移動される。
【0046】
湯温調節用ダイヤル8を設定した後、使用者が吐止水切替ハンドル10を操作して、切替バルブ16を止水位置からカラン12又はシャワーヘッド14からの吐水位置に切替えると、カラン又はシャワーからの吐水が開始される。吐水が開始されると、湯供給脚4から導入された湯は、フィルター52を介して湯導入口22aに流入し、水供給脚6から導入された水は、フィルター54を介して水導入口22bに流入する。湯導入口22aから流入した湯は主弁体30の湯側のシート部と湯側シート面22cの間を通って湯水混合装置本体21内部に流入し、水導入口22bから流入した水は主弁体30の水側のシート部と水側シート面24bの間を通って湯水混合装置本体21内部に流入する。
【0047】
湯水混合装置本体21に流入した湯は、主弁体30の内側を通って、図2及び図3における右方向に流れる。また、湯水混合装置本体21に流入した水は、主弁体30の中を流れる湯と混合され、吐出口24cから流出する。この際、混合された湯と水は、ほぼ均一な温度にされて感温ばね34の周囲及び内部を流れる。吐出口24cから流出した湯は、切替バルブ16(図1)を通って、カラン12又はシャワーヘッド14から吐出される。
【0048】
感温ばね34の周囲及び内部を流れる湯の温度が設定温度よりも高い場合には、感温ばね34は伸びるように作用するので、感温ばね34による付勢力が増大する。これにより、可動スリーブ40は図2及び図3における左側に移動され、その位置で感温ばね34による付勢力とバイアスばね32による付勢力が釣り合うようになる。可動スリーブ40の移動に伴って、主弁体30も左方向に移動される。主弁体30が左方向に移動されることにより、湯側のシート部と湯側シート面22cの間の距離は短くなり、水側のシート部と水側シート面24bの間の距離は長くなるので、湯水混合装置本体21に流入する水の割合が増大し、吐出される湯の温度が低下する。
【0049】
逆に、感温ばね34の周囲及び内部を流れる湯の温度が設定温度よりも低い場合には、感温ばね34による付勢力は減少し、可動スリーブ40は図2及び図3における右方向に移動され、これに伴って主弁体30も右方向に移動されて、吐出される湯の温度が上昇する。これらの作用により、カラン12又はシャワーヘッド14から吐出される湯の温度が、設定温度に調節される。
【0050】
また、湯側のシート部と湯側シート面22cの間を通って流入する湯、及び水側のシート部と水側シート面24bの間を通って流入する水は、各シート部とシート面との間の狭い隙間を通過するため、流速が速くなる。このように、速い流速で流入した湯及び水の大部分は、湯水混合装置本体21内に配置されたシールド部材64に衝突して、流れの方向を変え、主にシールド部材64の外側を軸線方向に流れて吐出口24cから流出する。即ち、バイアスばね32、可動支柱38、可動スリーブ40、及び感温ばね34は、シールド部材64によって覆われているため、湯水混合装置本体21内に流入した湯及び水が、これらの部品に大きな流速で直接衝突して大きな動圧力を及ぼすことが防止される。
【0051】
さらに、主弁体30の脚部30bも、シールド部材64の外周包囲壁67によって覆われているため、脚部30bには、流入した湯及び水の大きな動圧力は作用しない。また、主弁体30の円筒部分の外壁面及び内壁面は、軸線方向に向けられているため、そこに動圧力が作用したとしても、その動圧力によって主弁体30が軸線方向に移動されることは少ない。
【0052】
このように、シールド部材64は、バイアスばね32や感温ばね34等を覆うように配置されているため、流入した湯及び水の動圧力がそれらの部品に直接作用し、ばねの付勢力以外の力によって主弁体30が移動され、湯水混合装置20の温度調節機能に悪影響を与えることが防止される。
【0053】
一方、混合された湯及び水は、主に丸穴68を通ってシールド部材64の内部に流入して感温ばね34に接触し、感温ばね34は混合された湯及び水の温度に応じた付勢力を発生させる。この丸穴68を通ってシールド部材64の内部に流入する混合された湯及び水の流速は、各シート部とシート面との間の狭い隙間を通って流入した際の流速よりも大幅に減速されているため、感温ばね34の作用に悪影響を与えることはない。
【0054】
本発明の第1実施形態の湯水混合水栓によれば、湯水混合装置本体21内に流入した水及び湯の動圧力が、バイアスばね32、感温ばね34、可動支柱38、可動スリーブ40、又は主弁体30の脚部30bに直接作用するのを、シールド部材64が抑制するので、湯水混合装置20の温度調節機能が、動圧力によって悪影響を受けるのを防止することができる。
【0055】
また、本実施形態の湯水混合水栓によれば、シールド部材64によって、流速の大きい湯及び水がバイアスばね32又は感温ばね34に直接衝突することが防止されるので、湯水混合装置本体21内の流路抵抗が低減され、湯水混合装置20からの吐出流量を増大させることができる。
【0056】
さらに、本実施形態の湯水混合水栓によれば、シールド部材64の感温ばね34を覆う部分に、混合された湯を流入させるための丸穴68が形成されているので、混合された湯の大きな動圧力が感温ばね34に直接作用するのを防止しつつ、感温ばね34が混合された湯の温度変化に急速に応答することができ、湯の温度に応じた付勢力を発生して、吐出される湯の温度を調整することができる。
【0057】
また、本実施形態の湯水混合水栓によれば、シールド部材64が湯水混合装置本体21に対して固定されているので、主弁体30の移動に悪影響を与えることなく、バイアスばね32又は感温ばね34に大きな動圧力が作用するのを防止することができる。
【0058】
さらに、本実施形態の湯水混合水栓によれば、シールド部材64が主弁体30の脚部30aを覆う外周包囲壁67を有するので、主弁体30に作用する動圧力のうちの、主弁体30をその摺動方向に移動させる方向成分が低減され、主弁体30に作用する動圧力が温度調節性能に悪影響を及ぼすのを防止することができる。
【0059】
また、本実施形態の湯水混合水栓によれば、流入した湯及び水は、主に湯水混合装置本体21とシールド部材64の間の環状の空間を流れるので、流路抵抗が更に低減され、湯水混合装置20からの吐出流量を増大させることができる。
【0060】
上述した実施形態においては、バイアスばね32及び感温ばね34の付勢力によって可動支柱38及び可動スリーブ40が移動され、これらの移動に伴って主弁体30が移動されていたが、変形例として、バイアスばね32及び/又は感温ばね34が、主弁体30の脚部30bを直接押圧するように構成することもできる。
【0061】
次に、図6乃至図8を参照して、本発明の第2実施形態による湯水混合水栓を説明する。本実施形態の湯水混合水栓は、内蔵されている湯水混合装置の主弁体を移動させる機構が第1実施形態とは異なる。従って、ここでは、本発明の第2実施形態の第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成については、同様の符号を付して説明を省略する。
【0062】
図6は本実施形態による湯水混合水栓に内蔵されている湯水混合装置120の断面図であり、図7は、図6のVII−VII線に沿う断面図である。また、図8は湯水混合装置120の分解斜視図である。
【0063】
図6及び図7に示すように、湯水混合装置120は、第1本体部材122と、第2本体部材124と、送りねじ126と、摺動部材128と、を有する。また、湯水混合装置120は、第1本体部材122の内部に移動可能に配置された主弁体130と、主弁体130を付勢する付勢手段であるバイアスばね132と、バイアスばね132とは反対方向に主弁体130を付勢する感温付勢手段である感温ばね134と、を有する。本実施形態においては、感温ばね134として、形状記憶合金製のコイルばねを使用している。
【0064】
図6乃至図8に示すように、第1本体部材122は、第2本体部材124が嵌め込まれることにより湯水混合装置本体121を構成している。また、第1本体部材122には、湯を流入させるための湯導入口122a及び水を流入させるための水導入口122bが夫々円周方向に設けられている。また、湯導入口122aの一方の端面は湯側シート面122cとして形成されている。
【0065】
第2本体部材124は概ね円筒状の形態であり、その中心には、一方の端部から他方の開放された端部に向けて軸線方向に延びる支柱124aが形成されている。また、第2本体部材124は、開放された端部を、第1本体部材122の端部に嵌め込むことによって、第1本体部材122に取り付けられている。また、第2本体部材124の開放した端部の先端は、主弁体130と当接する水側シート面124bとして形成されている。さらに、第2本体部材124の水側シート面124bとは反対側の端部には、湯水混合装置本体121内で混合された湯を流出させる吐出口124cが形成されている。
送りねじ126は、第1本体部材122の内部に回転可能に配置され、スプライン部126a、送り雄ねじ部126bが形成されている。
【0066】
摺動部材128は、概ね円筒形の形態であり、第1本体部材122の内部に摺動可能に配置され、その外側には、軸線方向の溝128a(図8)が形成されており、この溝128aが、第1本体部材122に形成された突起(図示せず)を受け入れている。さらに、摺動部材128の内側には、送り雌ねじ部128bが形成されており、送りねじ126を回転させると、摺動部材128は第1本体部材122の軸線方向に摺動される。
【0067】
次に、湯水混合装置本体121内で混合された湯の温度に応じて、主弁体130を移動させる機構を説明する。
図6及び図7に示すように、主弁体130は概ね円筒状の部材であり、その両端には、軸線方向に摺動されることにより湯側シート面122c又は水側シート面124bと当接するシート部が形成されている。また、主弁体130の左側には、可動支柱138と、バイアスばね132と、ばね押え金具136が配置されている。可動支柱138の主弁体130側の端部には拡径部138aが形成されている。また、可動支柱138の、主弁体130とは反対側の端部には、Cクランプ136aが取り付けられ、ばね押え金具136を位置決めしている。バイアスばね132は、可動支柱138の拡径部138aとばね押え金具136の間に挟まれた状態で可動支柱138の周囲に配置される。
【0068】
また、図6及び図7に示すように、主弁体130の右側には、第2本体部材124の支柱124aを取り囲むように、付勢力均衡部材である可動スリーブ140と、感温ばね134が配置されている。可動スリーブ140は、概ね円筒状の部材であり、支柱124aの周囲に摺動可能に配置されている。さらに、感温ばね134は、支柱124aを取り囲むように配置され、その図6における左側の端部は可動スリーブ140に当接し、右側の端部は第2本体部材124の内壁面の端部に当接するように配置されている。
【0069】
また、主弁体130の内側には、第2本体部材124の支柱124aの先端と主弁体130を連結する3本の回動アーム160が配置されている。この3本の回動アーム160は、支柱124aの中心軸線から120゜ずつ間隔を隔てて放射方向に延びるように配置されており、その基端には、概ね円柱状の円柱部160aが形成されている。この円柱部160aは、図6に示すように、支柱124aの先端に形成された凹部124dと支柱124aの先端に差し込まれたピン162の頭との間に回動可能に受け入れられている。この構成により、回動アーム160は、その基端を中心に回動することができる。一方、回動アーム160の先端には凹部160bが形成されており、この凹部160bは、主弁体130の内壁面に形成された円柱状の突起130aを受け入れている。この構成により、回動アーム160が、その円柱部160aを中心に回動されると、主弁体130は図6及び図7における左右方向に移動される。
【0070】
さらに、図6に示すように、回動アーム160の両側面の中間部には、可動支柱138及び可動スリーブ140が当接されている。摺動部材128が、図6及び図7における右方向に移動され、摺動部材128とばね押え金具136が当接するようになると、可動支柱138の拡径部138aは、バイアスばね132の付勢力により、右方向に付勢される。一方、この状態では、可動スリーブ140は、感温ばね134の付勢力により、図6及び図7における左方向に付勢される。このため、可動支柱138と可動スリーブ140の間に挟まれた回動アーム160の中間部は、可動支柱138の拡径部138a及び可動スリーブ140の先端部から、互いに反対方向の付勢力を受けることになる。
【0071】
湯水混合装置120の使用時においては、可動支柱138及び可動スリーブ140は、バイアスばね132の付勢力と感温ばね134の付勢力が釣り合う位置まで移動される。この可動支柱138及び可動スリーブ140の移動に伴って、それらの間に挟まれた各回動アーム160が回動される。回動アーム160が回動されると、回動アーム160の先端に係合された主弁体130が、軸線方向に移動される。本実施形態においては、回動アーム160の回動中心から主弁体130と回動アーム160が係合する点までの距離は、回動アーム160の回動中心から回動アーム160と可動スリーブ140が当接する点までの距離の約2倍である。従って、主弁体130は、バイアスばね132及び感温ばね134の付勢力によって、付勢力均衡部材である可動スリーブ140が移動された距離の約2倍の距離移動される。
【0072】
即ち、回動アーム160は、可動支柱138及び可動スリーブ140の移動距離を増幅して主弁体を移動させるリンク機構として作用する。また、本実施形態においては、回動アーム160は、可動支柱138及び可動スリーブ140の移動を主弁体に伝達し、主弁体を可動支柱138及び可動スリーブ140の移動距離よりも長い距離移動させる移動量増幅手段として機能する。
【0073】
一方、図6及び図7に示すように、湯水隔離手段であるゴム製のOリング142が、主弁体130の外周に配置されている。また、Oリング142の隣には、位置規制部材である脚付スペーサーリング146が配置されている。さらに、脚付スペーサーリング146の反対側には、第1本体部材122の内壁に設けられた段部122dが形成されている。これにより、Oリング142の位置は、第1本体部材122の内壁の段部122d及び脚付スペーサーリング146によって規制され、第1本体部材122内の所定の位置に位置決めされる。
【0074】
一方、第1本体部材122の端面には、ばね金具148が配置されており、このばね金具148をスプライン部126aの基端部に押付けるために、Oリング150がスプライン部126aの基端の周囲に配置されている。ばね金具148は、2本の板ばね部148aと、その先端に夫々形成された係合部148bと、を有する。
【0075】
また、図8に示すように、第1本体部材122の端面には、その外周部に設けられた放射状のスプライン部122eが形成されている。ばね金具148の係合部148bが、スプライン部122eの山を乗り越えることにより、送りねじ126の回転にクリック感が与えられる。
また、第1本体部材122の外側には、湯導入口122a及び水導入口122bを覆うように、円筒状のフィルター152、154が夫々配置されている。
【0076】
さらに、図6及び図7に示すように、湯水混合装置本体121の内部には、バイアスばね132、感温ばね134等を取り囲むように筒状のシールド部材164が配置されている。また、シールド部材164は、筒状の主弁体130を貫通するように、主弁体130及び湯水混合装置本体121の内壁面に対して同心円状に配置される。
【0077】
シールド部材164は、シールド部材本体164aとシールド部材キャップ164bから組み立てられている(図8)。また、図6に示すように、シールド部材164の側面には、回動アーム160を通すための3つの長円形穴166が形成されている(図6には1つのみ図示)。この長円形穴166の周囲には、回動アーム160の周囲を覆う脚部包囲部である外周包囲壁167が形成されている。さらに、シールド部材164の側面の、感温ばね134を覆う部分には、湯水混合装置本体121内で混合された湯を、シールド部材164の内部に流入させるための流入孔である9つの丸穴168が形成されている(図6には3つのみ図示)。
【0078】
また、シールド部材164の側面には、3つのスペーサー突起170が形成されている(図6には1つのみ図示)。さらに、シールド部材164の端部外周には、スペーサー環171が形成されている。これらのスペーサー突起170及びスペーサー環171が湯水混合装置本体121の内壁面に当接することにより、シールド部材164を湯水混合装置本体121内のほぼ中央に位置決めしている。さらに、シールド部材164の一方の端部には、半径方向内方に向かって延びるフランジ部172(図6)が形成されている。図6及び図7に示すように、このフランジ部172は、感温ばね134と第2本体部材124の端部との間に挟まれており、シールド部材164の湯水混合装置本体121に対する位置が固定されている。
【0079】
次に、図6乃至図8を参照して、本発明の実施形態による湯水混合水栓の作用を説明する。
まず、湯水混合水栓の使用者は、湯温調節用ダイヤル8を所望の温度に設定する。ここで、湯温調節用ダイヤル8を最低温度に設定した場合には、主弁体130の湯側のシート部は、感温ばね134の付勢力により湯側シート面122cに当接され、湯水混合装置本体121内に水のみが流入できる状態となっている。
【0080】
次に、湯温調節用ダイヤル8を操作して設定温度を上昇させると、摺動部材128はばね押え金具136と当接する。これにより、可動スリーブ140及び可動支柱138は、バイアスばね132の付勢力と感温ばね134の付勢力が釣り合う位置に移動される。この移動により、回動アーム160の中間部が可動スリーブ140又は可動支柱138によって押圧され、回動アーム160は円柱部160aを中心に回動される。回動アーム160が回動されると、これと共に回動アーム160の先端に係合された主弁体130も移動される。この際、主弁体130の移動距離は、可動スリーブ140及び可動支柱138の移動距離の約2倍になる。
【0081】
使用者が吐止水切替ハンドル10を操作すると、カラン又はシャワーからの吐水が開始される。吐水が開始されると、湯供給脚4から導入された湯は、フィルター152を介して湯導入口122aに流入し、水供給脚6から導入された水は、フィルター154を介して水導入口122bに流入する。湯導入口122aから流入した湯は主弁体130の湯側のシート部と湯側シート面122cの間を通って湯水混合装置本体121内部に流入し、水導入口122bから流入した水は主弁体130の水側のシート部と水側シート面124bの間を通って湯水混合装置本体121内部に流入する。
【0082】
湯水混合装置本体121に流入した湯は、主弁体130の内側を通って、図6及び図7における右方向に流れる。また、湯水混合装置本体121に流入した水は、主弁体130の中を流れる湯と混合され、吐出口124cから流出する。この際、混合された湯と水は、ほぼ均一な温度にされて感温ばね134の周囲及び内部を流れる。吐出口124cから流出した湯は、切替バルブ16(図1)を通って、カラン12又はシャワーヘッド14から吐出される。
【0083】
感温ばね134の周囲及び内部を流れる湯の温度が設定温度よりも高い場合には、感温ばね134は伸びるように作用するので、感温ばね134による付勢力が増大する。これにより、可動スリーブ140は図6及び図7における左側に移動され、その位置で感温ばね134による付勢力とバイアスばね132による付勢力が釣り合うようになる。可動スリーブ140が移動されることにより、各回動アーム160は回動され、これにより、主弁体130も左方向に移動される。上述のように、この際の主弁体130の移動距離は、可動スリーブ140の移動距離の約2倍になる。主弁体130が左方向に移動されることにより、湯側のシート部と湯側シート面122cの間の距離は短くなり、水側のシート部と水側シート面124bの間の距離は長くなるので、湯水混合装置本体121に流入する水の割合が増大し、吐出される湯の温度が低下する。
【0084】
逆に、感温ばね134の周囲及び内部を流れる湯の温度が設定温度よりも低い場合には、感温ばね134による付勢力は減少し、可動スリーブ140は図6及び図7における右方向に移動され、これに伴って主弁体130も右方向に移動されて、吐出される湯の温度が上昇する。これらの作用により、カラン12又はシャワーヘッド14から吐出される湯の温度が、設定温度に調節される。
【0085】
また、湯水混合装置本体121内に流入する湯及び水は、各シート部とシート面との間の狭い隙間を通過するため、流速が速くなる。湯水混合装置本体121内に配置されたシールド部材164は、バイアスばね132、可動支柱138、可動スリーブ140、感温ばね134、回動アーム160等を取り囲むように配置されているため、大きな流速で湯水混合装置本体121内に流入した湯及び水が、直接これらの部品に衝突するのが防止される。これにより、流入した湯及び水の動圧力がバイアスばね132や感温ばね134等に作用し、これらのばねの付勢力以外の力によって主弁体130が移動され、湯水混合装置120の温度調節機能に悪影響を与えることが防止される。また、混合された湯及び水は、主に丸穴168を通ってシールド部材164の内部に流入して、感温ばね134に接触する。これにより、感温ばね134は、混合された湯及び水の温度に応じた付勢力を発生する。
【0086】
本発明の第2実施形態の湯水混合水栓によれば、主弁体130は、回動アーム160によって、可動スリーブ140及び可動支柱138が移動した距離の約2倍の距離移動されるため、バイアスばね132及び感温ばね134の伸縮により直接主弁体130を移動させた場合に比べ、約2倍の距離主弁体130を移動させることができる。従って、主弁体130のストロークを従来の湯水混合装置と同程度にした場合、バイアスばね132と感温ばね134の釣り合い位置の移動距離を約1/2にすることができる。これにより、湯及び水を湯水混合装置本体121内に流入させる流路面積を十分に確保しながら、バイアスばね132及び感温ばね134の伸縮量を約1/2にすることができ、湯水混合装置の温度調節性能を向上させることができる。
【0087】
また、本実施形態の湯水混合水栓によれば、シールド部材164が、バイアスばね132、感温ばね134、可動スリーブ140、又は回動アーム160に、湯水混合装置本体121内に流入した水及び湯の動圧力が直接作用するのを抑制するので、湯水混合装置120の温度調節機能が、動圧力によって悪影響を受けるのを防止することができる。
【0088】
上述した実施形態においては、バイアスばね132及び感温ばね134の付勢力によって、付勢力均衡部材として機能する可動支柱138及び可動スリーブ140が移動され、これらの部材を介して回動アーム160が押圧され、回動されていたが、変形例として、バイアスばね132及び/又は感温ばね134が、回動アーム160を直接押圧するように構成することもできる。このように構成された場合においては、バイアスばね132又は感温ばね134が、付勢力均衡部材の機能を兼ねることになる。
【0089】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態では、感温付勢手段として形状記憶合金製の感温ばねが使用されていたが、封入されたワックスが熱により液化される際の体積変化を利用したワックスエレメント等を、感温付勢手段として用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の第1実施形態による湯水混合水栓全体を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態による湯水混合水栓に内蔵されている湯水混合装置の断面図である。
【図3】図2におけるIII−III線に沿う断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による湯水混合水栓に内蔵されている湯水混合装置の分解斜視図である。
【図5】湯水混合装置に内蔵されたシールド部材を(a)分解した状態の斜視図、及び(b)組み立てた状態の斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態による湯水混合水栓に内蔵されている湯水混合装置の断面図である。
【図7】図6におけるVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態による湯水混合水栓に内蔵されている湯水混合装置の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0091】
1 湯水混合水栓
2 水栓本体
4 湯供給脚
6 水供給脚
8 湯温調節用ダイヤル
10 吐止水切替ハンドル
12 カラン
14 シャワーヘッド
16 切替バルブ
20 湯水混合装置
21 湯水混合装置本体
22 第1本体部材
22a 湯導入口
22b 水導入口
22c 湯側シート面
22d 段部
22e スプライン部
24 第2本体部材
24a 支柱
24b 水側シート面
24c 吐出口
24d ボア
26 送りねじ
26a スプライン部
26b 送り雄ねじ部
28 摺動部材
28a 溝
28b 送り雌ねじ部
30 主弁体
30a ボス部
30b 脚部
30c ガイドシャフト
32 バイアスばね
34 感温ばね
36 ばね押え金具
36a Cクランプ
38 可動支柱
38a 拡径部
40 可動スリーブ
42 Oリング
46 脚付スペーサーリング
48 ばね金具
48a 板ばね部
48b 係合部
50 Oリング
52 フィルター
54 フィルター
64 シールド部材
64a シールド部材本体
64b シールド部材キャップ
66 長円形穴
67 外周包囲壁
68 丸穴
70 スペーサー突起
71 スペーサー環
72 フランジ部
120 湯水混合装置
121 湯水混合装置本体
122 第1本体部材
122a 湯導入口
122b 水導入口
122c 湯側シート面
122d 段部
122e スプライン部
124 第2本体部材
124a 支柱
124b 水側シート面
124c 吐出口
124d 凹部
126 送りねじ
126a スプライン部
126b 送り雄ねじ部
128 摺動部材
128a 溝
128b 送り雌ねじ部
130 主弁体
130a 突起
132 バイアスばね
134 感温ばね
136 ばね押え金具
136a Cクランプ
138 可動支柱
138a 拡径部
140 可動スリーブ
142 Oリング
146 脚付スペーサーリング
148 ばね金具
148a 板ばね部
148b 係合部
150 Oリング
152 フィルター
154 フィルター
160 回動アーム
160a 円柱部
160b 凹部
162 ピン
164 シールド部材
164a シールド部材本体
164b シールド部材キャップ
166 長円形穴
167 外周包囲壁
168 丸穴
170 スペーサー突起
171 スペーサー環
172 フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された湯及び水を混合し、適温に調整された湯を吐出させる湯水混合装置であって、
湯水混合装置本体と、
この湯水混合装置本体の内部に移動可能に配置され、移動されることにより、上記湯水混合装置本体内に流入する湯及び水の流量を変化させる主弁体と、
上記湯水混合装置本体内に配置され、上記主弁体が所定方向に摺動されるように、付勢力を発生する付勢手段と、
上記湯水混合装置本体内に配置され、上記主弁体が摺動されるように、上記付勢手段とは逆方向の付勢力を発生し、上記湯水混合装置本体内に流入して混合された湯の温度に応じて付勢力が変化する感温付勢手段と、
上記湯水混合装置本体内に配置され、上記付勢手段又は上記感温付勢手段の少なくとも一部を覆うことによって、上記湯水混合装置本体内に流入した水及び湯の動圧力が、上記付勢手段、又は上記感温付勢手段に直接作用するのを抑制するシールド部材と、
を有することを特徴とする湯水混合装置。
【請求項2】
上記シールド部材は、その上記感温付勢手段を覆う部分に、混合された湯を流入させるための流入孔が形成されている請求項1記載の湯水混合装置。
【請求項3】
上記シールド部材は、上記湯水混合装置本体に対して固定されている請求項1又は2記載の湯水混合装置。
【請求項4】
上記主弁体及び上記シールド部材は概ね筒状であり、上記シールド部材は、上記主弁体の内側に、上記主弁体に対して概ね同心円状に配置され、上記主弁体は、その内壁面から上記シールド部材を貫通して内方に延びる脚部を備え、上記シールド部材は上記脚部の周囲の少なくとも一部を覆う脚部包囲部を有する請求項1乃至3の何れか1項に記載の湯水混合装置。
【請求項5】
上記湯水混合装置本体内部は概ね円筒状に形成されており、上記付勢手段及び上記感温付勢手段は、上記湯水混合装置本体内のほぼ中心軸線上に配置され、上記シールド部材は、上記付勢手段及び上記感温付勢手段の外側を概ね同心円状に覆う請求項1乃至4の何れか1項に記載の湯水混合装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の湯水混合装置と、
この湯水混合装置を収納する水栓本体と、
上記湯水混合装置によって混合された湯の吐水状態と止水状態を切替える開閉弁と、
混合された湯を吐出させる吐出部と、
を有することを特徴とする湯水混合水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−198578(P2007−198578A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21179(P2006−21179)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【特許番号】特許第3882194号(P3882194)
【特許公報発行日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】