説明

湿式スクラバに酸化ガスを供給するガススパージャ

ガススパージャ(30)は、スラリ(S)を用いてプロセスガスから二酸化硫黄を除去する湿式スクラバのタンク(18)に酸素を含有する酸化ガスを供給する。ガススパージャ(30)は、少なくとも、酸化ガス供給ダクト(32)の内部に位置し第1の酸化ガス供給ノズル(44)に向けて水を含有する液体を噴射する第1の液体供給ノズル(38)を備える。酸化ガス供給ダクト(32)は、第1の酸化ガス供給ノズル(44)における、直径(D)などの特徴的断面寸法を有する。第1の液体供給ノズル(38)は、前記第1の酸化ガス供給ノズル(44)から最大で前記特徴的断面寸法(D)の5倍の距離(L1)に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜硫酸カルシウム及び硫酸カルシウムを包含する化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を含有するスラリを用いてプロセスガスから二酸化硫黄を除去する湿式スクラバのタンクに、酸素を含有する酸化ガスを供給するガススパージャであって、酸化ガス供給ダクトと、前記タンクのスラリに酸化ガスを分散する少なくとも第1の酸化供給ノズルとを包含するガススパージャに関する。
【背景技術】
【0002】
石炭、石油、泥炭、廃棄物などの燃料を発電所などの燃焼プラントにおいて燃焼する際、高温のプロセスガスが生成される。この高温プロセスガスはしばしば煙道ガスと呼ばれ、二酸化硫黄,SO、及び他の成分を含有する。二酸化硫黄は、例えば石炭石を含有するスラリに煙道ガスを接触させる、いわゆる湿式スクラバにおいて除去される。スラリは湿式スクラバの再循環タンクから再循環される。二酸化硫黄はスラリによって吸収され、石炭石と反応して亜硫酸カルシウム,CaSOを形成する。亜硫酸カルシウムは最終生成物として好ましくないため、1つ又はいくつかのいわゆるガススパージャを用いて、酸素を含有する酸化ガスを再循環タンクのスラリに供給する。酸素を含有する酸化ガスは、一般的には周囲空気であるが、純酸素ガスなどのその他のガスも利用できる。酸素はスラリの亜硫酸カルシウムと反応して、亜硫酸カルシウムを硫酸カルシウム,CaSO、すなわち石膏に転換する。
【0003】
公知のガススパージャの問題点は、ガススパージャの外部及び内部で生じる、亜硫酸カルシウムや硫酸カルシウムなどの固体カルシウム沈積物によって、ガススパージャが詰まりやすいということである。このような詰まりが起きると、メンテナンス作業を頻繁に行うことになり、これは、湿式スクラバの動作の度重なる中断を引き起こし得る。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、亜硫酸カルシウム及び/又は硫酸カルシウムを含有するスラリを使って動作する湿式スクラバに酸素を含有するガスを供給するよう動作し、公知のガススパージャよりも少ないメンテナンス作業を要する、ガススパージャを提供することにある。
【0005】
この目的は、亜硫酸カルシウム及び硫酸カルシウムを包含する化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を含有するスラリを用いてプロセスガスから二酸化硫黄を除去する湿式スクラバのタンクに酸素を含有する酸化ガスを供給するガススパージャであって、酸化ガス供給ダクトと、前記酸化ガスを前記タンクのスラリに分散する少なくとも第1の酸化ガス供給ノズルとを備えるガススパージャによって達成される。このガススパージャは、少なくとも、前記酸化ガス供給ダクトの内部に位置し前記第1の酸化ガス供給ノズルに向けて水を含有する液体を噴射する第1の液体供給ノズルを備え、前記酸化ガス供給ダクトは、前記第1の酸化ガス供給ノズルにおける、直径などの特徴的断面寸法を有し、前記第1の液体供給ノズルは、前記第1の酸化ガス供給ノズルから最大で前記特徴的断面寸法の5倍の距離に位置する。
【0006】
このガススパージャの利点は、スラリの亜硫酸カルシウムや石膏などの化合物が、硬質の沈積物を形成する前に、前記酸化ガス供給ダクト及び前記第1の酸化ガス供給ノズルから除去されることである。このような硬質の沈積物は、酸化ガスの適切な流れをいずれ妨げる大きな集合体を形成しやすい。前記酸化ガス供給ダクトの内部に液体を噴射することにより、硬質な沈積物の形成が回避されるか、又は、少なくとも、実質的に低減される。
【0007】
本発明の一実施形態によれば、前記酸化ガス供給ダクトは、前記第1の液体供給ノズルの位置と前記第1の酸化ガス供給ノズルの位置との間で実質的に直線状である。この実施形態の利点は、前記第1の液体供給ノズルから前記第1の酸化ガス供給ノズルの位置が「見える」ため、噴射液による洗浄効果が向上されることである。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、前記ガススパージャは第2の液体供給ノズルを備え、前記第2の液体供給ノズルは前記第1の液体供給ノズルから最大で前記特徴的断面寸法の25倍の距離である距離に位置する。この実施形態の利点は、前記第2の液体供給ノズルによって、前記第1の液体供給ノズルから所定の距離に位置する前記酸化ガス供給ノズルの洗浄効果が向上されることである。ガススパージャが非常に長い酸化ガス供給ダクトを備えている場合、第3、第4などの液体供給ノズルを備えることも可能であり、各液体供給ノズルは、上流で直近の他の液体供給ノズルから最大で前記特徴的断面寸法の25倍の距離に位置することが好ましい。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、前記ガススパージャは前記酸化ガス供給ダクトからの液体を排出する排水パイプを備える。この実施形態の利点は、前記第1の液体供給ノズルによって噴射される液体、及びそれによって除去される沈積物が、前記酸化ガス供給ノズルの妨げとなることなく、前記酸化ガス供給ダクトから容易に排出され得ることである。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、前記第1の液体供給ノズルは100°未満の噴射角を有するノズルである。ノズルが小さめの噴射角を有すると、前記第1の酸化ガス供給ノズルの下流に位置する前記酸化ガス供給ノズルも効率的に洗浄される。
【0011】
本発明の更なる目的は、関連部品のメンテナンスによる中断時間を低減させる、湿式スクラバの再循環タンクに酸素を含有するガスを供給する効率的な方法を提供することにある。
【0012】
この目的は、亜硫酸カルシウム及び硫酸カルシウムを包含する化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を含有するスラリを用いてプロセスガスから二酸化硫黄を除去する湿式スクラバのタンクに酸素を含有する酸化ガスを供給する方法であって、酸化ガス供給ダクトと、前記酸化ガスを前記タンクのスラリに分散する少なくとも第1の酸化ガス供給ノズルとを備えるガススパージャを用いて前記酸化ガスを供給することを包含する方法によって達成される。前記酸化ガス供給ダクトは、前記第1の酸化ガス供給ノズルにおける、直径などの特徴的断面寸法を有する。この方法において、前記第1の酸化ガス供給ノズルから最大で前記特徴的断面寸法の5倍の距離である距離の位置から、前記第1の酸化ガス供給ノズルに向けて水を含有する液体を噴射する。
【0013】
この方法の利点は、従来技術における方法に比べてメンテナンスによる中断をより少なくするように、長時間ガススパージャから沈積物が除去された状態が保たれることである。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、前記ガススパージャの全ての前記酸化ガス供給ノズルに向けて噴射される水の総量は、水蒸気で酸化ガスを飽和するのに要する水の量よりも大きい。この実施形態の利点は、供給される液体の量が、水蒸気による酸化ガスの飽和、及び前記酸化ガス供給ダクトの洗浄に十分であることが確実になることである。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、前記ガススパージャの全ての前記酸化ガス供給ノズルに向けて噴射される水の総量は、少なくとも、乾性酸化ガス1kgあたり水0.025kgである。水量が乾性酸化ガス1kgあたり水0.025kg未満では、前記酸化ガス供給ダクト及び前記酸化ガス供給ノズルの洗浄効果が低減することが分かっている。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、前記ガススパージャの全ての前記酸化ガス供給ノズルに向けて噴射される水の総量は、乾性酸化ガス1kgあたり水10kg未満である。水量が乾性酸化ガス1kgあたり水10kgを超えると、運転コストが増加する一方、前記酸化ガス供給ダクト及び前記酸化ガス供給ノズルの洗浄効果の更なる向上にはならないことが分かっている。
【0017】
本発明の更なる目的及び特徴は、以下の説明及び特許請求の範囲の記載から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】発電所の概略側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るガススパージャの概略側面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るガススパージャの概略側面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係るガススパージャの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、概略側面図であり、発電所1を示す。発電所1は、石炭又は石油などの燃料が燃焼されるボイラ2を備える。燃料の燃焼により、煙道ガスとしてプロセスガスが生成される。石炭又は石油に含有される硫黄種は二酸化硫黄,SOを生成し、二酸化硫黄は煙道ガスの一部を形成する。煙道ガスは、ダクト6を介して、ボイラ2から静電式集塵器4に送られる。静電式集塵器4は、煙道ガスから塵埃粒子を除去するものであり、その一例が米国特許第4,50,2872号に記載されている。
【0020】
次に、塵埃粒子がほぼ除去された煙道ガスは、ダクト10を介して湿式スクラバ8へ送られる。湿式スクラバ8は、開口板12を備える。煙道ガスは、開口板12、そして開口板12の上部を流れる吸収スラリの流動層14を通過して、上方に垂直に流される。ポンプ16は、再循環タンク18から開口板12の上部へとスラリを送り込む。そして、スラリは、流動層14となって開口板12の上部を流れ、次に戻しパイプ19を介して再循環タンク18に戻される。洗浄された煙道ガスは、ダクト15を介して湿式スクラバ8を離れる。湿式スクラバの好適な実施形態の一例の詳細は、国際公開第2005/007274号に記載されている。
【0021】
煙道ガスの二酸化硫黄,SOは、吸収スラリの流動層14を通る際、サイロ(説明を簡略にするために、図1には示されていない)からスラリに供給される石炭石,CaCOと反応する。二酸化硫黄と、スラリに含有される石炭石との間における反応は、以下の反応式1にまとめることができる。
CaCO(s)+SO(g)=>CaSO(aq)+CO(g)
【0022】
この反応により生成された亜硫酸カルシウムは、好ましい最終生成物ではない。このため、酸素を含有する酸化ガスが再循環タンク18に供給される。酸素を含有する酸化ガスは、通常、約20%の酸素を含有する圧縮周囲空気であるが、代わりに、純酸化ガス、又は酸素を含有する、その他のガスであってもよい。再循環タンク18に供給された酸素は、以下の反応式2に従って亜硫酸カルシウムと反応し、硫酸カルシウム、すなわち石膏,CaSOを形成する。
CaSO(aq)+1/2O(g)=>CaSO(s)
【0023】
石膏は好ましい最終生成物であり、例えば石膏ボードの製造において再利用できる。ここで関係するいくつかの化合物、例えば石炭石、亜硫酸カルシウム、及び硫酸カルシウムは、少なくともある程度は、スラリ中に固体で存在する。したがって、湿式スクラバ8を循環する吸収スラリでは、液体、通常水に固体粒子が分散している。
【0024】
コンプレッサ20は、周囲空気を圧縮し、通常1〜3バール(o)の圧力、すなわち周囲圧力より1〜3バール高い圧力とする。コンプレッサ20の動作により、圧縮された周囲空気の温度は通常70〜90℃に上昇する。高温面による怪我を防ぐため、冷却チャンバ22が、コンプレッサ20の直後に任意で設けられていてもよい。水ノズル24が、パイプ26から供給される水を冷却チャンバ22に注入する。輸送パイプ28を介して冷却チャンバ22を離れる圧縮空気は、通常30〜50℃の温度を有し、これは、作業員が火傷を負う恐れが回避されることを意味する。圧縮空気は、再循環タンク18内のスラリに圧縮空気を分散するガススパージャ30に送られる。
【0025】
図2は、ガススパージャ30をより詳細に示す。ガススパージャ30は、酸化ガス供給ダクト32を備える。酸化ガス供給ダクト32は、図2においてその断面が示され、直径Dが通常30〜300mm、再循環タンク18内の全長Lが通常1〜4メートルの細長い円管状である。図2から分かるように、輸送パイプ28は、酸化ガス供給ダクト32の第1の端34に接続される。再循環タンク18の内部において、酸化ガス供給ダクト32には、その長さに沿って多数の酸化ガス供給ノズル36が位置する。通常、各酸化ガス供給ノズル36は、酸化ガス供給ダクト32の壁面に形成された円筒状の開口である。各酸化ガス供給ノズル36の直径は通常6〜30mmである。輸送パイプ28を介して供給された圧縮空気は、第1の端34から酸化ガス供給ダクト32に入り、酸化ガス供給ダクト32に沿って酸化ガス供給ノズル36へと送られる。そして、圧縮空気は酸化ガス供給ノズル36を介して酸化ガス供給ダクト32を離れ、再循環タンク18に収容されているスラリ(図2においてSと表示)と混合され、前記反応式2の酸化反応を行う。
【0026】
酸化ガス供給ダクト32の内部には、第1の液体供給ノズル38が配置され、水を含有する液体を酸化ガス供給ノズル36に向けて噴射する。この液体は、一般に、発電所の通常の水供給システムのプロセス水であり、パイプ40は、この液体を第1の液体供給ノズル38に供給する。バルブ42はパイプ40に配置され、第1の液体供給ノズル38への水の流量を制御する。第1の液体供給ノズル38は、第1の端34から酸化ガス供給ダクト32に入る圧縮空気の輸送方向において最初の酸化ガス供給ノズル36である、第1の酸化ガス供給ノズル44から第1の距離L1に位置する。第1の距離L1は、酸化ガス供給ダクト32の前記第1の酸化ガス供給ノズル44における特徴的断面寸法(円管の場合は直径D)の最大5倍である。したがって、特徴的断面寸法として、酸化ガス供給ダクト32の第1の酸化ガス供給ノズル44における直径Dが50mmである場合、第1の距離L1は最大で5×50mm=250mmである。したがって、第1の液体供給ノズル38は、最大250mmの第1の距離L1だけ、第1の酸化ガス供給ノズル44の上流に位置するべきである。
【0027】
第1の液体供給ノズル38によって供給される水は、圧縮空気を水蒸気で飽和させる目的、また、酸化ガス供給ノズル36及び酸化ガス供給ダクト32の内部に水を流して洗浄するという目的を持つ。これら二つの目的を果たすことにより、酸化ガス供給ノズル36の中や周囲、及び酸化ガス供給ダクト32の内部に、石膏や亜硫酸カルシウムなどの固形物が沈積する恐れが最小限に抑えられる。このような沈積によって、ガススパージャ30の酸化効率が低減する可能性があり、さらにはガススパージャ30が完全に閉塞され、再循環タンク18に酸化ガスが全く供給されなくなることさえあり得る。酸化ガス供給ダクト32の内部や酸化ガス供給ノズル36の周辺に行き着いてしまうスラリの小滴が乾燥すると、そこに固体残留物が留まる恐れがあるが、圧縮空気を水蒸気で飽和させることにより、そのような乾燥の恐れが低減される。第1の液体供給ノズル38が酸化ガス供給ノズル36及び酸化ガス供給ダクト32の内部を液体で洗浄することにより、上記スラリの小滴は、酸化ガス供給ダクト32の内部や酸化ガス供給ノズル36に張り付く前に、除去される。
【0028】
酸化ガス供給ダクト32の、第1の端34とは反対にある第2の端46には、任意の排水パイプ48が形成される。排水パイプ48は、酸化ガス供給ダクト32から下方に再循環タンク18の底50に向かって垂直に伸びる。排水パイプ48の全長Hは、長さHを持つ液柱が酸化ガス供給ノズル36の圧力降下よりも高い圧力降下に対応するように選択される。したがって、通常の動作条件下においては、圧縮空気は、排水パイプ48ではなく酸化ガス供給ノズル36を介してのみ酸化ガス供給ダクト32を離れる。しかしながら、第1の液体供給ノズル38を介して噴射される洗浄液、及びそのような洗浄液の噴射によって流され洗浄されたスラリは、上記排水パイプ48を通って酸化ガス供給ダクト32から排出される。排水パイプ48が設けられていない場合は、洗浄液は、代わりに酸化ガス供給ノズル36を通って排出される。
【0029】
噴射される洗浄液の洗浄能力は、第1の液体供給ノズル38からの距離が大きいほど低くなる。このため、酸化ガス供給ダクト32の内部に1つ以上の液体供給ノズルを配置するのが好ましい場合がある。図2に示すように、第2の液体供給ノズル52が第1の液体供給ノズル38の下流に配置されている。パイプ54は洗浄液を第2の液体供給ノズル52に供給し、バルブ56は洗浄液の流量を制御するためパイプ54に配置される。第1の液体供給ノズル38と第2の液体供給ノズル52との間の第2の距離L2は、好ましくは、酸化ガス供給ダクト32の特徴的断面寸法、すなわち直径Dの最大25倍である。したがって、酸化ガス供給ダクト32の直径Dが50mmの場合、第2の液体供給ノズル52は、最大で25×50mm=1250mmの第2の距離L2だけ、第1の液体供給ノズル38の下流に位置するべきである。
【0030】
第1,第2の液体供給ノズル38,52によってガススパージャ30の酸化ガス供給ノズル36の全てに対して噴射される水の総量は、水蒸気による酸化ガスの飽和と洗浄効果の両方を実現するために、水蒸気で酸化ガスを飽和するのに要する水の量よりも大きくする。好ましくは、ガススパージャ30の酸化ガス供給ノズル36,44の全てに対して噴射される水の総量は、少なくとも、乾性酸化ガス1kg当たり水0.025kgである。したがって、ガススパージャ30に供給される圧縮空気の量が、乾性空気1000kg/hである場合、第1,第2の液体供給ノズル38,52を介してガススパージャ30に供給される水量は、合計で少なくとも、水0.025×1000=25kg/hであるべきである。好ましくは、ガススパージャ30の酸化ガス供給ノズル36,44の全てに対して噴射される水の総量は、乾性酸化ガス1kg当たり水10kg未満である。したがって、ガススパージャ30に供給される圧縮空気の量が、乾性空気1000kg/hである場合、第1,第2の液体供給ノズル38,52を介してガススパージャ30に供給される水の総量は、好ましくは、水10×1000=10000kg/h未満であるべきである。
【0031】
図2の参照により分かるように、酸化ガス供給ダクト32は前記第1の液体供給ノズル38の位置と前記第2の液体供給ノズル52の位置との間において、実質的に、直線状である。したがって、第1の液体供給ノズル38と第1の酸化ガス供給ノズル44との間は曲がっておらず、第1の液体供給ノズル38から第1の酸化ガス供給ノズル44が「見える」ため、洗浄効果が向上される。
【0032】
好ましくは、洗浄液が絶え間なく酸化ガス供給ダクト32に供給されるように、第1,第2の液体供給ノズル38,52は継続的に動作する。しかし、第1,第2の液体供給ノズル38,52を半継続的に動作させることも可能である。このような場合、第1,第2の液体供給ノズル38,52は少なくとも30分ごとに2分間動作すべきである。
【0033】
第1,第2の液体供給ノズル38,52は、好ましくは、いわゆるフル−コーンノズルであり、好ましくは、100°未満の噴射角を有する。有用な液体供給ノズルの例としては、米国イリノイ州ホイートンにあるSpraying Systems Co.の1/8’’GA−2 50°がある。
【0034】
図3は、代替的な実施形態に係るガススパージャ130を示す。輸送パイプ28、及びスラリSを収容する再循環タンク18は図2を参照して前述したものと同様であるため、ここで詳述はしない。ガススパージャ130は、膝133を有する「脚」の形状をした円筒管である酸化ガス供給ダクト132を備える。代わりに、酸化ガス供給ダクトは「膝」を有さない直線状の円筒管であってもよい。輸送パイプ28は、酸化ガス供給ダクト132の第1の端134に圧縮空気を送る。圧縮空気の輸送方向における膝133の下流には、第1の酸化ガス供給ノズル136が位置する。第1の酸化ガス供給ノズル136は、単に、酸化ガス供給ダクト132を第2の端146で切断することにより形成される。図3を参照して分かるように、酸化ガス供給ダクト132は、第2の端146において、酸化ガス供給ダクト132の長手方向に対して約45°で切断される。再循環タンク18内において、アジテータ147がガス供給ノズル136に隣接して配置されている。アジテータ147は、スラリと圧縮空気との混合を向上させるため、スラリを第1の酸化ガス供給ノズル136の領域へと送り込む。
【0035】
酸化ガス供給ダクト132内部における膝133の下流には、第1の液体供給ノズル138が配置され、水を含有する液体を第1の酸化ガス供給ノズル136に向けて噴射する。パイプ140は第1の液体供給ノズル138に洗浄液を供給し、バルブ142は洗浄液の流量を制御するためにパイプ140に配置される。第1の液体供給ノズル138は第1の酸化ガス供給ノズル136から第1の距離L1に位置する。距離L1は、酸化ガス供給ダクト132の前記第1の酸化ガス供給ノズル136における特徴的断面寸法(円管の場合は直径D)の最大5倍である。すなわち、L1は直径Dの最大5倍である。図3の参照で分かるように、第1の液体供給ノズル138によって供給される洗浄液は、第1の酸化ガス供給ノズル136を介して直接、再循環タンク18に排出される。
【0036】
図4は、更に他の代替的な実施形態に係るガススパージャ230を示す。輸送パイプ28、及びスラリSを収容する再循環タンク18は図2を参照して前述したものと同様であるため、ここで詳述はしない。ガススパージャ230は、膝233を有する「脚」の形状をした円筒管である酸化ガス供給ダクト232を備える。酸化ガス供給ダクトは、代わりに、「膝」を有さない直線状の円筒管であってもよい。輸送パイプ28は、酸化ガス供給ダクト232の第1の端234に圧縮空気を送る。圧縮空気の輸送方向における膝133の下流には、多数の酸化ガス供給ノズル236が位置する。酸化ガス供給ノズル236は、酸化ガス供給ダクト232に孔を開けることにより形成される。図示のように、酸化ガス供給ダクト232の第2の端246は酸化ガス供給ノズル236から距離を置いて位置する。
【0037】
酸化ガス供給ダクト232の内部における膝233の下流には、第1の液体供給ノズル238が配置され、水を含有する液体を酸化ガス供給ノズル236に向けて噴射する。パイプ240は第1の液体供給ノズル238に洗浄液を供給し、バルブ242は洗浄液の流量を制御するためにパイプ240に配置される。第1の液体供給ノズル238は、酸化ガス供給ノズル236の全てから第1の距離L1に位置する。距離L1は、酸化ガス供給ダクト232の前記酸化ガス供給ノズル236における特徴的断面寸法(円管の場合は直径D)の最大5倍である。すなわち、L1は直径Dの最大5倍である。流れる酸化ガスの全ては酸化ガス供給ノズル236を介して酸化ガス供給ダクト232を離れるが、第1の液体供給ノズル238によって供給される洗浄液のほとんどは第2の端246の開口から酸化ガス供給ダクト232を離れる。つまり、酸化ガス供給ダクト232は単に第2の端246で開いた管として形成され、この第2の端246が洗浄液を排出する排水パイプ248を形成する。
【0038】
上記実施形態の数々の変形が、特許請求の範囲の記載内で可能であることを理解されたい。
【0039】
上記の説明では、ほぼ飲料水と同質の純水であるプロセス水が、液体供給ノズル38,52によって噴射されてガススパージャ30を洗浄するのに使用されている。水を含有する、その他の種の液体も洗浄に使用できることを理解されたい。例えば、石膏フィルタの排水液など、湿式スクラバの様々な再循環液も洗浄液として使用することができる。供給されるスラリの中の水が水蒸気で圧縮空気を飽和させるのに必要な量以上であれば、再循環タンク18のスラリを洗浄液として使用することも可能である。しかしながら、通常は飲料水やプロセス水などの純水を使用するほうが好ましい。
【0040】
上記の説明では、酸化ガス供給ダクト32の第1の酸化ガス供給ノズル44における特徴的断面寸法は直径Dであると説明した。代わりに、酸化ガス供給ダクトが四角形断面を有する管の場合、特徴的断面寸法はその四角形断面の辺となる。更に代わりに、酸化ガス供給ダクトが三角形断面を有する管の場合、特徴的断面寸法はその三角形断面の最短の高さとなる。また更に代替的に、酸化ガス供給ダクトが矩形断面を有する管の場合、特徴的断面寸法はその矩形断面の最短の辺と最長の辺の合計の半分である。
【0041】
図1を参照して、上記では、湿式スクラバ8が開口板12を備え、その上を流動層14が流れると説明した。本発明に係るガススパージャは他の型の湿式スクラバにも使用できることを理解されたい。そのうちの1つの型としては、スラリノズルによってスラリが霧状にされるタワースクラバがある。煙道ガスはタワーを上方に垂直に送られ、霧状のスラリと接触とする。霧状のスラリは、前述の型のガススパージャを備え得る再循環タンクで集められる。タワー型の湿式スクラバの例は、欧州特許出願公開公報第0162536A1に記載されている。
【0042】
要約すると、ガススパージャ30は、スラリSを用いてプロセスガスから二酸化硫黄を除去する湿式スクラバ8のタンク18に、酸素を含有する酸化ガスを供給する。ガススパージャ30は、少なくとも、酸化ガス供給ダクト32の内部に位置する第1の液体供給ノズル38を備えており、第1の液体供給ノズル38は第1の酸化ガス供給ノズル44に向けて水を含有する液体を噴射する。酸化ガス供給ダクト32は、前記第1の酸化ガス供給ノズル44における、直径Dなどの特徴的断面寸法を有している。第1の液体供給ノズル38は、前記第1の酸化ガス供給ノズル44からから最大で前記特徴的断面寸法Dの5倍の距離L1に位置する。
【0043】
数々の好適な実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更を行うことができ、かつそれらの要素を均等物で置換できることは当業者であれば理解するであろう。加えて、本発明の本質的な範囲を逸脱することなく、特定の状態又は材料を本発明の教示に適合するよう多くの改良を行うことができる。それゆえ、本発明は、発明を実施するための最良の形態として開示された特定の実施の形態に限定されず、本発明は、特許請求の範囲の記載内にある全ての実施態様を包含するものである。さらに、第1、第2などの表現は順番や重要性を示すものではなく、他の要素との区別のために用いられるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜硫酸カルシウム及び硫酸カルシウムを包含する化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を含有するスラリ(S)を用いてプロセスガスから二酸化硫黄を除去する湿式スクラバ(8)のタンク(18)に酸素を含有する酸化ガスを供給するガススパージャ(30)であって、酸化ガス供給ダクト(32)と、前記酸化ガスを前記タンク(18)のスラリ(S)に分散する少なくとも第1の酸化ガス供給ノズル(44)とを備えるガススパージャ(30)において、前記ガススパージャ(30)には、前記酸化ガス供給ダクト(32)の内部に位置し、前記第1の酸化ガス供給ノズル(44)に向けて水を含有する液体を噴射する少なくとも第1の液体供給ノズル(38)が設けられ、前記酸化ガス供給ダクト(32)は、前記第1の酸化ガス供給ノズル(44)における、直径(D)などの特徴的断面寸法を有し、前記第1の液体供給ノズル(38)は、前記第1の酸化ガス供給ノズル(44)から最大で前記特徴的断面寸法(D)の5倍の距離(L1)に位置することを特徴とするガススパージャ。
【請求項2】
前記酸化ガス供給ダクト(32)は、前記第1の液体供給ノズル(38)の位置と前記第1の酸化ガス供給ノズル(44)の位置との間で実質的に直線状である、請求項1に記載のガススパージャ。
【請求項3】
前記ガススパージャ(30)は第2の液体供給ノズル(52)を備え、前記第2の液体供給ノズル(52)は、前記第1の液体供給ノズル(38)から最大で前記特徴的断面寸法(D)の25倍の距離(L2)に位置する、請求項1又は2に記載のガススパージャ。
【請求項4】
前記ガススパージャ(30)は、前記酸化ガス供給ダクト(32)からの液体を排出する排水パイプ(48)を備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガススパージャ。
【請求項5】
前記第1の液体供給ノズル(38)は、100°未満の噴射角を有するノズルである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のガススパージャ。
【請求項6】
亜硫酸カルシウム及び硫酸カルシウムを包含する化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を含有するスラリ(S)を用いてプロセスガスから二酸化硫黄を除去する湿式スクラバ(8)のタンク(18)に酸素を含有する酸化ガスを供給する方法であって、酸化ガス供給ダクト(32)と、前記酸化ガスを前記タンク(18)のスラリ(S)に分散する少なくとも第1の酸化ガス供給ノズル(44)とを備えるガススパージャ(30)を用いて前記酸化ガスを供給することを包含する方法において、前記酸化ガス供給ダクト(32)は、前記第1の酸化ガス供給ノズル(44)における、直径(D)などの特徴的断面寸法を有し、前記第1の酸化ガス供給ノズル(44)から最大で前記特徴的断面寸法(D)の5倍の距離(L1)にある噴射位置から、前記第1の酸化ガス供給ノズル(44)に向けて水を含有する液体を噴射すること包含することを特徴とする方法。
【請求項7】
前記ガススパージャ(30)の全ての前記酸化ガス供給ノズル(36,44)に向けて噴射される水の総量は、水蒸気で酸化ガスを飽和するのに要する水の量よりも大きい、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ガススパージャ(30)の全ての前記酸化ガス供給ノズル(36,44)に向けて噴射される水の総量は、少なくとも、乾性酸化ガス1kgあたり水0.025kgである、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記ガススパージャ(30)の全ての前記酸化ガス供給ノズル(36,44)に向けて噴射される水の総量は、乾性酸化ガス1kgあたり水10kg未満である、請求項6乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記酸化ガスは、前記噴射位置から前記第1の酸化ガス供給ノズル(44)の位置まで、実質的に直線状の経路に沿って送られる、請求項6乃至9のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−511707(P2011−511707A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545402(P2010−545402)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/000790
【国際公開番号】WO2009/098055
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】