説明

湿式画像形成装置

【課題】この発明は、像担持体起動時点での像担持体表面における、帯電手段に対向している位置から像担持体の回転方向前側にあり、現像位置より像担持体の回転方向後側にある領域を像担持体表面における非画像形成領域と定義すると、非画像形成領域に付着した現像液を、クリーニング手段によって効率よく除去できる湿式画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】像担持体起動時点から像担持体表面の帯電領域が現像位置に到達するまでは、現像液担持体および現像液2層化手段に印加されるバイアスをオフにしておく手段を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、ファクシミリ装置、プリンタ等に採用される湿式画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、湿式画像形成装置では、帯電器によって感光体ドラム(像担持体)上に電荷を載せ、電荷が載せられた感光体ドラム上に画像情報に応じた光を照射することにより、感光体ドラム上に静電潜像を形成し、この静電潜像に対してトナーとキャリア液からなる現像液を現像ローラ(現像液担持体)によって付着させることにより、感光体ドラムの表面にトナー像を形成している。
【0003】
特開平9−185265号公報および特開平9−185266号公報には、現像ローラ上の現像液中のトナーを現像ローラ側に吸引させて、現像ローラ上の現像液を2層化させるために、現像位置の手前側において現像ローラに近接して電界印加ローラ(現像液2層化手段)を配置した構成が開示されている。電界印加ローラには、現像ローラ上の現像液中のトナーを現像ローラ側に吸引させるための電圧が印加されている。このように、現像ローラ上の現像液を2層化することにより、スクイズ処理の不要化、現像性の向上化を図っている。
【0004】
特開2004−258154号公報には、画像カブリを解消するために、現像ローラ上の現像液に、現像部に入る前に、現像液中のトナーの帯電電荷と同極性のバイアス電圧を印加させて、現像ローラ上の現像液を2層化させるバイアスブレード電極(現像液2層化手段)を設けた構成が開示されている。
【0005】
特開2005−196191号公報には、消費されるキャリア溶液を減少させるために、感光体ドラム上の非画像領域と現像ローラとが接触する時には、インクを現像ローラの表面に付着させるデポジットローラおよび現像ローラにそれぞれ印加される電圧をオフとする技術が開示されている。
【0006】
従来技術に開示されているように、現像位置の手前側において現像液2層化手段によって現像ローラ上の現像液を2層化することにより、現像性を向上させたり、画像カブリを解消させたりできることが判明している。しかしながら、現像液2層化手段によって現像ローラ上の現像液に電圧を印加すると、トナー自体に電荷が注入されるので、現像位置での現像電界により、より強固に感光体ドラム上にトナー粒子が現像される。
【0007】
異なる色のトナー像を形成するための複数の画像形成手段(プロセスユニット)と1つの中間転写ベルトを備えたカラー画像形成用の湿式画像形成装置が良く知られている。このようなカラー画像形成用の湿式画像形成装置の任意のプロセスユニットを想定する。感光体ドラムの回転駆動開始時点(ドラム起動時点)での感光体ドラム表面における、帯電器に対向している位置から感光体ドラムの回転方向前側にあり、現像位置より感光体ドラムの回転方向後側にある領域は、ドラム起動直後において帯電器によって電荷が載せられていない状態のまま現像位置を通過するので、画像形成には用いられない。この領域を非画像形成領域と呼ぶことにする。また、帯電器によって電荷が載せられている領域を帯電領域と呼ぶことにする。
【0008】
ドラム起動後において非画像形成領域が現像位置を通過する過程においては、非画像形成領域の表面電位が0Vであるため、非画像形成領域に不要なトナーが現像されることになる。ドラム起動後に、不要トナーが現像された非画像形成領域が一次転写位置を通過し終わるまでは、つまり、感光体ドラム表面における帯電領域が一次転写位置に到達するまでは、中間転写ベルトは感光体ドラムから離間されるので、非画像形成領域に現像された不要トナーは、中間転写ベルトには転写されない。したがって、非画像形成領域に現像された不要トナーは、一次転写位置において転写されずに、感光体ドラムの周囲であって一次転写位置より下流側に配置されたクリーニングブレードによって除去されることなる。
【0009】
しかしながら、上述したように、現像液2層化手段によって現像ローラ上の現像液に電圧が印加されている場合には、感光体ドラム上の非画像形成領域においてもトナー粒子が強固に現像されているので、クリーニングブレードによって非画像形成領域上の不要トナーを十分に除去することができないという問題がある。
【特許文献1】特開平9−185265号公報
【特許文献2】特開平9−185266号公報
【特許文献3】特開2004−258154号公報
【特許文献4】特開2005−196191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、像担持体起動時点での像担持体表面における、帯電手段に対向している位置から像担持体の回転方向前側にあり、現像位置より像担持体の回転方向後側にある領域を像担持体表面における非画像形成領域と定義すると、非画像形成領域に付着した現像液を、クリーニング手段によって効率よく除去できる湿式画像形成装置を提供することを目的とする。
【0011】
また、この発明は、液体現像装置のリフレッシュ処理を行なう際に、像担持体上に現像された現像液をクリーニング手段によって効率よく除去できる湿式画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、像担持体上に電荷を載せる帯電手段、電荷が載せられた像担持体上に静電潜像を形成させる露光手段、現像位置において、トナー粒子が電気的に中性な溶媒中に分散せしめられている現像液を像担持体に供給することにより、像担持体上にトナー像を形成させるための液体現像装置、像担持体上に形成されたトナー像を転写位置において転写媒体または記録媒体に転写させるための転写手段、および転写位置より下流側において像担持体上の現像液を除去するクリーニング手段を備え、液体現像装置は、現像位置において現像液を像担持体に供給する現像液担持体、現像液担持体上に現像液の薄膜を形成させるための現像液供給手段、現像液担持体の周囲であって、現像液供給手段による現像剤供給位置より下流側でかつ現像位置より上流側に、現像液担持体上の現像液を、現像液担持体表面上のトナー粒子層とトナー粒子層上の溶媒層とに2層化させる現像液2層化手段を備えており、画像形成時には現像液担持体に現像バイアスが印加されるとともに、現像液担持体上の現像液を2層化させるために、現像液2層化手段にバイアスが印加され、像担持体起動時点から像担持体表面の帯電領域が転写位置に到達するまでの期間においては、像担持体上のトナー像の転写媒体または記録媒体への転写が行なわれないようになっている湿式画像形成装置において、像担持体起動時点から像担持体表面の帯電領域が現像位置に到達するまでは、現像液担持体および現像液2層化手段に印加されるバイアスをオフにしておく手段を備えていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、像担持体上に電荷を載せる帯電手段、電荷が載せられた像担持体上に静電潜像を形成させる露光手段、現像位置において、トナー粒子が電気的に中性な溶媒中に分散せしめられている現像液を像担持体に供給することにより、像担持体上にトナー像を形成させるための液体現像装置、像担持体上に形成されたトナー像を転写位置において転写媒体または記録媒体に転写させるための転写手段、および転写位置より下流側において像担持体上の現像液を除去するクリーニング手段を備え、液体現像装置は、現像位置において現像液を像担持体に供給する現像液担持体、現像液担持体上に現像液の薄膜を形成させるための現像液供給手段、現像液担持体の周囲であって、現像液供給手段による現像剤供給位置より下流側でかつ現像位置より上流側に、現像液担持体上の現像液を、現像液担持体表面上のトナー粒子層とトナー粒子層上の溶媒層とに2層化させる現像液2層化手段を備えており、画像形成時には現像液担持体に現像バイアスが印加されるとともに、現像液担持体上の現像液を2層化させるために、現像液2層化手段にバイアスが印加され、像担持体起動時点から像担持体表面の帯電領域が転写位置に到達するまでの期間においては、像担持体上のトナー像の転写媒体または記録媒体への転写が行なわれないようになっている湿式画像形成装置において、像担持体起動時点から像担持体表面の帯電領域が現像位置に到達するまでは、現像液2層化手段に印加されるバイアスをオフにしておく手段を備えていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、像担持体上に電荷を載せる帯電手段、電荷が載せられた像担持体上に静電潜像を形成させる露光手段、現像位置において、トナー粒子が電気的に中性な溶媒中に分散せしめられている現像液を像担持体に供給することにより、像担持体上にトナー像を形成させるための液体現像装置、像担持体上に形成されたトナー像を転写位置において転写媒体または記録媒体に転写させるための転写手段、および転写位置より下流側において像担持体上の現像液を除去するクリーニング手段を備え、液体現像装置は、現像位置において現像液を像担持体に供給する現像液担持体、現像液担持体上に現像液の薄膜を形成させるための現像液供給手段、現像液担持体の周囲であって、現像液供給手段による現像剤供給位置より下流側でかつ現像位置より上流側に、現像液担持体上の現像液を、現像液担持体表面上のトナー粒子層とトナー粒子層上の溶媒層とに2層化させる現像液2層化手段を備えており、画像形成時には現像液担持体に現像バイアスが印加されるとともに、現像液担持体上の現像液を2層化させるために、現像液2層化手段にバイアスが印加される湿式画像形成装置において、液体現像装置内の古い現像液を強制的に廃棄させるために、像担持体上に現像液を強制的に現像させ、現像させた現像液を転写媒体または記録媒体に転写させることなく、クリーニング手段によって回収させるリフレッシュ処理を行なうリフレッシュ手段、ならびにリフレッシュ手段によってリフレッシュ処理が行なわれているときには、現像液2層化手段に印加されるバイアスをオフにしておく手段を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、機械起動時点での像担持体表面における帯電手段に対向している位置から現像位置までの領域であって、機械起動直後において帯電手段によって電荷が載せられていない状態のまま現像位置を通過せしめられる領域を非帯電領域と定義すると、非帯電領域に付着した現像液を、クリーニング手段によって効率よく除去できるようになる。
【0016】
また、この発明によれば、液体現像装置のリフレッシュ処理を行なう際に、像担持体上に現像された現像液をクリーニング手段によって効率よく除去できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明を、タンデム型カラー画像形成装置(以下、単に湿式画像形成装置という)に適用した場合の実施例について説明する。
【実施例1】
【0018】
〔1〕湿式画像形成装置の概略構成についての説明
【0019】
図1は、湿式画像形成装置の概略構成を示している。
【0020】
湿式画像形成装置は、給紙手段1、垂直搬送路2、レジストローラ対3、ベルト搬送手段4、第1の画像形成手段5、第2の画像形成手段6、第3の画像形成手段7、第4の画像形成手段8、2次転写ローラ9、定着手段10、搬出搬送路11、ベルトクリーニング装置12、排出トレイ14等を備えている。
【0021】
給紙手段1は、給紙カセット1aと、ピックアップローラ1bとを備え、給紙カセット1a内の記録紙Pをピックアップローラ1bにて、垂直搬送路2へ搬送する。垂直搬送路2は、搬送されてきた記録紙Pをレジストローラ対3を介して2次転写ローラ9へ搬送する。
【0022】
ベルト搬送手段4は、駆動ローラ41と、従動ローラ42と、この2つのローラに掛け渡された無端状の中間転写ベルト(転写媒体)43とからなる。中間転写ベルト43は、テンションローラ44にて適度なテンションを保っている。そして、この状態で、駆動ローラ41は、図示しない駆動モータによって、各画像形成手段の感光体ドラム51の外周速度と中間転写ベルト43との外周速度が等速となるように、回転駆動される。
【0023】
第1〜第4の画像形成手段5〜8は、図中左側からブラック(BK)、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)用のものである。各画像形成手段5〜8の構成はほぼ同様な構成となっているため、第1の画像形成手段5の構成についてのみ説明する。なお、他の画像形成手段6〜8の各構成要素については、第1の画像形成手段5の対応する要素と同じ符号を付してある。
【0024】
第1の画像形成手段5は、感光体ドラム(像担持体)51、主帯電装置(帯電手段)52、LPH(LED PRINT HEAD)53、液体現像装置54、1次転写ローラ(転写手段)55、ドラムクリーニング装置56、除電ランプ57から構成され、樹脂でできた筺体に組み付けることにより1つのユニットとなり、図示しない装置本体に取り付けられている。ここでは、現像液のトナーは正帯電されているものとする。
【0025】
感光体ドラム51はアモルフォス・シリコンドラムを用いており、現像位置での暗電位が+300V〜+800Vになるよう主帯電装置52により帯電される。この帯電した感光体ドラム51の表面にLPH53が画像情報に応じた光を照射することにより感光体ドラム51の表面に静電潜像が形成される。
【0026】
液体現像装置54は、トナーとキャリア液からなる現像液を所定の濃度になるように攪拌・混合して用い、現像ローラでこの現像液を感光体ドラム51に供給することにより、感光体ドラム51上の静電潜像が現像されてトナー像が形成される。感光体ドラム51の暗電位は+300V〜+800Vであり、現像バイアスは+200V〜+600Vであり、露光後電位が0〜+200Vとなるように設定されている。即ち、暗電位は画像白部に相当し、露光後電位は画像黒部に相当し、この差がいわゆるコントラスト電位である。感光体ドラム51上に形成されたトナー像は、1次転写ローラ55とのニップにおいて、ベルト搬送手段4の中間転写ベルト43に転写される。1次転写ローラ55には、感光体ドラム51の表面電位とは逆極性の電圧(−100V〜−1kV)が印加されるようになっている。
【0027】
感光体ドラム51上の転写されなかった残留現像液は、ドラムクリーニング装置(クリーニング手段)56によって除去される。また、感光体ドラム51は表面の残留電位を下げて均一にすべく除電ランプ57により除電されてその後は次の一連のプロセスに備える。この湿式画像形成装置では、第1の画像形成手段5と同様の方法で、第2〜第4の画像形成手段6〜8によってマゼンタ、シアン、イエローに対応する画像が感光体ドラム上に現像され、中間転写ベルト43上に順次繰り返してずれなく転写されることでフルカラー画像の形成が行なわれる。
【0028】
2次転写ローラ9は、垂直搬送路2上における駆動ローラ41と対向した位置に、中間転写ベルト43に対して圧接した状態で配置されている。この2次転写ローラ9には、2次転写バイアスが印加されており、2次転写ローラ9により、中間転写ベルト43から、垂直搬送路2及びレジストローラ対3を介して搬送されてきた記録紙Pにフルカラー画像が2次転写される。フルカラー画像が2次転写された紙Pは、中間転写ベルト43から分離され、定着手段10に搬送される。定着手段10は、第1定着ローラ10aおよび第2定着ローラ10bを備えている。各定着ローラには、図示しない定着ヒータが内蔵されており、この定着ヒータによって各定着ローラは所定温度に加熱されている。両定着ローラ10a、10bを記録紙Pが通過する間に、記録紙P上にフルカラー画像が定着せしめられる。そして、記録紙Pは、定着手段10で定着処理がなされた後に排出搬送路11を介して排出トレイ14に排出される。
【0029】
中間転写ベルト43上の転写されなかった残留現像液は、ベルトクリーニング装置12によって除去される。ベルトクリーニング装置12は、クリーニングケース12c内にクリーニングローラ12a、クリーニングブレード12bおよび搬送スクリュー12dを備えている。クリーニングローラ12aは、中間転写ベルト43に圧接しており、図示しない駆動モータにより、中間転写ベルト43の回転方向と同方向に回転駆動される。クリーニングブレード12bは、クリーニングローラ12aより下流側において中間転写ベルト43に圧接しており、中間転写ベルト43上の残留現像液を除去する。搬送スクリュー12dは、中間転写クリーニングブレード12bで掻き取られた転写残現像液を回収する。
【0030】
〔2〕液体現像装置54の構成
【0031】
図2は、液体現像装置54の構成を示している。
【0032】
液体現像装置54は、現像液70を収容する現像液貯留容器71を備えている。現像液貯留容器71の内部には、現像ローラ(現像液担持体)72、塗布ローラ(現像液供給手段)73、汲み上げローラ74、ドクタブレード75、クリーニングブレード76および一対の攪拌スクリュー77a、77bが設けられている。現像ローラ72、塗布ローラ73、汲み上げローラ74および攪拌スクリュー77a、77bは、歯車列等からなる駆動伝達機構を介して駆動モータ(ともに図示しない)により回転駆動される。
【0033】
現像ローラ72の周囲であって、現像位置より上流側位置に、現像ローラ72上の現像液を2層化させるための現像コロナチャージ(現像液2層化手段)78が、現像ローラ72に対向して配置されている。現像コロナチャージ78には、放電が始まる+3.5kV〜+7kV程度のバイアスが印加される。
【0034】
現像液70は、シリコンオイル等の非極性、すなわち、電気的に中性の溶媒であるキャリア液中に荷電トナー(以下、単にトナーという)が高濃度で分散するように調整されている。
【0035】
トナーは、着色剤、樹脂(バインダー)や必要に応じて帯電制御剤を含んでいる。樹脂(バインダー)は、着色剤に吸着し、キャリア液によく分散して、吸着された着色剤に正又は負の電荷を付与する。本実施例では、トナーとしては樹脂(バインダー)によりプラス電位(正)に帯電されるものが用いられている。つまり、正帯電性のトナーが用いられている。なお、キャリア液としては、イソパラフィン系溶剤(例えば、アイソパーG(エクソン社製))、高級脂肪酸エステル、シリコンオイル等がある。攪拌スクリュー77a,77bは、現像液70を循環・攪拌する。汲み上げローラ74は現像液70にその一部が浸かっており、汲み上げた現像液70を塗布ローラ73に接触回転して塗布ローラ73に現像液70を塗布する。
【0036】
塗布ローラ73は、現像液70を現像ローラ72上に塗布することにより、現像ローラ72上に現像液70の薄層(液体トナー層)を形成する。現像コロナチャージ78によって電界を発生させると、現像ローラ72上の液体トナー層が2層化せしめられる。つまり、現像ローラ72上の液体トナー層が、現像ローラ72表面上のトナー粒子層と、トナー粒子層上の溶媒層とに2層化される。現像位置においては、現像ローラ72上の液体トナー層が2層化された状態で、感光体ドラム51表面に接触する。
【0037】
現像コロナチャージ78により、現像前に、現像ローラ72上の液体トナー層内のトナー粒子が現像ローラ72の表面上に圧縮されているので、感光体ドラム51上の非画像域においては、感光体ドラム表面にトナーが接触しないため、カブリ画像を防止することができる。また、現像コロナチャージ78の電界形成により、現像ローラ72上の液体トナー層内のトナー自体に電荷が注入されるので、現像電界によってトナーが感光体ドラム51上の静電潜像上に反応よく現像されるとともに、感光体表面上にトナーが強固に付着する。
【0038】
このように形成された感光体ドラム51上のトナー像は、一次転写ローラ55に印加されるバイアスによって、中間転写ベルト43に転写される。
【0039】
なお、現像後、現像ローラ72上に残留した現像液はクリーニングブレード76によって現像ローラ72上から除去され、現像液貯留容器71に戻される。
【0040】
ドラムクリーニング装置56は、回収された残留現像液を収容するクリーニングケース61を備えている。クリーニングケース61の内部には、感光体ドラム51上の残留現像液を除去するクリーニングブレード62が設けられている。
【0041】
〔3〕ドラム起動時の動作についての説明
【0042】
各画像形成手段5〜8において、感光体ドラム51の駆動開始時点(ドラム起動時点)での感光体ドラム51表面における、主帯電装置52に対向している位置から感光体ドラム51の回転方向前側にあり、現像位置より感光体ドラムの回転方向後側にある領域は、ドラム起動直後において主帯電装置52によって電荷が載せられていない状態のまま現像位置を通過するので、画像形成には用いられない。この領域を非画像形成領域と呼ぶことにする。ドラム起動後において非画像形成領域が現像位置を通過する過程においては、非画像形成領域の表面電位が0Vであるため、非画像形成領域にトナーが現像されることになる。つまり、ドラム起動直後において、非画像形成領域には、不要なトナーが付着される。
【0043】
本実施例では、非画像形成領域に付着した不要トナーが中間転写ベルト43に転写されるのを防止するために、ドラム起動時には、一次転写位置において、感光体ドラム51と中間転写ベルト43とが離間した状態(転写禁止状態)となっている。そして、非画像形成領域が一次転写位置を通過し終わった後に(感光体ドラム51表面における帯電領域が一次転写位置に到達したときに)、感光体ドラム51と中間転写ベルト43とが接近した状態(転写可能状態)にせしめられる。
【0044】
したがって、非画像形成領域に付着した不要トナーは一次転写位置において中間転写ベルト43に転写されることなく、ドラムクリーニング装置56まで搬送され、ドラムクリーニング装置56のクリーニングブレード62によって除去される。
【0045】
しかしながら、上述したように、現像コロナチャージ78の電界形成により、現像ローラ72上の液体トナー層内のトナー自体に電荷が注入されるので、現像電界によってトナーが感光体ドラム51上の静電潜像上に反応よく現像されるとともに、感光体表面上にトナーが強固に付着する。そのため、非画像形成領域に付着した不要トナーを、ドラムクリーニング装置56によって十分に除去できなくなる。
【0046】
そこで、この実施例では、感光体ドラム51が起動されてから、非画像形成領域が現像位置を通過し終わるまでは(帯電領域が現像位置に到達するまでは)、非画像形成領域にトナーが強固に付着しないように、現像ローラ72に印加される電圧(現像バイアス)と現像コロナチャージ78に印加されるバイアス電圧をオフさせるようにしている。
【0047】
図3は、現像ローラに印加されるバイアス電圧と、現像コロナチャージ78に印加されるバイアス電圧との制御例を示している。
【0048】
ドラム起動時には、時点t1において、感光体ドラム51が回転駆動されるとともに、主帯電装置52にバイアス電圧が印加される。これにより、感光体ドラム51が回転せしめられるとともに、主帯電装置52により感光体ドラム51の表面が帯電せしめられる。
【0049】
時点t1から感光体ドラム51表面の非画像形成領域が現像位置を通過し終わるまでの時間ΔTが経過すると(時点t2)、現像ローラ72にバイアス電圧が印加されるとともに、現像コロナチャージ78にバイアス電圧が印加される。
【0050】
つまり、ドラム起動時点から感光体ドラム21表面における帯電領域が現像位置に到達するまでの期間(t1〜t2の期間)は、現像ローラ72および現像コロナチャージ78へはバイアス電圧は印加されないため、感光体ドラム21上の非画像形成領域にトナーが強固に付着するといったことが防止される。このため、非画像形成領域に付着した不要トナーは、ドラムクリーニング装置56によって十分に除去されるようになる。
【0051】
なお、図3では、時点t1から時点t2までの期間においては、現像ローラ72に印加される電圧と現像コロナチャージ78に印加されるバイアス電圧の両方をオフさせるようにしているが、図4に示すように、時点t1から現像ローラ72にバイアス電圧を印加させ、時点t1から時点t2までの期間において現像コロナチャージ78に印加されるバイアス電圧のみをオフさせるようにしてもよい。
【0052】
〔4〕液体現像装置54のリフレッシュ動作
【0053】
液体現像装置54内の古い現像液を強制的に廃棄させるためのリフレッシュモードが用意されている場合がある。リフレッシュモードの設定は、現在までの機械駆動時間や現在までのプリント枚数に基づいて自動的に行なわれたり、ユーザ等によって手動で行なわれたりする。
【0054】
リフレッシュモード時には、主帯電装置52を駆動させるとともに現像ローラ72に現像バイアスを印加させ、リフレッシュ用の任意のパターンを感光体ドラム51表面上に露光させることにより、感光体ドラム51に現像液を強制的に現像させ、中間転写ベルト43に転写させることなく、ドラムクリーニング装置56によって回収する。リフレッシュモード時においても、現像液が感光体ドラム51に強固に付着しないように、現像コロナチャージ78に印加されるバイアス電圧をオフさせるようにすることが好ましい。
【0055】
〔5〕その他
現像液2層化手段として現像コロナチャージ78が用いられている湿式画像形成装置に対して、この発明を適用した場合の実施例について説明したが、図5に示すように、現像液2層化手段として、現像コロナチャージ78の代わりに、現像電界印加ローラ79が用いられている湿式画像形成装置に対しても、この発明を適用することができる。現像液2層化手段として、現像電界印加ローラ79を用いた場合には、現像ローラ72上の現像液を2層化させる際には、現像バイアスより100V〜500V程度大きいバイアスが印加される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】湿式画像形成装置の概略構成を示す構成図である。
【図2】液体現像装置54の構成を示す構成図である。
【図3】現像ローラおよび現像コロナチャージ78への印加電圧の制御例を示すタイムチャートである。
【図4】現像ローラおよび現像コロナチャージ78への印加電圧の他の制御例を示すタイムチャートである。
【図5】現像液2層化手段として現像電界印加ローラ79が用いられている液体現像装置の構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0057】
43 中間転写ベルト(転写媒体)
51 感光体ドラム(像担持体)
54 液体現像装置
56 ドラムクリーニング装置
72 現像ローラ(現像液担持体)
73 塗布ローラ(現像液供給手段)
78 現像コロナチャージ
79 現像電界印加ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上に電荷を載せる帯電手段、電荷が載せられた像担持体上に静電潜像を形成させる露光手段、現像位置において、トナー粒子が電気的に中性な溶媒中に分散せしめられている現像液を像担持体に供給することにより、像担持体上にトナー像を形成させるための液体現像装置、像担持体上に形成されたトナー像を転写位置において転写媒体または記録媒体に転写させるための転写手段、および転写位置より下流側において像担持体上の現像液を除去するクリーニング手段を備え、液体現像装置は、現像位置において現像液を像担持体に供給する現像液担持体、現像液担持体上に現像液の薄膜を形成させるための現像液供給手段、現像液担持体の周囲であって、現像液供給手段による現像剤供給位置より下流側でかつ現像位置より上流側に、現像液担持体上の現像液を、現像液担持体表面上のトナー粒子層とトナー粒子層上の溶媒層とに2層化させる現像液2層化手段を備えており、画像形成時には現像液担持体に現像バイアスが印加されるとともに、現像液担持体上の現像液を2層化させるために、現像液2層化手段にバイアスが印加され、像担持体起動時点から像担持体表面の帯電領域が転写位置に到達するまでの期間においては、像担持体上のトナー像の転写媒体または記録媒体への転写が行なわれないようになっている湿式画像形成装置において、
像担持体起動時点から像担持体表面の帯電領域が現像位置に到達するまでは、現像液担持体および現像液2層化手段に印加されるバイアスをオフにしておく手段、
を備えていることを特徴とする湿式画像形成装置。
【請求項2】
像担持体上に電荷を載せる帯電手段、電荷が載せられた像担持体上に静電潜像を形成させる露光手段、現像位置において、トナー粒子が電気的に中性な溶媒中に分散せしめられている現像液を像担持体に供給することにより、像担持体上にトナー像を形成させるための液体現像装置、像担持体上に形成されたトナー像を転写位置において転写媒体または記録媒体に転写させるための転写手段、および転写位置より下流側において像担持体上の現像液を除去するクリーニング手段を備え、液体現像装置は、現像位置において現像液を像担持体に供給する現像液担持体、現像液担持体上に現像液の薄膜を形成させるための現像液供給手段、現像液担持体の周囲であって、現像液供給手段による現像剤供給位置より下流側でかつ現像位置より上流側に、現像液担持体上の現像液を、現像液担持体表面上のトナー粒子層とトナー粒子層上の溶媒層とに2層化させる現像液2層化手段を備えており、画像形成時には現像液担持体に現像バイアスが印加されるとともに、現像液担持体上の現像液を2層化させるために、現像液2層化手段にバイアスが印加され、像担持体起動時点から像担持体表面の帯電領域が転写位置に到達するまでの期間においては、像担持体上のトナー像の転写媒体または記録媒体への転写が行なわれないようになっている湿式画像形成装置において、
像担持体起動時点から像担持体表面の帯電領域が現像位置に到達するまでは、現像液2層化手段に印加されるバイアスをオフにしておく手段、
を備えていることを特徴とする湿式画像形成装置。
【請求項3】
像担持体上に電荷を載せる帯電手段、電荷が載せられた像担持体上に静電潜像を形成させる露光手段、現像位置において、トナー粒子が電気的に中性な溶媒中に分散せしめられている現像液を像担持体に供給することにより、像担持体上にトナー像を形成させるための液体現像装置、像担持体上に形成されたトナー像を転写位置において転写媒体または記録媒体に転写させるための転写手段、および転写位置より下流側において像担持体上の現像液を除去するクリーニング手段を備え、液体現像装置は、現像位置において現像液を像担持体に供給する現像液担持体、現像液担持体上に現像液の薄膜を形成させるための現像液供給手段、現像液担持体の周囲であって、現像液供給手段による現像剤供給位置より下流側でかつ現像位置より上流側に、現像液担持体上の現像液を、現像液担持体表面上のトナー粒子層とトナー粒子層上の溶媒層とに2層化させる現像液2層化手段を備えており、画像形成時には現像液担持体に現像バイアスが印加されるとともに、現像液担持体上の現像液を2層化させるために、現像液2層化手段にバイアスが印加される湿式画像形成装置において、
液体現像装置内の古い現像液を強制的に廃棄させるために、像担持体上に現像液を強制的に現像させ、現像させた現像液を転写媒体または記録媒体に転写させることなく、クリーニング手段によって回収させるリフレッシュ処理を行なうリフレッシュ手段、ならびに リフレッシュ手段によってリフレッシュ処理が行なわれているときには、現像液2層化手段に印加されるバイアスをオフにしておく手段、
を備えていることを特徴とする湿式画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−242278(P2008−242278A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85424(P2007−85424)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】