説明

湿式画像形成装置

【課題】オフセットと定着性との両立を図ることが可能な湿式画像形成装置を提供する。
【解決手段】記録用紙は上流側の加熱加圧手段8に搬送される。記録用紙の昇温に伴い記録用紙上のトナー像が仮定着されると共に、トナー層中や記録用紙中に浸透しているキャリア液が揮発し、トナー層中のキャリア液が除去される。上流側の加熱加圧手段8で揮発したキャリア液を多量に含む空気は排気手段14によって、搬送ベルト15とガイド部材10によって形成される排気流路を下流側の加熱加圧手段9に向かって送られる。揮発したキャリア液を多量に含む空気は下流側の加熱加圧手段9に向かって排気される排気流路の過程において、温度低下が生じる。揮発したキャリア液を多量に含む空気中において揮発したキャリア液の一部は液化してミスト化したキャリア液となる。そして、当該キャリア液ミストが、搬送ベルト15により搬送される記録用紙表面に付着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの電子写真方式の画像形成装置に関し、液体現像剤を用いてトナー像を形成する湿式画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、現像装置を用いて感光体上に静電潜像がトナーにより現像される。そして、例えば、感光体上に現像された静電潜像が記録用紙に転写されて画像が形成されることになる。このような画像形成装置の転写プロセスでは、一般に静電転写方式が採用されている。
【0003】
トナー像を被転写体である用紙に転写する場合は、感光体に対向するように配置された用紙の裏面から転写ローラ等により電圧を印加し、感光体と記録用紙との間に電界を形成してこの電界によりトナー像を記録用紙に静電吸着させている。
【0004】
そして、その後、定着装置により加圧定着することにより転写されたトナー像を記録用紙に定着させている。
【0005】
一方で、近年、大量プリント用のオフィスプリンタやオンデマンド印刷装置などの、より高画質及び高解像度が要求される画像形成装置では、トナー粒子径が小さく、トナー像の乱れが生じにくい液体現像剤を用いた湿式現像装置が知られている。当該液体現像剤は、パラフィン系溶媒等をキャリア液にトナーを分散させたものが用いられており、現像や転写工程においては、キャリア液とトナーとで構成されるトナー層中において電界による泳動でトナーを移動させ記録用紙に画像を転写させている。
【0006】
この液体現像剤を用いた湿式画像形成装置の場合、定着性の確保のためにはトナー層中のキャリア液を取り除かなければならない。
【0007】
トナー層中のキャリア液は、揮発、定着部材での除去、用紙浸透により取り除かれるが、トナー層中のキャリア液量が少ないと定着ローラと接触するトナーがローラ表面に付着するオフセットという現象が生じ易いことが知られている。
【0008】
この点で、特開2007−163777号公報においては、トナー層に接触するローラを用いてキャリア液の除去量を調節してオフセットを抑制する方式が開示されている。
【0009】
また、特開平11−194621号公報、特開平11−272079号公報および特開2000−3061号公報においては、記録用紙に離型剤として機能するキャリア液として不揮発性のキャリア液を染み込ませておくことによりオフセットを抑制する方式を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−163777号公報
【特許文献2】特開平11−194621号公報
【特許文献3】特開平11−272079号公報
【特許文献4】特開2000−3061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記方式は、不揮発性のキャリア液を用いて記録用紙に染み込ませておく方式であり、記録用紙にキャリア液が残存することになる。そして、オフセットの抑制は可能である場合であってもキャリア液の残存の影響により定着性が阻害されることになり、上記の方式ではオフセットと定着性との両立を図ることは難しい。
【0012】
本発明は、上記のような問題を解決するためのものであって、オフセットと定着性との両立を図ることが可能な湿式画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のある局面に従う湿式画像形成装置は、キャリア液にトナーが分散された液体現像剤を用いる湿式画像形成装置であって、液体現像剤により現像された記録媒体について、熱定着する複数の加熱手段と、記録媒体を加熱することにより揮発したキャリア液を回収する回収手段と、記録媒体を搬送する搬送手段と、揮発したキャリア液を回収手段へ送るガイド手段とを備える。ガイド手段は、搬送手段により複数の加熱手段のうち記録媒体の搬送方向の上流側に設けられた加熱手段を通過した記録媒体を下流側に設けられた加熱手段に搬送する際に、上流側に設けられた加熱手段で加熱されて揮発されたキャリア液雰囲気中を記録媒体が通過して当該揮発したキャリア液が冷却されることによりミスト化したキャリア液ミストが記録媒体に付着するように上流側の加熱手段と下流側の加熱手段との間に設けられる。
【0014】
好ましくは、揮発したキャリア液を冷却するための冷却手段をさらに備える。
特に、冷却手段は、記録媒体に現像されたトナー層が形成される記録媒体の表面と反対方向の裏面側に設けられる。
【0015】
好ましくは、上流側の加熱手段と下流側の加熱手段との間に、キャリア液ミストを帯電させるための帯電手段と、帯電したキャリア液ミストが記録媒体に付着するように電界を形成する電界形成手段とをさらに備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明のある局面に従う湿式画像形成装置は、揮発したキャリア液を回収手段へ送るガイド手段を設ける。ガイド手段は、搬送手段により複数の加熱手段のうち記録媒体の搬送方向の上流側に設けられた加熱手段を通過した記録媒体を下流側に設けられた加熱手段に搬送する際に、上流側に設けられた加熱手段で加熱されて揮発されたキャリア液雰囲気中を記録媒体が通過して当該揮発したキャリア液が冷却されることによりミスト化したキャリア液ミストが記録媒体に付着するように上流側の加熱手段と下流側の加熱手段との間に設けられる。すなわち、トナー層からキャリア液が揮発することにより下流側での加熱手段における記録媒体上のトナーの融着がキャリア液によって、阻害されることなく十分な定着強度が得られる。また、トナーの表面にはキャリア液ミストとしてキャリア液が付着するため、溶融したトナーと加熱手段との間の剥離剤(離型剤)として作用し、オフセットを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に従う湿式画像形成装置の主要部の構成を説明する図である。
【図2】本発明の実施の形態に従う定着装置の構成を説明する図である。
【図3】本発明の実施の形態に従う記録用紙Pに対するキャリア液ミストの付着を模式的に説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態の変形例1に従う定着装置7Aの構成を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態の変形例2に従う定着装置7Bの構成について説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態の変形例3に従う定着装置7Cの構成について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明においては同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一であるものとする。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に従う湿式画像形成装置の主要部の構成を説明する図である。
【0020】
図1を参照して、本発明の実施の形態に従う画像形成装置は、電子写真方式により像担持体(感光体)1に形成されたトナー像を用紙等の記録用紙(媒体)に転写、定着によりトナー像を固定化して画像形成を行う。
【0021】
この画像形成装置は画像を担持するための像担持体である感光体1を有しており、感光体1の周辺には、帯電装置2、露光装置3、液体現像装置4、転写ローラ5、及びクリーナー6が、感光体1の回転方向Aに沿って順に配置されている。
【0022】
感光体1は、帯電装置2で帯電された後に、図中のE点の位置でレーザ発光器などを備えた露光装置3により露光されて、その表面に静電潜像が形成される。
【0023】
液体現像装置4は、キャリア液中に帯電したトナー粒子が分散された液体現像剤を用いて、静電潜像をトナー像に現像する。
【0024】
転写ローラ5は、この感光体1上のトナー像を記録用紙に転写する。転写された記録用紙は、図中の矢印C方向に搬送される。記録用紙上のトナー像は定着装置7によって定着された後に排出される。
【0025】
クリーナー6は、転写後の感光体1上の残留トナーを、その機械的な力で除去する。
画像形成装置に用いられる感光体1、帯電装置2、露光装置3、液体現像装置4、転写ローラ5、クリーナー6等は、周知の電子写真方式の技術を任意に使用してよい。
【0026】
また、本例においては、感光体1上のトナー像を記録用紙に転写する方式について説明したが、感光体1である像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体を介して記録用紙に転写する構成であってもよい。
【0027】
液体現像剤を用いる湿式画像形成装置においては、液体現像装置4によって現像された感光体1上のトナー層はトナー及びキャリア液から成り、転写ローラにより記録用紙に転写される。その際、トナーと共にキャリア液も記録用紙に転移し定着装置7に搬送される。
【0028】
定着装置7には余剰なキャリア液を除去し、十分な定着強度を得るために加熱加圧手段8,9を含む複数の加熱手段が設けられる。定着装置の構成については後述する。
【0029】
次に、現像に用いる液体現像剤について説明する。液体現像剤は、溶媒であるキャリア液体中に着色されたトナー粒子を高濃度で分散している。また、液体現像剤には、分散剤、荷電制御剤などの添加剤を適宜、選んで添加してもよい。
【0030】
液体現像剤は、キャリア液である絶縁性液体と、静電潜像を現像するトナーと、トナーを分散させる分散剤とを主要成分としている。
【0031】
キャリア液としては、一般に電子写真用液体現像剤に用いるものであれば特に制限することなく使用することができるが、例えば、キャリア液として、イソパラフィン系のアイソパー(G、H、L、Mなど)(エクソンモビール)、IPソルベント(1620、2028、2835など)(出光興産)や、パラフィン系のモレスコホワイト(P−40,P−70,P−120)(松村石油研究所)を挙げることができる。また、シリコンオイル、ミネラルオイルを用いることも可能である。
【0032】
トナー粒子は、主として、樹脂と着色のための顔料や染料からなる。樹脂には、顔料や染料を樹脂中に均一に分散させる機能と、記録用紙に定着させる際のバインダとしての機能がある。
【0033】
トナー粒子としては、一般に電子写真用液体現像剤に用いるものであれば、特に制限することなく使用することができる。トナー用結着樹脂としては、たとえばポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。またこれらの樹脂を複数、混合して用いることも可能である。
【0034】
また、トナーの着色に用いられる顔料および染料も一般に市販されているものを用いることができる。たとえば、顔料としては、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン、シリカ、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー、ベンジジンイエロー、レーキレッドD等を用いることができる。染料としてはソルベントレッド27やアシッドブルー9等を用いることができる。
【0035】
液体現像剤の調整方法としては、一般に用いられる技法に基づいて調整することができる。たとえば、結着剤樹脂と顔料とを所定の配合比で、加圧ニーダ、ローラミルなどを用いて溶融混練して均一に分散させ、得られた分散体をたとえばジェットミルによって微粉砕する。得られた微粉末をたとえば風力分級機などにより分級することで、所望の粒径の着色トナーを得ることができる。そして、得られたトナー粒子をキャリア液としての絶縁性液体と所定の配合比で混合する。この混合物をボールミル等の分散手段により均一に分散させ、液体現像剤を得ることができる。
【0036】
トナーの平均粒径は、湿式画像形成方式を採用しているため、0.1μm〜5μmとすることが可能である。0.1μm未満では現像性が大きく低下し、5μmより大きい粒径では画像品位が低下するため、0.1〜5μmに設定することが望ましい。
【0037】
液体現像剤の質量に対するトナー粒子の質量の割合は、10〜50%程度が適当である。
【0038】
10%未満の場合、トナー粒子に沈降が生じやすく、長期保管時の経時的な安定性に問題があり、また、必要な画像濃度を得るため、多量の液体現像剤を供給する必要があり、記録用紙に付着するキャリア液が増加し、定着時に乾燥させた際の蒸気の処理が問題となる可能性がある。一方で、50%を超える場合には、液体現像剤の粘度が高くなりすぎ、製造上も取り扱いが困難になる可能性がある。
【0039】
液体現像剤の粘度は、25℃において、0.1mPa・s以上、10000mPa・s以下が望ましい。10000mPa・sより大きくなると液体現像剤の攪拌や送液等の取り扱いが困難となり、均一な液体現像剤を供給する装置の負担が大きくなる可能性がある。
【0040】
図2は、本発明の実施の形態に従う定着装置の構成を説明する図である。
図2を参照して、本発明の実施の形態に従う定着装置7には、一例として、複数の加熱手段として二つの加熱加圧手段8,9が設けられている。
【0041】
本例においては、加熱加圧手段8、9としてローラ対の例を示したが、これに限定されるものではなく、一方又は両方がベルト部材によって構成されていても良い。
【0042】
また、加熱加圧手段8,9の間には、排気手段14およびガイド部材10が設けられている。排気手段14は、ガイド部材10と記録用紙を搬送するための搬送ベルト15との間で記録用紙の搬送方向の上流側の加熱加圧手段8から下流側の加熱加圧手段9へ向かう方向への排気流路(エアフロー)12を形成する。ガイド部材10は、エアフロー12を規制するように加熱加圧手段8,9の間に設けられる。
【0043】
排気手段14は蒸気回収装置16に接続されており、排気手段14で回収された気体は蒸気回収装置16に排出される。なお、ここでは、開閉可能な弁Bが設けられており、弁Bを開くことにより排気手段14と蒸気回収装置16とが排気経路として繋がるものとする。
【0044】
蒸気回収装置16は、排気中に含まれる揮発したキャリア液を分離回収する。
転写ローラ5によってキャリア液を含むトナー層11が転写された記録用紙は上流側の加熱加圧手段8に搬送され、加熱される。
【0045】
記録用紙の昇温に伴い記録用紙上のトナー像が仮定着されると共に、トナー層中や記録用紙中に浸透しているキャリア液が揮発し、トナー層中のキャリア液が除去される。
【0046】
上流側の加熱加圧手段8を通過した記録用紙は搬送ベルト15によって下流側の加熱加圧手段9に向かって搬送される。
【0047】
また、これと同時に、上流側の加熱加圧手段8で揮発したキャリア液を多量に含む空気は排気手段14によって、搬送ベルト15とガイド部材10によって形成される排気流路を下流側の加熱加圧手段9に向かって送られる。
【0048】
したがって、記録媒体は、搬送ベルト15により揮発したキャリア液を多量に含む空気中(キャリア液雰囲気中)において下流側の加熱加圧手段9に向かって搬送されることになる。
【0049】
揮発したキャリア液を多量に含む空気は上流側の加熱加圧手段8において昇温されており、下流側の加熱加圧手段9に向かって排気される排気流路の過程において、温度低下が生じる。
【0050】
これに伴い、揮発したキャリア液を多量に含む空気中において揮発したキャリア液の一部は液化してミスト化したキャリア液(キャリア液ミスト)となる。
【0051】
そして、当該キャリア液ミストが、搬送ベルト15により搬送される記録用紙表面に付着することになる。
【0052】
したがって、ガイド部材10は、搬送ベルト15により上流側の加熱加圧手段8を通過した記録用紙を下流側の加熱加圧手段9に搬送する際に、上流側の加熱加圧手段8で加熱されて揮発されたキャリア液雰囲気中を記録用紙が通過して当該揮発したキャリア液が冷却されることによりミスト化したキャリア液ミストが記録用紙に付着するように加熱加圧手段8と加熱加圧手段9との間に設けられる。
【0053】
また、ガイド部材10は上下流の加熱加圧手段間にのみ配置しているが、これに限定されるものではなく、加熱加圧手段8を覆うようにしても良いし、定着装置全体を覆うカバーの一部がガイド部材の役割を果たすようにしても良い。
【0054】
図3は、本発明の実施の形態に従う記録用紙Pに対するキャリア液ミストの付着を模式的に説明する図である。
【0055】
図3(A)を参照して、転写ローラ5によって、トナー層11は、トナーTとキャリア液CAとで構成され、記録用紙P上に転写される。
【0056】
次に、図3(B)を参照して、記録用紙P上のトナー層11は上流側の加熱加圧手段8を通過することでトナー層11中のキャリア液CAが揮発除去されてトナーTが残る。
【0057】
次に、図3(C)を参照して、トナー層11から揮発したキャリア液CAは記録用紙とともに排気流路を搬送される過程で温度が低下し、ミスト化したキャリア液(キャリア液ミスト)に液化する。
【0058】
次に、図3(D)を参照して、ミスト化したキャリア液(キャリア液ミスト)の一部はトナー層11のトナーTや記録用紙Pの表面に付着する。
【0059】
そして、当該状態で記録用紙Pは、下流側の加熱加圧手段9に送られる。
その結果、トナー層11中のキャリア液量は少なく、下流側での加熱加圧手段9における記録用紙P上のトナーT同士の融着がキャリア液によって、阻害されることなく十分な定着強度が得られる。また、トナー層11の表面にはキャリア液ミストとしてキャリア液CAが残存しているため、溶融したトナーTと加熱加圧手段9との間の剥離剤(離型剤)として作用し、オフセットを抑制することが可能となる。
【0060】
さらに、トナーTが付着していない記録用紙Pの表面にもキャリア液ミストとしてキャリア液が付着するため記録用紙を加熱し過ぎると発生するペーパーブリスタ等の問題も抑制することが可能である。
【0061】
図2においては、上流側の加熱加圧手段8として加熱加圧手段を用いているが、これに限定されるものではない。上流側の加熱加圧手段ではトナーとキャリア液とで構成されるトナー層が付着した記録用紙を加熱することが可能であれば、いかなる加熱手段であってもよく、例えば赤外線ヒータやキセノンフラッシュなどの輻射加熱手段や熱風など対流伝熱加熱手段、及びそれらを組合せても用いることも可能である。
【0062】
本発明の実施の形態においては、塗布手段を用いることなく揮発したキャリア液を冷却したキャリア液ミストを記録用紙のトナー層に付着させることにより画像を乱すことがない。すなわち、画像不良を生じさせることがない。また、本発明の実施の形態においては、揮発性のキャリア液を用いた定着方式であり、不揮発性のキャリア液を記録用紙に染み込ませる方式を採用しないため裏抜けの画像不良を生じさせることを抑制し、さらにオフセットと定着性の両立を図ることが可能である。
【0063】
図4は、本発明の実施の形態の変形例1に従う定着装置7Aの構成を説明する図である。
【0064】
図4を参照して、ここでは、熱風を用いた対流伝熱による加熱手段を用いた構成について説明する。
【0065】
本発明の実施の形態の変形例1に従う定着装置7Aは、加熱加圧手段8の代わりに上流側の加熱手段として熱風発生装置17を設けた構成としている。
【0066】
上記の実施の形態で説明したのと同様に、熱風発生装置17によって揮発したキャリア液を含む空気はガイド部材10によって規制される。熱風発生装置17と加熱加圧手段9との間には、排気手段14およびガイド部材10が設けられている。排気手段14は、ガイド部材10と記録用紙を搬送するための搬送ベルト15との間で記録用紙の搬送方向の上流側の熱風発生装置17から下流側の加熱加圧手段9へ向かう方向への排気流路(エアフロー)12を形成する。
【0067】
上流側の加熱手段に熱風を用いることで、記録用紙の表面のトナー層11を開放雰囲気とすることが可能となりキャリア液の揮発が容易となる。また、記録用紙の表面の近傍の揮発したキャリア液の対流が促進されてキャリア液蒸気圧を低く維持することが可能であり、より揮発を促進することが可能となる。
【0068】
上流側の加熱手段として、熱風発生装置17を用いることでキャリア液の揮発が促進されるものの、熱風による加熱は接触加熱と比較すると伝熱効率が低いため、熱風温度を高く設定する必要がある。例えば、一例として、記録用紙の耐熱性を考慮して150℃から300℃に設定することが望ましい。
【0069】
そのため記録用紙に沿って流れる揮発したキャリア液を多く含む空気流の温度も接触加熱と比較して高温になり、また、キャリア液蒸気圧も低いことから、キャリア液の液化(ミスト化)が起こりにくくなる可能性も考えられる。
【0070】
したがって、キャリア液のミスト化を記録用紙の近傍で生じさせるべく、記録用紙の近傍のエアフロー12の温度を下げるために、搬送ベルト15に冷却手段13を設けるようにしても良い。具体的には、記録用紙の裏面側に冷却手段13を設ける構成とした。
【0071】
冷却手段13によって搬送ベルト15を冷却することで、記録用紙に沿って流れる揮発したキャリア液を多く含む空気流の温度が高い場合であっても、記録用紙を介して当該揮発したキャリア液を多く含む空気流の温度を下げることで、揮発したキャリア液の一部を液化してミスト化したキャリア液(キャリア液ミスト)を記録用紙に付着させることが可能となる。
【0072】
また、冷却手段13によって搬送ベルト15を冷却し、搬送ベルト15と接触している記録用紙の裏面を介して揮発したキャリア液を多く含む空気流の温度を下げるため、すなわち、キャリア液の一部の液化は記録用紙の近傍で生じるため、液化したキャリア液のガイド部材への付着を抑制することも可能となる。
【0073】
なお、本例においては、冷却手段13を設けた構成としたが、特に必須ではなく、設けない構成とすることも可能である。また、冷却手段13を図2の構成に適用するようにしても良い。
【0074】
なお、図4の構成おいては、冷却手段13として、搬送ベルト15を空冷する手段を設けたが、例えば搬送ベルト内部の駆動ローラを冷却する構成であっても良いし、記録用紙を直接空冷する構成とすることも可能である。
【0075】
図5は、本発明の実施の形態の変形例2に従う定着装置7Bの構成について説明する図である。
【0076】
図5を参照して、定着装置7Bは、図2で説明した定着装置7の構成と比較して、さらに、ガイド部材の一部に帯電手段18および電界形成手段19が設けられている。帯電手段18及び電界形成手段19には電源(不図示)が接続されているものとする。
【0077】
そして、搬送ベルト15として導電性ベルトを用いることで電界形成手段19と搬送ベルト15間に電界が形成されるようになっている。
【0078】
なお、ここでは、加熱加圧手段8全体を覆うようにしてガイド部材10が設けられている場合が示されている。
【0079】
当該構成において、上流側の加熱加圧手段8によって揮発し、ガイド部材10によって記録用紙に沿って排気される過程でミスト化したキャリア液ミストを、帯電手段18によって帯電する。例えば一例として、正に帯電させるものとする。
【0080】
また、電界形成手段19により電界形成手段19と搬送ベルト15間に電界が形成される。例えば、一例として電界形成手段19側が正、搬送ベルト15側が負とする。
【0081】
帯電したキャリア液ミストは電界形成手段19により搬送ベルト15との間に形成された電界によって、電気的に記録用紙に引き付けられ、記録用紙上のトナー層11表面に付着させることが可能になる。
【0082】
したがって、当該構成によりさらにキャリア液ミストを確実に記録用紙上のトナー層に付着させることが可能である。
【0083】
上記の実施の形態においては、定着装置として、2つの加熱手段を用いる構成について説明したが、特に2つの加熱手段に限られるものではなく、さらに複数の加熱手段を設けるようにすることも可能である。
【0084】
図6は、本発明の実施の形態の変形例3に従う定着装置7Cの構成について説明する図である。
【0085】
図6を参照して、定着装置7Cは、図2で説明した定着装置7の構成と比較して、さらに、加熱加圧手段9の後段に熱風発生装置20を設けた構成が示されている。
【0086】
熱風発生装置20は、定着後の記録用紙中に浸透したキャリア液を揮発するためのものである。
【0087】
特に、記録用紙が吸液性媒体の場合、転写されてから定着装置までに搬送される間にキャリア液の一部が記録用紙中に浸透し、1段目の加熱加圧手段8において、キャリア液は揮発されると同時に記録用紙への浸透も促進される。
【0088】
記録用紙に浸透したキャリア液は2段目の加熱加圧手段9でのトナー同士の融着を阻害することはないものの、2段目の加熱加圧手段9の通過後も記録用紙中に残留するキャリア液は、画像不良の原因となる可能性も考えられる。すなわち、記録用紙中に浸透したキャリア液によって記録用紙の光散乱性が低下するため、画像裏面から見たときに表面の画像が透けて見える裏抜けの画像不良が発生する可能性もある。
【0089】
そこで、本発明の実施の形態の変形例3においては、熱風発生装置20を設けることにより、加熱加圧手段9による定着後も記録用紙中に浸透して残留するキャリア液を揮発する構成とすることで、記録用紙中のキャリア液を確実に揮発させることが可能となり、記録用紙として吸液性の高いものを用いた場合においても裏抜けの画像不良を解決することが可能である。
【0090】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0091】
1 感光体、2 帯電装置、3 露光装置、4 液体現像装置、5 転写ローラ、6 クリーナー、7,7A,7B,7C 定着装置、8,9 加熱加圧手段、10 ガイド部材、11 トナー層、12 エアフロー、13 冷却手段、14 排気手段、15 搬送ベルト、16 蒸気回収装置、17,20 熱風発生装置、18 帯電手段、19 電界形成手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア液にトナーが分散された液体現像剤を用いる湿式画像形成装置であって、
前記液体現像剤により現像された記録媒体について、熱定着する複数の加熱手段と、
前記記録媒体を加熱することにより揮発したキャリア液を回収する回収手段と、
前記記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記揮発したキャリア液を前記回収手段へ送るガイド手段とを備え、
前記ガイド手段は、前記搬送手段により前記複数の加熱手段のうち前記記録媒体の搬送方向の上流側に設けられた加熱手段を通過した前記記録媒体を下流側に設けられた加熱手段に搬送する際に、前記上流側に設けられた加熱手段で加熱されて揮発されたキャリア液雰囲気中を前記記録媒体が通過して当該揮発したキャリア液が冷却されることによりミスト化したキャリア液ミストが前記記録媒体に付着するように前記上流側の加熱手段と前記下流側の加熱手段との間に設けられる、湿式画像形成装置。
【請求項2】
前記揮発したキャリア液を冷却するための冷却手段をさらに備える、請求項1記載の湿式画像形成装置。
【請求項3】
前記冷却手段は、前記記録媒体に現像されたトナー層が形成される前記記録媒体の表面と反対方向の裏面側に設けられる、請求項2記載の湿式画像形成装置。
【請求項4】
前記上流側の加熱手段と前記下流側の加熱手段との間に、前記キャリア液ミストを帯電させるための帯電手段と、
前記帯電した前記キャリア液ミストが前記記録媒体に付着するように電界を形成する電界形成手段とをさらに備える、請求項1〜3のいずれかに記載の湿式画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−194340(P2012−194340A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57902(P2011−57902)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】