説明

溝面形状測定装置および溝面形状測定方法およびプログラム

【課題】溝部の内部の溝幅や溝面の平面度等の溝面形状を容易かつ精度良く測定する。
【解決手段】溝面形状測定装置は、第1変位計12aとスロットダイの一方の対向面とが対向配置された状態にて、スロットダイを駆動装置により所定移動方向に移動させ、第1変位計12aと一方の対向面との間の距離を検出する。次に、変位計固定部材および各変位計の位置は不変とし、第2変位計12bとスロットダイの一方の対向面とが対向配置されるように、スロットダイを反転移動させ、スロットダイを駆動装置により所定移動方向に移動させ、第2変位計12bと一方の対向面との間の距離を検出する。検出した2つの距離から駆動装置の駆動に係る真直度誤差を相殺し、所定移動方向に対する真直度を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溝面形状測定装置および溝面形状測定方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば図13に示すように、一方向に走行する可撓性帯状支持体等に塗布液を塗布する際に使用されるスロットダイ1は、内部に塗布液の液溜めとされるマニホールド2を備え、このマニホールド2から通じる塗布幅方向に伸びた溝部3から塗布液が吐出されることで、ダイヘッドの塗布表面1A上を移動する基材に塗布液を連続的に塗布するものであって、特に長尺の基材に対して均一な塗布厚さの塗布面を形成するために、塗布液が吐出される溝部3の溝幅や溝部3をなす2つの対向面(溝面)3A,3Bの平面度等の溝面形状は精度良く形成される必要がある。
これに伴い、例えば塗布幅方向に伸びる溝部3の長さ(例えば、数m等)に比べて、相対的に小さい溝幅(例えば、数100μm等)を有する溝部3に対して、溝部3の溝幅や溝部3の溝面3A,3Bの平面度等の溝面形状を精度良く測定する必要がある。
【0003】
従来、スロットダイ1の溝部3の溝幅測定では、例えば図13に示すように、隙間ゲージ5を用いて測定を行う方法が知られている。
また、従来、スロットダイ1の溝部3の溝面3A,3Bの平面度の測定では、例えば図14に示すように、電気マイクロメータ等の接触式変位プローブ6を用いて測定を行う方法が知られており、この方法では、単一の接触式変位プローブ6を塗布幅方向に沿って溝面3Aまたは溝面3Bに平行に走査させ、接触式変位プローブ6の出力を記録するようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術の一例に係る隙間ゲージ5による溝幅測定では、溝部3の開口端つまり溝部3のエッジ部3aにおける溝幅のみが測定可能であり、溝部3の内部つまり深さ方向の適宜の位置における溝幅の測定が困難であるという問題がある。
また、上記従来技術の一例に係る接触式変位プローブ6による平面度の測定では、接触式変位プローブ6を走査させる走査機構に運動の真直度誤差が生じると、測定結果に運動の真直度誤差が含まれ、測定精度が低下するという問題が生じる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、被検出対象物に設けられた溝部の内部における溝幅や溝面の平面度等の溝面形状を容易かつ精度良く測定することが可能な溝面形状測定装置および溝面形状測定方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の溝面形状測定装置は、2つの対向面(例えば、実施の形態での対向面22A,22B)からなる溝部(例えば、実施の形態での溝部22)の溝面形状を測定する溝面形状測定装置であって、各前記対向面に対して対向配置され、各前記対向面との間の距離および距離の偏差を検出する一対の変位計(例えば、実施の形態での第1および第2変位計12a,12b)と、前記変位計と前記溝部とを前記対向面に平行な方向に相対移動させる移動手段(例えば、実施の形態での駆動装置15)と、対向配置される前記一対の変位計と前記2つの対向面との対応関係が変化するように前記溝部を移動させる反転移動手段(例えば、実施の形態では、駆動装置15が兼ねる)と、前記移動手段の作動時に、少なくとも前記一対の変位計の何れかから出力される第1の検出値と、前記反転移動手段の作動後における前記移動手段の作動時に、前記少なくとも前記一対の変位計の何れかから出力される第2の検出値とに基づき、前記相対移動に係る誤差(例えば、実施の形態でのZ方向運動の真直度誤差e(x,y))を補正後の、前記少なくとも前記一対の変位計の何れかと対向する前記対向面の前記相対移動の方向における真直度を算出する真直度算出手段(例えば、実施の形態でのX方向真直度算出部33aおよびY方向真直度算出部33b)とを備えることを特徴としている。
【0006】
上記構成の溝面形状測定装置によれば、対向配置される一対の変位計と2つの対向面との対応関係を変更させる前後において、移動手段による変位計と溝部との相対移動に係る運動の真直度誤差の作用方向は各対向面に対して逆転するため、例えば第1の検出値と第2の検出値とを加算することによって、移動手段による相対移動に係る誤差を相殺することができ、相対移動に係る誤差を補正した後の対向面の相対移動の方向における真直度を、容易かつ精度良く算出することができる。
しかも、例えば位相差法等によって移動手段による相対移動に係る誤差を補正する場合に比べて、相対移動の方向に複数の変位計を配置する必要がないため、相対移動の距離つまり各変位計による測定範囲を拡大させることができると共に、溝部の開口端つまりエッジ部に対する真直度の測定を行うことが可能となる。
【0007】
また、請求項2に記載の本発明の溝面形状測定方法は、2つの対向面からなる溝部の溝面形状を測定する溝面形状測定方法であって、各前記対向面に対して対向配置され、各前記対向面との間の距離および距離の偏差を検出する一対の変位計と、前記溝部とを前記対向面に平行な方向に相対移動させた際に、少なくとも前記一対の変位計の何れかから出力される第1の検出値と、対向配置される前記一対の変位計と前記2つの対向面との対応関係が変化するように前記溝部を反転移動させた後に、前記一対の変位計と、前記溝部とを前記対向面に平行な方向に相対移動させた際に、少なくとも前記一対の変位計の何れかから出力される第2の検出値とに基づき、前記相対移動に係る誤差を補正後の、前記少なくとも前記一対の変位計の何れかと対向する前記対向面の前記相対移動の方向における真直度を算出することを特徴としている。
【0008】
上記の溝面形状測定方法によれば、対向配置される一対の変位計と2つの対向面との対応関係を変更させる前後において、変位計と溝部との相対移動に係る運動の真直度誤差の作用方向は各対向面に対して逆転するため、例えば第1の検出値と第2の検出値とを加算することによって、相対移動に係る誤差を相殺することができ、相対移動に係る誤差を補正した後の対向面の相対移動の方向における真直度を、容易かつ精度良く算出することができる。
しかも、例えば位相差法等によって相対移動に係る誤差を補正する場合に比べて、相対移動の方向に複数の変位計を配置する必要がないため、相対移動の距離つまり各変位計による測定範囲を拡大させることができると共に、溝部の開口端つまりエッジ部に対する真直度の測定を行うことが可能となる。
【0009】
また、請求項3に記載の本発明のプログラムは、コンピュータを、2つの対向面からなる溝部の溝面形状を測定する手段として機能させるためのプログラムであって、各前記対向面に対して対向配置され、各前記対向面との間の距離および距離の偏差を検出する一対の変位計と、前記溝部とを前記対向面に平行な方向に相対移動させた際に、少なくとも前記一対の変位計の何れかから出力される第1の検出値と、対向配置される前記一対の変位計と前記2つの対向面との対応関係が変化するように前記溝部を反転移動させた後に、前記一対の変位計と、前記溝部とを前記対向面に平行な方向に相対移動させた際に、少なくとも前記一対の変位計の何れかから出力される第2の検出値とに基づき、前記相対移動に係る誤差を補正後の、前記少なくとも前記一対の変位計の何れかと対向する前記対向面の前記相対移動の方向における真直度を算出する手段として機能させることを特徴としている。
【0010】
上記のプログラムによれば、対向配置される一対の変位計と2つの対向面との対応関係を変更させる前後において、変位計と溝部との相対移動に係る運動の真直度誤差の作用方向は各対向面に対して逆転するため、例えば第1の検出値と第2の検出値とを加算することによって、相対移動に係る誤差を相殺することができ、相対移動に係る誤差を補正した後の対向面の相対移動の方向における真直度を、容易かつ精度良く算出することができる。
しかも、例えば位相差法等によって相対移動に係る誤差を補正する場合に比べて、相対移動の方向に複数の変位計を配置する必要がないため、相対移動の距離つまり各変位計による測定範囲を拡大させることができると共に、溝部の開口端つまりエッジ部に対する真直度の測定を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の本発明の溝面形状測定装置によれば、相対移動に係る誤差を補正した後の対向面の相対移動の方向における真直度を、容易かつ精度良く算出することができることに加えて、例えば相対移動の方向に複数の変位計を配置する場合に比べて、相対移動の距離つまり各変位計による測定範囲を拡大させることができると共に、溝部の開口端つまりエッジ部に対する真直度の測定を行うことが可能となる。
【0012】
また、請求項2記載の本発明の溝面形状測定方法によれば、相対移動に係る誤差を補正した後の対向面の相対移動の方向における真直度を、容易かつ精度良く算出することができることに加えて、例えば相対移動の方向に複数の変位計を配置する場合に比べて、相対移動の距離つまり各変位計による測定範囲を拡大させることができると共に、溝部の開口端つまりエッジ部に対する真直度の測定を行うことが可能となる。
【0013】
また、請求項3記載の本発明のプログラムによれば、相対移動に係る誤差を補正した後の対向面の相対移動の方向における真直度を、容易かつ精度良く算出することができることに加えて、例えば相対移動の方向に複数の変位計を配置する場合に比べて、相対移動の距離つまり各変位計による測定範囲を拡大させることができると共に、溝部の開口端つまりエッジ部に対する真直度の測定を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の溝面形状測定装置および溝面形状測定方法およびプログラムの一実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
先ず、以下に、本発明の溝面形状測定装置および溝面形状測定方法およびプログラムの一実施形態に対する参考技術について説明する。
この参考技術に係る溝面形状測定装置10は、被検出対象物に設けられたスリットや溝の内部の幅の変化量と、スリットや溝の内部において対向する2つの対向面の平面度とを同時に測定可能なものであって、例えば一方向に走行する可撓性帯状支持体に塗布液を塗布する際に使用されるスロットダイ11の溝面形状を測定するものとされており、例えば図1に示すように、レーザ変位計等をなす複数、例えば4つの第1〜第4変位計12a,…,12dと、各変位計12a,…,12dから出力される変位データを処理する処理装置13と、制御装置14と、制御装置14により制御され、スロットダイ11と各変位計12a,…,12dとを相対移動させる駆動装置15とを備えて構成されている。
【0015】
スロットダイ11は、内部に塗布液の液溜めとされるマニホールド21を備え、このマニホールド21から通じる塗布幅方向に伸びた溝部22から塗布液が吐出されることで、ダイヘッド23の塗布表面23A上を移動する基材に塗布液を連続的に塗布するものであって、特に長尺の基材に対して均一な塗布厚さの塗布面を形成するために、塗布液が吐出される溝部22の溝幅h(例えば、数100μm等)は、塗布幅方向に伸びる溝部22の長さ(例えば、数m等)に比べて、相対的に小さく形成されている。
さらに、スロットダイ11は、溝部22の幅方向(Z方向)において、いわば溝幅を増大させるようにして、2つのスロットダイ部材11a,11bに分割可能とされており、これらのスロットダイ部材11a,11bは溝幅調整装置24によりZ方向に適宜の距離だけ変位可能とされている。
そして、スロットダイ11および溝幅調整装置24は、駆動装置15により溝部22が伸びる方向に平行な方向(X方向)および溝部22の深さ方向、つまりX方向およびZ方向に直交する方向(Y方向)に移動可能とされたテーブル25上に載置されている。
【0016】
そして、例えば溝幅調整装置24により互いに離間するようにして溝部22の幅方向(Z方向)に所定の距離だけ移動させられた2つのスロットダイ部材11a,11b間に変位計固定部材26が配置されており、この変位計固定部材26には、手動によりZ方向等に位置調節可能な各手動ステージ27a,27b,27cの何れかを介して、レーザ変位計等をなす各変位計12a,…,12dが接続されている。
溝部22をなす2つの対向面22A,22Bに対し、第1の手動ステージ27aに固定された第1変位計12aは一方の対向面22Aとの間の距離D(x,y)を検出し、第2の手動ステージ27bに固定された第2変位計12bは他方の対向面22Bとの間の距離D(x,y)を検出するようにされている。
そして、例えば図2および図3に示すように、X方向の所定位置においてZ方向に沿って配置された第1および第2変位計12a,12bに対して、X方向に所定距離Lだけ離間した位置には、一方の対向面22Aとの間の距離D(x,y)を検出する第3変位計12cが第3の手動ステージ27cを介して配置されている。
また、第1変位計12aに対して、Y方向に所定距離Lだけ離間した位置には、一方の対向面22Aとの間の距離D(x,y)を検出する第4変位計12dが配置されており、この第4変位計12dは、例えば第1変位計12aと共に、第1の手動ステージ27aにより位置調節可能とされている。
そして、各変位計12a,…,12dにより得られた距離D(x,y),…,D(x,y)のデータ(変位データ)は処理装置13へ出力されている。
【0017】
処理装置13は、例えば、各変位計12a,…,12dから出力される変位データを取得する第1〜第4変位データ取得部31a,…,31dと、溝幅変化量算出部32と、溝部22をなす2つの対向面22A,22BのX方向の真直度を算出するX方向真直度算出部33aおよびY方向の真直度を算出するY方向真直度算出部33bと、溝部22をなす2つの対向面22A,22Bの平面度を算出する平面度算出部34とを備えて構成されている。
【0018】
各変位データ取得部31a,…,31dは、各変位計12a,…,12dから出力される変位データを取得し、記憶部(図示略)に格納する。
溝幅変化量算出部32は、XY平面内での適宜の位置(x,y)において、第1変位計12aから出力される距離D(x,y)と、第2変位計12bから出力される距離D(x,y)とに基づき、スロットダイ11が駆動装置15によりX方向に移動させられる際に、変位計固定部材26と2つの対向面22A,22BとのZ方向における相対位置が変動することに起因して溝幅の算出結果に対して生じる誤差、つまり駆動装置15の駆動に係るZ方向運動の真直度誤差e(x,y)を補正した後の溝幅の変化量(溝幅変化量)D(x,y)を算出する。
そして、算出した溝幅変化量D(x,y)をX方向真直度算出部33aおよびY方向真直度算出部33bへ出力する。
なお、溝部22の溝幅hは、例えば、溝幅変化量D(x,y)と、予め設定された第1変位計12aと第2変位計12bとのZ方向における相対位置とに基づいて算出される。
【0019】
X方向真直度算出部33aは、駆動装置15によりスロットダイ11がX方向に移動させられた際の各変位データを読み込み、XY平面内での適宜の位置(x,y)での第1変位計12aから出力される距離D(x,y)と、X方向に所定距離Lだけずれた位置に配置された第3変位計12cから出力される距離D(x,y)とに基づき、例えば一方の対向面22AのX方向の真直度を算出し、平面度算出部34へ出力する。
さらに、X方向真直度算出部33aは、算出した一方の対向面22AのX方向の真直度と、溝幅変化量算出部32から入力される溝幅変化量D(x,y)とに基づき、例えば他方の対向面22BのX方向の真直度を算出し、平面度算出部34へ出力する。
【0020】
また、Y方向真直度算出部33bは、駆動装置15によりスロットダイ11がY方向に移動させられた際の各変位データを読み込み、XY平面内での適宜の位置(x,y)での第1変位計12aから出力される距離D(x,y)と、Y方向に所定距離Lだけずれた位置に配置された第4変位計12dから出力される距離D(x,y)とに基づき、例えば一方の対向面22AのY方向の真直度を算出し、平面度算出部34へ出力する。
さらに、Y方向真直度算出部33bは、算出した一方の対向面22AのY方向の真直度と、溝幅変化量算出部32から入力される溝幅変化量D(x,y)とに基づき、例えば他方の対向面22BのY方向の真直度を算出し、平面度算出部34へ出力する。
【0021】
平面度算出部34は、X方向真直度算出部33aから出力される対向面22A,22BのX方向の真直度と、Y方向真直度算出部33bから出力される対向面22A,22BのY方向の真直度とに基づき、対向面22A,22Bの平面度を算出する。
【0022】
制御装置14は、各変位計12a,…,12dおよび駆動装置15の動作を制御しており、例えば図2に示すように、スロットダイ11が載置されるテーブル25を駆動装置15によりX方向またはY方向に移動させることで、各変位計12a,…,12dがスロットダイ11の溝部22を長さ方向または深さ方向に走査するように設定する。
すなわち、これらの走査時には溝部22の長さ方向(X方向)または深さ方向(Y方向)に亘って、各対向面22A,22Bとの間の距離または距離の偏差を測定するように各変位計12a,…,12dを制御し、得られる変位データを処理装置13へ出力させる。そして、移動後あるいは移動中の所定時点におけるX方向の変位(X方向距離)またはY方向の変位(Y方向距離)の情報を処理装置13へ出力する。
【0023】
参考技術による溝面形状測定装置10は上記構成を備えており、以下に、この溝面形状測定装置10による溝面形状測定方法、特に、溝幅変化量を測定する処理と、X方向およびY方向の真直度を測定し、溝面の平面度を測定する処理とについて説明する。
【0024】
以下に、溝幅変化量を測定する処理について説明する。
先ず、図4に示すステップS01においては、第1および第2変位計12a,12bと溝部22との相対位置をXY平面内における所定位置(x,y)に設定する。なお、jおよびkは所定の自然数である。
次に、ステップS02においては、スロットダイ11を駆動装置15によりX方向に移動させ、各変位計12a,12bにより各対向面22A,22Bとの間の距離D(x,y),D(x,y)の検出を開始する。なお、nは任意の自然数(n=1,2,…)である。
次に、ステップS03においては、第1変位計12aから出力される距離D(x,y)と、第2変位計12bから出力される距離D(x,y)とに基づき、スロットダイ11が駆動装置15によりX方向に移動させられる際に、変位計固定部材26と2つの対向面22A,22BとのZ方向における相対位置が変動することに起因して溝幅の算出結果に対して生じる誤差、つまり駆動装置15の駆動に係るZ方向運動の真直度誤差e(x)を補正した後の溝幅変化量D(x,y)を算出する。
【0025】
次に、ステップS04においては、適宜のY方向位置でのX方向における溝幅変化量D(x,y)の測定終了が指示されているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS05に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS06に進む。
そして、ステップS05においては、第1および第2変位計12a,12bと溝部22との相対位置をY方向に所定位置だけ変更し、上述したステップS02に戻る。
【0026】
また、ステップS06においては、第1および第2変位計12a,12bと溝部22との相対位置をXY平面内における所定位置(x,y)に設定する。
次に、ステップS07においては、スロットダイ11を駆動装置15によりY方向に移動させ、各変位計12a,12bにより各対向面22A,22Bとの間の距離D(x,y),D(x,y)の検出を開始する。
次に、ステップS08においては、第1変位計12aから出力される距離D(x,y)と、第2変位計12bから出力される距離D(x,y)とに基づき、スロットダイ11が駆動装置15によりY方向に移動させられる際に、変位計固定部材26と2つの対向面22A,22BとのZ方向における相対位置が変動することに起因して溝幅の算出結果に対して生じる誤差、つまり駆動装置15の駆動に係るZ方向運動の真直度誤差e(y)を補正した後の溝幅変化量D(x,y)を算出する。
【0027】
次に、ステップS09においては、適宜のX方向位置でのY方向における溝幅変化量D(x,y)の測定終了が指示されているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS10に進み、ステップS10においては、第1および第2変位計12a,12bと溝部22との相対位置をX方向に所定位置だけ変更し、上述したステップS07に戻る。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、一連の処理を終了する。
【0028】
例えば、第1変位計12aから出力される距離D(x)は、下記数式(1)に示すように、X方向における適宜の位置xでの第1変位計12aと一方の対向面22Aとの間の距離g(x)に、スロットダイ11がX方向に移動させられる際にZ方向距離が変動することに起因して生じるZ方向運動の真直度誤差e(x)と、スロットダイ11の設置時に生じる傾斜成分axとを加算して得た値として設定されている。
同様に、第2変位計12bから出力される距離D(x)は、下記数式(2)に示すように、X方向における適宜の位置xでの第2変位計12bと他方の対向面22Bとの間の距離g(x)に、スロットダイ11がX方向に移動させられる際にZ方向距離が変動することに起因して生じるZ方向運動の真直度誤差e(x)と、スロットダイ11の設置時に生じる傾斜成分bxとによって記述されている。
【0029】
【数1】

【0030】
【数2】

【0031】
ここで、上記数式(1)と数式(2)とを加算し、スロットダイ11の設置時に生じる傾斜成分を適宜の数値演算等によって取り除くと、下記数式(3)に示すように、駆動装置15の駆動に係るZ方向運動の真直度誤差e(x)を補正した後の溝幅変化量D(x)を得ることができる。
【0032】
【数3】

【0033】
ここで、上述したステップS01〜ステップS05の処理を繰り返すことによって、Y方向における所定位置yに対して、X方向の複数の位置x(n=1,2,…)における溝幅変化量D(x,y)が算出され、上述したステップS06〜ステップS10の処理を繰り返すことによって、X方向における所定位置xに対して、Y方向の複数の位置y(n=1,2,…)における溝幅変化量D(x,y)が算出される。
ここで、測定位置が同等となる位置、つまり(x,y)=(x,y)となる位置にて、溝幅変化量D(x,y)と溝幅変化量D(x,y)とが等しくなると設定して、いわばX方向における溝幅変化量D(x,y)とY方向における溝幅変化量D(x,y)とを較正することによって、溝部22内のXY平面内における適宜の位置(x,y)での溝幅変化量D(x,y)を算出することができる。
【0034】
以下に、平面度を測定する処理について説明する。
先ず、図5に示すステップS11においては、第1および第3変位計12a,12cと溝部22との相対位置をXY平面内における所定位置(x,y)に設定する。
次に、ステップS12においては、スロットダイ11を駆動装置15によりX方向に移動させ、各変位計12a,12cにより一方の対向面22Aとの間の距離D(x,y),D(x,y)の検出を開始する。
次に、ステップS13においては、第1変位計12aから出力される距離D(x,y)と、第1変位計12aからX方向に所定距離Lだけずれた位置に配置された第3変位計12cから出力される距離D(x,y)とに基づき、スロットダイ11が駆動装置15によりX方向に移動させられる際に、変位計固定部材26と2つの対向面22A,22BとのZ方向における相対位置が変動することに起因して生じる誤差、つまり駆動装置15の駆動に係るZ方向運動の真直度誤差e(x)を補正した後の真直度f(x,y)を算出する。
【0035】
次に、ステップS14においては、ステップS13にて算出した真直度f(x,y)と同等のY方向位置yでの上述したステップS03にて算出した溝幅変化量D(x,y)を取得する。
次に、ステップS15においては、Y方向の所定位置yにおけるX方向での、一方の対向面22Aに対する真直度f(x,y)と、溝幅変化量D(x,y)とに基づき、他方の対向面22Bに対する真直度f(x,y)を算出する。
そして、ステップS16においては、適宜のY方向位置でのX方向における真直度f(x,y),f(x,y)の測定終了が指示されているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS17に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS18に進む。
そして、ステップS17においては、第1および第3変位計12a,12cと溝部22との相対位置をY方向に所定位置だけ変更し、上述したステップS12に戻る。
【0036】
また、ステップS18においては、第1および第4変位計12a,12dと溝部22との相対位置をXY平面内における所定位置(x,y)に設定する。
次に、ステップS19においては、スロットダイ11を駆動装置15によりY方向に移動させ、各変位計12a,12dにより一方の対向面22Aとの間の距離D(x,y),D(x,y)の検出を開始する。
次に、ステップS20においては、第1変位計12aから出力される距離D(x,y)と、第1変位計12aからY方向に所定距離Lだけずれた位置に配置された第4変位計12dから出力される距離D(x,y)とに基づき、スロットダイ11が駆動装置15によりY方向に移動させられる際に、変位計固定部材26と2つの対向面22A,22BとのZ方向における相対位置が変動することに起因して生じる誤差、つまり駆動装置15の駆動に係るZ方向運動の真直度誤差e(y)を補正した後の真直度f(x,y)を算出する。
【0037】
次に、ステップS21においては、ステップS20にて算出した真直度f(x,y)と同等のX方向位置xでの上述したステップS08にて算出した溝幅変化量D(x,y)を取得する。
次に、ステップS22においては、X方向の所定位置xにおけるY方向での、一方の対向面22Aに対する真直度f(x,y)と、溝幅変化量D(x,y)とに基づき、他方の対向面22Bに対する真直度f(x,y)を算出する。
そして、ステップS23においては、適宜のX方向位置でのY方向における真直度f(x,y),f(x,y)の測定終了が指示されているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS24に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS25に進む。
【0038】
そして、ステップS24においては、第1および第4変位計12a,12dと溝部22との相対位置をX方向に所定位置だけ変更し、上述したステップS19に戻る。
また、ステップS25においては、適宜のY方向位置でのX方向における真直度f(x,y),f(x,y)と、適宜のX方向位置でのY方向における真直度f(x,y),f(x,y)とに基づき、溝部22内のXY平面内における適宜の位置(x,y)での各対向面22A,22Bのうねり等の平面度を算出し、一連の処理を終了する。
【0039】
すなわち、上述したステップS11〜ステップS17の処理においては、例えば図6に示すように、第1および第3変位計12a,12cから出力される各変位データにより、適宜のY方向位置でのX方向における一方の対向面22Aの真直度f(x,y)を算出する。そして、この真直度f(x,y)と、第1および第2変位計12a,12bから出力される各変位データに基づき算出した溝幅変化量D(x,y)とを加算して、適宜のY方向位置でのX方向における他方の対向面22Bの真直度f(x,y)を算出する。
【0040】
ここで、X方向における一方の対向面22Aの真直度f(x,y)は、例えば位相差法により算出される。なお、下記数式(4)〜数式(7)においては、y座標の記載を省略する。
例えば、第1変位計12aから出力される距離D(x)は、下記数式(4)に示すように、X方向における適宜の位置xでの第1変位計12aと一方の対向面22Aとの間の距離g(x)に、スロットダイ11がX方向に移動させられる際にZ方向距離が変動することに起因して生じるZ方向運動の真直度誤差e(x)を加算して得た値として設定される。
【0041】
【数4】

【0042】
また、第3変位計12cから出力される距離D(x)は、例えば下記数式(5)に示すように、X方向における適宜の位置xでの第3変位計12cと一方の対向面22Aとの間の距離g(x)に、スロットダイ11がX方向に移動させられる際にZ方向距離が変動することに起因して生じるZ方向運動の真直度誤差e(x)を加算して得た値として設定され、さらに、第1変位計12aおよび第3変位計12cがX方向に沿って配置されていることから、距離g(x)は、X方向における適宜の位置xから所定距離Lだけ減算して得た位置での第1変位計12aと一方の対向面22Aとの間の距離g(x―L)と同等である。
【0043】
【数5】

【0044】
ここで、上記数式(4)と、上記数式(5)との差分においては、運動の真直度誤差e(x)を除去することができ、下記数式(6)に示すように、この差分を所定距離Lで除して得た差分変化ΔD(x)は、Z方向運動の真直度誤差e(x)を補正した後の第1変位計12aと一方の対向面22Aとの間の距離、つまり真直度f(x)の1回微分として近似することができる。
【0045】
【数6】

【0046】
従って、上記数式(6)を順次積分することによって、下記数式(7)に示すように、駆動装置15の駆動に係る誤差を取り除いた真直度f(x)を算出することができる。
なお、溝部22のX方向における適宜の位置x(nは任意の自然数)は、各変位データが検出された位置を示すものであり、例えば今回の検出での位置xに対して、位置xn−1は前回の検出での位置となる。
【0047】
【数7】

【0048】
同様にして、上述したステップS18〜ステップS24の処理においては、例えば図7に示すように、第1および第4変位計12a,12dから出力される各変位データにより、適宜のX方向位置でのY方向における一方の対向面22Aの真直度f(x,y)を算出する。そして、この真直度f(x,y)と、第1および第2変位計12a,12bから出力される各変位データに基づき算出した溝幅変化量D(x,y)とを加算して、適宜のX方向位置でのY方向における他方の対向面22Bの真直度f(x,y)を算出する。
【0049】
この場合、X方向での処理と同様にして、例えば位相差法によれば、下記数式(8)に示すように、一方の対向面22Aに対するY方向の差分変化ΔD(y)は、Y方向における適宜の位置yでの第1変位計12aと一方の対向面22Aとの間の距離g(y)と、Y方向における適宜の位置yでの第4変位計12dと一方の対向面22Aとの間の距離g(y)、つまりY方向における適宜の位置yから所定距離Lだけ減算して得た位置での第1変位計12aと一方の対向面22Aとの間の距離g(y―L)との差分を、所定距離Lで除して得た値となる。
【0050】
【数8】

【0051】
そして、上記数式(8)を順次積分することによって、下記数式(9)に示すように、駆動装置15の駆動に係る誤差を取り除いた真直度f(y)を算出することができる。
なお、上記数式(8)および下記数式(9)において、x座標の記載を省略した。また、溝部22のY方向における適宜の位置y(nは任意の自然数)は、各変位データが検出された位置を示すものであり、例えば今回の検出での位置yに対して、位置yn−1は前回の検出での位置となる。
【0052】
【数9】

【0053】
そして、上述したステップS11〜ステップS17及びの処理を繰り返すことによって、Y方向における所定位置yに対して、X方向の複数の位置x(n=1,2,…)における2つの対向面22A,22Bの各真直度f(x,y),f(x,y)が算出され、上述したステップS18〜ステップS24の処理を繰り返すことによって、X方向における所定位置xに対して、Y方向の複数の位置y(n=1,2,…)における2つの対向面22A,22Bの各真直度f(x,y),f(x,y)が算出される。
ここで、例えば図8に示すように、測定位置が同等となる位置、つまり(x,y)=(x,y)となる位置にて、真直度f(x,y)と真直度f(x,y)、および、真直度f(x,y)と真直度f(x,y)が等しくなると設定して、いわばX方向における各真直度f(x,y),f(x,y)とY方向における各真直度f(x,y),f(x,y)とを較正することによって、溝部22内のXY平面内における適宜の位置(x,y)での各真直度f(x,y),f(x,y)を算出することができる。
そして、これらの適宜の位置(x,y)での各真直度f(x,y),f(x,y)により、各対向面22A,22Bのうねり等の平面度を算出することができる。
【0054】
また、スロットダイ11が駆動装置15により移動させられる際に、変位計固定部材26が対向面22A,22Bに対して傾斜した場合には、この傾斜成分を、例えばオートコリメータ(図示略)等により測定し、この測定結果を考慮して真直度を算出する。
例えば図9に示すように、変位計固定部材26が第1変位計12aを支点として適宜の傾斜角e(x)だけ対向面22A,22Bに対して傾斜した場合には、第1変位計12aから出力される距離D`(x)および第3変位計12cから出力される距離D`(x)は、例えば下記数式(10)及び下記数式(11)に示すように記述される。なお、Cは任意の定数である。また、下記数式(10)〜数式(13)においては、y座標の記載を省略する。
【0055】
【数10】

【0056】
【数11】

【0057】
傾斜角e(x)が無視できるほど十分に小さい場合、あるいはオートコリメータ等で測定することによって上記数式(11)における距離D`(x)から傾斜角e(x)に係る項を消去した場合、下記数式(12)に示すように、上記数式(10)と上記数式(11)との差分を所定距離Lで除して得た差分変化ΔD`(x)は、真直度f(x)の1回微分として近似することができ、下記数式(12)を順次積分することによって、下記数式(13)に示すように、駆動装置15の駆動に係る運動の真直度誤差および運動の傾斜成分を取り除いたX方向における真直度f(x)を算出することができる。
【0058】
【数12】

【0059】
【数13】

【0060】
また、X方向での処理と同様にして、例えば下記数式(14)に示すY方向の差分変化ΔD`(y)を順次積分することによって、下記数式(15)に示すように、駆動装置15の駆動に係る運動の真直度誤差および運動の傾斜成分を取り除いたY方向における真直度f(y)を算出することができる。なお、下記数式(14)および下記数式(15)において、x座標の記載を省略した。
【0061】
【数14】

【0062】
【数15】

【0063】
以上説明したように、本実施の形態に対する参考技術に係る溝面形状測定装置10および溝面形状測定方法によれば、駆動装置15によりスロットダイ11を各変位計12a,…,12dに対してX方向またはY方向に一度だけ相対移動させるだけで、駆動装置15の駆動に係るZ方向運動の真直度誤差eを補正した後の、X方向またはY方向における溝幅変化量Dと共に、一方の対向面22Aに対するX方向またはY方向の真直度fを容易かつ精度良く測定することができる。
さらに、X方向またはY方向における溝幅変化量Dと、一方の対向面22Aに対するX方向またはY方向の真直度fとに基づき、駆動装置15の駆動に係るZ方向運動の真直度誤差eを補正した後の、他方の対向面22Bに対するX方向またはY方向の真直度fを容易かつ精度良く算出することができる。
さらに、駆動装置15により、スロットダイ11と各変位計12a,…,12dとの相対移動を、X方向またはY方向の複数の異なる位置で実行することによって、溝部22内のXY平面内における適宜の位置(x,y)での各真直度f(x,y),f(x,y)を算出することができ、各対向面22A,22Bのうねり等の平面度を容易かつ精度良く算出することができる。
【0064】
なお、上述した参考技術においては、駆動装置15によってスロットダイ11を移動させるとしたが、これに限定されず、各変位計12a,…,12dをX方向およびY方向に移動させてもよい。
【0065】
以下、本発明の溝面形状測定装置および溝面形状測定方法およびプログラムについて、特に、上述した参考技術と異なる点のみについて説明する。
上述した参考技術においては、適宜のX方向位置でのY方向における真直度f(x,y)を測定する際に、第1変位計12aと、第1変位計12aからY方向に所定距離Lだけずれた位置に配置された第4変位計12dとから出力される変位データに基づき、駆動装置15の駆動に係るZ方向運動の真直度誤差e(y)を補正した後の真直度f(x,y)を算出するとしたが、本実施の形態においては、例えば反転法により、第1変位計12aと、第2変位計12bとから出力される変位データに基づき、駆動装置15の駆動に係るZ方向運動の真直度誤差e(y)を補正した後の真直度f(x,y)を算出してもよい。
【0066】
この反転法では、例えば図10に示すように、先ず、第1の測定として、例えば第1変位計12aとスロットダイ11の一方の対向面22Aとが対向配置された状態にて、X方向の所定位置xにおいてスロットダイ11を駆動装置15によりY方向に移動させ、第1変位計12aにより、Y方向の適宜の位置yにおける第1変位計12aと一方の対向面22Aとの間の距離D(y)を検出する。
ここで、第1変位計12aから出力される距離D(x)は、例えば下記数式(16)に示すように、Y方向における適宜の位置yでの第1変位計12aと一方の対向面22Aとの間の距離g(y)に、スロットダイ11がY方向に移動させられる際にZ方向距離が変動することに起因して生じるZ方向運動の真直度誤差e(y)とを加算して得た値として設定されている。
【0067】
【数16】

【0068】
次に、第2の測定として、変位計固定部材26および各変位計12a,12bの位置は不変とし、例えば第2変位計12bとスロットダイ11の一方の対向面22Aとが対向配置されるように、例えば駆動装置15等によりスロットダイ11をXZ平面内にて反転移動させ、X方向の所定位置xにおいてスロットダイ11を駆動装置15によりY方向に移動させ、第2変位計12bにより、Y方向の適宜の位置yにおける第2変位計12bと一方の対向面22Aとの間の距離D(y)を検出する。
なお、スロットダイ11の反転移動の前後において、第1の測定での第1変位計12aと一方の対向面22Aとの間の距離g(y)と、第2変位計12bと一方の対向面22Aとの間の距離g(y)とが同等になるように設定する。
ここで、第1の測定に比べて、第2変位計12bと一方の対向面22Aとの間の距離g(y)に対するZ方向運動の真直度誤差e(y)の寄与は逆方向となるため、第2変位計12bから出力される距離D(x)は、下記数式(17)に示すように、Y方向における適宜の位置yでの第2変位計12bと一方の対向面22Aとの間の距離g(y)から、スロットダイ11がY方向に移動させられる際にZ方向距離が変動することに起因して生じるZ方向運動の真直度誤差e(y)を減算して得た値として設定される。
【0069】
【数17】

【0070】
従って、上記数式(16)と上記数式(17)とを加算することによって、例えば下記数式(18)に示すように、駆動装置15の駆動に係るZ方向運動の真直度誤差e(y)を消去することができる。
そして、この数式(18)から、下記数式(19)に示すように、Z方向運動の真直度誤差e(y)を補正した後の第1変位計12aと一方の対向面22Aとの間の距離g(y)、つまり一方の対向面22Aに対するY方向の真直度f(y)を得ることができる。
この場合、Y方向に所定距離Lだけ離間させて複数の変位計12a,12dを配置させる必要がないため、駆動装置15によるスロットダイ11のY方向への移動距離、つまり各変位計12a,12bによるY方向の測定範囲を拡大させることができる。また、溝部22の開口端、つまりエッジ部に対する測定が可能となる。
【0071】
【数18】

【0072】
【数19】

【0073】
なお、上述した反転法においては、第1の測定において、第1変位計12aと一方の対向面22Aとの間の距離D(y)を検出するとしたが、これに限定されず、例えば、第1の測定において、第1変位計12aと一方の対向面22Aとの間の距離D(y)に加えて、第2変位計12bと他方の対向面22Bとの間の距離D(y)を検出してもよい。
この場合、第1の測定の実行後にスロットダイ11をXZ平面内にて反転移動させる際には、第2変位計12bとスロットダイ11の一方の対向面22Aとが対向配置されるようにすると共に、第1変位計12cとスロットダイ11の他方の対向面22Bとが対向配置されるように設定する。
そして、第2の測定において、第2変位計12bと一方の対向面22Aとの間の距離D(y)に加えて、第1変位計12aと他方の対向面22Bとの間の距離D(y)を検出する。
これにより、1回の反転移動により、一方の対向面22Aの真直度f(x,y)と他方の対向面22Bの真直度f(x,y)とを測定することができる。しかも、第1変位計12aと第2変位計12bとの出力から溝幅変化量D(x,y)を算出することができる。
なお、Y方向と同様にして、反転法によりX方向の真直度f(x,y),f(x,y)と溝幅変化量D(x,y)とを測定してもよい。
【0074】
なお、上述した参考技術においては、第1変位計12aと第2変位計12bとから出力される変位データに基づき、溝部22の溝幅変化量Dおよび溝幅hを測定するとしたが、これに限定されず、例えば図11および図12に示すように、単一の差動干渉計等により溝幅変化量Dおよび溝幅hを測定してもよい。
以下に、上述した参考技術の変形例に係る溝面形状測定装置40および溝面形状測定方法について説明する。
この変形例に係る溝面形状測定装置40は、例えば図11および図12に示すように、テーブル25上に載置された、光源41と、ビームスプリッタ42と、第1反射鏡43と、受光部44と、偏光ビームスプリッタ45と、第1〜第3の1/4波長板46a,46b,46cと、第2反射鏡47とを備えて構成され、例えばX方向に沿って、順次、光源41と、ビームスプリッタ42と、偏光ビームスプリッタ45と、第2反射鏡47とが配置され、さらに、Z方向においてビームスプリッタ42を両側から挟み込むようにして第1反射鏡43と、受光部44とが配置されている。
【0075】
ここで、受光部44は、光源41から出射され、第1反射鏡43にて反射された第1反射光L1と、第2反射鏡47にて反射された第2反射光L2との干渉を検出し、この光路差に応じた検出結果を処理装置13等に出力する。そして、処理装置13では、検出された干渉に基づき、溝幅変化量Dおよび溝幅hが算出される。
例えば図11に示すように、第1反射光L1は、光源41からX方向に出射されたレーザ光のうち、ビームスプリッタ42によってZ方向に取り出され、第1反射鏡43にて反射された後に、受光部44へ入射されるものである。
一方、第2反射光L2は、例えば図12に示すように、光源41からX方向に出射され、ビームスプリッタ42を通過した後に、偏光ビームスプリッタ45によってZ方向に取り出され、第1の1/4波長板46aを介してスロットダイ11の一方の対向面22Aにて反射された後に、第2の1/4波長板46bを介してスロットダイ11の他方の対向面22Bにて反射された後に、偏光ビームスプリッタ45によってX方向に取り出され、第3の1/4波長板46cを介して第2反射鏡47にてX方向に光源41へ向かって反射された後に、ビームスプリッタ42によってZ方向に取り出され、受光部44へ入射されるものである。
ここで、溝部22の溝幅hが変化しても、第1反射光L1の光路は不変であるが、第2反射光L2の光路は変化するため、受光部44にて検出される第1反射光L1と第2反射光L2との干渉の変化に応じて、溝幅変化量Dおよび溝幅hが算出される。
【0076】
なお、本発明の一実施形態あるいは参考技術に係る溝面形状測定方法を実現する溝面形状測定装置10,40は、専用のハードウェアにより実現されるものであっても良く、また、メモリおよびCPUを備えて構成され、溝面形状測定装置10,40の処理装置13および制御装置14の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現するものであっても良い。
【0077】
また、上述した本発明に係る溝面形状測定方法を実現するためのプログラムをコンピュータ読みとり可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより結晶形状の測定を行っても良い。なお、ここで言うコンピュータシステムとはOSや周辺機器等のハードウェアを含むものであっても良い。
【0078】
また、コンピュータ読みとり可能な記録媒体とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことを言う。さらに、コンピュータ読みとり可能な記録媒体とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記憶されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の一実施形態に対する参考技術に係わる溝面形状測定装置を示す構成図である。
【図2】図1に示す溝面形状測定装置において、スロットダイの移動方向を示す斜視図である。
【図3】図1に示す溝面形状測定装置の要部を溝部の深さ方向(Y方向)に沿って見た図である。
【図4】溝幅変化量を測定する処理の詳細について示すフローチャートである。
【図5】平面度を測定する処理の詳細について示すフローチャートである。
【図6】図5に示すステップS11〜ステップS17の処理に係る各変位計の配置を示す斜視図である。
【図7】図5に示すステップS18〜ステップS24の処理に係る各変位計の配置を示す斜視図である。
【図8】X方向およびY方向の複数の位置における各真直度の測定結果の一例を示す図である。
【図9】各変位計が対向面に対して傾斜した状態の一例を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態に係わるスロットダイの反転移動の前後における各変位計とスロットダイとの相対位置の変化を示す図である。
【図11】参考技術の変形例に係る溝面形状測定装置における第1反射光L1の光路を示す図である。
【図12】参考技術の変形例に係る溝面形状測定装置における第2反射光L2の光路を示す図である。
【図13】従来技術の一例によるスロットダイの溝部の溝幅測定におけるスロットダイと隙間ゲージとの配置状態を示す断面図である。
【図14】従来技術の一例によるスロットダイの溝部の溝面の平面度の測定におけるスロットダイと接触式変位プローブとの配置状態を示す図である。
【符号の説明】
【0080】
10 スリット形状測定装置
11 スロットダイ
12a 第1変位計(変位計)
12b 第2変位計(変位計)
12c 第3変位計
12d 第4変位計
15 駆動装置(移動手段、反転移動手段)
22 溝部
22A 対向面
22B 対向面
32 溝幅変化量算出部
33a X方向真直度算出部(真直度算出手段)
33b Y方向真直度算出部(真直度算出手段)
34 平面度算出部
41 光源
42 ビームスプリッタ
43 第1反射鏡
44 受光部
45 偏光ビームスプリッタ
46a 第1の1/4波長板
46b 第2の1/4波長板
46c 第3の1/4波長板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの対向面からなる溝部の溝面形状を測定する溝面形状測定装置であって、
各前記対向面に対して対向配置され、各前記対向面との間の距離および距離の偏差を検出する一対の変位計と、
前記変位計と前記溝部とを前記対向面に平行な方向に相対移動させる移動手段と、
対向配置される前記一対の変位計と前記2つの対向面との対応関係が変化するように前記溝部を移動させる反転移動手段と、
前記移動手段の作動時に、少なくとも前記一対の変位計の何れかから出力される第1の検出値と、前記反転移動手段の作動後における前記移動手段の作動時に、前記少なくとも前記一対の変位計の何れかから出力される第2の検出値とに基づき、前記相対移動に係る誤差を補正後の、前記少なくとも前記一対の変位計の何れかと対向する前記対向面の前記相対移動の方向における真直度を算出する真直度算出手段と
を備えることを特徴とする溝面形状測定装置。
【請求項2】
2つの対向面からなる溝部の溝面形状を測定する溝面形状測定方法であって、
各前記対向面に対して対向配置され、各前記対向面との間の距離および距離の偏差を検出する一対の変位計と、前記溝部とを前記対向面に平行な方向に相対移動させた際に、少なくとも前記一対の変位計の何れかから出力される第1の検出値と、
対向配置される前記一対の変位計と前記2つの対向面との対応関係が変化するように前記溝部を反転移動させた後に、前記一対の変位計と、前記溝部とを前記対向面に平行な方向に相対移動させた際に、少なくとも前記一対の変位計の何れかから出力される第2の検出値とに基づき、
前記相対移動に係る誤差を補正後の、前記少なくとも前記一対の変位計の何れかと対向する前記対向面の前記相対移動の方向における真直度を算出することを特徴とする溝面形状測定方法。
【請求項3】
コンピュータを、2つの対向面からなる溝部の溝面形状を測定する手段として機能させるためのプログラムであって、
各前記対向面に対して対向配置され、各前記対向面との間の距離および距離の偏差を検出する一対の変位計と、前記溝部とを前記対向面に平行な方向に相対移動させた際に、少なくとも前記一対の変位計の何れかから出力される第1の検出値と、
対向配置される前記一対の変位計と前記2つの対向面との対応関係が変化するように前記溝部を反転移動させた後に、前記一対の変位計と、前記溝部とを前記対向面に平行な方向に相対移動させた際に、少なくとも前記一対の変位計の何れかから出力される第2の検出値とに基づき、
前記相対移動に係る誤差を補正後の、前記少なくとも前記一対の変位計の何れかと対向する前記対向面の前記相対移動の方向における真直度を算出する手段として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−327968(P2007−327968A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198026(P2007−198026)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【分割の表示】特願2002−226630(P2002−226630)の分割
【原出願日】平成14年8月2日(2002.8.2)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(899000035)株式会社 東北テクノアーチ (68)
【Fターム(参考)】