説明

溶射装置

【課題】 エジェクターを用いた溶射装置において、エジェクターの吐出導管の流路を形成する内面が、原料粉体の摩擦により摩耗することを防止又は減少させることができる溶射装置を提供する。
【解決手段】加圧されたキャリヤーガスの流れにより原料粉体の貯蔵手段の払出口から原料粉体を吸入しキャリヤーガスと原料粉体とを混合し混合物とするエジェクターであって、払出口に連通する内部空間を有する容器部と、加圧されたキャリヤーガスを先端から内部空間に噴出する噴出ノズルと、内部空間に一端が連通し混合物を流路に沿って該一端から他端へ導く吐出導管と、を有するエジェクターであって、該吐出導管が、該一端から下流に行くにつれて該流路の断面積が単調減少する絞り部と、上流から該他端に行くにつれて該流路の断面積が単調増加する拡張部と、を有するエジェクターを備える、溶射装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶射装置に関し、より詳細には、可燃性粉体(例えば、金属粉末)と耐火性粉体(耐火性骨材の粉体)とを含む原料粉体を、支燃性のキャリヤーガスによって搬送し噴射して着火溶融することで耐火組成物(通常、層状)を形成する溶射作業に用いる溶射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可燃性粉体(例えば、金属粉末)と耐火性粉体(耐火性骨材の粉体)とを含む原料粉体を、支燃性のキャリヤーガス(例えば、酸素ガス)によって搬送し噴射し、この噴射された原料粉体とキャリヤーガスとの混合物を燃焼させること(主として、可燃性粉体とキャリヤーガスとが燃焼する。)により生じる燃焼エネルギーを用いて耐火性粉体を加熱溶融(又は溶融に近い状態)させ、被覆対象物に吹き付けることで被覆層(耐火組成物)を形成する溶射はこれまで多用されてきた(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【0003】
例えば、特許文献1には、「可燃性粉体を含む粉体を支燃性のキャリヤーガスを用いて被覆体に溶射するに当たって、ノズル先端部における逆火或いは粉体供給器内での可燃性粉体の着火を確実に防止」(特許文献1の発明の詳細な説明中、段落番号0008)するためになされたものであり、具体的には「可燃性粉体と耐火性粉体との混合粉体を支燃性のキャリヤーガスを用いて導管内を搬送し、吐出ノズルより施工面或いは型枠に噴射して着火・溶融した耐火層を形成する耐火物溶射のための粉体供給方法において、吐出ノズルの前位置に供給混合粉体を収納するための粉体供給器を設け、同供給器内を不活性ガスによって密封し保圧することを特徴とする」(特許文献1の発明の詳細な説明中、段落番号0009)装置等が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、「金属シリコンの燃焼によって耐火性粉体を溶融して補修する溶射補修材であって、金属シリコンが流動性を低下せずに安定して供給して付着でき、かつ逆火を生じない粒径の所要量に、上記金属シリコンの着火性と火炎の安定に寄与して流動性を保持する粒径の所要量のコークス材を配合したことを特徴とする溶射補修材」(特許文献2の発明の詳細な説明中、段落番号0016)を用いて逆火を生じないようにすることが開示されている。
【0005】
そして、可燃性粉体と耐火性粉体とを含む原料粉体と、支燃性のキャリヤーガスと、を混合して容易に混合物をなすことができることから、エジェクターを用いた溶射装置も開発等されてきた。かかるエジェクターを用いた溶射装置においては、加圧されたキャリヤーガスをエジェクターの内部空間に噴出させることで該内部空間に負圧を形成し、この負圧によって該内部空間に原料粉体を吸入し該内部空間においてキャリヤーガスと原料粉体とを混合し混合物とするものである。
図7は、かかるエジェクター61を用いた従来の溶射装置101を示す概略図であり、図8は、図7に示した従来の溶射装置101のうち主としてエジェクター61の断面を示す断面図(後述する噴出ノズル63の先端63aから内部空間65に噴出する酸素ガス(キャリヤーガス)の噴出方向に平行かつ先端63aを含む平面(鉛直面)にて切断した断面を示している。)である。図7及び図8を参照して、従来の溶射装置101について説明する。なお、理解を容易にするため、図8においては原料粉体91の図示を省略している。
【0006】
従来の溶射装置101は、大まかには、酸素供給部21と、酸素供給部21からの酸素供給を緊急時に遮断する緊急停止部31と、原料粉体91を貯蔵するホッパー部41と、エジェクター61と、ホッパー部41とエジェクター61との間に配設された移送管53と、酸素供給部21から緊急停止部31を通過した酸素をエジェクター61方向にのみ流通を許容する逆止弁39と、エジェクター61からの酸素と原料粉体91とを含む混合物を流通させるホース部71(可撓性)と、ホース部71からの混合物を受け入れ噴射するランス部81と、を備えてなる。
【0007】
酸素供給部21は、加圧された酸素ガスが封入された酸素ボンベ23と、酸素ボンベ23からの酸素ガスの圧力を調節する圧力調整弁25と、圧力調整弁25から流出する酸素ガスの流量を測定する流量計27と、酸素ガスの流量を調節する流量調整弁29と、を有してなる。このような酸素供給部21を用い圧力調整弁25及び流量調整弁29を調節して、所望圧力及び所望流量の酸素ガスを緊急停止部31に供給することができる。
緊急停止部31は、緊急遮断弁33と、緊急遮断弁33を動作させる緊急停止スイッチ35と、を有してなる。緊急停止スイッチ35を操作することで、緊急遮断弁33を全閉(遮断)又は全開にすることができる。
酸素供給部21によって供給される所望圧力及び所望流量の酸素ガスは、緊急遮断弁33を通過した後に逆止弁39に流入するようになっており、緊急停止スイッチ35を操作することで逆止弁39への酸素ガスの供給を断続することができる(例えば、溶射装置101が何らかの緊急状態になった場合には、緊急停止スイッチ35を操作することで逆止弁39への酸素ガスの供給を遮断することができ、かかる緊急状態を脱した場合には、緊急停止スイッチ35を操作することで逆止弁39への酸素ガスの供給を再開することができる。)。
緊急停止部31の緊急遮断弁33を通過した酸素ガスは、逆止弁39に流入する。逆止弁39は、緊急遮断弁33からエジェクター61方向への流通を許容するが、エジェクター61から緊急遮断弁33方向への流通を禁止する。
逆止弁39を通過した酸素ガスは、エジェクター61に流入する。
【0008】
ホッパー部41は、可燃性粉体(例えば、金属粉末たるシリコン)と耐火性粉体(例えば、耐火骨材の粉末たる珪石粉末)とを含む、コークス炉補修用に一般的に市販されている原料粉体91を貯蔵し、ホッパー部41の底部には原料粉体91を移送管53(の上端)へ払い出すための払出口43が形成されている。払出口43は移送管53によって、後述するエジェクター61の内部空間65に連通している。
【0009】
エジェクター61は、図8に示すように、払出口43に連通する内部空間65を有する容器部62と、加圧された酸素ガス(キャリヤーガス。ここでは逆止弁39を通過した酸素ガス)を先端63aから内部空間65に噴出する噴出ノズル63と、内部空間65に一端67aが連通し混合物(酸素ガスと原料粉体91とを含む。)を流路67cに沿って一端67aから他端67bへ導く吐出導管67と、を有する。即ち、容器部62の内部空間65において、酸素ガスは、先細りの噴出ノズル63の先端63aから吐出導管67の一端67aに向けて高速で噴出し、それによって内部空間65を負圧(ここでは大気圧よりも低い圧力)にする。一方、内部空間65には移送管53の一端(下端)が連通している(移送管53は略鉛直方向に長手方向(軸方向)が向いた中空円筒形状のパイプであり、ここでは下端が内部空間65に連通している。)と共に、上述したように移送管53の他端(上端)には払出口43が連通している。このためエジェクター61は、加圧された酸素ガス(キャリヤーガス)の流れにより払出口43から原料粉体91を内部空間65に吸入し(エジェクター61の内部空間65は負圧にされているので、払出口43からはホッパー部41の原料粉体91(図7参照)が移送管53を経由してエジェクター61の内部空間65に吸入される。)、噴出ノズル63の先端63aから内部空間65に噴出する酸素ガス(キャリヤーガス)と原料粉体91とが内部空間65にて混合され混合物となり、該混合物は吐出導管67の流路67cに沿って一端67aから他端67bへ導かれ他端67bからホース部71へ吐出される。
【0010】
ホース部71へ吐出された混合物は、ホース部71を経てランス部81に達する。
ランス部81は、ホース部71の終端部に一端83aが接続され他端83bが閉塞されたパイプ部83と、パイプ部83の他端83b近傍に接続されたノズル部85と、を有してなる。前記混合物(原料粉体91と酸素ガスとの混合物)は、ホース部71を経てランス部81のパイプ部83の一端83aに進入した後、パイプ部83を他端83b方向に流動し、ノズル部85から耐火物壁面98(壁面温度は通常約600℃〜1000℃に加熱されている。)に噴射される。該噴射された混合物は、高温の耐火物壁面98に接触することで着火燃焼し、その燃焼による熱により耐火性粉体が溶解(融解)又はそれに近い状態になることで耐火組成物(図示せず)を形成する。
なお、本出願人は、このような溶射装置に関係した特許出願(特願2006−059874号:本出願時に未公開)も行っている。
【0011】
【特許文献1】特開平8−109461号公報(例えば、発明の詳細な説明中、段落番号0001〜0004、0013〜0014、第1図等)
【特許文献2】特開平9−132470号公報(例えば、発明の詳細な説明中、段落番号0001〜0016等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このような図7及び図8に示したようなエジェクター61を用いた溶射装置101においては、原料粉体91と酸素ガスとの混合物が、吐出導管67の流路67cを高速で流動するので、吐出導管67の流路67cを形成する内面67ca(図8参照)が原料粉体91の摩擦により摩耗する。
吐出導管67の流路67c内面67caが摩耗すると、流路67cが変形(例えば、混合物が流動する方向に対して垂直な断面形状が楕円形状(運転開始前は円形)になる。)したり拡大することにより、内部空間65が十分な負圧に保たれなかったり(十分な負圧にならないことは、必要量の原料粉体91が内部空間65に吸入されないという問題を生じる。)、吐出導管67が破壊されるという問題を生じる。
このためこれまでは吐出導管67を、高耐摩耗性材料(例えば、タングステン・カーバイト(WC)やボロン・カーボン(BC)等)により形成することが多かったが、かかる高価な高耐摩耗性材料により形成した高価な吐出導管67であっても吐出導管67の流路67cを形成する内面67ca(図8参照)の摩耗を十分に防止することはできなかった。
【0013】
そこで、本発明においては、エジェクターを用いた溶射装置において、エジェクターの吐出導管の流路を形成する内面が、原料粉体の摩擦により摩耗することを防止又は減少させることができる溶射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の溶射装置(以下、「本装置」という。)は、可燃性粉体と耐火性粉体とを含む原料粉体と、支燃性のキャリヤーガスと、を混合して混合物とし、該混合物を噴射し燃焼させて耐火組成物を形成する溶射装置であって、該原料粉体を貯蔵し該原料粉体を払い出す払出口を有する貯蔵手段と、加圧された該キャリヤーガスの流れにより該払出口から該原料粉体を吸入し該キャリヤーガスと該原料粉体とを混合し該混合物とするエジェクターであって、該払出口に連通する内部空間を有する容器部と、加圧された該キャリヤーガスを先端から該内部空間に噴出する噴出ノズルと、該内部空間に一端が連通し該混合物を流路に沿って該一端から他端へ導く吐出導管と、を有するエジェクターと、該エジェクターにより生成された該混合物を噴射する噴射手段と、を備えてなり、該吐出導管が、該一端から下流に行くにつれて該流路の断面積が単調減少する絞り部と、上流から該他端に行くにつれて該流路の断面積が単調増加する拡張部と、を有するものである、溶射装置である。
【0015】
本装置は、従来の溶射装置と同様に、原料粉体(可燃性粉体と耐火性粉体とを含む。)と支燃性キャリヤーガスとを混合した混合物を噴射し燃焼させて耐火組成物を形成する溶射装置であり、通常、原料粉体中の可燃性粉体が支燃性キャリヤーガスによって燃焼し、その燃焼により生じた熱によって原料粉体中の耐火性粉体が溶解(融解)又はそれに近い状態になることで耐火組成物を形成するものである。
そして、本装置は、貯蔵手段とエジェクターと噴射手段とを備えてなる。
貯蔵手段は、原料粉体を貯蔵すると共に原料粉体を払い出す払出口を有する。
エジェクターは、加圧されたキャリヤーガスがエジェクター内部(内部空間)で噴射されることにより、エジェクター内部(内部空間)が負圧(周囲の環境の圧力(通常、大気圧)よりも低い圧力)になり、これによって貯蔵手段の払出口から原料粉体を吸入する。エジェクターは、貯蔵手段の払出口に連通する内部空間を有する容器部と、加圧されたキャリヤーガスを先端から該内部空間(容器部の内部空間)に噴出する噴出ノズルと、該内部空間(容器部の内部空間)に一端が連通し混合物(キャリヤーガスと原料粉体との混合物)を流路に沿って該一端から他端へ導く吐出導管と、を有するものであり、加圧されたキャリヤーガスの流れにより貯蔵手段の該払出口から原料粉体を吸入し、該吸入した原料粉体と、該噴出したキャリヤーガスと、を該内部空間にて混合し該混合物とし、吐出導管の該他端から吐出する。
そして、原料粉体とキャリヤーガスとの該混合物はエジェクターから噴射手段へ送られ、噴射手段により噴射される。該噴射された混合物は燃焼し、その燃焼による熱により耐火性粉体が溶解(融解)又はそれに近い状態になることで耐火組成物を形成する。
【0016】
そして本装置においては、エジェクターが有する吐出導管が、該一端(容器部の内部空間に連通する端。即ち、最上流部分。)から下流に行くにつれて該流路(吐出導管の内部空間に形成された該混合物が上流(該一端側)から下流(該他端側)に向けて流れる流路)の断面積が単調減少する絞り部と、上流から該他端(最下流部分)に行くにつれて該流路の断面積が単調増加する拡張部と、を有する(即ち、絞り部と拡張部との両方を吐出導管が有する。)。
なお、ここにいう「上流」及び「下流」とは、原料粉体とキャリヤーガスとの該混合物が流れる方向に関しての「上流」及び「下流」をそれぞれいう(該混合物が、「上流」側から「下流」側に向けて流れる。)。
そして、「該一端から下流に行くにつれて流路の断面積が単調減少」とは、流路の断面積(該混合物が流れる方向に対して垂直な平面による断面における流路断面積をいう。)が該一端(容器部の内部空間に連通する端、最上流部分)から下流(該他端側)に行くにつれて単調に減少することをいう。「上流から該他端に行くにつれて該流路の断面積が単調増加」とは、流路の断面積(該混合物が流れる方向に対して垂直な平面による断面における流路断面積をいう。)が上流(該一端側)から該他端(流路の最下流に位置する端、最下流部分)に行くにつれて単調に増加することをいう。
このような該絞り部と該拡張部との両方を有する吐出導管は、これら該絞り部と該拡張部との両方を有さない吐出導管に比して、吐出導管の流路を形成する内面が、原料粉体の摩擦により摩耗することを防止又は減少させることができる。
【0017】
前記吐出導管の前記流路を形成する内面が、所定の直線を軸とした回転面を略構成するもの(以下、「回転面本装置」という。)であってもよい。
こうすることで原料粉体とキャリヤーガスとの混合物が、該所定の直線に沿って流れるようにすれば、前記吐出導管の前記流路を形成する内面が該所定の直線を軸とした回転面を略構成していることから、該混合物が円滑に流通することができると共に、該所定の直線の周りの各部分が偏った摩耗をすることを防止又は減少させることができる。
なお、該所定の直線には、噴出ノズルの先端から噴出するキャリヤーガスの噴出方向を示すベクトルが存在(噴出方向が該所定の直線に略沿っておりかつキャリヤーガスが噴出する噴出ノズルの先端が該所定の直線上に略存する。)するようにされることが多い。
【0018】
回転面本装置の場合、前記所定の直線を含む平面による断面において、前記絞り部及び前記拡張部が前記所定の直線に対して所定の角度をなす直線である基準直線に含まれる線分に沿った形状を有するもの(以下、「線分形状本装置」という。)であってもよい(即ち、前記所定の直線を含む平面による断面において、前記絞り部と前記拡張部とのいずれもが、前記所定の直線に対して所定の角度をなす直線である基準直線に含まれる線分に沿った形状を有する。なお、前記絞り部に関する所定の角度と、前記拡張部に関する所定の角度と、は互いに異なっても良いし、また互いに同一であってもよい。)。
前記所定の直線を含む平面による断面において、前記絞り部及び前記拡張部が線分に沿った形状を有し(無論、前記絞り部に関する線分と、前記拡張部に関する線分と、は異なる。)、かつ該線分が前記所定の直線に対して所定の角度をなす直線である基準直線に含まれるようにすれば、前記絞り部及び前記拡張部が円錐台の側面部分(流路を形成する)を有するので前記絞り部及び前記拡張部を容易に形成(例えば、切削加工等のような機械加工等により形成しやすい)することができる。
また、所定の角度は、前記所定の直線を含む平面による断面において、前記所定の直線と基準直線とがなす角のうち0〜90度のものをいう。
【0019】
線分形状本装置の場合、前記所定の角度が、5度以上50度以下であってもよい。
前記所定の角度は、あまり小さい場合や、逆にあまり大きい場合は、吐出導管の流路を形成する内面が、原料粉体の摩擦により摩耗することを防止又は減少させる十分な効果を奏することができないので、この効果を十分奏するような範囲とされることが好ましく、通常、好ましくは5度以上、最も好ましくは8度以上であり、逆に好ましくは50度以下、最も好ましくは20度以下である(従って、通常、好ましくは5度以上50度以下、最も好ましくは8度以上20度以下である。)。
【0020】
本装置においては、前記噴出ノズルの前記先端と前記吐出導管の前記一端との間の距離が、30mm以下であってもよい。
前記噴出ノズルの前記先端においてキャリヤーガスが前記吐出導管の前記一端に向けて噴出することで容器部の内部空間に十分な負圧を形成すると共に、前記噴出ノズルの前記先端と前記吐出導管の前記一端との間をキャリアガスが移動する間に原料粉体を巻き込んで混合物を形成する必要がある。このため前記噴出ノズルの前記先端と前記吐出導管の前記一端との間の距離は、前記噴出ノズルの前記先端が前記吐出導管の先端面より内部に位置する(前記噴出ノズルの前記先端が前記吐出導管の前記一端から内部に進入した位置に存する)とキャリアガスが原料粉体を巻き込んでうまく混合物を形成することができず、あまり大きいと容器部の内部空間に十分な負圧を形成することができない。このため該距離はこれら両条件を満足する範囲にされることが好ましく、通常、好ましくは0mm以上、最も好ましくは3mm以上であり、好ましくは30mm以下、最も好ましくは20mm以下である(従って、通常、好ましくは0mm以上30mm以下、最も好ましくは3mm以上20mm以下である。)。
【0021】
本装置においては、前記吐出導管が、前記流路の断面積が一定のストレート部を有するもの(以下、「ストレート部保有本装置」という。)であってもよい。
原料粉体とキャリヤーガスとの混合物を吐出導管が、その流路に沿って一端から他端へ導くには、通常、前記流路の断面積(該混合物が流れる方向に対して垂直な平面による断面における流路断面積をいう。)が上流側から下流側まで一定のストレート部を経由して導かれることが多い。かかるストレート部は、該混合物が比較的安定に流通することができるので、前記流路の断面積が変化する部分よりも摩耗されにくくさらに安価である。
【0022】
ストレート部保有本装置の場合、ストレート部の内径が5mm以上50mm以下であってもよい。
ストレート部の内径とは、ストレート部を前記混合物が流れる方向に対して垂直な平面によるストレート部の断面における流路が略円形をしており、その際の該円形の直径をいう。
かかるストレート部の内径を所定範囲にすることで吐出導管の流路を形成する内面が、原料粉体の摩擦により摩耗することを効果的に防止又は減少させることができ、通常、ストレート部の内径は、好ましくは5mm以上、最も好ましくは8mm以上であり、好ましくは50mm以下、最も好ましくは20mm以下である(従って、通常、好ましくは5mm以上50mm以下、最も好ましくは8mm以上20mm以下である。)。
【0023】
ストレート部保有本装置の場合、ストレート部の長さが10mm以上90mm以下であってもよい。
ストレート部の長さとは、ストレート部を前記混合物が流れる距離をいう。
かかるストレート部の長さを所定範囲にすることで吐出導管の流路を形成する内面が、原料粉体の摩擦により摩耗することを効果的に防止又は減少させることができ、通常、ストレート部の長さは、好ましくは10mm以上、最も好ましくは20mm以上であり、好ましくは90mm以下、最も好ましくは70mm以下である(従って、通常、好ましくは10mm以上90mm以下、最も好ましくは20mm以上70mm以下である。)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。しかしながら、これらによって本発明は何ら制限されるものではない。
【0025】
図1は、本発明の溶射装置(本装置)のうち主としてエジェクター261の断面を示す断面図(後述する噴出ノズル63の先端63aから内部空間65に噴出する酸素ガス(キャリヤーガス)の噴出方向に平行かつ先端63aを含む平面(鉛直面)にて切断した断面を示している。)である。本発明の溶射装置(本装置)は上述の図7及び図8に示した従来の溶射装置101に比べ、エジェクター261がエジェクター61と異なるのみでその余りは同じであるので、本装置全体の説明は省略する(必要があれば、従来の溶射装置101の説明を参照されたい。)。
そして、図1に示すエジェクター261は、上述した図8に示した従来の溶射装置101を構成するエジェクター61に比して、吐出導管267が吐出導管67と異なるのみであり、それ以外の点は同様である(即ち、本装置は、図7及び図8に示した従来の溶射装置101に比べ、吐出導管267が吐出導管67と異なるのみである。)。このためエジェクター261を構成する要素のうち、エジェクター61を構成する要素と同じ要素には同じ参照番号を付している。また、エジェクター261の説明のうちエジェクター61と同様の説明は省略する(必要があれば上述したエジェクター61の説明を参照されたい。)。
【0026】
図1を参照して、本装置が備えるエジェクター261について簡単に説明する。
エジェクター261は、ホッパー部41の底部に形成された払出口43(原料粉体91を移送管53(の上端)へ払い出す)に連通する内部空間65を有する容器部62と、加圧された酸素ガス(キャリヤーガス。ここでは逆止弁39を通過した酸素ガス)を先端63aから内部空間65に噴出する噴出ノズル63と、内部空間65に一端267aが連通し混合物(酸素ガスと原料粉体91とを含む。)を流路267cに沿って一端267aから他端267bへ導く吐出導管267と、を有する。即ち、容器部62の内部空間65において、酸素ガスは、先細りの噴出ノズル63の先端63aから吐出導管267の一端267aに向けて高速で噴出し、それによって内部空間65を負圧(ここでは大気圧よりも低い圧力)にする。一方、内部空間65には移送管53の一端(下端)が連通している(移送管53は略鉛直方向に長手方向(軸方向)が向いた中空円筒形状のパイプであり、ここでは下端が内部空間65に連通している。)と共に、上述したように移送管53の他端(上端)には払出口43が連通している。このためエジェクター261は、加圧された酸素ガス(キャリヤーガス)の流れにより払出口43から原料粉体91(図1中には図示せず。上述の図7を参照されたい。)を内部空間65に吸入し(エジェクター261の内部空間65は負圧にされているので、払出口43からはホッパー部41の原料粉体91が移送管53を経由してエジェクター261の内部空間65に吸入される。)、噴出ノズル63の先端63aから内部空間65に噴出する酸素ガス(キャリヤーガス)と原料粉体91とを内部空間65にて混合し混合物とし、該混合物を吐出導管267の流路267cに沿って一端267aから他端267bへ導き他端267bからホース部71へ吐出する。
なお、噴出ノズル63の先端63aと吐出導管267の一端267aとの間の距離を、図1にて距離dにて示す。また、噴出ノズル63の先端63aは、平面視(図1中、矢印Z方向から見たところをいう。)において、移送管53の一端(下端)よりも吐出導管267の一端267a側に位置している。
【0027】
図2は、吐出導管267を示す拡大断面図(図1に示した断面と同様の断面を示している。)である。図2を参照して、吐出導管267について説明する。
吐出導管267の流路267cを形成する内面267caは、所定の直線(図2中、点線Eにて示す。)を軸とした回転面を略構成している。具体的には、吐出導管267は、一端267aから下流(図2中、矢印F方向)に行くにつれて流路267cの断面積が単調減少する絞り部268aと、上流(図2中、矢印Fとは反対方向)から他端267bに行くにつれて流路267cの断面積が単調増加する拡張部268bと、絞り部268a(の最下流部)と拡張部268b(の最上流部)とを連通させるように設けられた流路267cの断面積が一定のストレート部268cと、を有する。絞り部268aは該所定の直線(図2中、点線Eにて示す。)を軸とする円錐台形状を有し、拡張部268bは該所定の直線(図2中、点線Eにて示す。)を軸とする円錐台形状を有し、そしてストレート部268cは該所定の直線(図2中、点線Eにて示す。)を軸とする直円柱形状を有する。このため一端267aから他端267bに行くにつれて(即ち、上流側から下流側に行くにつれて)、流路267cの断面積は、絞り部268aにおいては単調減少し、ストレート部268cにおいては一定であり、そして拡張部268bにおいては単調増加する。
なお、ストレート部268cの内径を内径Sdにて、ストレート部268cの長さを長さSLにて、それぞれ図2中に示す。
【0028】
図3は、吐出導管267を示す拡大断面図(図2に示した断面と同じ断面を示している。)である。図2を参照して、絞り部268a及び拡張部268bの形状について説明する。なお、説明を容易にするため断面からハッチングを消去している。
上述したように絞り部268a及び拡張部268bのいずれも前記所定の直線(図2及び図3中、点線Eにて示す。)を軸とする円錐台形状を有しているので、前記所定の直線(図2及び図3中、点線E)を含む平面による断面(図2及び図3に示された断面)においては、絞り部268aは線分J1、J2に沿った形状を有すると共に、拡張部268bは線分K1、K2に沿った形状を有している。なお線分J1と線分J2とは前記所定の直線(図2及び図3中、点線E)に関して線対称に略なっており、線分K1と線分K2とは前記所定の直線(図2及び図3中、点線E)に関して線対称に略なっている。線分J1は直線LJ1に含まれ、線分J2は直線LJ2に含まれ、線分K1は直線LK1に含まれ、そして線分K2は直線LK2に含まれている。ここに直線LJ1が前記所定の直線(図2及び図3中、点線E)となす角は角AJ1であり、直線LJ2が前記所定の直線(図2及び図3中、点線E)となす角は角AJ2であり、ここでは角AJ1と角AJ2とは等しい(角AJ1=角AJ2)。同様に、直線LK1が前記所定の直線(図2及び図3中、点線E)となす角は角AK1であり、直線LK2が前記所定の直線(図2及び図3中、点線E)となす角は角AK2であり、ここでは角AK1と角AK2とは等しい(角AK1=角AK2)。
従って、前記所定の直線(図2及び図3中、点線E)を含む平面による断面(図2及び図3に示された断面)においては、絞り部268aは前記所定の直線(図2及び図3中、点線E)に対して所定の角度(角AJ1=角AJ2)をなす直線である基準直線LJ1、LJ2に含まれる線分J1、J2に沿った形状を有する。そして、前記所定の直線(図2及び図3中、点線E)を含む平面による断面(図2及び図3に示された断面)においては、拡張部268bは前記所定の直線(図2及び図3中、点線E)に対して所定の角度(角AK1=角AK2)をなす直線である基準直線LK1、LK2に含まれる線分K1、K2に沿った形状を有する。
【0029】
次いで、摩耗実験を行うため様々な吐出導管を用意した。図4は、用意した様々な吐出導管を示す断面図である。図4(a)は図2及び図3に示した吐出導管267(以下、「両テーパー導管」という。)を示しており、図4(b)は両テーパー導管の拡張部268bを有さない(ストレート部268cを他端267bまで延長している。)導管(以下、「入口テーパー導管」という。)を示しており、図4(c)は両テーパー導管の絞り部268a及び拡張部268bのいずれも有さない(一端267aから他端267bまで全てストレート部268cである。換言すれば、吐出導管67と同じものである。)導管(以下、「テーパー無し導管」という。)を示している。
このような3種類の導管(両テーパー導管、入口テーパー導管、テーパー無し導管)を用いて実験を行った。なお、いずれの導管においても、導管の内径とはストレート部268cの内径Sdをいい、導管の外径とは略直円柱形状をした導管の直径Tをいう。
【0030】
実際に吐出導管の摩耗実験を行った。
図5は、実際に摩耗実験に用いた3種類の吐出導管の断面図を示している。いずれの導管も真っ直ぐなパイプにより形成されており、長さは80mmである。図5(a)は両テーパー導管(一端267aから下流方向へ20mmの位置(図5(a)中、数字の「1」を円で囲んだものの位置)まで絞り部268aが形成されると共に、他端267bの上流方向20mmの位置(図5(a)中、数字の「3」を円で囲んだものの位置)から他端267bまで拡張部268bが形成されている。)を示し、図5(b)は入口テーパー導管(一端267aから下流方向へ20mmの位置(図5(b)中、数字の「1」を円で囲んだものの位置)まで絞り部268aが形成されている。)を示し、図5(c)はテーパー無し導管を示している。なお、いずれの導管も内径Sdは10mmであり、外径Tは20mmであった。両テーパー導管においては図3中の角AJ1=角AJ2=角AK1=角AK2=14度であり、入口テーパー導管においては図3中の角AJ1=角AJ2=14度であった。なお、図5(a)、(b)、(c)のいずれの導管も同一の材料(具体的には、ステンレス鋼(SUS304))により形成されている。そして、いずれの導管においても、一端267aから下流方向へ20mmの位置(図5(a)、(b)、(c)中、数字の「1」を円で囲んだものの位置)を「位置1」といい、一端267aから下流方向へ40mmの位置(図5(a)、(b)、(c)中、数字の「2」を円で囲んだものの位置)を「位置2」といい、一端267aから下流方向へ60mmの位置(図5(a)、(b)、(c)中、数字の「3」を円で囲んだものの位置)を「位置3」という。各吐出導管の流路を形成する内面のうちこれら位置1、位置2及び位置3における摩耗を評価した。
【0031】
摩耗実験の際の本装置の運転条件は次の通りである。圧力調整弁25及び流量調整弁29を調節することで、酸素供給部21から緊急停止部31に供給される酸素ガスの圧力は0.5MPaG(ゲージ圧)とされ(なお、その後の圧力損失は無視できる。)、流量は25Nm/hとされた。
ホッパー部41(内容積約20リットル)には、可燃性粉体(ここでは具体的には金属粉末たるシリコン)と耐火性粉体(ここでは具体的には耐火骨材の粉末たる珪石粉末)とを含む、コークス炉補修用に一般的に市販されている原料粉体91が装入された。
また、噴出ノズル63の先端63aと吐出導管267の一端267aとの間の距離d(図1)は、10mmにされた。
図5(a)、(b)、(c)に示した両テーパー導管、入口テーパー導管、テーパー無し導管それぞれについて、このような条件で本装置を運転し、各吐出導管の流路を形成する内面のうち上記の位置1、位置2及び位置3における摩耗量を位置1、位置2及び位置3における内径Sdの変化により評価した。即ち、図5(a)、(b)、(c)に示した両テーパー導管、入口テーパー導管、テーパー無し導管のいずれも内径Sdは実験開始前は10mmであり、内面が摩耗すれば内径Sdが増加するため、内径Sdの変化量(増加量)により内面の摩耗量が評価できる。
【0032】
結果を図6に示す。図6(a)は図5(a)に示した両テーパー導管を用いた場合の結果を示し、図6(b)は図5(b)に示した入口テーパー導管を用いた場合の結果を示し、図6(c)は図5(c)に示したテーパー無し導管を用いた場合の結果を示している。図6(a)、(b)、(c)のいずれにおいても、●(黒丸印)が位置1における内径Sdの変化を示し、■(黒四角印)が位置2における内径Sdの変化を示し、▲(黒三角印)が位置3における内径Sdの変化を示している。さらに図6(a)、(b)、(c)のいずれも、横軸にホッパー部41からエジェクター261へ払い出された原料粉体91の質量(kg)(実験開始からの積算払出質量)を示し、縦軸に内径Sdを示している。
【0033】
図6(c)に示したテーパー無し導管の場合、位置1、位置2及び位置3のいずれの位置においてもほぼ同様に内径Sdが急激に増加しており、テーパー無し導管の内面はいずれの場所も激しく摩耗していることが明らかになった。
図6(b)に示した入口テーパー導管の場合は、図6(c)に示したテーパー無し導管の場合に比して、位置1、位置2及び位置3のいずれの位置においても内径Sdの増加は緩やかになってはいるが、やはり大きく摩耗していることが明らかになった。
図6(a)に示した両テーパー導管の場合は、図6(c)に示したテーパー無し導管は勿論、図6(b)に示した入口テーパー導管の場合に比しても、位置1、位置2及び位置3のいずれの位置においても内径Sdの増加は極めて緩やかであり、両テーパー導管の内面の摩耗は極めて小さくほとんど摩耗は生じていないことが明らかになった。とりわけ入口テーパー導管と両テーパー導管の差異である拡張部268bから遠く離れた位置1及び位置2においても、摩耗が大幅に低減されている。
なお、ここでは結果を示していないが、出口テーパー導管(他端267bの上流方向20mmの位置(図5(a)中、数字の「3」を円で囲んだものの位置)から他端267bまで拡張部268bが形成されているが、一端267aから下流方向へ60mmの位置(図5(a)中、数字の「3」を円で囲んだものの位置)までストレート部268cとされ絞り部268aが形成されていないもの)も同様に実験したところ、出口テーパー導管に比して両テーパー導管の内面の摩耗が極めて小さいことが明らかになった。
【0034】
次いで、図2及び図3に示した両テーパー導管を用いて、ストレート部268cの内径Sd、ストレート部268cの長さSL、絞り部268aにおける基準直線LJ1、LJ2が前記所定の直線(図2及び図3中、点線E)に対してなす前記所定の角度(角AJ1=角AJ2。以下、角AJ1及び角AJ2を「絞り角度」という。)、拡張部268bにおける基準直線LK1、LK2が前記所定の直線(図2及び図3中、点線E)に対してなす前記所定の角度(角AK1=角AK2。以下、角AK1及び角AK2を「拡張角度」という。)、そして噴出ノズル63の先端63aと吐出導管267の一端267aとの間の距離dを種々変更して摩耗実験を行った。具体的には、両テーパー導管の流路を形成する内面の摩耗を、上記と同様に内径Sdの変化量(増加量)により評価した。なお、摩耗実験の際の本装置の運転条件は上記のものと同様であり、調節酸素供給部21から緊急停止部31に供給される酸素ガスの圧力は0.5MPaG(ゲージ圧)とされ(なお、その後の圧力損失は無視できる。)、流量は25Nm/hとされた。ホッパー部41(内容積約20リットル)には、可燃性粉体(ここでは具体的には金属粉末たるシリコン)と耐火性粉体(ここでは具体的には耐火骨材の粉末たる珪石粉末)とを含む、コークス炉補修用に一般的に市販されている原料粉体91が装入された。
なお、ここでは絞り角度(角AJ1=角AJ2)と拡張角度(角AK1=角AK2)とは同一とされ(角AJ1=角AJ2=角AK1=角AK2)、この角度を「テーパー角度」という(角AJ1=角AJ2=角AK1=角AK2=テーパー角度)。
【0035】
内径Sd、長さSL、テーパー角度、距離dを様々変化させて摩耗実験を行った。
まず、テーパー角度を変化させて実験したところ、5度未満の場合では、内径Sd、長さSL、距離dの如何に関わらず摩耗を減少させる効果が小さく、両テーパー導管の流路内面が摩耗し流路が変形したことにより、内部空間65が十分な負圧に保たれなくなり必要量の原料粉体91が内部空間65に吸入されなくなった。逆に、テーパー角度が50度を超えると、内径Sd、長さSL、距離dの如何に関わらず摩耗を減少させる効果が小さく、両テーパー導管の流路内面が摩耗し流路が変形したことにより、内部空間65が十分な負圧に保たれなくなり必要量の原料粉体91が内部空間65に吸入されなくなった。従って、テーパー角度は5度以上50度以下が好ましい。
同様に、内径Sdを変化させて実験したところ、5mm以上50mm以下であるとき、両テーパー導管の流路内面の摩耗が効果的に防止されることが明らかになった。
さらに、長さSLを変化させて実験したところ、10mm以上90mm以下であるとき、両テーパー導管の流路内面の摩耗が効果的に防止されることが明らかになった。
そして、距離dを変化させて実験したところ、0mm以上30mm以下であるとき、安定して運転ができ、かつ両テーパー導管の流路内面の摩耗が効果的に防止されることが明らかになった。
以上より、それぞれの好ましい範囲をまとめると、テーパー角度(角AJ1=角AJ2=角AK1=角AK2)は5度以上50度以下、内径Sdは5mm以上50mm以下、長さSLは10mm以上90mm以下、そして距離dは0mm以上30mm以下である。
【0036】
このように本装置では、エジェクター261の吐出導管267の流路内面の摩耗を効果的に防止することにより、流路の変形や拡大によって生じる内部空間65に十分な負圧が保たれなくなることで必要量の原料粉体91が内部空間65に吸入されなくなるという問題を防止又は減少させることができる。従って、本装置は、長時間にわたり安定して運転を継続することができる。
【0037】
以上のように図2、図3、図4(a)、図5(a)に示した両テーパー導管267を有する本発明の溶射装置(本装置)は、可燃性粉体(ここでは金属粉末)と耐火性粉体(ここでは耐火骨材の粉末)とを含む原料粉体91と、支燃性のキャリヤーガス(ここでは酸素ガス)と、を混合して混合物とし、該混合物を噴射し燃焼させて耐火組成物を形成する溶射装置であって、該原料粉体91を貯蔵し該原料粉体91を払い出す払出口43を有する貯蔵手段たるホッパー部41と、加圧された該キャリヤーガス(ここでは酸素ガス)の流れにより該払出口43から該原料粉体91を吸入し該キャリヤーガス(ここでは酸素ガス)と該原料粉体91とを混合し該混合物とするエジェクター261であって、該払出口43に連通する内部空間65を有する容器部62と、加圧された該キャリヤーガス(ここでは酸素ガス)を先端63aから該内部空間65に噴出する噴出ノズル63と、該内部空間65に一端267aが連通し該混合物を流路267cに沿って該一端267aから他端267bへ導く吐出導管267と、を有するエジェクター261と、該エジェクター261により生成された該混合物を噴射する噴射手段(ここではホース部71とランス部81とにより構成される。)と、を備えてなり、該吐出導管267が、該一端267aから下流に行くにつれて該流路267cの断面積が単調減少する絞り部268aと、上流から該他端267bに行くにつれて該流路267cの断面積が単調増加する拡張部268bと、を有するものである、溶射装置である。
【0038】
そして、前記吐出導管267(両テーパー導管)の前記流路267cを形成する内面267caが、所定の直線(図2及び図3中、点線E)を軸とした回転面を略構成するものである。また、該所定の直線(図2及び図3中、点線E)には、噴出ノズル63の先端63aから噴出するキャリヤーガス(ここでは酸素ガス)の噴出方向を示すベクトルが存在している(噴出方向が該所定の直線(図2及び図3中、点線E)に略沿っておりかつキャリヤーガス(ここでは酸素ガス)が噴出する噴出ノズル63の先端63aが該所定の直線(図2及び図3中、点線E)上に略存する。)。
【0039】
また、前記所定の直線(図2及び図3中、点線E)を含む平面による断面(図2及び図3に示された断面)において、前記絞り部268a及び前記拡張部268bが前記所定の直線(図2及び図3中、点線E)に対して所定の角度をなす直線である基準直線に含まれる線分に沿った形状を有するものである。詳述すれば、前記所定の直線(図2及び図3中、点線E)を含む平面による断面(図2及び図3に示された断面)において、絞り部268aは前記所定の直線(図2及び図3中、点線E)に対して所定の角度(角AJ1=角AJ2)をなす直線である基準直線LJ1、LJ2に含まれる線分J1、J2に沿った形状を有している。そして、前記所定の直線(図2及び図3中、点線E)を含む平面による断面(図2及び図3に示された断面)において、拡張部268bは前記所定の直線(図2及び図3中、点線E)に対して所定の角度(角AK1=角AK2)をなす直線である基準直線LK1、LK2に含まれる線分K1、K2に沿った形状を有している。
なお、ここでは前記所定の角度(角AJ1=角AJ2=角AK1=角AK2)が14度(5度以上50度以下)である。
また、前記噴出ノズル63の前記先端63aと前記吐出導管267(両テーパー導管)の前記一端267aとの間の距離(図1中、距離d)が、10mm(30mm以下)である。
さらに、前記吐出導管267(両テーパー導管)が、前記流路267cの断面積が一定のストレート部268cを有するものである。
ストレート部268cの内径Sdが10mm(5mm以上50mm以下)である。
ストレート部268cの長さSLが40mm(10mm以上90mm以下)である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の溶射装置(本装置)のうち主としてエジェクターの断面を示す断面図である。
【図2】図1に示したエジェクターが有する吐出導管を示す拡大断面図である。
【図3】絞り部及び拡張部の形状を説明するための吐出導管の拡大断面図である。
【図4】様々な吐出導管を示す断面図である。
【図5】摩耗実験に用いた吐出導管の断面図である。
【図6】吐出導管の摩耗実験の結果を示すグラフである。
【図7】エジェクターを用いた従来の溶射装置を示す概略図である。
【図8】図7に示した従来の溶射装置のうち主としてエジェクターの断面を示す断面図である。
【符号の説明】
【0041】
21 酸素供給部
23 酸素ボンベ
25 圧力調整弁
27 流量計
29 流量調整弁
31 緊急停止部
33 緊急遮断弁
35 緊急停止スイッチ
39 逆止弁
41 ホッパー部
43 払出口
53 移送管
61 エジェクター(従来)
62 容器部
63 噴出ノズル
63a 先端
65 内部空間
67 吐出導管
67a 一端
67b 他端
67c 流路
67ca 内面
71 ホース部
81 ランス部
83 パイプ部
83a 一端
83b 他端
85 ノズル部
91 原料粉体
98 耐火物壁面
101 従来の溶射装置
261 エジェクター
267 吐出導管
267a 一端
267b 他端
267c 流路
267ca 内面
268a 絞り部
268b 拡張部
268c ストレート部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性粉体と耐火性粉体とを含む原料粉体と、支燃性のキャリヤーガスと、を混合して混合物とし、該混合物を噴射し燃焼させて耐火組成物を形成する溶射装置であって、
該原料粉体を貯蔵し該原料粉体を払い出す払出口を有する貯蔵手段と、
加圧された該キャリヤーガスの流れにより該払出口から該原料粉体を吸入し該キャリヤーガスと該原料粉体とを混合し該混合物とするエジェクターであって、該払出口に連通する内部空間を有する容器部と、加圧された該キャリヤーガスを先端から該内部空間に噴出する噴出ノズルと、該内部空間に一端が連通し該混合物を流路に沿って該一端から他端へ導く吐出導管と、を有するエジェクターと、
該エジェクターにより生成された該混合物を噴射する噴射手段と、
を備えてなり、
該吐出導管が、該一端から下流に行くにつれて該流路の断面積が単調減少する絞り部と、上流から該他端に行くにつれて該流路の断面積が単調増加する拡張部と、を有するものである、溶射装置。
【請求項2】
前記吐出導管の前記流路を形成する内面が、所定の直線を軸とした回転面を略構成するものである、請求項1又は2に記載の溶射装置。
【請求項3】
前記所定の直線を含む平面による断面において、前記絞り部及び前記拡張部が前記所定の直線に対して所定の角度をなす直線である基準直線に含まれる線分に沿った形状を有するものである、請求項2に記載の溶射装置。
【請求項4】
前記所定の角度が、5度以上50度以下である、請求項3に記載の溶射装置。
【請求項5】
前記噴出ノズルの前記先端と前記吐出導管の前記一端との間の距離が、30mm以下である、請求項1乃至4のいずれか1に記載の溶射装置。
【請求項6】
前記吐出導管が、前記流路の断面積が一定のストレート部を有するものである、請求項1乃至5のいずれか1に記載の溶射装置。
【請求項7】
ストレート部の内径が5mm以上50mm以下である、請求項6に記載の溶射装置。
【請求項8】
ストレート部の長さが10mm以上90mm以下である、請求項7又は8に記載の溶射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−275816(P2007−275816A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−107338(P2006−107338)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(391029484)日本特殊炉材株式会社 (9)
【Fターム(参考)】