説明

溶接装置および溶接方法

【課題】熟練した技能を持たない技術者であっても簡易かつ安全に溶接を行うことができる溶接装置および溶接方法を提供する。
【解決手段】互いに接触することなく対向して設置される一対の導電性繊維ブロック21、22と、一対の導電性繊維ブロック21、22に高周波を照射する高周波照射部11と、を備え、一対の導電性繊維ブロック21、22が高周波を照射された際に、発生する熱により一対の導電性繊維ブロック21、22の間に設置された被溶接物31、32を溶接する。このように被溶接物31、32を導電性繊維ブロック21、22に挟んで設置することで、熟練していない技術者でも簡易かつ安全に溶接を行うことができる。また、多品種少量生産の製品について制御装置を準備する必要はなく、低コストで多様な部材を溶接することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波を利用した溶接装置および溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接とは、2つ以上の部材を分子原子レベル溶融し一体化させる作業であり、接合箇所が連続性を持つように、部材を加熱したり圧力を加えたりすることで接合部を融合させる技術である。溶接は通常母材を溶かして行われる。母材は金属であることが多いが、プラスチックやセラミックスを溶接する場合もある。
【0003】
主な溶接手法としてはアーク溶接またはスポット溶接があり、スポット溶接は自動車や薄板板金の分野でよく使われている。金属を溶かす場合かなりの高温で溶接を行わねばならず、慣れない技術者に扱わせるのは危険である。同一製品の量産には溶接ロボット等の装置が使われることが多く、多品種少量生産ではほとんどの場合、製品ごとに熟練工が溶接している。特に難易度の高い溶接は人が仕上げるほか無く、溶接技能者には高い技能レベルが要求される。
【0004】
このような溶接の技術分野において、マイクロ波が利用される場合がある(特許文献1および特許文献2参照)。特許文献1または特許文献2に記載されるプラズマ溶接法では、高周波マイクロ波源から導波管を介してマイクロ波をマイクロ波透過管に導入し、マイクロ波透過管内のプロセスガスを電極無しで点火することによってプラズマを生成し、金属製ノズルから出るプラズマのジェットで溶接を行っている。このようにして、溶接速度を大きくしている。
【特許文献1】特表2004−523869号公報
【特許文献2】特表2004−535937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献に記載される装置は、アークプラズマ発生用のガスを必要とし、ガス放出のノズルやトーチを必要とする。そして、このような装置を用意するにはコストがかかる。一品種を大量に生産する場合には溶接速度が重要となり、特許文献に記載されるような装置が用いられやすいが、少量多品種の生産においては、装置の溶接速度は大きな問題とはならない。少量多品種の生産においては、溶接の制御装置を準備するとコスト的に見合わないため、溶接技術者が溶接する必要がある。
【0006】
また、溶接作業には危険が伴うため溶接技術者には慣れが必要であり、特に細管のような微細構造や特殊形状を有する部材を溶接する場合には、溶接技術者には高度な技術が要求され、技術的な熟練度が必要とされる。しかしながら、そのように溶接に熟練した技術者の数は限られており、簡単に溶接の需要に対応することができない。一方で、多数の溶接技術者を擁する中小企業では、技術承継が問題となっており、今後、熟練した溶接技術者の数を増やすことは容易ではない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、熟練した技能を持たない技術者であっても簡易かつ安全に溶接を行うことができる溶接装置および溶接方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の目的を達成するため、本発明に係る溶接装置は、互いに接触することなく対向して設置される一対の導電性繊維ブロックと、前記一対の導電性繊維ブロックに高周波を照射する高周波照射部と、を備え、前記一対の導電性繊維ブロックが前記高周波を照射された際に、発生する熱により前記一対の導電性繊維ブロックの間に設置された被溶接物を溶接することを特徴としている。
【0009】
このように本発明の溶接装置は、互いに接触することなく対向して設置される一対の導電性繊維ブロックに高周波を照射させ、両者間に発生させた熱により溶接を行う。高温になるのは導電性繊維ブロックに挟まれた領域のみであり技術者にとって安全である。また、上記のとおり被溶接物を導電性繊維ブロックに挟んで設置することで、熟練していない技術者でも簡易かつ安全に溶接を行うことができる。たとえば、微細形状や特殊形状の部材を溶接する場合でも容易に溶接を行うことができる。また、多品種少量生産の製品について制御装置を準備する必要はなく、低コストで多様な部材を溶接することができる。
【0010】
(2)また、本発明に係る溶接装置は、前記一対の導電性繊維ブロックが、それぞれ板形状に形成されていることを特徴としている。これにより、一対の導電性繊維ブロックの板形状の主面間で放電を生じさせ均一に熱を発生させることができる。その結果、部材上で均一な溶接が可能となる。
【0011】
(3)また、本発明に係る溶接装置は、前記一対の導電性繊維ブロックが、1mm以上30mm以下の間隔を空けて配置され、前記一対の導電性繊維ブロックが前記高周波を照射された際には、前記間隔に設置された被溶接物を溶接することを特徴としている。このように本発明の溶接装置では、一対の導電性繊維ブロックが1mm以上30mm以下の間隔を空けて配置されている。これにより、導電性繊維ブロックの間に放電を発生させ溶接に必要な熱を発生させることができる。
【0012】
(4)また、本発明に係る溶接装置は、前記一対の導電性繊維ブロックが、1μm以上0.1mm以下の径を有する繊維により、隣り合う繊維の平均間隔を前記繊維の径の5倍以上20倍以下として形成されていることを特徴としている。
【0013】
一対の導電性繊維ブロックが、1μm以上0.1mm以下の径を有する繊維により形成されているため、繊維の先端から放電を生じさせることができる。また、一対の導電性繊維ブロックが、隣り合う繊維の平均間隔を繊維の径の5倍以上20倍以下として形成されているため、断熱効果が向上し、生じた熱の伝導を防止することができる。
【0014】
(5)また、本発明に係る溶接装置は、前記一対の導電性繊維ブロックが、カーボンフェルトまたはスチールウールにより形成されていることを特徴としている。カーボンフェルトまたはスチールウールは容易に入手できるため、安価に一対の導電性繊維ブロックを準備することができる。
【0015】
(6)また、本発明に係る溶接装置は、前記一対の導電性繊維ブロックの間に、絶縁性および耐熱性を有するスペーサーを備えることを特徴としている。これにより、局所的な高温に耐えて、一対の導電性繊維ブロックをショートさせないように固定することができる。その結果、溶接を容易かつ確実に行うことができる。
【0016】
(7)また、本発明に係る溶接方法は、対向して設置される一対の導電性繊維ブロックの間に、前記各導電性繊維ブロックと接触させることなく、被溶接物を設置する設置工程と、前記一対の導電性繊維ブロックに高周波を照射する照射工程と、を備えることを特徴としている。
【0017】
このように本発明の溶接方法は、対向して設置される一対の導電性繊維ブロックの間に被溶接物を設置し、一対の導電性繊維ブロックに高周波を照射させ、両者間に発生させた熱により被溶接物の溶接を行う。被溶接物を導電性繊維ブロックに挟んで設置するだけで溶接できるため熟練していない技術者でも簡易かつ安全に溶接を行うことができる。また、多品種少量生産の製品について制御装置を準備する必要はなく、低コストで多様な部材を溶接することができる。
【0018】
(8)また、本発明に係る溶接装置は、前記一対の導電性繊維ブロックが、カーボンフェルトまたはスチールウールにより形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載としている。これにより、たとえば医療機器等の分野で用いられる有機物部材と金属部材との接合品を容易に製造することができる。
【0019】
(9)また、本発明に係る溶接装置は、前記被溶接物のそれぞれが、管形状に形成されており、前記設置工程において前記被溶接物の一方の先端に他方の先端を挿入して前記被溶接物を設置することを特徴としている。アーク溶接等により管形状の部材同士の溶接する場合には高度な技術が必要となるが、被溶接物を所定位置に設置して高周波を照射するだけで容易に溶接を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る溶接装置によれば、熟練していない技術者でも簡易かつ安全に溶接を行うことができる。また、多品種少量生産の製品について制御装置を準備する必要はなく、低コストで多様な部材を溶接することができることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。また、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0022】
図1は、溶接装置1の構成を示す断面図である。溶接装置1は、高周波照射装置10および溶接ユニット20から構成されている。高周波照射装置10は、内部に設置された対象に対して一定周波数の高周波を照射する装置である。溶接ユニット20は、被溶接物を固定しつつ、照射される高周波のエネルギーを熱に変え、被溶接物に熱を与えるユニットである。
【0023】
高周波照射装置10は、高周波照射部11、共鳴室14を備えており、高周波照射部11は、発振器12および導波管13を備えている。発振器12は、たとえばマグネトロンにより構成され電源から供給される電力により一定の高周波を発生させる。高周波としては、たとえば2.45GHzや、13.56MHzのマイクロ波を選択することができる。ただし、高周波の周波数はこれに限定されるものではなく、導電性繊維ブロック21、22に十分に放電を発生させられる周波数であればよい。したがって、このような条件を満たせばレーザー光のような光の周波数であってもよい。導波管13は、金属の矩形の中空管であり発振器12から発振された高周波を共鳴室14に導入する。
【0024】
共鳴室14は、直方体の中空を取り囲む壁面により形成され、その一壁面に開閉可能な扉(図示せず)を有している。この扉を開けて溶接ユニット20を共鳴室14内部に設置して周囲を封止した後、高周波が照射される。共鳴室14の寸法は、たとえば幅300mm×奥行320mm×高さ190mmとすることができる。共鳴室14の寸法は、高周波を適度に共鳴させることができる大きさであれば特に限定されない。共鳴室14の内壁は主に金属により形成されている。
【0025】
溶接ユニット20は、一対の導電性繊維ブロック21、22、スペーサー23、24およびプラズマ発生防止部材26を備えている。一対の導電性繊維ブロック21、22は、スペーサー23、24を間に挟んで配置されており、さらにスペーサー23、24は、被溶接物31、32を挟んで配置されている。
【0026】
導電性繊維ブロック21、22は、それぞれ板形状に形成されている。各導電性繊維ブロック21、22は、互いに接触しないように、それぞれの主面を対向させて配置されている。これらの導電性繊維ブロック21、22の間隔は、1mm以上30mm以下であることが好ましい。間隔を1mm以上30mm以下とすることで、高周波照射時にその間隔内で放電が生じ、金属を溶接できる程度の熱が発生する。そして、その熱により被溶接物31および32を溶接することができる。
【0027】
導電性繊維ブロックは、0.1μm以上0.1mm以下の径を有する繊維により形成され、隣り合う繊維の平均間隔は繊維の径の5倍以上20倍以下であることが好ましい。このように細い繊維で形成されているため、繊維の先端から放電を生じさせることができる。また、隣り合う繊維の平均間隔を繊維の径の5倍以上20倍以下として網目状に形成されているため、断熱効果が向上し、生じた熱の伝導を防止することができる。たとえば、導電性繊維ブロックとしてカーボンフェルトまたはスチールウールを用いることができる。カーボンフェルトまたはスチールウールは安価で比較的入手が容易である。特にカーボンフェルトは、ハサミで切ることで容易に形状を整えることができ、扱い易い。なお、導電性繊維ブロック21、22は、必ずしも繊維のブロックである必要はなく、スポンジ状の導電体であってもよい。
【0028】
導電性繊維ブロック21、22は、一対のものが互いに接触しないように対向して配置されることが必要である。したがって、両者間で放電を生じさせるためには、少なくとも2以上の導電性繊維ブロックが必要である。導電性繊維ブロックと導電性の板との間に放電を生じさせることも可能であるが、放電が弱くなりすぎることと、板が熱を逃がすことで十分な熱を発生させることができない。なお、溶接装置1は、必ずしも一対のみの導電性繊維ブロック21、22を有する必要はなく、複数の導電性繊維ブロックが複数の対を形成する溶接装置1もありうる。
【0029】
スペーサー23、24は、絶縁性および耐熱性を有し、一対の導電性繊維ブロックを一定間隔空けて固定する。スペーサー23、24は、被溶接物31、32の接合しようとする部分を塞がないように空けて、被溶接物31、32を押さえて固定するように配置されている。たとえば、スペーサー23、24には、環状に形成されたセラミック部材を用いて、被溶接物31、32の接合部分の周囲を押さえるように配置することができる。ただし、スペーサー23、24の形状は特に環状に限定されることはなく、板状、ペレット状等であってもよい。スペーサーの材料には耐熱性の高いアルミナ等のセラミックスを用いることが好ましい。なお、スペーサー23、24は、溶接ユニット20に必須の構成ではなく、被溶接物が絶縁性を有する物である場合には、スペーサー23、24がなくても溶接を行うことができる。特に、被溶接物のそれぞれが管形状を有する場合には、スペーサー23、24なしで溶接を行い易い。
【0030】
プラズマ発生防止部材26は、絶縁性を有する部材であり、導電性繊維ブロック21、22の空気側の面を覆うように形成されている。プラズマ発生防止部材26は、高周波の照射によりプラズマが発生するのを防止する。これにより、プラズマの発生に高周波のエネルギーが取られることがなくなり、放電部分にエネルギーが十分に供給される。プラズマ発生防止部材26には、たとえばガラス板やセラミック板を用いることができる。なお、プラズマの発生を防止できるものであればよく、形状は板に限定されない。また、プラズマの影響が無視できれば、溶接装置1は必ずしもプラズマ発生防止部材26を備える必要はない。
【0031】
被溶接物31、32は、金属部材同士であってもよいし、金属部材とガラス部材、金属部材とセラミック部材、または金属部材と有機部材であってもよい。たとえば、ポリテトラフルオロエチレンの部材とステンレスの部材とを溶接することが可能である。これにより、ポリテトラフルオロエチレンのような人間に対して親和性の高い材料の部材を容易に溶接することができ、医療器具に本発明の溶接方法を応用することができる。また、エンジン等の分野においても応用の可能性が広がる。各被溶接物は、板状の部材であることが好ましいが、管状の部材、線状の部材またはこれらの組み合わせであってもよい。図1には、板状の被溶接物31、32のそれぞれの端部が重ねられている様子が示されている。高周波の照射により、この重ねられている部分が溶接される。
【0032】
図2(a)は、板状の被溶接物31、32の平面図、図2(b)は板状の被溶接物31、32の側面図である。図2に示すように、被溶接物31、32の間には、溶加材粉末35が挟まれている。溶加材粉末35には、たとえば溶接棒を粉末に加工したものを使用することができる。溶加材粉末35を溶接部分に挟んだ状態で加熱すると、溶接が容易になる。被溶接物31、32と同じ材質の溶加材粉末35を用いる場合でも、粉末の方が板より溶けやすいため、溶加材粉末35がのりのように作用し均一に溶接することができる。
【0033】
このように構成される溶接装置1を用いた溶接方法を以下に示す。まず、共鳴室14の扉を開け、導電性繊維ブロック22を共鳴室14の底面に置き、その上にスペーサー24を置く。そして、図2に示すように、被溶接物31、32をその互いに溶接したい部分を接触させた状態で、スペーサー24の上に置き、その上にスペーサー23を置いて被溶接物31、32を挟む。さらに、スペーサー23の上に導電性繊維ブロック21を設置する。そして、導電性繊維ブロック21の上にプラズマ発生防止部材26を置いて導電性繊維ブロック21が空気と接触する面を覆う。
【0034】
このように溶接ユニット20を共鳴室14に設置した後、共鳴室14の扉を閉めて内部を封止し、高周波を溶接ユニット20に照射する。図3(a)〜(c)は、高周波が照射されたときに導電性繊維ユニット21、22に熱が生じるメカニズムを示す概略図である。図3(a)に示すように、高周波は、共鳴室14において適度に反射され、溶接ユニット20には一様に高周波が照射される。そして、図3(b)に示すように、高周波を照射された導電性繊維ユニット21、22の対向する面間で放電が生じる。図中の両方向矢印は放電を示している。放電により、図3(c)に示すように、導電性繊維ユニット21、22の対向する面間の領域Rに高温の熱が発生し、被溶接物31、32の互いの接触部分が溶接される。領域Rの温度は、1500℃程度まで上昇する。
【0035】
なお、上記の実施形態では、板形状の被溶接物を溶接しているが、管形状の被溶接物を溶接してもよい。図4は、管形状の被溶接物41、42を示す正面図である。管形状の被溶接物41、42を溶接する場合には、一方の被溶接物41の先端を他方の被溶接物42の先端に挿入した状態で導電性繊維ブロック21、22の間に固定し、高周波の照射を行う。このようにして、たとえばセラミック管とガラス管との溶接、ステンレス管と樹脂管との溶接が可能となる。管同士を溶接する場合は、一方の先端が他方の先端に挿入され、接合部が物理的に固定されているため、溶接時の接合部の固定が容易である。
【0036】
また、線または棒形状の被溶接物を溶接することも可能である。図5は、線形状の被溶接物51、52を示す正面図である。被溶接物51、52は、溶接対象となる部分を被溶接物の細線で巻かれている。このように、線または棒形状の被溶接物を細線で巻いて、高周波の照射により高熱に曝すことで両者の溶接を行うことができる。たとえば、針金を金属の細線で巻いて溶接したり、金属棒を細線で巻いて溶接したりすることが可能となる。被溶接物は、このような形状のもの以外に階段状であってもよい。
【実施例】
【0037】
(実験1)
上記のような溶接装置1を用いて、実験を行った。まず、幅20mm、厚さ2mmの2枚のステンレス(SUS304)板の各先端を、同一材質のステンレス粉を板間に挟んで重ね、アルミナのスペーサーに挟み、さらにカーボンフェルトに挟んだ。そして、2.45GHzのマイクロ波を700Wで50秒間、カーボンフェルトに照射した。その結果、ステンレス板の重ねた部分が溶解し、溶接により2枚のステンレス板が接合されたことを確認することができた。
【0038】
(実験2)
次に、外径1mmのステンレス(SUS304)管の先端を内径1mmのポリテトラフルオロエチレン管の先端に挿入して接合し、接合部近接のステンレス管部分をアルミナのスペーサーに挟み、さらにカーボンフェルトに挟んだ。そして、2.45GHzのマイクロ波を500Wで20秒間、カーボンフェルトに照射した。その結果、ステンレス管の発熱によりポリテトラフルオロエチレンが溶解し、接触部分において管同士が溶接され、人間の力では分離できない程度の接合部の強度を得ることができた。たとえば、ステンレス管とポリテトラフルオロエチレン管とを溶接したものを医療目的で用いることも可能である。
【0039】
(実験3)
次に、外径20mmのセラミック管の先端を内径20mmのガラス管の先端に挿入して接合し、接合部をアルミナのスペーサーに挟み、さらにカーボンフェルトに挟んだ。そして、2.45GHzのマイクロ波を700Wで30秒間、カーボンフェルトに照射した。その結果、各管が接触している先端部分が溶接され、人間の力では分離できない程度の接合部の強度を得ることができた。この組み合わせの場合、ガラスの強度に合った使用目的が選ばれるため、この程度の強度で十分であると考えられる。
【0040】
(実験4)
径2mmの鉄製の2本の針金の各先端を接触させて、鉄の細線で巻いて接合し、接合部をアルミナのスペーサーに挟み、さらにカーボンフェルトに挟んだ。そして、2.45GHzのマイクロ波を700Wで40秒間、カーボンフェルトに照射した。その結果、接触させた部分の鉄が溶解し、2本の針金が溶接により接合されたことが確認できた。このように、実験により本発明の溶接方法が有効であることが実証された。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の溶接装置の構成を示す断面図である。
【図2】(a)板状の被溶接物の平面図、(b)板状の被溶接物の側面図である。
【図3】(a)〜(c)高周波が照射されたときに導電性繊維ユニットに熱が生じるメカニズムを示す概略図である。
【図4】管形状の被溶接物を示す正面図である。
【図5】線形状の被溶接物を示す正面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 溶接装置
10 高周波照射装置
11 高周波照射部
12 発振器
13 導波管
14 共鳴室
20 溶接ユニット
21、22 導電性繊維ブロック
23、24 スペーサー
26 プラズマ発生防止部材
31、32 板状の被溶接物
35 溶加材粉末
41、42 管状の被溶接物
51、52 線状の被溶接物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接触することなく対向して設置される一対の導電性繊維ブロックと、
前記一対の導電性繊維ブロックに高周波を照射する高周波照射部と、を備え、
前記一対の導電性繊維ブロックが前記高周波を照射された際に、発生する熱により前記一対の導電性繊維ブロックの間に設置された被溶接物を溶接することを特徴とする溶接装置。
【請求項2】
前記一対の導電性繊維ブロックは、それぞれ板形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の溶接装置。
【請求項3】
前記一対の導電性繊維ブロックは、1mm以上30mm以下の間隔を空けて配置され、
前記一対の導電性繊維ブロックが前記高周波を照射された際には、前記間隔に設置された被溶接物を溶接することを特徴とする請求項1または請求項2記載の溶接装置。
【請求項4】
前記一対の導電性繊維ブロックは、0.1μm以上0.1mm以下の径を有する繊維により、隣り合う繊維の平均間隔を前記繊維の径の5倍以上20倍以下として形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の溶接装置。
【請求項5】
前記一対の導電性繊維ブロックは、カーボンフェルトまたはスチールウールにより形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の溶接装置。
【請求項6】
前記一対の導電性繊維ブロックの間に、絶縁性および耐熱性を有するスペーサーを備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の溶接装置。
【請求項7】
対向して設置される一対の導電性繊維ブロックの間に、前記各導電性繊維ブロックと接触させることなく、被溶接物を設置する設置工程と、
前記一対の導電性繊維ブロックに高周波を照射する照射工程と、を備えることを特徴とする溶接方法。
【請求項8】
前記被溶接物の一方は有機物により形成され、他方は金属により形成されていることを特徴とする請求項7記載の溶接方法。
【請求項9】
前記被溶接物のそれぞれは、管形状に形成されており、前記設置工程において前記被溶接物の一方の先端に他方の先端を挿入して前記被溶接物を設置することを特徴とする請求項7または請求項8記載の溶接方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−296260(P2008−296260A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146598(P2007−146598)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(501453433)
【出願人】(591267855)埼玉県 (71)
【Fターム(参考)】