溶液のPHを変化させる方法及び装置
【課題】本発明は、物質が溶解している溶剤のpHを変化させる装置(22)に関する。
【解決手段】装置は、溶剤及び物質に対して透過性のあるハウジング壁(26)を通して溶剤と接触するハウジング(24)を含んでいる。ハウジングは、水素又は水酸基イオンを提供するために物質を変換するのに適した酵素を含み、ハウジングは、酵素に対しては非透過性である。
【解決手段】装置は、溶剤及び物質に対して透過性のあるハウジング壁(26)を通して溶剤と接触するハウジング(24)を含んでいる。ハウジングは、水素又は水酸基イオンを提供するために物質を変換するのに適した酵素を含み、ハウジングは、酵素に対しては非透過性である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液のpHを変化させる方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の用途においては、溶液のpHを修正可能であることが望まれる。用途例としては、溶液の中で生じ、溶液のpHにより速度が変化する物理化学的現象、例えば、pHが変化する溶液内での物質の可溶化の変動、の調整がある。他の用途例としては、pHにより変化する溶液の化学的又は機械的性質の調整がある。その様な性質の例としては、溶液のオスモル濃度がある。
【0003】
初期溶液のpHは、通常、初期溶液に、酸又は塩基性溶液を混ぜることにより修正できる。混合後、最終的に得られる溶液のpHは、初期溶液のpH、追加した溶液のpH、並びに、初期及び追加溶液の量に依存する値で安定する。
【0004】
しかしながら、ある種の用途において、酸や塩基性溶液を追加することなしに、溶液のpHを修正可能であることが望まれる。例えば、生体液と呼ばれる、人体に含まれる溶液のpHについては、pH修正を実行するための人体への介入を可能な限り制限しながら、修正できることが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、酸や塩基性溶液を追加すること無しに、溶液のpHを変化させる方法及び装置を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の他の目的は、人体に埋め込まれることを意図したpHを変化させる方法と、人体に埋め込まれることを意図したpHを変化させる装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の態様は、物質が溶解している溶剤のpHを変化させる装置であって、溶剤及び物質に対して透過性がある筐体壁経由で溶剤に接触する筐体を含み、前記筐体は、水素又は水酸基イオンを放出するために前記物質を変換できる酵素を含み、前記筐体壁は、前記酵素に対して透過性がない装置を提供する。
【0008】
実施形態によると、前記物質は、D−グルコースであり、前記酵素は、前記D−グルコースの酸化により、水素イオンの放出を生じさせることができるグルコース・オキシダーゼ酵素である。
【0009】
実施形態によると、前記物質は、L−グルコースであり、前記酵素は、前記L−グルコースの酸化により、水素イオンの放出を生じさせることができるL−フコース・デヒドロゲナーゼ酵素である。
【0010】
実施形態によると、前記物質は、尿素であり、前記酵素は、尿素の分解により、水酸基イオンの放出を生じさせることができるウレアーゼ酵素である。
【0011】
本発明の他の態様によると、上述した様なpHを変化させる装置と、pHを変化させる前記装置に接続され、あるいは、pHを変化させる前記装置の筐体に対応する、少なくとも部分的に溶剤を含む第1のチャンバであって、pHを変化させる前記装置が、第1のチャンバ内のpHを、所定の範囲内にすることができる第1のチャンバと、前記第1のチャンバに接続されている変形可能な第2のチャンバとを含み、前記第1のチャンバは、前記第1のチャンバ内のpHが前記所定の範囲内であるとき、前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとの間で溶剤の移動を可能にする手段を含んでいるアクチュエータを提供する。
【0012】
実施形態によると、前記第1のチャンバは溶質を含み、チャンバ壁により前記第2のチャンバから分離され、前記チャンバ壁は、前記溶質に対して非透過性であり、前記溶剤に対して透過性であり、前記溶質の沈殿物の前記溶質への変換、あるいは、前記溶質の沈殿化は、前記第1のチャンバ内のpHが、前記所定の範囲内にあるとき、前記第1のチャンバ内の浸透圧を変化させることで促進され、前記変形可能な第2のチャンバは、浸透作用による前記第1のチャンバと前記第2のチャンバ間における前記溶剤の移動活動のもと、容量を変更可能である。
【0013】
実施形態によると、前記第1のチャンバは溶質を含み、チャンバ壁により前記第2のチャンバから分離され、前記チャンバ壁は、前記溶質に対して非透過性であり、前記溶剤に対して透過性であり、前記溶質の沈殿物の前記溶質への変換は、前記第1のチャンバ内のpHが、前記所定の範囲内にあるとき、前記第1のチャンバ内の浸透圧を変化させることで促進され、前記第1のチャンバは、前記溶剤と接触することを目的とした配置であり、
前記第2のチャンバは、浸透作用により前記第1のチャンバに浸透する前記溶剤の活動のもと、その容量を増加することができる。
【0014】
実施形態によると、前記第1のチャンバは、前記第1のチャンバ内のpHが、前記所定の範囲内にあるときに体積を変更することができる材料を含み、変形可能なエンベロープを取り囲む前記材料は溶剤を含み、前記第2のチャンバに接続されている。
【0015】
本発明の他の態様は、既に記載した様なアクチュエータを含むモータであって、前記第1のチャンバは、少なくとも、部分的に変形可能であり、前記チャンバ壁で前記第2のチャンバに接続され、前記溶質の沈殿物の前記溶質への変換は、pHが、所定の酸性の範囲内にあるとき促進され、前記溶質の沈殿化は、pHが、所定の塩基性の範囲内にあるとき促進され、pHを変化させる前記装置は、前記第1のチャンバ内のpHを、前記所定の酸性の範囲内にすることができ、前記モータは、前記第1のチャンバに接続され、前記第1のチャンバ内のpHを、前記所定の塩基性の範囲内にすることができる、pHを変化させる装置を、さらに、含んでいるモータを提供する。
【0016】
本発明の態様は、既に記載したアクチュエータを含むモータであって、前記第2のチャンバは、前記第2のチャンバの容量の増加を抑えるリターン手段と、前記第2のチャンバ内の浸透圧を低下させる制御手段とを備えているモータを提供する。
【0017】
本発明の態様は、既に記載したアクチュエータを含むモータであって、前記材料は、pHが、所定の酸性の範囲内にあるとき、その体積を減少させることができ、pHが、所定の塩基性の範囲内にあるとき、その体積を増加させることができ、pHを変化させる前記装置は、前記第1のチャンバ内のpHを、前記所定の酸性の範囲内にすることができ、前記モータは、前記第1のチャンバに接続され、前記第1のチャンバ内のpHを、前記所定の塩基性の範囲内にすることができる、pHを変化させる装置を、さらに、含んでいるモータを提供する。
【0018】
実施形態によると、前記第2のチャンバは、哺乳動物の空洞器官、特に、尿道、胃、肛門又は心臓を取り囲むことを意図するものであり、前記第2のチャンバの容量増加が、前記器官の圧縮の原因となる。
【0019】
本発明の態様は、上述したpHを変化させる装置を含む、物質を浄化するシステムであって、前記物質を含む生体溶剤と接触し、人体内に埋め込まれることを意図したシステムを提供する。
【0020】
本発明の態様は、上述したpHを変化させる装置と、前記筐体壁と前記溶剤間に配置された制御可能な第1のバルブと、pHを変化させる前記装置の前記筐体を、ドレインに通じさせる制御が可能な第2のバルブと、前記第2のバルブが開けられ、前記第1のバルブが閉じられたとき、pHを変化させる前記装置の前記筐体の容量を減少させて、pHを変化させる前記装置の前記筐体の内容物をドレイン経由で排出し、前記第1のバルブが開けられ、前記第2のバルブが閉じられたとき、pHを変化させる前記装置の前記筐体の容量を増加させて、pHを変化させる前記装置の前記筐体に、前記筐体壁経由で、前記溶剤を吸い込ませることを、周期的に行う手段とを備えている浄化システムを提供する。
【0021】
本発明の態様は、第1及び第2の電極を含み、pHにより前記第1及び前記第2の電極で、酸化又は還元反応が生じ易い筐体と、酸化又は還元反応の一方を促進し、第1の電極でのpHを、所定の範囲内にすることができるpHを変化させる装置と、酸化又は還元反応の他方を促進し、第2の電極でのpHを、前記第1の範囲とは異なる第2の所定の範囲内にすることができる手段とを備えているセルを提供する。
【0022】
実施形態によると、前記セルは、溶剤と接触して配置されることを意図し、前記手段は、前記筐体の内容物を、前記第2の電極において溶剤と通じさせることを意図したバルブに対応する。
【0023】
実施形態によると、前記手段は、上述した様なpHを変化させる、さらなる装置である。
【0024】
本発明の上記目的、特徴及び利点について、以下では図面を用い、特定の実施形態の限定しない記述により詳細に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明によるpHを変化させる装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】本発明によるpHを変化させる装置の第2実施形態を示す図である。
【図3】第1実施形態のpHを変化させる装置を実装する、浸透アクチュエータの形態における2つの動作ステップを示す図である。
【図4】本発明によるpHを変化させる第1実施形態の装置を実装する、浸透圧モータの第1形態における4つの動作ステップを示す図である。
【図5】本発明によるpHを変化させる第2実施形態の装置を実装する、浸透圧モータの第2形態における2つの動作ステップを示す図である。
【図6】浸透圧モータの第2形態の変化形態における2つの動作ステップを示す図である。
【図7】本発明によるpHを変化させる第1実施形態の装置を実装する浄化装置における2つの動作ステップを示す図である。
【図8】本発明によるpHを変化させる第1実施形態の装置を実装する、浸透圧モータの第3形態における4つの動作ステップを示す図である。
【図9】本発明によるpHを変化させる第1実施形態の装置を実装する、電気セルの第1形態における2つの動作ステップを示す図である。
【図10】本発明によるpHを変化させる第1実施形態の装置を実装する、電気セルの第2形態を示す図である。
【図11】本発明による処理方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
異なる図面においても同じ要素には同じ参照符号を使用する。明確化のため、本発明を理解するために役に立つ要素のみを図示して以下に説明を行う。
【0027】
本発明は、pHの修正が望まれる溶液での化学反応の第1系列及び第2系列の促進を提供し、化学反応の第1系列は溶液のpHを減少させ、化学反応の第2系列は、溶液のpHを増加させる。
【0028】
H+イオンの形成を導く総ての反応は、pHを減少させ、第1系列の反応に適している。特に、グルコン酸(H+イオンを放出しやすい)及び過酸化水素をもたらす、D−グルコース又はグルコースのD立体異性体の、グルコース・オキシダーゼ酵素による酸化がその様な例である。過酸化水素は、さらに、H+イオンを提供するために、カタラーゼ酵素又はペルオキシダーゼ酵素により分解可能である。実行される反応を以下に示す。
【0029】
【化1】
【0030】
反応の第1系列は、L−グルコース又はグルコースのL立体異性体の、L−フコース・デヒドロゲナーゼ酵素による酸化であっても良い。実行される反応を以下に示す。
【0031】
【化2】
【0032】
ここで、化合物NADPは、ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチドリン酸であり、NADPHは、還元された同じ化合物である。
【0033】
溶液を塩基性化する本発明で実行される反応の第2系列は、ウレアーゼ酵素による尿素の分解とすることができ、アンモニウム・イオンNH4+と、水酸基イオンOH−を形成し、よって、pHが増加する。実行される反応を以下に示す。
【0034】
【化3】
【0035】
反応(1)及び(3)は、血糖中のグルコースであるD−グルコースと尿素を通常含んでいる生体液に対して直接実行可能であるという利点を有している。反応(2)は、通常、NADP化合物を含んでいる生体液に対して容易に実行可能である。L−グルコースを、単に、生体液に加えることのみが必要である。
【0036】
図1は、本発明によるpHを変化させる装置10の第1実施形態を示している。装置10は、例えば生体液といった、修正が望まれるpHである溶液内に配置される。装置10は、堅固な筐体12と、バルブ14とを有し、バルブ14が開けられたとき、筐体12の内容物は、外部の溶液と通じ合うことになる。装置10は、図示しない、所定範囲内のpHを有する溶液を必要とする操作を行うシステムに結合できる。このため、装置10は、バルブ16を有し、バルブ16が開けられたとき、筐体12の内容物は、供給システムに通ずることになる。装置10は、バルブ14と筐体12の間に配置された膜18と、バルブ16と筐体12の間に配置された膜20を有している。膜18及び20は、通常、ダルトンで表現される、所定のカットオフ閾値を有し、カットオフ閾値より実質的に小さい分子量を有する粒子を通過させる。
【0037】
筐体12に含まれる溶液の酸性化が望まれるとき、例えば、反応(1)によるグルコース酸化を筐体12内において促進することができる。このため、装置10は、例えば、生体液といったD−グルコースを含む溶液内に置かれ、グルコース・オキシダーゼ酵素と、カタラーゼ又はペルオキシダーゼ酵素が、筐体12内に置かれる。膜18及び20は、グルコース・オキシダーゼ酵素と、カタラーゼ又はペルオキシダーゼ酵素が筐体12内に留まる様な、カットオフ閾値を有している。さらに、膜18は、グルコースを通過させるために十分高いカットオフ閾値を有している。例として、膜18及び20は、数百ダルトンのオーダのカットオフ閾値を有している。
【0038】
本発明による装置10の第1動作例として、pHを減少させる動作について説明する。まず、バルブ16は閉じられ、バルブ14は開けられており、D−グルコースが筐体12内に拡散可能となっている。その後、バルブ14は閉じられる。筐体12に含まれるD−グルコースは、H+イオン及びグルコン酸を供給するため、既に説明した反応(1)に従い酸化される。よって、筐体12に含まれる溶液のpHは減少する。得られた酸性溶液は、バルブ16を開けることにより、筐体12に接続されているシステムにより利用可能である。出願人は、人体の平均的なグルコース濃度に対応する、5.5mmol/lの初期濃度のD−グルコースと、初期pHが7である1mg.ml−1の濃度のグルコース・オキシダーゼ酵素、つまり、47ユニットの水溶液で、筐体12において、1時間後にpH5、3時間後にpH3.5を得た。
【0039】
グルコース酸化により得られるグルコン酸は、溶解した物質と共に、塩又はグルコン酸塩を形成しがちである。装置10に接続するシステムに浸透するグルコン酸塩を望まない場合、バルブ16が開けられたとしても、筐体12内にグルコン酸塩を留まらせるために十分低いカットオフ閾値を持つように膜20は選択される。膜20のカットオフ閾値は、100ダルトンのオーダである。バルブ14を次に開けたとき、グルコン酸塩が、筐体12の外に拡散する。装置10を人体内に置く医療への応用の場合、D−グルコースの酸化の結果生じるフリー・ラジカルの人体への放出を防ぐために、カタラーゼ又はペルオキシダーゼ酵素を膜18に配置することが望まれる。さらに、グルコン酸塩は、腎臓により自然と排出されるので、グルコン酸塩の人体への放出は危険ではない。
【0040】
溶液の酸性化操作のために、膜18及び20により保持されたL−フコース・デヒドロゲナーゼ酵素が筐体12内に配置される。装置10は、L−グルコースを含む溶液内に置かれ、既に説明したのと同じ操作が行われる。人間の生体液は、本来、L−グルコースを含んではいない。装置10が人体内に置かれる場合、例えば、静脈注射といった、L−グルコースを生体液に追加するステップが設けられる。
【0041】
本発明の第1実施形態による装置10は、pHを増加させるためにも使用できる。装置10は、例えば、生体液といった尿素を含む溶液内に配置され、反応(3)による尿素のアンモニア及び炭酸への分解が筐体12内で促進される。アンモニアは、水と反応してアンモニウム・イオンを生成するので、pHが増加する。このため、ウレアーゼ酵素が筐体12内に置かれる。この場合、膜18及び20は、筐体12内にウレアーゼ酵素を留まらせるために十分低いカットオフ閾値を持つ。さらに、膜18は、60g/molの分子量を有する尿素を通過させるために、十分高いカットオフ閾値を持つ。例えば、膜18は、数百ダルトンのカットオフ閾値を持つ。装置10の操作サイクルは、既に説明したものと同じである。出願人は、人体の平均的な尿素の濃度である3mmol/lで、初期pHが7の溶液で、筐体12内において、2時間以内にpH8.2を、1夜後にpH9.2を得た。本発明による装置10が人体内に置かれる医療への応用の場合、反応(3)により生じる二酸化炭素は、自然と吐き出される。さらに、反応(3)により生じるアンモニウム・イオンは、肝臓で代謝される。
【0042】
図2は、本発明によるpHを変化させる装置22の第2実施形態を示している。装置22は、例えば、透析法で利用されるタイプの半透過壁を有する中空ファイバの束26で形成される筐体24を有している。例えば、各ファイバの直径は、200μmのオーダである。ファイバ束26の第1の端部は、例えば、接着領域30を通して、第1の接続リング28により維持されている。リング28は、プラグ34で閉じられる開口32を有している。ファイバ束26の第2の端部は、接着領域38を通して、第2の接続リング36により維持されている。第2のリング36は、プラグ42で閉じられる開口40を有している。
【0043】
装置22は、pHを修正することが望まれる溶液内に浸されることを目的としている。ファイバの直径及び長さは、装置22が浸される溶液とファイバ束26との間の所望の交換面領域に合わせられる。pHを減少させたい場合、グルコース・オキシダーゼと、カタラーゼ又はペルオキシダーゼ酵素が、開口32、40経由でファイバ26内に置かれ、その後、開口32、40は、プラグ34、42により閉じられる。ファイバ26の壁は、D−グルコース及びグルコン酸塩を通過させるが、グルコース・オキシダーゼ酵素と、カタラーゼ又はペルオキシダーゼ酵素を通過させず、ファイバ束26内に留まらせるカットオフ閾値を有している。pHを増加させたい場合、ウレアーゼ酵素が、開口32、40経由でファイバ26内に置かれ、その後、開口32、40は、プラグ34、42により閉じられる。ファイバ26の壁は、尿素を通過させるが、ウレアーゼ酵素を通過させず、ファイバ束26内に留まらせるカットオフ閾値を有している。
【0044】
生体液を酸性にするために、装置22が人体内に埋め込まれるとき、グルコース・オキシダーゼ酵素はファイバ束26内で自由に移動可能とする一方、カタラーゼ又はペルオキシダーゼ酵素は、好ましくは、ファイバ26の内部の壁に固定される。その様な配置は、D−グルコース・オキシダーゼ酵素によるグルコースの分解により生成されたフリー・ラジカルが、ファイバ26の壁を通過して生体液に拡散することを防止することができる。
【0045】
装置10又は装置22が、D−グルコースの酸化を実行し、溶液を酸性にするために利用される場合、溶液に含まれるD−グルコースの部分の抑圧が同時に可能となる。実際、筐体12又はファイバ束26内で実行される反応(反応(1))は、グルコースのグルコン酸への変換を生じ、グルコン酸は、グルコン酸塩を提供する。その様な装置10(又は22)は、通常、I型又はII型糖尿病や、肥満に通常関連する過度のD−グルコースを抑えるために、人体内に埋め込むことができる。装置10(又は22)を埋め込むための幾つかの位置が想定できる。例えば、装置10(又は22)は、腹膜又は脂肪細胞周囲の空間に置くことができる。腹膜に近い埋め込みは、豊富な脈管化や、高いD−グルコース濃度という利点がある。脂肪質空間への埋め込みは、炎症反応の危険を減少させる。装置10(又は22)は、医療トロカールで実行される穿刺による、筋肉への埋め込みであっても良い。
【0046】
人体に埋め込まれると直ぐに、本発明による装置22は、日々、ある量のD−グルコースをグルコン酸塩に変換し、グルコン酸塩は、腎臓により自然と除去される。装置10は、バルブ14、16を制御することにより、グルコン酸塩に変換されるD−グルコースの量を制御することが可能である。必要に応じ、筐体12(ファイバ26)内に含まれる酵素の量を更新するために、バルブ14、16(開口32、40)経由で、筐体12(ファイバ26)の中身にアクセスすることが可能である。化学療法に通常使用される埋め込み可能なチャンバは、この更新を実行するために、非常に簡単な経皮的穿刺が可能である。これは、低い酵素活性を克服することを可能にする。さらに、筐体12(ファイバ26)の中身へのアクセスは、消費されるグルコースの量を制御するために酵素の数を調整することも可能にする。
【0047】
図3A及び3Bは、本発明によるpHを変化させる装置10の第1実施形態を実装する、浸透アクチュエータ50の形態を示している。浸透アクチュエータ50は、溶剤で満たされた、水漏れしない変形可能なエンベロープ52を含み、エンベロープ52は、バルブ16で装置10に接続されている。エンベロープ52は、さらに、円筒体56に膜54経由で接続され、円筒体56の中ではピストン58がスライド可能となっている。ピストン58及び円筒体56が、拡張チャンバ60を構成している。エンベロープ52は、固定したハウジング64内に配置され、ハウジング64は、それがきつい場合、エンベロープ52とハウジング64との間に設置されるかもしれないバキュームにより、エンベロープ52の変形が邪魔されないように穴を開けても良い。
【0048】
拡張チャンバ60は、溶剤内で溶解し、浸透圧的に活性であり、エンベロープ52内部と浸透圧的にバランス可能な濃度で、物質Aを含む。膜54は、物質Aをブロックするために、十分低いカットオフ閾値を有する。例えば、物質Aは、デキストランである。pHを変化させる装置10は、既に説明した、含んでいる溶液を塩基性化することが可能なタイプである。エンベロープ52は、浸透圧的に活性な物資Zを含んでいる。膜54は、物質Zをブロックするために、十分低いカットオフ閾値を有している。例えば、物質Zは、酸性のpHで水に溶解し、塩基性のpHで水に溶解しないキトサンである。この様に、溶液のpHの変動は、溶解した分子の数を変動させ、それに応じて、溶液のオスモル濃度が変動する。
【0049】
本発明による浸透アクチュエータ50の動作について説明する。これは、単一ストローク・アクチュエータである。
【0050】
図3Aは、アクチュエータ動作前の、浸透アクチュエータ50の状態を示している。バルブ16は閉じられている。エンベロープ52は最大容量である一方、拡張チャンバ60は最小容量である。物質A及びZの濃度は、拡張チャンバ60内とエンベロープ52内の浸透圧がバランスする様にまず選択され、ピストン58はアイドル状態である。アクチュエータが動作する前に、pHを変化させる装置10が既に述べた様に制御され、その結果、筐体12は塩基性水溶液を含んでいる。
【0051】
浸透アクチュエータ50の動作が望まれると、バルブ16が開けられる。筐体12内に含まれているOH−イオンがエンベロープ52内に拡散し、エンベロープ52に含まれる溶剤のpHが増加する。エンベロープ52内のpHが所定値まで増加したとき、バルブ16が閉じられる。物質Zの沈殿が促進される。エンベロープ52内の浸透圧が、変化しない拡張チャンバ60内の浸透圧に対して減少する。エンベロープ52から拡張チャンバ60への膜54を通過しての溶剤の移動がこの様に生じ、これにより、ピストン58の移動が生じる。ピストン58は、上昇状態になる。
【0052】
図3Bは、ピストン58の上昇が終了した時点での、浸透アクチュエータ50の状態を示している。拡張チャンバ60は最大容量である。ピストン58は、機械的な力の伝達が望まれる外部要素に接続できる。
【0053】
アクチュエータ50の上述した例において、装置10は、含んでいる溶液を塩基性化するタイプであった。しかしながら、アクチュエータ50は、含んでいる溶液を酸性化できる装置10を実装することもできる。この場合、図3Bに示す様に、初期状態において、拡張チャンバ60は最大容量であり、エンベロープ52は最小容量である。バルブ16が開けられたとき、エンベロープ52内の溶剤のpHと拡張チャンバ60が減少し、エンベロープ52内に存在する物質Zの可溶化が進行する。エンベロープ52内の浸透圧が、変化しない拡張チャンバ内の浸透圧に対して増加する。この様に、拡張チャンバ60からエンベロープ52への膜54を通過しての溶剤の移動が生じ、吸引力により、ピストン58の移動が生じる。ピストン58は、図3Aに示す様に、拡張チャンバ60が最小容量となるまで下降する。
【0054】
アクチュエータ50の応用例は、人体の空洞(例えば動脈)内にスライドさせ、それを開き続けさせるため、小さなばね又はステントに対応するエンドプロテーゼに関するジョイントの膨張である。実際、ステントを含む空洞の不要な変形に対し、ステント端部にて緊張を維持するために、ジョイントを、ステントの端部に設けることができ、ステントを実装した後に、アクチュエータ50により膨張させることができる。
【0055】
図4Aから4Dは、本発明による浸透圧モータ70の第1形態を示している。浸透圧モータ70は、図3A及び3Bに示すアクチュエータ50のある要素を含み、同じ参照符号が使用されている。リターン手段72は、例えば、ばねであり、ピストン58に、アイドル位置に復帰させることを目的としたけん引力を及ぼす。モータ70は、符号10及び10´で示す、pHを変化させる2つの装置を含んでいる。以下の説明において、ダッシュ付きの参照符号は、pHを変化させる装置10の要素と区別するために、pHを変化させる装置10´の要素に使用する。エンベロープ52は、バルブ16´で装置10´に接続されている。装置10は、含む溶液のpHを減少させることが可能なタイプであり、装置10´は、含む溶液のpHを増加させることが可能なタイプである。
【0056】
エンベロープ52は、既に説明した様に、H+イオンの存在で可溶化し易い物質Zを含み、OH−イオンの存在により、物質Zの沈殿による逆反応が生じ易い。浸透アクチュエータ50で既に説明した様に、拡張チャンバ60は、浸透圧的に活性であり、溶剤内で溶解する物質Aを含む。膜54は、物質A及びZの通過を防ぐために、十分低いカットオフ閾値を有している。
【0057】
本発明によるモータ70の動作サイクルを以下に説明する。
【0058】
図4Aは、サイクルの開始時のモータ70を示している。エンベロープ52は最大容量であり、チャンバ60は最小容量である。物質A及びZの初期濃度は、拡張チャンバ60及びエンベロープ52内の浸透圧がバランスする様に選択され、ピストン58はアイドル状態である。現在説明しているバルブ16及び16´を開けるサイクルの間、装置10、10´は、筐体12、12´が所望のpHとなる様に制御される。
【0059】
バルブ16が閉じられ、バルブ16´が開けられる。OH−イオンがエンベロープ52内に広まり、エンベロープ52及び拡張チャンバ60に含まれる溶剤のpHが増加する。エンベロープ52のpHが所望の値まで増加したとき、バルブ16´が閉じられる。物質Zの沈殿が促進される。エンベロープ52内の浸透圧が、変化のない拡張チャンバ60内の浸透圧に対して減少する。この様に、エンベロープ52から拡張チャンバ60への、膜54を通過しての溶剤の移動が生じ、これにより、ピストン58の移動が生ずる。ピストン58は、上昇状態となる。
【0060】
図4Bは、ピストン58の上昇が終了した時点でのモータ70を示している。チャンバ60は、よって、最大容量である。
【0061】
図4Cにおいて、筐体12の内容物とエンベロープ52の内容物が通じるように、バルブ16が開けられている。H+イオンが、エンベロープ52内に広まり、エンベロープ52及び拡張チャンバ60に含まれる溶剤のpHが減少する。pHが十分に酸性となったときに、バルブ16が閉じられる。物質Zの可溶化が促進され、よって、エンベロープ52内の、溶解した浸透圧的に活性である粒子の数が増加する。エンベロープ52内の浸透圧が増加するにつれ、拡張チャンバ60からエンベロープ52への、膜54を通過しての新たな溶剤の移動が生じる。ばね72の作用は、拡張チャンバ60からの溶剤の排出を促進することである。しかしながら、ばね72は省略でき、この場合、ピストン58は、吸引力のみで移動する。ピストン58は、下降状態となる。
【0062】
図4Dは、ピストン58の下降が終了した時点でのモータ70を示し、1サイクルの終わりである。エンベロープ52及び拡張チャンバ60内の物質Z及びAのそれぞれの濃度は、サイクル開始時の濃度と実質的に同一である。
【0063】
図5A及び5Bは、本発明によるpHを変化させる第2実施形態の装置22を実装する浸透圧モータ75の第2形態と、浸透圧モータ70のある要素を示している。モータ75は、符号22及び22´で示す、pHを変化させる2つの装置を含んでいる。以下の記述において、ダッシュ付きの参照符号は、pHを変化させる装置22の要素と区別するために、pHを変化させる装置22´の要素に使用する。pHを変化させる各装置22、22´は、プラグ34の代わりの膜54、54´で拡張チャンバ60と通じている。さらに、pHを変化させる装置22は堅固な筐体67に含まれており、筐体67は接続リング28及び36と接続し、pHを変化させる装置22´は堅固な筐体67´に含まれており、筐体67´は接続リング28´及び36´と接続している。バルブ69、69´が筐体67、67´に設けられている。筐体67、67´は、半透過性のエンベロープ71に含まれ、エンベロープ71は、円筒体56と、pHを変化させる装置22、22´の接続リング36、36´に接続されている。円筒体56は排出バルブ73を有し、排出バルブ73は、膜76経由で、拡張チャンバをモータ75の外部に接続している。
【0064】
例えば、装置22´は、既に説明した反応(1)により、溶液のpHを減少させることが可能なタイプであり、ファイバ26´にはグルコース・オキシダーゼ酵素が配置されている。装置22は、既に説明した反応(3)により、溶液のpHを増加させることが可能なタイプであり、ファイバ26にはウレアーゼ酵素が配置されている。
【0065】
既に述べた様な化合物Zは、酸性媒体内で可溶化し易く、エンベロープ71内に配置される。ファイバ26のカットオフ閾値は、物質A及びZとウレアーゼ酵素の通過を防ぐことを可能にする値である。膜54のカットオフ閾値は、ウレアーゼ酵素の通過を防ぐが、物質Aは通過させる値である。さらに、ファイバ26´のカットオフ閾値は、物質A及びZとグルコース・オキシダーゼ酵素の通過を防ぐことを可能にする値である。膜54´のカットオフ閾値は、グルコース・オキシダーゼ酵素の通過を防ぐが、物質Aは通過させる値である。エンベロープ71のカットオフ閾値は、物質Zの通過を防ぐことを可能にする値である。膜76のカットオフ閾値は、物質Aの通過を防ぐことを可能にする値である。
【0066】
通常の動作において、モータ75は、グルコース及び尿素を含む溶液中に置かれる。ファイバ26´のカットオフ閾値は、グルコースの通過を可能とするために十分高い値であり、ファイバ26のカットオフ閾値は、尿素の通過を可能とするために十分高い値である。さらに、エンベロープ71のカットオフ閾値は、溶剤、グルコース、尿素の通過を可能とするために十分高い値である。物質A及びZの初期濃度は、拡張チャンバ60内とエンベロープ71内の浸透圧がバランスする様に選択され、ピストン58はアイドルである。
【0067】
モータ75の動作サイクルについて以下に説明する。
【0068】
図5Aは、サイクル開始時点でのモータ75を示している。ピストン58はアイドル位置であり、拡張チャンバ60の容量は最小である。排出バルブ73は閉じられており、バルブ69´は閉じられており、バルブ69は開けられている。モータ75が尿素を含む溶液内に置かれると直ぐに、尿素はエンベロープ71を通過し、ファイバ26内に広がる。尿素の分解はOH−イオンを供給し、OH−イオンは、エンベロープ71内に広がる。エンベロープ71内のpHの増加は、物質Zの沈殿を促進し、エンベロープ71内の浸透圧を低下させる。浸透圧の変動が、エンベロープ71からファイバ26を経由して拡張チャンバ60に至る液体の流れを作り出し、これにより、ピストン58が移動する。ピストン58の移動は、ばね72を伸ばし、これにより機械的な力の保存が可能になる。
【0069】
図5Bにおいて、拡張チャンバ60は、最大限に拡張している。バルブ69は、その後、閉じられ、バルブ69´が開けられる。さらに、排出バルブ73が開けられる。拡張チャンバ60内の圧力が大気圧と等しくなる。ばね72が、ピストン58をアイドル位置に引き戻し、これにより、排出バルブ73経由で、拡張チャンバ60から周囲に溶剤が出される。ばね72に保存されていた機械的力がこの様に回収される。さらに、バルブ69´が開けられ、グルコースがファイバ26´に浸透する。グルコースの分解はH+イオンを供給し、H+イオンはエンベロープ71内に広がる。エンベロープ71内のpHの減少は、物質Zの可溶化を促進し、物質Zの濃度を、サイクル開示時点のものに戻すことを可能にする。バルブ73は、最後に閉じられ、モータのストロークが終了する。
【0070】
本形態において、拡張チャンバ60は、内部でピストン58がスライドする円筒体56により画定される。本発明によるモータ75の利用形態により、拡張チャンバ60は異なるものとすることができる。
【0071】
図6A及び6Bは、前の形態におけるモータ75の拡張チャンバ60の、他の構造を実装する浸透圧モータ75´を示している。この変形例によると、拡張チャンバ60は、エア・チューブの様に、内部エンベロープ77と外部エンベロープ78との間で画定される空間に相当する。内部エンベロープ77は、変形及び拡張可能であり、変形体79を取り囲んでいる。外部エンベロープ78は、柔らかく、広げられないものである。外部エンベロープ78は、内部エンベロープ77に近く、円筒体56に接続されている。例えば、本発明による浸透圧モータ75´の医療への応用において、変形体79は、胃、尿道、肛門、心臓の様な、人体の空洞器官であり、エンベロープ77、78は、空洞器官を取り囲むビード形状の拡張チャンバ60である。浸透圧モータは、(空洞器官が尿道又は肛門であるとき)人工的括約筋、あるいは、(空洞器官が胃であるとき)調整可能な胃バンドの動力として振る舞う。
【0072】
本変形例における、モータ75´の動作サイクルについて以下に説明する。
【0073】
図6Aは、サイクル開始時点でのモータ75´を示している。拡張チャンバ60の容量は最小であり、変形体79は最大限に拡張し、尿道若しくは肛門管、又は、胃が最大に開いている状態や、心臓拡張期に対応する。排出バルブ73は閉じられており、バルブ69´は閉じられており、バルブ69は開けられている。ウレアーゼ酵素が尿素の分解を促進し、エンベロープ71内のpHが増加し、物質Zの沈殿が促進される。浸透作用が、拡張チャンバ60への溶剤の導入の原因となる。内部エンベロープ77は、変形体79を変形し、圧縮する。
【0074】
図6Bにおいて、変形体79は、最大限に圧縮され、これは、閉じた尿道若しくは肛門管、又は、最小になっている胃、あるいは、収縮している心臓に対応している。その後、バルブ69´が開けられ、バルブ69が閉じられる。排出バルブ73を開けることで、溶剤が拡張チャンバ60から排出され、これにより、変形体79の拡張が可能になり、サイクルが終了する。
【0075】
本発明の他の変形例によると、拡張チャンバは、ファイバを囲む、追加の、弾性的なエンベロープで形成され、それは、例えば、螺旋状に配置され、円筒体56の端部で接続される。溶剤が、ファイバに浸透したとき、ファイバは、まっすぐになり、弾性的なエンベロープを変形させる。バルブ73を開けることで、ファイバ内の圧力が減少し、追加のエンベロープが初期形状に回復する。
【0076】
本発明の他の変形例によると、pHを変化させる装置は、柔らかい管により変形可能なチャンバに接続可能である。これは、pHを変化させる装置に含まれる酵素により、利用している物質(例えば、グルコース又は尿素)が溶解される溶剤の供給に適した環境に、pHを変化させる装置を有利に配置することを可能にし、拡張チャンバを、機械的な力の利用を望む場所に設置することを可能にする。医療への応用において、pHを変化させる装置は、脂肪組織又は血管網に配置される。後者の場合、ファイバが中空管を形成するために配列され、血液といった流体の流れを可能にする円筒空間の中心に置かれる。接続リングは円環状であり、血管の壁に置かれる。円環接続リングの1つは、血管に穴を開ける柔らかい導管により拡張チャンバに通じている。
【0077】
図7A及び7Bは、本発明の第1実施形態によるpHを変化させる装置10の変形例を示している。この変形例によると、筐体12内でスライドできるピストン81が筐体12内に設けられている。ピストン81は、例えば、図4Aから4Dを使用して説明した浸透圧モータ70といった、モータ(M)82により駆動される。参照符号84は、ピストン81とモータ82の接続要素を示し、例えば、リターン手段である。ピストン81及び筐体12は、可変容量のチャンバ86を形成する。ドレイン88は、バルブ16に接続される。
【0078】
チャンバ86での特別な反応は、尿素の分解によるpHの増加である(反応(3))。ウレアーゼ酵素が、チャンバ86に配置される。膜18、20は、ウレアーゼ酵素をチャンバ86に留まらせることを可能にするカットオフ閾値を有している。装置80は、pH増加と共に、装置80がその中に配置される溶液から、過度の尿素を取り除くためにも利用される。
【0079】
本発明による装置80の動作サイクルを以下に説明する。
【0080】
図7Aは、サイクル開始時点での装置80を示している。チャンバ86の容量は最大であり、バルブ14は開けられており、バルブ16は閉じられている。チャンバ86に含まれる溶液は、装置80がその中に配置される溶液に実質的に対応している。バルブ14が、その後、閉じられる。チャンバ86内で尿素の分解反応が生じ、よって、チャンバ86に含まれる溶液のpHが増加する。モータ82が、その後、ピストン81を移動させるために作動され、よって、チャンバ86の容量が減少する。ピストン81の移動の間、バルブ16が開けられ、これにより、チャンバ86内に含まれる溶液が、ダクト88経由で排出される。
【0081】
図7Bは、ピストン81の上昇状態が終了した時点での装置80を示している。チャンバ86は最小容量である。バルブ16は、その後、閉じられる。その後、ピストン81を移動させるためにモータ82が作動され、これにより、チャンバ86の容量が増加する。ピストン81の移動の間、バルブ14は開けられ、装置80がその中に配置されている溶液の、チャンバ86への吸引力が生じる。チャンバ86が最大容量になったとき、サイクルが終了する。
【0082】
この様な装置80は、過度の尿素を取り除くために、人体に埋め込むことができる。尿素の分解に得られるアンモニウム・イオンは、マグネシウム、カルシウム及びカリウムの様な元素と反応し易く、固形の化合物を形成する。装置80内の外側から生体液への、その様な固形化合物の拒絶反応のために、これは望まれないかもしれない。このため、ドレイン88は、尿素の分解により生じる廃棄物を受け取るのに適した領域、例えば、結腸に接続される。
【0083】
図8Aから8Dは、本発明による浸透圧モータ90の第3形態を示している。浸透圧モータ90は、図4Aから4Dに示す、第1形態の浸透圧モータ70のある要素を含み、それらには、同じ参照符号を使用する。
【0084】
浸透圧モータ70と比較して、エンベロープ52及び膜54は、もはや存在しない。ハウジング64は、pHにより体積を変化させることができる高分子ゲル92を含んでいる。例えば、それは、Y.Osada(Polymer Gels and Networks, Yoshihito Osada and Alexi R. Khokhlov, New York, Marcel Dekker Inc., 2001, 400 p.)に記載されている、pHの増加により体積が増加するといった、pHにより可逆な高分子ゲルである。堅固なエンベロープ94は、ハウジング92内に配置され、拡張チャンバ60と通じている。エンベロープ94と拡張チャンバ60は、例えば、水溶液といった溶剤で満たされている。
【0085】
モータ90の動作サイクルについて以下に説明する。
【0086】
図8Aは、サイクルの開始時のモータ90を示している。ゲル92は最小体積である。エンベロープ94は最大容量であり、チャンバ60は最小容量である。現在説明しているバルブ16及び16´を開けるサイクルと並行して、装置10、10´は、筐体12、12´内の溶液が所望のpHとなる様に制御される。
【0087】
バルブ16が閉じられ、バルブ16´が開けられる。OH−イオンがハウジング64に広まり、よって、pHが増加する。ゲル92の体積はその後膨張し、エンベロープ94を圧縮する。エンベロープ94のpHが所望の値まで増加したとき、バルブ16´が閉じられる。エンベロープ94の容量減少は、エンベロープ94から拡張チャンバ60への溶剤の移動を生じさせ、これにより、ピストン58が移動する。ピストン58は、上昇状態となる。
【0088】
図8Bは、ピストン58の上昇が終了した時点でのモータ90を示している。チャンバ60は、よって、最大容量である。
【0089】
図8Cにおいて、筐体12の内容物とハウジング64の内容物が通じるように、バルブ16が開けられている。H+イオンが、ハウジング64内に広まり、ハウジング64内のpHが減少する。pHが十分に酸性となったときに、バルブ16が閉じられる。その後、ゲル92の体積減少が促進され、これにより、エンベロープ94の容量が増加する。拡張チャンバ60からエンベロープ94への、新たな溶剤の移動が生じる。ばね72の作用により、拡張チャンバ60からの溶剤の排出が促進される。しかしながら、ばね72は省略でき、この場合、ピストン58は吸引力のみで移動する。ピストン58は、下降状態となる。
【0090】
図8Dは、ピストン58の下降が終了した時点でのモータ90を示し、1サイクルの終わりである。
【0091】
pHにより体積が変化するゲル92の利用は、単一ストローク・アクチュエータを形成するために実装できる。例えば、モータ90と比較し、装置10´のみが存在する。アクチュエータの動作は、既に説明した、図8A及び8Bに関するモータ90のものと同一である。他の例によると、モータ90と比較して、装置10のみが存在する。アクチュエータの動作は、既に説明した、図8C及び8Dに関するモータ90のものと同一である。
【0092】
既に説明したアクチュエータと、浸透圧モータ70、90の変形例によると、膜20、20´及び54は、筐体12、12´の内容物とハウジング64の内容物、あるいは、エンベロープ52の内容物と拡張チャンバ60の内容物との間の交換表面領域の増加が望まれるのであれば、ファイバ束又は同様のシステムに置換できる。
【0093】
図9A及び9Bは、本発明によるpHを変化させる第1実施形態の装置を実装するセル100の第1形態を示している。セル100は、生体液内で動作するためのものである。セル100は、堅固な筐体102を含み、筐体102は、互いに通じ合う2つの領域104、106を有している。バルブ108が開けられたとき、領域104側において、筐体102内の内容物は外部溶液と通じ合う。バルブ110が開けられたとき、領域106側において、筐体102内の内容物は外部溶液と通じ合う。セル100は、バルブ108と筐体102の間に配置された膜112と、バルブ110と筐体102の間に配置された膜114とを含んでいる。
【0094】
セル100は、領域104に配置されたpHを変化させる第1の装置10を含み、第1の装置10は、図1に示すものに対してバルブ14及び16が同化し、膜18、20が同化している。さらに、セル100は、領域106に配置された、pHを変化させる第2の装置を含んでいる。以下の説明において、ダッシュ付きの参照符号は、pHを変化させる第1の装置10の要素と区別するために、pHを変化させる装置の要素に使用する。装置10及び10´は、含む溶液のpHを減少させることが可能なタイプである。例えば、装置10、10´は、既に説明した反応(1)により、筐体12、12´に含まれる溶液の酸性化が可能なものである。
【0095】
導体素子120は、セル100により電力が加えられることを意図した負荷C経由で、筐体102の領域104と、筐体102の領域106を接続している。導体素子120は、電極122まで続き、電極122は、例えば、水酸化鉄Fe(OH)3で生成されて筐体102の領域104にあり、筐体102の領域106には水酸化鉄電極124がある。
【0096】
セル100は、例えば、生体液といったD−グルコースを含み、実質的に中性、あるいは、少しだけ酸性又は塩基性のpHの溶液内に置かれる。膜112、114は、D−グルコース及びグルコン酸塩を通過させることができる。しかしながら、膜112、114は、正イオンを通過させない。このため、膜112、114は、正に帯電されるかもしれない。正に帯電した膜は、例えば、ASTOM社による技術により得ることができる。膜112、114は、この様に、水酸基イオンOH−や、重炭酸塩イオンHCO3−の様な、小さいサイズの負イオンを通過させる。
【0097】
変形例によると、膜20、20´、112及び114は、筐体12、12´の内容物とハウジング102の内容物、あるいは、ハウジング102の内容物と周囲との間の交換表面領域の増加が望まれるのであれば、ファイバ束又は類似システムに置換できる。さらに、バルブ108と同じ様に制御される幾つかのバルブ(及び対応する膜)を、領域104においてハウジング102に分散配置できる。同様に、バルブ110と同じ様に制御される幾つかのバルブ(及び対応する膜)を、領域106においてハウジング102に分散配置できる。さらに、バルブ14と同じ様に制御される幾つかのバルブ(及び対応する膜)を、装置10の筐体12に分散配置できる。同様に、バルブ14´と同じ様に制御される幾つかのバルブ(及び対応する膜)を、装置10´の筐体12´に分散配置できる。
【0098】
図9Aは、セル100の第1動作段階を示している。バルブ108は開けられ、バルブ110は閉じられている。さらに、バルブ14は閉じられ、バルブ14´は開けられている。この様に、D−グルコースが、装置10´の筐体12´内に広がる。筐体12´内で既に説明した反応(1)が生じてH+イオンが放出され、装置10´の外側である筐体102の領域106、特に、電極124の周囲に広がる。セル動作は、多かれ少なかれpHにより促進される、酸化還元反応に基づいている。より具体的には、第1動作段階において、電極124は陰極として振る舞う。陰極124におけるH+イオンの存在は、以下の還元反応を促進する。
【0099】
【化4】
【0100】
バルブ14が閉じられているので、装置10は、筐体102の領域104にH+イオンを放出しない。さらに、バルブ110が閉じられ、バルブ108が開けられているので、筐体102の領域104と領域106間にはpHの勾配が形成され、領域104のpHが、領域106より高くなる。実際、例えば、領域104に伝播するH+イオンは、生体液に存在する水酸基イオンOH−と反応しがちであり、水を形成するために、あるいは、重炭酸塩イオンHCO3−と反応して水及び二酸化炭素を生成するために、膜112を通過する。
【0101】
陰極124でのFe2+イオンは、筐体102に閉じ込められ、陽極として振る舞う電極122に移動する。バルブ108経由での外部との導通が、pHを中性近くに留まらせることを可能にし、陽極122において、以下の酸化反応が生じる。
【0102】
【化5】
【0103】
導体素子120を経由して、電子は、陽極122から陰極124に移動し、これにより、負荷Cに電力が供給される。
【0104】
この様に、反応(4)は、陰極124の水酸化鉄Fe(OH)3を消費する。セル100を長期間動作させるために、セル100の極性を規則的に反転させることが有利である。
【0105】
図9Bは、セル100の第2動作段階を示している。バルブ108は閉じられ、バルブ110は開けられている。さらに、バルブ14は開けられ、バルブ14´は閉じられている。筐体12内で既に説明した反応(1)が生じてH+イオンが放出され、装置10の外側である筐体102の領域104、特に、今度は陰極として動作する電極122の周囲に広がる。陰極122におけるH+イオンの存在は、既に述べた還元反応(4)を促進する。
【0106】
バルブ14´が閉じられているので、装置10´は筐体102の領域106にH+イオンを放出しない。さらに、バルブ108が閉じられ、バルブ110が開けられているので、筐体102の領域104と領域106間にはpHの勾配が形成され、領域106のpHが、領域104より高くなる。実際、例えば、領域106に伝播するH+イオンは、生体液に存在する水酸基イオンOH−と反応しがちであり、水を形成するために、あるいは、重炭酸塩イオンHCO3−と反応して水及び二酸化炭素を生成するために、膜114を通過する。
【0107】
陰極122でのFe2+イオンは、筐体102に閉じ込められ、陽極として振る舞う電極124に移動する。よって、既に説明した酸化反応(5)が陽極124で生じる。
【0108】
導体素子120を経由して、陽極124から陰極122に移動する電子が観察でき、これにより、負荷Cに電力が供給される。
【0109】
図9A及び9Bを用いて上述した動作段階は、電極122、124で、水酸化鉄Fe(OH)3のストックを回復できる様に変更できる。
【0110】
図10は、本発明によるpHを変化させる第1実施形態の装置を実装するセル130の第2形態を示している。セル130は、生体液に浸すことなく動作可能である。セル100と比較して、セル130は、例えば、図1を用いて説明した様な、pHを変化させる4つの装置を有している。以下の説明において、添え字“A”、“B”、“C”及び“D”は、pHを変化させる装置10A、10B、10C及び10Dそれぞれに関連する要素を示すために付加される。装置10A、10Bのバルブ16A及び16Bは、筐体102の領域104側であり、装置10C、10Dのバルブ16C及び16Dは、筐体102の領域106側である。
【0111】
装置10A及び10Cは、含む溶液のpHを減少させることができるタイプである。例えば、装置10A及び10Cは、既に説明した反応(1)により、対応する筐体12A、12Cに含まれている溶液を酸性化することができる。装置10B及び10Dは、含む溶液のpHを増加させることができるタイプである。例えば、装置10B、10Dは、既に説明した反応(3)により、対応する筐体12B、12Dに含まれている溶液をアルカリ化することができる。
【0112】
セル130の動作例を以下に説明する。現在説明しているバルブ16A〜16Dを開くサイクルと並行して、装置10A〜10Dは、対応する筐体12A〜12Dに含まれる溶液が所望のpHとなる様に制御される。第1動作段階の間、バルブ16Aは開けられ、バルブ16Bは閉じられ、バルブ16Cは閉じられ、バルブ16Dは開けられる。H+イオンが、その後、装置10Aにより放出され、電極122付近のpHが減少し、OH−イオンが、装置10Dにより放出され、電極124付近のpHが増加する。筐体102の領域104と領域106間にpHの勾配が生じる。電極122におけるH+イオンの存在は、既に述べた還元反応(4)を促進し、電極124におけるOH−イオンの存在は、既に述べた酸化反応(5)を促進する。導体素子120及び電力供給される負荷Cを経由しての、陽極124から陰極122に移動する電子が観察できる。第2動作段階の間、バルブ16Aは閉じられ、バルブ16Bは開けられ、バルブ16Cは開けられ、バルブ16Dは閉じられる。H+イオンが、その後、装置10Cにより放出され、電極124付近のpHが減少し、OH−イオンが、装置10Bにより放出され、電極122付近のpHが増加する。電極124におけるH+イオンの存在は、既に述べた還元反応(4)を促進し、電極122におけるOH−イオンの存在は、既に述べた酸化反応(5)を促進する。導体素子120を経由して、陽極122から陰極124に移動する電子が観察でき、これにより、負荷Cへの電力供給が観察される。
【0113】
既に説明したセルの例において、水酸化鉄の代わりに、pHによる電位を持つ幾つかの種類の電極を使用することができる。酸化還元対となる2つの電極間で交換される電子により生じる電極の電位は、2つ共に溶解性、1つが溶解性であり1つが不溶性、さらに、2つ共に不溶性といった、異なる電極構造を考えることができる。最後の場合、例えば、フェノール及びチオールの圧縮により得られる電気活性な高分子化合物で形成される電極を有利に使用することができる。酸化還元能力を有する高分子化合物の例は、Friedrich Helfferich著“Ion Exchage、12章:Electron Exchangers and Redox Ion Exchangers”、1962 McGraw−Hill Book Company、551頁から568頁に記載されている。
【0114】
図11は、標的酵素療法例のステップを示している。標的酵素療法例は、Sylvia Muro、Edward H.Schuchman、Vladimir R.Muzykantov著、“Lysosomal Enzyme Delivery by ICAM−1−Targeted Nanocarriers Bypassing Glycosylationand Clathrin−Dependent Endocytosis”(Molecular Therapy vol.13、No.1、2006年1月、135頁から140頁)に記載されている。
【0115】
ステップ150において、標的細胞の抗原Aを認識するモノクローナル抗体Bが判定される。例えば、抗原Aは、癌胎児性の抗原又はCEA、前立腺特異抗原(PSA)又は前立腺特異的膜抗原(PSMA)に対応する。PSA抗原に適応する抗体Bは、例えば、Prostascint(Capromab Pendetide)の名前で取引されるCytrogen社により市販されている抗体がある。
【0116】
ステップ152で、モノクローナル抗体Bと酵素Gを結合した錯体Xが形成される。酵素Gは、物質Dを組み入れる反応を促進させることができるものである。錯体Xは、抗体Bと抗原Aの親和性を強く残し、物質Dに対する酵素Gの活動を強く残すものである。物質Dは、例えば、L−グルコースであり、酵素Gは、L−グルコース・オキシダーゼ酵素に相当し、例えば、D−トレオ−アルドース 1−デヒドロゲナーゼである。その様な酵素は、D−グルコースに対して不活性という利点を有している。他の例において、物質Dは、マンニトール(C6H8(OH)6)であり、酵素Gは、マンニトール・オキシダーゼ酵素に相当する。
【0117】
ステップ154で、錯体Xは、患者の体内に注入される。錯体Xの注入は、例えば、静脈注射である。錯体Xは、その後、抗体B経由で抗原Aと結合する。その後、錯体Xは、患者の体内から取り除かれる様に移動することが期待される。
【0118】
ステップ156で、物質Dは、患者の体内に注入される。物質Dの注入は、例えば、静脈注射である。酵素GがL−グルコース・オキシダーゼの場合、L−グルコースが患者の体内に注入される。L−グルコースは、その後、生体内に自由に拡散する。L−グルコースは人体に安全であるので、L−グルコース濃度は高くできる(例えば、1リットル当たり数百万といった、血糖濃度のオーダ)。酵素Gがマンニトール・オキシダーゼの場合、マンニトールのD立体異性体といった、マンニトールが患者の体内に注入される。
【0119】
L−グルコース注入の場合、人体細胞は、L−グルコースを代謝することができないので、錯体Xの酵素Gのみが、既に述べた反応(2)を促進して、L−グルコースからH+イオンを生成し、よって、局所的なpHが減少する。この様な局所的pHの減少は、直接的な治療効果を与え、標的細胞を殺す、あるいは、標的細胞を殺す原因となる炎症反応を生じさせることができる。
【0120】
マンニトール注入の場合、酵素Gは、マンニトールが酸素と反応して、マンノース(C6H7O(OH)5)と過酸化水素(H2O2)を提供する、以下の反応を促進する。
【0121】
【化6】
【0122】
過酸化水素の局所的な生成は、直接的な治療効果を与え、標的細胞を殺す、あるいは、標的細胞を殺す原因となる炎症反応を生じさせることができる。
【0123】
本発明の態様は、この様に、標的細胞の抗原の抗体、及び、第1の物質から標的細胞に対して有毒な第2の物質を生成する反応を促進させることができる酵素を含む錯体を形成するステップと、錯体を患者の体内に注入し、錯体の抗体が標的細胞と結合するステップと、第1の物質を患者の体内に注入し、錯体の酵素が標的細胞において第2の物質の生成を促進するステップとを提供する。
【0124】
実施形態によると、第1の物質はL−グルコースであり、酵素はL−グルコース・オキシダーゼ酵素であり、第2の物質はH+イオンである。
【0125】
実施形態によると、第1の物質はマンニトールであり、酵素はマンニトール・オキシダーゼ酵素であり、第2の物質は過酸化水素である。
【0126】
実施形態によると、抗原は、癌胎児性酵素、前立腺特異抗原、前立腺特異的膜抗原を含むグループ内の抗原である。
【0127】
本発明は、当然、当業者による種々の置換及び修正を持つ。特に、図6A及び6Bを用いて説明した浸透圧モータの拡張チャンバの変形例については、図4Aから4Dを用いて説明した浸透圧モータに適用可能である。
【符号の説明】
【0128】
10、10´、22、22´、80 装置
12、12´、24、67、67´、102 筐体
14、16、16´、69、69´、108、110 バルブ
18、20、54、54´、76、112、114 膜
26、26´ ファイバ束
28、28´、36、36´ 接続リング
30、38 接着領域
32、40 開口
34、42 プラグ
50 浸透アクチュエータ
52、71、77、78、94 エンベロープ
56 円筒体
58、81 ピストン
60、86 チャンバ
64、102 ハウジング
70、75、75´、90 浸透圧モータ
73 排出バルブ
79 変形体
82 モータ
88 ドレイン
92 高分子ゲル
100、130 セル
104、106 領域
120 導体素子
122、124 電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液のpHを変化させる方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の用途においては、溶液のpHを修正可能であることが望まれる。用途例としては、溶液の中で生じ、溶液のpHにより速度が変化する物理化学的現象、例えば、pHが変化する溶液内での物質の可溶化の変動、の調整がある。他の用途例としては、pHにより変化する溶液の化学的又は機械的性質の調整がある。その様な性質の例としては、溶液のオスモル濃度がある。
【0003】
初期溶液のpHは、通常、初期溶液に、酸又は塩基性溶液を混ぜることにより修正できる。混合後、最終的に得られる溶液のpHは、初期溶液のpH、追加した溶液のpH、並びに、初期及び追加溶液の量に依存する値で安定する。
【0004】
しかしながら、ある種の用途において、酸や塩基性溶液を追加することなしに、溶液のpHを修正可能であることが望まれる。例えば、生体液と呼ばれる、人体に含まれる溶液のpHについては、pH修正を実行するための人体への介入を可能な限り制限しながら、修正できることが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、酸や塩基性溶液を追加すること無しに、溶液のpHを変化させる方法及び装置を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の他の目的は、人体に埋め込まれることを意図したpHを変化させる方法と、人体に埋め込まれることを意図したpHを変化させる装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の態様は、物質が溶解している溶剤のpHを変化させる装置であって、溶剤及び物質に対して透過性がある筐体壁経由で溶剤に接触する筐体を含み、前記筐体は、水素又は水酸基イオンを放出するために前記物質を変換できる酵素を含み、前記筐体壁は、前記酵素に対して透過性がない装置を提供する。
【0008】
実施形態によると、前記物質は、D−グルコースであり、前記酵素は、前記D−グルコースの酸化により、水素イオンの放出を生じさせることができるグルコース・オキシダーゼ酵素である。
【0009】
実施形態によると、前記物質は、L−グルコースであり、前記酵素は、前記L−グルコースの酸化により、水素イオンの放出を生じさせることができるL−フコース・デヒドロゲナーゼ酵素である。
【0010】
実施形態によると、前記物質は、尿素であり、前記酵素は、尿素の分解により、水酸基イオンの放出を生じさせることができるウレアーゼ酵素である。
【0011】
本発明の他の態様によると、上述した様なpHを変化させる装置と、pHを変化させる前記装置に接続され、あるいは、pHを変化させる前記装置の筐体に対応する、少なくとも部分的に溶剤を含む第1のチャンバであって、pHを変化させる前記装置が、第1のチャンバ内のpHを、所定の範囲内にすることができる第1のチャンバと、前記第1のチャンバに接続されている変形可能な第2のチャンバとを含み、前記第1のチャンバは、前記第1のチャンバ内のpHが前記所定の範囲内であるとき、前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとの間で溶剤の移動を可能にする手段を含んでいるアクチュエータを提供する。
【0012】
実施形態によると、前記第1のチャンバは溶質を含み、チャンバ壁により前記第2のチャンバから分離され、前記チャンバ壁は、前記溶質に対して非透過性であり、前記溶剤に対して透過性であり、前記溶質の沈殿物の前記溶質への変換、あるいは、前記溶質の沈殿化は、前記第1のチャンバ内のpHが、前記所定の範囲内にあるとき、前記第1のチャンバ内の浸透圧を変化させることで促進され、前記変形可能な第2のチャンバは、浸透作用による前記第1のチャンバと前記第2のチャンバ間における前記溶剤の移動活動のもと、容量を変更可能である。
【0013】
実施形態によると、前記第1のチャンバは溶質を含み、チャンバ壁により前記第2のチャンバから分離され、前記チャンバ壁は、前記溶質に対して非透過性であり、前記溶剤に対して透過性であり、前記溶質の沈殿物の前記溶質への変換は、前記第1のチャンバ内のpHが、前記所定の範囲内にあるとき、前記第1のチャンバ内の浸透圧を変化させることで促進され、前記第1のチャンバは、前記溶剤と接触することを目的とした配置であり、
前記第2のチャンバは、浸透作用により前記第1のチャンバに浸透する前記溶剤の活動のもと、その容量を増加することができる。
【0014】
実施形態によると、前記第1のチャンバは、前記第1のチャンバ内のpHが、前記所定の範囲内にあるときに体積を変更することができる材料を含み、変形可能なエンベロープを取り囲む前記材料は溶剤を含み、前記第2のチャンバに接続されている。
【0015】
本発明の他の態様は、既に記載した様なアクチュエータを含むモータであって、前記第1のチャンバは、少なくとも、部分的に変形可能であり、前記チャンバ壁で前記第2のチャンバに接続され、前記溶質の沈殿物の前記溶質への変換は、pHが、所定の酸性の範囲内にあるとき促進され、前記溶質の沈殿化は、pHが、所定の塩基性の範囲内にあるとき促進され、pHを変化させる前記装置は、前記第1のチャンバ内のpHを、前記所定の酸性の範囲内にすることができ、前記モータは、前記第1のチャンバに接続され、前記第1のチャンバ内のpHを、前記所定の塩基性の範囲内にすることができる、pHを変化させる装置を、さらに、含んでいるモータを提供する。
【0016】
本発明の態様は、既に記載したアクチュエータを含むモータであって、前記第2のチャンバは、前記第2のチャンバの容量の増加を抑えるリターン手段と、前記第2のチャンバ内の浸透圧を低下させる制御手段とを備えているモータを提供する。
【0017】
本発明の態様は、既に記載したアクチュエータを含むモータであって、前記材料は、pHが、所定の酸性の範囲内にあるとき、その体積を減少させることができ、pHが、所定の塩基性の範囲内にあるとき、その体積を増加させることができ、pHを変化させる前記装置は、前記第1のチャンバ内のpHを、前記所定の酸性の範囲内にすることができ、前記モータは、前記第1のチャンバに接続され、前記第1のチャンバ内のpHを、前記所定の塩基性の範囲内にすることができる、pHを変化させる装置を、さらに、含んでいるモータを提供する。
【0018】
実施形態によると、前記第2のチャンバは、哺乳動物の空洞器官、特に、尿道、胃、肛門又は心臓を取り囲むことを意図するものであり、前記第2のチャンバの容量増加が、前記器官の圧縮の原因となる。
【0019】
本発明の態様は、上述したpHを変化させる装置を含む、物質を浄化するシステムであって、前記物質を含む生体溶剤と接触し、人体内に埋め込まれることを意図したシステムを提供する。
【0020】
本発明の態様は、上述したpHを変化させる装置と、前記筐体壁と前記溶剤間に配置された制御可能な第1のバルブと、pHを変化させる前記装置の前記筐体を、ドレインに通じさせる制御が可能な第2のバルブと、前記第2のバルブが開けられ、前記第1のバルブが閉じられたとき、pHを変化させる前記装置の前記筐体の容量を減少させて、pHを変化させる前記装置の前記筐体の内容物をドレイン経由で排出し、前記第1のバルブが開けられ、前記第2のバルブが閉じられたとき、pHを変化させる前記装置の前記筐体の容量を増加させて、pHを変化させる前記装置の前記筐体に、前記筐体壁経由で、前記溶剤を吸い込ませることを、周期的に行う手段とを備えている浄化システムを提供する。
【0021】
本発明の態様は、第1及び第2の電極を含み、pHにより前記第1及び前記第2の電極で、酸化又は還元反応が生じ易い筐体と、酸化又は還元反応の一方を促進し、第1の電極でのpHを、所定の範囲内にすることができるpHを変化させる装置と、酸化又は還元反応の他方を促進し、第2の電極でのpHを、前記第1の範囲とは異なる第2の所定の範囲内にすることができる手段とを備えているセルを提供する。
【0022】
実施形態によると、前記セルは、溶剤と接触して配置されることを意図し、前記手段は、前記筐体の内容物を、前記第2の電極において溶剤と通じさせることを意図したバルブに対応する。
【0023】
実施形態によると、前記手段は、上述した様なpHを変化させる、さらなる装置である。
【0024】
本発明の上記目的、特徴及び利点について、以下では図面を用い、特定の実施形態の限定しない記述により詳細に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明によるpHを変化させる装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】本発明によるpHを変化させる装置の第2実施形態を示す図である。
【図3】第1実施形態のpHを変化させる装置を実装する、浸透アクチュエータの形態における2つの動作ステップを示す図である。
【図4】本発明によるpHを変化させる第1実施形態の装置を実装する、浸透圧モータの第1形態における4つの動作ステップを示す図である。
【図5】本発明によるpHを変化させる第2実施形態の装置を実装する、浸透圧モータの第2形態における2つの動作ステップを示す図である。
【図6】浸透圧モータの第2形態の変化形態における2つの動作ステップを示す図である。
【図7】本発明によるpHを変化させる第1実施形態の装置を実装する浄化装置における2つの動作ステップを示す図である。
【図8】本発明によるpHを変化させる第1実施形態の装置を実装する、浸透圧モータの第3形態における4つの動作ステップを示す図である。
【図9】本発明によるpHを変化させる第1実施形態の装置を実装する、電気セルの第1形態における2つの動作ステップを示す図である。
【図10】本発明によるpHを変化させる第1実施形態の装置を実装する、電気セルの第2形態を示す図である。
【図11】本発明による処理方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
異なる図面においても同じ要素には同じ参照符号を使用する。明確化のため、本発明を理解するために役に立つ要素のみを図示して以下に説明を行う。
【0027】
本発明は、pHの修正が望まれる溶液での化学反応の第1系列及び第2系列の促進を提供し、化学反応の第1系列は溶液のpHを減少させ、化学反応の第2系列は、溶液のpHを増加させる。
【0028】
H+イオンの形成を導く総ての反応は、pHを減少させ、第1系列の反応に適している。特に、グルコン酸(H+イオンを放出しやすい)及び過酸化水素をもたらす、D−グルコース又はグルコースのD立体異性体の、グルコース・オキシダーゼ酵素による酸化がその様な例である。過酸化水素は、さらに、H+イオンを提供するために、カタラーゼ酵素又はペルオキシダーゼ酵素により分解可能である。実行される反応を以下に示す。
【0029】
【化1】
【0030】
反応の第1系列は、L−グルコース又はグルコースのL立体異性体の、L−フコース・デヒドロゲナーゼ酵素による酸化であっても良い。実行される反応を以下に示す。
【0031】
【化2】
【0032】
ここで、化合物NADPは、ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチドリン酸であり、NADPHは、還元された同じ化合物である。
【0033】
溶液を塩基性化する本発明で実行される反応の第2系列は、ウレアーゼ酵素による尿素の分解とすることができ、アンモニウム・イオンNH4+と、水酸基イオンOH−を形成し、よって、pHが増加する。実行される反応を以下に示す。
【0034】
【化3】
【0035】
反応(1)及び(3)は、血糖中のグルコースであるD−グルコースと尿素を通常含んでいる生体液に対して直接実行可能であるという利点を有している。反応(2)は、通常、NADP化合物を含んでいる生体液に対して容易に実行可能である。L−グルコースを、単に、生体液に加えることのみが必要である。
【0036】
図1は、本発明によるpHを変化させる装置10の第1実施形態を示している。装置10は、例えば生体液といった、修正が望まれるpHである溶液内に配置される。装置10は、堅固な筐体12と、バルブ14とを有し、バルブ14が開けられたとき、筐体12の内容物は、外部の溶液と通じ合うことになる。装置10は、図示しない、所定範囲内のpHを有する溶液を必要とする操作を行うシステムに結合できる。このため、装置10は、バルブ16を有し、バルブ16が開けられたとき、筐体12の内容物は、供給システムに通ずることになる。装置10は、バルブ14と筐体12の間に配置された膜18と、バルブ16と筐体12の間に配置された膜20を有している。膜18及び20は、通常、ダルトンで表現される、所定のカットオフ閾値を有し、カットオフ閾値より実質的に小さい分子量を有する粒子を通過させる。
【0037】
筐体12に含まれる溶液の酸性化が望まれるとき、例えば、反応(1)によるグルコース酸化を筐体12内において促進することができる。このため、装置10は、例えば、生体液といったD−グルコースを含む溶液内に置かれ、グルコース・オキシダーゼ酵素と、カタラーゼ又はペルオキシダーゼ酵素が、筐体12内に置かれる。膜18及び20は、グルコース・オキシダーゼ酵素と、カタラーゼ又はペルオキシダーゼ酵素が筐体12内に留まる様な、カットオフ閾値を有している。さらに、膜18は、グルコースを通過させるために十分高いカットオフ閾値を有している。例として、膜18及び20は、数百ダルトンのオーダのカットオフ閾値を有している。
【0038】
本発明による装置10の第1動作例として、pHを減少させる動作について説明する。まず、バルブ16は閉じられ、バルブ14は開けられており、D−グルコースが筐体12内に拡散可能となっている。その後、バルブ14は閉じられる。筐体12に含まれるD−グルコースは、H+イオン及びグルコン酸を供給するため、既に説明した反応(1)に従い酸化される。よって、筐体12に含まれる溶液のpHは減少する。得られた酸性溶液は、バルブ16を開けることにより、筐体12に接続されているシステムにより利用可能である。出願人は、人体の平均的なグルコース濃度に対応する、5.5mmol/lの初期濃度のD−グルコースと、初期pHが7である1mg.ml−1の濃度のグルコース・オキシダーゼ酵素、つまり、47ユニットの水溶液で、筐体12において、1時間後にpH5、3時間後にpH3.5を得た。
【0039】
グルコース酸化により得られるグルコン酸は、溶解した物質と共に、塩又はグルコン酸塩を形成しがちである。装置10に接続するシステムに浸透するグルコン酸塩を望まない場合、バルブ16が開けられたとしても、筐体12内にグルコン酸塩を留まらせるために十分低いカットオフ閾値を持つように膜20は選択される。膜20のカットオフ閾値は、100ダルトンのオーダである。バルブ14を次に開けたとき、グルコン酸塩が、筐体12の外に拡散する。装置10を人体内に置く医療への応用の場合、D−グルコースの酸化の結果生じるフリー・ラジカルの人体への放出を防ぐために、カタラーゼ又はペルオキシダーゼ酵素を膜18に配置することが望まれる。さらに、グルコン酸塩は、腎臓により自然と排出されるので、グルコン酸塩の人体への放出は危険ではない。
【0040】
溶液の酸性化操作のために、膜18及び20により保持されたL−フコース・デヒドロゲナーゼ酵素が筐体12内に配置される。装置10は、L−グルコースを含む溶液内に置かれ、既に説明したのと同じ操作が行われる。人間の生体液は、本来、L−グルコースを含んではいない。装置10が人体内に置かれる場合、例えば、静脈注射といった、L−グルコースを生体液に追加するステップが設けられる。
【0041】
本発明の第1実施形態による装置10は、pHを増加させるためにも使用できる。装置10は、例えば、生体液といった尿素を含む溶液内に配置され、反応(3)による尿素のアンモニア及び炭酸への分解が筐体12内で促進される。アンモニアは、水と反応してアンモニウム・イオンを生成するので、pHが増加する。このため、ウレアーゼ酵素が筐体12内に置かれる。この場合、膜18及び20は、筐体12内にウレアーゼ酵素を留まらせるために十分低いカットオフ閾値を持つ。さらに、膜18は、60g/molの分子量を有する尿素を通過させるために、十分高いカットオフ閾値を持つ。例えば、膜18は、数百ダルトンのカットオフ閾値を持つ。装置10の操作サイクルは、既に説明したものと同じである。出願人は、人体の平均的な尿素の濃度である3mmol/lで、初期pHが7の溶液で、筐体12内において、2時間以内にpH8.2を、1夜後にpH9.2を得た。本発明による装置10が人体内に置かれる医療への応用の場合、反応(3)により生じる二酸化炭素は、自然と吐き出される。さらに、反応(3)により生じるアンモニウム・イオンは、肝臓で代謝される。
【0042】
図2は、本発明によるpHを変化させる装置22の第2実施形態を示している。装置22は、例えば、透析法で利用されるタイプの半透過壁を有する中空ファイバの束26で形成される筐体24を有している。例えば、各ファイバの直径は、200μmのオーダである。ファイバ束26の第1の端部は、例えば、接着領域30を通して、第1の接続リング28により維持されている。リング28は、プラグ34で閉じられる開口32を有している。ファイバ束26の第2の端部は、接着領域38を通して、第2の接続リング36により維持されている。第2のリング36は、プラグ42で閉じられる開口40を有している。
【0043】
装置22は、pHを修正することが望まれる溶液内に浸されることを目的としている。ファイバの直径及び長さは、装置22が浸される溶液とファイバ束26との間の所望の交換面領域に合わせられる。pHを減少させたい場合、グルコース・オキシダーゼと、カタラーゼ又はペルオキシダーゼ酵素が、開口32、40経由でファイバ26内に置かれ、その後、開口32、40は、プラグ34、42により閉じられる。ファイバ26の壁は、D−グルコース及びグルコン酸塩を通過させるが、グルコース・オキシダーゼ酵素と、カタラーゼ又はペルオキシダーゼ酵素を通過させず、ファイバ束26内に留まらせるカットオフ閾値を有している。pHを増加させたい場合、ウレアーゼ酵素が、開口32、40経由でファイバ26内に置かれ、その後、開口32、40は、プラグ34、42により閉じられる。ファイバ26の壁は、尿素を通過させるが、ウレアーゼ酵素を通過させず、ファイバ束26内に留まらせるカットオフ閾値を有している。
【0044】
生体液を酸性にするために、装置22が人体内に埋め込まれるとき、グルコース・オキシダーゼ酵素はファイバ束26内で自由に移動可能とする一方、カタラーゼ又はペルオキシダーゼ酵素は、好ましくは、ファイバ26の内部の壁に固定される。その様な配置は、D−グルコース・オキシダーゼ酵素によるグルコースの分解により生成されたフリー・ラジカルが、ファイバ26の壁を通過して生体液に拡散することを防止することができる。
【0045】
装置10又は装置22が、D−グルコースの酸化を実行し、溶液を酸性にするために利用される場合、溶液に含まれるD−グルコースの部分の抑圧が同時に可能となる。実際、筐体12又はファイバ束26内で実行される反応(反応(1))は、グルコースのグルコン酸への変換を生じ、グルコン酸は、グルコン酸塩を提供する。その様な装置10(又は22)は、通常、I型又はII型糖尿病や、肥満に通常関連する過度のD−グルコースを抑えるために、人体内に埋め込むことができる。装置10(又は22)を埋め込むための幾つかの位置が想定できる。例えば、装置10(又は22)は、腹膜又は脂肪細胞周囲の空間に置くことができる。腹膜に近い埋め込みは、豊富な脈管化や、高いD−グルコース濃度という利点がある。脂肪質空間への埋め込みは、炎症反応の危険を減少させる。装置10(又は22)は、医療トロカールで実行される穿刺による、筋肉への埋め込みであっても良い。
【0046】
人体に埋め込まれると直ぐに、本発明による装置22は、日々、ある量のD−グルコースをグルコン酸塩に変換し、グルコン酸塩は、腎臓により自然と除去される。装置10は、バルブ14、16を制御することにより、グルコン酸塩に変換されるD−グルコースの量を制御することが可能である。必要に応じ、筐体12(ファイバ26)内に含まれる酵素の量を更新するために、バルブ14、16(開口32、40)経由で、筐体12(ファイバ26)の中身にアクセスすることが可能である。化学療法に通常使用される埋め込み可能なチャンバは、この更新を実行するために、非常に簡単な経皮的穿刺が可能である。これは、低い酵素活性を克服することを可能にする。さらに、筐体12(ファイバ26)の中身へのアクセスは、消費されるグルコースの量を制御するために酵素の数を調整することも可能にする。
【0047】
図3A及び3Bは、本発明によるpHを変化させる装置10の第1実施形態を実装する、浸透アクチュエータ50の形態を示している。浸透アクチュエータ50は、溶剤で満たされた、水漏れしない変形可能なエンベロープ52を含み、エンベロープ52は、バルブ16で装置10に接続されている。エンベロープ52は、さらに、円筒体56に膜54経由で接続され、円筒体56の中ではピストン58がスライド可能となっている。ピストン58及び円筒体56が、拡張チャンバ60を構成している。エンベロープ52は、固定したハウジング64内に配置され、ハウジング64は、それがきつい場合、エンベロープ52とハウジング64との間に設置されるかもしれないバキュームにより、エンベロープ52の変形が邪魔されないように穴を開けても良い。
【0048】
拡張チャンバ60は、溶剤内で溶解し、浸透圧的に活性であり、エンベロープ52内部と浸透圧的にバランス可能な濃度で、物質Aを含む。膜54は、物質Aをブロックするために、十分低いカットオフ閾値を有する。例えば、物質Aは、デキストランである。pHを変化させる装置10は、既に説明した、含んでいる溶液を塩基性化することが可能なタイプである。エンベロープ52は、浸透圧的に活性な物資Zを含んでいる。膜54は、物質Zをブロックするために、十分低いカットオフ閾値を有している。例えば、物質Zは、酸性のpHで水に溶解し、塩基性のpHで水に溶解しないキトサンである。この様に、溶液のpHの変動は、溶解した分子の数を変動させ、それに応じて、溶液のオスモル濃度が変動する。
【0049】
本発明による浸透アクチュエータ50の動作について説明する。これは、単一ストローク・アクチュエータである。
【0050】
図3Aは、アクチュエータ動作前の、浸透アクチュエータ50の状態を示している。バルブ16は閉じられている。エンベロープ52は最大容量である一方、拡張チャンバ60は最小容量である。物質A及びZの濃度は、拡張チャンバ60内とエンベロープ52内の浸透圧がバランスする様にまず選択され、ピストン58はアイドル状態である。アクチュエータが動作する前に、pHを変化させる装置10が既に述べた様に制御され、その結果、筐体12は塩基性水溶液を含んでいる。
【0051】
浸透アクチュエータ50の動作が望まれると、バルブ16が開けられる。筐体12内に含まれているOH−イオンがエンベロープ52内に拡散し、エンベロープ52に含まれる溶剤のpHが増加する。エンベロープ52内のpHが所定値まで増加したとき、バルブ16が閉じられる。物質Zの沈殿が促進される。エンベロープ52内の浸透圧が、変化しない拡張チャンバ60内の浸透圧に対して減少する。エンベロープ52から拡張チャンバ60への膜54を通過しての溶剤の移動がこの様に生じ、これにより、ピストン58の移動が生じる。ピストン58は、上昇状態になる。
【0052】
図3Bは、ピストン58の上昇が終了した時点での、浸透アクチュエータ50の状態を示している。拡張チャンバ60は最大容量である。ピストン58は、機械的な力の伝達が望まれる外部要素に接続できる。
【0053】
アクチュエータ50の上述した例において、装置10は、含んでいる溶液を塩基性化するタイプであった。しかしながら、アクチュエータ50は、含んでいる溶液を酸性化できる装置10を実装することもできる。この場合、図3Bに示す様に、初期状態において、拡張チャンバ60は最大容量であり、エンベロープ52は最小容量である。バルブ16が開けられたとき、エンベロープ52内の溶剤のpHと拡張チャンバ60が減少し、エンベロープ52内に存在する物質Zの可溶化が進行する。エンベロープ52内の浸透圧が、変化しない拡張チャンバ内の浸透圧に対して増加する。この様に、拡張チャンバ60からエンベロープ52への膜54を通過しての溶剤の移動が生じ、吸引力により、ピストン58の移動が生じる。ピストン58は、図3Aに示す様に、拡張チャンバ60が最小容量となるまで下降する。
【0054】
アクチュエータ50の応用例は、人体の空洞(例えば動脈)内にスライドさせ、それを開き続けさせるため、小さなばね又はステントに対応するエンドプロテーゼに関するジョイントの膨張である。実際、ステントを含む空洞の不要な変形に対し、ステント端部にて緊張を維持するために、ジョイントを、ステントの端部に設けることができ、ステントを実装した後に、アクチュエータ50により膨張させることができる。
【0055】
図4Aから4Dは、本発明による浸透圧モータ70の第1形態を示している。浸透圧モータ70は、図3A及び3Bに示すアクチュエータ50のある要素を含み、同じ参照符号が使用されている。リターン手段72は、例えば、ばねであり、ピストン58に、アイドル位置に復帰させることを目的としたけん引力を及ぼす。モータ70は、符号10及び10´で示す、pHを変化させる2つの装置を含んでいる。以下の説明において、ダッシュ付きの参照符号は、pHを変化させる装置10の要素と区別するために、pHを変化させる装置10´の要素に使用する。エンベロープ52は、バルブ16´で装置10´に接続されている。装置10は、含む溶液のpHを減少させることが可能なタイプであり、装置10´は、含む溶液のpHを増加させることが可能なタイプである。
【0056】
エンベロープ52は、既に説明した様に、H+イオンの存在で可溶化し易い物質Zを含み、OH−イオンの存在により、物質Zの沈殿による逆反応が生じ易い。浸透アクチュエータ50で既に説明した様に、拡張チャンバ60は、浸透圧的に活性であり、溶剤内で溶解する物質Aを含む。膜54は、物質A及びZの通過を防ぐために、十分低いカットオフ閾値を有している。
【0057】
本発明によるモータ70の動作サイクルを以下に説明する。
【0058】
図4Aは、サイクルの開始時のモータ70を示している。エンベロープ52は最大容量であり、チャンバ60は最小容量である。物質A及びZの初期濃度は、拡張チャンバ60及びエンベロープ52内の浸透圧がバランスする様に選択され、ピストン58はアイドル状態である。現在説明しているバルブ16及び16´を開けるサイクルの間、装置10、10´は、筐体12、12´が所望のpHとなる様に制御される。
【0059】
バルブ16が閉じられ、バルブ16´が開けられる。OH−イオンがエンベロープ52内に広まり、エンベロープ52及び拡張チャンバ60に含まれる溶剤のpHが増加する。エンベロープ52のpHが所望の値まで増加したとき、バルブ16´が閉じられる。物質Zの沈殿が促進される。エンベロープ52内の浸透圧が、変化のない拡張チャンバ60内の浸透圧に対して減少する。この様に、エンベロープ52から拡張チャンバ60への、膜54を通過しての溶剤の移動が生じ、これにより、ピストン58の移動が生ずる。ピストン58は、上昇状態となる。
【0060】
図4Bは、ピストン58の上昇が終了した時点でのモータ70を示している。チャンバ60は、よって、最大容量である。
【0061】
図4Cにおいて、筐体12の内容物とエンベロープ52の内容物が通じるように、バルブ16が開けられている。H+イオンが、エンベロープ52内に広まり、エンベロープ52及び拡張チャンバ60に含まれる溶剤のpHが減少する。pHが十分に酸性となったときに、バルブ16が閉じられる。物質Zの可溶化が促進され、よって、エンベロープ52内の、溶解した浸透圧的に活性である粒子の数が増加する。エンベロープ52内の浸透圧が増加するにつれ、拡張チャンバ60からエンベロープ52への、膜54を通過しての新たな溶剤の移動が生じる。ばね72の作用は、拡張チャンバ60からの溶剤の排出を促進することである。しかしながら、ばね72は省略でき、この場合、ピストン58は、吸引力のみで移動する。ピストン58は、下降状態となる。
【0062】
図4Dは、ピストン58の下降が終了した時点でのモータ70を示し、1サイクルの終わりである。エンベロープ52及び拡張チャンバ60内の物質Z及びAのそれぞれの濃度は、サイクル開始時の濃度と実質的に同一である。
【0063】
図5A及び5Bは、本発明によるpHを変化させる第2実施形態の装置22を実装する浸透圧モータ75の第2形態と、浸透圧モータ70のある要素を示している。モータ75は、符号22及び22´で示す、pHを変化させる2つの装置を含んでいる。以下の記述において、ダッシュ付きの参照符号は、pHを変化させる装置22の要素と区別するために、pHを変化させる装置22´の要素に使用する。pHを変化させる各装置22、22´は、プラグ34の代わりの膜54、54´で拡張チャンバ60と通じている。さらに、pHを変化させる装置22は堅固な筐体67に含まれており、筐体67は接続リング28及び36と接続し、pHを変化させる装置22´は堅固な筐体67´に含まれており、筐体67´は接続リング28´及び36´と接続している。バルブ69、69´が筐体67、67´に設けられている。筐体67、67´は、半透過性のエンベロープ71に含まれ、エンベロープ71は、円筒体56と、pHを変化させる装置22、22´の接続リング36、36´に接続されている。円筒体56は排出バルブ73を有し、排出バルブ73は、膜76経由で、拡張チャンバをモータ75の外部に接続している。
【0064】
例えば、装置22´は、既に説明した反応(1)により、溶液のpHを減少させることが可能なタイプであり、ファイバ26´にはグルコース・オキシダーゼ酵素が配置されている。装置22は、既に説明した反応(3)により、溶液のpHを増加させることが可能なタイプであり、ファイバ26にはウレアーゼ酵素が配置されている。
【0065】
既に述べた様な化合物Zは、酸性媒体内で可溶化し易く、エンベロープ71内に配置される。ファイバ26のカットオフ閾値は、物質A及びZとウレアーゼ酵素の通過を防ぐことを可能にする値である。膜54のカットオフ閾値は、ウレアーゼ酵素の通過を防ぐが、物質Aは通過させる値である。さらに、ファイバ26´のカットオフ閾値は、物質A及びZとグルコース・オキシダーゼ酵素の通過を防ぐことを可能にする値である。膜54´のカットオフ閾値は、グルコース・オキシダーゼ酵素の通過を防ぐが、物質Aは通過させる値である。エンベロープ71のカットオフ閾値は、物質Zの通過を防ぐことを可能にする値である。膜76のカットオフ閾値は、物質Aの通過を防ぐことを可能にする値である。
【0066】
通常の動作において、モータ75は、グルコース及び尿素を含む溶液中に置かれる。ファイバ26´のカットオフ閾値は、グルコースの通過を可能とするために十分高い値であり、ファイバ26のカットオフ閾値は、尿素の通過を可能とするために十分高い値である。さらに、エンベロープ71のカットオフ閾値は、溶剤、グルコース、尿素の通過を可能とするために十分高い値である。物質A及びZの初期濃度は、拡張チャンバ60内とエンベロープ71内の浸透圧がバランスする様に選択され、ピストン58はアイドルである。
【0067】
モータ75の動作サイクルについて以下に説明する。
【0068】
図5Aは、サイクル開始時点でのモータ75を示している。ピストン58はアイドル位置であり、拡張チャンバ60の容量は最小である。排出バルブ73は閉じられており、バルブ69´は閉じられており、バルブ69は開けられている。モータ75が尿素を含む溶液内に置かれると直ぐに、尿素はエンベロープ71を通過し、ファイバ26内に広がる。尿素の分解はOH−イオンを供給し、OH−イオンは、エンベロープ71内に広がる。エンベロープ71内のpHの増加は、物質Zの沈殿を促進し、エンベロープ71内の浸透圧を低下させる。浸透圧の変動が、エンベロープ71からファイバ26を経由して拡張チャンバ60に至る液体の流れを作り出し、これにより、ピストン58が移動する。ピストン58の移動は、ばね72を伸ばし、これにより機械的な力の保存が可能になる。
【0069】
図5Bにおいて、拡張チャンバ60は、最大限に拡張している。バルブ69は、その後、閉じられ、バルブ69´が開けられる。さらに、排出バルブ73が開けられる。拡張チャンバ60内の圧力が大気圧と等しくなる。ばね72が、ピストン58をアイドル位置に引き戻し、これにより、排出バルブ73経由で、拡張チャンバ60から周囲に溶剤が出される。ばね72に保存されていた機械的力がこの様に回収される。さらに、バルブ69´が開けられ、グルコースがファイバ26´に浸透する。グルコースの分解はH+イオンを供給し、H+イオンはエンベロープ71内に広がる。エンベロープ71内のpHの減少は、物質Zの可溶化を促進し、物質Zの濃度を、サイクル開示時点のものに戻すことを可能にする。バルブ73は、最後に閉じられ、モータのストロークが終了する。
【0070】
本形態において、拡張チャンバ60は、内部でピストン58がスライドする円筒体56により画定される。本発明によるモータ75の利用形態により、拡張チャンバ60は異なるものとすることができる。
【0071】
図6A及び6Bは、前の形態におけるモータ75の拡張チャンバ60の、他の構造を実装する浸透圧モータ75´を示している。この変形例によると、拡張チャンバ60は、エア・チューブの様に、内部エンベロープ77と外部エンベロープ78との間で画定される空間に相当する。内部エンベロープ77は、変形及び拡張可能であり、変形体79を取り囲んでいる。外部エンベロープ78は、柔らかく、広げられないものである。外部エンベロープ78は、内部エンベロープ77に近く、円筒体56に接続されている。例えば、本発明による浸透圧モータ75´の医療への応用において、変形体79は、胃、尿道、肛門、心臓の様な、人体の空洞器官であり、エンベロープ77、78は、空洞器官を取り囲むビード形状の拡張チャンバ60である。浸透圧モータは、(空洞器官が尿道又は肛門であるとき)人工的括約筋、あるいは、(空洞器官が胃であるとき)調整可能な胃バンドの動力として振る舞う。
【0072】
本変形例における、モータ75´の動作サイクルについて以下に説明する。
【0073】
図6Aは、サイクル開始時点でのモータ75´を示している。拡張チャンバ60の容量は最小であり、変形体79は最大限に拡張し、尿道若しくは肛門管、又は、胃が最大に開いている状態や、心臓拡張期に対応する。排出バルブ73は閉じられており、バルブ69´は閉じられており、バルブ69は開けられている。ウレアーゼ酵素が尿素の分解を促進し、エンベロープ71内のpHが増加し、物質Zの沈殿が促進される。浸透作用が、拡張チャンバ60への溶剤の導入の原因となる。内部エンベロープ77は、変形体79を変形し、圧縮する。
【0074】
図6Bにおいて、変形体79は、最大限に圧縮され、これは、閉じた尿道若しくは肛門管、又は、最小になっている胃、あるいは、収縮している心臓に対応している。その後、バルブ69´が開けられ、バルブ69が閉じられる。排出バルブ73を開けることで、溶剤が拡張チャンバ60から排出され、これにより、変形体79の拡張が可能になり、サイクルが終了する。
【0075】
本発明の他の変形例によると、拡張チャンバは、ファイバを囲む、追加の、弾性的なエンベロープで形成され、それは、例えば、螺旋状に配置され、円筒体56の端部で接続される。溶剤が、ファイバに浸透したとき、ファイバは、まっすぐになり、弾性的なエンベロープを変形させる。バルブ73を開けることで、ファイバ内の圧力が減少し、追加のエンベロープが初期形状に回復する。
【0076】
本発明の他の変形例によると、pHを変化させる装置は、柔らかい管により変形可能なチャンバに接続可能である。これは、pHを変化させる装置に含まれる酵素により、利用している物質(例えば、グルコース又は尿素)が溶解される溶剤の供給に適した環境に、pHを変化させる装置を有利に配置することを可能にし、拡張チャンバを、機械的な力の利用を望む場所に設置することを可能にする。医療への応用において、pHを変化させる装置は、脂肪組織又は血管網に配置される。後者の場合、ファイバが中空管を形成するために配列され、血液といった流体の流れを可能にする円筒空間の中心に置かれる。接続リングは円環状であり、血管の壁に置かれる。円環接続リングの1つは、血管に穴を開ける柔らかい導管により拡張チャンバに通じている。
【0077】
図7A及び7Bは、本発明の第1実施形態によるpHを変化させる装置10の変形例を示している。この変形例によると、筐体12内でスライドできるピストン81が筐体12内に設けられている。ピストン81は、例えば、図4Aから4Dを使用して説明した浸透圧モータ70といった、モータ(M)82により駆動される。参照符号84は、ピストン81とモータ82の接続要素を示し、例えば、リターン手段である。ピストン81及び筐体12は、可変容量のチャンバ86を形成する。ドレイン88は、バルブ16に接続される。
【0078】
チャンバ86での特別な反応は、尿素の分解によるpHの増加である(反応(3))。ウレアーゼ酵素が、チャンバ86に配置される。膜18、20は、ウレアーゼ酵素をチャンバ86に留まらせることを可能にするカットオフ閾値を有している。装置80は、pH増加と共に、装置80がその中に配置される溶液から、過度の尿素を取り除くためにも利用される。
【0079】
本発明による装置80の動作サイクルを以下に説明する。
【0080】
図7Aは、サイクル開始時点での装置80を示している。チャンバ86の容量は最大であり、バルブ14は開けられており、バルブ16は閉じられている。チャンバ86に含まれる溶液は、装置80がその中に配置される溶液に実質的に対応している。バルブ14が、その後、閉じられる。チャンバ86内で尿素の分解反応が生じ、よって、チャンバ86に含まれる溶液のpHが増加する。モータ82が、その後、ピストン81を移動させるために作動され、よって、チャンバ86の容量が減少する。ピストン81の移動の間、バルブ16が開けられ、これにより、チャンバ86内に含まれる溶液が、ダクト88経由で排出される。
【0081】
図7Bは、ピストン81の上昇状態が終了した時点での装置80を示している。チャンバ86は最小容量である。バルブ16は、その後、閉じられる。その後、ピストン81を移動させるためにモータ82が作動され、これにより、チャンバ86の容量が増加する。ピストン81の移動の間、バルブ14は開けられ、装置80がその中に配置されている溶液の、チャンバ86への吸引力が生じる。チャンバ86が最大容量になったとき、サイクルが終了する。
【0082】
この様な装置80は、過度の尿素を取り除くために、人体に埋め込むことができる。尿素の分解に得られるアンモニウム・イオンは、マグネシウム、カルシウム及びカリウムの様な元素と反応し易く、固形の化合物を形成する。装置80内の外側から生体液への、その様な固形化合物の拒絶反応のために、これは望まれないかもしれない。このため、ドレイン88は、尿素の分解により生じる廃棄物を受け取るのに適した領域、例えば、結腸に接続される。
【0083】
図8Aから8Dは、本発明による浸透圧モータ90の第3形態を示している。浸透圧モータ90は、図4Aから4Dに示す、第1形態の浸透圧モータ70のある要素を含み、それらには、同じ参照符号を使用する。
【0084】
浸透圧モータ70と比較して、エンベロープ52及び膜54は、もはや存在しない。ハウジング64は、pHにより体積を変化させることができる高分子ゲル92を含んでいる。例えば、それは、Y.Osada(Polymer Gels and Networks, Yoshihito Osada and Alexi R. Khokhlov, New York, Marcel Dekker Inc., 2001, 400 p.)に記載されている、pHの増加により体積が増加するといった、pHにより可逆な高分子ゲルである。堅固なエンベロープ94は、ハウジング92内に配置され、拡張チャンバ60と通じている。エンベロープ94と拡張チャンバ60は、例えば、水溶液といった溶剤で満たされている。
【0085】
モータ90の動作サイクルについて以下に説明する。
【0086】
図8Aは、サイクルの開始時のモータ90を示している。ゲル92は最小体積である。エンベロープ94は最大容量であり、チャンバ60は最小容量である。現在説明しているバルブ16及び16´を開けるサイクルと並行して、装置10、10´は、筐体12、12´内の溶液が所望のpHとなる様に制御される。
【0087】
バルブ16が閉じられ、バルブ16´が開けられる。OH−イオンがハウジング64に広まり、よって、pHが増加する。ゲル92の体積はその後膨張し、エンベロープ94を圧縮する。エンベロープ94のpHが所望の値まで増加したとき、バルブ16´が閉じられる。エンベロープ94の容量減少は、エンベロープ94から拡張チャンバ60への溶剤の移動を生じさせ、これにより、ピストン58が移動する。ピストン58は、上昇状態となる。
【0088】
図8Bは、ピストン58の上昇が終了した時点でのモータ90を示している。チャンバ60は、よって、最大容量である。
【0089】
図8Cにおいて、筐体12の内容物とハウジング64の内容物が通じるように、バルブ16が開けられている。H+イオンが、ハウジング64内に広まり、ハウジング64内のpHが減少する。pHが十分に酸性となったときに、バルブ16が閉じられる。その後、ゲル92の体積減少が促進され、これにより、エンベロープ94の容量が増加する。拡張チャンバ60からエンベロープ94への、新たな溶剤の移動が生じる。ばね72の作用により、拡張チャンバ60からの溶剤の排出が促進される。しかしながら、ばね72は省略でき、この場合、ピストン58は吸引力のみで移動する。ピストン58は、下降状態となる。
【0090】
図8Dは、ピストン58の下降が終了した時点でのモータ90を示し、1サイクルの終わりである。
【0091】
pHにより体積が変化するゲル92の利用は、単一ストローク・アクチュエータを形成するために実装できる。例えば、モータ90と比較し、装置10´のみが存在する。アクチュエータの動作は、既に説明した、図8A及び8Bに関するモータ90のものと同一である。他の例によると、モータ90と比較して、装置10のみが存在する。アクチュエータの動作は、既に説明した、図8C及び8Dに関するモータ90のものと同一である。
【0092】
既に説明したアクチュエータと、浸透圧モータ70、90の変形例によると、膜20、20´及び54は、筐体12、12´の内容物とハウジング64の内容物、あるいは、エンベロープ52の内容物と拡張チャンバ60の内容物との間の交換表面領域の増加が望まれるのであれば、ファイバ束又は同様のシステムに置換できる。
【0093】
図9A及び9Bは、本発明によるpHを変化させる第1実施形態の装置を実装するセル100の第1形態を示している。セル100は、生体液内で動作するためのものである。セル100は、堅固な筐体102を含み、筐体102は、互いに通じ合う2つの領域104、106を有している。バルブ108が開けられたとき、領域104側において、筐体102内の内容物は外部溶液と通じ合う。バルブ110が開けられたとき、領域106側において、筐体102内の内容物は外部溶液と通じ合う。セル100は、バルブ108と筐体102の間に配置された膜112と、バルブ110と筐体102の間に配置された膜114とを含んでいる。
【0094】
セル100は、領域104に配置されたpHを変化させる第1の装置10を含み、第1の装置10は、図1に示すものに対してバルブ14及び16が同化し、膜18、20が同化している。さらに、セル100は、領域106に配置された、pHを変化させる第2の装置を含んでいる。以下の説明において、ダッシュ付きの参照符号は、pHを変化させる第1の装置10の要素と区別するために、pHを変化させる装置の要素に使用する。装置10及び10´は、含む溶液のpHを減少させることが可能なタイプである。例えば、装置10、10´は、既に説明した反応(1)により、筐体12、12´に含まれる溶液の酸性化が可能なものである。
【0095】
導体素子120は、セル100により電力が加えられることを意図した負荷C経由で、筐体102の領域104と、筐体102の領域106を接続している。導体素子120は、電極122まで続き、電極122は、例えば、水酸化鉄Fe(OH)3で生成されて筐体102の領域104にあり、筐体102の領域106には水酸化鉄電極124がある。
【0096】
セル100は、例えば、生体液といったD−グルコースを含み、実質的に中性、あるいは、少しだけ酸性又は塩基性のpHの溶液内に置かれる。膜112、114は、D−グルコース及びグルコン酸塩を通過させることができる。しかしながら、膜112、114は、正イオンを通過させない。このため、膜112、114は、正に帯電されるかもしれない。正に帯電した膜は、例えば、ASTOM社による技術により得ることができる。膜112、114は、この様に、水酸基イオンOH−や、重炭酸塩イオンHCO3−の様な、小さいサイズの負イオンを通過させる。
【0097】
変形例によると、膜20、20´、112及び114は、筐体12、12´の内容物とハウジング102の内容物、あるいは、ハウジング102の内容物と周囲との間の交換表面領域の増加が望まれるのであれば、ファイバ束又は類似システムに置換できる。さらに、バルブ108と同じ様に制御される幾つかのバルブ(及び対応する膜)を、領域104においてハウジング102に分散配置できる。同様に、バルブ110と同じ様に制御される幾つかのバルブ(及び対応する膜)を、領域106においてハウジング102に分散配置できる。さらに、バルブ14と同じ様に制御される幾つかのバルブ(及び対応する膜)を、装置10の筐体12に分散配置できる。同様に、バルブ14´と同じ様に制御される幾つかのバルブ(及び対応する膜)を、装置10´の筐体12´に分散配置できる。
【0098】
図9Aは、セル100の第1動作段階を示している。バルブ108は開けられ、バルブ110は閉じられている。さらに、バルブ14は閉じられ、バルブ14´は開けられている。この様に、D−グルコースが、装置10´の筐体12´内に広がる。筐体12´内で既に説明した反応(1)が生じてH+イオンが放出され、装置10´の外側である筐体102の領域106、特に、電極124の周囲に広がる。セル動作は、多かれ少なかれpHにより促進される、酸化還元反応に基づいている。より具体的には、第1動作段階において、電極124は陰極として振る舞う。陰極124におけるH+イオンの存在は、以下の還元反応を促進する。
【0099】
【化4】
【0100】
バルブ14が閉じられているので、装置10は、筐体102の領域104にH+イオンを放出しない。さらに、バルブ110が閉じられ、バルブ108が開けられているので、筐体102の領域104と領域106間にはpHの勾配が形成され、領域104のpHが、領域106より高くなる。実際、例えば、領域104に伝播するH+イオンは、生体液に存在する水酸基イオンOH−と反応しがちであり、水を形成するために、あるいは、重炭酸塩イオンHCO3−と反応して水及び二酸化炭素を生成するために、膜112を通過する。
【0101】
陰極124でのFe2+イオンは、筐体102に閉じ込められ、陽極として振る舞う電極122に移動する。バルブ108経由での外部との導通が、pHを中性近くに留まらせることを可能にし、陽極122において、以下の酸化反応が生じる。
【0102】
【化5】
【0103】
導体素子120を経由して、電子は、陽極122から陰極124に移動し、これにより、負荷Cに電力が供給される。
【0104】
この様に、反応(4)は、陰極124の水酸化鉄Fe(OH)3を消費する。セル100を長期間動作させるために、セル100の極性を規則的に反転させることが有利である。
【0105】
図9Bは、セル100の第2動作段階を示している。バルブ108は閉じられ、バルブ110は開けられている。さらに、バルブ14は開けられ、バルブ14´は閉じられている。筐体12内で既に説明した反応(1)が生じてH+イオンが放出され、装置10の外側である筐体102の領域104、特に、今度は陰極として動作する電極122の周囲に広がる。陰極122におけるH+イオンの存在は、既に述べた還元反応(4)を促進する。
【0106】
バルブ14´が閉じられているので、装置10´は筐体102の領域106にH+イオンを放出しない。さらに、バルブ108が閉じられ、バルブ110が開けられているので、筐体102の領域104と領域106間にはpHの勾配が形成され、領域106のpHが、領域104より高くなる。実際、例えば、領域106に伝播するH+イオンは、生体液に存在する水酸基イオンOH−と反応しがちであり、水を形成するために、あるいは、重炭酸塩イオンHCO3−と反応して水及び二酸化炭素を生成するために、膜114を通過する。
【0107】
陰極122でのFe2+イオンは、筐体102に閉じ込められ、陽極として振る舞う電極124に移動する。よって、既に説明した酸化反応(5)が陽極124で生じる。
【0108】
導体素子120を経由して、陽極124から陰極122に移動する電子が観察でき、これにより、負荷Cに電力が供給される。
【0109】
図9A及び9Bを用いて上述した動作段階は、電極122、124で、水酸化鉄Fe(OH)3のストックを回復できる様に変更できる。
【0110】
図10は、本発明によるpHを変化させる第1実施形態の装置を実装するセル130の第2形態を示している。セル130は、生体液に浸すことなく動作可能である。セル100と比較して、セル130は、例えば、図1を用いて説明した様な、pHを変化させる4つの装置を有している。以下の説明において、添え字“A”、“B”、“C”及び“D”は、pHを変化させる装置10A、10B、10C及び10Dそれぞれに関連する要素を示すために付加される。装置10A、10Bのバルブ16A及び16Bは、筐体102の領域104側であり、装置10C、10Dのバルブ16C及び16Dは、筐体102の領域106側である。
【0111】
装置10A及び10Cは、含む溶液のpHを減少させることができるタイプである。例えば、装置10A及び10Cは、既に説明した反応(1)により、対応する筐体12A、12Cに含まれている溶液を酸性化することができる。装置10B及び10Dは、含む溶液のpHを増加させることができるタイプである。例えば、装置10B、10Dは、既に説明した反応(3)により、対応する筐体12B、12Dに含まれている溶液をアルカリ化することができる。
【0112】
セル130の動作例を以下に説明する。現在説明しているバルブ16A〜16Dを開くサイクルと並行して、装置10A〜10Dは、対応する筐体12A〜12Dに含まれる溶液が所望のpHとなる様に制御される。第1動作段階の間、バルブ16Aは開けられ、バルブ16Bは閉じられ、バルブ16Cは閉じられ、バルブ16Dは開けられる。H+イオンが、その後、装置10Aにより放出され、電極122付近のpHが減少し、OH−イオンが、装置10Dにより放出され、電極124付近のpHが増加する。筐体102の領域104と領域106間にpHの勾配が生じる。電極122におけるH+イオンの存在は、既に述べた還元反応(4)を促進し、電極124におけるOH−イオンの存在は、既に述べた酸化反応(5)を促進する。導体素子120及び電力供給される負荷Cを経由しての、陽極124から陰極122に移動する電子が観察できる。第2動作段階の間、バルブ16Aは閉じられ、バルブ16Bは開けられ、バルブ16Cは開けられ、バルブ16Dは閉じられる。H+イオンが、その後、装置10Cにより放出され、電極124付近のpHが減少し、OH−イオンが、装置10Bにより放出され、電極122付近のpHが増加する。電極124におけるH+イオンの存在は、既に述べた還元反応(4)を促進し、電極122におけるOH−イオンの存在は、既に述べた酸化反応(5)を促進する。導体素子120を経由して、陽極122から陰極124に移動する電子が観察でき、これにより、負荷Cへの電力供給が観察される。
【0113】
既に説明したセルの例において、水酸化鉄の代わりに、pHによる電位を持つ幾つかの種類の電極を使用することができる。酸化還元対となる2つの電極間で交換される電子により生じる電極の電位は、2つ共に溶解性、1つが溶解性であり1つが不溶性、さらに、2つ共に不溶性といった、異なる電極構造を考えることができる。最後の場合、例えば、フェノール及びチオールの圧縮により得られる電気活性な高分子化合物で形成される電極を有利に使用することができる。酸化還元能力を有する高分子化合物の例は、Friedrich Helfferich著“Ion Exchage、12章:Electron Exchangers and Redox Ion Exchangers”、1962 McGraw−Hill Book Company、551頁から568頁に記載されている。
【0114】
図11は、標的酵素療法例のステップを示している。標的酵素療法例は、Sylvia Muro、Edward H.Schuchman、Vladimir R.Muzykantov著、“Lysosomal Enzyme Delivery by ICAM−1−Targeted Nanocarriers Bypassing Glycosylationand Clathrin−Dependent Endocytosis”(Molecular Therapy vol.13、No.1、2006年1月、135頁から140頁)に記載されている。
【0115】
ステップ150において、標的細胞の抗原Aを認識するモノクローナル抗体Bが判定される。例えば、抗原Aは、癌胎児性の抗原又はCEA、前立腺特異抗原(PSA)又は前立腺特異的膜抗原(PSMA)に対応する。PSA抗原に適応する抗体Bは、例えば、Prostascint(Capromab Pendetide)の名前で取引されるCytrogen社により市販されている抗体がある。
【0116】
ステップ152で、モノクローナル抗体Bと酵素Gを結合した錯体Xが形成される。酵素Gは、物質Dを組み入れる反応を促進させることができるものである。錯体Xは、抗体Bと抗原Aの親和性を強く残し、物質Dに対する酵素Gの活動を強く残すものである。物質Dは、例えば、L−グルコースであり、酵素Gは、L−グルコース・オキシダーゼ酵素に相当し、例えば、D−トレオ−アルドース 1−デヒドロゲナーゼである。その様な酵素は、D−グルコースに対して不活性という利点を有している。他の例において、物質Dは、マンニトール(C6H8(OH)6)であり、酵素Gは、マンニトール・オキシダーゼ酵素に相当する。
【0117】
ステップ154で、錯体Xは、患者の体内に注入される。錯体Xの注入は、例えば、静脈注射である。錯体Xは、その後、抗体B経由で抗原Aと結合する。その後、錯体Xは、患者の体内から取り除かれる様に移動することが期待される。
【0118】
ステップ156で、物質Dは、患者の体内に注入される。物質Dの注入は、例えば、静脈注射である。酵素GがL−グルコース・オキシダーゼの場合、L−グルコースが患者の体内に注入される。L−グルコースは、その後、生体内に自由に拡散する。L−グルコースは人体に安全であるので、L−グルコース濃度は高くできる(例えば、1リットル当たり数百万といった、血糖濃度のオーダ)。酵素Gがマンニトール・オキシダーゼの場合、マンニトールのD立体異性体といった、マンニトールが患者の体内に注入される。
【0119】
L−グルコース注入の場合、人体細胞は、L−グルコースを代謝することができないので、錯体Xの酵素Gのみが、既に述べた反応(2)を促進して、L−グルコースからH+イオンを生成し、よって、局所的なpHが減少する。この様な局所的pHの減少は、直接的な治療効果を与え、標的細胞を殺す、あるいは、標的細胞を殺す原因となる炎症反応を生じさせることができる。
【0120】
マンニトール注入の場合、酵素Gは、マンニトールが酸素と反応して、マンノース(C6H7O(OH)5)と過酸化水素(H2O2)を提供する、以下の反応を促進する。
【0121】
【化6】
【0122】
過酸化水素の局所的な生成は、直接的な治療効果を与え、標的細胞を殺す、あるいは、標的細胞を殺す原因となる炎症反応を生じさせることができる。
【0123】
本発明の態様は、この様に、標的細胞の抗原の抗体、及び、第1の物質から標的細胞に対して有毒な第2の物質を生成する反応を促進させることができる酵素を含む錯体を形成するステップと、錯体を患者の体内に注入し、錯体の抗体が標的細胞と結合するステップと、第1の物質を患者の体内に注入し、錯体の酵素が標的細胞において第2の物質の生成を促進するステップとを提供する。
【0124】
実施形態によると、第1の物質はL−グルコースであり、酵素はL−グルコース・オキシダーゼ酵素であり、第2の物質はH+イオンである。
【0125】
実施形態によると、第1の物質はマンニトールであり、酵素はマンニトール・オキシダーゼ酵素であり、第2の物質は過酸化水素である。
【0126】
実施形態によると、抗原は、癌胎児性酵素、前立腺特異抗原、前立腺特異的膜抗原を含むグループ内の抗原である。
【0127】
本発明は、当然、当業者による種々の置換及び修正を持つ。特に、図6A及び6Bを用いて説明した浸透圧モータの拡張チャンバの変形例については、図4Aから4Dを用いて説明した浸透圧モータに適用可能である。
【符号の説明】
【0128】
10、10´、22、22´、80 装置
12、12´、24、67、67´、102 筐体
14、16、16´、69、69´、108、110 バルブ
18、20、54、54´、76、112、114 膜
26、26´ ファイバ束
28、28´、36、36´ 接続リング
30、38 接着領域
32、40 開口
34、42 プラグ
50 浸透アクチュエータ
52、71、77、78、94 エンベロープ
56 円筒体
58、81 ピストン
60、86 チャンバ
64、102 ハウジング
70、75、75´、90 浸透圧モータ
73 排出バルブ
79 変形体
82 モータ
88 ドレイン
92 高分子ゲル
100、130 セル
104、106 領域
120 導体素子
122、124 電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質が溶解されている溶剤のpHを変化させる装置(10;22)であって、
前記溶剤及び前記物質に対して透過性がある筐体壁(18;26)経由で前記溶剤に接触する筐体(12;24)を含み、
前記筐体は、水素又は水酸基イオンを放出するために前記物質を変換できる酵素を含み、
前記筐体壁は、前記酵素に対して透過性がない、
装置。
【請求項2】
前記物質は、D−グルコースであり、
前記酵素は、前記D−グルコースの酸化により、水酸基イオンの放出を生じさせることができるグルコース・オキシダーゼ酵素である、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記物質は、L−グルコースであり、
前記酵素は、前記L−グルコースの酸化により、水素イオンの放出を生じさせることができるL−フコース・デヒドロゲナーゼ酵素である、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記物質は、尿素であり、
前記酵素は、尿素の分解により、水酸基イオンの放出を生じさせることができるウレアーゼ酵素である、
請求項1に記載の装置。
【請求項5】
アクチュエータ(50)であって、
請求項1に記載のpHを変化させる装置(10;22)と、
pHを変化させる前記装置に接続されている、あるいは、pHを変化させる前記装置の筐体(24)に対応し、少なくとも部分的に溶剤を含む第1のチャンバ(52;24;64)であって、pHを変化させる前記装置が、第1のチャンバ内のpHを、所定の範囲内のpHにすることができる第1のチャンバと、
前記第1のチャンバに接続されている変形可能な第2のチャンバ(60)と、
を含み、
前記第1のチャンバは、前記第1のチャンバ内のpHが前記所定の範囲内であるとき、前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとの間で溶剤の移動を可能にする手段(52;92)を含んでいる、
アクチュエータ。
【請求項6】
前記第1のチャンバは溶質を含み、チャンバ壁(54)により前記第2のチャンバ(60)から分離され、前記チャンバ壁は、前記溶質に対して非透過性であり、前記溶剤に対して透過性であり、
前記溶質の沈殿物の前記溶質への変換、あるいは、前記溶質の沈殿化は、前記第1のチャンバ内のpHが、前記所定の範囲内にあるとき、前記第1のチャンバ内の浸透圧を変化させることで促進され、
前記変形可能な第2のチャンバは、浸透作用による前記第1のチャンバと前記第2のチャンバ間における前記溶剤の移動活動のもと、容量を変更できる、
請求項5に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記第1のチャンバは溶質を含み、チャンバ壁(26)により前記第2のチャンバ(60)から分離され、前記チャンバ壁は、前記溶質に対して非透過性であり、前記溶剤に対して透過性であり、
前記溶質の沈殿物の前記溶質への変換は、前記第1のチャンバ内のpHが、前記所定の範囲内にあるとき、前記第1のチャンバ内の浸透圧を変化させることで促進され、
前記第1のチャンバは、前記溶剤と接触するための配置とされており、
前記第2のチャンバは、浸透作用により前記第1のチャンバに浸透する前記溶剤の活動のもと、その容量を増加することができる、
請求項5に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記第1のチャンバ(64)は、前記第1のチャンバ内のpHが、前記所定の範囲内にあるときに体積を変更可能な材料(92)を含み、
変形可能なエンベロープ(94)を取り囲む前記材料は溶剤を含み、前記第2のチャンバ(60)に接続されている、
請求項5に記載のアクチュエータ。
【請求項9】
請求項6に記載のアクチュエータを含むモータ(70)であって、
前記第1のチャンバ(52)は、少なくとも、部分的に変形可能であり、前記チャンバ壁(54)で前記第2のチャンバ(60)に接続され、
前記溶質の沈殿物の前記溶質への変換は、pHが、所定の酸性の範囲内にあるとき促進され、前記溶質の沈殿化は、pHが、所定の塩基性の範囲内にあるとき促進され、
pHを変化させる前記装置(10)は、前記第1のチャンバ内のpHを、前記所定の酸性の範囲内にすることができ、
前記モータは、前記第1のチャンバに接続され、前記第1のチャンバ内のpHを、前記所定の塩基性の範囲内にすることができる、pHを変化させる、さらなる装置(10´)を、さらに、含んでいるモータ。
【請求項10】
請求項7に記載のアクチュエータを含むモータ(75;75´)であって、
前記第2のチャンバ(60)は、前記第2のチャンバの容量増加を抑えるリターン手段(72)と、前記第2のチャンバ内の浸透圧を低下させる制御手段(76)とを備えているモータ。
【請求項11】
請求項8に記載のアクチュエータを含むモータ(90)であって、
前記材料(92)は、pHが、所定の酸性の範囲内にあるとき、その体積を減少させることができ、pHが、所定の塩基性の範囲内にあるとき、その体積を増加させることができ、
pHを変化させる前記装置(10)は、前記第1のチャンバ内のpHを、前記所定の酸性の範囲内にすることができ、
前記モータは、前記第1のチャンバに接続され、前記第1のチャンバ内のpHを、前記所定の塩基性の範囲内にすることができる、pHを変化させる、さらなる装置(10´)を、さらに、含んでいるモータ。
【請求項12】
前記第2のチャンバ(60)は、哺乳動物の空洞器官(79)、特に、尿道、胃、肛門又は心臓、を取り囲むためのものであり、前記第2のチャンバの容量増加が、前記器官の圧縮の原因となる、
請求項9に記載のモータ(75´)。
【請求項13】
請求項1に記載のpHを変化させる装置(10、22)を含む、物質を浄化するシステムであって、
前記物質を含む生体溶剤と接触し、人体内に埋め込むためのシステム。
【請求項14】
請求項1に記載のpHを変化させる装置(10、22)と、
前記筐体壁(18)と前記溶剤間に配置された制御可能な第1のバルブ(14)と、
pHを変化させる前記装置の前記筐体(12)を、ドレイン(88)に通じさせる制御が可能な第2のバルブ(16)と、
前記第2のバルブが開けられ、前記第1のバルブが閉じられたとき、pHを変化させる前記装置の前記筐体の容量を減少させて、pHを変化させる前記装置の前記筐体の内容物をドレイン経由で排出し、前記第1のバルブが開けられ、前記第2のバルブが閉じられたとき、pHを変化させる前記装置の前記筐体の容量を増加させて、pHを変化させる前記装置の前記筐体に、前記筐体壁経由で、溶剤を吸い込ませることを、周期的に行う手段(82)と、
を備えている浄化システム。
【請求項15】
第1及び第2の電極(122、124)を含み、pHにより前記第1及び前記第2の電極で、酸化又は還元反応が生じ易い、筐体(102)と、
酸化又は還元反応の一方を促進し、第1の電極でのpHを、所定の範囲内にすることができる、請求項1に記載のpHを変化させる装置(10、10´;10A、10B、10C、10D)と、
酸化又は還元反応の他方を促進し、第2の電極でのpHを、前記第1の範囲とは異なる第2の所定の範囲内にすることができる手段(108、110;10A、10B、10C、10D)と、
を備えているセル(100;130)。
【請求項16】
前記セルは、溶剤と接触して配置されるためのものであり、前記手段(108、110)は、前記筐体(102)の内容物を、前記第2の電極(122、124)において溶剤と通じさせるバルブに対応する、
請求項15に記載のセル。
【請求項17】
前記手段(10A、10B、10C、10D)は、請求項1に記載のpHを変化させる、さらなる装置である、
請求項15に記載のセル。
【請求項1】
物質が溶解されている溶剤のpHを変化させる装置(10;22)であって、
前記溶剤及び前記物質に対して透過性がある筐体壁(18;26)経由で前記溶剤に接触する筐体(12;24)を含み、
前記筐体は、水素又は水酸基イオンを放出するために前記物質を変換できる酵素を含み、
前記筐体壁は、前記酵素に対して透過性がない、
装置。
【請求項2】
前記物質は、D−グルコースであり、
前記酵素は、前記D−グルコースの酸化により、水酸基イオンの放出を生じさせることができるグルコース・オキシダーゼ酵素である、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記物質は、L−グルコースであり、
前記酵素は、前記L−グルコースの酸化により、水素イオンの放出を生じさせることができるL−フコース・デヒドロゲナーゼ酵素である、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記物質は、尿素であり、
前記酵素は、尿素の分解により、水酸基イオンの放出を生じさせることができるウレアーゼ酵素である、
請求項1に記載の装置。
【請求項5】
アクチュエータ(50)であって、
請求項1に記載のpHを変化させる装置(10;22)と、
pHを変化させる前記装置に接続されている、あるいは、pHを変化させる前記装置の筐体(24)に対応し、少なくとも部分的に溶剤を含む第1のチャンバ(52;24;64)であって、pHを変化させる前記装置が、第1のチャンバ内のpHを、所定の範囲内のpHにすることができる第1のチャンバと、
前記第1のチャンバに接続されている変形可能な第2のチャンバ(60)と、
を含み、
前記第1のチャンバは、前記第1のチャンバ内のpHが前記所定の範囲内であるとき、前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとの間で溶剤の移動を可能にする手段(52;92)を含んでいる、
アクチュエータ。
【請求項6】
前記第1のチャンバは溶質を含み、チャンバ壁(54)により前記第2のチャンバ(60)から分離され、前記チャンバ壁は、前記溶質に対して非透過性であり、前記溶剤に対して透過性であり、
前記溶質の沈殿物の前記溶質への変換、あるいは、前記溶質の沈殿化は、前記第1のチャンバ内のpHが、前記所定の範囲内にあるとき、前記第1のチャンバ内の浸透圧を変化させることで促進され、
前記変形可能な第2のチャンバは、浸透作用による前記第1のチャンバと前記第2のチャンバ間における前記溶剤の移動活動のもと、容量を変更できる、
請求項5に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記第1のチャンバは溶質を含み、チャンバ壁(26)により前記第2のチャンバ(60)から分離され、前記チャンバ壁は、前記溶質に対して非透過性であり、前記溶剤に対して透過性であり、
前記溶質の沈殿物の前記溶質への変換は、前記第1のチャンバ内のpHが、前記所定の範囲内にあるとき、前記第1のチャンバ内の浸透圧を変化させることで促進され、
前記第1のチャンバは、前記溶剤と接触するための配置とされており、
前記第2のチャンバは、浸透作用により前記第1のチャンバに浸透する前記溶剤の活動のもと、その容量を増加することができる、
請求項5に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記第1のチャンバ(64)は、前記第1のチャンバ内のpHが、前記所定の範囲内にあるときに体積を変更可能な材料(92)を含み、
変形可能なエンベロープ(94)を取り囲む前記材料は溶剤を含み、前記第2のチャンバ(60)に接続されている、
請求項5に記載のアクチュエータ。
【請求項9】
請求項6に記載のアクチュエータを含むモータ(70)であって、
前記第1のチャンバ(52)は、少なくとも、部分的に変形可能であり、前記チャンバ壁(54)で前記第2のチャンバ(60)に接続され、
前記溶質の沈殿物の前記溶質への変換は、pHが、所定の酸性の範囲内にあるとき促進され、前記溶質の沈殿化は、pHが、所定の塩基性の範囲内にあるとき促進され、
pHを変化させる前記装置(10)は、前記第1のチャンバ内のpHを、前記所定の酸性の範囲内にすることができ、
前記モータは、前記第1のチャンバに接続され、前記第1のチャンバ内のpHを、前記所定の塩基性の範囲内にすることができる、pHを変化させる、さらなる装置(10´)を、さらに、含んでいるモータ。
【請求項10】
請求項7に記載のアクチュエータを含むモータ(75;75´)であって、
前記第2のチャンバ(60)は、前記第2のチャンバの容量増加を抑えるリターン手段(72)と、前記第2のチャンバ内の浸透圧を低下させる制御手段(76)とを備えているモータ。
【請求項11】
請求項8に記載のアクチュエータを含むモータ(90)であって、
前記材料(92)は、pHが、所定の酸性の範囲内にあるとき、その体積を減少させることができ、pHが、所定の塩基性の範囲内にあるとき、その体積を増加させることができ、
pHを変化させる前記装置(10)は、前記第1のチャンバ内のpHを、前記所定の酸性の範囲内にすることができ、
前記モータは、前記第1のチャンバに接続され、前記第1のチャンバ内のpHを、前記所定の塩基性の範囲内にすることができる、pHを変化させる、さらなる装置(10´)を、さらに、含んでいるモータ。
【請求項12】
前記第2のチャンバ(60)は、哺乳動物の空洞器官(79)、特に、尿道、胃、肛門又は心臓、を取り囲むためのものであり、前記第2のチャンバの容量増加が、前記器官の圧縮の原因となる、
請求項9に記載のモータ(75´)。
【請求項13】
請求項1に記載のpHを変化させる装置(10、22)を含む、物質を浄化するシステムであって、
前記物質を含む生体溶剤と接触し、人体内に埋め込むためのシステム。
【請求項14】
請求項1に記載のpHを変化させる装置(10、22)と、
前記筐体壁(18)と前記溶剤間に配置された制御可能な第1のバルブ(14)と、
pHを変化させる前記装置の前記筐体(12)を、ドレイン(88)に通じさせる制御が可能な第2のバルブ(16)と、
前記第2のバルブが開けられ、前記第1のバルブが閉じられたとき、pHを変化させる前記装置の前記筐体の容量を減少させて、pHを変化させる前記装置の前記筐体の内容物をドレイン経由で排出し、前記第1のバルブが開けられ、前記第2のバルブが閉じられたとき、pHを変化させる前記装置の前記筐体の容量を増加させて、pHを変化させる前記装置の前記筐体に、前記筐体壁経由で、溶剤を吸い込ませることを、周期的に行う手段(82)と、
を備えている浄化システム。
【請求項15】
第1及び第2の電極(122、124)を含み、pHにより前記第1及び前記第2の電極で、酸化又は還元反応が生じ易い、筐体(102)と、
酸化又は還元反応の一方を促進し、第1の電極でのpHを、所定の範囲内にすることができる、請求項1に記載のpHを変化させる装置(10、10´;10A、10B、10C、10D)と、
酸化又は還元反応の他方を促進し、第2の電極でのpHを、前記第1の範囲とは異なる第2の所定の範囲内にすることができる手段(108、110;10A、10B、10C、10D)と、
を備えているセル(100;130)。
【請求項16】
前記セルは、溶剤と接触して配置されるためのものであり、前記手段(108、110)は、前記筐体(102)の内容物を、前記第2の電極(122、124)において溶剤と通じさせるバルブに対応する、
請求項15に記載のセル。
【請求項17】
前記手段(10A、10B、10C、10D)は、請求項1に記載のpHを変化させる、さらなる装置である、
請求項15に記載のセル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2010−511458(P2010−511458A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539787(P2009−539787)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【国際出願番号】PCT/FR2007/052435
【国際公開番号】WO2008/074958
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(501354026)ユニヴェルシテ ジョセフ フーリエ (9)
【出願人】(509156402)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DES SCIENCES APPLIQUEES DE TOULOUSE
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【国際出願番号】PCT/FR2007/052435
【国際公開番号】WO2008/074958
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(501354026)ユニヴェルシテ ジョセフ フーリエ (9)
【出願人】(509156402)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DES SCIENCES APPLIQUEES DE TOULOUSE
【Fターム(参考)】
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