説明

溶湯面検知センサー

【課題】単純な構造で、長期の使用でも溶湯の浸入の防止を可能とした溶湯面検知センサーを提供する。
【解決手段】 底部に小孔11aが穿設された有底円筒形状のセラミック製保護管11と、セラミック製保護管内11aに挿入され、先端部12aが小孔11aを貫通した導電性セラミック製電極12に棒状の金属導電部材13を電気的に接続したセンサー本体14と、小孔11aを取り巻く前記底部の内周面の部分と電極12との間に介設されたパッキン21とを備えた溶湯面検知センサー1において、セラミック製保護管11の内周面とセンサー本体14の外周面とで形成される空隙に耐熱・電気絶縁性物質からなる充填層15,16を介在させた構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカストマシン或いは低圧鋳造装置等に用いられる溶湯保持炉等における溶湯面を検知する溶湯面検知センサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属鋳造用保持炉や金属給湯装置等のアルミニウム、アルミニウム合金等の溶湯に浸漬させて溶湯面を検知する溶湯面検知センサーは公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−183215号公報
【0003】
特許文献1には、底部に小孔が穿設された有底円筒形状のセラミック製保護管と、この保護管内に挿入され、先端部が前記小孔を貫通した導電性セラミック製電極に棒状の金属導電部材を電気的に接続したセンサー本体と、前記小孔を取り巻く前記底部の内周面の部分と前記電極との間に介設された環状パッキンと、前記金属導電部材を介して前記電極を前記パッキンに押圧し、前記電極の先端部を前記小孔から外部に突出させるバネ部材とを設けた溶湯面検知センサーが開示されている。
【0004】
この溶湯面検知センサーは、その先端部をアルミニウム、アルミニウム合金等の溶湯に浸漬させて使用するもので、セラミック製保護管内に溶湯が浸入しないようにパッキンが設けられ、前記バネ部材により前記電極を前記パッキンに押圧し、前記底部の内周面に密着させている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した溶湯面検知センサーの場合、バネ部材の経時変化に起因して前記電極の前記パッキンに対する押圧力が低下してゆく。このため、前記セラミック製保護管の小孔の周縁内周面と前記電極の小孔貫通部の付け根との間に隙間が生じ、この隙間から溶湯が前記セラミック製保護管内に浸入し、前記金属導電部材が溶損するという問題があった。また、前記溶湯面検知センサーは構造が複雑で、製造コストが高くなるという問題があった。
【0006】
本発明は、斯かる従来の問題をなくすことを課題としてなされたもので、単純な構造で、長期の使用でも溶湯の浸入の防止を可能とした溶湯面検知センサーを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、底部に小孔が穿設された有底円筒形状のセラミック製保護管と、このセラミック製保護管内に挿入され、先端部が前記小孔を貫通した導電性セラミック製電極に棒状の金属導電部材を電気的に接続したセンサー本体と、前記小孔を取り巻く前記底部の内周面の部分と前記電極との間に介設されたパッキンとを備えた溶湯面検知センサーにおいて、前記セラミック製保護管の内周面と前記センサー本体の外周面とで形成される空隙に耐熱・電気絶縁性物質からなる充填層を介在させた構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る溶湯面検知センサーによれば、前記セラミック製保護管内の空隙を前記充填層で埋めて、前記センサー本体と前記セラミック製保護管とを一体化しているため、前記パッキンが前記小孔を取り巻く前記底部の内周面の部分に密着した状態が維持され、前記電極の前記パッキンに対する押圧力の低下も生じることはなく、前記小孔の箇所に隙間が生じることはない。また、たとえこの隙間が生じたとしても、前記充填層により前記金属導電部材の溶損は回避でき、長期の使用に十分耐え得るものとなっている。さらに、前記電極の前記パッキンに対する押圧力は、充填層により維持されるため、溶湯面検知センサーの構造が単純により、ひいては製造コストの低減が可能になる等の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、本発明に係る溶湯面検知センサー1を示し、この溶湯面検知センサー1は、セラミック製保護管11、センサー本体14,充填層17、環状パッキン21を備えている。
【0010】
セラミック製保護管11は、耐熱性に優れたセラミック材、例えば窒化珪素系セラミック材からなり、有底円筒形状に形成され、底部に小孔11aを有している。
【0011】
センサー本体14は、電極12とこの電極12に電気的に接続された棒状の金属導電部材13とから構成される。前記電極12は、アルミニウム、アルミニウム合金の溶湯に対して耐食性に優れた導電性セラミック材、例えばTiB2系セラミック材、ZrB2系セラミック材からなり、セラミック製保護管11内に挿入されるとともに、その先端部12aが小孔11aを貫通して、ここから外部に突出している。
【0012】
金属導電部材13は、耐熱性に優れた材料、例えばSUS304のようなステンレス鋼からなり、外周にねじ部13aが形成された棒状体で、セラミック製保護管11内に挿入された先端部が電極12に電気的に接続されている。また、金属導電部材13の後端部には、例えば外部のモニタリング装置に電気的に接続するための電極端子13bが設けられている。
【0013】
パッキン21は、耐熱性に優れた材料、例えば耐熱フレックスシートからなり、中央部に前記小孔11aとほぼ同径の円形の開口が形成された環状体で、小孔11aを取り巻く前記底部の内周面の部分と電極12との間に介設されており、前記内周面と電極12とに密着し、両者間の隙間を無くしている。
【0014】
充填層17は、第1充填層15と第2充填層16とからなり、セラミック製保護管11とセンサー本体14との間に介在し、セラミック製保護管11内に生じる空隙を埋めている。第1充填層15は、耐熱・電気絶縁性に優れた材料、例えば粉末MgOからなり、前記空隙の上端部を除いて充填されている。
【0015】
第2充填層16は、耐熱性に優れた材料、例えばキャスタブル耐火物からなり、セラミック製保護管11の上方開口部を閉じている。
【0016】
斯かる構成において、充填層17を形成する材料、すなわち、第1充填層15では、粉末MgOが、また第2充填層16ではキャスタブル耐火物が、充填層17内に一部埋没した状態にある金属導電部材13のねじ部13aの各谷部に充填され、センサー本体14と充填層17とを強固に保持する結果、パッキン21が前記底部の内周面と電極12との両者間に隙間が無い状態が密着維持され、隙間からの溶湯の浸入は阻止される。
【0017】
仮に、予期し得ない不具合が生じて、小孔11aから溶湯が浸入し得る隙間が小孔11aの箇所に生じたとしても、第1充填層15により溶湯が金属導電部材13に接触するのは阻止され、溶湯による金属導電部材13の溶損はなく、長期にわたり溶湯面検知センサー1を安定的に使用することが可能となっている。
【0018】
このように、溶湯面検知センサー1は、単純な構造で、電極12と前記底面との間で隙間の発生を引き起こすことがなく、溶湯の浸入防止を可能とし、良好な耐久性を備え、かつ、製造コストも低減するものとなっている。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明に係る溶湯面検知センサー1は、アルミニウム、アルミニウム合金の溶湯面を検出するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る溶湯面検知センサーの断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 溶湯面検知センサー
11 セラミック製保護管
11a 小孔
12 電極
12a 先端部
13 金属導電部材
13a ねじ部
13b 電極端子
14 センサー本体
15 第1充填層
16 第2充填層
17 充填層
21 パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に小孔が穿設された有底円筒形状のセラミック製保護管と、
このセラミック製保護管内に挿入され、先端部が前記小孔を貫通した導電性セラミック製電極に棒状の金属導電部材を電気的に接続したセンサー本体と、
前記小孔を取り巻く前記底部の内周面の部分と前記電極との間に介設されたパッキンとを備えた溶湯面検知センサーにおいて、
前記セラミック製保護管の内周面と前記センサー本体の外周面とで形成される空隙に耐熱・電気絶縁性物質からなる充填層を介在させたことを特徴とする溶湯面検知センサー。

【図1】
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【公開番号】特開2006−126128(P2006−126128A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317985(P2004−317985)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(391003727)株式会社トウネツ (12)
【Fターム(参考)】