説明

溶融めっき熱延鋼板およびその製造方法

【課題】高い降伏比と良好な伸びフランジ性および延性とを有する引張強度500MPa以上の溶融めっき熱延鋼板と、それを複雑な工程を経ることなく製造しうる製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で,C:0.03〜0.12%,Si:0.01〜0.5%,Mn:1.4〜5.0%,P:0.05%以下,S:0.010%以下,sol.Al:0.001〜0.5%及びN:0.020%以下を含有する化学組成を有し、体積率で,フェライトを30〜94%,ベイナイトを5〜69%並びに残留オーステナイト及びマルテンサイトを合計で1.0〜10%を含有するとともに,残留オーステナイトおよびマルテンサイトは長径が7μm以下であり,残留オーステナイトおよびマルテンサイトの合計数密度が20個/100μm2以下である鋼組織を有し、引張強度が500MPa以上、降伏比が70%以上、引張強度と全伸びとの積であるTS×El値が12000MPa・%以上、引張強度と穴拡げ率との積であるTS×λ値が50000MPa・%以上である機械特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引張強度が500MPa以上の溶融めっき熱延鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用鋼板の分野においては、燃費の向上や耐衝突特性の向上のため、500MPa以上の高い引張強度を有する高強度鋼板の適用が拡大しつつある。これらの高強度鋼板には、製造コストが安価な熱延鋼板が使用される場合があり、また、耐食性の向上等を目的として溶融めっきが施される場合がある。
【0003】
このように、高強度熱延鋼板に溶融めっきが施された高強度溶融めっき熱延鋼板についても適用が拡大しつつあり、従来よりも成形の困難な用途、例えば優れた伸びフランジ性と優れた延性とが同時に要求されるような用途にまで用いられるようになってきている。
【0004】
また、高強度鋼板は、耐衝突特性を要求される部品や大入力時に塑性変形することを避ける必要がある部品に適用される場合があり、このような用途に供される場合には降伏比が高いことが要求される。したがって、高強度溶融めっき熱延鋼板にも高降伏比であることが要求される場合がある。
【0005】
このような背景から、高強度溶融めっき熱延鋼板について伸びフランジ性や延性といった成形性を向上させる方法や降伏比を高める方法について多くの提案がなされている。
例えば、特許文献1には、析出強化を利用してC添加量を低減させてパーライトの体積率を低く抑え、かつ熱延後の焼鈍処理によりフェライト粒界にパーライトまたはセメンタイトを微細に分散析出させた組織とすることにより優れた伸びフランジ性を有するとされる高強度溶融亜鉛めっき熱延鋼板が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、Si、Mnを多量に含有していても不めっき欠陥のない強度延性バランスに優れるとされる高強度溶融亜鉛めっき熱延鋼板の製造方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、主相のフェライトを微細粒とし、さらにマルテンサイトを主体とする第2相を微細粒とすることで、高TSで良好なTS×Elバランスを有するとされる高強度溶融亜鉛めっき熱延鋼板が開示されている。
【0008】
また、特許文献4には、Si、Mn、Ti、Nb、Mo、Bを所定範囲で同時添加することにより高降伏比で良好な延性を有するとされる高強度溶融めっき熱延鋼板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002− 12947号公報
【特許文献2】特開2000−290730号公報
【特許文献3】特開2000−212686号公報
【特許文献4】特開2005−105361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1に開示された発明は、フェライト−パーライト組織であるために延性が十分であるとはいえず、近年要求されている成形の困難な用途には適用が難しい。
また、特許文献2に開示された発明は、多量のSi、Mnを含有させるため、熱延鋼板を酸洗して焼鈍・冷却した後にさらに酸洗し、次いで連続溶融亜鉛めっきラインで焼鈍・めっきを行うという複雑な工程を経なければならず、コスト的に不利である。
【0011】
また、特許文献3に開示された発明は、降伏比65%未満程度のものしか得ることができないため、耐衝突特性が要求される用途への適用が難しい。
また、特許文献4に開示された発明は、延性に優れるとされているものの、実部品の成形には穴拡げ率に代表される伸びフランジ性も必要であるが、この点について不明確であり、成形において伸びフランジ性と延性の両方が必要とされる部品への適用は難しい。
【0012】
このように、従来技術における高強度溶融めっき熱延鋼板は、延性は良好であるものの降伏比が低いものであるか、降伏比は高いものの延性に劣るものであり、高い降伏比と良好な延性および伸びフランジ特性とを備える高強度溶融めっき熱延鋼板は得られていないのが実情であった。
【0013】
このようなことから、本発明は、高い降伏比と良好な伸びフランジ性および延性とを有する引張強度500MPa以上の溶融めっき熱延鋼板と、それを複雑な工程を経ることなく製造しうる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。
その結果、溶融めっきの基材となる熱延鋼板を、所定の化学組成として、さらにフェライト、ベイナイトならびに残留オーステナイトおよびマルテンサイトの分率を最適化した鋼組織とすることにより、高い降伏比と良好な伸びフランジ性と延性とを有する引張強度500MPa以上の溶融めっき熱延鋼板を得ることができることを知見した。さらに、Ti、NbまたはVを含有する析出物によって強化することにより、降伏比をさらに高めて伸びフランジ性をさらに向上しうることを知見した。また、Biを含有させることにより、凝固組織が微細化されてMn等の偏析に起因する成形性の低下が抑制されることや、上記Ti、NbまたはVによる作用が一層促進されることを知見した。そして、このような溶融めっき熱延鋼板は、熱間圧延後の冷却条件を制御したうえで、Ac点以上の温度域に加熱したのちに特定条件で冷却・保持することで効率よく得られることを知見した。
【0015】
本発明はこれらの新たな知見に基づくものであり、その要旨は以下のとおりである。
(1)熱延鋼板の表面に溶融めっき層を有する溶融めっき熱延鋼板であって、前記熱延鋼板は、質量%で、C:0.03%以上0.12%以下、Si:0.01%以上0.5%以下、Mn:1.4%以上5.0%以下、P:0.05%以下、S:0.010%以下、sol.Al:0.001%以上0.5%以下およびN:0.020%以下を含有する化学組成を有し、体積率で、フェライトを30%以上94%以下、ベイナイトを5%以上69%以下ならびに残留オーステナイトおよびマルテンサイトを合計で1.0%以上10%以下を含有するとともに、前記残留オーステナイトおよび前記マルテンサイトは長径が7μm以下であり、前記残留オーステナイトおよび前記マルテンサイトの合計数密度が20個/100μm以下である鋼組織を有し、前記溶融亜鉛めっき熱延鋼板は、引張強度が500MPa以上、降伏比が70%以上、引張強度と全伸びとの積であるTS×El値が12000MPa・%以上、引張強度と穴拡げ率との積であるTS×λ値が50000MPa・%以上である機械特性を有することを特徴とする溶融めっき熱延鋼板。
【0016】
(2)前記化学組成が、質量%で、Ti:0.50%以下、Nb:0.50%以下およびV:0.50%以下からなる群から選択された1種または2種以上をさらに含有するものであり、前記鋼組織が、Ti、NbまたはVを含有する粒径1nm以上20nm以下の炭化物、窒化物およびそれらの複合物を合計で50個/μm以上の数密度で前記フェライト中に含有するものであることを特徴とする上記(1)に記載の溶融めっき熱延鋼板。
【0017】
(3)前記化学組成が、Biを0.1質量%以下をさらに含有するものであることを特徴とする上記(1)または上記(2)に記載の溶融めっき熱延鋼板。
(4)前記化学組成が、質量%で、Cr:1%以下、Mo:0.5%以下、Cu:1%以下、Ni:1%以下およびB:0.005%以下からなる群から選択された1種または2種以上をさらに含有するものであることを特徴とする上記(1)〜上記(3)のいずれかに記載の溶融めっき熱延鋼板。
【0018】
(5)前記化学組成が、質量%で、Ca:0.006%以下、Mg:0.006%以下およびREM:0.006%以下からなる群から選択された1種または2種以上をさらに含有するものであることを特徴とする上記(1)〜上記(4)のいずれかに記載の溶融めっき熱延鋼板。
【0019】
(6)前記溶融めっき層が、溶融亜鉛めっき層であることを特徴とする上記(1)〜上記(5)のいずれかに記載の溶融めっき熱延鋼板。
(7)前記溶融めっき層が、合金化溶融亜鉛めっき層であることを特徴とする上記(1)〜上記(5)のいずれかに記載の溶融めっき熱延鋼板。
【0020】
(8)下記工程(A)〜(D)を有することを特徴とする溶融めっき熱延鋼板の製造方法:
(A)上記(1)〜上記(5)のいずれかに記載の化学組成を有するスラブに熱間圧延を施し、前記熱間圧延を850℃以上の温度域で完了し、熱間圧延完了後5秒間以内に600℃以上700℃以下の温度域まで冷却し、その後、400℃以上650℃以下の温度域で巻き取って熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(B)前記熱間圧延工程により得られた熱延鋼板に酸洗処理を施す酸洗工程;
(C)前記酸洗工程により得られた熱延鋼板を650℃以上950℃以下の温度域まで加熱し、3℃/秒以上20℃/秒以下の平均冷却速度で550℃まで冷却し、420℃以上550℃以下の温度域に20秒間以上90秒間以下保持する熱処理を施す熱処理工程;および
(D)前記熱処理工程により得られた熱延鋼板に溶融めっきを施す溶融めっき工程。
【0021】
(9)前記溶融めっきが溶融亜鉛めっきであることを特徴とする上記(8)に記載の溶融めっき熱延鋼板の製造方法。
(10)前記溶融亜鉛めっきを施した後に室温まで冷却する過程において、480℃以上600℃以下の温度域に保持して合金化処理を施すことを特徴とする上記(9)に記載の溶融めっき熱延鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、500MPa以上の高い引張強度を有しながら、高い降伏比と良好な伸びフランジ性と延性とを有する溶融めっき熱延鋼板が得られるので、産業上極めて有益である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の溶融めっき熱延鋼板の基材である熱延鋼板の化学組成および鋼組織、本発明の溶融めっき熱延鋼板の溶融めっき層、本発明の溶融めっき熱延鋼板の機械特性ならびに本発明の溶融めっき熱延鋼板の製造方法について以下に説明する。
【0024】
1.熱延鋼板の化学組成
熱延鋼板の化学組成について説明する。以下の説明において、鋼の化学組成を示す%は、特に断りがない限り質量%を意味する。
【0025】
(1)C:0.03%以上0.12%以下
Cは、高い引張強度を得るために重要な元素である。C含有量が0.03%未満では500MPa以上の引張強度を得ることが困難である。したがって、C含有量は0.03%以上とする。好ましくは0.04%以上である。一方、C含有量が0.12%を超えると、マルテンサイトや残留オーステナイトが過剰に生成してしまい、伸びフランジ性が低下する。したがって、C含有量は0.12%以下とする。好ましくは0.09%以下、さらに好ましくは0.06%以下である。
【0026】
(2)Si:0.01%以上0.5%以下
Siは、良好な延性を確保しつつ強度を高めるのに有効な元素である。さらに、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合には、合金化反応を適度に抑制する作用も発揮し、めっき密着性が良好となる。このような観点から、Si含有量を0.01%以上とする。一方、Si含有量が0.5%超になると、基材である熱延鋼板に対する溶融めっきの濡れ性が劣化する場合がある。したがって、Si含有量は0.5%以下とする。好ましくは0.2%未満である。
【0027】
(3)Mn:1.4%以上5.0%以下
Mnは、焼入れ性を高める作用を有し、鋼板を高強度化するのに非常に有効な元素である。Mn含有量が1.4%未満では、目的とする強度が得られないか、目的とする強度が得られたとしても目的とする延性が得られない。したがって、Mn含有量は1.4%以上とする。好ましくは1.7%以上である。一方、Mn含有量が5.0%を超えると、焼入れ性が高くなり過ぎてマルテンサイトの体積率が過大となり、これにより伸びフランジ性が著しく劣化する場合がある。したがって、Mn含有量は5.0%以下とする。好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.5%以下である。
【0028】
(4)P:0.05%以下
Pは、一般的には不純物として含有される元素であるが、固溶強化により鋼板の高強度化する作用を有するので積極的に含有させてもよい。しかしながら、P含有量が過剰になると靱性の劣化が著しくなる。したがって、P含有量は0.05%以下とする。
【0029】
(5)S:0.010%以下
Sは、不純物として含有される元素であり、MnSを形成して伸びフランジ性を劣化させる。したがって、伸びフランジ性劣化が顕著でない範囲として、S含有量を0.010%以下とする。好ましくは0.008%以下、より好ましくは0.005%以下である。
【0030】
(6)sol.Al:0.001%以上0.5%以下
Alは、溶鋼を脱酸して鋼を健全化する作用を有する。sol.Al含有量が0.001%未満では脱酸が十分でない。したがって、sol.Al含有量は0.001%以上とする。一方、sol.Al含有量が0.5%を超えるようにAlを添加しても、上記作用による効果は飽和していたずらにコストが嵩む。したがって、sol.Al含有量は0.5%以下とする。
【0031】
(7)N:0.020%以下
Nは、不純物として含有される元素であり、その含有量が0.020%を超えると鋼中に粗大な窒化物を形成して伸びフランジ性を著しく劣化させる。したがって、N含有量は0.020%以下とする。
【0032】
(8)Ti:0.50%以下、Nb:0.50%以下およびV:0.50%以下からなる群から選択された1種または2種以上
Ti、NbおよびVは、任意元素であり、CやNなどと結合し、あるいはさらに複合化して微細析出物を形成することにより、フェライト相を強化する作用を有するので、高い降伏比と良好な伸びフランジ性とを両立させることを目的とする本発明において有効な元素である。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させることが好ましい。
【0033】
ただし、0.50%を超えてTi、NbまたはVを含有させても、上記作用による効果は飽和していたずらにコストが嵩む。したがって、Ti、NbおよびVの含有量はそれぞれ0.50%以下とする。Ti:0.50%以下、Nb:0.50%以下およびV:0.50%以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有させるともに、後述する好適な製造方法を適用することにより、Ti、NbまたはVを含有する粒径1nm以上20nm以下の炭化物、窒化物およびそれらの複合物(本発明において、これらを「析出物」と総称する。)を合計で50個/μm以上の数密度で含有するフェライトとすることが容易に達成される。さらに、後述するようにBiを含有させると、微細析出物の微細化が促進され、上記数密度を120個/μm以上とするとすることが容易に達成される。
【0034】
また、Ti、NbおよびVの含有量が過剰であると、熱間圧延によって得られる熱延鋼板が非常に微細で異方性の大きい鋼組織になりやすく、これに熱処理を施して得られる鋼板は異方性が大きくなり、成形の際に特定方向の伸びが不足することに起因する割れが発生しやすくなる。したがって、Ti、NbおよびVの合計含有量を0.5%以下とすることが好ましい。特にこの作用はNbが多い時に顕著となるため、Tiの含有量を0.3%以上としたうえで、NbおよびVの合計含有量は0.20%以下とすることがさらに好ましい。
【0035】
なお、上記作用による効果を確実に得るには、Ti:0.015%以上、Nb:0.005%以上およびV:0.005%以上のいずれかを満足させるとすることが好ましい。また、Ti、NbおよびVの合計含有量を0.050%以上とすることが好ましい。
【0036】
(9)Bi:0.1%以下
Biは、任意元素であり、その含有によって凝固組織が微細化し、Mn等を多量に含有させても凝固偏析が抑制されて鋼組織が均一となり、成形性の劣化を抑制する作用を有する。さらに上記効果によって微細析出物の微細化を促進し、よりフェライト相を強化する作用を有する析出物の生成を促進するので、高い降伏比と良好な伸びフランジ性とを両立させることを目的とする本発明において有効な元素である。したがって、より良好な加工性を確保する観点からBiを含有させることが好ましい。特に、Biを含有させるとともに、Ti、Nb、Vについて上記の範囲で含有させ、さらに後述する好適な製造方法を適用することにより、析出物を合計で120個/μm以上の数密度で含有するフェライトとすることが容易に達成される。しかしながら、Bi含有量が0.1%超では、熱間加工性の劣化が著しくなり、熱間圧延が困難になる場合がある。したがって、Bi含有量は0.1%以下とする。好ましくは0.05%以下である。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Bi含有量を0.0002%以上とすることが好ましく、0.0030%以上とすることがさらに好ましい。
【0037】
(10)Cr:1%以下、Mo:0.5%以下、Cu:1%以下、Ni:1%以下およびB:0.005%以下からなる群から選択された1種または2種以上
これらの元素は、任意元素であり、鋼板の強度を高める作用を有するので含有させてもよい。各元素の含有量が上記範囲を超えると高強度化の効果が飽和してコストが嵩む。このため各元素の含有量を前記範囲とする。高強度化の効果をより確実に得るには、Cr:0.1%以上、Mo:0.05%以上、Cu:0.1%以上、Ni:0.1%以上およびB:0.0002%以上のいずれかを含有させることが好ましい。
【0038】
(11)Ca:0.006%以下、Mg:0.006%以下およびREM:0.006%以下からなる群から選択された1種または2種以上
これらの元素は、任意元素であり、硫化物の形態を制御することにより、伸びフランジ性を向上させる作用を有する。各元素の含有量が上記範囲を超えると上記作用による効果が飽和してコストが嵩む。このため各元素の含有量を前記範囲とする。上記作用による効果をより確実に得るにはCa、MgおよびREMのいずれかの含有量を0.0001%以上とすることが好ましい。
【0039】
ここで、REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素を指し、上記REMの含有量はこれらの元素の合計含有量を意味する。ランタノイドの場合、工業的にはミッシュメタルの形で添加される。
【0040】
2.熱延鋼板の鋼組織
熱延鋼板の鋼組織は、体積率で、フェライトを30%以上94%以下、ベイナイトを5%以上69%以下ならびに残留オーステナイトおよびマルテンサイトを合計で1.0%以上10%以下を含有するとともに、残留オーステナイトおよびマルテンサイトは長径が7μm以下であり、残留オーステナイトおよびマルテンサイトの合計数密度が20個/100μm以下であるものとする。
【0041】
(1)フェライト体積率:30%以上94%以下
フェライトは、良好な伸びフランジ性と良好な延性とを両立させるのに有効であり、フェライトの体積率は極力高めることが好ましい。したがって、本発明が目的とする良好な伸びフランジ性と良好な延性とを両立させるために、フェライトの体積率を30%以上とする。フェライトの体積率の上限は、後述する他の相および組織の体積率を確保するために94%以下とする。
【0042】
フェライトは、析出物(Ti、NbまたはVを含有する粒径1nm以上20nm以下の炭化物、窒化物およびそれらの複合物の総称)を合計で50個/μm以上の数密度で含有するものであることが好ましい。このような鋼組織とすることにより、フェライト相が強化されて、高い降伏比と良好な伸びフランジ性とを両立させることが容易になる。上記数密度は120個/μm以上であることがさらに好ましい。なお析出物の粒径は、断面観察などにより求めた析出物の断面積の円相当直径である。また、析出物について粒径1nm以上20nm以下の析出物の密度を規定するのは、析出強化に効果的なサイズであるからである。上記の析出物の数密度が50個/μm未満ではフェライトを強化する作用が十分に得られない。析出物の数密度の上限は特に規定しないが、過度に高くなると延性の劣化が大きくなる場合があるので、4000個/μm以下とすることが好ましい。なお、上記析出物の分布状態は、板厚中心を中心とする板厚の80%の板厚方向領域において満足していればよい。また、上記析出物はTi、Nb、Vの炭化物、窒化物、およびそれらの複合物を含むものであれば、これら以外の析出物(酸化物、硫化物など)と複合したものであっても良い。
【0043】
(2)ベイナイト体積率:5%以上69%以下
ベイナイトは、高い降伏比と良好な伸びフランジ性とを両立しつつ、高い引張強度を確保するのに有効である。したがって、本発明が目的とする高い降伏比と良好な伸びフランジ性とを両立し、さらに500MPa以上の引張強度を確保するために、ベイナイトの体積率を5%以上とする。一方、ベイナイト体積率が69%を超えると延性が劣化する。このため、ベイナイトの体積率は69%以下とする。
【0044】
(3)残留オーステナイトおよびマルテンサイトの合計体積率:1.0%以上10%以下、長径:7μm以下、数密度:100μmあたり20個以下
残留オーステナイトおよびマルテンサイトは、良好な延性を確保するのに有効である。したがって、本発明が目的とする良好な延性を確保するために、残留オーステナイトおよびマルテンサイトの合計体積率を1.0%以上とする。一方、マルテンサイトは硬質であるので、その体積率が過剰であると伸びフランジ性の劣化が顕著となる。この作用は、残留オーステナイトが加工歪により変態して生成されるマルテンサイトについても同様である。このため、残留オーステナイトおよびマルテンサイトの合計体積率は10%以下とする。好ましくは8%以下、さらに好ましくは6%以下、特に好ましくは5%未満である。
【0045】
また、マルテンサイトの粒径が粗大であるほど伸びフランジ性を劣化させやすい。残留オーステナイトが加工歪により変態して生成されるマルテンサイトについても同様である。このため、残留オーステナイトおよびマルテンサイトの長径は7μm以下とする。さらに、マルテンサイト間の距離が近接していると、これも伸びフランジ性を劣化させる原因となる。残留オーステナイトが加工歪により変態して生成されるマルテンサイトについても同様である。したがって、残留オーステナイトおよびマルテンサイトの数密度は低い方が望ましく、100μmあたり20個以下とする。
【0046】
残留オーステナイトおよびマルテンサイトのそれぞれの体積率は特に規定する必要はなく、いずれか一方が0%であっても構わない。それぞれの体積比率は目的とする機械特性に応じて決定すればよく、例えば、延性を高める場合には残留オーステナイトの体積率を高め、強度を高める場合にはマルテンサイトの体積率を高めればよい。
【0047】
3.溶融めっき層
上述した熱延鋼板は、表面に溶融めっき層を備える。溶融めっき層は、耐食性の向上等を目的に応じて決定すればよく、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、溶融Zn−Al合金めっき、溶融Zn−Al−Mg合金めっき、溶融Zn−Al−Mg−Si合金めっき等が例示される。耐食性の観点からは、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっきが好適である。
【0048】
4.機械特性
本発明に係る溶融めっき熱延鋼板の機械特性は、引張強度が500MPa以上、降伏比が70%以上、引張強度と全伸びとの積TS×El値が12000MPa・%以上、引張強度と穴拡げ率との積TS×λ値が50000MPa・%以上である。ここで、「穴拡げ率」は日本鉄鋼連盟規格の「JFST1001穴拡げ試験方法」に規定の方法で測定される。
【0049】
本発明は、近年要求されるようになってきた厳しい成形用途や、耐衝突特性を要求される部品や大入力時に塑性変形することを避ける必要がある部品といった用途に適用できる溶融めっき熱延鋼板を適用することが可能な高強度鋼板を提供するものであるので、引張強度、降伏比、引張強度と全伸びとの積TS×El値および引張強度と穴拡げ率との積TS×λ値を上記のように規定した。
【0050】
5.製造方法
上記溶融めっき熱延鋼板の製造方法としては、下記工程(A)〜(D)を有することが好ましい。
(A)上述の化学組成を有するスラブに熱間圧延を施し、前記熱間圧延を850℃以上の温度域で完了し、熱間圧延完了後5秒間以内に600℃以上700℃以下の温度域まで冷却し、その後、400℃以上650℃以下の温度域で巻き取って熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(B)熱間圧延工程により得られた熱延鋼板に酸洗処理を施す酸洗工程;
(C)酸洗工程により得られた熱延鋼板を650℃以上950℃以下の温度域まで加熱し、3℃/秒以上20℃/秒以下の平均冷却速度で550℃まで冷却し、420℃以上550℃以下の温度域に20秒間以上90秒間以下保持する熱処理を施す熱処理工程;および
(D)熱処理工程により得られた熱延鋼板に溶融めっきを施す溶融めっき工程。
【0051】
(A)熱間圧延工程
熱間圧延完了温度(以下、「仕上温度」ともいう。)が850℃未満では、機械特性の面内異方性が大きくなり、特定方向の伸びフランジ性や延性が著しく低下する場合がある。したがって、仕上温度は850℃以上とする。本発明が目的とする機械特性を得る観点からは、仕上温度の上限を規定する必要は特にないが、仕上温度が過度に高温であるとスケール疵が発生する場合があるので、表面性状の観点からは仕上温度を950℃以下とすることが好ましい。
【0052】
熱間圧延完了後、熱間圧延完了後5秒間以内に600℃以上700℃以下の温度域まで冷却し、その後、400℃以上650℃以下の温度域で巻き取ることが好ましい。このようにすることにより、熱間圧延後の状態でベイナイト主体の組織またはベイナイトとフェライト主体の組織とすることができ、さらに本発明に必要な析出物を生成させることができるので、後述する熱処理を施すことにより、高い降伏比と良好な伸びフランジ性および延性とを具備させるのに最適な鋼組織を形成することが容易となる。
【0053】
熱間圧延完了後600℃以上700℃以下の温度域までに冷却する時間が5秒間超では、熱間圧延後の冷却過程においてフェライトが過剰に生成してオーステナイトへのMn濃化が過度に進行してしまうため、後述する熱処理を施した際に、Mn濃化領域において残留オーステナイトやマルテンサイトが過剰かつ粗大に生成してしまい、溶融めっき熱延鋼板の降伏比が低下するとともに伸びフランジ性が劣化する場合がある。
【0054】
巻取温度が650℃超の場合も、熱間圧延後の段階でパーライトが多く生成してしまい、当該パーライトにおいてMn濃化が進行してしまうので、上記と同様のことが生じる場合がある。一方、巻取温度が400℃未満の場合は、温度の制御が困難となり、同一の鋼板内における鋼組織変動が大きくなる場合がある。
なお、熱間圧延に供するスラブの温度は、均質化の観点からは1200℃以上とすることが好ましく、加熱コストの観点からは1350℃以下とすることが好ましい。
【0055】
(B)酸洗工程
酸洗は常法に従えばよい。また、酸洗前または酸洗後において、平坦矯正やスケール剥離促進のためにスキンパス圧延を施してもよく、本発明の効果に影響することはない。スキンパス圧延を施す場合の伸び率は特に規定する必要はなく、例えば0.3%以上3.0%未満とすればよい。
【0056】
(C)熱処理工程
熱処理工程における加熱温度が650℃未満では、最終製品の特性が前工程である熱延条件の影響を受けやすくなり、製品の特性における安定化が得られない。一方、熱処理工程における加熱温度が950℃超では、鋼組織が粗大化して伸びフランジ性が低下する場合がある。また、Ti、NbまたはVを含有する場合には、それらの析出物が溶解してしまい、降伏比が低下したり、伸びフランジ性が低下したりする場合がある。650℃以上950℃以下の温度域に保持する時間は、鋼組織の変動を小さくするために10秒間以上とすることが好ましい。また、鋼組織の粗粒化による引張強度の低下を抑制するために200秒間以下とすることが好ましい。
【0057】
550℃までの平均冷却速度が3℃/秒未満では、パーライトや粗大なセメンタイトが過剰に生成してしまい、目的とする強度が得られないか、伸びフランジ性や延性が著しく劣化する場合がある。一方、550℃までの平均冷却速度が20℃/秒超では、フェライトの体積率が不足し、延性に劣る場合がある。
【0058】
420℃以上550℃以下の温度域に保持する時間が20秒間未満では、最終製品において残留オーステナイトおよびマルテンサイトの合計体積率が過大となり、降伏比が低下したり伸びフランジ性が劣化したりする場合がある。一方、420℃以上550℃以下の温度域に保持する時間が90秒間超では、オーステナイトの分解が過度に進行してしまい、延性が劣化する場合がある。
【0059】
(D)溶融めっき工程
溶融めっきは常法に従えばよく、連続溶融めっき設備を使用して上記熱処理工程に連続させてもよく、また、上記熱処理工程と独立させてもよい。
【0060】
溶融めっきが溶融亜鉛めっきである場合には、さらに合金化処理を施して合金化溶融亜鉛めっきとしてもよい。合金化処理を施す場合には、合金化処理温度を480℃以上600℃以下とすることが好ましい。合金化処理温度が480℃未満では、合金化処理むらが生じる場合がある。合金化処理温度が600℃超では、オーステナイトの分解が過度に進行してしまい、延性が劣化する場合がある。また、合金化処理時間は10秒間以上40秒間以下とすることが好ましい。合金化処理時間が10秒間未満では、合金化処理むらが生じする場合がある。合金化処理時間が40秒間超では、オーステナイトの分解が過度に進行するために延性が劣化し、さらに合金化処理が過度に進行するためにめっき密着性が低下する場合がある。
【0061】
溶融めっき後は、平坦矯正のためスキンパス圧延を施してもよい。スキンパス圧延は高い降伏比を得るうえで有利である。70%以上の降伏比をより容易に得るには、スキンパス圧延の伸び率を0.2%以上とするのが好ましい。ただし、スキンパス圧延による伸びの劣化を避けるため、伸び率を2.0%以下とすることが好ましい。
【0062】
なお、上記溶融めっき浴に浸漬する前の保持は、一定温度に保持するものであっても、所定の温度域内において温度変動を伴うものであってもよい。例えば、所定温度域内において緩冷却を施すものであってもよい。
【実施例】
【0063】
本発明を、実施例を参照しながらより具体的に説明する。
表1に示す化学組成を有するスラブを1270℃に加熱して熱間圧延を行い板厚2.6mmとし、その後冷却して巻き取った。酸洗を施したのち、連続溶融亜鉛めっき設備において、熱処理および溶融亜鉛めっきを施した。熱処理における、均熱温度における保持時間は20〜80秒とした。溶融亜鉛めっきは片面当り45g/mの付着量とした。溶融亜鉛めっき浴の温度は460℃とし、一部は20秒間の合金化処理を施した。さらに伸び率0.2%のスキンパス圧延を施した。熱間圧延条件および連続溶融亜鉛めっき条件を表2に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
得られた試験材について、圧延直角方向にJIS5号試験片を採取し、JISに従い引張試験を実施した。また、日本鉄鋼連盟規格の「JFST1001穴拡げ試験方法」に従い、穴拡げ率を測定し、伸びフランジ性の指標とした。
【0067】
さらに、鋼板の圧延方向断面をナイタール腐食し、走査型電子顕微鏡を用い1/8t〜7/8t位置の30μm×30μmの領域を2000倍で観察した視野数10の組織写真においてフェライト、ベイナイト、および(残留オーステナイト・マルテンサイトの合計)の面積%を画像解析により求め、それぞれの体積率とした。さらに、X線回折法により1/4t位置の残留オーステナイトの体積率を測定してその体積率とした。一方、レプリカ法により透過型電子顕微鏡を用い、EDS分析により析出物組成を同定しつつ観察した視野数10の写真から、粒径1〜20nmのTi、Nb、Vを含む炭化物、窒化物およびそれらの複合物の密度を算出した。
【0068】
また、先端r−1mmの60度V曲げ−曲げ戻し後のテープ剥離を行い、剥離幅を測定しめっき密着性を評価した。剥離幅が20mm以下のものをめっき密着性良好とした。
鋼組織、機械特性およびめっき密着性を調査した結果を表3に示す。
【0069】
【表3】

【0070】
本発明の成分範囲の鋼板は必要な強度と高い降伏比と良好な伸びフランジ性および延性を有していた。
これに対し、試験片19は、熱間圧延完了から600℃以上700℃以下の温度域までの冷却時間が長いため、残留オーステナイトおよびマルテンサイトが過剰かつ粗大に生成してしまい、YRが低く、TS×λ値が低かった。
【0071】
また、試験片20は、圧延完了温度が低かったため、特定方向の伸びフランジ性が低下し、TS×λ値が低かった。
試験片21は、巻取温度が高かったため、残留オーステナイトおよびマルテンサイトが過剰かつ粗大に生成してしまい、YRが低く、TS×λ値が低かった。
【0072】
試験片22は、均熱温度が高いため、主相であるフェライトの粒径が過度に成長し、さらにフェライト粒を析出強化するTi,Nbの炭化物または窒化物が粗大となるため、TS×λ値が低かった。
【0073】
試験片23は、均熱後550℃までの平均冷却速度が低いため、第2相がパーライト主体となり、TS×λ値が低かった。
試験片24は、均熱後550℃までの平均冷却速度が高いため、フェライトの体積率が低かった。
【0074】
試験片25は、420℃以上550℃以下の温度域に保持する時間が長過ぎるため、オーステナイトの分解が過度に進行してしまい、残留オーステナイトおよびマルテンサイトの合計体積率が過小となり、TS×El値が低かった。
【0075】
試験片26は、合金化処理温度が高すぎたため、オーステナイトの分解が過度に進行してしまい、残留オーステナイトおよびマルテンサイトの合計体積率が過小となり、TS×El値が低かった。
【0076】
試験片27は、C含有量が過少であったため、本発明の目的とする強度が達成できない。
試験片28は、C含有量が過剰であったため、残留オーステナイトおよびマルテンサイトの合計体積率が過大となり、TS×λ値が低下した。
【0077】
試験片29は、S含有量が過剰であったため、穴拡げ率に劣り、TS×λ値が低い。
試験片30は、Si含有量が過剰であったため、めっき濡れ性が不芳であり、溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができなかった。
【0078】
試験片31は、Siの含有量が過少であったため、めっき密着性が不芳であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱延鋼板の表面に溶融めっき層を有する溶融めっき熱延鋼板であって、
前記熱延鋼板は、質量%で、C:0.03%以上0.12%以下、Si:0.01%以上0.5%以下、Mn:1.4%以上5.0%以下、P:0.05%以下、S:0.010%以下、sol.Al:0.001%以上0.5%以下およびN:0.020%以下を含有する化学組成を有し、体積率で、フェライトを30%以上94%以下、ベイナイトを5%以上69%以下ならびに残留オーステナイトおよびマルテンサイトを合計で1.0%以上10%以下を含有するとともに、前記残留オーステナイトおよび前記マルテンサイトは長径が7μm以下であり、前記残留オーステナイトおよび前記マルテンサイトの合計数密度が20個/100μm以下である鋼組織を有し、
前記溶融亜鉛めっき熱延鋼板は、引張強度が500MPa以上、降伏比が70%以上、引張強度と全伸びとの積であるTS×El値が12000MPa・%以上、引張強度と穴拡げ率との積であるTS×λ値が50000MPa・%以上である機械特性を有することを特徴とする溶融めっき熱延鋼板。
【請求項2】
前記化学組成が、質量%で、Ti:0.50%以下、Nb:0.50%以下およびV:0.50%以下からなる群から選択された1種または2種以上をさらに含有するものであり、
前記鋼組織が、Ti、NbまたはVを含有する粒径1nm以上20nm以下の炭化物、窒化物およびそれらの複合物を合計で50個/μm以上の数密度で前記フェライト中に含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の溶融めっき熱延鋼板。
【請求項3】
前記化学組成が、Biを0.1質量%以下をさらに含有するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶融めっき熱延鋼板。
【請求項4】
前記化学組成が、質量%で、Cr:1%以下、Mo:0.5%以下、Cu:1%以下、Ni:1%以下およびB:0.005%以下からなる群から選択された1種または2種以上をさらに含有するものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の溶融めっき熱延鋼板。
【請求項5】
前記化学組成が、質量%で、Ca:0.006%以下、Mg:0.006%以下およびREM:0.006%以下からなる群から選択された1種または2種以上をさらに含有するものであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の溶融めっき熱延鋼板。
【請求項6】
前記溶融めっき層が、溶融亜鉛めっき層であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の溶融めっき熱延鋼板。
【請求項7】
前記溶融めっき層が、合金化溶融亜鉛めっき層であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の溶融めっき熱延鋼板。
【請求項8】
下記工程(A)〜(D)を有することを特徴とする溶融めっき熱延鋼板の製造方法:
(A)請求項1〜請求項5のいずれかに記載の化学組成を有するスラブに熱間圧延を施し、前記熱間圧延を850℃以上の温度域で完了し、熱間圧延完了後5秒間以内に600℃以上700℃以下の温度域まで冷却し、その後、400℃以上650℃以下の温度域で巻き取って熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(B)前記熱間圧延工程により得られた熱延鋼板に酸洗処理を施す酸洗工程;
(C)前記酸洗工程により得られた熱延鋼板を650℃以上950℃以下の温度域まで加熱し、3℃/秒以上20℃/秒以下の平均冷却速度で550℃まで冷却し、420℃以上550℃以下の温度域に20秒間以上90秒間以下保持する熱処理を施す熱処理工程;および
(D)前記熱処理工程により得られた熱延鋼板に溶融めっきを施す溶融めっき工程。
【請求項9】
前記溶融めっきが溶融亜鉛めっきであることを特徴とする請求項8に記載の溶融めっき熱延鋼板の製造方法。
【請求項10】
前記溶融亜鉛めっきを施した後に室温まで冷却する過程において、480℃以上600℃以下の温度域に保持して合金化処理を施すことを特徴とする請求項9に記載の溶融めっき熱延鋼板の製造方法。

【公開番号】特開2011−241456(P2011−241456A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116028(P2010−116028)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】