説明

溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤およびその調製方法と応用

本発明は溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤を提供し、その原料は2〜6重量部の水溶性モリブデン酸塩、4〜12重量部の水溶性マンガン塩、50〜100重量部の塩基性シリカゾルおよび50〜100重量部の水溶性有機樹脂を含む。本発明は前記溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤の調製方法を提供する。同調製方法は以下のステップ:水溶性モリブデン酸塩と水溶性マンガン塩を脱イオン水に添加して溶解して溶液とする、同溶液に塩基性シリカゾルを添加して均一混合して溶液とする、同溶液に水溶性有機樹脂を添加して均一混合して溶液とする、次いで、リン酸を用いて、同溶液のpH値を5〜8に調整することを含む。また、本発明は本発明不動態化処理剤で処理された溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材および溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材の不動態化処理法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤およびその調製方法と応用に関し、表面化学処理に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材は、優れた耐食性と耐高温酸化性を有するため、その応用分野は建築材料から家電製品のようなハイレベル分野へ発展しつつある。溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材が高湿度環境下に置かれた場合、そのアルミニウム−亜鉛合金層が腐食し易く、表面に白錆または黒変が発生し、めっき板材の耐食性と表面品質が低下してしまうという問題があった。このことから、溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材の耐食性を向上させるには、溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材の表面に対して不動態化処理を行うことが一般的である。
【0003】
例えば、特許文献1には、鋼板にフッ化チタン酸アンモニウムとメタバナジン酸アンモニウムを膜形成の主剤としてリン含有化合物を結合して不動態化処理し形成した膜それを有するクロムフリー処理された溶融アルミニウム−亜鉛めっき鋼板およびその製造方法が開示されている。但し、この方法の提供した処理剤は全体的として無機系であり、皮膜が比較的薄く、基材に対する改良がなく、自己潤滑性が良くない。同時にバナジウムの使用は環境保全面で問題を生じる。
【0004】
また、特許文献2には、クロム含有有機樹脂組成物による溶融アルミニウム−亜鉛めっき鋼板を処理する方法が開示されている。アルミニウム−亜鉛めっき板材の表面に形成されていた樹脂膜はアルミニウム−亜鉛めっき板材が成形過程中における外形の破壊を防止できるが、クロムの存在は環境を汚染する。
【0005】
また、特許文献3には、アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板の処理用水系樹脂組成物及びその塗布方法が開示されており、具体的にこの水系樹脂組成物が陰イオン性の水分散型ポリウレタン、シラン系カップリング剤と水溶性ジルコニウム化合物を含有し、その塗布方法において乾燥温度が70〜220℃であることが開示されている。但し、この方法に使用する水溶性ジルコニウム化合物である炭酸ジルコニウムアンモニウムは、熱安定性が悪く、60℃になると直ちに分解してしまう欠点がある。なお、この方法はシランカップリング剤を使用するため、コストアップになる問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国公開特許CN101332692A公報
【特許文献2】中国公開特許CN1247777A公報
【特許文献3】中国公開特許CN1511908A公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、低コストで環境を汚染しない溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤は、原料として2〜6重量部の水溶性モリブデン酸塩、4〜12重量部の水溶性マンガン塩、50〜100重量部の塩基性シリカゾルおよび50〜100重量部の水溶性有機樹脂を含有する。
【0009】
また、本発明は、前記溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤の調製方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、前記溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤を用いて処理された溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、前記溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤を用いて溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材の不動態化処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の提供する溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤は、下記の利点を有する。すなわち、環境汚染の原因物質となるクロムなどの重金属イオンを含有しないため、環境保全に寄与する。膜形成温度が相対的に低く(70〜150℃)、耐食性、耐水性に相対的に優れると共に、溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材の外観が改善できて、不動態化膜の潤滑性を向上できる。また、本発明の溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤の調製プロセスが簡単で、取り扱いが便利で低コストが可能になり、本技術分野に新しい選択を提供できて、広範囲での応用が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明では、前記水溶性モリブデン酸塩としては、常用されるものを使用することができ、例えば、モリブデン酸ナトリウム(Na2MoO4)、モリブデン酸アンモニウム((NH42MoO4)およびモリブデン酸カリウム(K2MoO4)からなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0014】
本発明では、前記マンガン塩としては、常用されるものを使用することができ、例えば、マンガン(II)ビス(二水素ホスファート)(Mn(HPO4))、硫酸マンガン(MnSO4)、塩化マンガン(MnCl2)および硝酸マンガン(Mn(NO32)からなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。好ましくはマンガン(II)ビス(二水素ホスファート)を使用する。
【0015】
本発明では、塩基性シリカゾルの濃度が低過ぎると、不動態化処理剤の耐水性、耐食性が低下する。また塩基性シリカゾルの濃度が高過ぎると、形成された不動態化膜中のシリカ含有量が高過ぎて、不動態化膜の外観が影響を受けて表面が白色になる。本発明の溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤の効果を向上させるため、前記塩基性シリカゾルのシリカの含有量が20〜40重量%であることが好ましい。
【0016】
本発明では、前記水溶性有機樹脂としては、常用されるものを使用することができ、水溶性スチレン−アクリル樹脂エマルション、水溶性シリコーン−アクリル系エマルションおよび水溶性アクリル酸樹脂からなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。前述の樹脂はガラス転移温度(Tg)がいずれも50℃以下であり、本発明の溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤の膜形成性、耐食性と耐水性を改善できる。
【0017】
前記スチレン−アクリル樹脂としては、塗料に常用される種々のものを使用することができ、その分子量が広い範囲で変えられ、例えば、スチレン−アクリル樹脂の重量平均分子量は、200〜3,000であり、好ましくは200〜1,000であり、より好ましくは300〜800である。
【0018】
前記スチレン−アクリル樹脂はスチレン系モノマーから由来する構造単位およびアクリル酸系モノマーおよび/またはアクリル酸エステル系モノマーから由来する構造単位を含有する。構造単位のモル比率は広い範囲で変えられ、スチレン系モノマーから由来する構造単位とアクリル酸系モノマーおよび/またはアクリル酸エステル系モノマーから由来する構造単位とのモル比率は1:0.02〜1:50である。
【0019】
前記スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、4−t―ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α―メチルスチレンおよびα―メチルー4−メチルスチレンからなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0020】
前記アクリル酸系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸およびトリメタクリル酸からなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0021】
前記アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、グリシジルアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、n−オクチルアクリレート、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジル、トリメチロールプロパントリメタクリレートからなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0022】
前述の条件に合致する前記スチレン−アクリル樹脂エマルションは、市販品として入手でき、例えば、広州市超竜化工科学技術公司製のスチレン−アクリル樹脂エマルション(品番:XY−108B)、南通市聯邦化工有限公司製のスチレン−アクリル樹脂エマルション(品番:A−101)などが挙げられる。
【0023】
前述の条件に合致する前記スチレン−アクリル樹脂は、常用される重合方法で合成して得られる。例えば、触媒の存在下で、前記スチレン系モノマーとアクリル酸系モノマーおよび/またはアクリル酸エステル系モノマーとを乳化重合する。前記触媒の種類と共重合の条件は常用される種類と条件を使用できる。
【0024】
前記水溶性シリコーン−アクリル系エマルションはシリコーン−アクリル系樹脂を含むエマルションである。前記シリコーン−アクリル系樹脂としては、塗料に常用される種々のものを使用することができ、その分子量が広い範囲で変えられ、例えば、シリコーン−アクリル系樹脂の重量平均分子量は、200〜3,000であり、好ましくは200〜1,000であり、より好ましくは300〜800である。
【0025】
前記シリコーン−アクリル樹脂は、有機ケイ素化合物モノマーから由来する構造単位およびアクリル酸系モノマーおよび/またはアクリル酸エステル系モノマーから由来する構造単位を含有する。構造単位のモル比率は広い範囲で変えられ、有機ケイ素化合物モノマーから由来する構造単位とアクリル酸系モノマーおよび/またはアクリル酸エステル系モノマーから由来する構造単位とのモル比率は1:0.02〜1:50である。
【0026】
前記有機ケイ素化合物モノマーとしては、例えば、メチルクロロシラン、フェニルクロロシラン、メチルビニルクロロシラン、エチルトリクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシランおよびγ―クロロプロピルトリクロロシランからなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0027】
前記アクリル酸モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸およびトリメタクリル酸からなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。前記アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、グリシジルアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、n−オクチルアクリレート、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジル、トリメチロールプロパントリメタクリレートからなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0028】
前述の条件に合致する前記シリコーン−アクリル樹脂は、市販品として入手でき、例えば、南通生達化工有限公司製のシリコーン−アクリル樹脂エマルション(品番:SD−528)などが挙げられる。
【0029】
前述の条件に合致する前記シリコーン−アクリル樹脂は、常用される重合方法で合成して得られる。例えば、触媒の存在下で、前記有機ケイ素化合物モノマーとアクリル酸モノマーおよび/またはアクリル酸エステルモノマーとを溶媒中で共重合する。前記触媒と溶媒の種類及び重合の条件は常用される種類と条件を使用できる。
【0030】
前記スチレン−アクリル樹脂、前記シリコーン−アクリル樹脂の形状は、それぞれの樹脂または水性エマルションまたは水性分散体として使用できる。水溶性有機樹脂の使用量は、いずも乾燥分換算として示す。前記水性エマルションにおいて、樹脂の含有量がエマルション総重量に対して40〜60重量%である。
【0031】
水溶性アクリル酸樹脂はアクリル酸モノマーの重合により形成される。前記アクリル酸モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸およびトリメタクリル酸からなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。その分子量が広い範囲で変えられ、例えば、水溶性アクリル酸樹脂の重量平均分子量は、2,000〜300,000であり、好ましくは8,000〜11,000である。
【0032】
前述の条件に合致する前記水溶性アクリル酸樹脂は、市販品として入手でき、例えば、江蘇三木グループ有限公司製の水溶性アクリル酸樹脂(品番:EA3842)などが挙げられる。
【0033】
前述の条件に合致する前記水溶性アクリル酸樹脂は、常用される重合方法で合成して得られる。例えば、触媒の存在下で、アクリル酸モノマーを溶媒中で共重合する。前記触媒と溶媒の種類及び共重合の条件は常用される種類と条件を使用できる。
【0034】
前記溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤の調製方法において、下記のステップを含む。
a:水溶性モリブデン酸塩2〜6重量部、水溶性マンガン塩4〜12重量部を脱イオン水に添加して溶解する。
b:ステップaで得た溶液に塩基性シリカゾル50〜100重量部を添加して均一混合する。
c:ステップbで得た溶液に水溶性有機樹脂50〜100重量部を添加して均一混合する。
d:リン酸を用いて、ステップcで得た溶液のpH値を5〜8に調整し、溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤を得る。
【0035】
さらに、前記水溶性モリブデン酸塩としては、常用されるものを使用することができ、例えば、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸アンモニウムおよびモリブデン酸カリウムからなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。前記マンガン塩としては、常用されるものを使用することができ、例えば、マンガン(II)ビス(二水素ホスファート)、硫酸マンガン、塩化マンガンおよび硝酸マンガンからなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。特にマンガン(II)ビス(二水素ホスファート)を使用することが好ましい。前記塩基性シリカゾルのシリカの含有量が20〜40重量%であることが好ましい。前記水溶性有機樹脂としては、常用されるものを使用することができ、水溶性スチレン−アクリル樹脂エマルション、水溶性シリコーン−アクリル系エマルションおよび水溶性アクリル酸樹脂からなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0036】
前記ステップdで得た溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤の各成分の好適な濃度は、モリブデン酸塩が2〜6g/リットルであり、水溶性マンガン塩が4〜12g/リットルであり、塩基性シリカゾルが50〜100g/リットルであり、水溶性有機樹脂が50〜100g/リットルである。
すなわち、溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤の最終溶液1リットルに対して、モリブデン酸塩の使用量が2〜6gであり、水溶性マンガン塩の使用量が4〜12gであり、塩基性シリカゾルの使用量が50〜100gであり、水溶性有機樹脂の使用量が50〜100gであり、最後に脱イオン水を補充して溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤の最終容積が1リットルになるようにする。水溶性有機樹脂は水系エマルションを使用することが一般的であり、前記処理剤における濃度は水系エマルションの固形分を換算して得たものである。すなわち、水系エマルションの容積とその固形分含有率の積は水溶性有機樹脂の使用量となる。
【0037】
さらに、前記溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材の不動態化処理方法において、下記のステップを含む。すなわち、(a)溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材に付着した油脂分を除去して洗浄する。(b)溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤を溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材の表面に塗布する。(c)加熱乾燥して(加熱温度が通常70〜150℃である)、所定の不動態化処理板材を得る。不動態化処理剤の塗布方法および塗布量については特に限定されない。例えばローラー塗布を使用することができる。乾燥後得た塗膜の付着量が50〜5,000mg/m2、好ましくは100〜3,000mg/m2、より好ましくは500〜2000mg/m2になるように前記処理剤の乾燥後の塗膜付着量を調節する。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を以て、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
実施例1
脱イオン水500ミリリットルにモリブデン酸アンモニウム2gを添加し、攪拌して溶解した。
攪拌しながらマンガン(II)ビス(二水素ホスファート)4gを添加して溶解した。
シリカ含有量が25.14重量%である塩基性シリカゾル80gを添加して、均一に攪拌した。
水溶性アクリル酸樹脂(江蘇三木グループ有限公司製、品番:EA3842、固形分含有率:60±1%)90gを加えた。
脱イオン水を補充して溶液の容積を1リットルにした。
リン酸によりpH値を5に調整して、本発明の溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材の不動態化処理剤を得た。
【0040】
油脂分の洗浄・除去処理を行った溶融アルミニウム−亜鉛めっき部材の表面に、本発明の溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材の不動態化処理剤をワイヤーバーコーターにより塗布し、90℃で加熱乾燥し、無色透明の塗膜が形成され、乾燥後の塗膜付着量は960mg/m2であった。
【0041】
前記不動態化処理された、および処理されなかった溶融アルミニウム−亜鉛めっき板をそれぞれ採って試料にし、中性塩水噴霧試験と耐水性試験を実施し、実施した結果を以下に示した。
(1)中性塩水噴霧試験において、不動態化処理されなかった溶融アルミニウム−亜鉛めっき板の試料は、表面に黒変発生開始が平均8時間後だったが、不動態化処理された溶融アルミニウム−亜鉛めっき板の試料は、表面に黒変発生開始が平均88時間後だった。
(2)100℃の沸騰水約2ミリリットルを水平に放置した試料の表面に滴下して、自然乾燥24時間後の水跡を目視で調べた。不動態化処理された、および処理されなかった溶融アルミニウム−亜鉛めっき板の試料はいずれも水の跡を認めず、塗膜の耐水性が良好だった。
【0042】
実施例2
脱イオン水500ミリリットルにモリブデン酸アンモニウム4gを添加し、攪拌して溶解した。
攪拌しながらマンガン(II)ビス(二水素ホスファート)8gを添加して溶解した。
シリカ含有量が26.84重量%である塩基性シリカゾル100gを添加して、均一に攪拌した。
水溶性スチレン−アクリル系エマルション(南通市聯邦化工有限公司製、品番:A−101、固形分含有率:47±1%)160gを加えた;
脱イオン水を補充して溶液の容積を1リットルにした。
リン酸によりpH値を6に調整して、本発明の溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材の不動態化処理剤を得た。
【0043】
油脂分の除去・洗浄処理を行った溶融アルミニウム−亜鉛めっき部材の表面に、本発明の溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材の不動態化処理剤をワイヤーバーコーターにより塗布し、80℃で加熱乾燥し、無色透明の塗膜が形成され、塗膜付着量は1000mg/m2であった。
【0044】
前記不動態化処理された、および処理されなかった溶融アルミニウム−亜鉛めっき板をそれぞれ採って試料にし、中性塩水噴霧試験と耐水性試験を実施し、実施した結果を以下に示した。
(1)中性塩水噴霧試験において、不動態化処理されなかった溶融アルミニウム−亜鉛めっき板の試料は、表面に黒変発生開始が平均8時間後だったが、不動態化処理された溶融アルミニウム−亜鉛めっき板の試料は、表面に黒変発生開始が平均92時間後だった。
(2)100℃の沸騰水約2ミリリットルを水平に放置した試料の表面に滴下して、自然乾燥24時間後の水跡を目視で調べた。不動態化処理された、および処理されなかった溶融アルミニウム−亜鉛めっき板の試料はいずれも水の跡を認めず、塗膜の耐水性が良好だった。
【0045】
実施例3
脱イオン水500ミリリットルにモリブデン酸ナトリウム6gを添加し、攪拌して溶解した;
攪拌しながらマンガン(II)ビス(二水素ホスファート)12gを添加して溶解した;
シリカ含有量が26.84重量%である塩基性シリカゾル100gを添加して、均一に攪拌した;
水溶性シリコーン−アクリル系エマルション(南通生達化工有限公司製、品番:SD−528、固形分含有率:45±2%)200gを加えた;
脱イオン水を補充して溶液の容積を1リットルにした;
リン酸によりpH値を6に調整して、本発明の溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材の不動態化処理剤を得た。
【0046】
油脂分の洗浄・除去処理を行った溶融アルミニウム−亜鉛めっき部材の表面に、本発明の溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材の不動態化処理剤をワイヤーバーコーターにより塗布し、70℃で加熱乾燥し、無色透明の塗膜が形成され、塗膜付着量は1200mg/m2であった。
【0047】
前記不動態化処理された、および処理されなかった溶融アルミニウム−亜鉛めっき板をそれぞれ採って試料にし、中性塩水噴霧試験と耐水性試験を実施し、実施した結果を以下に示した。
(1)中性塩水噴霧試験において、不動態化処理されなかった溶融アルミニウム−亜鉛めっき板の試料は、表面に黒変発生開始が平均8時間後だったが、不動態化処理された溶融アルミニウム−亜鉛めっき板の試料は、表面に黒変発生開始が平均84時間後だった。
(2)100℃の沸騰水約2ミリリットルを水平に設置した試料の表面に滴下して、自然乾燥24時間後の水跡を目視で調べた。不動態化処理された、および処理されなかった溶融アルミニウム−亜鉛めっき板の試料はいずれも水の跡を認めず、塗膜の耐水性が良好だった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料として2〜6重量部の水溶性モリブデン酸塩、4〜12重量部の水溶性マンガン塩、50〜100重量部の塩基性シリカゾルおよび50〜100重量部の水溶性有機樹脂を含むことを特徴とする溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤。
【請求項2】
前記水溶性モリブデン酸塩がモリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸アンモニウムおよびモリブデン酸カリウムのうちの少なくとも一種であり、前記水溶性マンガン塩がマンガン(II)ビス(二水素ホスファート)、硫酸マンガン、塩化マンガンおよび硝酸マンガンのうちの少なくとも一種である請求項1に記載の溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤。
【請求項3】
前記塩基性シリカゾルのシリカの含有量が20〜40重量%である請求項1または2に記載の溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤。
【請求項4】
前記水溶性有機樹脂が水溶性スチレン−アクリル樹脂系エマルション、水溶性アクリル−シリコーン樹脂系エマルションおよび水溶性アクリル酸樹脂のうちの少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかの一つに記載の溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤。
【請求項5】
以下のステップ、
ステップa:水溶性モリブデン酸塩2〜6重量部、水溶性マンガン塩4〜12重量部を脱イオン水に添加して溶解する、
ステップb:ステップaで得た溶液に塩基性シリカゾル50〜100重量部を添加して均一混合する、
ステップc:ステップbで得た溶液に水溶性有機樹脂50〜100重量部を添加して均一混合する、
および
ステップd:リン酸を用いて、ステップcで得た溶液のpH値を5〜8に調整し、溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤を得る、
を含むことを特徴とする溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤の調製方法。
【請求項6】
前記水溶性モリブデン酸塩がモリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸アンモニウムおよびモリブデン酸カリウムのうちの少なくとも一種であり、前記水溶性マンガン塩がマンガン(II)ビス(二水素ホスファート)、硫酸マンガン、塩化マンガンおよび硝酸マンガンのうちの少なくとも一種であり、前記塩基性シリカゾルのシリカの含有量が20〜40重量%であり、前記水溶性有機樹脂が水溶性スチレン−アクリル樹脂系エマルション、水溶性アクリル−シリコーン樹脂系エマルションおよび水溶性アクリル酸樹脂のうちの少なくとも一種
である請求項5に記載の溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤の調製方法。
【請求項7】
前記ステップdで得た溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤において、モリブデン酸塩の濃度が2〜6g/リットルであり、水溶性マンガン塩の濃度が4〜12g/リットルであり、塩基性シリカゾルの濃度が50〜100g/リットルであり、水溶性有機樹脂濃度が50〜100g/リットル
であることを特徴とする請求項5または6に記載の溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤の調製方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤で処理された溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤で溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材を処理する溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材の不動態化処理方法。
【請求項10】
前記溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材をまず油脂分の除去・洗浄を行い、それから前記溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材用不動態化処理剤を前記溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材の表面に塗布し、加熱乾燥する請求項9に溶融アルミニウム−亜鉛めっき板材の不動態化処理方法。

【公表番号】特表2012−514690(P2012−514690A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544782(P2011−544782)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【国際出願番号】PCT/CN2010/071589
【国際公開番号】WO2011/020328
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(511117439)攀鋼集団鋼鉄▲凡▼▲太▼股分有限公司 (1)
【出願人】(511117440)攀鋼集団研究員院有限公司 (1)
【出願人】(511117451)攀鋼集団攀枝花鋼鐵研究院有限公司 (1)
【Fターム(参考)】