説明

溶融加工性デンプン組成物

【課題】実質的均一で従来型熱可塑性加工装置により溶融加工し得る澱粉および添加剤を含む澱粉組成物を提供する。
【解決手段】澱粉の重量平均分子量は約1,000から約2,000,000である。添加剤は可塑剤または希釈剤であり得る。澱粉および添加剤を含む上記組成物を、ダイを通じて通過させ、繊維、発泡体またはフイルムを作る手法により形成する。これらの組成物の伸張粘度は約50から約20,000パスカル・秒範囲である。この澱粉組成物は、澱粉と実質的に相容で、重量平均分子量が少なくとも500,000のポリマーを含有するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、実質的均一で、従来型熱可塑性加工装置により溶融加工し得る、望ましい流動学的特性を有する新規澱粉組成物に関するものである。
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
【0002】
澱粉分子が二種の形態、すなわち実質的直鎖構造のアミロースポリマーと高度に分岐したアミロペクチンポリマーの形態をとることは広く知られている。澱粉のこの二種の形態は著しく異なった諸性質を有するが、恐らくその理由は異なった分子間での水酸基の会合のし易さによる。アミロースの分子構造は2から5個の比較的長い分岐を有する実質的直鎖構造である。この分岐部分の平均重合度は約350モノマー単位である。主として適切な溶媒による希釈により、および、ある場合には加熱を伴う希釈により分子運動の充分な自由度が提供される条件下では、この直鎖アミロース鎖は、一つの鎖上の水酸基が隣接鎖上の水酸基と密接に近接するような態様で優先的に一列に配列できる。隣接アミロース分子のこの種の一列配列は、分子間水素結合を容易にするものと信じられる。対照的に、アミロペクチン分子は1,6−α結合を経由して高度に分岐している。この分岐部分の平均重合度は約25モノマー単位である。この高度分岐構造が原因でアミロペクチン分子は自由に運動できず、かつ容易に配列したり会合もしない。
【0003】
標準装置を用い、かつプラスチック産業で既知の従来型技術で天然澱粉を成形しようとする試みがなされた。天然澱粉は一般的には顆粒構造を有するので、熱可塑性材料同様にこれを溶融加工するには、加工に先立ち、”構造破壊”および/または修飾を行う必要がある。構造破壊するためには、通常、澱粉をその軟化点もしくは溶融点以上に加圧条件下に加熱する。澱粉顆粒の分子構造の溶融および不規則化が起こり、構造破壊した澱粉が得られる。澱粉の構造破壊、酸化、または誘導体化には化学薬剤または酵素製剤も使われる。修飾澱粉は生分解性プラスチックの製造に使われているが、この場合、修飾澱粉は添加剤としてまたは差ほど重要でない成分として石油系または合成系ポリマーに混合される。しかし、修飾澱粉それ自体を、または他材料とのブレンド中の主成分として、澱粉組成物を金型成形または押出成形等の従来型熱可塑性加工技術を用い処理する場合は、完成品が欠陥を示す頻度が高い傾向がある。その上、修飾澱粉(単独またはブレンド中の主成分としての)は溶融延伸性に乏しいことが判明しており;結果的に、一軸または二軸延張加工で繊維、フイルム、起泡体その他へと加工することには成功していない。
【0004】
澱粉繊維を作る従来の試みは、主として湿式紡糸法に関係する。例えば、澱粉/溶媒コロイド懸濁体は、紡糸口金を通じて凝固浴中に押し出すことができる。この方法は、アミロースが配列して強く会合した凝集体を形成し、最終繊維に強さと結着性を提供する顕著な傾向に依存する。存在する全てのアミロペクチンは不純物として許容され、このものは繊維紡糸加工および最終製品の強度に逆効果を及ぼす。天然澱粉はアミロペクチンに富むことは公知なので、従来の接近法には、繊維紡糸に望ましいアミロースに富む部分を得る目的の天然澱粉前処理工程が包含される。この接近法は大量の澱粉部分(すなわちアミロペクチン部分)が廃棄されるので、商業的には明らかに不経済である。最近の技術では、天然アミロペクチン含有量が典型的に高い天然澱粉を湿式紡糸法で繊維化できる。しかし、この湿式紡糸繊維は粒が粗く、50ミクロンを超す繊維直径を有する。加えて、この方法で採用する大量の溶媒が、追加の乾燥工程および流出溶媒の回収もしくは処理工程を必要とさせる。湿式紡糸繊維に関する幾つかの引例には、次が包含される:米国特許第 4,139,699号 (Hernandezら、2 月13日、1979発行) ;米国特許第 4,853,168号(Edenら、8 月1 日、1989発行);および米国特許第 4,234,480号( Hermandezら、1 月6 日、1981発行)。
【0005】
米国特許第 5,516,815号および同第 5,316,578号(Buehlerら)は溶融紡糸法による澱粉繊維製造用の澱粉組成物に関する。この溶融澱粉組成物を、紡糸口金を通じて押し出し、紡糸口金上のダイオリフイス直径に比べて僅かに大きな直径(すなわちダイ膨潤効果)を有するフイラメントを作る。次いでフイラメントを圧伸装置で機械的もしくは熱機械的に引落して繊維直径を低減させる。
【0006】
米国第 4,900,361号(Sachettoら、8 月8 日、1989発行) ;同第 5.095,054号(Layら、3 月10日、1992発行);同第 5,736,586号(Bastioliら、4 月7 日、1998発行);および PCT公開 WO 98/40434 号(Hannaら、3 月14日、1997発行)には、熱可塑性加工可能な他の澱粉組成物の開示がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の概要)
この発明は、従来型熱可塑性材料加工装置を用いて溶融加工可能な澱粉組成物に関する。詳細には、この澱粉組成物は、一軸または二軸伸張力を利用して都合よく加工でき、優れた強度を有する最終製品を提供できる。さらに、この澱粉組成物は、極めて高い一軸または二軸伸張を達成するための溶融繊細加工に使用するのに適した流動学的特性を有する。
【0008】
この発明は、伸張粘度範囲が約50から約20,000パスカル・秒を示し、細孔数(capillary number)が少なくとも1である澱粉組成物に関する。一つの実施態様では、本発明による澱粉組成物中には、澱粉と実質的に相容性で、かつ少なくとも500,000の重量平均分子量を有するポリマーが均一混合されている。この澱粉組成物は望ましくは、溶融流れおよび/または溶融加工性を増強する目的の添加剤も含有する。
【0009】
(発明の具体的な説明)
本明細書で用いる”含む”なる用語は、各種成分、構成要素、または諸工程が、この発明の実施に共同で採用され得ることを意味する。したがって、上記”含む”なる用語中には、一層限定的用語である”から本質的になる”および”からなる”を包含する。
【0010】
本明細書で用いる”結合水”なる用語は、この発明による組成物を造る為に澱粉を他の成分と混合する以前に、澱粉中に天然に見いだされる水を意味する。用語”遊離水”は、この発明による澱粉組成物を造るために添加される水を意味する。当業者においては、一度諸成分が組成物へと混合されると、水はその起源によっては最早区別し得ないことを認めるはずである。したがって組成物中の水には、その起源には無関係に全ての水が包含される。
【0011】
本明細書で用いる全ての百分率、比率および割合は、特に言及しなければ組成物の重量%基準である。
【0012】
澱粉組成物
本発明者らは、意外にも、ある種の流動学的挙動を示す澱粉組成物が、従来型熱可塑性材料加工装置を用いて溶融加工されて、有用な繊維、フイラメント、起泡体またはフイルムに加工できることを見いだした。この場合の組成物は、澱粉および、好ましい実施態様では、高分子量ポマーおよび/または添加剤を含む。
【0013】
I. 諸成分
A.澱粉
天然に存在する澱粉は、D−グルコース単位からなる直鎖アミロースおよび分岐アミロペクチンポリマーの混合物である。このアミロースは、(1,4)−α−D連鎖で結合したD−グルコースの実質的直鎖のポリマーである。アミロペクチンは(1,4)−α−D連鎖および分岐点における(1,6)−α−D連鎖で結合したD−グルコース単位の高度分岐ポリマーである。天然型澱粉は比較的高濃度のアミロペクチンを含み、例えばコーンスターチは64−80%アミロペクチン、蝋質とうもろこしは93−100%アミロペクチン、米は83−84%アミロペクチン、馬鈴薯は約78%アミロペクチン、および小麦粉は73−83%のアミロペクチンを含む。この発明においては全ての澱粉が潜在的には有用ではあるが、この発明は、供給が充分で再生し易く経済的利点がある農作物資源由来の高アミロペクチン天然澱粉を用いて最も普通に実施される。
【0014】
本明細書中で用いる”澱粉”なる用語には、天然産非修飾澱粉、修飾澱粉、合成澱粉およびこれらの混合物、ならびにアミロースまたはアミロペクチン画分の混合物が包含される;澱粉は物理的、化学的もしくは生物学的方法またはこれらの併用により修飾できる。この発明における修飾または非修飾の選択は、所望最終製品に依存する。一実施態様では、この発明において有用な澱粉または澱粉混合物は、アミロペクチン含有率約20%から約100重量%、一層典型的には約40%から約90重量%、なお一層典型的には約60%から約85重量%(澱粉または澱粉混合物基準)を有する。
【0015】
天然型で好適な澱粉の中には、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、サゴ椰子澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、大豆澱粉、アロールート澱粉、アミオカ澱粉、ワラビ澱粉、ロトス澱粉、蝋質玉蜀黍澱粉、および高アミロースコーンスターチを包含するが、こらのみには限定されない。天然型澱粉特にコーンスターチおよび小麦澱粉は安価で供給が安定しているので好適な澱粉系ポリマーである。
【0016】
澱粉の物理的修飾は分子内または分子間修飾である。分子内修飾には、分子量および/または分子量分布の低減、ポリマー鎖空間配置の変更その他が包含され。分子間修飾には、澱粉分子の溶融および/または不規則化、結晶性、結晶の大きさ、および顆粒状寸法の低減その他が包含される。これらの物理的修飾の遂行は、エネルギー(熱的、機械的、熱機械的、電磁的、超音波的その他等の)、圧力、湿気、分別およびこれらの組み合わせの入力により行われる。
【0017】
通常、澱粉の化学的修飾中には、分子量および分子量分布の低減を目的にした酸もしくはアルカリ加水分解および酸化的鎖切断が包含される。澱粉の化学的修飾に適する化合物には、クエン酸、酢酸、グリコール酸、およびアジピン酸等の有機酸;塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、および例えば KH2 PO4 、NaHSO4 等の多塩基酸の部分塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のIaまたはIIa族金属の水酸化物;アンモニウム;過酸化水素、過安息香酸、過硫酸アンモニウム、過マンガン酸カリウム、重炭酸ナトリウム、次亜塩素酸塩等の酸化剤;ならびに、これらの混合物が包含される。
【0018】
この発明における好ましい化学薬剤には、過硫酸アンモニウム、硫酸、塩酸およびこれらの混合物が包含される。
【0019】
また化学修飾には、澱粉のOH基をアルキレン基、および他のエーテル、エステル、ウレタン、カルバメート、またはイソシアナート基形成物質と反応させることによる澱粉の誘導体化が包含される。ヒドロキシアルキル、アセチル、またはカルバメート化澱粉またはこれらの混合物は好適な化学修飾澱粉である。化学修飾澱粉の置換程度は0.05から3.0、好ましくは0.05から0.2である。
【0020】
澱粉の生物学的修飾には、細菌による炭水化物結合の消化、アミラーゼ、アミロペクターゼその他の酵素を用いた酵素的加水分解が包含される。
【0021】
澱粉結合水の通常の含有率は、澱粉の約5%から16重量%である。水含有率約8%から12重量%が最も普通である。この発明の一実施態様では、澱粉のアミロース含有率は通常0%から約80重量%、一層典型的には約20%から約35重量%(澱粉基準)である。
【0022】
非修飾天然澱粉は、一般的に極めて大きな分子量および広い分子量分布(例えば、天然コーンスターチは約10,000,000の平均分子量および1000を超す分子量分布を有する;ここで分子量分布は数平均分子量で割った重量平均分子量である)を有する。澱粉の平均分子量は、鎖分断(酸化的または酵素的な)、加水分解(酸またはアルカリ触媒的な)、物理的/機械的分解(例えば、加工装置への熱機械的エネルギー入力による)、またはこれらの組み合わせにより低減できる。これらの反応は、澱粉の分子量分布を約600未満、通常は約300未満へと低減させる。この熱機械的方法およ酸化法は、これらを溶融紡糸工程中でも、その場で、これを実施できるという追加的利点を提供する。
【0023】
一つの実施態様では、天然型澱粉を、塩酸または硫酸等の酸の存在下に加水分解して分子量および分子量分布を低減させる。他の実施態様では、溶融紡糸可能な組成物中に鎖分断剤を均一混合して、澱粉と他成分との混合と実質的同時に鎖分断反応を生起させる。使用に適する酸化的鎖分断剤の例には、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、次亜塩素酸塩、過酸化マンガンおよびこれらの混合物が包含されるが、これらのみには限定されない。この鎖分断剤の通常の添加量は、澱粉の重量平均分子量を所望の範囲まで低減させるのに充分な量である。例えば、一軸または二軸溶融繊細化法の場合、澱粉の重量平均分子量範囲は約1000から約2,000,000、一層典型的には約1500から約800,000、最も典型的には約2,000から約500,000である必要があることが判明した。上記分子量範囲の修飾澱粉を含む組成物が適切な溶融剪断粘度を有することが分かり、したがって改良された溶融加工性を有することが判明した。この改良溶融加工性が、加工時の妨害(例えば、破損、シヨット、欠陥、ハングアップ)を低減させ、製品外観および強度的諸性質を一層良好にすることは明らかである。
【0024】
この発明における実施態様の幾つかの例では、組成物は約5%から約99.99%、典型的には20%から約95重量%、一層典型的には約30%から約95重量%、さらに一層典型的には約50から約85重量%、さらに一層典型的には40%から70%、最も典型的には約45%から約65%の澱粉を含む。この発明における実施態様の幾つかの例[例えば、加工温度が高い(例えば>80℃)]では、70%から95%の澱粉含有量の採用が望ましい。澱粉中の結合水は、極性溶媒または可塑剤とし添加された非結合水との区別ができないので、組成物中の澱粉重量を論議する場合は、結合水を組成物の%として澱粉重量中に含めるべきではない。
【0025】
B.高ポリマー
澱粉と実質的相容性な高分子量ポリマー(以下”高ポリマー”と呼称)も、この発明における澱粉組成物に対する所望伸張粘度特性の達成目的には有用である。一つの実施態様では、短鎖(C1 からC3 )分岐を有する直鎖、または一つから三つの長鎖分岐を有する分岐構造ポリマーも本発明における使用には適するが、上記高ポリマーは実質的に直鎖構造を有することが好ましい。”実質的に相容性”なる用語は、組成物の軟化点または溶融点以上に加熱した場合、この高ポリマーが澱粉と実質的均一な混合物を形成し得ることを意味する(すなわち、この組成物が肉眼で透明または半透明にみえる)。
【0026】
Hildebrand溶解パラメーター(δ)は、澱粉とポリマーとの間の相容性を推定するのに使用できる。一般には、2種の材料の実質的相容性は、それらの溶解パラメーターが類似している際に期待できる。水のδ値は48.0MPa1/2 であり、通常の溶媒の中では最高であり、これは恐らく水の強力な水素結合能によるものであろう。澱粉のδ澱粉値はセルロースの値(約34MPa1/2) に類似する。
【0027】
理論に拘泥するわけではないが、本発明における使用に適するポリマーは、実質的相容性混合物の形成目的で、澱粉分子と分子レベルで相互反応するのが好ましい。この相互反応は、ポリマーと澱粉間の水素結合等の強力な化学型相互反応から、単なる物理的からみ合いまでの範囲に及ぶ。ここで有用なポリマーは高分子量で実質的直鎖型分子のポリマーが好ましい。アミロペクチン分子の高度に分岐した構造は、単一分子以内の分岐の近接性に起因して、分岐部分が分子間で相互反応しやすい。澱粉との相容性が原因で、適切なポリマーは分岐アミロペクチン分子との緊密な混合が可能になり、かつ化学的相互反応および/または物理的からみ合いが可能になり、その結果、このアミロペクチン分子はポリマー経由で互いに会合する。このポリマーは高分子量なので、各種澱粉分子と一斉に相互反応/からみ合いができる。すなわち、この高ポリマーは澱粉分子に対する分子的連鎖体として機能し得る。この高ポリマーの連鎖機能は、アミロペクチン含有量が大きな澱粉の場合に特に重要である。からみ合いおよび/または澱粉とポリマーとの間の会合は、澱粉組成物の溶融伸張性を増進させ、その結果、組成物が伸張加工に適するようになる。一つの実施態様では、この組成物は著しく高い延伸比(1000を超える)まで一軸で溶融繊細化できることが判明した。
【0028】
澱粉分子とのからみ合いおよび/または会合を有効に形成させるために、この発明において使用に適した高ポリマーは、少なくとも500,000の重量平均分子量を有する必要がある。このポリマーの重量平均分子量は典型的には約500,000から約25,000,000、一層典型的には約800,000から約22,000,000、なお一層典型的には約1,000,000から約20,000,000、最も典型的には約2,000,000から約15,000,000の範囲である。この高分子量ポリマーは、幾つかの澱粉分子と同時的に相互反応して溶融伸張粘度を増進させ、かつ溶融破壊を低減させる能力があるので、この発明における幾つかの実施態様では好ましい。
【0029】
好適なポリマーは、δ澱粉およびδホ゜リマー間の差異が約10MPa1/2 未満、好ましくは約5MPa1/2 未満、一層好ましくは約3MPa1/2 未満であるようなδホ゜リマー値を有する。好適な高ポリマーの例中には、ポリアクリルアミドおよびカルボキシル修飾ポリアクリルアミド等の誘導体;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、およびこれらの部分エステルを包含するアクリルポリマーおよび共ポリマー;ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンビニルアセテート、ポリエチレンイミンその他を包含するビニルポリマー;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンプロピレンオキシド、およびこれらの混合物等のポリアルキレンオキシドが包含されるが、これらのみに限定されない。上記ポリマーのいずれかから選択されたモノマー混合物から造られた共ポリマーも、この発明においては好適である。高ポリマーの他の例中には、アルギン酸塩、カラギーナン、ペクチンおよび誘導体、キチンおよび誘導体、その他等の水溶性多糖;グアルガム、キサンタムガム、寒天、アラビアガム、カラヤガム、トラガカントガム、イナゴマメガムその他等のガム;アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロースその他等のセルロース水溶性誘導体;およびこれらの混合が包含される。
【0030】
ある種のポリマー(例えば、ポリアクリル酸およびポリメタアクリル酸)は、高分子量範囲(すなわち500,000またはこれより大きい)のものは一般には市販されていない。小量の架橋剤を添加すると、この発明において使用するのに適した高分子量の分岐ポリマーを創ることができる。
【0031】
溶融吹き込み成形に使用する場合、上記高ポリマーを、紡糸工程中の溶融破壊および細孔破壊の顕著な低減に有効な量で本発明による組成物中に添加すると、比較的均一な直径を有する実質的連続な繊維が溶融紡糸できる。澱粉繊維、フイラメント、フイルムまたは起泡体を造るのに採用する方法に係わらず、使用ポリマーの組成物中含有率は、約0.001から約10重量%、一層典型的には約0.005%から約5重量%、なお一層典型的には約0.01%から約1重量%、最も典型的には約0.05%から約0.5重量%である。これらのポリマーが比較的低濃度で澱粉組成物の溶融伸張性を著しく改善し得ることを見いだしたことは予想外である。
【0032】
C.添加剤
上記澱粉組成物は、溶融流れ性および溶融加工性、特に溶融加工条件下の組成物の伸張性を増強する目的の添加剤を任意に含有できる。この添加剤は、澱粉組成物の溶融剪断粘度を低下させるための可塑剤および/または希釈剤として機能できる。
この発明における一つの実施態様では、この添加剤は、約0.001%から約95%、一層典型的には約5%から約80%、さらに一層典型的には約5%から約70%、さらに一層典型的には約15%から約50%、さらに一層典型的には約30%から約60%、最も典型的には約35%から約55%範囲の水準で使用される。この発明における他の実施態様(例えば、高ダイ温度採用の場合)では、添加剤は約5%から約30%範囲の水準で組成物中に好ましく均一混合される。
【0033】
1.可塑剤
使用する場合の可塑剤は、流れ、したがって溶融加工性の改良に有効な量で組成物中に添加できる。この可塑剤も最終製品の柔軟性を改良できるが、恐らくその原因は可塑剤による組成物のガラス転移温度低下によるものである。この可塑剤は、組成物物性を顕著に修飾し得る目的では、高分子成分と実質的に相容性であることが好ましい。ここで記載する”実質的に相容性”なる用語は、組成物を軟化温度および/または溶融温度以上に加熱した際に、可塑剤が澱粉と実質的に均一な混合物を形成し得ることを意味する(すなわち、組成物が肉眼で透明または半透明に見える)。
【0034】
ヒドロキシル可塑剤として使用に適する可塑剤は、少なくとも1個のヒドロキシル基、好ましくはポリオール基を有する有機化合物である。理論に拘るわけではないが、可塑剤のヒドロキシル基は澱粉マトリックス材料と水素結合を形成することにより相容性を増進させるものと信じられる。有用なヒドロキシル可塑剤の例には、グルコース、スクロース、フラクトース、ラフイノース、マルトデキストロース、ガラクトース、キシロース、マルトース、ラクトース、マンノース、エリトロース、グリセロール、およびペンタエリスリトール等の糖類;エリスリトール、キシリトール、マルチトール、マンニトールおよびソルビトール等の糖アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサントリオール、およびその他、ならびにこれらのポリマー等のポリオール;およびこれらの混合物が包含される。
【0035】
また、ヒドロキシル可塑剤として有用なものには、ポロキソマー(ポリオキシエチレン/ポリオキソプロピレンブロック共ポリマー)およびポルオキサミン(エチレンジアミンのポリオキシエチレン/ポリオキソプロピレンブロック共ポリマー)がある。適切な”ポロキソマー(poloxomer)”には、次の構造を有するポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックの共ポリマーが包含される:

HO-(CH2-CH2-O)X-(CHCH3-CH2-O)Y-(CH2-CH2-O)Z-OH

式中、xは約2から約40範囲の値であり、yは約10から約50範囲の値であり、zは約2から約40範囲の値であり、好ましくはxおびzは同じ値である。これらの共ポリマーは BASF Corp., Parsippany, NJ. から「PluronicR 」として市販される。好適なポルオキソマーおよびポルオキサミンは ICI Chmicals, Wilmington, DE. から「SynperonicR 」として、または BASF Corp., NJ. から「TetronicR 」として市販される。
【0036】
また無ヒドロキシル基の可塑剤として使用に適するものは、ヒドロキシ基を含有しない他の水素結合形成性有機化合物であり、これらには尿素および誘導体;ソルビタン等の糖アルコールの無水物;ゼラチン等の動物タンパク質;ヒマワリタンパク質、大豆タンパク質および綿実タンパク質等の植物タンパク質;ならびに、これらの混合物が包含される。可塑剤の全ては単独または混合物として使用できる。
【0037】
通常、ヒドロキシル可塑剤の含有量率は約1重量%から約70重量%、一層典型的には約2重量%から約60重量%、最も典型的には約3重量%から約40重量%(澱粉組成物基準)である。無ヒドロキシル基の可塑剤の含有率は典型的には約0.1重量%から約70重量%、一層典型的には約2重量%から約50重量%、最も典型的には約3重量%から約40重量%(澱粉組成物基準)である。
【0038】
一つの実施態様では、ヒドロキシ可塑剤と無ヒドロキシルの可塑剤との混合物が使用され、この場合のヒドロキシル可塑剤は、スクロース、フルクトースおよびソルビトール等の糖類であり、無ヒドロキシルの可塑剤は尿素および尿素誘導体である。この発明における澱粉組成物中の尿素およびその誘導体は、結晶化する強い傾向があり、すなわち、尿素およびその誘導体の結晶化は、溶融吹き込み、スパンボンデイング、溶融押出、湿式紡糸その他等の急速冷却条件下でさえも生起する。したがって尿素および尿素誘導体は、この発明の澱粉組成物の固化速度の修飾用または制御用凝固剤として使用可能である。好ましい実施態様では、スクロースと尿素との混合物を、所望の溶融加工速度および固化速度を達成するのに有効な量で澱粉/ポリマー組成物中に添加する。
【0039】
2.希釈剤
澱粉組成物の剪断粘度の調整および溶融紡糸性の向上目的で、この発明による澱粉組成物中には、希釈剤として機能する極性溶媒等の材料を任意に添加できる。一般的に、溶融剪断粘度は希釈剤含有量が増加するにしたがって非直線的態様で低減する。希釈剤の全組成物中への添加率は典型的には約5重量%から約60重量%、一層典型的には約7重量%から約50重量%、最も典型的には約10重量%から約30重量%である(全組成物基準)。
【0040】
希釈剤として機能できる材料の例は、約28から約48MPa1/2 領域の溶解パラメーターδを有する極性溶媒である。この例中には、水、C1 からC18 直鎖または分岐型アルコール、 DMSO ( ジメチルスルホキシド)、ホルムアミド;およびN−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド等のホルムアルデヒド誘導体、アセトアミドおよびメチルアセトアミド等のアセトアミド誘導体、「CellosolvR」(グリコールアルキルエーテル)およびブチル「CellosolvR」、ベンジル「CellosolvR」、「Cellosolv 」アセテート(全ての CellosolvR および誘導体は J.T.Baker, Phillipsburg, NLから市販)等の誘導体、ヒドラジン、およびアンモニウムが包含されるが、これらのみには限定されない。溶媒混合物のδ値は個々の溶媒のδ値の容量平均により決定可能であることは既知である。したがって、上記範囲(すなわち、約19から約48MPa1/2 )のδ値を有する混合溶媒も、この発明における使用に適する。90/10(v/v)の組成の DMSO/水の混合溶媒は約31.5のδ値を示し、本発明における使用に適する。
【0041】
水素結合を形成し得る極性溶媒は、この発明による組成物の溶融粘度低減には一層有効であることが判った。したがって、溶融紡糸の場合に所望範囲の粘度に調整する目的では、一層少ない量の極性溶媒で充分である。一層小量の極性溶媒の使用は、溶融加工中または加工後の蒸発工程の必要性を低減させるという、さらなる利点が提供され、その結果、エネルギー消費の低下および溶媒回収コストの低減ならびに環境/規制対策費用低減につながる。
【0042】
この澱粉組成物は、溶融組成物の粘度修飾剤として主として機能する液状または揮発性加工助剤を任意に含有できる。この加工助剤は溶融加工中に実質的に蒸発・回収されるので、最終製品中には痕跡量しか残留しない。このように、この助剤は最終製品の強度、モジュラスまたは他の性質に逆効果を与えない。上記開示の極性溶媒は、揮発性加工助剤としても機能する。この例中には、重炭酸ナトリウム等の炭酸塩が包含されるが、これらのみには限定されない。
【0043】
D.他の任意成分
加工性修飾の目的および/または最終製品の弾性、引張り強度およびモジュラス等の物理特性の修飾目的で、この紡糸用澱粉組成物中には他の成分も任意に均一混合できる。これらの例には、酸化剤、架橋剤、乳化剤、界面活性剤、解結合剤、滑剤、他の加工助剤、任意増白剤、酸化防止剤、難燃剤、染料、顔料、フイラー、タンパク質およびそのアルカリ塩類、生分解性合成高分子体、ワックス、低融点合成熱可塑性ポリマー、粘結樹脂、伸展剤、湿式強度用樹脂、ならびに、これらの混合物が包含されるが、これらのみには限定されない。
【0044】
これらの任意成分の組成物中含有率は、約0.1%から約70%、典型的には約1%から約60%、一層典型的には約5%から約50%、および最も典型的には約10%から約50%範囲の量である(組成物重量に対して)。
【0045】
生分解性合成ポリマーの例には、ポリカプロラクトン;ポリヒドロキシブチレートおよびポリヒドロキシバレレートを包含するポリヒドロキシアルカノエート;ポリラクチド;ならびに、これらの混合物が包含される。
【0046】
本発明における加工時の澱粉材料の流れ特性を改良する目的で、滑剤化合物をさらに添加できる。滑剤化合物の例には、好ましくは動植物性油脂特に水素添加型油脂類、中でも室温固形状の油脂類が包含される。これら以外の滑剤材料の例には、モノグリセリド、ジグリセリドおよびホスフアチド特にレクチンが包含される。本発明の場合に好ましい滑剤化合物には、モノグリセリド、グリセロールモノステアレートが包含される。
【0047】
マグネシウム、アルミニウム、ケイ素およびチタンの酸化物等の無機粒子を包含する添加剤が、安価なフイラーまたは伸展剤としてさらに添加できる。加えて、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、リン酸塩等を包含する無機塩類等の添加剤も使用できる。
【0048】
考慮する最終製品の特定用途に応じて他の添加剤も使用できる。例えば化粧用テイシュー、使い捨てタオル、美顔テイシューおよび他の類似製品等の製品では、湿式強度が望ましい属性である。したがって”湿式強度”樹脂として既知の架橋剤を澱粉ポリマー中に添加することがしばしば望ましい。
【0049】
紙製品に利用される湿式強度樹脂の種類に就いての一般的論説は、 TAPPI モノグラフシリーズ No.29、”紙および板紙における湿式強度”(Wet Strength in Paper and Paperboard), Technical Association of the Pulp and Paper Industry (New York, 1965)中に開示がある。最も有用な湿式強度樹脂は一般にカチオン性を示す。ポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂はカチオン性ポリアミドアミン−エピクロロヒドリン系湿式強度樹脂であり、このものは特に利用価値があることが判った。この種の適切な樹脂の例は、米国特許第 3,700,623号公報(Keim、10月24日、1972付)および同第 3,772,076号公報(Keim、11月13日、1973付)中に記載があり、ここに引用として加入する。有用なポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂の一つの発売元は Hercules, Inc. of Wilmington, Delaware であり、商品名「Kymene 」としてこの種の樹脂を市販する。
【0050】
グリオキシル化ポリアクリルアミド樹脂も湿式強度樹脂として有用であることが判った。これらの樹脂は米国特許第 3,556,932号公報(Cosciaら、1 月19日、1971付)および同第 3,556,933号公報(Williamsら、1 月17日、1971付)中に記載があり、ここに引用して加入する。グリオキシル化ポリアクリルアミド樹脂の一つの発売元は Cytec Co. of Stanford, CTであり、ここでは商品名「ParezR 631 NC 」としてこの種の樹脂を市販する。
【0051】
「ParezR 631 NC 」等の適切な架橋樹脂を本発明における澱粉組成物中に酸性条件下で添加すると、この組成物が水不溶性になる。後記試験法で試験されるような、この組成物の水溶解性は30未満、典型的には20%未満、一層典型的には10%未満、最も典型的には5%未満である。この種の組成物から製造した繊維、フイラメントおよびフイルム等の製品も水不溶性である。
【0052】
この発明において利用価値がある他の水溶性カチオン樹脂は、尿素ホルムアルデヒド樹脂およびメラミンホルムアルデヒド樹脂である。これらの多官能樹脂の一層普通の官能基はアミノ基等の窒素含有基および窒素に結合したメチロール基である。ポリエチエンイミン型樹脂も本発明において有用であることが判明した。加えて、「CaldasR 10 」(Japan Carlit 製)および「CoBondR 1000」(National Starch and Chemical Company製)等の一時的湿式強度樹脂も本発明において使用できる。
【0053】
本発明における適切な架橋剤の添加量は組成物に対して約0.1重量%から約10重量%、一層典型的には約0.1重量%から約3重量%範囲である。
【0054】
II. 上記澱粉組成物の流動学
従来型熱可塑性材料加工法を採用して繊維、フイラメント、フイルムまたは起泡体を製造するためには、この澱粉組成物が、ある範囲内の伸張粘度およびある範囲内の細孔数を包含する、ある種の流動学的挙動を加工時に示すことが必要である。
【0055】
ここで使用する”澱粉フイラメント”なる用語は、主軸に対して垂直な繊維の二つの相互直交軸に比べて極めて長い主軸を有する、細長く、薄く高度に柔軟な澱粉系物体である。主軸に垂直なフイラメント断面の当量直径(以下に定義)に対する主軸長のアスペクト比は100/1を超過する比、一層具体的には500/1を超す比、さらに一層具体的には5000/1を超す比である。この澱粉フイラメントは、水、可塑剤および任意の他の添加剤等の他物質を含んでいてもよい。
【0056】
伸張または伸び粘度(ηe )は、組成物の溶融伸張性に関するもので、繊維、フイルム、フラメントまたは起泡体の製造の場合の伸張加工では特に重要である。この伸張粘度については3種の変形が包含される:一軸または単一伸張粘度、二軸伸張粘度、および純剪断伸長粘度である。一軸伸張粘度は、繊維紡糸、溶融吹き込み、およびスパンボンデイング等の一軸伸張加工の場合に重要である。他の2種の型の伸張粘度は、フイルム、フイラメント、起泡体およびシートならびに部品を製造する場合の二軸伸張または二軸成形加工の場合に重要である。
【0057】
ポリオレフィン、ポリアミドおよびポリエステル等の従来型繊維紡糸用熱可塑性樹脂の場合、これらの従来型熱可塑性材料とそれらのブレンドの、伸張粘度と剪断粘度間には高度の相関関係がある。すなわち、紡糸性は主として溶融伸張粘度により制御される性質であるが、材料の紡糸性は溶融剪断粘度により単純に決定できる。この相関関係は極めて強堅で、繊維産業では溶融紡糸性材料の選択および処方は、この溶融伸張粘度に依存している。この溶融伸張粘度は工業用スクリーニング手段としては殆ど使用されていない。
【0058】
したがって、本発明における澱粉組成物が、剪断粘度と伸張粘度との間での、この種の相関関係を必ずしも示さないことを見いだしたことは予想外である。本発明における澱粉組成物は非ニユートン流体に典型的な溶融流れ特性を示すので、この組成物の歪み硬化挙動すなわち伸張粘度は、歪みまたは変形が増すにつれて増加する。
【0059】
例えば、本発明に従って選択した高ポリマーを澱粉組成物中に添加した場合、組成物の剪断粘度は比較的に変化せずに留まるか、または僅かに増加しさえする。従来の考えに準拠すれば、この種の澱粉組成物は溶融加工性の低下を示し、したがって、溶融伸張加工には適さないはずである。しかし予想外にも、本発明における澱粉組成物は、小量の高ポリマーを添加した場合でも伸張粘度が顕著に増加することが見いだされた。結果として、本発明における澱粉組成物は増強された伸張粘度性を有し、かつ、溶融伸張加工(例えば、吹き込み成形、スパンボンデイング、吹き込みフイルム成形、発泡成形、その他)に適する。
【0060】
後記試験法に準拠して測定した、剪断粘度が約30パスカル・秒未満、典型的には約0.1から約10パスカル・秒、一層典型的には約1から約8パスカル・秒の澱粉組成物は、本発明における溶融繊細化に有用である。ある種の澱粉組成物は低い溶融粘度を示すので、計量ポンプおよび紡糸口金を具備した固定ミキサー等の粘性流体用に用いる従来型ポリマー加工装置中で混合、搬送または処理が可能である。この澱粉組成物の剪断粘度は澱粉の分子量および分子量分布、高ポリマーの分子量、および使用可塑剤量および/または溶媒量により有効に修飾できる。澱粉の平均分子量の低減は組成物の剪断粘度低減に対する有効な手段であることが判った。
【0061】
本発明による一実施態様では、本発明における溶融加工性澱粉組成物の伸張粘度の範囲はダイ温度で、約50パスカル・秒から約20,000パスカル・秒、典型的には約100パスカル・秒から約15,000パスカル・秒、一層典型的には約200パスカル・秒から約10,000パスカル・秒、さらに一層典型的には約300パスカル・秒から約5,000パスカル・秒、最も典型的には約500パスカル・秒から約3,500パスカル・秒である。この伸張粘度は、後記の分析法中に記載の方法に準拠して計算する。
【0062】
澱粉組成物の伸張粘度を包含する流動学的挙動には多くの因子が影響するが、これらの因子中には、使用高分子成分の量と型、澱粉および高ポリマーを包含する成分の分子量および分子量分布、澱粉のアミロース含有量、添加剤の量と型(例えば、可塑剤、希釈剤、加工助剤)、温度、圧力および変形速度等の加工条件、相対湿度、非ニユートン材料の場合は変形履歴(すなわち、時間または歪み履歴存性)が包含される。
【0063】
本発明における一つの好ましい実施態様では、高ポリマーの存在および性質が溶融伸張粘度に顕著な影響を及ぼすことが判った。本発明における澱粉組成物の溶融伸張性の増進に有用な高ポリマーは、典型的には高分子量で、実質的に直鎖型ポリマーである。その上、澱粉と実質的に相容性の高ポリマーは澱粉組成物の伸張性を増強するのに最も有効である。
【0064】
溶融伸張加工に有用な澱粉組成物は、選択された高ポリマーが組成物中に添加された場合は、通常少なくとも10倍も伸張粘度を増強することが判明した。本発明における澱粉組成物は、選択された高ポリマの添加時に典型的には約10から約500倍、一層典型的には約20から約300倍、最も典型的には約30から約100倍も伸張粘度が高まることを示す。高ポリマー濃度が高い程、伸張粘度の増加が大きい。
【0065】
使用澱粉の型および濃度も澱粉組成物の伸張粘度に影響を与える。一般的に、アミロース含有量が減少すると、伸張粘度が増加する。また一般的には、処方範囲以内で澱粉分子量が高まると、伸張粘度が増加する。最後に、一般的には組成物中の澱粉濃度が高まると、伸張粘度が高まる(逆に一般的には、組成物中の添加剤濃度が高まると、伸張粘度が低減する)。
【0066】
伸張流れ挙動を表すにはトルートン比(Tr)が使われることが多い。このトルートン比は、伸張粘度(ηe )と剪断粘度(ηs )との間の比として定義される:
【数1】

式中、伸張粘度ηe は変形速度(ε)および時間(t)に依存する。ニユートン流体の場合、一軸伸張トルートン比は定数3である。本発明の場合の澱粉組成物のように非ニユートン流体の場合、伸張粘度は変形速度(ε)および時間(t)に依存する。本発明による溶融加工組成物のトルートン比は少なくとも3であることが判った。加工温度および700s-1で測定した場合の典型的なトルートン比は、約10から約5000、一層典型的には約20から約1000、さらに一層典型的には約30から約500である。ここで”加工温度”なる用語は、本発明における澱粉繊維、フイラメント、フイルムまたは起泡体が例えば繊細化により形成される場合の澱粉組成物の温度である。
【0067】
また本発明者は、ダイを通過する際の澱粉組成物の細孔数(Ca) が、溶融加工性に対して重要であることを見いだした。この細孔数(Ca)は表面張力に対する粘性流体力の比で表される無次元数である。細孔ダイ出口近辺で、この粘性力が表面張力よりも著しく大きくなければ、流体フイラメントは液滴へと破砕され、この現象は通常噴霧現象と呼称される。細孔数は次の方程式に従って計算される:
Ca = (ηs ・Q)/(π・r2 ・σ)
式中、ηs は、剪断速度 3000 s-1 で測定した剪断粘度(パスカル・秒)であり、Qは細孔ダイ通じて流れる容量単位流量(m3 /秒)、rは細孔ダイ半径(m)(非環状オリフイスの場合は、当量直径/半径が使用できる)であり、σは流体の表面張力(ニユートン/m)である。
【0068】
上記のように細孔数は剪断粘度に関係するので、剪断粘度(上記の)に影響するのと同一要因および同一態様で影響を受ける。
【0069】
本発明における一実施態様での溶融加工澱粉組成物は、ダイ通過に際して少なくとも約1の細孔数、典型的には1から100の範囲、一層典型的には約3から約50の範囲、最も普通には約5から約30範囲の細孔数を有する。
【0070】
III. 澱粉繊維、フイルムまたは起泡体を造るための本発明における方法
本発明における澱粉組成物は流動状態で加工され、この状態は典型的には”溶融温度”に少なくとも等しい温度か、またはこれを超える温度で生起する。したがって加工温度範囲は澱粉組成物の”溶融温度”により制御され、この溶融温度は後に詳しく記載する試験法に準拠して測定される。典型的加工温度は約20から約180℃、一層具体的には約20から約90℃、最も具体的には約50から約80℃の範囲である。
【0071】
ある種の澱粉組成物は疑似熱可塑性組成物なので、純粋な”溶融”挙動は示さない。ここに記載の”疑似熱可塑性組成物”なる用語は、高温で流動状態にもたらされる程度に軟化し、かつ、この状態で所望形状に成形し得る材料を指す。疑似熱可塑性材料は熱と圧力との同時付与の条件下に成形できる。この疑似組成物の軟化または液状化は、存在する軟化剤または溶媒により引き起こされ、これらの存在なしには疑似組成物は溶融しないので、温度または圧力を与えても成形に必要な軟化または流動状態へともたらすことは不可能である観点において、熱可塑性組成物とは異なる。
【0072】
ここで記載する”溶融温度”なる用語は、この温度またはそれを超す温度で組成物が溶融または軟化する温度または温度範囲を意味する。本発明における澱粉組成物の溶融温度は、約20から180℃、一層具体的には約20から約90℃、最も具体的には約50から約80℃の範囲である。一般的には澱粉組成物中に存在する澱粉固形分が多い程、組成物溶融温度はこの範囲内で一層高い。澱粉組成物を繊維、フラメント、フイルムまたは起泡体に加工するためにダイを使用する場合、ダイ温度は澱粉組成物の溶媒温度より高く保持する。一般的には、ダイ温度を高めると、澱粉組成物の伸張粘度は低減する。
【0073】
澱粉組成物の一軸伸張加工法の例には、溶融紡糸、溶融吹き込み、およびスパンボンデイングが包含される。これらの方法は次の米国特許中に詳細な記載があり、これらの開示を引用によりここに加入する:米国特許第4,064,605号(Akiyamaら、12月27日、1977付)、同第4,418,026号( Blackieら、11月29日、1983付)、同第4,855,179号( Bourlandら、8 月 8日、1989付)、同第4,909,976号( Cuculoら、3 月20日、1990付)、同第5,145,631号( Jezicら、9 月 8日、1992付)、同第5,516,815号(Buehlerら、5 月14日、1996付)、同第 5,342,335号( Rhimら、8 月30日、1994付)。
【0074】
本発明における澱粉組成物の流動学的挙動は、組成物の静電加工法への適用も容易にさせる。澱粉繊維またはフイラメントは電気紡糸法により製造でき、この場合、澱粉溶液に電場を適用して荷電澱粉ジェットを形成させる。この電気紡糸法は当業者には公知である。”電気紡糸法および電気紡糸繊維の応用”と題する論説(Doshi, Jayesh による Natwarlal, Ph.D. 1994)は電気紡糸法に付き記載し、この方法に関与する力について研究している。また、この論説は、電気紡糸フイラメントの、幾つかの商業的応用についても開拓している。電気紡糸法原理を記載する目的で、この論説を引例としてこの明細書中に加入する。
【0075】
米国特許第1,975,504号(10月 2日 1934付);同第 2,123,992号(7 月 19日 1938日付);同第 2,116,942号(5 月 10日 1938付);同第2,109,333号(2 月 22 日 1938付);同第2,160,962号(6 月 6 日 1939 付);同第2,187,306号(1 月16日 1940付);同第 2,158,416号(5 月 16 日 1939付)(以上いずれもFormhals)は電気紡糸法およびその装置を記載する。
【0076】
電気紡糸法を記載する他の引例には次が包含される:
米国特許第3,280,229号(Simonsら、10月8 日 1966付);同第4,044,404 号(Martinら、8 月 30 日 1977付);同第4,069,026 号(Simmら、1 月17日 1978付);同第4,143,196号(Simmら、3 月 6日 1979付);同第 4,223,101号(Fineら、9 月 16 日1980付);同第4,230,650 号(Guignardら、10月28日 1980付);同第4,232,525 号(Enjoら、11月11日 1980付);同第4,287,139号(Guignardoら、9 月 11 日1981付);同第4,323,525号(Bornatら、8 月6 日 1982付);同第4,552,707号(Howら、11月12日 1985付);同第4,689,186号(Bornatら、8 月25日 1987付);同第4,798,607号(Middletonら、1 月17日 1989付;同第4,904,272号(Middletonら、2 月27日 1990付);同第4,968,238 号(Satterfieldら、11月 6日 1990付);同第5,024,789号(Barryら、1 月18日 1991付);同第6,106,913号(Scardinoら、8 月22日 2000付);同第6,110,590 号公報(Zarkoobら、8 月29日 2000付)。これらの開示を、電気紡糸法の一般的原理および関連装置の記載の目的で本明細書の記載中に引用として加入する。
【0077】
上記方法のいずれかで製造した繊維またはフイラメントは、空気、油および水用フイルター;減圧クリナーフイルター;顔マスク;コーヒーフイルター;茶またはコーヒー袋;熱絶縁材および音絶縁材;おむつ、女性用パッド、および失禁用品;マイクロファイバーまたは呼吸性織布等の、湿気吸収性が改良された、膚ざわりの良い生分解性織布;塵埃収集および除去用の静電負荷構造ウエブ;ラップ用紙、筆記用紙、ニユースプリント、波形板紙等の硬質級紙に使用する強化部材およびウエブ;トイレットペーパー、ペーパータオル、ナプキンおよび美容テイシュー等のテイシュ級紙に使用するウエブ;外科用ドレープ、傷用包帯および絆創膏、皮膚用パッチおよび自己溶解性縫合用糸等の医療用途;歯科用糸ようじ、および歯ブラシ毛等の歯科用途などに使用先を見いだせる。繊維ウエブ中には、特定用途向け臭気吸収材、シロアリ防除材、殺虫材、げつ歯類動物防除材、その他が包含される。作られた物品は水および油を吸収するので水や油類の汚れ清掃用に使用でき、または農業用途または園芸用途の保水制御材および水分放出・制御材としての用途が見いだせる。澱粉繊維または繊維ウエブは、製材ダスト、木材パルプ、プラスチックおよびコンクリート等の他の材料中に混合して、壁材、支持ビーム材、圧縮ボード材、乾燥壁、バッキング材および天井タイル材等の建築材料;キヤスト、副木および舌押し下げ器具等の他の医療用途;ならびに装飾および/または燃焼目的の暖炉用丸太として使用可能な複合材料中に均一混合できる。
【0078】
本発明における澱粉組成物の溶融流動学的挙動に起因して、この澱粉組成物は二軸伸張を包含する従来型熱可塑性加工法に適合できるようになる。適切な溶融剪断粘度および二軸伸張粘度を示すことにより、本発明における澱粉組成物は、連続運転を阻害して不満足な製品を生じさせる引き裂け、表面欠損および他の破損もしくは欠損の生起を実質的に低減し得る。これらの方法には、吹き込み成形、インフレートフイルム押出もしくは共押出、真空成形、圧空成形、圧縮成形、トランスフアー成形および射出成形が包含される。これらの方法の詳細は、米国特許第 5,405,564号(Steptoら、4 月11日 1995付);同第 5,468,444号(Tazakiら、11月21日 1995 付);同第 5,462,982号公報(Bastioliら、10月31日 1995付)に記載があり、これら全ての開示を引例としてこの明細書中に加入する。これらの方法により製造される物品中には、シート、フイルム、塗装物、ラミネート、パイプ、ロッド、袋;および瓶,容器等の造形品が包含される。これらの物品中には、買い物袋、乾物袋、および塵芥袋等の袋類;食品貯蔵または調理用ポーチ;冷凍食品用の電子レンジ用容器;ならびに医薬用カプセルまたはコーチング等の医薬用品が包含される。フイルムは、食品ラップ、収縮ラップまたは窓付き封筒としての用途向けに実質的に透明になし得る。フイルムは、種子または肥料用等の他の材料向けの安価な生分解性キヤリヤーとして使用する目的で、さらに加工処理できる。ラベル等の他の用途向けのフイルムやシートには接着材を塗布してもよい。
【0079】
本発明における澱粉組成物は、揮発性成分(例えば、水、極性溶媒)の離脱を制御することにより、発泡構造体へと成形できる。しかし発泡性または多孔性内部構造を有する物品の製造には一般には発泡剤または膨張剤が使用される。発泡剤または膨張剤の例中には、二酸化炭素、n−ペンタン;重炭酸ナトリウム等の炭酸塩類が包含され、これらは単独または側鎖カルボキシル基を有する高分子酸(例えば、ポリアクリル酸、エチレン−アクリル酸共重合体)との併用で使用される。発泡および成形法の例示は次の米国特許第 5,288,765号(Bastioliら、2 月 22 日 1994付;同第5,496,895号(Chinnaswamyら、3 月 5日1996付);同第 5,705,536号(Tomka ら、1 月 6日1998付);同第 5,736,586号公報(Bostioliら、4 月 7日、1998付)に記載があり、これらの開示を引例としてここに加入する。作られた製品は卵用カートン;温飲料用発泡カップ;フアスト食品用容器;肉用トレー;遠足または旅行用使い捨てプレートおよびボウル;荷造り物品(例えば、コンピユーター出荷用容器)に順応させる目的の、緩め充填または型入れのいずれかの包装材料;熱絶縁材;ならびに騒音遮断材または防音材としての用途が見いだされる。
【0080】
IV.本発明による繊維、フイルムおよび起泡体の特性
本発明による澱粉組成物を一軸伸張法で加工すると、(DO2/D2 )で表される引伸比(DO は圧伸に先立つフイラメントの当量直径、およびDは引伸された繊維の当量直径)が1000を超える比を容易に達成できる。本発明における澱粉組成物の場合に達成できる典型的引伸比は、約100から約10,000、一層典型的には約1000を超す比、さらに典型的には約3000を超す比、最も典型的には約5000を超す比である。一層具体的には本発明における澱粉組成物は、有限平均当量直径が10ミクロン未満、および一層具体的には5ミクロン未満の繊細な繊維またはフイラメントへと引伸すに充分な伸張性を有する。
【0081】
本発明において記載する”当量直径”なる用語は、断面部分の形状に無関係に、本発明における澱粉繊維またはフイラメントの断面積および表面積を定義するのに用いる。したがって当量直径とは、式 S=1/4πD2 (式中、Sは澱粉繊維またはフイラメントの断面積(幾何学的形状に無関係に)、π=3.14159 、Dは当量直径)を満足するパラメーターである。例えば、二つの対面側”A”および二つの対面側”B”により形成された長方形の断面積は、式S=A×Bで表される。同時に、この断面積は当量直径を有する環面積として表すことができる。したがって、当量直径Dは、式S=1/4πD2 (Sはこの長方形の既知面積)から計算できる(当然ながら、環の当量直径はその環の真の直径である)。
【0082】
”デシテックス”または”dtex” は 10,000 メーター当りのグラムで表した澱粉繊維の測定単位である。本発明によれば、澱粉繊維の寸法は約0.01デシテックスから約135デシテックス、一層具体的には約0.02デシテックスから約5デシテックスの範囲である。澱粉繊維は、環状、長円状、長方形、三角形、六角形、十字状、星状、不規則状およびこれらのいずれかの組み合わせ形状を包含する、各種の断面形状を呈し得る。この種の多様な形状は、澱粉繊維を製造するために使用するダイノズルの形状の差異により形成できることは当業者には理解し得るところであろう。
【0083】
本発明における澱粉組成物を二軸伸張法で加工すると、高められた溶融加工性に起因して、有限平均キヤリパー0.8ミル未満、典型的には0.6ミル未満、一層典型的には0.4ミル未満、さらに一層典型的には0.2ミル未満、最も典型的には0.1ミル未満のフイルムへと溶融引伸しができる。
【0084】
試験法
A. 剪断粘度
この組成物の剪断粘度は、細孔粘度計(Rheograph 2003 型、Goettfert 製)を用いて測定する。この測定は、直径Dが1.0mmで長さLが30mm(すなわち、L/D=30)の細孔ダイを用いて実施する。このダイをバレル低端部に取り付け、バレルを試験温度範囲25℃から90℃に保持する。この試験温度(t)に再加熱した試料組成物を粘度計のバレル部に負荷し、バレル部を実質的に満たす(約60グラムの試料を使用)。バレルを特定温度(t)に加熱する。試料負荷後に表面に気泡が生じたら、試験開始に先立だつ組成物を用いて試料から取り込み空気を排除する。細孔ダイを通じて試料がバレルから設定速度で押し出されるような態様でピストンをプログラム化する。細孔ダイを通じて試料がバレルから出る際に、試料は圧力損失を経験する。この圧力損失および細孔ダイを通じた流速から見掛け剪断粘度を計算する。この対数 log(見掛けの剪断粘度)を log (剪断速度)に対してプロットすると、このプロットは、パワーの法則 η=Kγn-1 (Kは材料の定数、γは剪断速度)に従う。本発明における組成物の剪断粘度報告値はこのパワーの法則関係を用いた剪断速度3000s-1の外挿である。
【0085】
B. 伸張粘度
伸張粘度は細孔粘度計(Rheograph 2003 型、Goettfert 製)を用いて測定する。この測定は,初期直径(Dinitial )15mm、最終直径(Dfinal )0.75mm、長さ(L)7.5mmの半双曲線形ダイを用いて実施する。
【0086】
このダイの半双曲線形は二つの方程式により定義される。Zが初期直径からの軸方向距離、D(z)がDinitial から距離zのダイ直径である場合;
【数2】

【0087】
このダイをバレル低端部に取り付け、澱粉組成物が加工されるべき温度に対応する固定試験温度(t)に保持する。この試験温度(加工温度)は、試料澱粉組成物の融点を超す温度である。ダイ温度まで予備加熱した試料澱粉組成物を粘度計バレル部中に負荷し、実質的にバレル部を満たす。負荷後に空気が表面に現れたら、試験実施に先立つ組成物を用いて溶融試料から取り込み空気を排除する。細孔ダイを通じて試料がバレルから設定速度で押し出されるような態様でピストンをプログラム化する。細孔ダイを通じて試料がバレルから出る際に、試料は圧力損失を経験する。この圧力損失およびダイを通じた試料の流速から、次式に従って見掛け伸張粘度を計算する。

伸張粘度=(delta P/伸張速度/Eh) ・105

式中、伸張粘度はパスカル−秒であり、delta Pは圧力損失(バール)であり、伸張速度はダイを通じた試料の流速(sec-1)であり、Eh は無次元の Hencky 歪みである。Hencky歪みは時間または履歴依存性歪である。非ニユートン流体における流体要素により経験される歪みは、その運動履歴に依存し、すなわち次式で表される:
【数3】

この設計の場合のHencky 歪み(Eh )は、次の方程式により定められる5.99である;
h =ln [(Dinitial /Dfinal2
【0088】
この見掛け伸張粘度はパワーの法則関係を用いて伸張速度250-1の関数として報告する。半双曲形ダイを用いた伸張粘度測定の詳細な開示は米国特許第 5,357,784号公報(Collier、10月25日、 1994付)に開示があり、本明細書の記載中にその開示を引用して加入する。
【0089】
C. 分子量および分子量分布
澱粉の重量平均分子量(MW )および分子量分布(MWD)は、混合床カラムを用いたゲル透過クロマトグラフイー(GPC)により測定・決定する。装置の部品は次のようである:
ポンプ Waters 600E型
システムコントローラー Waters 600E型
自動試料採取器 Waters 717 Plus
カラム 長さ600mm、内径7.5mmの
PLゲル20μm Mixed A カラム
(ゲル分子量範囲 1000 から40,000,000)
検出器 Waters 410型示差屈折計
GPCソフトウエア Waters MilleniumR ソフトウエア
【0090】
分子量 245,000; 350,000; 480,000; 805,000;および2,285,000 のデキストラン(Dextran)標準物質を用いてカラムを検量する。これらのデキストラン検量標準物質は American Polymer Standards Corp., Mentor, OH から市販される。検定標準は、移動相中に検量物質を溶解して約2mg/ml溶液にして調製する。溶液は一昼夜静置する。次いで軽く振ってシリンジ(5ml、「Norm-Ject 」、VWR 社から市販)を用いてシリンジフイルター(5μmナイロン膜「Spartan-25」、VWR 社から市販)を通じて濾過する。
【0091】
澱粉試料は、水道水中の40重量%澱粉混合物を先ず作ることにより調製すが、調製に際しては加熱して澱粉混合物をゼラチン化させる。次いでゼラチン化混合物1.55グラムを移動相22グラム中に加え3mg/ml溶液を作るが、この調製は、5分環撹拌し、105℃オーブン中に1時間、混合物を置き、オーブンから混合物を取り出し、次いで室温に冷却して行う。上記同様にシュリンジおよびシュリンジフイルター用いて溶液を濾過する。
【0092】
濾過した標準または試料溶液を100μlの注射ループ中に自動試料採取器により取り上げて以前の試験材料をフラッシュし、現在の試験材料をカラム中に注入する。カラムを70℃に保持する。カラムからの溶離試料を、50℃に保持した示差屈折計により、設定感度範囲64で移動相背景に対して測定する。この移動相は0.1% W/V LiBr を溶解した DMSO である。流速を1.0ml/分に設定し、かつ isocraticモード(すなわち、操作中は移動相は不変)にする。各標準および試料はGPCを3回通過させ、結果を平均する。
分子量分布は次のように計算する:
MWD=重量平均分子量/数平均分子量
【0093】
D. 熱的性質
本発明における澱粉組成物の熱的性質は、化学文献報告値の融点(開始)156.6℃および溶融熱6.80cal./gを有するインジウム金属標準物質を用いて検量した TA Instruments 「DSC-2910」で測定して決める。標準DSCの操作法は機器メーカーの運転指示書に従う。DSC測定中の澱粉組成物からの揮発性物質の発生(例えば水蒸気)に備えて、o−リングシールを具備した大容量パンを使用し試料パンからの揮発性物質の揮散を防止する。試料および不活性対照(通常は空のパン)を、制御環境中、同一速度で加熱する。実相または疑似相変化が試料中に生起すると、DSC装置が試料から不活性対照への熱の流れを測定する。試験パラメーターの制御、データ採取、計算および報告のために、この装置をコンピユーターに連結する。
【0094】
試料をパン中に秤量し、o−リンおよびキヤップを閉じる。通常の試料量は25から65ミリグラムである。密閉パンを装置中に配設し、熱的性質測定の目的でコンピユーターを次のようにプログラム化する:
1.0℃で平衡化
2.0℃で2分間保持
3.120℃に10℃/分で加熱
4.120℃で2分間保持
5.30℃に10℃/分で冷却
6.室温で24時間平衡化、試料パンはDSC装置から取り出し、
この期間中、30℃の制御環境中に置く;
7.試料パンをDSC装置に返し、0℃で平衡化
8.2分間保持
9.120℃に10℃/分で加熱
10.120℃に2分間保持
11.30℃に10℃/分で冷却、かつ平衡化;ならびに
12.使用試料を取り出す
温度または時間に対する示差熱移動(△H)としての熱分析結果をコンピユーターが計算し、報告する。通常、この示差熱移動は重量基準(すなわち、cal./mg)で正規化して報告する。ガラス転移温度等の疑似相転移を試料が示す場合は、ガラス転移温度の測定を一層容易にするために、時間/温度プロットに対する△Hの示差を採用できる。
【0095】
E. 水溶解性
試料組成物の調製は、実質的均一混合物が形成されるまで、諸成分を加熱および撹拌により混合して行う。溶融組成物を「TeflonR 」シート上に広げて薄層フイルムを鋳造し、室温に冷却する。次いで、フイルムをオーブン中100℃で完全に乾燥(すなわち、フイルム/組成物中に水分がなくなるまで)する。乾燥フイルムを室温と平衡させる。粉砕して平衡化フイルムを小さくペレット化する。
試料中の固形分(%)を測定するために、粉砕試料を、予め秤量した金属パン中に置き、パンおよび試料の全重量を記録する。秤量したパンおよび試料を100℃のオーブン中に2時間放置し、次いで取り出して直ちに秤量する。固形分(%)は次のように計算する:

固形分(%)= 粉砕試料およびパンの乾燥重量−パン重量 ×100
(粉砕試料およびパンの初期重量−パン重量)
【0096】
試料組成物の溶解度を決定する目的で、粉砕試料10gを250mlビーカー中に秤量する。脱イオン水を加え全量を100gにする。試料および水を撹拌皿上で5分間混合する。撹拌後、少なくとも2mlの試料を遠心管中に注ぐ。20,000gで1時間10℃で遠心分離する。遠心分離済み試料の上澄みを採取し、屈折率を読む。試料の溶解度(%)を次のように計算する:

溶解性固形分(%)= (屈折率#)×1000
固形分(%)
【0097】
F. キヤリパー
試験に先立ちフィルム試料の湿気含有量が約5%から約16%になるまで、相対湿度48%から50%および温度22℃から24℃で状態調節する。湿気含有料はTGA(Thermo Gravimetric Analysis;熱重量分析)で測定・決定する。熱重量分析の場合、 TA Instruments 社からの高分解能「YGA 2950」型熱重量分析計を用いる。試料約20mgをTGAパン中に秤量する。メーカー指示書に準拠して試料およびパンをユニット中に入れ、速度10℃/分で250℃へ加温する。試料中の湿気(%)は重量損失および初期重量から次のように決める:

湿気(%)= 開始重量−重量(250℃で) *100%
開始重量
【0098】
予め状態調節した試料を、キヤリパー測定に用いる脚(フット)の寸法を超える大きさに切断する。使用脚は面積3.14平方インチの環状である。この試料を水平な平面上に置き、この平面と水平負荷面を有する負荷脚との間に試料を封じる。この場合の負荷脚負荷面は約3.14平方インチの環状表面積を有し、試料に対して約15g/cm2 (0.21psi)の封圧を与える。キヤリパーは、負荷脚負荷面と上記平面との間に生じた間隙である。この種の測定は、Thwing-Albert, Philadelphia, Pa.から市販の「VIR Electronic Thickness Tester Model II」を使用しれ得られる。結果はミル(mils)で報告する。
キャリパー試験で記録された読みの合計を記録読み数で割る。結果をミル単位で報告する。
【0099】
(例)
実施例に用いた材料は次のようである:
「Crystal GumR」は重量平均分子量100,000の修飾澱粉;「NadexR」は重量平均分子量2000の修飾澱粉;「Instant-n OilR」は重量平均分子量800,000の修飾澱粉であり;いずれも National Starch and Chmicals Corp., Bridgewater, NJ. から市販される。
「SuperflocR A-130」は重量平均分子量12,000,000から14,000,000のカルボキシル化ポリアクリルアミドであり、Cytec Co., Stamford, CT.から市販される。
ノニオンポリアクリルアミド「PAM-a 」および「PAM-b 」は、それぞれ重量平均分子量15,000,000および5,000,000から6,000,000のものであり、Scientific Polymer Products, Inc., Ontario, NY. から市販される。
重量平均分子量750,000 のポリエチレンイミンは Aldrich Chemcal Co., Milwaukee, WI.から市販される。
「ParezR 631 NC」 は低分子量グリオキシル化ポリアクリルアミドであり、「ParezR 802」は低分子量グリオキシル化尿素樹脂であり、Cytec Co., Stamford, CT. から市販される。
「PluronicR F87 」は BASF corp., Parsippany, NJ.から市販のノニオンポルオキソマーである。尿素、スクロースおよびグリオキサル(40%水溶液)は Aldrich Chemical Co., Milwaukee, WI. から市販される。
【0100】
例1
本発明における溶融加工組成物は、澱粉(Crystal Gum )45重量%、尿素40.5重量%、スクロース4.5重量%、および遊離水9.8重量%を混合し、手動撹拌しスラリーを形成させて調製する。ポリアクリルアミド(PAM-a 、MW =15,000,000)を水に溶解して PAM 水溶液を形成させる。ポリマー/水溶液のアリコートをスラリーに加える。最終混合物中のポリアクリルアミドの重量%が0.2になるまでスラリー中の水を蒸発する。
上記組成物は剪断粘度0.65パスカル・秒、伸張粘度1863.2パスカル・秒(700s-1および90℃で)を有する。
【0101】
比較例1b
ポリアクリルアミドを組成物中に添加しない以外は実施例1に従って比較澱粉組成物を調製する。この組成物は700s-1および90℃で剪断粘度1.35パスカル・秒、伸張粘度43.02パスカル・秒を有する。実施例1および比較例1bは、小量の高ポリマーを添加すると剪断粘度が僅かに低下し、伸張粘度が顕著に高まることを示す。
【0102】
例2
本発明における溶融加工組成物は、澱粉(Crystal Gum )50重量%、尿素30重量%、スクロース1.5重量%、および遊離水18.5重量%を混合して、手動撹拌しスラリーを形成させて調製する。ポリアクリルアミド(Superfloc A-130 、MW =12,000,000 から 14,000,000 )を水に溶解して PAM水溶液を形成させる。ポリマー/水溶液のアリコートをスラリーに加える。最終混合物中のポリアクリルアミドの重量%が0.003になるまでスラリー中の水を蒸発する。
上記組成物は剪断粘度1.12パスカル・秒、伸張粘度46.0パスカル・秒(700s-1および90℃)を有する。
【0103】
比較例2b
ポリアクリルアミドを組成物中に添加しない以外は実施例2に従って比較澱粉組成物を調製する。この組成物は700s-1および90℃で剪断粘度1.23パスカル・秒、伸張粘度0.69パスカル・秒を有する。実施例2および比較例2bは、小量の高ポリマーを添加すると剪断粘度が僅かに低下し、伸張粘度が顕著に高まることを示す。
【0104】
例3
溶融吹き込みダイを具備するトルク粘度計を用いて実施例1における組成物を処理する。図1にトルク粘度計を示す。トルク粘度計装置 100には、駆動ユニット 110(Haake GmbH製「 Rheocord 90」型)、4種の温度帯域 122、124、126および 128 に分画したバレル 120、フイードポート 121、および溶融紡糸装置 130が包含される。二軸スクリュー要素 160(Haake GmdH 製「TW 100」型)を駆動ユニット 110に取り付け、バレル 120 以内に配設する。幅6インチの溶融吹き込みダイ装置 130(JM Laboratory, Dawsonville, GAから市販)をポンプ 140経由でバレル端部に連結する。このダイ装置は、線状インチ当たり孔52個と、幅 0.02"の空気通路 152により取り囲まれた直径 0.015" ( 0.0381cm) の孔1個とを有する紡糸口金を具備し、この通路から高速空気流 150 が紡糸口金板直下で押出フイラメントに衝突する。この空気流は、紡糸口金から殆ど同時にフイラメントを吹き去り、フイラメントを繊細化させる。
【0105】
実施例1に記載のようにこの組成物は、澱粉(Crystal Gum )45重量%、ポリアクリルアミド0.2重量%(PAM-a )、尿素40.5重量%、スクロース4.5重量%、および水9.8重量%を混合し調製する。トルク粘度計およびダイ装置は次のようである:
バレル温度
帯域 122 70℃
帯域 124 90℃
帯域 126 90℃
帯域 128 90℃
トルク 100rpm
ダイ温度 126.7℃
空気温度 126.7℃
空気圧 35 psi
ポンプ 40rpm
押出機からポンプ経由で混合物を溶融吹き込みダイ中へと搬送する。本発明により生じた細長フイラメント(または繊維)は、繊維直径8から40ミクロンである。
【0106】
澱粉の重量%中には、澱粉の重量%および結合水(平均して澱粉の約8重量%)の重量%が包含されることに留意されたい。調製した上記組成物は一軸および二軸伸張加工に使用されることは理解されるべきである。しかし、水の大半は溶融加工中に失われ、衛生繊維、フイルム、その他の製品は殆ど遊離水を含まないか、または全く含まない。作られた製品は若干の結合水(恐らく大気からの吸収水)を含む。したがって、作られた製品の組成は、乾燥固形分基準で計算した、固形成分で表記するのが一層妥当である。例えば実施例3に従って作られた繊維の組成を乾燥固形分基準で計算するには、全組成から9.8重量%の遊離水を差し引き、澱粉から8重量%の結合水を引き、次いで残余の固形分含有量を100%に正規化する。このようにして、実施例3に従って作った繊維の組成を乾燥固形分基準で計算すると、澱粉固形分47.8重量%(結合水なし)、ポリアクリルアミド0.23重量%、尿素46.8重量%およびスクロース5.2重量%になる。
【0107】
例4
実施例2に記載の組成物を本発明による微細繊維へと溶融吹き込みする。図3aは実施例3に記載の方法を用いて実施例2の組成物から作った澱粉繊維の走査電子顕微鏡写真(目盛り 200ミクロン)である。図3bは目盛り 20 ミクロンで示す同一澱粉繊維の走査電子顕微鏡写真である。両図共、例4に示す澱粉繊維が約5ミクロンのかなり均一な繊維直径を有することを示す。
【0108】
例5
澱粉15g(Crystal Gum、 MW = 100,000)および遊離水15gを80℃で手動撹拌により混合し、混合物を実質的に均一化またはゼラチン化させる。高ポリマー(PAM-a 、MW =15,000,000)を遊離水に溶解し、既知濃度の PAM水溶液を形成させる。ポリマー/水溶液のアリコットを、澱粉/水混合物に添加し、全混合物が PMA-aを0.006g含有するようにする。最終混合物(澱粉、 PAM-a および水)の重量が30gに等しくなるまで、上記全混合物を加熱して水を蒸発させる。この混合物は、繊維線引き成形に好適な溶融伸張性を有することが判る。
【0109】
例6から8
澱粉(Crystal Gum )、高ポリマーおよび水の混合物を実施例5と同一の態様で調製する。これらの混合物の最終組成を次に示す:

Ex-6 Ex-7 Ex-8
澱粉 Crystal Gum 100,000 Wt% 49.99 49.99 46.92
ポリアクリルアミド Superfloc A-130 12-14.000,000 Wt% 0.02
PAM-b 5-6,000,000 Wt% 0.02
ポリエチレンイミン 750,000 Wt% 6.17
水 Wt% 49.99 49.99 46.91

本発明におけるこれらの組成物は繊維線引き成形に適する溶融伸張性を有することが判る。
【0110】
例9から11
実施例1におけると同じ態様で次の組成物を調製する:

W Ex-9 Ex-10 Ex-11
澱粉 Crystal Gum 100,000 Wt% 41.54 20.77 20.77
Nadex 2,000 Wt% 20.77
Instant-n Oil 800,000 Wt% 20.77
ポリアクリルアミド PAM-a 15,000,000 Wt% 0.08 0.08 0.08
尿素 Wt% 6.23 6.23 6.23
スクロース Wt% 6.23 6.23 6.23
Parez 631 NC Wt% 1.04 1.04 1.04
水 Wt% 44.88 44.88 44.88

本発明によるこれらの組成物は、繊維線引き成形に適する溶融伸張性を有することが期待される。かつ、水のpHを2に調整すると、作られる繊維の水溶解度は、本発明において開示の方法に準拠すると、30%未満であることが期待される。
【0111】
例12
溶融加工組成物を、澱粉(Crystal Gum )45重量%、ポリアクリルアミド0.2重量%(PAM-a )、尿素40.5重量%、スクロース4.5重量%、および水9.8重量%の混合して調製する。混合物をトルク粘度計中に計量注入する以外は実施例3に記載の態様で、図1に示すトルク粘度計を用いて上記組成物を微細繊維へと溶融吹き込み成形する。トルク粘度計およびダイ装置は次のようである:
バレル温度
帯域 122 70℃
帯域 124 90℃
帯域 126 90℃
帯域 128 90℃
トルク 140rpm
フイード速度 16gm/分
ダイ温度 137.8℃
空気温度 137.8℃
空気圧 50 psi
ポンプ 40rpm
【0112】
本発明により作られた繊細化フイラメント(または繊維)は10から30ミクロンの繊維直径を有する。この繊維を、米国特許第 5,857,498号、同第5,672,248 号、同第5,211,815 号および同第5,098,519 号公報に記載の製紙用織布上に空気配設する。これら全ての開示は引用として本明細書の記載中に加入する。
【0113】
例13
実施例12における空気施工で作られたウエブの油吸収性を試験する。市販モーター油(SAE 20級、the Society of Automobile Engineers) 1滴を吸収性比較の目的でウエブ上および市販紙タオル上にそれぞれ置く。このウエブは紙タオルに比べて次の点で改良された油吸収性を示す:(1)ウエブ上での滞留時間が短いことから、ウエブは市販タオルに比べて油の吸収が早く;かつ、(2)30秒後、ウエブは市販紙タオルの汚れに比べて約1.5から2倍もの大きさのスポット寸法を有した。
【0114】
例14
この実施例は、本発明による組成物から例えば圧縮板紙等の建築用材が作られることを説明する。溶融加工組成物は、澱粉(Crystal Gum )60重量%、ポリアクリルアミド(SP2 )0.1重量%、尿素2重量%、スクロース2重量%、「Parez 631 NC 1.5重量%および水34.4重量%(硫酸でpH2に調整)を混合・スラリー化して調製する。これを図1に説明のトルク粘度計(「Rheocord 90」型)中に仕込み、上記実施例12記載のような条件下で操作するが、この場合、溶融紡糸ダイに代えて単一細孔ダイ(直径1mmおよび温度90℃)を使用する。押出ストランドを、のこ屑またはかんな屑と共に、粘着する間に湿式混合する。混合ストランドを丸太状に圧縮する。この丸太を強制オーブン中で40℃で2時間乾燥し、澱粉組成物から残部の水を排除する。最終製品は、のこぎり屑47.8重量%および乾燥澱粉組成物52.2重量%からなる丸太である。
【0115】
例15
澱粉溶液の調製
「Purity Gum 59 」(National Starch Co.,製、重量平均分子量を約330,000 ダルトンに低減させた蝋状トウモロコシ澱粉)275g、無水グリセロール10g、無水硫酸ナトリウム0.5gおよび蒸留水214.5gを混合し修飾澱粉水溶液を調製する。この混合物を加熱プレート上で約60℃に加熱し手動撹拌で澱粉を溶解し、次いで70℃オーブン中に一昼夜放置する。
【0116】
澱粉繊維の溶融吹き込み成形
上記澱粉溶液を、加熱テープで約120から200o F範囲内に保持するように温度制御したラムの樹脂溜めに入れる。この溶液を、Spraying System 製空気噴霧ノズル(以後、”ノズル”または”ダイ”と呼称)へと搬送し、流速1.2cm3 /分,溶液温度50℃でノズルから押し出す。ノズル内径は0.014インチである。
【0117】
溶液がノズルを去る際に下向きジェットが形成される。ノズル配列により、ノズルから出る溶液ジェット周辺に同心円で空気流が供給される。空気流は、外径0.050インチのノズルおよび0.180インチの空気キヤップの間隙から出る。この空気キヤップには20psi 未満の湿潤空気が供給される。この湿潤空気は、加熱空気線および40 psi水蒸気源を所望温度と湿度になるように混合して創る。相対流速および温度を制御し湿度30から100%および温度120から200O Fにする。空気キヤップへ搬送される湿潤空気は下向の繊細化推進力を提供する。
【0118】
次いで溶液ジェットを一対のダクトからの空気で乾燥する。一対の長方形ダクト(幅2”および高さ0.050”)が乾燥空気を供給する。空気ダクトを配向させ、その幅が落下溶液ジェットに垂直な態様にする。2本の空気流は、フイラメントに向かって内向き下方向を指向する。乾燥ダクトはノズルに近接して配設される。二つの空気流は、ノズル先端下方2”で溶液ジェットと交差する。この空気流は、圧縮空気線から引き抜き、加熱空気線経由で供給される。乾燥促進の目的で、この加熱線は500F未満に加熱できる。圧縮空気線は60 psi未満で40 SCFM 未満の空気を搬送できる。
【0119】
繊細化用空気温度は70℃、繊細化用空気相対湿度は90%、繊細化用空気流速は9立方フィート/分である。乾燥空気温度は200℃、乾燥空気流速は約45立方フィート/分である。澱粉ウエブが採取される。澱粉繊維ウエブのSEM顕微鏡写真を図1に示す。繊維40本の測定値に準拠すると、平均繊維直径は7.8ミクロンで、標準偏差値は2.5ミクロンである。ウエブ繊維直径は最少4.4ミクロンから最大16.6ミクロンの範囲であった。これらの溶融吹き込み条件下の澱粉溶液に対する細孔数は、剪断粘度2.7パスカル・秒基準で7.7と計算され、cm当たり表面張力70ダインと計算される。半双曲型細孔ダイで測定されるように、見掛けの伸張粘度は、50℃の澱粉溶液の場合、400パスカル・秒である。
【0120】
以上、本発明における特定の実施態様を説明し記載したが、本発明における精神と範囲から逸脱ぜずに、各種の他の変更および修飾がなし得ることは、当業者に明瞭なはずである。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】この発明による微細澱粉繊維を製造するために使用し得る溶融吹き込みダイを具備したトルクレオメーター装置を示す。
【図2】スパンボンド法により澱粉繊維ウエブを製造するのに使用し得るトルクレオメーター装置を示す。
【図3A】200ミクロン目盛りを用いて示す、この発明による微細澱粉繊維の走査電子顕微鏡図である。
【図3B】20ミクロン目盛りを用いて示す、この発明による微細澱粉繊維の走査電子顕微鏡図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉を含む組成物であって、上記組成物が約50パスカル・秒から約20,000パスカル・秒の範囲の伸張粘度を有し、かつ、上記組成物が少なくとも1の細孔数を示す組成物。
【請求項2】
澱粉が、約1,000から約2,000,000の範囲の分子量を有し、かつ、澱粉の約20%から約99重量%がアミロペクチンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
細孔数が約1から約100の範囲である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
上記組成物が、約70%から約95%の澱粉、および約5%から約30%の添加剤を含み、かつ、上記組成物が約100パスカル・秒から約15,000パスカル・秒の範囲の伸張粘度を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
組成物が、約80℃から約180℃の温度範囲で加工処理される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
上記組成物が、約40%から約70%の澱粉、および約30%から約60%の添加剤を含み、かつ、上記組成物が約100パスカル・秒から約15,000パスカル・秒の範囲の伸張粘度を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
組成物が、約80℃から約140℃の温度範囲で加工処理される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
上記組成物が、約200パスカル・秒から約10,000パスカル・秒の範囲の伸張粘度を有し、かつ、約3から約50の範囲の細孔数を有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
上記組成物が約300パスカル・秒から約5,000パスカル・秒の範囲の伸張粘度を有し、かつ、約5から約30の範囲の細孔数を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
90℃および700S-1 で測定したトル−トン比が、約3から約10,000の範囲である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
澱粉の重量平均分子量が、約2,000から約500,000の範囲である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
組成物が、約45%から約65%の澱粉、および約35%から約55%の添加剤を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
添加剤が水を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
約0.001から約10重量%の高ポリマーをさらに含み、この高ポリマーが澱粉に実質的に相容性であり、かつ高ポリマーの重量平均分子量が少なくとも500,000である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
次の方法により調製される組成物:
(1)次の混合物を形成させ:
(a)分子量が約1,000から約2,000,000の範囲の澱粉約5から約99.99重量%;および
(b)可塑剤および希釈剤からなる群から選択された約0.001から約95重量%の添加剤;次いで
(2)繊維、フイラメント、起泡体およびフイルムからなる群から選択された材料を形成させるために、上記混合物をダイを通過させる。
【請求項16】
澱粉が、約1,000から約2,000,000の分子量を有し、かつ、澱粉繊維またはフイラメントの平均当量直径が25ミクロン未満である、澱粉を含む繊維またはフイラメント。
【請求項17】
繊維またはフイラメントの寸法が、約0.01から約135デシテックスである、請求項16に記載の繊維またはフイラメント。
【請求項18】
繊維またはフイラメントの平均当量直径が15ミクロン未満である、請求項16に記載の繊維またはフイラメント。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公開番号】特開2009−7573(P2009−7573A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−159475(P2008−159475)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【分割の表示】特願2000−387418(P2000−387418)の分割
【原出願日】平成12年12月20日(2000.12.20)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】