説明

溶融炉

【課題】簡単な構成で、溶融炉内でのスラグの固着を抑制しつつ補修時の作業性を向上することのできる溶融炉の提供を目的とする。
【解決手段】スラグを生成する溶融部12と、溶融部12から流下するスラグを囲むように設けられるシュート20とを備え、前記シュート20の内壁21を、耐火物からなる内壁本体部26と、この内壁本体部26に着脱可能に固定される着脱ブロック30とで構成するとともに、前記着脱ブロック30に、耐火物からなるブロック部32と、当該ブロック部32にこのブロック部32の内側面および前記内壁本体部26の内側面から内方に向かって張り出すように支持され、前記溶融部12から流下したスラグを前記シュート20の内壁本体部26の内側面および前記ブロック部32の内側面よりも内側に離間した位置から流下させる張り出し部34とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被溶融物を溶融してスラグを生成する溶融炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物処理設備等では、廃棄物を溶融させてスラグを生成する溶融部と、生成したスラグを下方に排出するシュートとを備えた溶融炉が用いられている。このような溶融炉では、前記スラグが前記シュートの内壁等に固着して通路を閉塞してしまうのを回避するものが考えられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、前記シュートの上端部にシュートの内側面よりも内方に張り出す張り出し部が設けられており、前記スラグをこの張り出し部に沿ってシュートの内方から流下させることで、スラグの前記シュート上端部への固着を抑制するよう構成された溶融炉が開示されている。さらに、この溶融炉では、前記張り出し部が前記スラグの重量により曲げ荷重を受けることで破損した場合にも、この張り出し部の交換が行えるように、前記耐火物からなるシュートの内壁本体に打ち込まれたアンカーピンに前記張り出し部が着脱可能に取付けられている。
【特許文献1】特開2006−194486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のような従来の溶融炉では、前記張り出し部を固定するアンカーピンが直接シュートの内壁本体に打ち込まれているため、前記張り出し部の補修交換作業をシュートの内壁本体に対して行わねばならない。また、スラグの流下量が多く前記張り出し部を支持している前記アンカーピンが破損した場合には、シュートの内壁本体を破壊し、アンカーピンを取り外した後、シュートの内壁本体を再度修復するとともにアンカーピンをシュートの内壁本体に再度打ち込まねばならず、補修作業に手間がかかるとともに、これらの作業を全てシュート内で行わねばならず作業性が悪いという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑み、簡単な構成で、溶融炉内でのスラグの固着を抑制しつつ補修時の作業性を向上することのできる溶融炉の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための請求項1に係る発明は、被溶融物を溶融するとともにその溶融により生成されたスラグを排出するための溶融炉であって、前記被溶融物を燃焼溶融させてスラグを生成する溶融部と、前記溶融部の下流に設けられるとともに、下方に延びて前記溶融部から流下するスラグを囲むように設けられるシュートとを備え、前記シュートの内壁は、耐火物からなる内壁本体部と、この内壁本体部に着脱可能に固定される着脱ブロックとからなり、前記着脱ブロックは、耐火物からなるブロック部と、当該ブロック部にこのブロック部の内側面および前記内壁本体部の内側面から内方に向かって張り出すように支持され、前記溶融部から流下したスラグを前記シュートの前記内壁本体部の内側面および前記ブロック部の内側面よりも内側に離間した位置から流下させる張り出し部とを有することを特徴とするものである(請求項1)。
【0007】
この溶融炉によれば、前記張り出し部によって前記シュートの内壁本体部の内側面および前記ブロック部の内側面へのスラグの付着が抑制されるとともに、前記張り出し部および張り出し部の支持部分等の補修作業の作業性が向上する。すなわち、この溶融炉では、前記張り出し部が前記シュートの内壁本体部ではなく前記着脱ブロックのブロック部に支持されているとともに、この張り出し部とブロック部とを含む着脱ブロックが前記内壁本体部に着脱可能に固定されているため、この着脱ブロックを取り外して炉外等で前記張り出し部の補修作業を行うことができる。しかも、前記張り出し部の支持部分が破損した場合には、前記着脱ブロックを交換することで張り出し部を容易に前記シュートに再設置することができる。このことは、前記シュート内での作業時間を短縮するとともに前記内壁本体部に対する作業量を低減し、張り出し部の補修・交換作業の作業性を向上させる。
【0008】
また、本発明において、前記着脱ブロックを複数個備えるとともに、これらの着脱ブロックが、それらの前記張り出し部が水平方向に連続するように水平方向に並べられるのが好ましい(請求項2)。
【0009】
このようにすれば、前記内壁本体部の内側面およびブロック部の内側面へのスラグの付着をより広範囲にわたって抑制することが可能となる。特に、各着脱ブロックが、それらの前記張り出し部が前記シュートの内側面全周にわたって連続するように並べられるのが好ましい(請求項3)。
【0010】
また、本発明において、前記張り出し部は、前記着脱ブロックのブロック部に着脱可能に支持されるのが好ましい(請求項4)。
【0011】
このようにすれば、前記着脱ブロックを取り外した後、前記張り出し部を容易に交換することができ、作業性が向上する。
【0012】
例えば、前記張り出し部の支持構造を、前記着脱ブロックのブロック部が、その上面から上方に突出する支持突起を有し、前記着脱ブロック部の張り出し部が、前記支持突起が挿入可能な挿入孔を有するとともに、当該挿入孔に前記支持突起が挿入されることで、前記ブロック部の上面に支持されるのものとすれば、張り出し部の交換作業が容易になる(請求項5)。
【0013】
また、本発明において、前記着脱ブロックは、前記内壁本体部によって上下方向から挟み込まれた位置に設けられており、前記着脱ブロックのブロック部の上面あるいは当該上面と対向する前記内壁本体部の側面の少なくとも一方に、前記着脱ブロックの張り出し部の一部を収容可能な凹部が設けられており、前記着脱ブロック部の張り出し部は、その一部が前記凹部に収容された状態で前記ブロック部に支持されるのが好ましい(請求項6)。
【0014】
このようにすれば、前記張り出し部によってスラグがその流下途中で前記シュートの内側面に付着するのを効果的に抑制することができる。そして、前記内壁本体部の途中部分という張り出し部の補修、交換作業が比較的困難となる場所においても、前記張り出し部の補修、交換作業の作業性を確保することができる。さらに、この構造では、前記張り出し部が前記着脱ブロックの上面と前記内壁本体部との間に挟みこまれるため、張り出し部の支持が安定する。
【0015】
もちろん、前記着脱ブロックは、前記溶融部の底部に設けられて下方に傾斜して前記スラグを前記シュート側に案内する溶融部側傾斜部の下端部に沿うような位置に設けられていてもよい。また、溶融部で発生した高温ガスを炉外に導く排出部を備えた溶融炉では、前記着脱ブロック部は、前記排出部の底部に設けられて下方に傾斜して前記スラグを前記シュート側に案内する排出部側傾斜部の下端部に沿うような位置に設けられていてもよい(請求項7)。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、簡単な構成で、スラグの固着を抑制しつつ張り出し部の補修・交換作業の作業性を向上することのできる溶融炉を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい第一の実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1は本発明の第一の実施形態に係る溶融炉を備える廃棄物処理設備1の全体構成を示した概略図である。まず、この廃棄物処理設備1における廃棄物の処理要領について説明する。
【0019】
この廃棄物処理設備1は、溶融炉10に加えて、主に、上流側から、ごみピット2と、給塵機4と、流動床式ガス化炉6と、ボイラー41と、ガス冷却器42と、バグフィルタ44と、脱硝装置46と、煙突48とを有している。
【0020】
この廃棄物処理設備1では、まず、ごみピット2に貯留された廃棄物が、給塵機4に投入される。前記給塵機4に投入された前記廃棄物は、この給塵機4から定量的に前記流動床式ガス化炉6に供給されて、この流動床式ガス化炉6にて熱分解される。この流動床式ガス化炉6では、例えば空気比が0.2〜0.4の条件で前記廃棄物の部分燃焼が行われ、砂層等からなる流動層の温度を450℃〜650℃に維持した熱分解すなわちガス化が行われる。この流動床式ガス化炉6で発生した熱分解ガスは、前記溶融炉10に導かれる。一方、前記廃棄物のうち不燃物は炉床下部より抜き出され、非鉄金属、鉄分等にそれぞれ分離されて、再利用されるべくこの廃棄物処理設備1外等に搬送される。
【0021】
前記溶融炉10では前記熱分解ガスがさらに燃焼される。この溶融炉10内では、旋回流が形成されており、例えばトータル空気比1.3〜1.5の条件下で約1300℃の高温燃焼が行われる。このとき、前記熱分解ガス中の灰分が溶融されてスラグが生成する。生成したスラグは、この溶融炉10に設けられた後述するシュート20を流下し、このシュート20の下方に設けられたスラグ冷却装置28に排出される。そして、このスラグは、前記スラグ冷却装置28にて急冷却され、再利用されるべく搬送される。
【0022】
また、前記溶融炉10からは高温ガスが排出される。この高温ガスは、前記ボイラー41に導入されて、ボイラー41にてその廃熱が回収された後、前記ガス冷却器42にて冷却される。その後、このガスは、バグフィルタ44で除塵されて、脱硝装置46を経て煙突48から排出される。
【0023】
次に、前記溶融炉10の詳細について説明する。図2は、前記溶融炉10付近の概略上面図であり、図3は図2のC−C線断面図であり、図4は図2のD−D線断面図である。
【0024】
前記溶融炉10は、前記流動床式ガス化炉6に連通する溶融部12と、この溶融部12の下方に設けられるシュート20と、このシュート20に連通する排出部14とを有している。ここで、本実施形態では、図2に示すように、前記溶融部12とシュート20と排出部14とが、溶融部12とシュート20との水平方向におけるずれ方向と、シュート20と排出部14との水平方向におけるずれ方向とが略垂直になるようにそれぞれ配置されている。そして、このような配置により、前記溶融部12に連設される前記流動床式ガス化炉6とこの溶融部12とのずれ方向と、前記排出部14に連設される前記ボイラー41とこの排出部14および前記シュート20とのずれ方向とが略直交しており、図2における左右方向の省スペース化が図られている。
【0025】
前記溶融部12は、前記流動床式ガス化炉6から導入された熱分解ガスを燃焼させ、この熱分解ガスの灰分を溶融してスラグを生成する部分である。この溶融部12は、上下方向に延びる略筒状を有しており、上端に設けられた連通口12cから導入された前記熱分解ガスを、頂部に取り付けられた図示しないバーナーにより加熱し、燃焼させる。
【0026】
前記溶融部12の下端には、前記シュート20に連通されて、溶融部12で生成したスラグを前記シュート20に導出するための導出口12aが設けられている。また、この溶融部12の底部には、前記導出口12aに向かって下方に傾斜し、後述するシュート20の内壁21に連なる溶融部側傾斜部12bが設けられている。そして、前記溶融部12で生成したスラグは、高温ガスとともに前記溶融部側傾斜部12bを前記導出口12aに向かって流下し、前記導出口12aからシュート20側に導出される。
【0027】
前記シュート20は、前記導出口12aから導出されたスラグを下方に流下させるためのものである。このシュート20は、前記導出口12aから流下するスラグを囲むような形状を有している。具体的には、このシュート20は、外形断面が略矩形状の中空部材であって、上下方向に延びる形状を有している。このシュートの上端には前記導出口12aが連通し、このシュート20の下端には前記スラグ冷却装置28が連設されている。そして、前記スラグは、前記導出口12aからシュートの内壁21の内側に導出され、この内壁21の内側を流下することで前記スラグ冷却装置28に案内される。
【0028】
前記排出部14は、前記溶融部12から排出され前記シュート20を流下した高温ガスを前記ボイラー41に導くためのものである。この排出部14は、上方に延びる略筒状を有しており、その上端部分に前記ボイラー41が連設されている。
【0029】
前記排出部14の下端には、前記シュート20に連通し、前記溶融部12から前記シュート20に排出された高温ガスをこのシュート20からさらに前記排出部14に導入するための導入口14aが設けられている。また、前記排出部14の底部には、前記導入口14aに向かって下方に傾斜し、前記シュート20の内壁21に連なる排出部側傾斜部14bが設けられている。そして、この排出部14で生成されたスラグは、前記排出部側傾斜部14bを前記導入口14aに向かって流下して導入口14aからシュート20側に排出される。
【0030】
ここで、本実施形態では、前記導入口14aが、前記溶融部12の導出口12aから十分に下方に離間した位置に設けられている。そのため、前記高温ガスは、図3の矢印に示すように、前記スラグと接触した状態で前記溶融部側傾斜部12bに沿って前記導出口12aからシュート20に導出され、このシュート20内をスラグとともに下方に流下した後、前記導入口14aから前記排出部14側に導入される。その結果、前記スラグは、前記高温ガスにより高温に維持され、前記導出口12a近傍および前記シュート20の側面への固着が抑制された状態で流下していく。
【0031】
次に、前記シュート20の詳細について説明する。図5は図4のE−E線断面図であり、図6は図5の部分拡大図であり、図7および図8は図3の部分拡大図である。
【0032】
前記シュート20は、上下方向に延びる略筒状の内壁21と、その周囲を覆う断熱材22とからなる。また、前記内壁21は、この内壁21の主たる部分を構成する内壁本体部26と、複数の着脱ブロック30とからなる。
【0033】
前記内壁本体部26は、上下方向に延びる耐火物からなる。この耐火物は中空であってその外形断面が略矩形状を有している。この内壁本体部26には、その途中部分であって前記溶融部12の導出口12aの下端部と前記排出部14の導入口14aの上端部との間に、その内側面から外方に凹む第一収納部26aが内側面全周にわたって設けられている。また、この内壁本体部26のうち、前記排出部側傾斜部14bの下端部に沿う部分にも、内壁本体部26の内側面から外方に凹む第二収納部26bが設けられている。これら第一収納部26aおよび第二収納部26bのうち、前記排出部側傾斜部14bの下端部に連なる部分26c以外の部分は、その上面および底面が前記耐火物で構成されている。また、この耐火物で構成された上面には、図7に示すように、上方に凹む内壁側凹部26fが形成されている。一方、前記第二収納部26bのうち、前記排出部側傾斜部14bの下端部に連なる部分26cの上方は前記排出部14側に開口している。
【0034】
前記着脱ブロック30は、前記内壁本体部26の第一収納部26aおよび第二収納部26b内に収容されて、前記シュート20の内壁21を構成する部分である。本実施形態では、図5に示すように、複数の着脱ブロック30が、水平方向に並べられている。各着脱ブロック30は、前記溶融部12から流下したスラグを前記内壁本体部26の内側面および前記ブロック部32の内側面よりも内側に離間した位置から流下させるための張り出し部34と、耐火物からなり前記張り出し部34を着脱可能に支持するブロック部32とからなる。
【0035】
前記ブロック部32は、図7等に示すように、前記内壁本体部26に固定された状態で内方に向かうほど下方に傾斜する上面を有している。また、この上面には下方に凹む取り付け孔32aが形成されており、この取り付け孔32aには支持突起32cがそれぞれ取り付けられている。
【0036】
前記支持突起32cは、外径が前記取り付け孔32aの内径よりもわずかに小さい略円柱状の下部32dと、この下部32dの上面から上方に突出する略円柱状の上部32eとからなる。この支持突起32cは、前記下部32dが前記取り付け孔32aに挿入されることで、その上部32eが各ブロック部32の上面から上方に突出した状態で各ブロック部32に固定される。本実施形態では、前記支持突起32cは、その下部32dの底面と前記取り付け孔32aの底面との間にモルタルが介在した状態で固定される。
【0037】
前記張り出し部34は、例えばステンレス製の板状部材である。この張り出し部34には、それぞれ上下方向に貫通する挿入孔34aが形成されている。そして、各張り出し部34は、前記挿入孔34aに前記ブロック部32の支持突起32cの上部32eが挿入されることで、ブロック部32の上面に沿って、前記ブロック部32の内側面から内方に向かって張り出すように前記ブロック部32の上面に着脱可能に支持される。すなわち、前記張り出し部34は、前記挿入孔34aに前記支持突起32cの上部32eが挿入されるだけで、容易にブロック部32に取り付けられ、前記挿入孔34aから前記支持突起32cの上部32eが引き抜かれるだけで、容易にブロック部32から取り外される。ただし、本実施形態では、各張り出し部34は、前記ブロック部32の上面に、モルタル等が介在した状態で支持されているため、このモルタル等を塗布あるいは除去する必要がある。
【0038】
前記のようなブロック部32と張り出し部34で構成された各着脱ブロック30は、前記ブロック部32の内側面と前記内壁本体部26の内側面とが面一となるように、この内壁本体部26にモルタル等を介して固定される。
【0039】
具体的には、前記第一収納部26aおよび第二収納部26bのうち前記排出部側傾斜部14bの下端部に連なる部分26cを除く部分では、前記着脱ブロック30は、前記張り出し部34の一部が前記内壁側凹部26fに収納され、前記内壁本体部26によって上下方向に挟み込まれることで内壁本体部26に安定して支持される。より詳細には、前記着脱ブロック30は、前記着脱ブロック30の張り出し部34および支持突起32cと前記内壁本体部26に設けられた内壁側凹部26fの内側面との間に、耐火物からなる前記内壁本体部26とステンレス等からなる張り出し部34等との熱膨張差を吸収するためのフェルト50が挟み込まれた状態で支持される。
【0040】
また、前記第二収納部26bのうち前記排出部側傾斜部14bの下端部に連なる部分26cでは、図8に示すように、前記着脱ブロック30は、前記張り出し部34が前記排出部側傾斜部14bの上面に沿うように配置される。ここで、この排出部側傾斜部14bの下端部に連なる部分26cに収納される着脱ブロック30のブロック部32では、ブロック部32の上面に、前記張り出し部34の一部を収容可能なブロック部側凹部32fが設けられている。そして、前記張り出し部34がこのブロック部側凹部32fに収容されることで、前記張り出し部34の上面と排出部側傾斜部14bの上面とがほぼ面一となるように構成されている。
【0041】
各着脱ブロック30が前記のように固定された状態では、前記各張り出し部34がシュート20の内側面全周にわたって水平方向に連続し、この内側面全周から内方に向かって張り出す。
【0042】
以上のように構成されたシュート20において、前記溶融部12から前記溶融部側傾斜部12bに沿ってこのシュート20に導出されたスラグは、流下途中で前記複数の張り出し部34によって前記ブロック部32の内側面および前記内壁本体部26の内側面よりも内側に案内され、この内壁本体部26の内側面およびブロック部32の内側面に付着するのが抑制された状態で流下していく。特に、本実施形態では、前述のように、張り出し部34がシュート20の内側面全周にわたって張り出しており、内側面全体にわたってスラグの付着が抑制される。また、前記排出部14で生成したスラグは、前記排出部側傾斜部14bに沿ってシュート20側に排出され、前記張り出し部34によって前記内壁本体部26の内側面および前記ブロック部32の内側面に付着するのが抑制された状態で流下していく。
【0043】
ここで、前記張り出し部34は、前述のように、スラグを前記内壁本体部26の内側面等から離間させるために、内壁本体部26の内側面等から内方に突出した状態で支持されている。そのため、この張り出し部34およびこれを支持するブロック部32は、スラグの流れによる溶損または侵食によって損傷する場合がある。そこで、本溶融炉10では、前記張り出し部34およびブロック部32が損傷すると、これらを適宜補修、交換する。
【0044】
次に、前記張り出し部34等を補修・交換する際の要領について説明する。
【0045】
まず、損傷した張り出し部34およびブロック部32からなる着脱ブロック30を前記内壁本体部26から取り外す。本溶融炉10では、前記着脱ブロック30は前記内壁本体部26に対して着脱可能である。すなわち、各着脱ブロック30は、内壁本体部26の一部を除去するだけで容易に取り外すことができる。具体的には、前記第一収納部26aおよび第二収納部26bのうち前記排出部側傾斜部14bの下端部に連なる部分26cを除く部分では、前記張り出し部34の上方の内壁本体部26の一部を除去することで、前記着脱ブロック30を容易に取り外すことができる。また、前記第二収納部26bのうち前記排出部側傾斜部14bの下端部に連なる部分26cでは、前記内壁本体部26をほとんど除去することなく前記着脱ブロック30を容易に取り外すことができる。
【0046】
次に、取り外した前記着脱ブロック30を炉外に運び出す。もちろん、前記補修、交換作業を炉内で行ってもよいが、炉外の方が補修・交換作業を容易に行うことができ、作業効率が向上する。
【0047】
ここで、前記張り出し部34の支持部分が破損している場合には、前記着脱ブロック30全体を交換する。すなわち、本溶融炉10では、前記張り出し部34が前記ブロック部32に支持されているので、この支持部分が破損した場合には、このブロック部32を含む着脱ブロック30を新たな着脱ブロック30に交換する。
【0048】
また、前記張り出し部34のみが破損している場合には、この張り出し部34のみを交換する。具体的には、この張り出し部34と前記ブロック部32との間に設けられたモルタルを除去しつつ、前記張り出し部34の挿入孔34aから前記支持突起32cの上部32eを引きぬく。これにより、張り出し部34は、前記ブロック部32から容易に取り外される。そして、ブロック部32の上面にモルタルを塗布し、新たな張り出し部34の挿入孔34aに前記支持突起32cの上部32eを挿入する。これにより、新たな張り出し部34が、ブロック部32に容易に取り付けられる。
【0049】
また、前記支持突起32cのみが破損した場合には、この支持突起32cのみを交換する。具体的には、前記支持突起32cから前記張り出し部34を取り外すとともに、この支持突起32cを前記ブロック部32の取り付け孔32aから取り外す。これにより、前記支持突起32cが容易に取り外される。そして、新たな支持突起32cを前記取り付け孔32aに挿入する。これにより、新たな支持突起32cが容易に取り付けられる。その後、この支持突起32cの上部32eに前記張り出し部34の挿入孔34aを挿入する。
【0050】
前記のようにして張り出し部34およびブロック部32の補修等が終われば、張り出し部34がブロック部32に支持された状態の着脱ブロック30を、前記シュート20内に搬入し、これらを所定の箇所に取り付ける。具体的には、前記第一収納部26aおよび第二収納部26bのうち前記排出部側傾斜部14bの下端部に連なる部分26cを除く部分では、前記着脱ブロック30の張り出し部34および支持突起32cと前記内壁本体部26に設けられた内壁側凹部26fの内側面との間にフェルト50を挟み込んだ状態で、前記着脱ブロック30を、前記張り出し部34の一部が前記内壁側凹部26fに収納されるように、各収納部26a,26b内に収容し、前記張り出し部34の上方に耐火物を埋め込む。また、前記第二収納部26bのうち前記排出部側傾斜部14bの下端部に連なる部分26cでは、前記着脱ブロック30を、前記張り出し部34が前記排出部側傾斜部14bの上面に沿うように配置する。
【0051】
以上のように、本溶融炉10によれば、前記張り出し部34およびこの張り出し部34を支持するブロック部32が、内壁本体部26に対して着脱可能であるので、この張り出し部34が損傷した場合に、これらを炉外に運び出し補修・交換作業を炉外等で容易に行うことができる。また、前記張り出し部34が前記ブロック部32に支持されているため、張り出し部34の支持部分が破損した場合には、前記着脱ブロック30を新たな着脱ブロック30に交換するだけでよく、内壁本体部26対する作業量を小さく抑えることができる。
【0052】
ここで、前記着脱ブロック30が水平方向に連続していなくてもよい。ただし、前記実施形態のようにブロック部32および張り出し部34が水平方向に連続していれば、スラグのシュート20の内側面への付着をより広範囲にわたって抑制することができる。
【0053】
また、前記張り出し部34は、前記ブロック部32に一体に固定されていてもよい。ただし、前記のように、張り出し部34がブロック部32に着脱可能に固定されていれば、この張り出し部34を容易に交換することができ、特に張り出し部34のみが破損している場合の作業性が向上する。
【0054】
また、前記張り出し部34の前記ブロック部32に対する支持構造は前記に限らない。
【0055】
また、前記着脱ブロック30の配置は前記に限らない。例えば、前記溶融部12の溶融部側傾斜部12bの下端部に沿う位置に、前記着脱ブロック30を設ければ、この溶融部側傾斜部12bの下端部にスラグが固着するのを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態に係る溶融炉を備える廃棄物処理設備の全体構成を示す概略図である。
【図2】図1に示す溶融炉付近の概略上面図である。
【図3】図2のC−C線断面図である。
【図4】図2のD−D線断面図である。
【図5】図3のE−E線断面図である。
【図6】図5の部分拡大図である。
【図7】図3の部分拡大図である。
【図8】図3の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0057】
1 廃棄物処理設備
10 溶融炉
12 溶融部
12a 導出口
12b 溶融部側傾斜部
14 排出部
14a 導入口
14b 排出部側傾斜部
20 シュート
21 内壁
26 内壁本体部
26f 内壁側凹部
30 着脱ブロック
32 ブロック部
32c 支持突起
32f ブロック部側凹部
34 張り出し部
34a 挿入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被溶融物を溶融するとともにその溶融により生成されたスラグを排出するための溶融炉であって、
前記被溶融物を燃焼溶融させてスラグを生成する溶融部と、
前記溶融部の下流に設けられるとともに、下方に延びて前記溶融部から流下するスラグを囲むように設けられるシュートとを備え、
前記シュートの内壁は、耐火物からなる内壁本体部と、この内壁本体部に着脱可能に固定される着脱ブロックとからなり、
前記着脱ブロックは、耐火物からなるブロック部と、当該ブロック部にこのブロック部の内側面および前記内壁本体部の内側面から内方に向かって張り出すように支持され、前記溶融部から流下したスラグを前記シュートの前記内壁本体部の内側面および前記ブロック部の内側面よりも内側に離間した位置から流下させる張り出し部とを有することを特徴とする溶融炉。
【請求項2】
請求項1に記載の溶融炉において、
前記着脱ブロックを複数個備えるとともに、これらの着脱ブロックが、それらの前記張り出し部が水平方向に連続するように水平方向に並べられることを特徴とする溶融炉。
【請求項3】
請求項2に記載の溶融炉において、
前記各着脱ブロックは、それらの前記張り出し部が前記シュートの内側面全周にわたって連続するように並べられることを特徴とする溶融炉。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の溶融炉において、
前記張り出し部は、前記着脱ブロックのブロック部に着脱可能に支持されることを特徴とする溶融炉。
【請求項5】
請求項4に記載の溶融炉において、
前記着脱ブロックのブロック部は、その上面から上方に突出する支持突起を有し、
前記着脱ブロック部の張り出し部は、前記支持突起が挿入可能な挿入孔を有するとともに、当該挿入孔に前記支持突起が挿入されることで、前記ブロック部の上面に支持されることを特徴とする溶融炉。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の溶融炉において、
前記着脱ブロックは、前記内壁本体部によって上下方向から挟み込まれた位置に設けられており、
前記着脱ブロックのブロック部の上面あるいは当該上面と対向する前記内壁本体部の側面の少なくとも一方に、前記着脱ブロックの張り出し部の一部を収容可能な凹部が設けられており、
前記着脱ブロック部の張り出し部は、その一部が前記凹部に収容された状態で前記ブロック部に支持されることを特徴とする溶融炉。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の溶融炉において、
前記溶融部で発生した高温ガスを炉外に導く排出部を備え、
前記排出部は、その底部に、下方に傾斜して前記スラグを前記シュート側に案内する排出部側傾斜部を有し、
前記溶融部は、その底部に、下方に傾斜して前記スラグを前記シュート側に案内する溶融部側傾斜部を有し、
前記着脱ブロック部は、前記張り出し部が前記排出部側傾斜部あるいは前記溶融部側傾斜部の少なくとも一方の下端部に沿うような位置に設けられることを特徴とする溶融炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−150569(P2009−150569A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326983(P2007−326983)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】