説明

溶血性貧血を処置する方法

発作性夜間血色素尿症又は他の溶血性疾患を、補体成分1つ以上に結合するか、又は別様にその発生及び/又は活性をブロックする化合物、例えば補体抑制抗体を用いながら治療する。1つの態様において、本発明は、対象における血栓症の発生を低減する方法を提供し、この方法は前記対象における補体を抑制することを含む。特定の実施形態においては、該方法は前記対象に化合物を投与することを含み、該化合物は、a)補体成分1つ以上に結合する化合物、b)補体成分1つ以上の発生をブロックする化合物、及びc)補体成分1つ以上の活性をブロックする化合物からなる群より選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2006年11月8日に出願された、米国出願第11/595,118号(この全体の開示は、参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
本開示は補体成分1つ以上に結合するか、又は別様にその発生及び/又は活性をブロックする化合物を投与することにより、溶血性疾患、例えば発作性夜間血色素尿症(「PNH」)を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発作性夜間血色素尿症(「PNH」)は赤血球が弱化し、このため正常な赤血球よりも急速に破壊される特殊な血液障害である。PNHは異常な血球の形成をもたらす骨髄細胞の突然変異に起因する。より具体的には、PNHは成熟血球の異なる集団を生じさせる造血幹細胞の障害であると考えられる。疾患の根拠は、細胞膜に蛋白質を結合させることを担っているグリコシル−ホスファチジルイノシトール(「GPI」)アンカーの合成を不能とする体細胞突然変異であると考えられる。突然変異した遺伝子、PIG−A(ホスファチジルイノシトールグリカンクラスA)はX染色体内に居留し、そして欠失から点突然変異にまで変動する数種の異なる突然変異を有する場合がある。
【0004】
PNHは補体媒介破壊に対する感受性をもたらし、そしてこの感受性は細胞膜内に存在する。PNH細胞は多くの蛋白質、特に必須補体調節表面蛋白質において欠乏している。これらの補体調節表面蛋白質には、崩壊加速因子(「DAF」)又はCD55及び反応性溶解の膜抑制剤(「MIRL」)又はD59が包含される。
【0005】
PNHは溶血性貧血(赤血球の減数)及びヘモグロビン尿症(尿中の過剰のヘモグロビン)を特徴とする。PNH罹患個体は発作を有することが知られており、それは暗着色した尿を伴う溶血の赤としてここでは定義する。溶血性貧血は補体成分による赤血球の血管内破壊による。他の知られた症状は嚥下障害、疲労、勃起不全、血栓症、再発性腹痛、肺高血圧、及び全体的に悪化したクオリティーオブライフを包含する。
【0006】
赤血球の血管内破壊に起因する溶血は、遊離のヘモグロビンの放出を介して局所的及び全身的な酸化窒素(NO)欠乏をもたらす。遊離のヘモグロビンは非赤血球コンパートメントにおけるNOの接触し易さ、及び酸素に対するよりもNOに対してヘム部分の親和性が10倍高値であることに部分的に起因して、NOのきわめて効率的なスカベンジャーとなっている。血管内溶血の発生は、頻繁にはハプトグロビンを完全に枯渇させるために十分な遊離のヘモグロビンを発生する。このヘモグロビンスカベンジャー蛋白質の許容量をいったん超えると、内因性のNOの消費が続いて起こる。例えば、LDHレベルが日常的に正常範囲の上限を超過し、そして一般的にはその正常レベルの2〜3倍のレベルに達しているPNHのような血管内溶血の状況においては、遊離のヘモグロビンは0.8〜1.6g/Lの濃度を達成していると考えられる。ハプトグロビンはハプトグロビンのアロタイプに応じてヘモグロビン0.7〜1.5g/L程度に結合できるのみであるため、遊離ヘモグロビンの大過剰が発生する。腎近位細管によるヘモグロビンの再吸収の許容量を超えると、ヘモグロビン尿症が起こる。血管内溶血の間の遊離のヘモグロビンの放出はNOの過剰な消費と、その後の増強した平滑筋収縮、血管収縮、及び血小板の活性化及び凝集をもたらす。ヘモグロビンによるNOスカベンジングを伴ったPNH関連の病的状態は腹痛、勃起不全、食道痙攣、及び血栓症を包含する。
【0007】
溶血の研究室における評価は通常は血液学的、血清学的、及び尿試験を包含する。血液学的試験は赤血球(RBC)の形態学的な異常を調べる血液スミアの検査(因果関係を調べるため)及び全血における網状赤血球の計測(RBC損失に関する骨髄の補償を調べるため)を包含する。血清学的試験はラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH;広範に実施)、及び遊離ヘモグロビン(広範には実施されない)を溶血の直接の尺度として包含する。LDHレベルは溶血を有する患者の診断及びモニタリングにおいて有用であることができる。他の血清学的試験はビリルビン又はハプトグロビンをそれぞれ分解産物又はスカベンジング予備分の尺度として包含する。尿試験はビリルビン、ヘモジデリン、及び遊離ヘモグロビンを包含し、そして一般的には、溶血の日常的なモニタリングよりはむしろ、溶血の肉眼的重症度を計測し及び溶血の血管内対血管外病因の区別をするために用いられる。更に又、RBC数、RBC(即ち血球結合)ヘモグロビン、及びヘマトクリットは一般的には、溶血活性そのものの尺度としてよりはむしろ、何れかを伴った貧血の程度を調べるために実施される。
【0008】
ステロイドは溶血性疾患の治療法として使用されており、そして一部の患者においては溶血を抑制する場合に有効であるが、ステロイド治療の長期使用は多くの負の副作用を有している。罹患患者は輸血を必要とする場合があり、それは感染症の危険を伴っている。抗凝固剤療法も又、血塊形成を予防するために必要である場合があり、そして出血をもたらす場合がある。骨髄移植はPNHを治癒させることが知られているが、骨髄の一致は発見することがきわめて困難である場合が多く、そして死亡率はこの操作法では高値である。
【0009】
PNHのような溶血性疾患及びその作用を安全かつ信頼性高く除去及び/又は制限する治療法を提供することは好都合である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの態様において、本出願は、対象における血栓症の発生を低減する方法であって、前記方法が前記対象における補体を抑制することを含む方法を提供する。特定の実施形態においては、該方法は前記対象に化合物を投与することを含み、該化合物は、a)補体成分1つ以上に結合する化合物、b)補体成分1つ以上の発生をブロックする化合物、及びc)補体成分1つ以上の活性をブロックする化合物からなる群より選択される。
【0011】
特定の実施形態においては、該対象は総顆粒球数の0.1%超の発作性夜間血色素尿症(PNH)顆粒球クローンを有する。特定の実施形態においては、該対象は総顆粒球数の1%超のPNH顆粒球クローンを有する。特定の実施形態においては、該対象は総顆粒球数の10%超のPNH顆粒球クローンを有する。特定の実施形態においては、該対象は総顆粒球数の50%超のPNH顆粒球クローンを有する。
【0012】
特定の実施形態においては、該化合物は抗体、可溶性補体抑制化合物、蛋白質、蛋白質フラグメント、ペプチド、小分子、RNAアプタマー、L−RNAアプタマー、シュピーゲルマー(spiegelmer)、アンチセンス化合物、セリンプロテアーゼ阻害剤、2本鎖RNA、短鎖干渉RNA、ロックド核酸(locked nucleic acid)抑制剤、及びペプチド核酸抑制剤からなる群より選択される。
【0013】
特定の実施形態においては、該化合物はCR1、LEX−CR1、MCP、DAF、CD59、H因子、コブラ毒因子、FUT−175、コンプレスタチン、及びK76COOHからなる群より選択される。
【0014】
特定の実施形態においては、該化合物はC5b活性を抑制する。特定の実施形態においては、該化合物はC5の切断を抑制する。特定の実施形態においては、該化合物は終末補体を抑制する。特定の実施形態においては、該化合物はC5b活性を抑制するか、又はC5aのその受容体への結合を抑制する。
【0015】
特定の実施形態においては、該対象はヒトである。特定の実施形態においては、該対象は血栓症事象1つ以上の病歴を有する。
【0016】
特定の実施形態においては、該化合物は抗体又は抗体フラグメントである。特定の実施形態においては、該抗体又は抗体フラグメントはポリクローナル抗体、モノクローナル抗体又は抗体フラグメント、ダイアボディー(diabody)、キメラ化若しくはキメラ抗体又は抗体フラグメント、ヒト化抗体又は抗体フラグメント、脱免疫化ヒト抗体(deimmunized human antibody)又は抗体フラグメント、完全なヒト抗体又は抗体フラグメント、単鎖抗体、Fv、Fab、Fab’、Fd、及びF(ab’)からなる群より選択される。
【0017】
特定の実施形態においては、該抗体はペキセリツマブである。特定の実施形態においては、該抗体はエクリズマブである。
【0018】
特定の実施形態においては、該化合物は前記対象に長期的に投与される。特定の実施形態においては、該化合物は前記対象に全身投与される。特定の実施形態においては、該化合物は前記対象に局所投与される。
【0019】
特定の実施形態においては、該方法は25%超まで血栓塞栓症の比率を低減する。特定の実施形態においては、該方法は50%超まで血栓塞栓症の比率を低減する。特定の実施形態においては、該方法は75%超まで血栓塞栓症の比率を低減する。特定の実施形態においては、該方法は90%超まで血栓塞栓症の比率を低減する。
【0020】
特定の実施形態においては、該方法はLDHレベルにおいて少なくとも25%の低減をもたらす。特定の実施形態においては、該方法はLDHレベルにおいて少なくとも50%の低減をもたらす。特定の実施形態においては、該方法はLDHレベルにおいて少なくとも75%の低減をもたらす。特定の実施形態においては、該方法はLDHレベルにおいて少なくとも90%の低減をもたらす。
【0021】
特定の実施形態においては、該方法は第2の化合物を投与することを更に含み、前記第2の化合物は造血を増大させる。特定の実施形態においては、該第2の化合物はステロイド、免疫抑制物質、抗凝固剤、葉酸、鉄、エリスロポエチン(EPO)、PEG化EPO、EPO模倣物、Aranesp(登録商標)、赤血球生成刺激剤、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)及び抗リンパ球グロブリン(ALG)からなる群より選択される。特定の実施形態においては、 EPOを抗C5抗体と共に投与する。特定の実施形態においては、該抗体はペキセリツマブである。特定の実施形態においては、該抗体はエクリズマブである。
【0022】
特定の実施形態においては、該方法は抗血栓化合物を投与することを更に含む。特定の実施形態においては、抗血栓化合物は抗凝固剤である。特定の実施形態においては、該抗凝固剤を抗C5抗体と共に投与する。特定の実施形態においては、該抗凝固剤は抗血小板剤である。特定の実施形態においては、該抗体はペキセリツマブである。特定の実施形態においては、該抗体はエクリズマブである。
【0023】
別の態様において、本発明は、正常より高値のラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH)レベルを有する対象における血栓症の発生を低減する方法であって、前記方法は前記対象における補体を抑制することを含む方法を提供する。
【0024】
特定の実施形態においては、該方法は前記対象に化合物を投与することを含み、該化合物は、a)補体成分1つ以上に結合する化合物、b)補体成分1つ以上の発生をブロックする化合物、及びc)補体成分1つ以上の活性をブロックする化合物からなる群より選択される。
【0025】
特定の実施形態においては、該対象は正常値の上限より高値のLDHレベルを有する。特定の実施形態においては、該対象は正常値の上限の1.5倍以上のLDHレベルを有する。特定の実施形態においては、該対象は正常値の上限の2.5倍以上のLDHレベルを有する。特定の実施形態においては、該対象は正常値の上限の5倍以上のLDHレベルを有する。特定の実施形態においては、該対象は正常値の上限の10倍以上のLDHレベルを有する。
【0026】
特定の実施形態においては、該化合物は抗体、可溶性補体抑制化合物、蛋白質、蛋白質フラグメント、ペプチド、小分子、RNAアプタマー、L−RNAアプタマー、シュピーゲルマー、アンチセンス化合物、セリンプロテアーゼ阻害剤、2本鎖RNA、短鎖干渉RNA、ロックド核酸抑制剤、及びペプチド核酸抑制剤からなる群より選択される。
【0027】
特定の実施形態においては、該化合物はCR1、LEX−CR1、MCP、DAF、CD59、H因子、コブラ毒因子、FUT−175、コンプレスタチン、及びK76COOHからなる群より選択される。
【0028】
特定の実施形態においては、該化合物はC5b活性を抑制する。特定の実施形態においては、該化合物はC5の切断を抑制する。特定の実施形態においては、該化合物は終末補体を抑制する。特定の実施形態においては、該化合物はC5b活性を抑制するか、又はC5aのその受容体への結合を抑制する。
【0029】
特定の実施形態においては、該対象はヒトである。特定の実施形態においては、該対象は血栓症事象1つ以上の病歴を有する。
【0030】
特定の実施形態においては、該化合物は抗体又は抗体フラグメントである。特定の実施形態においては、該抗体又は抗体フラグメントはポリクローナル抗体、モノクローナル抗体又は抗体フラグメント、ダイアボディー、キメラ化若しくはキメラ抗体又は抗体フラグメント、ヒト化抗体又は抗体フラグメント、脱免疫化ヒト抗体又は抗体フラグメント、完全なヒト抗体又は抗体フラグメント、単鎖抗体、Fv、Fab、Fab’、Fd、及びF(ab’)からなる群より選択される。
【0031】
特定の実施形態においては、該抗体はペキセリツマブである。特定の実施形態においては、該抗体はエクリズマブである。
【0032】
特定の実施形態においては、該化合物は前記対象に長期的に投与される。特定の実施形態においては、該化合物は前記対象に全身投与される。特定の実施形態においては、前記化合物は前記対象に局所投与される。
【0033】
特定の実施形態においては、該方法は25%超まで血栓塞栓症の比率を低減する。特定の実施形態においては、該方法は50%超まで血栓塞栓症の比率を低減する。特定の実施形態においては、該方法は75%超まで血栓塞栓症の比率を低減する。特定の実施形態においては、該方法は90%超まで血栓塞栓症の比率を低減する。
【0034】
特定の実施形態においては、該方法はLDHレベルにおいて少なくとも25%の低減をもたらす。特定の実施形態においては、該方法はLDHレベルにおいて少なくとも50%の低減をもたらす。特定の実施形態においては、該方法はLDHレベルにおいて少なくとも75%の低減をもたらす。特定の実施形態においては、該方法はLDHレベルにおいて少なくとも90%の低減をもたらす。
【0035】
特定の実施形態においては、該方法は第2の化合物を投与することを更に含み、前記第2の化合物は造血を増大させる。特定の実施形態においては、前記第2の化合物はステロイド、免疫抑制物質、抗凝固剤、葉酸、鉄、エリスロポエチン(EPO)、PEG化EPO、EPO模倣物、Aranesp(登録商標)、赤血球生成刺激剤、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)及び抗リンパ球グロブリン(ALG)からなる群より選択される。特定の実施形態においては、 EPOを抗C5抗体と共に投与する。特定の実施形態においては、該抗体はペキセリツマブである。特定の実施形態においては、該抗体はエクリズマブである。
【0036】
特定の実施形態においては、該方法は抗血栓化合物を投与することを更に含む。特定の実施形態においては、該抗血栓化合物は抗凝固剤である。特定の実施形態においては、該抗凝固剤を抗C5抗体と共に投与する。特定の実施形態においては、該抗凝固剤は抗血小板剤である。特定の実施形態においては、該抗体はペキセリツマブである。特定の実施形態においては、該抗体はエクリズマブである。
【0037】
更に別の態様において、本発明はPNH顆粒球クローン及び正常値の上限より高値のLDHレベルを有する対象における血栓症の発生を低減する方法であって、前記方法が前記対象における補体を抑制することを含む方法を提供する。特定の実施形態においては、該方法は前記対象に化合物を投与することを含み、該化合物は、a)補体成分1つ以上に結合する化合物、b)補体成分1つ以上の発生をブロックする化合物、及びc)補体成分1つ以上の活性をブロックする化合物からなる群より選択される。
【0038】
特定の実施形態においては、該対象は総顆粒球数の0.1%超のPNH顆粒球クローンを有する。特定の実施形態においては、該対象は総顆粒球数の0.1%超のPNH顆粒球クローンを有する。特定の実施形態においては、該対象は総顆粒球数の1%超のPNH顆粒球クローンを有する。特定の実施形態においては、該対象は総顆粒球数の10%超のPNH顆粒球クローンを有する。特定の実施形態においては、該対象は総顆粒球数の50%超のPNH顆粒球クローンを有する。
【0039】
特定の実施形態においては、該化合物は抗体、可溶性補体抑制化合物、蛋白質、蛋白質フラグメント、ペプチド、小分子、RNAアプタマー、L−RNAアプタマー、シュピーゲルマー、アンチセンス化合物、セリンプロテアーゼ阻害剤、2本鎖RNA、短鎖干渉RNA、ロックド核酸抑制剤、及びペプチド核酸抑制剤からなる群より選択される。
【0040】
特定の実施形態においては、該化合物はCR1、LEX−CR1、MCP、DAF、CD59、H因子、コブラ毒因子、FUT−175、コンプレスタチン、及びK76COOHからなる群より選択される。
【0041】
特定の実施形態においては、該化合物はC5b活性を抑制する。特定の実施形態においては、該化合物はC5の切断を抑制する。特定の実施形態においては、該化合物は終末補体を抑制する。特定の実施形態においては、該化合物はC5b活性を抑制するか、又はC5aのその受容体への結合を抑制する。
【0042】
特定の実施形態においては、該対象はヒトである。特定の実施形態においては、該対象は血栓症事象1つ以上の病歴を有する。
【0043】
特定の実施形態においては、該化合物は抗体又は抗体フラグメントである。特定の実施形態においては、該抗体又は抗体フラグメントはポリクローナル抗体、モノクローナル抗体又は抗体フラグメント、ダイアボディー、キメラ化若しくはキメラ抗体又は抗体フラグメント、ヒト化抗体又は抗体フラグメント、脱免疫化ヒト抗体又は抗体フラグメント、完全なヒト抗体又は抗体フラグメント、単鎖抗体、Fv、Fab、Fab’、Fd、及びF(ab’)からなる群より選択される。
【0044】
特定の実施形態においては、該抗体はペキセリツマブである。特定の実施形態においては、該抗体はエクリズマブである。
【0045】
特定の実施形態においては、該化合物は前記対象に長期的に投与される。特定の実施形態においては、該化合物は前記対象に全身投与される。特定の実施形態においては、該化合物は前記対象に局所投与される。
【0046】
特定の実施形態においては、該方法は25%超まで血栓塞栓症の比率を低減する。特定の実施形態においては、該方法は50%超まで血栓塞栓症の比率を低減する。特定の実施形態においては、該方法は75%超まで血栓塞栓症の比率を低減する。特定の実施形態においては、該方法は90%超まで血栓塞栓症の比率を低減する。
【0047】
特定の実施形態においては、該方法はLDHレベルにおいて少なくとも25%の低減をもたらす。特定の実施形態においては、該方法はLDHレベルにおいて少なくとも50%の低減をもたらす。特定の実施形態においては、該方法はLDHレベルにおいて少なくとも75%の低減をもたらす。特定の実施形態においては、該方法はLDHレベルにおいて少なくとも90%の低減をもたらす。
【0048】
特定の実施形態においては、該方法は第2の化合物を投与することを更に含み、前記第2の化合物は造血を増大させる。特定の実施形態においては、該第2の化合物はステロイド、免疫抑制物質、抗凝固剤、葉酸、鉄、エリスロポエチン(EPO)、PEG化EPO、EPO模倣物、Aranesp(登録商標)、赤血球生成刺激剤、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)及び抗リンパ球グロブリン(ALG)からなる群より選択される。特定の実施形態においては、 EPOを抗C5抗体と共に投与する。特定の実施形態においては、該抗体はペキセリツマブである。特定の実施形態においては、該抗体はエクリズマブである。
【0049】
特定の実施形態においては、該方法は抗血栓化合物を投与することを更に含む。特定の実施形態においては、該抗血栓化合物は抗凝固剤である。特定の実施形態においては、該抗凝固剤を抗C5抗体と共に投与する。特定の実施形態においては、該抗凝固剤は抗血小板剤である。特定の実施形態においては、該抗体はペキセリツマブである。特定の実施形態においては、該抗体はエクリズマブである。
【0050】
又更に別の態様において、本出願は正常値より低値の酸化窒素(NO)レベルに罹患した対象における血栓症の発生を低減する方法であって、前記方法が前記対象における補体を抑制することを含む方法を提供する。特定の実施形態においては、該方法は前記対象に化合物を投与することを含み、該化合物は、i)補体成分1つ以上に結合する化合物、ii)補体成分1つ以上の発生をブロックする化合物、及びiii)補体成分1つ以上の活性をブロックする化合物からなる群より選択され、該方法が血清中酸化窒素(NO)レベルを増大させる。
【0051】
特定の実施形態においては、該方法は25%超までNOレベルを増大させる。特定の実施形態においては、該方法は50%超までNOレベルを増大させる。特定の実施形態においては、該方法は100%超までNOレベルを増大させる。特定の実施形態においては、該方法は3倍超までNOレベルを増大させる。
【0052】
特定の実施形態においては、該対象はPNHを有する。
【0053】
特定の実施形態においては、該化合物は抗体、可溶性補体抑制化合物、蛋白質、蛋白質フラグメント、ペプチド、小分子、RNAアプタマー、L−RNAアプタマー、シュピーゲルマー、アンチセンス化合物、セリンプロテアーゼ阻害剤、2本鎖RNA、短鎖干渉RNA、ロックド核酸抑制剤、及びペプチド核酸抑制剤からなる群より選択される。
【0054】
特定の実施形態においては、該化合物はCR1、LEX−CR1、MCP、DAF、CD59、H因子、コブラ毒因子、FUT−175、コンプレスタチン、及びK76COOHからなる群より選択される。
【0055】
特定の実施形態においては、該化合物はC5b活性を抑制する。特定の実施形態においては、該化合物はC5の切断を抑制する。特定の実施形態においては、該化合物は終末補体を抑制する。特定の実施形態においては、該化合物はC5b活性を抑制するか、又はC5aのその受容体への結合を抑制する。
【0056】
特定の実施形態においては、該対象はヒトである。特定の実施形態においては、該対象は血栓症事象1つ以上の病歴を有する。
【0057】
特定の実施形態においては、該化合物は抗体又は抗体フラグメントである。特定の実施形態においては、該抗体又は抗体フラグメントはポリクローナル抗体、モノクローナル抗体又は抗体フラグメント、ダイアボディー、キメラ化若しくはキメラ抗体又は抗体フラグメント、ヒト化抗体又は抗体フラグメント、脱免疫化ヒト抗体又は抗体フラグメント、完全なヒト抗体又は抗体フラグメント、単鎖抗体、Fv、Fab、Fab’、Fd、及びF(ab’)からなる群より選択される。
【0058】
特定の実施形態においては、該抗体はペキセリツマブである。特定の実施形態においては、該抗体はエクリズマブである。
【0059】
特定の実施形態においては、該化合物は対象に長期的に投与される。特定の実施形態においては、該化合物は対象に全身投与される。特定の実施形態においては、該化合物は対象に局所投与される。
【0060】
特定の実施形態においては、該方法は25%超まで血栓塞栓症の比率を低減する。特定の実施形態においては、該方法は50%超まで血栓塞栓症の比率を低減する。特定の実施形態においては、該方法は75%超まで血栓塞栓症の比率を低減する。特定の実施形態においては、該方法は90%超まで血栓塞栓症の比率を低減する。
【0061】
特定の実施形態においては、該方法はLDHレベルにおいて少なくとも25%の低減をもたらす。特定の実施形態においては、該方法はLDHレベルにおいて少なくとも50%の低減をもたらす。特定の実施形態においては、該方法はLDHレベルにおいて少なくとも75%の低減をもたらす。特定の実施形態においては、対象における該方法はLDHレベルにおいて少なくとも90%の低減をもたらす。
【0062】
特定の実施形態においては、該方法は第2の化合物を投与することを更に含み、前記第2の化合物は造血を増大させる。特定の実施形態においては、該第2の化合物はステロイド、免疫抑制物質、抗凝固剤、葉酸、鉄、エリスロポエチン(EPO)、PEG化EPO、EPO模倣物、Aranesp(登録商標)、赤血球生成刺激剤、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)及び抗リンパ球グロブリン(ALG)からなる群より選択される。特定の実施形態においては、 EPOを抗C5抗体と共に投与する。特定の実施形態においては、該抗体はペキセリツマブである。特定の実施形態においては、該抗体はエクリズマブである。
【0063】
特定の実施形態においては、該方法は抗血栓化合物を投与することを更に含む。特定の実施形態においては、該抗血栓化合物は抗凝固剤である。特定の実施形態においては、該抗凝固剤を抗C5抗体と共に投与する。特定の実施形態においては、該抗凝固剤は抗血小板剤である。特定の実施形態においては、該抗体はペキセリツマブである。特定の実施形態においては、該抗体はエクリズマブである。
【0064】
別の態様において、本出願は、溶血性障害を有する対象のPNH顆粒球クローンサイズを計測することを含む前記対象が血栓症に罹患し易いかどうかを決定する方法であって、クローンサイズが0.1%超である場合には前記対象は血栓症に罹患し易い、上記方法を提供する。特定の実施形態においては、該クローンサイズは1%超である。特定の実施形態においては、該クローンサイズは10%超である。特定の実施形態においては、該クローンサイズは50%超である。
【0065】
更に別の態様においては、本出願は、対象のPNH赤血球質量(red blood cell mass)を増大させる方法であって、前記方法が前記対象における補体を抑制することを含む方法を提供する。特定の実施形態においては、該方法は前記対象に化合物を投与することを含み、化合物は、i)補体成分1つ以上に結合する化合物、ii)補体成分1つ以上の発生をブロックする化合物、及びiii)補体成分1つ以上の活性をブロックする化合物からなる群より選択される。
【0066】
特定の実施形態においては、該対象はPNH顆粒球クローンを有する。特定の実施形態においては、該PNH顆粒球クローンは総顆粒球数の0.1%超である。特定の実施形態においては、該PNH顆粒球クローンは総顆粒球数の1%超である。特定の実施形態においては、該PNH顆粒球クローンは総顆粒球数の10%超である。特定の実施形態においては、該PNH顆粒球クローンは総顆粒球数の50%超である。
【0067】
特定の実施形態においては、該対象は正常値の上限より高値のLDHレベルを有する。特定の実施形態においては、該対象は正常値の上限の1.5倍以上のLDHレベルを有する。特定の実施形態においては、該対象は正常値の上限の2.5倍以上のLDHレベルを有する。特定の実施形態においては、該対象は正常値の上限の5倍以上のLDHレベルを有する。特定の実施形態においては、該対象は正常値の上限の10倍以上のLDHレベルを有する。
【0068】
更に別の態様において、本出願は対象における溶血性貧血を治療する方法であって、前記方法が前記対象における補体を抑制することを含む方法を提供する。特定の実施形態においては、該方法は該対象に化合物を投与することを含み、該化合物は、i)補体成分1つ以上に結合する化合物、ii)補体成分1つ以上の発生をブロックする化合物、及びiii)補体成分1つ以上の活性をブロックする化合物からなる群より選択され、前記方法が赤血球(RBC)質量を増大させる。
【0069】
特定の実施形態においては、該RBC質量はRBCの絶対数として計測される。特定の実施形態においては、該RBC質量はPNHのRBC質量である。特定の実施形態においては、該方法は10%超までRBC質量を増大させる。特定の実施形態においては、該方法は25%超までRBC質量を増大させる。特定の実施形態においては、該方法は50%超までRBC質量を増大させる。特定の実施形態においては、該方法は100%超までRBC質量を増大させる。特定の実施形態においては、該方法は2倍超までRBC質量を増大させる。
【0070】
特定の実施形態においては、該方法は輸血の必要性を低下させる。
【0071】
特定の実施形態においては、該方法はヘモグロビンレベルを安定化させる。
【0072】
特定の実施形態においては、該方法はヘモグロビンレベルの上昇をもたらす。
【0073】
本出願は上記した態様及び実施形態の何れかの組み合わせを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1A】図1Aは、抗C5抗体を用いたPNH患者の治療の間に計測した溶血の生化学的パラメーターを報告したものである。
【図1B】図1Bは、ラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH)レベルに対する抗C5抗体を用いた治療の効果をグラフにより示したものである。
【図2】図2は、PNH患者におけるヘモグロビン尿症の発作の発生率をモニタリングするために考案された尿色スケールを示す。
【図3】図3は、患者の発作率に対するエクリズマブ治療の効果を治療前の率と比較したグラフである。
【図4】図4は、補体を完全にブロックすることに適する溶血、症状及び薬力学に対する本発明の迅速な正の効果を反映した、PNH患者の尿試料及びヘモグロビン尿症、嚥下障害、LDH、AST、薬物動態(PK)及び薬力学(PD)を示す。
【図5】図5は、経時的なヘモグロビン尿症に対する抗C5抗体投薬スケジュールの効果をグラフにより示したものである。
【図6A】図6a及び6bは、抗C5抗体を用いた治療の前及び治療中における、月当たり患者当たりに必要な輸血単位の数量を比較したグラフであり;図6aは血球減少患者を示し;そして図6bは非血球減少患者を示す。
【図6B】図6a及び6bは、抗C5抗体を用いた治療の前及び治療中における、月当たり患者当たりに必要な輸血単位の数量を比較したグラフであり;図6aは血球減少患者を示し;そして図6bは非血球減少患者を示す。
【図7】図7は、抗C5抗体及びエリスロポエチン(EPO)を投与することによる血小板減少症患者への対処を示す。
【図8】図8は、C5抗体の薬力学をグラフにより示したものである。
【図9】図9は、クオリティオブライフの問題を意図した抗C5抗体用法の間に実施した欧州癌研究治療機構(European Organization for Research and Treatment of Cancer)のアンケート(「EORTC QLC−C30」)の結果のチャートである。
【図10】図10は、PNHに関連した有害症状に対する抗C5抗体治療の効果を示すチャートである。
【図11】図11は、プラセボと比較した場合のエクリズマブを用いた治療の間のPNHのRBC質量の変化を示す。
【図12】図12は、PNHIII型のRBC質量及び輸血の必要性に対するエクリズマブ及び組み換えヒトエリスロポエチンの効果を示す。ひし形はPNHIII型のRBC数を示し、そして黒色のバーは輸血された充填赤血球(PRBC)単位の数量を示す。x軸は日時を示す。
【図13】図13は、エクリズマブ治療の間、及びプラセボ対照に関するFACIT−疲労評点の変化を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0075】
本開示は哺乳類における発作性夜間血色素尿症(PNH)及び他の溶血性疾患を治療する方法に関する。特に、本明細書に記載した溶血性疾患を治療する方法では、補体成分1つ以上に結合するか、又は別様にその発生及び/又は活性をブロックする化合物を使用する。本発明の方法は意外な結果をもたらすことがわかった。例えば、補体成分1つ以上に結合するか、又は別様にその発生及び/又は活性をブロックする化合物の投与により、溶血が急速に終結し、LDH及びヘモグロビン尿症は治療直後に有意に低減した。更に又、溶血患者は赤血球の120日の生活環を遙かに超過した延長期間(12か月以上)に渡り、輸血に対して低依存性となるか、輸血非依存性となることができる。更に又、III型赤血球数は赤血球溶解の他の機序の中央において劇的に増大することができる(非補体媒介性、及び/又は早期補体成分媒介性、例えばCb3)。意外な結果の別の例は種々の症状が消散していることであり、NOの血清中レベルが赤血球溶解の他の機序の存在下であっても十分増大していることを示している。これら、及び本明細書に記載した他の結果は、予期されなかったものであり、そして溶血性疾患の以前の治療からは予測できないことである。
【0076】
補体成分1つ以上に結合するか、又は別様にその発生及び/又は活性をブロックする何れかの化合物を本発明の方法において使用できる。特に有用なそのような化合物の特定のクラスはヒト補体成分に特異的な抗体、特に抗C5抗体を包含する。抗C5抗体は補体カスケードを抑制し、最終的には終末補体複合体C5b−9による赤血球(RBC)溶解を予防する。RBCの溶解を抑制及び/又は低減することにより、PNH及び他の溶血性疾患の作用(ヘモグロビン尿症、貧血、嚥下障害、疲労、勃起不全、再発性腹痛及び血栓症のような症状を包含)が排除又は低下される。
【0077】
別の実施形態においては、蛋白質CD55及びCD59の可溶性形態を、単独又は相互に組み合わせて対象に投与することにより、補体カスケードをその代替経路において抑制することができる。CD55はC3のレベルで抑制され、これにより、カスケードのそれ以上の進行を予防する。CD59は膜攻撃複合体を形成するようにC5b−8複合体がC9と複合体化することを抑制する(後述の考察を参照)。
【0078】
補体系は細菌及びウィルスの病原体の侵入に対抗して防御するために身体の他の免疫系と連携して作用する。血漿蛋白質及び膜コファクターの複雑な収集物として観察されている補体カスケードに関与する蛋白質少なくとも25種が存在する。補体成分は、一連の内因性ではあるが厳密な酵素切断及び膜結合事象において相互作用することにより、その免疫防御機能を達成する。その結果として生じる補体カスケードはオプソニン性、免疫調節性、及び溶解性の機能を有する生成物の産生をもたらす。補体活性化に関連する生物学的活性の簡潔な要約は、例えばThe Merck Manual第16版に記載されている。
【0079】
補体カスケードは古典的経路、代替経路、又はレクチン経路を介して進行する。これらの経路は多くの成分を共有しており、そしてそれらはそれらの初期の工程においては異なるものの、それらは標的細胞の活性化及び破壊を担っている同じ「終末補体」成分(C5〜C9)に収束して共有している。古典的な補体経路は、典型的には標的細胞上の抗原性部位を抗体が認識してそれに結合することにより開始される。代替経路は通常は抗体非依存性であり、そして病原体表面上の特定の分子により開始されることができる。更に又、レクチン経路は典型的には高マンノース基質へのマンノース結合レクチン(MBL)の結合と共に開始される。これらの経路は、補体成分C3が活性なプロテアーゼにより切断されてC3a及びC3bを形成する地点において収束している。
C3aはアナフィラトキシンである(後述の考察参照)。C3bは細菌及び他の細胞に、そして特定のウィルス及び免疫複合体に結合し、そして循環系からの除去のためにそれをタグ付けする。この役割におけるC3bはオプソニンとして知られている、C3bのオプソニン機能は一般的に補体系の最も重要な抗感染作用であると考えられている。C3b機能をブロックする遺伝子的患部を有する患者は、広範な種類の病原性生物による感染に対して脆弱であるのに対し、補体カスケード順路のより後期において患部を有する患者、即ち、C5機能をブロックする患部を有する患者はナイセリアの感染に対してのみより脆弱であり、そしてその後は幾分のみより脆弱であることが分かっている(Fearon,Intensive Review of Internal Medicine,2nd Ed.Fanta and Minaker,eds.Brigham and Women’s and Beth Israel Hospitals.1983)。
【0080】
C3bは又、各経路に独特の他の成分との複合体を形成することにより、古典的又は代替のC5コンバターゼを形成し、これがC5をC5a及びC5bに分解する。即ちC3は、それが3つの活性化経路全てにとって必須であることから、補体反応順路において中枢的な蛋白質とみなされている(Wurznerら、Complement Inflamm.1991,8:328−340)。C3bのこの特性は血清中のプロテアーゼ第I因子により調節され、これはC3bに対して効果し、iC3b(不活性C3b)を産生する。オプソニンとしてなお機能性であるものの、iC3bは活性なC5コンバターゼを形成できない。
【0081】
プロC5前駆体はアミノ酸655及び659の後で切断され、アミノ末端フラグメントとしてのベータ鎖(配列のアミノ酸残基+1〜655)及びカルボキシル末端フラグメントとしてのアルファ鎖(配列のアミノ酸残基660〜1658)を生じさせ、2者の間で4アミノ酸(配列のアミノ酸残基656〜659)が欠失する。C5はグリコシル化され、その質量の約1.5〜3パーセントは炭水化物に帰属するものである。成熟C5は655アミノ酸の75kDaのベータ鎖にジスルフィド結合した999アミノ酸の114kDaのアルファ鎖のヘテロ2量体である。C5は正常血清中は概ね75μg/ml(0.4μM)で存在する。C5は単コピー遺伝子の単鎖前駆体蛋白質産物として合成される(Havilandら、J.Immunol.1991,146:362−368)。この遺伝子の転写物のcDNA配列は18アミノ酸リーダー配列に沿った1658アミノ酸の分泌プロC5前駆体を予測させる(米国特許6,355,245参照)。
【0082】
C5の切断によりC5aが放出され、これは強力なアナフィラトキシン及び化学走性因子であり、そして溶解終末補体複合体C5b−9の形成をもたらす。C5aはアルファ鎖の最初の74アミノ酸(即ち配列のアミノ酸残基660〜733)を含むアミノ末端フラグメントとして代替又は古典的C5コンバターゼの何れかによりC5のアルファ鎖から切り出される。C5の11kDaの質量の概ね20パーセントは炭水化物に帰属するものである。コンバターゼ作用のための切断部位は、配列のアミノ酸残基733において、又はその直近隣接部である。この切断部位において、又はその隣接部において結合する化合物は、切断部位へのC5コンバターゼ酵素の接近をブロックする能力を有し、そしてこれにより補体抑制剤として機能すると考えられる。
【0083】
C5bはC6、C7及びC8と複合体化して標的細胞表面においてC5b−8複合体を形成する。数種のC9分子との結合時には、膜攻撃複合体(「MAC」、C5b−9、終末補体複合体−TCC)が形成される。MACの十分な数量が標的細胞膜内に挿入されれば、それらが形成した開口部(MAC細孔)が標的細胞の急速な浸透圧性溶解を媒介する。MACのより低値の非溶解性の濃度は、他のプロ炎症性効果をもたらす場合がある。特に、内皮細胞及び血小板内への少数のC5b−9複合体の膜挿入は有害な細胞活性化を誘発する場合がある。一部の例においては、活性化は細胞の溶解に先行し得る。
【0084】
C5a及びC5b−9は又下流の炎症因子、例えば加水分解酵素、反応性酸素種、アラキドン酸代謝及び種々のサイトカインの放出を増幅することにより多面性細胞活性化特性を有する。C5は又、C5コンバターゼ活性以外の手段によっても活性化できる。制限トリプシン消化(Minta and Man,J.Immunol.1977,119:1597−1602;Wetsel and Kolb,J.Immunol.1982,128:2209−2216)及び酸処理(Yamamoto and Gewurz,J.Immunol.1978,120:2008;Damerauら、Molec.Immunol.1989,26:1133−1142)も又、C5を切断して活性なC5bを形成することができる。
【0085】
上記した通り、C3及びC5aはアナフィラトキシンである。これらの活性化補体成分は肥満細胞脱顆粒化をトリガーすることができ、これによりヒスタミン及び他の炎症メディエーターが放出され、平滑筋の収縮、増大した血管の透過性、白血球活性化、及び他の炎症現象、例えば過剰細胞性をもたらす細胞増殖が起こる。C5aは又、補体活性化の部位にプロ炎症性顆粒球を誘引する働きを有する化学走性ペプチドとして機能する。
【0086】
ヒト補体成分の何れかに結合するか、又は別様にその発生及び/又は活性をブロックする何れかの化合物を本発明の開示に従って利用してよい。一部の実施形態においては、ヒト補体成分に特異的な抗体が本明細書において有用である。一部の化合物は補体成分C−1、C−2、C−3、C−4、C−5、C−6、C−7、C−8、C−9、D因子、B因子、P因子、MBL、MASP−1、及びMASP−2に対して指向された抗体を包含し、これによりC5aに関連するアナフィラトキシン活性の発生を予防、及び/又はC5bに関連する膜攻撃複合体の組み立てを防止する。
【0087】
本発明の方法において同様に有用なものは、天然に存在する、又は可溶性形態の補体抑制化合物、例えばCR1、LEX−CR1、MCP、DAF、CD59、H因子、コブラ毒因子、FUT−175、コンプレスタチン、及びK76COOHである。ヒト補体成分の何れかに結合するか、又は別様にその発生及び/又は活性をブロックするために利用してよい他の化合物は、例えば限定しないが、蛋白質、蛋白質フラグメント、ペプチド、小分子、RNAアプタマー、例えばARC187(Archemix Corp.,Cambridge,Massより入手可能)、L−RNAアプタマー、シュピーゲルマー、アンチセンス化合物、セリンプロテアーゼ阻害剤、RNA干渉(RNAi)において利用してよい分子、例えば2本鎖RNA、例えば短鎖干渉RNA(siRNA)、ロックド核酸(LNA)抑制剤、ぺプチド核酸(PNA)抑制剤等を包含する。
【0088】
機能的には、化合物の1つの適当なクラスは潜在的にプロ炎症性の分子であるC5a及びC5b−9(終末補体複合体)の形成をブロックするC5の切断の抑制を行う。好ましくは、化合物はオプソニン効果及び免疫複合体のクリアランスの重要な免疫保護機能を助長するC3bの形成の防止を行わない。
【0089】
これらの膜攻撃複合体分子の形成を防止しつつ、C5おける補体カスケードの抑制は、多くの病原性微生物のオプソニン効果のため、並びに免疫複合体の可溶化及びクリアランスのために重要であるC3bを形成する能力を温存する。C3bを形成する能力を保持することは、血栓症、感染症、疲労、嗜眠及び免疫複合体クリアランス障害への罹患し易さが、疾患過程の予備的に存在する臨床特徴である溶血性疾患に対する補体抑制における治療因子として特に重要であると考えられる。
【0090】
本明細書における使用のために特に有用な化合物は、補体成分C5a及びC5bへの補体成分C5の変換を直接又は間接的に低減する抗体である。有用な抗体の1つのクラスは、抗原結合部位少なくとも1つを有し、そしてヒト補体成分C5への特異的結合を呈するものである。特に有用な補体抑制剤は約30%超までC5a及び/又はC5b−9の形成を低減する化合物である。C5aの形成をブロックするための望ましい能力を有する抗C5抗体は、少なくとも1982年から当該分野で知られている(Moongkarndiら、Immunobiol.1982,162:397;Moongkarndiら、Immunobiol.1983,165:323)。C5又はC5フラグメントに対して免疫反応性である当該分野で知られた抗体は,C5ベータ鎖に対する抗体(Moongkarndiら、Immunobiol.1982,162:397;Moongkarndiら、Immunobiol.1983,165:323;Wurznerら、上出;Mollnesら、Scand.J.Immunol.1988,28:307−312);C5a(例えばAmesら、J.Immunol.1994,152:4572−4581;米国特許4,686,100;及び欧州特許公開0411306参照);及び非ヒトC5に対する抗体(例えばGiclasら、J.Immunol.Meth.1987,105:201−209参照)を包含する。特に有用な抗C5抗体はh5G1.1−mAb、h5G1.1−scFv及び他の機能的なh5G1.1フラグメントである。h5G1.1−mAb、h5G1.1−scFv及び他の機能的なh5G1.1フラグメントを製造するための方法は、米国特許6,355,245及び「Inhibition of Complement Activity by Humanized Anti−C5 Antibody and Single Chain Fv」、Thomasら、Molecular Immunology,Vol.33,No.17/18,p.1398−1401,1996に記載されており、それらの開示は参照により全体が本明細書に組み込まれる。抗体h5G1.1−mAbは商品名エクリズマブの下に現在臨床治験中である。
【0091】
補体成分C5に対して反応性のモノクローナル抗体を製造するハイブリドーマはSimsらの米国特許5,135,916の教示に従って得ることができる。抗体は公知の方法に従って免疫原として補体C5成分の精製された成分を使用しながら製造される。本開示に従えば、補体成分C5、C5a又はC5bが免疫原として好ましく使用される。特に好ましい有用な実施形態においては、免疫原はC5のアルファ鎖である。
【0092】
特に有用な抗体は前パラグラフにおいて考察した必要な機能特性を共有しており、そして以下の特性、即ち:(1)それらは5G1.1に対して特異的に免疫反応性であるC5の部分への結合に関して競合すること;(2)それらはC5アルファ鎖に特異的に結合し、そのような特異的な結合、及び結合に関する競合は、当該分野で周知の種々の方法、例えばプラズモン表面共鳴法により測定できること(Johneら、J.Immunol.Meth.1993,160:191−198);及び(3)それらはC3又はC4(これらはC5コンバターゼの成分である)の何れかへのC5の結合をブロックすること;の何れかを有している。
【0093】
補体成分少なくとも1つの産生及び/又は活性を抑制する化合物は、種々の単位用量形態において投与できる。用量は使用される特定の化合物に従って変動することになる。例えば、異なる抗体は異なる質量及び/又は親和性を有する場合があり、そのため、異なる用量レベルを要する。フラグメント(例えばFab、F(ab’)、scFv)として製造される抗体も又、それらが等価な未損傷の免疫グロブリンよりもかなり低値の質量のものであり、そしてこのため患者の血液中で同じモルレベルに到達するためにはより低い用量を要するため、そのような未損傷の免疫グロブリンからは異なる用量を要することになる。
【0094】
用量は又、投与の様式、治療すべき患者の特定の症状、患者の全般的な健康、状態、体格及び年齢、及び処方医師の判断に応じて変動することになる。
【0095】
補体成分少なくとも1つの産生及び/又は活性を抑制する化合物の投与は、好ましくは、注射による静脈内注入を介するものとなるが、適当な製薬用担体を用いたエアロゾル形態、皮下注射、経口又は舌下においておこなってもよい。所望により他の投与経路を使用してよい。
【0096】
補体抑制化合物を溶血性疾患に関する既知の療法の投薬法と組み合わせて投与する複合療法を使用できることも更に意図される。そのような投薬法は1)造血を増大させること(例えば生成を増強すること、幹細胞破壊を排除すること、又は幹細胞抑制を排除することによる)が公知の化合物1つ以上の、2)補体成分1つ以上に結合する化合物、補体成分1つ以上の形成をブロックする化合物、及び補体成分1つ以上の活性をブロックする化合物からなる群より選択される化合物と組み合わせた投与を包含する。造血を増大させることが公知の適当な化合物は、例えば、ステロイド、免疫抑制物質(例えばシクロスポリン)、抗凝固剤(例えばワーファリン)、葉酸、鉄等、エリスロポエチン(EPO)、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、抗リンパ球グロブリン(ALG)、EPO誘導体、EPO模倣物、及びダルベポエチンアルファ(Aranesp(登録商標)としてAmgen,Inc.,Thousand Oaks,Calif.より販売(Aranesp(登録商標)は組み換えDNA技術によりチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において生産された人工型EPOである))を包含する。特に有用な実施形態においては、エリスロポエチン(EPO)(造血を増大させることが公知の化合物)、EPO誘導体、又はダルベポエチンアルファを、h5G1.1−mAb、h5G1.1−scFv及びh5G1.1の他の機能的フラグメントからなる群より選択される抗C5抗体と組み合わせて投与してよい。
【0097】
注射に適する製剤はRemington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Philadelphia,Pa.,17th ed(1985)に記載されている。そのような製剤は滅菌され、そして非発熱物質含有でなければならず、そして一般的に薬学的に有効な担体、例えば食塩水、緩衝(例えばリン酸塩緩衝)食塩水、ハンク溶液、リンゲル溶液、デキストロース/食塩水、グルコース溶液等を包含する。製剤は必要に応じて製薬上許容しうる副次的物質、例えば浸透圧調節剤、湿潤剤、殺菌剤、保存料、安定化剤等を含有してよい。
【0098】
本発明の開示は補体成分1つ以上に結合するか、又は別様にその発生及び/又は活性をブロックする化合物1つ以上を投与することにより溶血性疾患に罹患した患者において溶血を低減する方法を意図している。溶血を低減するとは、個人が溶血に罹患している持続時間を約25%以上低減することを意味する。治療の有効性は患者における溶血のレベルを測定するための当該分野で公知の種々の様式の何れかにおいて評価できる。溶血を検出するための1つの定性的な方法はヘモグロビン尿症の発生を観察することである。非常に意外であるが、本発明の方法による治療はヘモグロビン尿症の急速な低減により測定される通り溶血を低減する。
【0099】
溶血を計測するより定性的な様式は患者の血流中のラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH)レベルを計測することである。LDHはピルベートとラクテートの相互変換を触媒する。赤血球はグルコースを代謝してラクテートとし、これが血液中に放出され、そして肝臓により取り込まれる。LDHレベルは溶血の客観的インジケーターとして使用される。当該分野で知られる通り、LDHの「正常上限」レベルの計測は、使用される特定のアッセイ及びアッセイを実施する厳密な様式を包含する多くの要因に応じて実験室毎に変動することになる。しかしながら一般的には、本発明の方法は正常なLDHレベルの上限の20%以内までの患者におけるLDHレベルの低減により反映される通り、溶血性疾患に罹患した患者において溶血を低減することができる。或いは、本発明の方法は、患者の治療前のLDHレベルの50%超、好ましくは患者の治療前のLDHレベルの65%超、最も好ましくは患者の治療前のLDHレベルの80%超の患者におけるLDHレベルの低減により反映される通り、溶血疾患に罹患した患者における溶血を低減することができる。
【0100】
溶血の低減の別の定量的な計測はGPI欠損赤血球(PNH赤血球)の存在である。当該分野で知られる通り、PNH赤血球は細胞表面上のGPIアンカー蛋白質発現を有さない。GPI欠損細胞(PNH細胞)の比率は例えばRichardsら、Clin.Appl.Immunol.Rev.,vol,1,p.315−330,2001に記載の手法を用いながらフローサイトメトリーにより測定することができる。次にPNH細胞の絶対数を求めることができる。本発明の方法はPNH赤血球の増大により反映される通り、溶血性疾患に罹患した患者における溶血を低減できる。好ましくは、総赤血球の25%超の患者におけるPNH赤血球レベルの増大が達成され、より好ましくは総赤血球の50%超の患者におけるPNH赤血球レベルの増大が達成され、最も好ましくは総赤血球の75%超の患者におけるPNH赤血球レベルの増大が達成される。
【0101】
PNH又は他の溶血性疾患に関連する症状1つ以上を低減する方法も又、本発明の開示の範囲に包含される。そのような症状は例えば腹痛、疲労、及び呼吸困難を包含する。症状は赤血球の溶解の直接の結果であることができ(例えばヘモグロビン尿症、貧血、疲労、低赤血球数等)、又は症状は患者の血流中の低酸化窒素(NO)レベルに起因することができる(例えば腹痛、勃起不全、嚥下障害、血栓症等)。最近の報告によれば、40%超のPNH顆粒球クローンを有する患者は血栓症、腹痛、勃起不全及び嚥下障害の発生率が増大しており、高い溶血率を示している(Moyoら、British J.Haematol.126:133−138(2004)参照)。
【0102】
特に有用な実施形態においては、本発明の方法はマイクロリットル当たり30,000を超過する、好ましくはマイクロリットル当たり75,000を超過する、最も好ましくはマイクロリットル当たり150,000を超過する血小板数を有する患者(低形成患者)において、PNH又は他の溶血性疾患に関連する症状1つ以上の低減をもたらす。他の実施形態においては、本発明は対象の総赤血球含有量のPNHIII型赤血球の比率が10%超、好ましくは25%超、最も好ましくは50%を超過するような患者においてPNH又は他の溶血性疾患に関連する症状1つ以上の低減をもたらす。更に別の実施形態において、本発明の方法はリットル当たり80x10を超過する、より好ましくはリットル当たり120x10を超過する、最も好ましくはリットル当たり150x10を超過する網状赤血球数を有する患者において、PNH又は他の溶血性疾患に関連する症状1つ以上の低減をもたらす。上記した最も好ましい範囲にある患者は活動性の骨髄を有しており、そして十分な数量の赤血球を産生できることになる。PNH又は他の溶血性疾患に罹患した患者において赤血球が1つ以上の状況(way)において欠損性である場合(例えばGPI欠損)、本発明の方法は補体活性化に起因する溶解からそのような細胞を保護する場合に特に有用である。即ち好ましい範囲に含まれる患者は本発明の方法から最も利益を被る。
【0103】
1つの態様において、疲労を低減する方法が意図され、該方法は補体成分1つ以上に結合するか、又は別様にその発生及び/又は活性をブロックする化合物を溶血性疾患を有するか罹患し易い対象に投与する工程を包含する。疲労を低減するとは、個人が疲労に罹患している持続時間を約25%以上低減することを意味する。疲労は、貧血が持続する場合であってもヘモグロビン尿症が消散する場合に疲労が和らぐため、血管内の溶血に関連すると考えられている症状である。赤血球の溶解を低減することにより、本発明の方法は疲労を低減させる。III型赤血球、網状赤血球及び血小板の上記した好ましい範囲に包含される患者は本発明の方法から最も利益を被る。
【0104】
別の態様において、腹痛を低減する方法が意図され、該方法は補体成分1つ以上に結合するか、又は別様にその発生及び/又は活性をブロックする化合物を溶血性疾患を有するか罹患し易い対象に投与する工程を包含する。腹痛を低減するとは、個人が腹痛に罹患している持続時間を約25%以上低減することを意味する。腹痛は、血管内溶血の結果として血流中へ放出された全ての遊離のヘモグロビンを処理することがハプトグロビンの患者本来のレベルでは不可能であるため、NOのスカベンジング及び腸のジストニー及び痙攣がもたらされることに起因する症状である。赤血球の溶解を低減することにより、本発明の方法は血流中の遊離のヘモグロビンの量を低減し、これにより腹痛を低減する。III型赤血球、網状赤血球及び血小板の上記した好ましい範囲に包含される患者は、本発明の方法から最も利益を被る。
【0105】
別の態様において、嚥下障害を低減する方法が意図され、該方法は補体成分1つ以上に結合するか、又は別様にその発生及び/又は活性をブロックする化合物を溶血性疾患を有するか罹患し易い対象に投与する工程を包含する。嚥下障害を低減するとは、個人が嚥下障害に罹患している持続時間を約25%以上低減することを意味する。嚥下障害は、血管内溶血の結果として血流中へ放出された全ての遊離のヘモグロビンを処理することがハプトグロビンの患者本来のレベルでは不可能であるため、NOのスカベンジング及び食道の痙攣がもたらされることに起因する症状である。赤血球の溶解を低減することにより、本発明の方法は血流中の遊離のヘモグロビンの量を低減し、これにより嚥下障害を低減する。III型赤血球、網状赤血球及び血小板の上記した好ましい範囲に包含される患者は、本発明の方法から最も利益を被る。
【0106】
更に別の態様において、勃起不全を低減する方法が意図され、該方法は補体成分1つ以上に結合するか、又は別様にその発生及び/又は活性をブロックする化合物を溶血性疾患を有するか罹患し易い対象に投与する工程を包含する。勃起不全を低減するとは、個人が勃起不全に罹患している持続時間を約25%以上低減することを意味する。勃起不全は、血管内溶血の結果として血流中へ放出された遊離のヘモグロビンによるNOのスカベンジングに関連すると考えられている症状である。赤血球の溶解を低減することにより、本発明の方法は血流中の遊離のヘモグロビンの量を低減し、これによりNOの血清中レベルを上昇させ、そして勃起不全を低減する。III型赤血球、網状赤血球及び血小板の上記した好ましい範囲に包含される患者は、本発明の方法から最も利益を被る。
【0107】
更に別の態様において、ヘモグロビン尿症を低減する方法が意図され、該方法は補体成分1つ以上に結合するか、又は別様にその発生及び/又は活性をブロックする化合物を溶血性疾患を有するか罹患し易い対象に投与する工程を包含する。ヘモグロビン尿症を低減するとは、個人が赤色、茶色、又はより暗色の尿を有する回数の低減を意味し、その場合、低減は典型的には約25%以上である。ヘモグロビン尿症は、血管内溶血の結果として血流中へ放出された全ての遊離のヘモグロビンを処理することがハプトグロビンの患者本来のレベルでは不可能であることに起因する症状である。赤血球の溶解を低減することにより、本発明の方法は血流中の遊離のヘモグロビンの量を低減し、これによりヘモグロビン尿症を低減する。非常に意外であるが、ヘモグロビン尿症の低減は急速に起こる。III型赤血球、網状赤血球及び血小板の上記した好ましい範囲に包含される患者は、本発明の方法から最も利益を被る。
【0108】
又別の態様において、血栓症を低減する方法が意図され、該方法は補体成分1つ以上に結合するか、又は別様にその発生及び/又は活性をブロックする化合物を溶血性疾患を有するか罹患し易い対象に投与する工程を包含する。血栓症を低減するとは、個人が血栓症発作を有する持続時間を約25%以上低減すること、又は血栓症発作の頻度が一年以上の期間に渡り約25%以上低減することを意味する。血栓症は、血管内溶血の結果として血流中へ放出された遊離のヘモグロビンによるNOのスカベンジングに関連すると考えられている症状である。赤血球の溶解を低減することにより、本発明の方法は血流中の遊離のヘモグロビンの量を低減し、これによりNOの血清中レベルを上昇させ、そして血栓症を低減する。
【0109】
血栓症は遊離のヘモグロビンによるNOスカベンジング、溶解した赤血球膜からのプロ血栓性表面の露出、及び細胞内遊離ヘムによる内皮表面の変化を包含する病因において多因性であると考えられている。遊離ヘモグロビンの血管内放出は小型血管の血栓症に直接寄与する場合がある。NOは血小板の凝集を抑制し、凝集した血小板の離解を誘導し、そして血小板の接着を抑制することがわかっている。逆に、ヘモグロビンによるNOスカベンジング又はアルギニン代謝の抑制によるNO形成の低減は血小板凝集の増大をもたらす。赤血球の溶解を低減することにより、本発明の方法は血流中の遊離のヘモグロビンの量を低減し、これによりNOの血清中レベルを上昇させ、そして血栓症を低減する。
【0110】
特に有用な実施形態においては、本発明の方法は、特にマイクロリットル当たり30,000を超過する、好ましくはマイクロリットル当たり75,000を超過する、最も好ましくはマイクロリットル当たり150,000を超過する血小板数を有する患者において血栓症を低減する。他の実施形態においては、本発明の方法は対象の総赤血球含有量のPNHIII型赤血球の比率が1%超、好ましくは10%超、より好ましくは25%超、更により好ましくは50%超、そして最も好ましくは75%を超過するような患者において、血栓症を低減する(例えばHallら、Blood 102:3587−3591(2003);Audebertら、J.Neurol.252:1379−1386(2005)を参照)。更に別の実施形態において、本発明の方法はリットル当たり80x10を超過する、より好ましくはリットル当たり120x10を超過する、最も好ましくはリットル当たり150x10を超過する網状赤血球数を有する患者において、輸血血栓症を低減する。
【0111】
又別の態様においては、貧血を低減する方法が意図され、該方法は補体成分1つ以上に結合するか、又は別様にその発生及び/又は活性をブロックする化合物を溶血性疾患を有するか罹患し易い対象に投与する工程を包含する。貧血を低減するとは、個人が貧血に罹患している持続時間を約25%以上低減することを意味する。溶血性疾患における貧血は、赤血球質量の損失により酸素を運搬する血液の能力の低減に起因する。赤血球の溶解を低減することにより、本発明の方法は赤血球レベルが上昇することを支援し、これにより貧血を低減する。
【0112】
別の態様において、溶血性疾患に罹患した患者における総内因性赤血球数を増大させる方法が意図される。患者のRBC数を増大させることにより、疲労、貧血及び患者の輸血の必要性が低減される。輸血の低減は輸血の頻度、輸血される血液単位の量、又は両方におけるものであることができる。
【0113】
溶血性疾患に罹患した患者における赤血球数を増大させる方法は、溶血性疾患に罹患した患者に補体成分1つ以上に結合するか、又は別様にその発生及び/又は活性をブロックする化合物を投与する工程を包含する。特に有用な実施形態においては、本発明の方法は、溶血性疾患に罹患した患者において、特にマイクロリットル当たり30,000を超過する、好ましくはマイクロリットル当たり75,000を超過する、最も好ましくはマイクロリットル当たり150,000を超過する血小板数を有する患者において、赤血球数を増大させる。他の実施形態においては、本発明の方法は対象の総赤血球含有量のPNHIII型赤血球の比率が1%超、好ましくは10%超、より好ましくは25%超、更により好ましくは50%超、そして最も好ましくは75%を超過するような溶血性疾患に罹患した患者において赤血球数を増大させる。更に別の実施形態において、本発明の方法はリットル当たり80x10を超過する、より好ましくはリットル当たり120x10を超過する、最も好ましくはリットル当たり150x10を超過する網状赤血球数を有する溶血性疾患に罹患した患者において赤血球数を増大させる。一部の実施形態においては、本発明の開示の方法は約50%までの輸血頻度の低下、典型的には約70%までの輸血頻度の低下、より典型的には約90%までの輸血頻度の低下をもたらす場合がある。
【0114】
更に別の態様において、本開示は対象に化合物を投与することにより溶血性疾患に罹患した対象を輸血に対してより低依存性、又は輸血非依存性とする方法を意図し、化合物は、補体成分1つ以上に結合する化合物、補体成分1つ以上の発生をブロックする化合物、及び補体成分1つ以上の活性をブロックする化合物からなる群より選択される。当該分野で知られる通り、赤血球の正常な生活環は約120日である。赤血球の半減期が長いとすれば、輸血非依存性の評価のためには6か月以上の治療を要する。一部の患者においては輸血非依存性は12か月以上、一部の例では4年以上維持することができることが意外にもわかっており、赤血球の120日の生活環をより長期である。特に有用な実施形態においては、本発明の方法は溶血性疾患に罹患した患者において、特にマイクロリットル当たり30,000を超過する、好ましくはマイクロリットル当たり75,000を超過する、最も好ましくはマイクロリットル当たり150,000を超過する血小板数を有する患者において、低下した輸血依存性、又は輸血非依存性をもたらす。他の実施形態においては、本発明の方法は対象の総赤血球含有量のPNHIII型赤血球の比率が1%超、好ましくは10%超、より好ましくは25%超、更により好ましくは50%超、そして最も好ましくは75%を超過するような溶血性疾患に罹患した患者において、低下した輸血依存性、又は輸血非依存性をもたらす。更に別の実施形態において、本発明の方法はリットル当たり80x10を超過する、より好ましくはリットル当たり120x10を超過する、最も好ましくはリットル当たり150x10を超過する網状赤血球数を有する溶血性疾患に罹患した患者において、低下した輸血依存性、又は輸血非依存性をもたらす。
【0115】
PNH又は一部の他の溶血性疾患を有する患者における酸化窒素(NO)レベルを上昇させる方法も又、本発明の開示の範囲に包含される。NOレベルを上昇させるこれらの方法は、補体成分1つ以上に結合するか、又は別様にその発生及び/又は活性をブロックする化合物を、溶血性疾患を有するか罹患し易い対象に投与する工程を包含する。低いNOレベルは、血管内溶血の結果として血流中へ放出された遊離のヘモグロビンによるNOのスカベンジングの結果としてPNH又は他の溶血性疾患に罹患した患者において生じる。赤血球の溶解を低減することにより、本発明の方法は血流中の遊離のヘモグロビンの量を低減し、これによりNOの血清中レベルを上昇させる。特に有用な実施形態においては、NOホメオスタシスは、NO不全に起因する症状の消散により顕在化される通り、回復する。
【0116】
本出願を、それを如何なる様式に限定する意図も有することなく、以下の実施例によりさらに十分に説明する。
【実施例】
【0117】
(実施例1)
患者11人がPNH及びそれに関連する症状に対する抗C5抗体の効果を評価するための療法治験に参加した。PNH患者は輸血依存性であり、溶血性であった。患者は12か月以内に輸血4回以上の履歴があれば輸血依存性と定義した。患者プール内の輸血の中央値の数は過去12か月で9であった。過去12か月に使用した輸血単位の中央値の数は患者プールに関して22であった。
【0118】
4週間の過程に渡って、11人の患者の各々が約30分に渡り抗C5抗体の週600mg静脈内輸液を受けた。試験において使用した特異的な抗C5抗体はエクリズマブである。患者には1週後にエクリズマブ900mgを投与し、その後2週毎に900mgを投与した。試験の最初の12週間はパイロット試験とした。初期の急性期の12週間の試験の終了後、患者全員が合計64週間実施した延長試験に参加した。11人のうち10人は合計2年間まで実施した延長試験に参加した。
【0119】
PNHIII型赤血球(「RBC」)に対する抗C5抗体治療の効果を試験した。「PNHの型」とは細胞表面上に発現されるGPIアンカー蛋白質の密度を指す。I型は正常な発現であり、II型は中間的発現であり、そしてIII型は細胞表面上のGPIアンカー蛋白質発現を有さない。GPI欠損細胞の比率はRichardら、Clin.Appl.Immunol.Rev.,vol.1.p.315−330,2001に記載されている様式においてフローサイトメトリーにより測定する。治療前の状態と比較して、PNHIII型赤血球は延長試験中に50%超増大した。全赤血球の36.7%の試験前の平均値からIII型赤血球の58.4%の64週平均値までの増大は、溶血が急激に低下したことを示していた。以下の表1を参照。エクリズマブ療法は補体媒介溶解からPNHIII型RBCを保護し、細胞の生存を延長した。PNH罹患細胞のこのような保護は治験における全患者において輸血の必要性、発作及び全体的溶血を低減した。
【0120】
【表1】

2年間の延長試験の過程の間、GPI連結蛋白質の完全な欠損を有するPNH赤血球(III型赤血球)は平均36.7%から58.9%まで治療期間中に進行性で増大した(p=0.001)のに対し、部分的欠損のPNH赤血球(II型)は5.3%から8.7%まで増大した(p=0.01)。エクリズマブ療法の間に患者の何れにおいてもPNH好中球の比率の同時変化は観察されず、PNH赤血球の比率の増大はPNHクローン自体の変化よりはむしろ溶血及び輸血の低減に起因することが示された。
【0121】
ラクテートデヒドロゲナーゼレベル(「LDH」)に対する抗C5抗体治療の効果を患者11人全員に対して計測した。LDHはピルベート及びラクテートの相互変換を触媒する。赤血球はグルコースを代謝してラクテートとし、これが血液中に放出され、そして肝臓により取り込まれる。LDHレベルは溶血の客観的インジケーターとして使用される。LDHレベルは治療前のレベルと比較して80%超まで低下した。LDHレベルは3111U/Lの試験前平均値から、594U/Lのパイロット試験中の平均値、そして622U/Lの64週後の平均値にまで低下した(64週の比較についてはp=0.002;図1A及び1Bを参照)。
【0122】
同様に、赤血球溶血の別のマーカーであるアスパルテートアミノトランスフェラーゼ(AST)レベルは、76IU/Lの平均ベースライン値から治療12及び64週間の間にそれぞれ26IU/L及び30IU/Lまで低下した(64週の比較についてはp=0.02)。ハプトグロビン、ヘモグロビン及びビリルビンのレベル、及び網状赤血球の数は64週の治療期間中、試験前の値から有意に変化しなかった。
【0123】
発作率を測定し、治療前のレベルと比較した。本開示において使用する発作は1〜10の尺度上において6以上の比色定量レベルを有する暗色の尿の発生率として定義する。図2は治療の前及び治療中のPNH患者におけるヘモグロビン尿症の発作の発生率をモニタリングするために考案された尿色スケールを示す。治療前のレベルと比較して、発作比率は93%低減し(図3参照)、エクリズマブ治療前の月当たり患者当たり3.0発作から、最初の12週の間の月当たり患者当たり0.1発作、そして64週の治療の間の月当たり患者当たり0.2発作となった(図3(p<0.001))。
【0124】
患者11人中9人における血清溶血活性は、64週の治療期間中を通じて完全にブロックされ、平衡状態におけるエクリズマブの定常レベルは約35μg/mlから350μg/mlの範囲であった。延長試験の間、患者2人は補体を一貫してブロックするために必要なエクリズマブのレベルを維持していなかった。この血清中溶血活性のブレイクスルーは14日の投薬間隔の最後の2日に起こり、複数回投薬の間で反復されるパターンであった。患者1人においては、図4に示される通り、補体ブロックのブレイクスルーはヘモグロビン尿症、嚥下障害、及び増大したLDH及びASTをもたらし、これらは血清中溶血活性の回復と相関していた。次回投薬時には、症状は消散し(図5)、そして14日毎900mgから12日毎900mgの投薬間隔の縮小は補体制御の回復をもたらし、これは両方の患者において64週までの延長試験に渡って維持された。この患者は嚥下障害及びヘモグロビン尿症の24時間消散を示した。14日から12日への投薬間隔の縮小は35μg/ml超にエクリズマブのレベルを維持するために十分であり、そして両方の患者に関する延長試験の残余について血清中溶血活性を効果的に、そして一貫してブロックした。
【0125】
患者の輸血の必要性も又、エクリズマブを用いた治療により低減した。図6aは、血球減少症患者に関する抗C5抗体を用いた治療の前及び治療中の、月当たり患者当たりに必要な輸血単位数を比較したものであり、図6bは、非血球減少症患者に関する抗C5抗体を用いた治療の前及び治療中の、月当たり患者当たりに必要な輸血単位数を比較したものである。輸血の必要性の有意な減少がやはり全体の群において観察(平均輸血率は治療前の1年間の期間の間の月当たり患者当たり2.1単位から、最初の12週の間の月当たり患者当たり0.6単位、そして合計64週の間の月当たり患者当たり0.5単位まで低下)されており、非血小板減少症患者が最も利益を被っていた。実際、正常な血小板数(マイクロリットル当たり≧150,000)を有する非血小板減少症患者の4人は、64週の治療の間に輸血非依存性になった。
【0126】
エリスロポエチン(EPO)と組み合わせて投与されたエクリズマブの効果も又、血小板減少症患者において評価した。EPO(NeoRecormonTM,Roche Pharmaceuticals,Basel,Switzerland)を試験の23週目から開始して週当たり3回、18000IUの量で投与した。図7に示す通り、この患者のために必要な輸血の頻度は有意に低減し、そして速やかに停止された。
【0127】
2年の延長試験の間、最初の3か月の試験からの患者11人中10人は1週おきにエクリズマブ900mgを投与され続けた(患者1人は23か月後にエクリズマブ療法を中止した)。患者11人中6人は正常な血小板数を有し(骨髄障害の臨床兆候無し)、11人中5人は低値の血小板数を有していた。23か月後にエクリズマブ療法を中止した患者については、血管内溶血はエクリズマブにより良好に抑制されたが、患者はエリスロポエチン療法後にも輸血を継続していた。この患者はエクリズマブ療法開始時において最も重度の形成不良を有しており、血小板数は30x10/L未満であり、継続中の輸血は伏在する骨髄障害の結果であると考えられた。
【0128】
2年の延長試験の結果も又、患者の輸血の必要性が統計学的に有意に低下したことを明らかにしていた。患者3人は2年の治療期間全体の間、輸血非依存性を維持し、そして4人の血球減少症患者は輸血非依存性となり、3人はEPO(NeoRecormonTM)による治療に従った。輸血の必要性の低減は良好な骨髄温存を有する患者においてもっとも顕著であることがわかった。
【0129】
エクリズマブ投薬に従って薬力学レベルを計測し、記録した。エクリズマブの薬力学的分析は標準的総ヒト血清補体溶血アッセイにおけるニワトリ赤血球を溶解する患者血清試料の能力を計測することにより調べた。慨すれば、患者試料又はヒト対照血清(Quidel,San Diego,Calif.)をゼラチンベロナール緩衝食塩水(GVB2+,Advanced Research technologies,San Diego,Calif.)で40%v/vに希釈し、そして各ウェル中の血清の終濃度が20%となるように96穴プレートに3連で添加した。次にプレートを室温でインキュベートし、その間ニワトリ赤血球(Lampire Biologics,Malvern,Pa.)を洗浄した。ニワトリ赤血球は抗ニワトリ赤血球ポリクローナル抗体(0.1%v/v)を添加することにより感作した。次に血球を洗浄し、GVB2+緩衝液中に再懸濁した。ニワトリ赤血球(2.5x10個/30μL)をヒト対照血清又は患者試料を含有するプレートに添加し、そして30分間37℃でインキュベートした。各プレートには同一に調製されたニワトリ赤血球の追加6ウェルが含まれ、そのうち4ウェルはブランクとして2mMEDTA含有20%血清と共にインキュベートし、そして2ウェルは自発的溶血に関する陰性対照としてGVB2+緩衝液と共にインキュベートした。次にプレートを遠心分離し、そして、上澄みを新しい平底96穴プレートに移した。ヘモグロビンの放出はマイクロプレートリーダーを用いながらOD415nmで測定した。パーセント溶血は以下の式:パーセント溶血=100x((OD患者試料−ODブランク)/(ODヒト血清対照−ODブランク))を用いて求めた。
【0130】
薬力学のグラフ(図8)、即ち生理学的効果の試験は、経時的な血清溶血活性のパーセント(即ち細胞溶解のパーセント)を示す。細胞溶解は、患者の大多数においてエクリズマブ治療下に正常血清溶血活性の20%未満にまで劇的に低減した。患者2人は溶血活性においてブレイクスルーを呈したが、補体ブロックは12日への投薬間隔の低減により恒久的に回復した(図4参照)。
【0131】
クオリティーオブライフの問題の改善も又、欧州癌コア研究治療機構(European Organization for Research and Treatment of Cancer Core(http://www.eorte.be))のアンケート(「EORTC QLC−C30」)を用いて評価した。参加患者各々はエクリズマブ治療の前及び治療中にQLC−30アンケートに記入している。全体的改善は全般的健康状態、身体機能、役割機能、情動機能、認知機能、疲労、疼痛、呼吸困難及び不眠において観察された(図9参照)。
【0132】
2年間の試験における患者はPNHに関連する有害症状における低減を経験している。例えば、図10に示す通り、腹痛、嚥下障害、及び勃起不全の低下が、これらの症状をエクリズマブ投与前に報告していた患者においてエクリズマブ投与後に明らかになった。
【0133】
(実施例2)
臨床試験の説明
エクリズマブの安全性及び薬効は、87患者無作為二重盲検プラセボコントロール26週間第3相試験(試験C04−001)、進行中の97患者オープンラベル52週間第3相試験(試験C04−002)、及び11患者オープンラベル12週間第2相試験(試験C02−001;本試験は合計で追加156週となる2つの試験特異的延長試験[E02−001及びX3−001]を有している)を包含する3つの別個の試験において評価した。試験C04−001、C04−002、又はC02−001/E02−001/X03−001を良好に終了した全患者を、約190人参加と予測されている進行中のオープンラベル104週第3相延長試験(試験E05−001)に参加するのを妥当とみなした。E05−001試験は、PNH患者の全体的な集団におけるエクリズマブの追加的な長期の安全性及び効能のデータを提供するものであり、そして上記した患者に由来するプールされたエクリズマブ治療群に渡るエクリズマブ治療による血栓塞栓事象率の収集物を包含する。試験E05−001における血栓塞栓事象率の予備特定された二次終点は、エクリズマブ治療前、試験C04−001、C04−002、及びC02−001/E02−001/X03−001の患者の各々におけるエクリズマブ治療の間、並びに全試験に関する全体的患者集団におけるエクリズマブ治療の間の、試験E05−001患者の各々における血栓塞栓事象率に渡るように設計した。血栓塞栓事象率は主要有害血管事象(MAVE、表2参照)として捕捉した。
【0134】
全試験において、エクリズマブ治療患者には600mgの試験薬剤を毎週4週間、900mgを第5週に、そして次に900mgの用量を14±2日毎に、試験期間中投与した。
【0135】
試験C04−001、C04−002、及びC02−001/E02−001/X03−001において、エクリズマブ治療は全ての予備特定された一次及び二次終点において高度に統計学的及び臨床的に有意な改善を伴っていた。
【0136】
【表2】

臨床的に症候性の血栓症をもたらす病理生理学的経路に対するエクリズマブの効果
血栓塞栓(TE)事象はPNHにおいて血管内溶血に直接関連付けられる場合が多い。血管内溶血は血漿中の遊離ヘモグロビンの蓄積をもたらし、これは酸化窒素を枯渇させ、そしてその後は血栓の形成をもたらすことが分かっている。
【0137】
エクリズマブを用いた治療は、複合C04−001及びC04−002試験において治療前2,042U/Lからエクリズマブ治療の26週の261U/Lまでの中央値LDHにおける低下により計測される通り、血管内溶血を顕著に低減している(p<0.001)。
【0138】
エクリズマブを用いた治療は、複合C04−001及びC04−002試験において治療前36.7mg/dLからエクリズマブ治療の26週の5.6mg/dLまでの中央値遊離ヘモグロビンレベルにより計測される通り、細胞遊離ヘモグロビンの循環レベルを顕著に低減している(p<0.001)。
【0139】
エクリズマブを用いた治療は酸化窒素の消費における中央値の変化により測定される通り、酸化窒素の消費を効果的に低減しており、C04−001試験においては9.3μMの中央値治療前酸化窒素は、エクリズマブ治療26週で67.1%低下し、そしてプラセボでは治療前酸化窒素9.9μMはプラセボを用いた場合に26週で14.9%上昇している(p<0.001)。
【0140】
全体的な試験集団における血栓率に対するエクリズマブの効果
エクリズマブ治療TE事象は、治療の意思に基づき、C04−001、C04−002、C02−001、E02−001、X03−001及びE05−001PNH臨床試験に参加し、エクリズマブを投与された全患者に対して測定した。TE事象はC04−001、C04−002、及びE05−001試験においてはMAVE基準(上記表2参照)により定義した(C02−001、E02−001、及びX03−001については一次有害事象及び医学的履歴のリストを使用した)。エクリズマブ曝露の患者の年数は、完了したC04−001、C02−001、E02−001及びX03−001試験に関して計算した。C04−002試験については、エクリズマブ曝露の患者年数は治療の26週の後に各患者について調べた(6か月中間分析)。E05−001試験においては、曝露患者年数は2006年4月までの全患者について調べた。
【0141】
治療前患者年数は、PNHの診断よりも早期、又は親PNH臨床試験(C04−001、C04−002、C02−001)への参加よりも前の第1回血栓事象より調べ、そして又C04−001試験におけるプラセボ投与患者からの患者年数も包含した。総エクリズマブ治療前TE事象にはC04−001、C04−002、及びC02−001への参加前の全患者におけるTE事象、さらにC04−001試験におけるプラセボ投与の間のTE事象を包含するものとした(即ち、総エクリズマブ治療前期間TE事象は、表3のC04−001、C04−002、及びC02−001におけるエクリズマブ治療前TE事象、さらに表4のC4−001前のTE事象、さらに表4のプラセボ投与TE事象の合計に等しい)。総エクリズマブ期間TE事象は初回エクリズマブ投薬から開始される期間の全てのTE事象を包含するものとした。一次TE分析(即ちE05−001二次終点)は符号付順位検定を用いて実施した。
【0142】
治療前の血栓塞栓事象率と比較して、エクリズマブ治療は個々の臨床試験の各々における同じ患者においてTE事象率を低減し、そして全体的なTE事象率を有意に低減した。全体的TE事象率はエクリズマブ治療を受けた同じ患者において、エクリズマブ治療前の年間(years)100患者当たり7.49TE事象から年間100患者当たり1.22TE事象まで低減した(p<0.001)。これは84%の相対的低減及び年間100患者当たり6.27TE事象の絶対的低減を表す。血栓塞栓事象率は表3に示す通りである。
【0143】
【表3】

異なる試験前TE事象率における見かけの非均一性は3つの個々の試験の異なる参加基準及び/又は個々の試験に関与する異なる部位に部分的には関連していると考えられる。しかしながら、より早期の報告とは逆に、現在のTE事象の確認は系統的、予測的であり、そしてC04−001、C04−002、及びE05−001試験においては多施設、国際間、及びコントロールを基準として実施されている。これらの理由から、現在の試験前TE事象率は、エクリズマブPNH試験への参加の前のこのPNH患者集団におけるTE事象率を表している可能性がより高いが、このような推定は後に考察する真のTE事象率を過小評価している場合もある。更に又、個々の試験前TE事象率における非均一性にも関わらず、エクリズマブ治療は一貫して、各個々の試験におけるTE事象率を顕著に低減している。
【0144】
血栓に対するエクリズマブの効果の頑健性に関する試験
上記において観察されたTE事象率の明確な低減のため、5種のポストホック分析を実施することにより、観察された作用の頑健性を試験した。確認された主要な混同し易い問題点は、医学的履歴と比較した場合の無作為化された臨床治験におけるTE事象率報告の低減の可能性、エクリズマブ治療前の期間における経時的なTE事象率の低減、エクリズマブ治療前と治療期間の年間患者数の間の定量的な不均衡、以前のTEを有する患者に対するエクリズマブ治療の影響、併用抗凝固剤療法に起因するエクリズマブ治療前の期間中のTE事象率の低減であった。
【0145】
医学的履歴と比較した場合の無作為化された臨床治験におけるTE事象率報告の低減の可能性の評価
参加前の医学的履歴と比較した場合の無作為化された臨床治験中のTE報告の予期せぬ低減の潜在的な混同し易い影響に対してコントロールするために、TE事象を参加前及びプラセボ治療したC04−001患者において比較した。
【0146】
プラセボ治療した患者におけるTE事象率はプラセボ治療の前の同じ患者における率と比較して低減していなかった。TE事象率はプラセボ治療前の年間100患者当たり2.34事象であり、そしてプラセボ治療した同じ患者において年間100患者当たり4.38事象であった。血栓塞栓事象率を表4に示す。
【0147】
この分析は、エクリズマブの臨床試験の間のTE事象率の報告に何らかの内因性の低減があったという見解を裏付けていない。
【0148】
【表4】

投与前12か月対エクリズマブ投与
(i)治験参加直前のTE事象率における予期せぬ低減、及び(ii)エクリズマブ治療前とエクリズマブ治療期間に関連する年間患者数の間の定量的不均衡の両方の潜在性を評価するために、単一の分析を実施し;エクリズマブ治療前TE事象率を分割し、そしてエクリズマブ治療直前の12か月の間のみ調べ、そして使用可能なエクリズマブ治療期間と比較した。この単一分析は分析からより隔たった年を除去し、そしてそれにより患者のもっとも最近の医学的状態により着目すること、及び、エクリズマブ治療を受けた現在使用可能な年間患者数に治療前の分析において考慮した年間患者数を等しくすることの両方に寄与している。
【0149】
エクリズマブ治療の開始直前のわずか12か月の期間のTE事象率と比較して、エクリズマブ治療は個々の臨床試験の各々における同じ患者のTE事象率の低減、及び、全体的TE事象率の有意な低減をもたらしている。TE事象率はエクリズマブ治療前の年間100患者当たり17.21事象から、エクリズマブ治療を受けた同じ患者において年間100患者当たり1.22事象に低減した(p=0.013)。これは93%の相対的低減及び年間100患者当たり15.99TE事象の絶対的低減を表す。血栓塞栓事象率は表5に示す通りである。
【0150】
特筆すべき点として、エクリズマブ治療直前12か月の期間のTE事象率は、最初のTE/PNH診断よりも早期からエクリズマブPNH治験の1つへの参加までに渡る全期間に関して、年間100患者当たり7.49TE事象の凝集事象率と比較した場合に、年間100患者当たり17.21TE事象に顕著に増大している。即ちデータは、エクリズマブ治療直前の12か月の間のTE事象率は、全体的なエクリズマブ治療前事象率と比較して低減していないことを明らかにしている。治験参加直前のこの上昇したTE事象率は、エクリズマブ治療前のデータセットにおける実質的な生存者の偏りを示すものと考えられる。更に又、エクリズマブ治療の開始直前の期間のTE事象率のこの上昇パターン後には、エクリズマブ治療によるTE事象率の相応した停止となる。
【0151】
以下の表5に示す通り、2つの比較群における年間患者数を等しくするために分析を分割することは、TE事象率に対するエクリズマブの観察された有益な影響を軽減しなかった。エクリズマブ治療の前及び治療中で概ね等しい量の年間患者数が分布しているとすれば、エクリズマブ治療によるTE事象率の観察された相対的及び絶対的な低減は、もしあるとすれば、一次分析で観察されたものよりも高値である。
【0152】
【表5】

以前のTEを有する患者に対するエクリズマブ治療の影響の評価
分析に対する以前の血栓の影響をコントロールし、そして識別するために、以前のTEを有する患者においてTE事象率に対するエクリズマブの効果を調べた。エクリズマブ治療前にTE事象を有していなかった患者は分析から除外した。
【0153】
エクリズマブ治療前に以前のTEを有していた患者における血栓塞栓事象率と比較して、エクリズマブ治療は個々の臨床試験の各々で同じ患者においてTE事象率の低減及び全体的TE事象率の有意な低減をもたらした。TE事象率はエクリズマブ治療前年間100患者当たり21.95TE事象から、エクリズマブ治療を受けた同じ患者において年間100患者当たり3.42TE事象にまで低減した(p<0.001)。これは84%の低減及び年間100患者当たり18.53TE事象の絶対的低減を表す。血栓塞栓事象率は表6に示す通りである。
【0154】
こうして、エクリズマブ治療前に最も高値のTE事象率を有する患者においては、エクリズマブ治療はTE事象率の相応して高度に有意な低減を誘発した。
【0155】
【表6】

抗凝固剤療法を同時適用された患者に対するエクリズマブ治療の影響の評価
エクリズマブ治療前に経時的にTE事象率を低減する他の抗血栓症治療薬(抗凝固剤及び抗血小板療法の両方を含むことができる)の潜在的影響を評価するために、以前に抗凝固剤療法を受けた患者におけるTE事象率に対するエクリズマブ治療の効果を具体的に調べることにより、抗凝固剤療法の潜在的に混同し易い効果をコントロールした。抗凝固剤を全く投与されたことのない患者におけるTE事象率も又調べ;これらの分析においては、抗凝固剤療法の開始前のTE事象は除外した。
【0156】
エクリズマブ治療前に抗凝固剤療法を受けた患者におけるTE事象率と比較して、エクリズマブ治療は個々の臨床試験の各々における同じ患者においてTE事象率を低減し、そして全体的なTE事象率を有意に低減した。TE事象率は抗凝固剤療法を受けたがエクリズマブ治療開始前であった年間100患者当たり14.00TE事象から、同じ患者においてエクリズマブ治療を受けた年間100患者当たり0.00TE事象まで低減した。これは100%の相対的低減及び年間100患者当たり14.00TE事象の絶対的低減を表す。血栓塞栓事象率は表7に示す通りである。
【0157】
エクリズマブ治療前に抗凝固剤療法を受けなかった患者における血栓塞栓事象の無視できる率と比較して、エクリズマブ治療は血栓事象率の意味のある変化をもたらさなかった。TE事象率はエクリズマブ治療前の年間100患者当たり1.31TE事象であり、そしてエクリズマブ治療を受けた同じ患者においては年間100患者当たり2.90TE事象であった(p=1.000)。血栓塞栓事象率は表8に示す通りである。
【0158】
【表7】

【0159】
【表8】

エクリズマブはPNHの治療に関して安全であり、十分な耐容性を有することが明らかにされた。PNHと診断された患者の試験において、エクリズマブ療法に関連する見かけ上有意な安全性の問題点は存在しなかった。有害事象の頻度はエクリズマブとプラセボ治療患者で同様であり、そして重篤な有害事象の全体的頻度はプラセボよりもエクリズマブで低値であった。効果的に治療され、臨床的後発症を伴うことなく消散したワクチン接種PNH患者におけるナイセリア種の感染が1例報告された。感染症の全体的頻度はエクリズマブとプラセボで同様であった。PNH患者におけるエクリズマブの中断後の重篤な溶血は観察されず、そしてエクリズマブを中断した患者は標準的な施療により効果的に対処された。骨髄不全障害の発生率はエクリズマブ治療で変化しなかった。更に又、これらの試験において用量関連の毒性は観察されなかった。
【0160】
(実施例3)
補体抑制剤エクリズマブはPNHを有する患者における血管内溶血及び輸血の必要性を低減することが分かった。エクリズマブ治療患者は、プラセボと比較して血管内溶血の85.5%低減を示した(LDH曲線下部面積により計測、p<0.001)。エクリズマブによる溶血のこの低減は、ベースラインにおける0.81x1012個/Lの中央値から26週における2.05x1012個/LまでのPNHのRBC質量の2.5倍増大をもたらした(p<0.001)が、プラセボ治療患者におけるPNHのRBC質量は相対的に不変のままであった(1.09x1012個/Lの中央値から1.16x1012個/L)(図11)。PNHのRBC質量の増大は、プラセボと相対比較してエクリズマブ治療患者においてヘモグロビンレベルの全体的上昇を伴っていた(p<0.001、混合モデル分析)。輸血されたPRBC単位の数量はプラセボでの10.0/患者の中央値からエクリズマブで0.0/患者まで低下(p<0.001)し、そしてエクリズマブ治療患者の51.2%が輸血非依存性となった(これに対してプラセボ患者では0.0%、p<0.01)。エクリズマブ使用時にある程度の輸血を要した患者であっても、プラセボで患者当たり10.0単位の中央値からエクリズマブで6.0単位/患者にまで、輸血の必要性の顕著な低減を示した(p<0.001)。エクリズマブによる輸血PRBC単位の低減は治療前の輸血の必要性とは無関係に観察され、統計学的有意性は3治療前輸血階層中3つにおいて達成された(4〜14単位/年;15〜25単位/年;及び>25単位/年、各階層でp<0.001)(表9参照)。有意な低減は、輸血非依存性を達成したエクリズマブ治療患者(p<0.001)並びに達成しなかった者(p<0.001)における血管内溶血(LDH)において観察された(表10参照)。考え合わせると、これらのデータは、エクリズマブによるPNHの血管内溶血の効果的なコントロールは、内因性RBCの増大、ヘモグロビンレベルの改善、及び輸血必要性の低減により明らかな通り、貧血の実質的な改善をもたらすことを示している。エクリズマブによる血管内溶血の実質的で有意な低減及び貧血の改善は、過去の輸血必要性や患者が治療中輸血非依存性を達成したかどうかに関わらず、明らかにされた。Hillmenら、N.Engl.J.Med.355:1233−1234(2006)参照。
【0161】
【表9】

【0162】
【表10】

(実施例4)
48歳の輸血依存性の男性は1988年5月に再生不良性貧血、1993年9月にPNHと診断された。患者は1993年9月からPNH発症のために輸血依存性となっており、4〜6週毎に充填赤血球(PRBC)の輸血を必要としている。患者はエクリズマブの注入を2002年5月22日に開始し、現在は1週おきに900mgを投与されている。2002年11月6日、エクリズマブ投与6か月の後、rHuEpo(NeoRecormon(登録商標))療法を以下の用量、即ち;最初の2か月は450IU/kg/週、3分割用量;その後の15か月は900IU/kg/週、3分割用量;そして2006年5月3日まで750IU/kg/週、3分割用量;において開始した。その時点で患者は2週毎に300mgの用量でAranesp(登録商標)に切り替えた。用量は2006年6月28日に2週毎500mcgに増量した。
【0163】
血管内溶血は酵素ラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH)のレベルを計測することにより評価した。赤血球生成のレベルは網状赤血球数を計測することにより測定した。PNHのRBC質量はフローサイトメトリーにより評価されたPNHIII型RBCの比率をRBCの絶対数にかけ合わせることにより計算した。ヘモグロビンレベル及びPRBC輸血必要性も又モニタリングした。全ての評価を収集して現データとし、結果を2006年8月までに報告する。
【0164】
エクリズマブ療法の前年の間、平均LDHレベルは2,075IU/L(正常範囲の上限の4倍超)であり、平均のヘモグロビンレベルは10.5g/dLであり、そして平均の網状赤血球数は77.5x10/Lであった(表11)。PNHIII型RBCの絶対数は1.1x1012/Lであり、そしてこれらの細胞の比率は総RBC質量の50%未満を構成していた。患者は治療前期間は月当たりPRBC1.8単位を必要とし(表11)、合計9輸血及び22単位を受けていた(図12)。
【0165】
【表11】

エクリズマブ治療開始後、溶血は急速に、そして一貫して低減し、それは平均LDHレベルの78%低下として示された(表11)。PNHIII型RBC質量の同時増大(73%)も又明らかになり、これらの細胞の増強された生存が裏付けられた。更に又、各月の必要な輸血の平均数が44%まで低下た。RBCヘモグロビンは、たとえ輸血必要性が減少しても安定しており、内因性ヘモグロビンレベルの実質的上昇が示された(表11)。
【0166】
エクリズマブ治療6か月の後、患者にrHuEpo療法を併用したところ、113%の平均網状赤血球数の増大がもたらされた(表11)。赤血球生成のこの増大はエクリズマブ治療単独で達成されたものを超えたPNHIII型RBC質量の更に32%の増大を伴っていた。更に又、RBCヘモグロビンレベルは同じ期間中10.2g/dLから11.4g/dLへの上昇を示していた。貧血におけるこの改善は輸血の必要性を更に低下させ、最終的には2年超の輸血非依存性をもたらした(図12)。2年の輸血非依存性の後に1回の輸血を行ったところ、赤血球生成の一過性の低下が併発し、これは網状赤血球数の低下により明らかにされた(データ示さず)。血管内溶血の増大の兆候はなく、そしてLDHレベルは全治療期間中、正常範囲内、又は正常範囲の上限の僅かに超えた程度のままであった。この患者はエクリズマブ及びrHuEpoの投与を受け続け、そして3年を超えて僅か1回の輸血しか受けていない。
【0167】
(実施例5)
肺高血圧(PHT)は遺伝性の溶血性貧血の顕現性の一般的な合併症である。それは血管内溶血及び低下した酸化窒素(NO)生体利用性に機械的及び疫学的に関連付けられている。この合併症が鎌状赤血球疾患及びサラセミアを有する成人患者の約30%で報告されているが、観察された血管内溶血の最高レベルを有する後天的疾患である発作性夜間血色素尿症(PNH)を有する患者におけるPHTの蔓延度は調べられていない。PNH患者は頻繁には重度の疲労及び労作性呼吸困難を包含する溶血とPHTの両方に一貫した症状を有する。従って、本発明者等はPNHにおけるPHTの存在について調べ、そしてその発症に関連する潜在的な機序を、オゾン系のケミルミネセンスを用いながらNOを瞬間的に消費する血漿の能力を計測することにより探索した。
【0168】
ドプラー心エコー検査を28溶血性PNH患者において実施することにより肺動脈収縮期圧力を推定した。収縮期PHTは休止時の≧2.5m/sの三尖弁逆流ジェット速度(TRV)により定義した。14人(50%)の患者が上昇した肺動脈収縮期圧力を有していた。12人(43%)は軽度〜中等度のPHT(平均TRV2.6m/s±0.01)であったのに対し、2人(7%)は中等度〜重度の圧力を有していた(平均TRV3.7m/s±0.02)。PNH患者(n=32)由来の血漿は34.6±8.3μMのNOを消費したのに対し、正常対象(n=9)は2.2±0.6μMのNOを消費していた(p=0.0001)。LDHレベルはNO消費と相関していた(r=0.6342、p<0.0002)。溶血を低減するために3年の中央値でエクリズマブにより治療された7患者の別個のコホートにおいては、NOを消費する能力はより低値であった(13.2±4.8μMのNO)。
【0169】
(実施例6)
PNH患者は不良なクオリティーオブライフ(QoL)をもたらす多様で重篤な溶血誘発の疾病に罹患する。PNH患者における疲労は障害をもたらす場合があり、そしてレベルは貧血の癌患者と同様である。疲労は多因性であり、伏在する貧血と溶血の両方に関連する。患者は低減した全般的健康状態、患者機能、疼痛及び呼吸困難に罹患する。補体抑制剤エクリズマブによる治療は血管内溶血を低減し、貧血を改善する。疲労及び他の患者の報告された転帰のレベルに対するエクリズマブ治療の影響は、2つの異なる手段、即ちFACIT−疲労及びEORTCQLQ−C30を用いながら二重盲検プラセボコントロール試験(TRIUMPH)において予測的に検討されている。QoLの改善は種々の手段における臨床的利益の規模の尺度である標準化効果サイズ(SES)を用いて定量した。エクリズマブ治療は、プラセボと比較して、FACIT−疲労スケール(SES=1.13,p<0.001)並びにEORTC−QLQ−C30疲労サブスケール((SES=1.12、p<0.001)で計測した場合に、疲労の極めて大きい有意な改善を伴っていた。同様に、予め特定された最少重要差(MID)を達成した患者のパーセントは、エクリズマブ及びプラセボ治療患者でFACIT−疲労を用いた場合にはそれぞれ53.7%対20.5%(p=0.003);EORTC QLQ−C30を用いた場合にはそれぞれ67.6%対24.4%であった。治療非依存性一変量解析によれば、血管内溶血の低減(低下したLDHレベル)及び貧血の改善(上昇したヘモグロビンレベル)は両方とも疲労の改善と有意に関連していた。更なる多変量解析によれば、溶血の低減は貧血の改善よりも高度に疲労の改善を予測するものであった。エクリズマブ治療は又、以下のEORTC−QLQ−C30サブスケールにおいて中〜大のSESを有する有意な改善を伴っており、即ち:全般的健康状態(0.87、p<0.001);役割機能(0.93、p<0.001);社会機能(0.57、p=0.003);認知機能(0.78、p=0.002);身体機能(1.01、p<0.001);情動機能(0.51、p=0.008);疼痛(0.65、p=0.002);呼吸困難(0.69、p<0.001);及び食欲喪失(0.50、p<0.001)であった。これらのデータはエクリズマブ治療による血管内溶血の消散は疲労、全般的健康状態、患者機能、及びPNHの疾患関連症状を包含する患者の報告された転帰における大きな臨床的に意味のある改善をもたらしている。
【0170】
(実施例7)
発作性夜間血色素尿症(PNH)においては、血球からのGPIアンカー終末補体抑制剤CD59の欠如が赤血球を慢性溶血に罹患しやすくし、貧血、疲労、血栓、不良なクオリティーオブライフ(QoL)、及び輸血への依存性をもたらす。エクリズマブ、即ち補体抑制剤は、無作為化プラセボコントロール治験(TRIUMPH)において正常又は正常に近い血小板数を有する輸血依存性患者において、血管内溶血及び輸血必要性を低減した。SHEPHERD、即ちオープンラベルの非プラセボコントロールの52週臨床第III相試験は、有意な血小板減少症及び/又は低い輸血必要性を有する患者を包含するより広範なPNH集団においてエクリズマブの安全性及び薬効を評価するために進行中である。エクリズマブは以下の通り、即ち:600mgIV7日毎x4;900mg7日後;そして次に900mgを14±2日毎に投与した。エクリズマブは33国際地区において97患者に対し投与した。予備特定された6か月の中間分析において、最も頻発した有害事象は頭痛(50%)、鼻咽頭炎(23%)、及び悪心(16%)であり;大部分は軽度〜中等度の重症度であった。薬物に「恐らく」又は「決定的に」関連しているものとして報告された感染症又は重篤な有害事象は無かった。血管内溶血、即ちPNHにおける中枢的な臨床兆候発現及び治験の一次代理薬効終点は、ラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH)曲線下部面積の変化により評価した場合、エクリズマブ患者において有意に低減していた(p<0.001)。LDHレベルはベースラインにおける2,051U/Lの中央値から26週の270U/Lに低下した(p<0.001;正常範囲103〜223U/L)。血管内溶血のコントロールは、輸血の必要性が治療前4.0PRBC単位/患者の中央値から治療中0.0に低下し(p<0.001)、患者の約50%が輸血非依存性となり(p<0.001)、そしてヘモグロビンレベルが上昇した(p<0.001)ことから、貧血の改善をもたらした。疲労は、FACIT−疲労及びEORTC QLQ−C30手段の両方により計測した場合、ベースラインと比較してエクリズマブ治療では有意に改善されていた(各々p<0.001)(図13及び表12)。他のEORTC−QLQ−C30患者の報告された改善を示す転機は、全般的健康状態(p<0.001)、5種全ての患者機能サブスケール(p<0.001)及び症状/単一項目サブスケール9種中7種(p≦0.03)を包含していた。これらの結果はPNHにおけるエクリズマブの有益な効果は以前に試験されたものよりも遙かに広範な患者集団に適用されることを明らかにしており、そして更に、エクリズマブ治療が血管内溶血を顕著に低減し、これにより治療患者に臨床的利益を与えることを強調している。
【0171】
【表12】

(実施例8)
発作性夜間血色素尿症(PNH)は、終末補体による溶解に高度に感受性であるPNH赤血球のクローン増殖を態様とする。PNHにおける主要な疾患は免疫媒介性の再生不良性貧血及び種々の重症度の抹消血液血球減少症の形態の骨髄不全である。実施例1において補体抑制剤エクリズマブによる11患者の溶血及び輸血の良好なコントロールを記載している。これらの11患者のうち10人は血管内溶血及び輸血の低減を維持しつつ約3年後もエクリズマブ療法を継続している。これらの患者におけるエクリズマブ療法の有効性は、補体媒介溶解からのPNH赤血球の保護及びこの細胞集団の増殖を介したものである。フローサイトメトリー試験によれば、PNH赤血球のパーセントは治療前の平均値36.7%から治療64週の58.4%まで有意に増大した。重要な点は顆粒球、単球及び血小板PNHクローンサイズが治療前には>90%であり、治験中を通じて全患者に関して安定であり続け、造血の大部分がPNH幹細胞に由来することを示唆していた。PNH赤血球クローンは、ある患者において溶血がエクリズマブ療法により予防される場合には、これはPNH幹細胞の活性をより正確に示しているため、他の骨髄造血細胞のクローンサイズに接近するはずであると仮定できる。
【0172】
全患者において21日までに溶血が実質的に低減した。11患者中9人において、PNH赤血球数の急速な上昇があり、PNH赤血球の平均の絶対数は治療前の1.37x1012/Lからエクリズマブ治療2週で1.50x1012/L(P=0.21)、4週で1.74x1012/L(P=0.002)、そして12週で2.11x1012/L(P=0.001)にまで上昇した。最大理論的赤血球応答は平均178日で達成された(範囲49〜419日)。PNH赤血球の平均絶対数は最大応答で2.37x1012/Lまで上昇し(P=0.001)、73%の上昇であった(範囲36%〜207%)。全患者が治療18か月よりも前に最大応答を達成しており、クローンサイズはその後は安定していた。2患者では溶血の消散においてエクリズマブが有効であったにも関わらず、治療の前後でPNH赤血球の絶対数は変化しなかった。これは恐らくはこれらの患者において溶血の程度がより低値であったこと、及び骨髄不全がより深刻であったことに起因していると考えられる。エクリズマブ療法の最初の12か月の間のPNH赤血球絶対数を測定することで、どの患者が輸血非依存性となるか、そしてどの患者が赤血球生成をブーストするための追加的な成長因子による支援から利益を被るかを確認できる。更に又、長期のエクリズマブ療法はこの初期の臨床試験における安定なPNH赤血球クローンサイズを伴うと考えられる。
【0173】
(実施例9)
意外にも、C04−002試験においてエクリズマブ治療はベースラインと比較して血小板活性化のパラメーターにおける見かけ上の上昇を伴っていた(混合モデル分析、全体)。統計学的に有意な上昇は単球−血小板凝集(平均上昇7.9%、P=0.002)、好中球−血小板凝集(平均上昇5.3%、P<0.001)、及びP−セレクチン陽性血小板のパーセント(平均上昇3.7%、P<0.001)において観察された。同様に、C04−001試験のエクリズマブ治療患者において、上昇が単球−血小板凝集(平均上昇15.0%、P=0.056)、好中球−血小板凝集(平均上昇11.2%、P=0.077)、及びP−セレクチン陽性血小板のパーセント(平均上昇5.1%、P=0.044)において観察された。
【0174】
複合させたC04−001及びC04−002試験において、有意な上昇は又、単球−血小板凝集(平均上昇10.1%、P<0.001)、好中球−血小板凝集(平均上昇7.0%、P<0.001)、及びP−セレクチン陽性血小板のパーセント(平均上昇4.1%、P<0.001)において観察された。このプラセボコントロールC04−001試験において、エクリズマブコホート並びにプラセボコホートは、ベースラインからの血小板活性化のパラメーターの同様の上昇を示した(表13A−F)。これらのプラセボ治療患者において、ベースラインからの上昇は単球−血小板凝集(平均上昇2.2%、P=0.771)、好中球−血小板凝集(平均上昇6.9%、P=0.135)、及びP−セレクチン陽性血小板のパーセント(平均上昇5.9%、P=0.001)において観察された(表14A−C)。
【0175】
【表13A】

【0176】
【表13B】

【0177】
【表13C】

【0178】
【表13D】

【0179】
【表13E】

【0180】
【表13F】

【0181】
【表14A】

【0182】
【表14B】

【0183】
【表14C】

参照による組み込み
本明細書に記載した全ての公開物及び特許は、各々個々の公開物又は特許が具体的及び個々に参照により組み込まれることを記載されているがごとく参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合は、ここに記載されている如何なる定義も含めて本出願が優先する。
【0184】
等価物
要件発明の特定の実施形態を本明細書において明示的に開示したが、上記明細書は例示的であって限定するものではない。本発明の多くの変形は本明細書及び後述する特許請求の範囲を鑑みれば当業者には明らかなものである。本発明の完全な範囲は特許請求の範囲、並びにその完全な範囲の等価物、及び明細書並びにその変形例を参照することにより決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における血栓症の発生を低減する方法であって、該方法が該対象における補体を抑制することを含む、方法。
【請求項2】
前記方法が前記対象に化合物を投与することを含み、該化合物が、a)補体成分1つ以上に結合する化合物、b)補体成分1つ以上の発生をブロックする化合物、及びc)補体成分1つ以上の活性をブロックする化合物からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記対象が総顆粒球数の0.1%超の発作性夜間血色素尿症(PNH)顆粒球クローンを有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記対象が総顆粒球数の1%超のPNH顆粒球クローンを有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記対象が総顆粒球数の10%超のPNH顆粒球クローンを有する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記対象が総顆粒球数の50%超のPNH顆粒球クローンを有する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記化合物が抗体、可溶性補体抑制化合物、蛋白質、蛋白質フラグメント、ペプチド、小分子、RNAアプタマー、L−RNAアプタマー、シュピーゲルマー、アンチセンス化合物、セリンプロテアーゼ阻害剤、2本鎖RNA、短鎖干渉RNA、ロックド核酸抑制剤、及びペプチド核酸抑制剤からなる群より選択される、請求項2記載の方法。
【請求項8】
前記化合物がCR1、LEX−CR1、MCP、DAF、CD59、H因子、コブラ毒因子、FUT−175、コンプレスタチン、及びK76COOHからなる群より選択される、請求項2記載の方法。
【請求項9】
前記化合物がC5b活性を抑制する、請求項2記載の方法。
【請求項10】
前記化合物がC5の切断を抑制する、請求項2記載の方法。
【請求項11】
前記化合物が終末補体を抑制する、請求項2記載の方法。
【請求項12】
前記化合物がC5a活性を抑制するか、又はC5aのその受容体への結合を抑制する、請求項2記載の方法。
【請求項13】
前記対象がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記対象が血栓症事象1つ以上の病歴を有する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記化合物が抗体又は抗体フラグメントである、請求項7記載の方法。
【請求項16】
前記抗体又は抗体フラグメントがポリクローナル抗体、モノクローナル抗体又は抗体フラグメント、ダイアボディー、キメラ化若しくはキメラ抗体又は抗体フラグメント、ヒト化抗体又は抗体フラグメント、脱免疫化ヒト抗体又は抗体フラグメント、完全なヒト抗体又は抗体フラグメント、単鎖抗体、Fv、Fab、Fab’、Fd、及びF(ab’)からなる群より選択される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記抗体がペキセリツマブである、請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記抗体がエクリズマブである、請求項15記載の方法。
【請求項19】
前記化合物が前記対象に長期的に投与される、請求項2記載の方法。
【請求項20】
前記化合物が前記対象に全身投与される、請求項2記載の方法。
【請求項21】
前記化合物が前記対象に局所投与される、請求項2記載の方法。
【請求項22】
前記方法が25%超まで血栓塞栓症の比率を低減する、請求項1記載の方法。
【請求項23】
前記方法が50%超まで血栓塞栓症の比率を低減する、請求項1記載の方法。
【請求項24】
前記方法が75%超まで血栓塞栓症の比率を低減する、請求項1記載の方法。
【請求項25】
前記方法が90%超まで血栓塞栓症の比率を低減する、請求項1記載の方法。
【請求項26】
前記方法がLDHレベルにおいて少なくとも25%の低減をもたらす、請求項1記載の方法。
【請求項27】
前記方法がLDHレベルにおいて少なくとも50%の低減をもたらす、請求項1記載の方法。
【請求項28】
前記方法がLDHレベルにおいて少なくとも75%の低減をもたらす、請求項1記載の方法。
【請求項29】
前記方法がLDHレベルにおいて少なくとも90%の低減をもたらす、請求項1記載の方法。
【請求項30】
第2の化合物を投与することを更に含み、該第2の化合物が造血を増大させる、請求項2記載の方法。
【請求項31】
前記第2の化合物がステロイド、免疫抑制物質、抗凝固剤、葉酸、鉄、エリスロポエチン(EPO)、PEG化EPO、EPO模倣物、Aranesp(登録商標)、赤血球生成刺激剤、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)及び抗リンパ球グロブリン(ALG)からなる群より選択される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
EPOを抗C5抗体と共に投与する、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記抗体がペキセリツマブである、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記抗体がエクリズマブである、請求項32記載の方法。
【請求項35】
抗血栓化合物を投与することをさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項36】
前記抗血栓化合物が抗凝固剤である、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記抗凝固剤を抗C5抗体と共に投与する、請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記抗凝固剤が抗血小板剤である、請求項36記載の方法。
【請求項39】
前記抗体がペキセリツマブである、請求項37記載の方法。
【請求項40】
前記抗体がエクリズマブである、請求項37記載の方法。
【請求項41】
正常より高値のラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH)レベルを有する対象における血栓症の発生を低減する方法であって、該方法が該対象における補体を抑制することを含む、方法。
【請求項42】
前記対象に化合物を投与することを含み、該化合物が、a)補体成分1つ以上に結合する化合物、b)補体成分1つ以上の発生をブロックする化合物、及びc)補体成分1つ以上の活性をブロックする化合物からなる群より選択される、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記対象が正常値の上限より高値のLDHレベルを有する、請求項41記載の方法。
【請求項44】
前記対象が正常値の上限の1.5倍以上のLDHレベルを有する、請求項41記載の方法。
【請求項45】
前記対象が正常値の上限の2.5倍以上のLDHレベルを有する、請求項41記載の方法。
【請求項46】
前記対象が正常値の上限の5倍以上のLDHレベルを有する、請求項41記載の方法。
【請求項47】
前記対象が正常値の上限の10倍以上のLDHレベルを有する、請求項41記載の方法。
【請求項48】
前記化合物が抗体、可溶性補体抑制化合物、蛋白質、蛋白質フラグメント、ペプチド、小分子、RNAアプタマー、L−RNAアプタマー、シュピーゲルマー、アンチセンス化合物、セリンプロテアーゼ阻害剤、2本鎖RNA、短鎖干渉RNA、ロックド核酸抑制剤、及びペプチド核酸抑制剤からなる群より選択される、請求項42記載の方法。
【請求項49】
前記化合物がCR1、LEX−CR1、MCP、DAF、CD59、H因子、コブラ毒因子、FUT−175、コンプレスタチン、及びK76COOHからなる群より選択される、請求項42記載の方法。
【請求項50】
前記化合物がC5b活性を抑制する、請求項42記載の方法。
【請求項51】
前記化合物がC5の切断を抑制する、請求項42記載の方法。
【請求項52】
前記化合物が終末補体を抑制する、請求項42記載の方法。
【請求項53】
前記化合物がC5b活性を抑制するか、又はC5aのその受容体への結合を抑制する、請求項42記載の方法。
【請求項54】
前記対象がヒトである、請求項41記載の方法。
【請求項55】
前記対象が血栓症事象1つ以上の病歴を有する、請求項41記載の方法。
【請求項56】
前記化合物が抗体又は抗体フラグメントである、請求項42記載の方法。
【請求項57】
前記抗体又は抗体フラグメントがポリクローナル抗体、モノクローナル抗体又は抗体フラグメント、ダイアボディー、キメラ化若しくはキメラ抗体又は抗体フラグメント、ヒト化抗体又は抗体フラグメント、脱免疫化ヒト抗体又は抗体フラグメント、完全なヒト抗体又は抗体フラグメント、単鎖抗体、Fv、Fab、Fab’、Fd、及びF(ab’)からなる群より選択される、請求項56記載の方法。
【請求項58】
前記抗体がペキセリツマブである、請求項56記載の方法。
【請求項59】
前記抗体がエクリズマブである、請求項56記載の方法。
【請求項60】
前記化合物が前記対象に長期的に投与される、請求項42記載の方法。
【請求項61】
前記化合物が前記対象に全身投与される、請求項42記載の方法。
【請求項62】
前記化合物が前記対象に局所投与される、請求項42記載の方法。
【請求項63】
前記方法が25%超まで血栓塞栓症の比率を低減する、請求項41記載の方法。
【請求項64】
前記方法が50%超まで血栓塞栓症の比率を低減する、請求項41記載の方法。
【請求項65】
前記方法が75%超まで血栓塞栓症の比率を低減する、請求項41記載の方法。
【請求項66】
前記方法が90%超まで血栓塞栓症の比率を低減する、請求項41記載の方法。
【請求項67】
前記方法がLDHレベルにおいて少なくとも25%の低減をもたらす、請求項41記載の方法。
【請求項68】
前記方法がLDHレベルにおいて少なくとも50%の低減をもたらす、請求項41記載の方法。
【請求項69】
前記方法がLDHレベルにおいて少なくとも75%の低減をもたらす、請求項41記載の方法。
【請求項70】
前記方法がLDHレベルにおいて少なくとも90%の低減をもたらす、請求項41記載の方法。
【請求項71】
第2の化合物を投与することを更に含み、該第2の化合物が造血を増大させる、請求項42記載の方法。
【請求項72】
前記第2の化合物がステロイド、免疫抑制物質、抗凝固剤、葉酸、鉄、エリスロポエチン(EPO)、PEG化EPO、EPO模倣物、Aranesp(登録商標)、赤血球生成刺激剤、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)及び抗リンパ球グロブリン(ALG)からなる群より選択される、請求項71記載の方法。
【請求項73】
EPOを抗C5抗体と共に投与する、請求項72記載の方法。
【請求項74】
前記抗体がペキセリツマブである、請求項73記載の方法。
【請求項75】
前記抗体がエクリズマブである、請求項73記載の方法。
【請求項76】
抗血栓化合物を投与することをさらに含む、請求項42記載の方法。
【請求項77】
前記抗血栓化合物が抗凝固剤である、請求項76記載の方法。
【請求項78】
前記抗凝固剤を抗C5抗体と共に投与する、請求項77記載の方法。
【請求項79】
前記抗凝固剤が抗血小板剤である、請求項77記載の方法。
【請求項80】
前記抗体がペキセリツマブである、請求項78記載の方法。
【請求項81】
前記抗体がエクリズマブである、請求項78記載の方法。
【請求項82】
PNH顆粒球クローン及び正常値の上限より高値のLDHレベルを有する対象における血栓症の発生を低減する方法であって、該方法が該対象における補体を抑制することを含む、方法。
【請求項83】
前記対象に化合物を投与することを含み、該化合物が、a)補体成分1つ以上に結合する化合物、b)補体成分1つ以上の発生をブロックする化合物、及びc)補体成分1つ以上の活性をブロックする化合物からなる群より選択される、請求項82記載の方法。
【請求項84】
前記対象が総顆粒球数の0.1%超のPNH顆粒球クローンを有する、請求項82記載の方法。
【請求項85】
前記対象が総顆粒球数の0.1%超のPNH顆粒球クローンを有する、請求項82記載の方法。
【請求項86】
前記対象が総顆粒球数の1%超のPNH顆粒球クローンを有する、請求項82記載の方法。
【請求項87】
前記対象が総顆粒球数の10%超のPNH顆粒球クローンを有する、請求項82記載の方法。
【請求項88】
前記対象が総顆粒球数の50%超のPNH顆粒球クローンを有する、請求項82記載の方法。
【請求項89】
前記化合物が抗体、可溶性補体抑制化合物、蛋白質、蛋白質フラグメント、ペプチド、小分子、RNAアプタマー、L−RNAアプタマー、シュピーゲルマー、アンチセンス化合物、セリンプロテアーゼ阻害剤、2本鎖RNA、短鎖干渉RNA、ロックド核酸抑制剤、及びペプチド核酸抑制剤からなる群より選択される、請求項83記載の方法。
【請求項90】
前記化合物がCR1、LEX−CR1、MCP、DAF、CD59、H因子、コブラ毒因子、FUT−175、コンプレスタチン、及びK76COOHからなる群より選択される、請求項83記載の方法。
【請求項91】
前記化合物がC5b活性を抑制する、請求項83記載の方法。
【請求項92】
前記化合物がC5の切断を抑制する、請求項83記載の方法。
【請求項93】
前記化合物が終末補体を抑制する、請求項83記載の方法。
【請求項94】
前記化合物がC5b活性を抑制するか、又はC5aのその受容体への結合を抑制する、請求項83記載の方法。
【請求項95】
前記対象がヒトである、請求項82記載の方法。
【請求項96】
前記対象が血栓症事象1つ以上の病歴を有する、請求項82記載の方法。
【請求項97】
前記化合物が抗体又は抗体フラグメントである、請求項89記載の方法。
【請求項98】
前記抗体又は抗体フラグメントがポリクローナル抗体、モノクローナル抗体又は抗体フラグメント、ダイアボディー、キメラ化若しくはキメラ抗体又は抗体フラグメント、ヒト化抗体又は抗体フラグメント、脱免疫化ヒト抗体又は抗体フラグメント、完全なヒト抗体又は抗体フラグメント、単鎖抗体、Fv、Fab、Fab’、Fd、及びF(ab’)からなる群より選択される、請求項97記載の方法。
【請求項99】
前記抗体がペキセリツマブである、請求項97記載の方法。
【請求項100】
前記抗体がエクリズマブである、請求項97記載の方法。
【請求項101】
前記化合物が前記対象に長期的に投与される、請求項83記載の方法。
【請求項102】
前記化合物が前記対象に全身投与される、請求項83記載の方法。
【請求項103】
前記化合物が前記対象に局所投与される、請求項83記載の方法。
【請求項104】
前記方法が25%超まで血栓塞栓症の比率を低減する、請求項82記載の方法。
【請求項105】
前記方法が50%超まで血栓塞栓症の比率を低減する、請求項82記載の方法。
【請求項106】
前記方法が75%超まで血栓塞栓症の比率を低減する、請求項82記載の方法。
【請求項107】
前記方法が90%超まで血栓塞栓症の比率を低減する、請求項82記載の方法。
【請求項108】
前記方法がLDHレベルにおいて少なくとも25%の低減をもたらす、請求項82記載の方法。
【請求項109】
前記方法がLDHレベルにおいて少なくとも50%の低減をもたらす、請求項82記載の方法。
【請求項110】
前記方法がLDHレベルにおいて少なくとも75%の低減をもたらす、請求項82記載の方法。
【請求項111】
前記方法がLDHレベルにおいて少なくとも90%の低減をもたらす、請求項82記載の方法。
【請求項112】
第2の化合物を投与することを更に含み、該第2の化合物が造血を増大させる、請求項83記載の方法。
【請求項113】
前記第2の化合物がステロイド、免疫抑制物質、抗凝固剤、葉酸、鉄、エリスロポエチン(EPO)、PEG化EPO、EPO模倣物、Aranesp(登録商標)、赤血球生成刺激剤、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)及び抗リンパ球グロブリン(ALG)からなる群より選択される、請求項112記載の方法。
【請求項114】
EPOを抗C5抗体と共に投与する、請求項113記載の方法。
【請求項115】
前記抗体がペキセリツマブである、請求項114記載の方法。
【請求項116】
前記抗体がエクリズマブである、請求項114記載の方法。
【請求項117】
抗血栓化合物を投与することをさらに含む、請求項83記載の方法。
【請求項118】
前記抗血栓化合物が抗凝固剤である、請求項117記載の方法。
【請求項119】
前記抗凝固剤を抗C5抗体と共に投与する、請求項118記載の方法。
【請求項120】
前記抗凝固剤が抗血小板剤である、請求項118記載の方法。
【請求項121】
前記抗体がペキセリツマブである、請求項119記載の方法。
【請求項122】
前記抗体がエクリズマブである、請求項119記載の方法。
【請求項123】
正常値より低値の酸化窒素(NO)レベルに罹患した対象における血栓症の発生を低減する方法であって、該方法が該対象における補体を抑制することを含む、方法。
【請求項124】
前記対象に化合物を投与することを含み、該化合物が、i)補体成分1つ以上に結合する化合物、ii)補体成分1つ以上の発生をブロックする化合物、及びiii)補体成分1つ以上の活性をブロックする化合物からなる群より選択され、前記方法が血清中酸化窒素(NO)レベルを増大させる、請求項123記載の方法。
【請求項125】
前記方法が25%超までNOレベルを増大させる、請求項123記載の方法。
【請求項126】
前記方法が50%超までNOレベルを増大させる、請求項123記載の方法。
【請求項127】
前記方法が100%超までNOレベルを増大させる、請求項123記載の方法。
【請求項128】
前記方法が3倍超までNOレベルを増大させる、請求項123記載の方法。
【請求項129】
前記対象がPNHを有する、請求項123記載の方法。
【請求項130】
前記化合物が抗体、可溶性補体抑制化合物、蛋白質、蛋白質フラグメント、ペプチド、小分子、RNAアプタマー、L−RNAアプタマー、シュピーゲルマー、アンチセンス化合物、セリンプロテアーゼ阻害剤、2本鎖RNA、短鎖干渉RNA、ロックド核酸抑制剤、及びペプチド核酸抑制剤からなる群より選択される、請求項124記載の方法。
【請求項131】
前記化合物がCR1、LEX−CR1、MCP、DAF、CD59、H因子、コブラ毒因子、FUT−175、コンプレスタチン、及びK76COOHからなる群より選択される、請求項124記載の方法。
【請求項132】
前記化合物がC5b活性を抑制する、請求項124記載の方法。
【請求項133】
前記化合物がC5の切断を抑制する、請求項124記載の方法。
【請求項134】
前記化合物が終末補体を抑制する、請求項124記載の方法。
【請求項135】
前記化合物がC5b活性を抑制するか、又はC5aのその受容体への結合を抑制する、請求項124記載の方法。
【請求項136】
前記対象がヒトである、請求項123記載の方法。
【請求項137】
前記対象が血栓症事象1つ以上の病歴を有する、請求項123記載の方法。
【請求項138】
前記化合物が抗体又は抗体フラグメントである、請求項130記載の方法。
【請求項139】
前記抗体又は抗体フラグメントがポリクローナル抗体、モノクローナル抗体又は抗体フラグメント、ダイアボディー、キメラ化若しくはキメラ抗体又は抗体フラグメント、ヒト化抗体又は抗体フラグメント、脱免疫化ヒト抗体又は抗体フラグメント、完全なヒト抗体又は抗体フラグメント、単鎖抗体、Fv、Fab、Fab’、Fd、及びF(ab’)からなる群より選択される、請求項138記載の方法。
【請求項140】
前記抗体がペキセリツマブである、請求項138記載の方法。
【請求項141】
前記抗体がエクリズマブである、請求項138記載の方法。
【請求項142】
前記化合物が前記対象に長期的に投与される、請求項124記載の方法。
【請求項143】
前記化合物が前記対象に全身投与される、請求項124記載の方法。
【請求項144】
前記化合物が前記対象に局所投与される、請求項124記載の方法。
【請求項145】
前記方法が25%超まで血栓塞栓症の比率を低減する、請求項123記載の方法。
【請求項146】
前記方法が50%超まで血栓塞栓症の比率を低減する、請求項123記載の方法。
【請求項147】
前記方法が75%超まで血栓塞栓症の比率を低減する、請求項123記載の方法。
【請求項148】
前記方法が90%超まで血栓塞栓症の比率を低減する、請求項123記載の方法。
【請求項149】
前記方法がLDHレベルにおいて少なくとも25%の低減をもたらす、請求項123記載の方法。
【請求項150】
前記方法がLDHレベルにおいて少なくとも50%の低減をもたらす、請求項123記載の方法。
【請求項151】
前記方法がLDHレベルにおいて少なくとも75%の低減をもたらす、請求項123記載の方法。
【請求項152】
前記方法がLDHレベルにおいて少なくとも90%の低減をもたらす、請求項123記載の方法。
【請求項153】
第2の化合物を投与することを更に含み、前記第2の化合物が造血を増大させる、請求項124記載の方法。
【請求項154】
前記第2の化合物がステロイド、免疫抑制物質、抗凝固剤、葉酸、鉄、エリスロポエチン(EPO)、PEG化EPO、EPO模倣物、Aranesp(登録商標)、赤血球生成刺激剤、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)及び抗リンパ球グロブリン(ALG)からなる群より選択される、請求項153記載の方法。
【請求項155】
EPOを抗C5抗体と共に投与する、請求項154記載の方法。
【請求項156】
前記抗体がペキセリツマブである、請求項155記載の方法。
【請求項157】
前記抗体がエクリズマブである、請求項155記載の方法。
【請求項158】
抗血栓化合物を投与することをさらに含む、請求項124記載の方法。
【請求項159】
前記抗血栓化合物が抗凝固剤である、請求項158記載の方法。
【請求項160】
前記抗凝固剤を抗C5抗体と共に投与する、請求項159記載の方法。
【請求項161】
前記抗凝固剤が抗血小板剤である、請求項159記載の方法。
【請求項162】
前記抗体がペキセリツマブである、請求項160記載の方法。
【請求項163】
前記抗体がエクリズマブである、請求項160記載の方法。
【請求項164】
溶血性障害を有する対象が血栓症に罹患し易いかどうかを決定する方法であって、該対象のPNH顆粒球クローンサイズを計測することを含み、該クローンサイズが0.1%超である場合には該対象は血栓症に罹患し易い、方法。
【請求項165】
前記クローンサイズが1%超である、請求項164記載の方法。
【請求項166】
前記クローンサイズが10%超である、請求項164記載の方法。
【請求項167】
前記クローンサイズが50%超である、請求項164記載の方法。
【請求項168】
対象のPNH赤血球質量を増大させる方法であって、該方法が該対象における補体を抑制することを含む、方法。
【請求項169】
前記対象に化合物を投与することを含み、該化合物が、i)補体成分1つ以上に結合する化合物、ii)補体成分1つ以上の発生をブロックする化合物、及びiii)補体成分1つ以上の活性をブロックする化合物からなる群より選択される、請求項168記載の方法。
【請求項170】
前記対象がPNH顆粒球クローンを有する、請求項168記載の方法。
【請求項171】
前記PNH顆粒球クローンが総顆粒球数の0.1%超である、請求項170記載の方法。
【請求項172】
前記PNH顆粒球クローンが総顆粒球数の1%超である、請求項170記載の方法。
【請求項173】
前記PNH顆粒球クローンが総顆粒球数の10%超である、請求項170記載の方法。
【請求項174】
前記PNH顆粒球クローンが総顆粒球数の50%超である、請求項170記載の方法。
【請求項175】
前記対象が正常値の上限より高値のLDHレベルを有する、請求項168記載の方法。
【請求項176】
前記対象が正常値の上限の1.5倍以上のLDHレベルを有する、請求項175記載の方法。
【請求項177】
前記対象が正常値の上限の2.5倍以上のLDHレベルを有する、請求項175記載の方法。
【請求項178】
前記対象が正常値の上限の5倍以上のLDHレベルを有する、請求項175記載の方法。
【請求項179】
前記対象が正常値の上限の10倍以上のLDHレベルを有する、請求項175記載の方法。
【請求項180】
対象における溶血性貧血を治療する方法であって、該方法が該対象における補体を抑制することを含む、方法。
【請求項181】
前記方法が該対象に化合物を投与することを含み、該化合物が、i)補体成分1つ以上に結合する化合物、ii)補体成分1つ以上の発生をブロックする化合物、及びiii)補体成分1つ以上の活性をブロックする化合物からなる群より選択され、該方法が赤血球(RBC)質量を増大させる、請求項180記載の方法。
【請求項182】
RBC質量がRBCの絶対数として計測される、請求項181記載の方法。
【請求項183】
RBC質量がPNHのRBC質量である、請求項181記載の方法。
【請求項184】
前記方法が10%超までRBC質量を増大させる、請求項183記載の方法。
【請求項185】
前記方法が25%超までRBC質量を増大させる、請求項183記載の方法。
【請求項186】
前記方法が50%超までRBC質量を増大させる、請求項183記載の方法。
【請求項187】
前記方法が100%超までRBC質量を増大させる、請求項183記載の方法。
【請求項188】
前記方法が2倍超までRBC質量を増大させる、請求項183記載の方法。
【請求項189】
前記方法が輸血の必要性を低下させる、請求項180記載の方法。
【請求項190】
前記方法がヘモグロビンレベルを安定化させる、請求項180記載の方法。
【請求項191】
前記方法がヘモグロビンレベルの上昇をもたらす、請求項180記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2010−509338(P2010−509338A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536309(P2009−536309)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/023623
【国際公開番号】WO2008/069889
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(503102674)アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (51)
【Fターム(参考)】