説明

溶鉄の精錬方法

【課題】鋼中のS濃度を高くすることなく、また二酸化炭素(CO2)発生量を増大させることなく、さらには炉体耐火物を損耗させることなく、溶銑配合率を低下させることができる鋼の精錬方法を得る
【解決手段】本発明に係る溶鉄の精錬方法は、鍋、トーピードカーなどの鉄浴輸送器または転炉型精錬炉において脱燐処理を行い、その後に鉄浴型精錬炉において脱炭処理を行う溶鉄の精錬方法であって、前記脱燐処理においては上吹きランスのノズルからの酸化性ガスの吐出流速を250m/s以下として精錬を行うことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄浴輸送器または鉄浴型精錬炉において脱燐処理を行い、その後に鉄浴型精錬炉において脱炭処理を行う溶鉄の精錬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、CO2の排出量が問題となっているため、高炉プロセス以外のプロセスにより溶鋼を増産する要求が高まっており、転炉などにおいて鉄スクラップの投入量を増やし、溶銑配合率を低下させる溶鋼製造プロセスが取られている。
鉄スクラップを大量に溶解させるためには、熱的余裕が必要となってくるため、脱燐処理中の溶銑に対して昇熱用の炭素源などの熱源を添加し、熱源不足を補う方法が行われてきている(例えば、特許文献1)。
また、熱的余裕を確保する他の方法として、「高温の溶融鉄浴中に石炭、コークス、ピッチ、重油等の炭素質物質を酸素と共に吹込んでガス化すると同時に、スクラップを溶解精錬する方法であって、中心部に石炭等炭素質物質吹込み用ノズルを有し、該ノズルの外側にガス化剤吹込み用ノズルと、ノズル中心線がランス軸に対して外側に20〜60°傾斜した炉内生成ガス2次燃焼用の酸素等酸化剤吹込み用のノズルを有する非浸漬上吹多孔ランスを用い、炭素質物質のガス化を行うと同時に、炉内生成ガスの2次燃焼を行わせつつスクラップを溶解精錬することを特徴とする製鋼方法」(特許文献2の特許請求の範囲1参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-20913号公報
【特許文献2】特開昭60-67610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄スクラップの投入量を増やすため、特許文献1に開示されたような、昇熱用の炭素源として炭材等を投入するという方法では、熱源を確保することは可能になるが、溶鋼の製造コストが上昇すること、炭材に含まれる硫黄の混入を招き、吹き止め鋼中のS濃度が高くなること、また、二酸化炭素(CO2)発生量が増大してしまう等の種々の問題がある。
【0005】
また、特許文献2に開示されたような、転炉内で発生するCOと吹き込んだ酸素とを浴面上で2次燃焼させてこれを主たる熱源とする方法では、炉体耐火物を損耗させるという問題がある。
【0006】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、鋼中のS濃度を高くすることなく、また二酸化炭素(CO2)発生量を増大させることなく、さらには炉体耐火物を損耗させることなく、溶銑配合率を低下させることができる鋼の精錬方法を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、脱燐処理工程においては溶銑中の炭素の燃焼を極力抑制して溶鉄中の炭素濃度を高くし、その後の脱炭処理工程において炭素を燃焼させることで温度上昇を可能とし、これによって鉄スクラップ投入量を増やし、溶銑配合比率を低下できるとの知見に基づいてなされたものであり、具体的には以下の構成からなるものである。
【0008】
(1)本発明に係る溶鉄の精錬方法は、鍋、トーピードカーなどの鉄浴輸送器または転炉型精錬炉において脱燐処理を行い、その後に鉄浴型精錬炉において脱炭処理を行う溶鉄の精錬方法であって、前記脱燐処理においては上吹きランスのノズルからの酸化性ガスの吐出流速を250m/s以下として精錬を行うことを特徴とするものである。
【0009】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記脱炭処理においてはバーナ機能と粉粒体吹込み機能を有するバーナランスから酸化性ガスを供給して精錬することを特徴とするものである。
【0010】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記上吹きランスは、ランス先端に旋回流を形成するノズル部を有し、該ノズル部は主流を形成する円形断面の主流路と、該主流路の側方に設けられて前記主流路に対して交差方向の旋回流を形成する旋回流形成流路と、前記主流路及び前記旋回流形成流路に連通して設けられて吐出流を形成する吐出流路とを備えてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、脱燐処理において上吹きランスのノズルからの酸化性ガスの吐出流速を250m/s以下として精錬を行うようにしたので、脱燐処理工程において二次燃焼率を高くすることができ、炉内での総発熱量が増大し、これによってスクラップの溶解量が増大し、溶銑配合率を低下させることができる。
また、脱燐処理において吐出流速が250m/s以下のソフトブローにて精錬を行うので、脱炭処理工程においては装入炭素濃度が高くなり、これによって脱炭処理工程における総発熱量が増大して、スクラップ量を増大することができる。
このように、本発明によれば脱燐、脱炭処理工程を通じてスクラップ量を増大させることができる。その結果、脱燐・脱炭の溶製コストの削減可能になり、省資源、省エネルギーが達成されるとともに、転炉操業の安定化が図れ、工業上有益な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態における脱燐溶の上吹きランスのノズル部の説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る転炉型の脱炭精錬設備を模式的に示した説明図である。
【図3】図2に示した脱炭設備に用いるバーナランスの先端部の構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施の形態に係る溶鉄の精錬方法は、鍋、トーピードカーなどの鉄浴輸送器または転炉型精錬炉において脱燐処理を行い、その後に鉄浴型精錬炉において脱炭処理を行う精錬方法において、前記脱燐処理工程においては上吹きランスのノズルからの酸化性ガスの吐出流速を250m/s以下として精錬を行い、脱炭処理工程においてはバーナ機能のある粉粒体吹込み機能を付与したバーナランスから酸化性ガスを供給して精錬することを特徴とするものである。なお、以下の説明において酸化性ガスの吐出流速を250m/s以下とすることをソフトブローという場合がある。
以下、各工程を詳細に説明する。
【0014】
<脱燐処理工程>
脱燐処理工程において、上吹きランスのノズルからの酸化性ガスの吐出流速を250m/s以下として精錬を行う理由は以下の通りである。
脱燐処理工程において、上付きランスのノズルから酸化性ガスを転炉内に吐出すると、下記の(1)式で表わされるように溶鋼中のCと酸化性ガス中のOとが反応してCOを生成させる反応(以下、1次燃焼という)、および1次燃焼によって生成したCOと酸化性ガス中のOとが反応してCOを生成させる下記の(2)式の反応(以下、二次燃焼という)が進行する。
C+1/2O→CO・・・・・(1)
CO+1/2O→CO・・・(2)
ここで、転炉内に供給された酸化性ガス中のOのうち、二次燃焼に寄与する割合を二次燃焼率と言い、下記の(3)式で表わされる。
二次燃焼率=CO/(CO+CO)・・・(3)
ただし、右辺のCO、COはそれぞれ排ガス中のCO、COの体積である。
【0015】
1次燃焼によって生じる反応熱と二次燃焼によって生じる反応熱とを比べると、二次燃焼の方が1次燃焼の約2.5倍である。
したがって、脱燐処理工程において二次燃焼率を高くすると炉内での総発熱量が増大し、スクラップの溶解量が増大し、溶銑配合率を低下させることができる。
また、二次燃焼率が高いということは、脱炭酸素効率が低いということであり、脱炭反応が小さくなるため、結果的に脱燐吹錬後のC濃度が高くなり、脱炭炉装入炭素濃度が高くなる。脱炭炉装入炭素濃度を高くすることで、脱炭処理工程において脱炭量が増加するため、発熱量が大きくなり、総発熱量が増加するため、スクラップの溶解量が増大し、溶銑配合率を低下させることができる。
【0016】
以上のように、脱燐処理工程において二次燃焼率を高くすることが、脱燐処理工程においてスクラップ量を増大させると共に脱炭処理工程においてもスクラップ量の増大をもたらすことができる。そこで、脱燐処理工程において二次燃焼率を高くする方法について検討したところ、上吹きランスのノズルからの酸化性ガスの吐出流速を小さくすることで二次燃焼が起こりやすく(燃焼し易く)、二次燃焼率が増大し、特に前記吐出流速を250m/s以下とすることで、脱燐処理工程及び脱炭処理工程でのスクラップ量増大に効果的であるとの知見を得た。なお、この点は、後述する実施例にて実証されている。
【0017】
上吹きランスのノズル部からの酸化性ガスの吐出流速を250m/s以下とするために好適なノズル部について、図1に基づいて説明する。
図1に示すように、ノズル部1は、主流を形成する円形断面の主流路3と、該主流路3の側方に設けられて前記主流路3に対して交差方向の旋回流17を形成する旋回流形成流路5と、前記主流路3及び前記旋回流形成流路5に連通して設けられて吐出流を形成する吐出流路7とを備えてなるものである。
主流路3は、オリフィス板9の中央部に設けられた主流路用オリフィス11によって形成されている。旋回流形成流路5は、オリフィス板9における側部に設けられた旋回流形成オリフィス13によって形成され、主流路3と同用にノズル部軸方向に行った後で径方向に屈曲して主流路3の出口側に開口している。
吐出流路7は、基端側が主流路3及び旋回流形成流路5と連通し、先端側が末広がりとなった縦断面形状が円錐台状になっている。
【0018】
上記のように構成されたノズル部1においては、酸化性ガスはオリフィス板9の主流路3と旋回流形成流路5を流れ、主流路3を通過した主流れ15と、旋回流形成流路5を通過して吐出流路7の周壁側から吐出流路7の周方向に向かって吹き出して旋回流17となる。主流れ15は吐出流路7に向かって吐出方向に流れ、旋回流17は吐出流路7内を旋回して吐出方向に流れる。主流れ15と旋回流17は吐出流路7内で合流して、吐出方向の流れ成分と旋回成分とを有する吐出流(具体的には噴射ガスジェット19)となって噴射される。
なお、旋回流形成流路5の出口の位置は、吐出流路7の中心からからずれていればよく、吐出流路7の内周面の接線方向に向くような位置がより好ましい。
【0019】
旋回流17を形成することで、ノズル部1出口の吐出流速を遅くすることができ、酸化性ガスの流量を確保しつつ、かつノズル径を過大にすることなく酸化性ガス流速を250m/s以下にすることが可能になる。
なお、後述の実施例から理解されるように、酸化性ガス流速は100m/s以下がより好ましい。
もっとも、下限値としては、ノズル内へのスプラッシュ等による地金付着による閉塞を防止するために80m/sとするのが好ましい。
【0020】
<脱炭処理工程>
脱炭処理工程においては、脱燐処理工程におけるソフトブローによって装入炭素濃度が高くなった溶鉄に対して、バーナ機能のある粉粒体吹込み機能を付与したバーナランスから酸化性ガスを供給して精錬する。
脱炭処理工程に用いる転炉型精錬設備の一例を図面に基づいて説明する。
転炉型精錬設備21は、図2に示すように、炉体23と、炉体23内に粉粒体を供給するバーナランス25とを備えている。
炉体23の下部には、アルゴンガスを供給する底吹き羽口27が設けられている。炉体23内部には、図2に示されるように、溶鉄29が入っており、溶鉄29上部にはスラグ31が存在する。
バーナランス25には、粉粒体供給管33、燃料配管35、燃焼用酸素ガス供給管37、酸素ガスを送る送酸配管38、冷却水給水管40a及び冷却水排水管40bが接続されている。
図2においては、精錬用の酸化性ガス39と、燃料の燃焼によって形成された火炎41と、火炎41の中を通過している粉粒体43が示されている。
【0021】
バーナランス25のノズル部の構造を図3に基づいて説明する。バーナランス25は、図3に示すように、中心部から外周部に向かい、粉粒体43を噴出する粉粒体噴射ノズル45、気体燃料を噴射する燃料噴射ノズル47、燃料を燃焼させるための酸化性ガスを噴射する燃焼用酸化性ガス噴射ノズル49、送酸用酸化性ガス噴射ノズル51が同心円状に配置されている。各ノズルの配置が前記のようにされていることから、粉粒体噴射ノズル45の断面形状は円形、燃料噴射ノズル47および燃焼用酸化性ガス噴射ノズル49の断面形状は円環状になっている。
送酸用酸化性ガス噴射ノズル51の外周部には、バーナの溶損等を防止するために、冷却水が循環供給される冷却水循環路53が設けられている。冷却水循環路53は冷却水給水管40a、冷却水排水管40bに接続されている。また、冷却水循環路53はノズル部先端で反転するように構成されており、いずれの側が冷却水給水管40a又は冷却水排水管40bに接続されてもかまわない。
【0022】
バーナランス25を用いることで、バーナの熱を粉粒体を介して溶鉄へ着熱させることができ、溶鉄への着熱量が増大し、ソフトブローによって装入炭素濃度が高くなっていることと相まって総発熱量が増大して、スクラップ配合量を増大させることができる。
【0023】
本実施の形態によれば、脱燐処理工程において二次燃焼率を高くすることができ、炉内での総発熱量が増大し、スクラップの溶解量が増大し、溶銑配合率を低下させることができ、また脱炭処理工程においては脱燐処理工程においてソフトブローによって装入炭素濃度が高くなっていることと相まって総発熱量が増大して、スクラップ量を増大することができる。
このように、本実施の形態によれば、脱燐、脱炭処理工程を通じてスクラップ量を増大させ、溶銑配合率を低減することができる。その結果、脱燐・脱炭の溶製コストの削減可能になり、省資源、省エネルギーが達成されるとともに、転炉操業の安定化が図れ、工業上有益な効果がもたらされる。
【実施例】
【0024】
本発明の効果を確認する実験を行ったので、これについて説明する。
容量が2.5トンの上底吹き転炉を用いて溶銑と鉄スクラップを装入し脱燐吹錬を行った後、出銑、排滓し、次いで容量が2.5トンの上底吹き転炉に脱燐溶銑と鉄スクラップを装入し脱炭吹錬を行った。
脱燐吹錬では、鉄スクラップを装入した後、温度が1,350℃の溶鉄を装入する。次いで、上吹きランスから吹錬酸素ガスを供給した。また、塊石灰を溶鉄に添加し、底吹き羽口からアルゴンガスを攪拌用ガスとして溶鉄中に吹き込んだ。
ここで、上吹きランスからの酸素は、酸素流量が一定条件のもとで吐出流速を変化させた。実験に用いたノズル形状は所謂ラバールやストレートノズル、さらに図1に示したソフトブロー可能な吐出流路7から噴出する噴射ガスジェット19に旋回流17を付与するノズル部1を用いた。
また、鉄スクラップの装入量は、脱燐処理終了温度が1,400℃となるように調節した。生石灰は、炉内スラグの塩基度(質量%CaO/質量%SiO2)が2.5となるように添加量を調整した。
【0025】
脱炭炉では、鉄スクラップを装入した後、温度が1,350℃の脱燐処理した溶鉄を装入する。次いで、上吹きランスから吹錬酸素ガスを供給し、同時に生石灰粉、燃焼酸素ガス、プロパンガスを溶鉄面に向けて吹き付けながら、底吹き羽口からアルゴンガスを攪拌用ガスとして溶鉄中に吹き込んだ。
また、鉄スクラップの装入量は、脱炭処理終了温度が1,680℃、同炭素濃度が0.05質量%となるように調節した。生石灰は、炉内スラグの塩基度(質量%CaO/質量%SiO2)が3.5となるように添加量を調整した。
溶鉄の温度及び化学組成を表1に示す。なお、表1において、それぞれの成分は、脱燐処理前に調整した値である。
【0026】
【表1】

【0027】
また、吹錬における共通条件を表2に示す。なお、表2において、酸化性ガスには酸素、燃料にプロパン、燃焼用酸化性ガスに酸素、底吹きガスにアルゴンを用いた。
【0028】
【表2】

【0029】
発明例および比較例の吹錬条件の違いによる実験結果を表3に示す。
【0030】
【表3】

【0031】
吹錬条件の違いは、表3にも示されているように、発明例1及び2では脱燐炉において上吹きランスノズルにストレートタイプを用い、発明例3では図1に示した旋回流ノズルを用いた。
また、比較例1では脱燐吹錬において上吹きランスノズルにラバールノズルを、比較例2、3ではストレートタイプを用いた。
また、脱炭吹錬において、発明例1〜3及び比較例3では図3に示したバーナ機能のある粉粒体吹込み機能を付与したバーナランスを用いて吹錬を行った。
【0032】
表3から明らかなように、脱燐処理工程においては上吹きノズルからの酸化性ガスの吐出流速を250m/s以下にして精錬を行うことで、脱燐吹錬のスクラップ配合比が増加した。
具体的には、酸素流速が250m/sの発明例1では4.2%、酸素流速が200m/sの発明例2では4.0%、酸素流速が100m/sの発明例3では4.5%であり、他方、酸素流速が350m/sの比較例1では3.0%、酸素流速が300m/sの比較例2、3では3.3%、であった。
このような結果は、ソフトブローにより二次燃焼率が増加したためと考えられる。
さらに詳細に検討すると、酸素流速が250m/sの発明例1と酸素流速が200m/sでは鉄スクラップ配合比がほとんど変化なく、酸素流速がはやい発明例250m/sの方が0.2%多くなっている。これに対して、酸素流速が300m/sの比較例2、3では3.3%となり、酸素流速が250m/sの発明例1の4.2%と比較すると0.9%も減少している。このことから、酸素流速には臨界値があり、250m/s以下にすることがスクラップ配合比を増大させるのに効果的であると推察される。
また、酸素流速が100m/sの発明例では4.5%であり、スクラップ配合比が大きく増大していることから、酸素流速を100m/sにすることはより好ましいことが分かる。
【0033】
また、脱炭処理工程について検討すると、発明例1、2、3では鉄スクラップ配合比がそれぞれ6.9%、7.5%、8.1%であるのに対して、比較例1、2、3では鉄スクラップ配合比がそれぞれ2.7%、2.9%、5.5%となっている。
まず、発明例1、2と比較例1、2を比較すると、発明例1、2の方が比較例1、2よりも鉄スクラップ配合比が倍以上になっている。これは、発明例1、2では脱燐処理工程におけるソフトブローよって脱炭炉装入炭素濃度が高いこと及びバーナランスによる着熱率が向上したことによると推察される。
また、発明例1、2、3と比較例3を比較すると、これらは全てバーナランスを用いたものであるが、発明例1、2、3の方が比較例3よりも鉄スクラップ配合比が25%〜47%程度増加している。これは、発明例1、2、3では脱燐処理工程におけるソフトブローよって脱炭炉装入炭素濃度が高いことによるものと推察される。
【0034】
以上の検討から分かるように、脱燐処理工程においては上吹きランスのノズルからの酸化性ガスの吐出流速を250m/s以下として精錬を行い、脱炭処理工程においてはバーナ機能のある粉粒体吹込み機能を付与したバーナランス5から酸化性ガスを供給して精錬するようにすることで、脱燐処理工程及び脱炭処理工程のそれぞれの工程において鉄スクラップ量の増大することができることが実証された。
【0035】
なお、上記の説明では、脱燐処理工程において上吹きランスのノズルからの酸化性ガスの吐出流速を250m/s以下として精錬を行い、脱炭処理工程においてはバーナ機能のある粉粒体吹込み機能を付与したバーナランス5から酸化性ガスを供給して精錬する場合について説明したが、上述したように脱燐処理工程において上吹きランスのノズル部1からの酸化性ガスの吐出流速を250m/s以下として精錬を行うことで、脱燐処理工程においてスクラップの溶解量が増大し、また脱炭処理工程においては脱燐処理工程におけるソフトブローの効果として装入炭素濃度が高くすることができ、スクラップ量を増大することができるのであるから、脱炭処理工程においてバーナランスではなく通常の酸化性ガスを上吹きする上吹きランスを用いた脱炭吹錬を行うような場合であってもスクラップ量増大という効果は得られる。
【0036】
また、上記の説明では、脱燐処理工程において転炉型吹錬炉を例に挙げているが、鍋,トーピードカーなどの鉄浴輸送器で脱燐吹錬を実施した場合でも同様の結果が得られることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0037】
1 ノズル部
3 主流路
5 旋回流形成流路
7 吐出流路
9 オリフィス板
11 主流路用オリフィス
13 旋回流形成オリフィス
15 主流れ
17 旋回流
19 噴射ガスジェット
21 転炉型精錬設備
23 炉体
25 バーナランス
27 底吹き羽口
29 溶鉄
31 スラグ
33 粉体供給管
35 燃料配管
37 燃焼用酸素ガス供給管
38 送酸配管
39 酸化性ガス
40a 冷却水給水管
40b 冷却水排水管
41 火炎
43 粉粒体
45 粉粒体噴射ノズル
47 燃料噴射ノズル
49 燃焼用酸化性ガス噴射ノズル
51 送酸溶酸化性ガス噴射ノズル
53 冷却水循環路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋、トーピードカーなどの鉄浴輸送器または転炉型精錬炉において脱燐処理を行い、その後に鉄浴型精錬炉において脱炭処理を行う溶鉄の精錬方法であって、
前記脱燐処理においては上吹きランスのノズルからの酸化性ガスの吐出流速を250m/s以下として精錬を行うことを特徴とする溶鉄の精錬方法。
【請求項2】
前記脱炭処理においてはバーナ機能と粉粒体吹込み機能を有するバーナランスから酸化性ガスを供給して精錬することを特徴とする請求項1記載の溶鉄の精錬方法。
【請求項3】
前記上吹きランスは、ランス先端に旋回流を形成するノズル部を有し、該ノズル部は主流を形成する円形断面の主流路と、該主流路の側方に設けられて前記主流路に対して交差方向の旋回流を形成する旋回流形成流路と、前記主流路及び前記旋回流形成流路に連通して設けられて吐出流を形成する吐出流路とを備えてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶鉄の精錬方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−28832(P2013−28832A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164539(P2011−164539)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】