説明

滅菌システム及び滅菌装置

NO、NO2、NO3、N23、N24、N25、N2Oおよびこれらの混合物の一種以上の窒素酸化物を含む滅菌剤ガスに対象物を暴露することによる対象物を滅菌または除染するシステム、装置、および方法。前記滅菌剤ガスの発生源は、滅菌剤ガス発生組成物により発生させてもよいし、滅菌剤ガスの発生源より供給してもよい。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、一部継続米国特許出願S.N.11/477,513、「滅菌システム及び滅菌装置」(2006年6月30日出願)の優先権を主張するものである。本出願は、国際出願PCT/US2005/000173(2005年1月6日出願)の一部継続出願であり、なおこの内容を引用として本明細書に組み込むものとする。国際出願PCT/US2005/000173は、米国仮特許出願No.60/534,395(2004年1月7日出願)、米国仮特許出願No.60/575,421(2004年6月1日出願)、及び米国仮出願No.60/564,589(2004年7月23日)の優先権に依存するものであり、特許これらをすべて引用として本明細書に組み込むものとする。本出願は、米国仮特許出願No.60/542,298(2004年2月9日出願)に関連し、この文献の全体を引用として本明細書に組み込むものとする。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一酸化窒素及び/又は他の窒素酸化物を滅菌剤として用いる滅菌装置及び滅菌方法に関する。具体的には、本発明は、一酸化窒素及び/又はさらに窒素酸化物を滅菌の目的に使用する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
病院では、水蒸気オートクレーブ処理が医療用装置の滅菌の標準となっている。この方法では、材料を、121℃で圧力が15−20lbs/平方インチの水蒸気に15〜30分間を曝す。殺菌は、タンパク質やDNAの加熱変性や、続く代謝機能の阻害により引き起こされる。この方法は、扱いにくい設備、電源や配管を必要とする。ただし、卓上型は、水補充も可能である。これらの輸送上の問題以外に、オートクレーブ処理は、多くのプラスチックや他の熱に弱い材料の処理に適していない。
【0004】
滅菌剤ガスは、汚染微生物を殺菌したり、その成長を阻害する。これらの滅菌剤ガスのいくつかは、二酸化塩素、二酸化イオウ、過酸化水素、一酸化窒素、二酸化窒素、二酸化炭素、硫化水素、オゾン、およびエチレンオキシドを含む。多くの滅菌剤ガスが関わる一つの問題は、高濃度では爆発の可能性があることである(例えばエチレンオキシド、過酸化水素、二酸化塩素)。したがって、これらガスの高濃度での保存や貯蔵、使用は、利用者の危険につながる。安全上の理由のため、これがガスの使用可能濃度を決定してさらに不利益をもたらす。滅菌剤ガスの濃度を、安全上の配慮から減らさなければならないため、効果的な滅菌を行うには暴露時間を延長する必要がでてくる。
【0005】
二酸化塩素やオゾン、過酸化水素などの特定の滅菌剤ガスは、輸送が難しくまた高コストとなる。これらの滅菌剤ガスの多くは、強力な酸化剤である。酸化性ガスは高価で、大きなタンクでの輸送には莫大な事務処理がかかるため、その用途が難しくなる。オゾンや二酸化塩素などのガスは、使用場所であるいはその近くで発生させる必要がある。このような滅菌剤ガスである二酸化塩素を発生させる施設を現場に設置するには、費用がかかる上、大きな空間も必要となる。
【0006】
ハミルトンの米国特許No.6,607,696には、液体または液体中の対象物を殺菌または滅菌するために二酸化塩素を供給する装置が開示されている。この装置は、含有ガス発生反応物、例えば亜塩素酸ナトリウムとクエン酸が入った透過性のサッシェ(液体とガスが透過可能な容器)を使用する。液体が容器内で拡散してガス発生反応物に至り、二酸化塩素などのガスを発生させる。透過性のサッシェから拡散して出てくるガスは、環境/雰囲気から遮断されていない。透過性で、容器を通して液体やガスの拡散が可能な、サッシェや外被容器などの閉鎖容器に入ったガス発生成分を使用して二酸化塩素を発生させる多区画装置が、米国特許6,602,466や同6,607,696に開示されている。これらのシステムは、高価で製造が難しいうえに、環境/雰囲気中への意図しない放出を防ぐように生成ガスを含有することができないし、対象を滅菌する際に密閉した密閉容器内にこのガスを、利用者が予測どおり正確に供給することもできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許No.6,607,696
【特許文献2】米国特許No.6,602,466
【0008】
したがって、使用現場で滅菌剤ガスを安全かつ効率的に発生させる方法や装置に対するニーズが存在する。爆発や酸化による火災の心配なく高濃度の滅菌剤ガスが製造できるプロセスに対するニーズもある。高濃度のNOを短期間で発生させて暴露時間を短縮し滅菌プロセスの効率をさらにあげるニーズがある。少量の滅菌剤ガスを経済的に発生させるシステムや方法に対するニーズもある。少量の滅菌剤ガスを経済的に発生させることができれば、その滅菌システムが容易に輸送可能となり、従来の滅菌装置や滅菌方法ではほとんど見られないシステムの可搬性が得られることとなる。
【0009】
既存のガス状の滅菌剤や殺菌剤の問題点を考えると、爆発や酸化的な火災に期間が最小限に抑えられた滅菌剤ガスを高速で、安全かつ経済的に、調整可能な状態で発生可能な滅菌剤ガス発生システムや発生方法に対するニーズがある。滅菌や殺菌に要する時間を短縮するために、十分に高い濃度で安全に使用できる滅菌剤ガスに対するニーズもある。また、例えば滅菌対象の材料の分子を変化させたり対象物または材料の構造を変化させたりして、滅菌対象の材料及び/又は滅菌対象物を変化させたり破壊することのほとんどない滅菌剤ガスに対するニーズがある。
【発明の開示】
【0010】
本発明は、滅菌と殺菌のために一種以上の窒素酸化物を発生させて使用する方法を提供する。これらの窒素酸化物としては、一酸化窒素、二酸化窒素、四酸化二窒素、または他の窒素酸化物の純品または混合物があげられる。酸性化により一酸化窒素を発生する化合物を用い、例示の装置内で一酸化窒素を周囲空気と混合することで、この方法は、一連の水溶性窒素酸化物及び脂可溶性窒素酸化物を発生させ、それぞれのガスは、固有の抗菌活性を有している。また、本発明により生成するガス混合物は、他の滅菌剤ガスより酸化性が低く、安全に使用できる。また、このガス混合物は、既存の好ましい滅菌剤ガスに認められる爆薬の危険性を持たない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、滅菌室(SC)12、ガス発生室(GGC)14、及び安全弁18を有する連結チューブ16からなる滅菌装置を示す。SC12は、開閉部20、連結口15、及び排気チューブ29に連結する排気口22を有する。この排気チューブ29には、排気弁23が取り付けられている。GGC14には、滅菌剤ガスを発生可能な組成物(滅菌剤ガス発生組成物)24が納められている。GGC14は、連結チューブ16が取り付けられる連結部17と液体添加用の充填口21を有する。
【図2】図2は、SC12の開閉用の膜型開閉部30を備えた滅菌室12のもう一つの例を示す。
【図3】図3は、ガスのポンピング機能及びスクラビング機能を備えた硬いケースからなる本発明の滅菌装置100の概略図である。
【図4】図4は、窒素濃度が0%、0.025%、0.050%、0.100%、0.150%、0.200%、0.250%、0.350%で、表示の時間(約1日)NO2に暴露した後で、特定の生物指標が死滅、生存しているか、その中間であるかを示すグラフである。他の試験の詳細は、実施例31等に記載してある。
【図5】図5は、特定の生物指標を、大気下で、濃度を0〜1%及び6%で5〜120分間暴露した場合のNOの滅菌効率を示すグラフである。他の試験の詳細は、実施例31等に記載してある。
【図6】図6は、大気下でいろいろな時間と濃度で処理した場合のNOの滅菌効率と持続的な滅菌効率を示す時間と濃度の領域を示すグラフである。他の試験の詳細は、実施例31等に記載してある。
【図7】図7は、図5と図6に示されまた実施例31に記載のように、いろいろなNO濃度(0と1%)でいろいろな時間処理した場合の滅菌と不完全滅菌とをより明確に示す一対の図である。この例では、滅菌効率の予測には、NO濃度単独よりは、NO濃度と暴露時間の積が好ましいことがわかる。
【図8】図8は、滅菌対象の試料を真空にし、試料を真空状態に置き、NO(またはNO2または他の窒素酸化物)を加え、加湿空気を加え、乾燥空気を加え、最終的な条件におく好ましい滅菌プロセスを示す図である。
【発明の詳細説明】
【0012】
本発明の上記の特徴は、以下の明細書を参照することでより明確に理解可能となる。
【0013】
本発明は、一酸化窒素、二酸化窒素、及び/又は他の窒素酸化物を発生させるか使用して、医療用などの無菌であるべき装置や器具、材料、工具、設備を滅菌または殺菌する方法と装置を提供する。一酸化窒素のみを、あるいは空気と反応して生成する窒素酸化物との混合物を、滅菌剤あるいは滅菌剤混合ガスとして使用することは、他のガスを使用するより有利である。窒素で希釈した二酸化窒素のみ、または他の窒素酸化物との混合物の使用も、対象物や材料の滅菌や殺菌に有利である。一酸化窒素や他の窒素酸化物は、いずれも高濃度であっても爆発性をもたない。また、一酸化窒素や他の窒素酸化物の酸化性能は、過酸化物類やオゾンより低いため、滅菌可能な材料の幅が広くなる。一酸化窒素及び/又は他の酸化窒素を使用する他の利点は、これらの密度が空気の密度に近く、空気と混合した際に、密度が空気より二倍大きい二酸化塩素のように閉鎖された容器の底に沈降しないことである。
【0014】
窒素酸化物の混合物を発生させることは、純粋な一酸化窒素や他の単一組成滅菌ガスに比べて、さらに利点を持ちうる。一酸化窒素は非常に脂可溶性が高く、微生物の脂質膜を乱す能力を持つ。また、一酸化窒素はチオタンパク質を不活性化させ、微生物の機能的タンパク質を崩壊させる。二酸化窒素は一酸化窒素より水溶性が高い。最後に、一酸化窒素と二酸化窒素は、DNAを極めて効果的に崩壊させるものであり、鎖の切断などの損傷を引き起こして、細胞が機能しなくなるようにさせる。
【0015】
酸化窒素と空気の混合物は、反応して多くの異なる窒素酸化物を含む混合物を与える。具体的には、NOを空気に添加したり、空気をNOに添加すると、NOが大気中の酸素と反応してNO2が生成する。混合物中に存在する各酸化窒素種の濃度は、温度や、圧力、一酸化窒素の初期濃度により異なる。
【0016】
特定の実施様態においては、一酸化窒素が、0.35%〜1%またはこれ以上の濃度で、30分間以上供給される。好ましくは、NO濃度(%)と時間(分)の積が、約10、20、30、40、50、60以上(例えば、濃度が0.35%で、時間が30分間の場合は、約10)である。特定の実施様態においては、相対湿度は約50%〜80%(または60〜80%)に、例えば約50%や60%、70%、80%に維持される。特定の実施様態においては、大気中のNO濃度が、約0.25%、0.35%、0.5%、0.75%、1%、またはこれ以上で供給される。特定の実施様態においては、滅菌すべき試料をまず、約0.3インチHg〜約5インチHgの真空に、例えば0.3インチ、0.5インチ、1インチ、3インチ、または5インチの真空に曝す。
【0017】
「定義」
本明細書において、「ガス」とは、固体状態でも液体状態でもなく、比較的に低密度で低粘度であり、圧力と温度の変化により膨張収縮し、容易に拡散して、どのような容器内でも均一に分布する傾向のある何らかの物質である。
【0018】
本明細書において、「一酸化窒素」または「NO」は、NOフリーラジカルまたはNO・を意味する。本明細書において、「NOX」は、酸化窒素または窒素酸化物の略記であり、それぞれ窒素により生成される酸化物であり、これらの窒素は、それぞれ正の酸化数+1〜+5を有している。本明細書において、「酸化窒素」や「窒素酸化物」、「NOX」は、異なる量の窒素と酸素とからなる以下のガスを一種以上含む混合ガスである:一酸化窒素(NO)二酸化窒素(NO2)、窒素三酸化物(NO3)、三酸化二窒素(N23)、四酸化二窒素(N24)、五酸化二窒素(N25)及び亜酸化窒素(N2O)。好ましい滅菌剤ガスの例としては、NOや、NO2、NO3、N23、N24、N25、N2O、これらの混合物があげられるが、これらに限定されるわけではない。最も好ましい滅菌剤ガスの例は、NOや、NO2、N24、これらの混合物である。
【0019】
本明細書において、「NO発生」化合物や組成物は、NOやNO2、NOXを発生させるか放出することができる化合物や組成物を意味する。本明細書において、「滅菌剤ガス発生」化合物や組成物は、滅菌剤ガスを発生させるか放出させることができる化合物や組成物を意味する。「NO発生」化合物は、一種の滅菌剤ガス発生化合物である。本発明のシステムや装置、方法で使用される好ましい滅菌剤ガス発生化合物類は、1モルの化合物当たり少なくとも1モルのNOを発生させる炭素系のジアゼニウムジオレート化合物である
【0020】
本明細書において、「滅菌室」は、滅菌または除染する物品を入れる、適当な大きさのガス密封性のある試験槽であり、硬質材料でできていても軟質材料でできていてもよい。この滅菌室は、(I)真空を維持でき、(II)滅菌ガスを受け入れることができ、(III)空気を受け入れることができることが好ましい。滅菌とは、非常に耐性の高い細菌の内生胞子を含むすべての微生物の生命を破壊する高レベルの除染のことある。殺菌とは、中間レベルの除染であり、ほぼすべての病原性微生物を除くが、細菌の胞子は除去しない。本明細書において、「滅菌させる」や「滅菌」は、材料中のまたは対象物上のすべての微生物を殺すこと、またはこれらを除去することをいう。ある材料または対象物が「滅菌済み」または「滅菌状態」である場合、その材料または対象物中にあるいはその表面上に生存している生物はいない。滅菌は内生胞子を含むすべての微生物を除去するため、ある材料または対象物を滅菌させる方法、システム及び/又は装置はまた、その材料または対象物を殺菌し除染する。本明細書において、「対象物」とは、発明の要件ではなく、開示の滅菌方法、システム、装置により滅菌及び/又は除染を行う装置または材料をいう。「対象物」は、滅菌対象の材料であり、その物理的な形状は問わない。特に限定されるわけではないが、例えば、対象物が、滅菌が望ましい医療用具、医療用等の装置、またはこれら装置の組合わせであってもよい。対象物は、広い範囲の形状や大きさが可能であり、様々な材料(例えば、特に限定されないが、金属やプラスチック、ガラス)で製造されていてもよい。
【0021】
本明細書において、「ガス発生室」は、ガス及び/又はガス発生化合物を入れるのに使用できる、いかなる大きさの何らかの組成物からなる容器である。ガス発生室は、液体にもガスにも非透過性の材料でできていることが好ましい。本明細書において、「微生物」とは、バクテリア、ウイルス、糸状菌、寄生生物、マイコバクテリウム、その他を意味する。本明細書において、「スクラビング」は、滅菌装置の排気流から毒性のある窒素酸化物を除去すること、あるいは化学的に変換することをいう。
【0022】
本明細書において、「医療用具」は、ヒトや動物の疾患の治療、緩和、処置または予防のために、またはヒトや動物の体の構造や機能に影響を与えるために、ヒトまたは動物の完全な組織に全体的にあるいは部分的に挿入して用いられる、何らかの成分や部品を含むいずれかの器具、装置、道具、機械、装具、考案、移植材料、または他の類似・関連物品をいう。本明細書において、「移植材料」または「移植可能な材料」とは、哺乳類の完全な組織内に挿入あるいは移植される何らかの材料または対象物をいう。
【0023】
本明細書において、「非透過性材料」とは、いずれかの液体またはガスも、少なくとも1時間の間、その95%以上の通過又は拡散を許さない物質、材料または対象物をいう。本明細書において、「透過性材料」とは、ガス及び/又は液体の内部通過を許す物質、材料または対象物をいう。
【0024】
本発明の滅菌システムおよび滅菌方法では、広い範囲の器具や、装置、材料、ヒトや動物組織、薬剤、生物薬剤や様々な医学関連材料の滅菌に、一種以上の窒素酸化物(個別または組合せ)を使用する。
【0025】
本発明のもう一つの滅菌システムおよび滅菌方法では、酸性化すると滅菌剤ガスを放出する、好ましくは一酸化窒素を放出する化合部を使用する。本発明のシステムおよび方法は、一酸化窒素を発生させるが、この一酸化窒素は、通常水溶性酸化窒素ガスと脂可溶性の酸化窒素ガスの混合物として、広い種類の装置、器具、材料、ヒトや動物組織、薬剤、生物学薬剤、様々な医学関連材料を滅菌させるのに使用される。本発明のある実施様態においては、滅菌の対象物が、健康関連製品に使用される材料でできている。健康関連製品の例としては、特に限定されるわけではないが、あらゆる種類の手術装置、心臓手術製品、心臓移植材料、心臓血管ステント、血管移植材料、整形外科の手術装置などの手術製品、骨グラフト、骨格結合材料、整形外科移植材料、歯科手術製品、歯科用移植材料、胃腸移植材料、尿路移植材料、創傷治癒製品、組織工学製品があげられる。もう一つの本発明の実施様態においては、この組織工学製品がタンパク質である。
【0026】
通常、医療用具である対象物は、一種以上の材料を、例えば金属、非金属、ポリマーまたはプラスチック、エラストマーや、生体由来材料を含んでいる。医療用具に好ましく用いられる金属は、ステンレス鋼、アルミニウム、ニチノール、コバルトクロム、およびチタンである。非金属では、ガラスやシリカ、セラミックがあげられる。
【0027】
もう一つの本発明の実施様態においては、滅菌の対象物が、生吸収性ポリエステルポリマーで、具体的には、特に限定されるわけではないが、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(DL−ラクチド)、50/50ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコライド)、ポリ(e−カプロラクトン)やこれらの混合物からなるポリマー材料によりできている。好ましくは、この材料が移植材料や薬物輸送に使用可能な生吸収性ポリマーである。医療用具に使用される好ましいポリマーは、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンオキシド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスルホン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリエーテルイミド、ポリフッ化ビニリデン、及びこれらのコポリマーや組み合わせである。医療用具に用いられる他の材料としては、ポリシロキサン、フッ素化ポリシロキサン、エチレンプロピレンゴム、フルオロエラストマー、及びこれらの組み合わせがあげられる。医療用具に用いられる生体由来材料の例としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリパラジオキサノン、ポリトリメチレンカーボネート、これらのコポリマー、コラーゲン、エラスチン、キチン、サンゴ、ヒアルロン酸、骨、及びこれらの組み合わせがあげられるが、これらに限定されるわけではない。
【0028】
ある種の医療用具や移植材料は、生物活性な膜及び/又は生体親和性塗膜を有している。その例としては、特に限定されるわけではないが、感染防止膜、抗菌膜、薬物放出膜、抗血栓性膜、潤滑性膜、ヘパリン膜、ホスホリルコリン膜、ウロキナーゼ膜、ラパマイシン膜、およびこれらの組み合わせがあげられる。この生物活性な膜は、親水性膜であっても疎水性膜であってもよい。生物活性な膜やポリマーの他の例としては、特に限定されないが、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−コ−プロピレングリコール.、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール−コ−ビニルアセテート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒアルロン酸、親水性置換体、モノマー類、不飽和プレポリマー類、二重結合を含む未架橋ポリマーがあげられる。他の生物活性の膜やポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリエステル、ポリアミド、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)、ポリウレタン、ポリ(シロキサン)、シリコーン、ポリ(塩化ビニル)、フッ素化エラストマー、合成ゴム、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリエーテルケトンABSゴム、ポリエーテルイミド、これらの疎水性置換体、これらの前駆体モノマーなどがあげられる。
【0029】
もう一つの本発明の実施様態においては、滅菌の対象物が、生吸収性ポリマー、または薬物保持性または薬物溶出性ポリマー、またはこれらの混合物の材料からできている。本発明のある好ましい実施様態において、滅菌の対象物が移植材料である。
【0030】
本発明のシステムおよび方法のある好ましい実施様態では、使用点でガスが発生される。このような使用点の方法やシステム、装置では、潜在的に有害であるガス用の重いタンクや、高価な現場のガス発生施設の必要がなくなる。本発明のシステムや方法において用いる使用点でのガス発生は、電気がなくとも作用するため、厳しい環境、例えば戦闘地や難民キャンプなどで滅菌や殺菌、除染を行う携帯型の実施様態に適用可能な方法となる。ある側面においては、本発明は、滅菌や殺菌のために、酸化窒素混合物を発生させる方法を述べる。この方法は、ガス発生とその輸送方法の両方を含む装置を必要とする。このプロセスで用いる装置は、多くの実施様態の可能性を有している。
【0031】
本発明のシステムまたは装置のある好ましい実施様態においては、滅菌室と、一種以上の窒素酸化物からなる滅菌剤ガスの供給源が使用される。滅菌室が滅菌剤ガス源と流体的に連結していてもよく、この滅菌剤ガスの供給源が滅菌室の内部にあってもよい。ある好ましい実施様態では、ガス発生室は、流体的に滅菌室と連結されている。他の好ましい実施様態では、ガス発生室が滅菌室内に設けられている。
【0032】
オゾンや過酸化水素などの汎用滅菌剤ガスよりも酸化性能が低い酸化窒素混合物を発生させる本発明のシステムおよび方法の実施様態も好ましい。もう一つの利点は、エチレンオキシドや過酸化水素、二酸化塩素などの汎用滅菌剤ガスよりも、得られた酸化窒素混合物の爆発性能が低いことである。この結果、高濃度のガス状混合物の使用が可能となり、したがって、当業界の熟練者には公知のように、本発明のシステムおよび方法では、滅菌サイクル中の暴露時間の短縮が可能となる。
【0033】
さらに他の利点は、本発明の方法では、滅菌と殺菌のために、化学的な性質の異なる複数の化学種を発生させることである。複数メカニズムでの細胞の殺菌除染が、単一メカニズムでの処置より好ましいことは、当業界の熟練者には公知である。作用の異なるメカニズムをもつ抗菌剤の組合わせは、共同的に作用して、各々の薬剤の効果を単純に足し合わせて予測される効果より大きな効果を発揮する。同じ原理が微生物耐性にも適用され、複数の作用の異なる薬剤が治療に用いられている。
【0034】
本発明の方法とシステムのある好ましい実施様態においては、ジアゼニウムジオレートと呼ばれる一群の一酸化窒素供与体を用いてNOガスを発生させる。これらの化合物は、溶液中で自然にNOを放出し、その速度はその溶液の酸性度に比例する。本発明の方法においては、高酸性条件をNOの発生に使用可能であり、この場合NOガスが急速に発生する(理論的にNO完全放出が30秒未満)。
【0035】
本発明の方法とシステムのある好ましい実施様態においては、窒素系のジアゼニウムジオレートより、炭素系の同化合物が使用される。Parzuchowski et al.,J Am Chem. Soc 124:12182-91(2002)に記載のように、窒素系の化合物は、高度に発がん性のあるニトロソアミン種を生成する可能性があるため、炭素系のジアゼニウムジオレートが好ましい。多量のNOを放出する炭素系のジアゼニウムジオレート化合物類、例えば、米国仮出願特許No. 60/542,298に記載のもの(米国特許No. 6,232,336に開示されている化合物類より、1モルの化合物当たり多量の一酸化窒素を発生させる)及び米国仮出願特許No. 60/542,298(2004年2月9日出願)に記載のもの(なおこれらの文献は、その全体を、引用として本明細書に組み込むものとする)があげられるが、特にこれらに限定されるわけではない。本発明の方法と装置の他の実施様態においては、窒素系のジアゼニウムジオレート化合物を含む滅菌剤ガス発生組成物が使用される。
【0036】
炭素系ジアゼニウムジオレート化合物を含む滅菌剤ガス発生組成物を使用する本発明の方法と装置のある好ましい実施様態において、この炭素系ジアゼニウムジオレート化合物は、炭素系ジアゼニウムジオレート化合物1モルに対して、1モルを超える量のNOを発生する。本発明の方法と装置の更に別の態様においては、この炭素系ジアゼニウムジオレートは、ジアゼニウムジオレート基を持つ炭素を有し、この炭素は、イミデート、チオイミデート、アミジンまたはエナミンの一部にはなっていない。
【0037】
本発明の方法と装置の更に別の態様において、この炭素系のジアゼニウムジオレート化合物は、次式を持つ。

3−C(R1x(N222y

式中、
xは0〜2の整数であり、
yは1〜3の整数であり、x+yは3である。
式中、R1は、イミデート、チオイミデート、アミジンまたはエナミンではない。
式中、R2は、カウンターカチオンと末端酸素上の保護基からなる群から選ばれる。
式中、R3はフェニル基である。
【0038】
本発明の方法と装置の更に別の実施態様において、この炭素系のジアゼニウムジオレート化合物が上記式で表され、
式中、R1がイミデート、チオイミデート、アミジンまたはエナミンでなく、
式中、R2がカウンターカチオンと末端酸素の保護基とからなる群から選ばれ、
式中、R3はフェニル基である。本発明のある好ましい実施様態において、
1は、電子吸引基、ニトロ基、エーテル、チオエーテル、及び非エナミン−アミンからなる群から選ばれる基であり、
式中、R2置換基は、脂肪族基、芳香族基、及び非芳香族基からなる群から選ばれ、
式中、R3置換基は、モノ又はジ置換アミノ、無置換アミノ、アンモニウム、アルコキシ、アセトキシ、アリールオキシ、アセトアミド、アルデヒド、ベンジル、シアノ、ニトロ、チオ、スルホン酸、ビニル、カルボキシル、ニトロソ、トリハロシラン、トリアルキルシラン、トリアルキルシロキサン、トリアルコキシシラン、ジアゼニウムジオレート、ヒドロキシル、ハロゲン、トリハロメチル、ケトン、ベンジル、及びアルキルチオからなる群から選ばれる基であり、カウンターカチオンは、アンモニウム及び第四級のアミンからなる群から選ばれる基であり、また式中、保護基は、アリール基、スルホニル基、グリコシル基、アシル基、アルキル基、及びオレフィン系基からなる群から選ばれる基である。
【化1】

【0039】
本発明の方法とシステムで使用可能な、ただし注意して使用可能なNO発生化合物は、ナトリウムニトロプルシドである。これはガス発生室においてシアン化物が同時に生成するためである。シアン化物の生成は、ヒトの健康への危険を意味し、ガス発生室に対して、廃棄処分の安全性の問題を引き起こす。本発明において、ニトロソチオールをNOの発生に用いてもよいが、ニトロソチオールは、NOを放出後再生する傾向を持つため、NOの化学的貯槽として作用し、NOの放出の予測を難しくする。本発明の滅菌剤ガス発生組成物としては、したがって、窒素系のジアゼニウムジオレート化合物を、具体的にはニトロソチオール、S−ニトロソグルタチオン、ナトリウムニトロプルシド、モルシドミン、鉄−硫黄ニトロシル、ルシン黒塩、及びこれらの混合物をあげることができる。
【0040】
本発明のシステムと方法の最も好ましい実施様態では、用いるNO放出化合物が、炭素系のジアゼニウムジオレート化合物である。炭素系のジアゼニウムジオレート分子は、より多量の一酸化窒素を発生するが、ニトロソアミン類を形成しない。好ましくは、この炭素系のジアゼニウムジオレート化合物が、1モル当たりより多量のNOを発生することが好ましい。本発明のシステムや方法において、1モル当たり少なくとも1モルのNOを発生できるC系のジアゼニウムジオレート化合物を滅菌剤ガス発生化合物として使用することが好ましい。このような炭素系のジアゼニウムジオレートは、米国仮出願特許No.60/542,298、「一酸化窒素放出分子」(2004年2月9日出願)に記載されている。なおこの文献は、その全体を引用として本明細書に組み込むものとする。
【0041】
本発明のシステムおよび方法では、酸性化されても発がん性のニトロソアミン類を形成しないC系のジアゼニウムジオレート化合物を使用することが好ましい。C系のジアゼニウムジオレート化合物のNO放出化合物として使用することが好ましいもう一つの利点は、NO放出化合物1モル当たりのNO放出量が大きいことである。例えば、窒素系のジアゼニウムジオレートやニトロソチオールは、炭素系のジアゼニウムジオレート化合物と比べると、1モルの化合物あたりのNOの発生量が少ない。また、C系のジアゼニウムジオレート化合物を好ましいNO放出化合物と使用すると、ニトロソチオールからNOを放出する場合に必要な銅溶液に代えて、酸をNOの放出に用いることができることとなる。さらに本発明の方法とシステムの他の利点は、銅イオンを含む溶液を必要とする方法に比べて、環境への衝撃が小さいことである。
【0042】
本発明のシステムや方法において用いられる酸化窒素形成性化合物は、本発明に、多くの利点をもたらす。一つの利点は、一酸化窒素の脂質溶解性が高いため、脂質膜を有するほぼすべての微生物に毒性を発揮することである(例外は無外皮性ウイルス)。
【0043】
二酸化窒素や四酸化二窒素などの他の窒素酸化物は、一酸化窒素より水溶性が高い。これらは、特に二酸化窒素は、非常にDNAを傷つけやすく、DNA塩基のニトロソ化や脱アミノ化や一本鎖及び二本鎖の切断を引き起こす。DNAの損傷は、強力な殺傷メカニズムとなる。本発明においては、ガス混合物が一緒になって、様々な作用メカニズムにより微生物を多様に攻撃する。複数の作用メカニズムを用いる方法の抗菌上の利点は上述の通りである。
【0044】
さらに本発明のシステムおよび方法の他の利点は、湿った環境下でも固体に付着する亜硝酸や硝酸を水中に少量で形成できることであり、これにより本発明の抗菌性が増加する。
【0045】
本発明のシステムおよび方法の他の実施様態においては、一種以上の窒素酸化物を含む、加圧または非加圧状態の円筒状ガス発生室を使用する。この実施様態では、可搬性が犠牲となるが、軍事用などの非常に大型の設備での大規模除染に有用である。上記の一種以上の窒素酸化物は、この円筒容器に高濃度で保存可能である。しかし、この実施様態は、濃縮加圧ガスの輸送に伴う危険性やコスト、書類事務のため、あまり望ましくはない。より好ましい方法は、円筒容器内の一種以上の窒素酸化物の濃度を、窒素または、例えば、特に限定されるわけではないが、アルゴンやヘリウム、ネオンのような他の不活性ガスで所望濃度にまで低下させることであろう。このガスまたは混合ガスは、滅菌室に流体的に連結した計量自動調整系を経由して、または当業界の熟練者には公知の他のガス輸送方法により滅菌室に送られる。他の実施様態では、ガスボンベから滅菌剤ガスの輸送を制御するのにコンピューターまたはマイクロプロセッサ手段が用いられる。
【0046】
NO放出剤が酸で活性化される本発明の実施様態において、NOを発生させるのにいかなる酸を用いてもよい。本発明のある実施様態においては、実施例1に記載のように、水性の酸である液体活性化剤を添加してNO供与体を活性化させる。この液体活性化剤は、例えば、水や、酸、水と酸の混合物があげられるが、特にこれらに限定されるわけではない。水性の酸の取扱いと輸送は不便であるため、水で活性化できる粉末の酸が好ましい。いずれの粉末状の酸でもよいが、低pKaの粉末酸が好ましい。これは、NOを速やかに発生する方法が好ましく、低pKaの酸がより効果的であるためである。これらの低pKaの酸としては、シュウ酸やマレイン酸があげられるが、これらに限定されるわけではない。一般的には、最大10倍モル過剰の粉末酸が使用されるが、低モル比でもよい。
【0047】
本発明のシステムや方法のある好ましい実施様態では、ガス発生室が炭素系のジアゼニウムジオレートと粉末酸の両方を含み、このガス発生室は、液体、好ましくは水の添加が可能で速やかに密閉する開口部を有し、またこれは滅菌室に流体的に連結しており、炭素系のジアゼニウムジオレートの活性化により生成したガスが滅菌室に運ばれるようになっている。必要なら滅菌室からNOガスを放出する目的で真空を印加するために、これら以外の接続ライン及び/又は接続口を設けてもよい。好ましくは、このNOガスを、再使用可能なNOXスクラビング系に放出する。好ましい本発明の方法や装置では、対象物の滅菌後に滅菌剤ガスをスクラビング回収する。
【0048】
製造、輸送、保管の間にガス発生室中の水分を低下させるため、ガス発生室に吸水材を入れてもよい。吸水材の例としては、モレキュラーシーブや、シリカゲル、当業界の熟練者には公知の他の方法があげられるが、これらに限定されるわけではない。吸水材の量が水添加によるNOの発生を妨害しないように、注意が必要である。
【0049】
当業界の熟練者は、理想気体の法則や、いろいろなNO放出化合物から放出されるNOのモル数、目的の化合物の分子量を用いて、滅菌室を含むいずれの特定の体積に所望のNO濃度を達成するためにガス発生室中に必要な化合物の量を求めることができる。例えば、0.0225モルのNOを発生させ、1リットルの体積中で50%のNO濃度を得るのには、1モルの化合物当たり2モルのNOを発生し分子量が163gms/モルであるNO放出化合物が1.956グラム使用される。このようにして、利用者はいろいろな滅菌用途に加えるNOの量をコントロールできる。例えば、医療従事者は高濃度のNOを加えることが必要なり高速の滅菌サイクルを必要とするかもしれない。可搬性に重点を置く利用者は、プロセスの速度やコストにはそれほど神経質である必要はない。滅菌サイクルが長くなると、NO放出化合物量が低下する、即ち添加するNOが低下する。したがって、装置100やプロセスは、可能な最終利用者が、コストや速度、可搬性、他の利用パラメーターに関する決定に、柔軟性を与えることとなる。
【0050】
本発明のある実施様態は、化学的に生成したNOを高速で効果的な滅菌剤として用いる、電力を必要とせず、したがって厳しい環境下でも使用可能な軽量で携帯型の機器である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、最も単純な形の装置10を示す。装置10は、滅菌室(SC)12、ガス発生室(GGC)14、ガスがGGC14からSC12に流れるようにする連結チューブ16、及び連結チューブ16上にありGGC14をSC12から分離する安全弁18などの部品を持つ。SC12は、開閉部20と、連結口15、及び排気チューブ29につながった排気口22を有する。この排気チューブ29には、排気弁23がついている。GGC14は、粉末状の滅菌剤ガス−発生組成物または化合物24を含んでいる。これについては、後ほど詳述する。GGC14は、さらに、連結チューブ16が取り付けられるメス型ルアー連結具17と、液体を添加する充填口21とを持つ。装置10のそれぞれの部品について、以下でより詳細に述べる。
【0052】
図1は、滅菌室(SC)12の詳細である。SC12は、プラスチック製の物理容器13、ガス非透過性であり、滅菌する材料の積載・除去のためにSC12の開閉が可能な開閉部20、連結チューブ16にガス密閉シール可能な連結口15、及び滅菌済み材料の除去に先立って、SC12からガス状の滅菌剤を除去できるようにする排気口22とからなる。SC12は、低分子量ガスを最大45分間保持できるプラスチック材料ならどのようなものでできていてもよい。ガス保持の必要時間が短いため、それぞれ個々の用途に応じて、重量、靱性、コスト変数などを最適化するため、ガス半透性材料をSC12の製造に用いてもよい。
【0053】
SC12の物理的な容器13に用いるプラスチックとしては、高い耐薬品性を有するポリマー、例えば、シリコーン油で変性したスチレン−エチレン−ブチレンブロックコポリマー(例えば、C−FLEXチューブ)、ハラー樹脂性のフルオロポリマー(例えば、ケミフロール367)、エチレンプロピレンジエン系モノマー(EPDM)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(例えば、キナール)、フルオロポリマー類(例えば、MFA)、ポリケトンまたはポリエーテルエーテルケトン類(PEEK)、パーフルオロアルコキシフルオロカーボン(PFA)、フルオロエチレン−プロピレン(FEP)、ポリイミド、及びポリ塩化ビニル(PVC)があげられるが、特にこれらに限定されるわけではない。開閉部20は、SCのいろいろな位置に設けられるが、好ましくはSC12上で連結口15と排気口22の反対側の点、またはSC12の両側に向けて設けられる。この開閉部20は、好ましくはポリエチレンで作られる。ある好ましい開閉部は、圧力破裂に抵抗するかみ合い式の線状ファスナーを有するもの、例えばU−マクシグリップ(イリノイツールワーク社、米国)である。利用可能なかみ合い式線状ファスナーはたくさんあるが、このモデルは、圧力破裂に抵抗するため特に望ましい。
【0054】
SC12の他の実施様態を図2に示す。ここでは、SC12が、連結部を分離したり繋げたりするジッパー状のタブ31と案内溝32を用いてSC12を開閉する、連結プラスチックのフックとリブからなるC文字状のトラックである膜型開閉部30を有している。この膜型開閉部30は、SC12の近接する三辺に沿って、SC12の周辺から1〜2cmの位置に取り付けられ、プラスチック製の折り返しをSC12から引っ張ることで、SC12への積載・除去が可能となっている。
【0055】
接続口15は、SC12と連結チューブ16とのガス密閉状態での接続を可能とする。好ましい実施様態では、接続口15の上にはメス型のルアー連結具25が取り付けられ、連結チューブ16の末端には、オス型のルアー連結具27またはメス型のルアー連結具25にぴったりと適合するように設計した傾斜を持つシャフトが取り付けられている。従来技術によりこの構成を変更することも可能であり、接続口15上部のルアー連結具がオス型であり、連結チューブ16末端のルアー連結具がメス型であってもよい。
【0056】
ある実施様態においては、排気口22は、SC12からフランジにより伸び、排気チューブ29中にある傾斜をもって挿入される排気チューブ連結用のプラスチック製フランジである。排気チューブ29には、バルブ23が取り付けられ、これが閉まると、SC12は周囲空気から遮断される。ある好ましい実施様態においては、当業界の熟練者には公知のように、このバルブ23は、多くの場合、排気チューブ29遮蔽用のローラー活性化型の圧縮バルブである。
【0057】
この連結チューブは、比較的耐薬品性が高い柔軟性プラスチックならいずれのものからなっていてもよい。好ましいプラスチック材料としては、例えば、C−FLEX、ケミフロール367、EPDM、ETFE、キナール、MFA、PEEK、PFA、FEP、ポリイミド、及びPVCがあげられるが、これらに限定されない。連結チューブの長さは、利用者が他の部屋を乱すことなく各部屋を自由に操作できる程度に十分長くする必要がある。通常、20〜30インチの長さの連結チューブ16が好ましいが、20〜30インチの範囲外の長さもまた機能する。連結チューブ16の末端には、オス型のルアー連結具が取り付けられる。また、流体密閉シールをするためには、メス型のルアー連結具に挿入可能な、傾斜構造の硬質プラスチックチップもある。
【0058】
GGC14をSC12から隔離するのに、広い範囲の種類の安全弁18が使用可能であり、その例としては、折曲バルブ、ローラー作動圧縮バルブ等があげられるが、これらに限定されるわけではない。GGC14からSC12への液体の流れを止めることができるものなら、いずれのバルブも使用可能である。本発明のある好ましい実施様態では、自己作動であるため、空気抜き/真空破断バルブが使用される。
【0059】
「ガス発生室(GGC)とガス発生化合物」
GGC14としては、耐薬品性を有する様々なプラスチックからなる容器19があげられる。これらの例としては、C−FLEXや、ケミフロール367、EPDM、ETFE、キナール、MFA、PEEK、PFA、FEP、ポリイミド、PVCがあげられるが、これらに限定されるわけではない。ある好ましい実施様態においては、この容器は、PFTE及び/又はポリオレフィンからなる。GGC14は、GGC14の連結チューブ16への接続用に取り付けられたメス型のルアー連結具17を有し、これにより、GGC14内部からSC12への流体が流れる。好ましくは、GGC14の充填口21は、保持と蓋での封鎖が容易となるように、少なくとも0.5cm、GGCの壁面より上に突き出たネジ付の枠をもつ大きな蓋付の開口部である。
【0060】
本発明の他の実施様態を模式的に図3に示す。滅菌装置100は、密閉可能なガス発生室102に取り付けられた、内部にガスポンピング手段及びスクラビング手段を備えた硬いケースである。装置100は、密閉可能な口103を経由して、流体的にガス発生室102に連通している。ある好ましい実施様態においては、この密閉可能な口103が、二重閉鎖・高速切断可能なカップッリング(コウルダープロダクツ、米国)であり、ガス発生室102からのチューブ104が、メス型カップッリングに対するオスとなり、密閉可能な口103が、それに相当するカップッリングとなっている。二重閉鎖の特徴の利点は、ガス発生室102または滅菌室101を、その場の環境に開放することなく、取り外しが可能であることである。したがって、滅菌剤ガスは滅菌室101に密閉され、ガス発生室102からの残存ガスは、スクラビング工程となるまで密閉されて保持される。
【0061】
この装置100は、流体的に滅菌室101に連通している、または取り入れバルブ106の位置によっては連通していない、電子駆動あるいは手操作のポンプ105をもつ区画を有している。この取り入れバルブ106は、手動であっても、マイクロプロセッサ110でコントロールされたものであってもよい。ポンプ活性化の時点で滅菌室101に流体的に連結している場合に、この取り入れバルブ106により、ポンプ105が滅菌室101及びガス発生室102に含まれるガスを除去する。このガスは、スクラビングシステム107に送られ、そこで不活性化されて、排気流からこれらのガスが除かれる。ポンプ105とスクラビングシステム107の内腔を含む容器は、取り入れバルブ106の位置によっては、滅菌室101に流体的に連通していてもいなくてもよい。この装置100は、滅菌サイクルの完了後、バルブとポンプ105が活性化され、滅菌室101から取り入れバルブ106を経由しスクラビングシステム107にガスが流れ、排気弁108を通じて、ガス流を装置100の外に導くか、OSHAまたは他の規制機関の基準やガイドラインに適応するガスレベルにまで下げるために、さらに長時間、ガスをスクラビングシステム107にもどすために滅菌室101に戻すように設計されている。このようなガスの再利用の際には、ガスの再利用プロセスの間にガス流が拾う可能性のある微生物汚染物が(ポンプ105、スクラビングシステム107、必要なチューブ中で、滅菌室101とこれらの要素間の流体的な連通のために発生する汚染)が滅菌室101に入らないように、滅菌室に戻るガスは、滅菌エアフィルタ109に通される。
【0062】
ガス状NOには特定のリスクがあり、特別な輸送方法や取扱い手法が必要となる。高濃度のNOへの暴露は有害である。職業安全衛生管理局(OSHA)は、現在の生命と健康に直ちに危険なレベルを、暴露の影響が健康または生命に脅威となるまで最大の30分間で100ppmに設定した。OSHAまたは、8時間で平均25ppmを職場のNOレベルに設定した。致死量のNO発生の危険があるため、いずれの装置または輸送システムにも、漏れたNOが吸引や暴露により人に被害を及ぼすリスクを上げるような形態あるいはレベルでのNOの周辺の環境への漏洩を防ぐ手段を備えている必要がある。二酸化窒素の形成は大きな健康上の脅威となる。NO2に対するOSHAの基準は、8時間で平均1ppmである。
【0063】
本発明のシステムにより利用者のガスへの暴露が減少する。本発明のシステムおよび方法は、スクラビングと呼ばれる滅菌剤ガスの除去及び/又は解毒システムを含んでいる。本発明の方法は、好ましくは滅菌または殺菌処理後の材料を滅菌室から回収する前にガスを除去及び解毒するスクラビングプロセスを含んでいる。このスクラビングプロセスは、いろいろなNOやNO2、NOXの除去・解毒方法を含む。スクラビングシステムやプロセスは、NOを捕集するのに吸着剤を用い、酸化剤を用いてNOをNO2に変換してもよい。適当な条件では、この滅菌剤ガスを外部環境に排出可能であり、その際、高濃度のNOとNO2、NOXは、容易に散逸する。このスクラビングプロセスを、市販のスクラビング装置、例えばブッチアナリティカルB−414(米国)を用いて作ってもよい。理想的には、このスクラビング装置により、排ガス中のNOやNO2、NOXのレベルが、OSHA−LTWA未満のレベルとなることが好ましい。また、Basile R.「酸化窒素の排出方法」、http://www.finishers-management.com/may2002/nox.htmを参照されたい。この方法が速やかに作用することがまた好ましい。
【0064】
本発明の方法により、利用者がOSHAの基準を超える濃度のNO、NO2、及び/又はNOXに暴露されないことが最も好ましい。ある好ましい実施様態においては、滅菌室を開放する前に、滅菌室からガスを除去する。ある場合には、例えば屋外で使用の場合には、ガスの除去せずに滅菌室を開放してもよい。滅菌剤ガスへの暴露を抑えるため、本発明のシステムや方法は、スクラビングとよばれる滅菌剤ガスの除去・解毒システムを備えている。
【0065】
実施例2、3、及び4は、プラコール及びプラフィルセレクト(プラフィル、米国)を用いる効果的なスクラビングシステムの例を示す。当業界の熟練者は、窒素酸化物混合物に対するスクラビングシステムには数多くの構成が存在しうることを理解するだろう。本発明のある実施様態においては、この滅菌システムは、軽量で、電力(電池を含む)を必要とせず、完全に自立型である。このシステムの中心は、再利用可能で密閉可能な滅菌室、使い捨てのガス発生室、及び連結チューブからなる。再利用可能な滅菌室に、滅菌する手術装置または他の材料を入れ、密閉し、一酸化窒素(NO)供与体と酸性活性化剤が前もって充填されるガス発生室に連結する。次いで、水をガス発生室に添加し部屋を密閉すると、生成したガスが滅菌室に流入する。ガス透過性で液体非透過性のバルブが二つの部屋を隔離し、それぞれの部屋の内容物の混合を防止する。本発明のある実施様態においては、この滅菌剤ガス発生組成物は、わずか約2秒間〜約30秒間の間に、滅菌対象物に十分な量のNOを放出することができる。炭素系のジアゼニウムジオレート化合物類は、対象物を滅菌させるのに十分な量のNOを、わずか約2秒間〜約30秒間で放出することができる。5分間で滅菌は十分であるが、安全のためにはさらに10分が必要であろう。
【実施例1】
【0066】
「異なる一酸化窒素輸送量での滅菌」
血液保管容器(ネクセル、米国、ライフセルPL732プラスチック組織培養フラスコ)を滅菌室として用いる。帯状のステンレス鋼板を、1.06CFU/ml(ABS595標準曲線を用いて決定)の胞子形成のB. subtilisvar. nigerに浸漬する。この板を空気乾燥し、滅菌室に入れ、滅菌室を熱シールする。この滅菌室を、注射器を用いて、滅菌室バルブで気流を調整しながら脱気する。目盛りつきの注射器を用いて既知量の空気を容器に投入する。
【0067】
NO発生供与体化合物を7ccのガス発生室に入れる。このガス発生室を、ルアーロックコネクターを通して保管容器に繋げる。液体活性化剤である3.0N−HClをガス発生室に添加し、生成するガスを滅菌室に流入させる。しばらくガスを発生させた後、圧縮バルブを用いてガスを滅菌室内に密閉する。
【0068】
NOガスの量を変え、具体的には10%、5%、2.5%、及び1%NOとして、滅菌室内での効果を試験する。滅菌室に投入する生成NOガスの量(%)は、所望のNO%となるのに必要なNO発生モル数から計算する。この計算では、用いるNOガス発生化合物の質量を決定するのに、理想気体の法則とNOガス発生化合物(本試験ではジアゼニウムジオレートNO供与体)の化学式量とを用いる。
【0069】
1%も含む試験した濃度すべてにおいて、5分間で106CFU/mlの胞子形成のB. subtilisvar. nigerを殺菌するのに有効である。なお、殺菌力は、汚染したスチールストリップをLB中で37℃で、激しく48時間振盪し、次いで寒天板上で平板培養して求める。コントロールでは、NOに代えて追加の%の窒素を添加する以外同様に処理する。コントロールのステンレス鋼板は、上記条件下で24時間培養すると、目に見える成長を示す。
【実施例2】
【0070】
「携帯型の滅菌室からのNOとNOXのスクラビング」
滅菌剤ガスを滅菌室で使用した後、スクラビング媒体を含むもう一つの部屋に室内のガスを導く。この排出ガスを、スクラビング媒体の上に存在させる。
【0071】
二枚の300mlのPL732組織培養バッグ(ライフセルPL732プラスチック組織培養フラスコケース、米国)を、チューブを用いて相互に連結する。ホースクランプを用いて、二つのバッグ間の連結を切る。「スクラビング」バッグ用の一方のバッグを切り開き、前もって測定された量のスクラビング媒体(6.0〜60グラムのプラフィルセレクトとプラコールの1:1混合物)をバッグに入れる。開口部はその後、熱シールする。両方のバッグを注射器で脱気する。空気(180cc)を滅菌室用のバッグに注入する。その後、20ccのNOガスを注入し、終濃度で10%NOとする。NOと空気の混合物を、5分間滅菌室に存在させる。その後、ホースクランプを除き、滅菌袋を圧縮して、すべてのNOXガスをプラフィルセレクトとプラコールとを含むスクラビングバッグ中に押し出す。その後、このホースクランプを取り付ける。その後直ちに、スクラビングバッグ中の雰囲気の試料(0.1〜1.0cc)を取り出し、NO濃度をppbまで測定可能なNO検出器に注入する。その後、スクラビングバッグ中の雰囲気の1.0cc試料を、定期的に取り出し、このNOX検出器に注入する。続けて三回試験した結果を表1に示す。連続試験中に、スクラビング材料を変える必要はない。
【0072】
【表1】

【実施例3】
【0073】
この実施例は、NOXガスを、容器に連結されたスクラビング媒体の詰まったチューブに通すことによりNOXをスクラビングする方法を提供する。チューブ(内径3/8インチ、外径1/2インチ、長さ30インチのシラスチックチューブ)に、13.3グラムのプラフィルセレクトとプラコールの1:1混合物を詰める。この過程で媒体の一部が粉砕される。チューブ末端にはガラスウール栓を挿入する。チューブの各末端は、別々のプラスチック組織培養バッグ(ライフセルPL732プラスチック組織培養フラスコ、ネクセル、米国)に繋がっている。一方のバッグは、インラインのバルブを有している。このバッグ中の雰囲気を除きバルブを閉める。一方のバッグは滅菌室であり、180ccの空気と20ccのNOガスとを注入する。このガスを5分間、滅菌バッグ中に存在させる。次いで、このバルブを開き、チューブを通して受け手側のバッグにガスを押し出す。受け手のバッグの雰囲気試料0.5ccを上記NOX検出器に注入する。結果は、受け手のバッグ中のNOX含量が30ppbであり、OSHAガイドラインよりはるかに低い濃度であることを示す。
【実施例4】
【0074】
「NOとNOXの滅菌室からのスクラビング」
密閉可能なケース(ペリカンプロダクツ社、米国)に、EFC12シリーズのクイック・ディスコネクト・カップッリング(コウルダープロダクツ社、米国)からなる注入口とケースを上部と下部にほぼ同体積に分割する自己シール性のガスケット縁をもつプラスチック棚を取り付ける。上部が滅菌室であり、その体積は20.3リットル(4.5×19×14.5インチ)である。滅菌室の一つの注入口は、既知量のNOガスを滅菌室に投入するのに使用され、必要に応じて循環流の形成に用いることもできる。NOガスの添加の段階と滅菌サイクルの時間をあわせるための5分間の期間は、ケースの反対側の排気口を、遮断状態(密閉状態)にしておく。
【0075】
下部の室は、ポンプ、マイクロプロセッサ、存在する場合は電気部品、バルブ、スクラビングシステム、滅菌エアフィルタ、また必要に応じて他の部品を有している。スクラビングシステムが排気口に連結され、そのチューブは、EFC12シリーズクイック・ディスコネクト・カップッリングのオス型末端を有している。排気口とは反対側で、このチューブは、ポンプ(ガスト社、米国、型式:DOA−P104−AA、流量:35リットル/分)に繋がり、さらにスクラビングシステムを含む複数のカラムに繋がっている。一つのカラムにはプラフィルセレクト(米国)が充填され、他方のカラムにはプラコール(各カラムに約200〜300グラムの材料)が充填される。NOを上部の滅菌室に注入し、5分間維持する。5分後に、EFC12シリーズクイック・ディスコネクト・カップッリングのオス型末端を排気口のメス型末端につないでスクラビングシステムを連結し、注入口を開き、ポンプを作動させる。ポンプの作動の前に、EFC12シリーズクイック・ディスコネクト・カップッリングのオス型末端と滅菌エアフィルタ(ACRO50、ポール社、米国)を持つチューブを使用して、ポンプの排気を滅菌室にNOを投入するのに用いたのと同じ注入口から滅菌室に導く。滅菌室からのガスは、1分間ポンプ作動後に、ゴムの隔壁を備えたインラインサンプリング容器から、注射器を用いてサンプリングする。試料ガスを、サーモエンバイロメンタル(米国)の42C化学発光NOX検出器で注入して定量する。また、NO保管容器からのNOも正のコントロールとして、同じ装置に注入する。例えば、ガスを添加し、ガス発生室を遮断し、排気口からのチューブを、もともとNOを投入した「取り入れ口」に取り付けることで、このシステムは再循環可能であり、ポンプを作動させると、ガスがシステム内を循環する。
【0076】
1%のNOを注入しこの装置を用いて一連の試験を四回実施する。1分間、排気口からのガスを、取り入れ口から(滅菌室の汚染を防止するためエアフィルタを使用して)再循環後、上述のように、滅菌室のガス含量をサンプリングし測定すると、ほぼすべてのNO及びNOX成分が除去されていることがわかる。四個の試料すべては、NO検出器のベースラインを上げることなく、約2ppbと推定される値を与え、これは、OSHAのガイドライン(NOは25ppm、NO2は1ppm)をはるかに下回る。
【0077】
5%のNOを添加して試験を行う。密閉ケースから1リットルの空気(5%)を除いてから5%のNOを添加し、試験を大気圧下で行う。次いで、1リットルのNOを密閉滅菌室に投入し、5分間存在させる。次いで、上述のようにスクラビングシステムを作動させる。いずれの試験においても、1分間のガス再循環後に、試料は約4ppbのNOとNOXを示し、これはOSHAガイドラインよりはるかに小さい。プラフィルセレクトとプラコールのカラムは、これらの6試験の間に交換しない。
【実施例5】
【0078】
スクラビング後のNOガスタンク源にガラス圧力容器を連結する。この圧力容器を、5時間、アルゴンガスで置換して大気酸素を除き(NO2・形成の防止)、さらにNOを三回置換して純粋なNO雰囲気を作り、殺菌活性値の変動を抑えるようにする。滅菌方法の試験のためには、Bacillus subtillis var niger 9372(>80%内生胞子成形後、エチレンオキシド及びオートクレーブ試験の標準)、および表皮に広く見られる生物、例えば黄色ブドウ球菌(strain 21769)とStaphylococcus epidermides(strain 21977)、及び腸溶性生物:Klebsiella pneumoniae(strain 21991)とSerratia marcesens(strain 21140)を使用した。このセラチア株は、前回の試験において培養中にNOの殺菌効果に最も耐性を有するバクテリアの一つとして見出されたものである。Raulli R et al., Recent Res Devel Microbiol 6:177-183、2002を参照のこと。なおこの文献の全体を引用として本明細書に組み込むものとする。
【0079】
これらの生物を脳心臓浸出物BHI中で一夜培養する。培養は、各生物のABS595標準曲線により少なくとも108CFU/mlまで行う。短冊状ステンレス鋼板3×1cmを培養液に浸漬し、まず大気中で乾燥するか、まだ培養液で濡れている状態で圧力容器に入れる。このステンレス板を、45分間から少しずつ時間を減らして、最終的には5分間、大気圧下でNOガスに暴露させる。コントロールの試料も同様に処理する。ただし圧力容器は窒素で置換する。
【0080】
【表2】

【0081】
すべてのNOをアルゴンで置換後、密閉した容器を、注意して層流フード中で開く。試料を滅菌箸で無菌的に取り出し、無菌のBHI培地を含む培養チューブに入れる。これらの試料を、激しく振盪している35℃の水浴中で培養する。24時間後に試料を観察(デジタル写真)し、水浴中にもどし、72時間後に吸光度を測定する。コントロールは、24時間後に>108CFU/mlの値を持つ。表2に示す結果は、3回の別々の試験によるもので、結果(3/3)は、3回の試験で三回とも細菌の成長がないことを示す。
【実施例6】
【0082】
実施例1と同様に、血液保管容器や他の試験室部品を用いて携帯型システムを作製する。このシステムでは、血液保管容器(ネクセル、米国、ライフセルPL732プラスチック組織培養フラスコ)が滅菌室となる。このシステムは複数の注入口を有し、チューブや他の部屋に容易に接続が可能で、また汚染/滅菌試料の挿入や除去のために容易に切断や熱シールが可能である。この熱シールは強固であり、試験的に1ATMの圧力を用いても圧力に十分耐える。相互に連結した二個の60ml注射器と三方栓を備えたチューブとを使用し、一方の注射器に入った酸性の緩衝剤と他方の注射器に入ったNO放出ジアゼニウムジオレートとを混合する。このチューブは血液容器/滅菌室に連結されている。
【0083】
この止め栓を開いて、酸性緩衝剤をジアゼニウムジオレートを含む注射器に添加する。緩衝剤注射器につながるこのバルブを閉じ、滅菌室へのバルブを開く。300ccの滅菌室は、約15秒間で膨張する。試験は上述のように行うが、圧力容器に代えて上記システムを使用する。
【0084】
試験する生物はBHI中で一夜培養する。培養は、各生物のABS595標準曲線より、少なくとも108CFU/ml(FDA試験ガイドラインより100倍大きい)になるまで行う。短冊状ステンレス鋼板3×1cmを培養液に浸漬し、まず大気中で乾燥するか、まだ培養液で濡れている状態で圧力容器に入れる。滅菌室内に入れる前に乾いた試料を滅菌BHI媒体に浸漬する。この方法は、B.subtilis(内胞子形成)、B.subtilis(休止期)、S.marcesens、またはS.epidermidesで汚染された湿った浸漬短冊状ステンレス鋼板に対する、15分間での殺菌活性を示すが、滅菌をより短時間で実施することも可能である。
【0085】
【表3】

【実施例7】
【0086】
本例では、医学関連材料、例えば針やプラスチックチューブの滅菌を試験する。テフロン(登録商標)(内径:1/8インチ)、ポリエチレン(内径:1.77mm)、ビニル(内径:0.5mm)チューブ、及び30ゲージの使い捨て針を、合計約108CFU/ml試料のB.subtilis、S.marcesens、とS.epidermidesの細菌混合物中に浸漬する。これらの試料を滅菌室に入れ密閉する。それぞれ、チューブ内腔(チューブ内の開放空間または空洞)または針に、少なくとも少し接種物が肉眼で認められる。表4はこの試験の結果を示す。各材料のコントロールは、24時間以内に、ABS595標準曲線から求められる濃度で、少なくとも合計106CFU/mlに到達する。
【0087】
【表4】

【実施例8】
【0088】
「生存細菌への湿度の影響」
この実施例では、いくつかの加湿パターン及びガス滅菌シールパウチを通しての滅菌効果を試験する。バクテリア混合物を用い、約108CFU/mlまで増殖させ、等体積を混合する。短冊状ステンレス鋼板を浸漬し、乾燥し、三方法(A、B、C)のいずれかで分析する。方法A:試料を湿ったキムワイプで覆う。方法B:試料を乾燥状態で放置する。方法C:試料を乾燥し、ガス滅菌やオートクレーブ滅菌用のV.ミュラーTMデュアル・ピール・シールパウチ中に密閉する。方法BとCの試料は、湿ったキムワイプとともに滅菌室に入れる。滅菌室に入れる際には、キムワイプと試料ができる限り離れるようにする。部屋を再度、注意して密閉し、試料のキムワイプに対する相対的な位置が変化しないようにする。各試料を、1気圧で15分間滅菌サイクルに曝し、上述のように滅菌条件下で取り出し、試料をBHI培地に入れる。試験試料はNOガスに暴露し、コントロール試料は、同様に処理するが、滅菌室は窒素で置換する。この結果を表5に示す。コントロールはすべて、24時間以内に、ABS595標準曲線から求めた濃度で、合計106CFU/mlに達する。
【0089】
【表5】

【0090】
この試験により、二つの非常に重要な発見が得られる。一つは、NOが乾燥試料を室内で滅菌するため、生バクテリアで汚染された試料の滅菌にはキムワイプからの水分の添加を必要としない。第二の発見は、密閉した包装材内で滅菌が可能で、滅菌室を開放した後も装置の滅菌性を維持できることである。この滅菌方法がガス発生化合物を使用する場合、電力を必要としない携帯性の高い軽量な方法を提供することとなる。
【実施例9】
【0091】
「胞子に対する湿度の影響」
この実施例では、NOとNO2/N24の両方を滅菌ガスとして使用する胞子の滅菌に対する湿度の影響を取り上げる。試験は300mlのガラス容器で行う。試験の手順は次の通りである。40マイクロリットルの水を容器に加え、その容器をパラフィルムを密閉して、容器の半分を加湿する。試験中40mlの水で前もって加湿された容器の内部には、凝縮水が観測され、装置内が高湿度であることを示す。水が入っていない容器では、容器内壁には凝縮水が認められなかった。
【0092】
この容器を30分間静置させる。それぞれラベン製の生物指標(製品番号:33677713-6100ST)の入った二個のタイベックサッシェを、各容器に入れる。これらの容器を次のように置換する。容器を8インチHg(絶対圧)まで脱気する。大気圧となるまで、容器に空気を再投入する。脱気/空気投入をさらに二回繰り返す。この容器を8インチHg(絶対圧)まで脱気する。滅菌ガスをこの容器に導入する。圧縮空気(9%相対湿度)を添加して、容器を大気圧にもどす。二個のサッシェは、50分または100分間、滅菌環境下に放置し、その後取り出す。BIは、55〜60℃の4ミリリットルのトリプチックソイ培地中で14日間培養する。
【0093】
結果を次の表6に示す。
【0094】
【表6】

【0095】
これらの試験は、胞子の殺菌に湿度が重要であることを示す。追加の滅菌サイクル試験によると、湿度のレベルが相対湿度で40%〜80%の場合には、胞子が室温で死滅する。
【実施例10】
【0096】
「粉末酸の試験」
好ましい滅菌剤ガス発生組成物は、窒素系のジアゼニウムジオレートとシュウ酸からなる。ジアゼニウムジオレートに対して10:1のモル比でのシュウ酸を添加すると、滅菌剤ガスが発生し、約20秒以内にジアゼニウムジオレートからのNOで血液保管容器が満たされる。このため、NOを発生させるのに3N−HClをジアゼニウムジオレートに添加する必要がなくなり、水の添加でNOガスの発生ができるようになる。酸が不要となるため、装置の輸送、保存、使用が大幅に容易となる。
【0097】
炭素系のジアゼニウムジオレート(窒素系のジアゼニウムジオレートは、分解して発がん性のニトロソアミンを発生させる可能性がある)と活性化用の粉末酸を前もって充填することができる使い捨てのプラスチックガス発生室は、水の添加が容易となるように大きな蓋付の開口部を有し、また滅菌室にガスを輸送する適当な付属ラインを有している。必要なら真空を形成するためや部屋からNOガスを(再使用可能なNOXスクラビングシステムを経由して)放出するための他のユーティリティーラインや注入口をさらに設けてもよい。
【0098】
柔軟性や破壊耐性、軽量性、生産性から、ポリオレフィン材料が選択される。その寸法は約10インチ四方の正方形である。滅菌室の底の端部には、迅速かつ容易に装置を導入し再密封できような、「ジップロック」のような再密閉可能な開口部を有する。利用者が装置をパウチに入れた後、タブを簡単に速やかに動かすことでパウチの上部が密閉でき、完全なガス密閉シールとなる。
【0099】
パウチ滅菌室の一方の端部には、チューブ口と約10インチのチューブが設けられ、ガス発生室との接続を行う。輸送チューブの末端は、ガス発生室との接続を容易とする「クイック・ディスコネクト」接続部であり、各チューブは、チューブ閉鎖用の圧縮ローラーバルブを有している。
【0100】
滅菌室はポリオレフィン材料でできており、3.5インチ四方の正方形で、簡単に粉末や水を充填するための、容器の上面から突き出している大きな硬質のプラスチックのネジ蓋を有している。この部屋は、ルアー接続口を有し、滅菌室との接続が容易となっている。
【実施例11】
【0101】
「亜硝酸金属塩からのNOガスの発生」
固体状の亜硝酸金属塩(例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸マグネシウム)を液体の酸溶液(例えば、硫酸、マレイン酸、塩酸、亜硝酸、硝酸)またはプロトン供与体の溶液と反応させると一酸化窒素及び/又は二酸化窒素が生成する。亜硝酸金属塩の溶液を調整し、固体状の酸粉末の溶液と反応させると一酸化窒素及び/又は二酸化窒素が生成する。もし金属塩と固体状の酸の粉末を粉末状態で混合すると、水の添加で二種の粉末の反応が開始することとなる。亜硝酸金属溶液と酸溶液を両方使用すると一酸化窒素ガスが生成する。この種の反応では亜硝酸が得られ、この亜硝酸は、経時的に分解して一酸化窒素と二酸化窒素になる。本発明の方法とシステムを使用して、このNOガスを、生物指標または対象物や材料の滅菌に使用することができる。
【0102】
例えば、マレイン酸とNaNO2とを20mLのバイアル瓶に加え、このバイアル瓶を1Lのジャーに入れる。密閉したサッシェ(NO発生系に向かってタイベック)に入れた二種のBI(ラベン:ロット番号:3367552)をこの1Lジャーの内部に入れる。注射器を用いて5mLの水をこの粉末に加える。10分後に、これらのBIを4mLのトリプチックソイ培地に入れ、14日間55〜60℃で保持する。あるいは、サッシェに入ったBIを、1Lのジャーの縁に貼り付け、タイベックがNO源に面するようにしてもよい。また、空気をジャーから除いてもよい。針を使って水を、ジャー中のマレイン酸とNaNO2とを含むバイアル瓶に添加することもできる。10分後に、これらのBIを4mLのトリプチックソイ培地に入れ、14日間55〜60℃で維持する。あるいは、粉末状のマレイン酸と粉末状のNaNO2の混合物を入れるのに水溶性のカプセルを用いて、滅菌サイクルの初めに水に溶解してもよい。
【0103】
表7は、適当な量のNOガスを発生させ所定時間に生物指標を滅菌可能な、いろいろな組合せの量と比率の亜硝酸ナトリウムとマレイン酸を示す。
【0104】
【表7】

【実施例12】
【0105】
「可溶性の炭素系ジアゼニウムジオレートの合成」
いろいろな窒素系ジアゼニウムジオレートが市販されており、この用途に利用できるが、窒素系ジアゼニウムジオレートの高発がん性ニトロソアミンの生成能力のため、医療用途での利用には制限がある(Parzuchowski et al.,2002、上述)。炭素系のジアゼニウムジオレートは、ニトロソアミンを生成せず、窒素系のNO供与体よりモル当たり3倍以上のNOを生成する。炭素系のNO供与体を使用することで、製品の全重量を減らした上で、安全性をあげることができる。
【0106】
炭素系のジアゼニウムジオレートは、ベンジル系の中間体を使用して製造できる。ベンジルメチルエーテル、PhCH2OCH3(シグマアルドリッチより市販、米国)が、一つの出発原料である。パール圧力容器中で、3ml(0.024モル)のベンジルメチルエーテルを30mlのメタノールに添加する。この溶液に、11ml(0.048モル)の25%ナトリウムメトキシドを攪拌下に添加する。不活性ガスによる加圧と放圧とを繰り返して(10)、フラスコから酸素を除去する。この溶液を40〜80psiのNOガスに室温で1〜5日間暴露する。NOガスの消費がなくなると反応は完結しており、ヘッド空間のNOガスで置換で除く。ジエチルエーテルを加えて、アニオン性のジアゼニウムジオレート塩のすべてを沈殿させ、沈殿は濾過、乾燥する。生成物、PhC(N22Na)2OCH3のNO放出能力を以下に述べる化学発光法で試験し、吸光分光分析、元素分析、およびNMRによる構造確認を行う。
【0107】
他の合成スキームは、市販のベンジルチオシアネート(PhCH2SCN、シグマアルドリッチ、米国)によるものである。パール圧力容器中で、3g(0.020モル)のベンジルチオシアネートを30mlのテトラヒドロフランに添加する。この溶液に、40ml(0.040モル)の1.0Mナトリウムシラノレートを撹拌下に添加する。不活性ガスでの加圧と放圧を繰り返して(10)、フラスコ内の酸素を除去する。この溶液を次いで40〜80psiのNOガスに室温で1〜5日間暴露する。NOガスの消費がなくなると反応は完結しており、ヘッド空間のNOガスで置換で除く。ジエチルエーテルを加えて、アニオン性のジアゼニウムジオレート塩のすべてを沈殿させ、沈殿を濾過、乾燥する。生成物、PhC(N22Na)2SCNのNO放出能力を、以下に述べる化学発光法で試験し、吸光分光分析、元素分析、およびNMRの構造確認を行う。
【0108】
NO発生に好ましい滅菌剤ガス発生化合物はこれらの炭素系のジアゼニウムジオレート化合物である。これは、酸性条件下でのNO放出速度が速く理想に近いからである。同様なNO供与体の選択基準は、収率とコストである。
【実施例13】
【0109】
「ジアゼニウムジオレートからのNO放出の測定」
ジアゼニウムジオレートから放出されるNOの測定方法は、Smith DJ et al.,J Med Chem 39:1148-1156、1996に記載の方法による。なおこの文献の全体を引用として本明細書に組み込むものとする。試料の重量を記録し、試料を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解し、混合物を、25℃の水浴中、空気開放化で放置する。この緩衝液に、容器の底よりガラス濾板製の管を通してアルゴンガスをパージして、流出ガスがNO含量測定用の校正済み化学発光NOX検出器を通過するようにする。値が安定して極微量となるまでバブリングを継続し、数分の間隔でシグナルを積分する。保証品のNO/ヘリウム標準ガス(MGインダストリーズ、米国)を用いて得られた積分と比較して、積分値をNOのモル数に変換する。信号の積分値を積分時間(分)で割って計算した一定期間ごとのNOの放出速度を、試料を最初に緩衝剤に入れた時点からの総経過時間に対してプロットする。
【実施例14】
【0110】
「環境中のNO含量」
NOに関するすべての試験は、保証品のヒュームフード中で行う。NOは環境汚染物質であり、濃度が100ppmを超えると人に有害となりうる。合成容器または滅菌室に含まれるNOは、10倍体積の周囲空気を含む容器中に5分間かけて投入する。この工程中にすべてのNOがNO2に変換される。滅菌室からのNO2は、次いでNaOHのカラムを通過し、そこでNO2が効果的に除去される。これは、工業的な処理にしばしば用いられるよく理解された方法である(Basile、2002)。
【実施例15】
【0111】
「周囲温度での滅菌サイクルの最適化」
周囲温度(約22〜24℃)での滅菌サイクルに関する次のパラメーターを最適化する:サイクル所要時間、許容空気パーセント、湿度、内部圧力(NO量)、および滅菌対象装置の特性(装置の表面積、装置の種類[即ち、狭い内腔、行き詰り内腔]、滅菌パウチ内充填材料の使用、塩付着装置、タンパク質付着装置)。試験に選択した生物指標(BI)は、胞子形成のBacillus subtillis var nigerであり、これは、Et2Oプロセス認証に用いられる標準的な生物であり、また他の滅菌プロセスの認証にも広く使用される生物である。Hoxey EV et al.,J Appl Bacteriol 58:207-214、1985を参照されたい。なおこの文献の全体を引用として本明細書に組み込むものとする。
【0112】
振盪水浴中37℃で、ルリアブロス(LB)培地中でB. subtillis var niger 9372を一夜培養する。通常この結果、濃度が108CFU/mlを超える。一夜培養後の液のそれぞれのABS595を測定し、標準曲線と比較して、概略の濃度CFU/mlを求める。滅菌LB培地で希釈して、培養濃度を106CFU/mlとする。次の方法により、細菌を胞子形成状態とする。Sterlini and Mendelstam、 Biochem J.113:29-37、1969(1969)に記載のように、培養液を、2500RPM(1000×g、ソーボールGLC−1)で5分間遠心分離し、低栄養塩培地に再懸濁する。この細菌をこの胞子形成培地で二回以上洗浄し、最後のペレットを適当な量の胞子形成培地に懸濁し、濃度を106CFU/mlとする。通常この方法により、80%を超える内生胞子成形となる。
【0113】
二枚の短冊状ステンレス鋼板、長さが1インチ、内径が1/8インチのテフロン(登録商標)(R)チューブ、および(ポリエチレン)テレフタレート(PET)ストリップを、一般的な滅菌サイクルパラメーターの試験に用いる。これらの三種の材料、短冊状ステンレス鋼板、テフロン(登録商標)チューブ及びPETストリップを、それぞれ、「材料パネル」品目と呼ぶ。この材料パネルからの品目を106CFU/mlの内胞子形成の細菌懸濁液に漬けるためである。NOガス滅菌品と同じ条件で、二枚の材料試料を、滅菌室で窒素と接触させる以外は同様に処理する。処理後、これらの材料をLB培地に入れ、振盪水浴中、37℃で24時間培養する。24時間後にコントロールと処理グループの培養培地を肉眼で観察するとともに、その写真をとる。一部を取り出し、滅菌LBで希釈し、LB寒天板にのせて、濃度CFU/mlを測定する。培養をさらに24時間続けて合計48時間とし、必要ならABS595を48時間目に測定する(さらに確認写真を撮る)。摂取されたLB寒天板を、37℃で培養し、コロニーの成長を、植菌後24時間と48時間とで評価する。
【0114】
滅菌プロセス後の材料に由来するプレート上のコロニーはすべて試験し、その細菌がB. subtillis var nigerであるか、形態観察、グラム染色及び/又は他の必要な手段で確認する。LB中で増殖する培養物には、同じ確認作業を行う。滅菌プロセスに暴露後に材料上でB. subtilis var nigerが増殖するような変数は、使用可能範囲外の変数と考えられる。
【実施例16】
【0115】
「滅菌サイクル時間の滅菌効率への影響の評価」
材料の滅菌を、材料パネルを室温で5、10、20、40、80、120分間滅菌して試験する。各処理グループ、コントロールグループを同様に処理する。ただし、コントロールでは、NOに代えて窒素ガスを使用する。試験は三回繰返す。滅菌成功の基準は、どの時点においても三回の試験すべてで0CFU/mlとなることである。三回のうち一回の失敗(正のB. subtillis var nigerの培養)は、その測定での失敗と考える。
【実施例17】
【0116】
「周囲温度の滅菌効率の影響」
材料パネルの品目を、106CFU/mlのB. subtillisのLB培地に浸漬する。前回の試験データを用いて、最短から二番目の成功時間を用いて、適当な時点を選択する。例えば、5分で成功するなら、10分を使用する。試験は、−10℃〜50℃の間で10度ずつ温度上昇させながら実施する。極限温度でうまくいかない場合は、温度を10℃ずつ増加または減少させて試験を繰返し、好ましい結果がでるようにする。−20℃〜20℃の温度を可能とする、校正ずみの冷蔵庫で低温試験を行う。20℃を超える温度では、試験を標準的なインキュベーター中で行う。滅菌装置の部品を、滅菌プロセス試験の前に20分間、試験温度に平衡化させる。各処理グループに対して、コントロールグループを設けて同様に処理する。ただし、NOに代えて窒素ガスを使用する。成功は、いずれの温度においても三回の試験で0CFU/mlとなることである。三回の試験で一回の失敗(正のB. subtillis var nigerの培養)は、その測定の失敗と考えられ、これが測定パラメーターの限度を設定する。
【0117】
高い周囲温度と処理に用いられるNOガス圧との間には、相互依存の関係がある可能性が高い。高温では、小さなNOガス圧でも効率の低下がないと考えてもよいだろう。これは必ずしも問題にはならないであろう。外に表れる問題は、冷凍温度条件下での滅菌室の湿度を上げる能力である。この場合、滅菌室を加湿できないと、冷凍温度での本方法の使用を制限することとなりかねない。
【実施例18】
【0118】
「滅菌室内の最適湿度条件の評価」
作製した滅菌室試作品を、湿度計の探針が挿入できるように改造する。非硬化性のケイ素封止剤を用いて、この探針を部屋内部に密閉する。2〜98%の範囲の相対湿度(RH)が測定可能なNISTトレーサブル湿度計(フィッシャーサイエンティフィック)を、湿度レベルの測定に用いる。装置の校正は、混合により10〜80%のRH環境、例えば11、43、75%のRH環境を作ることのできる複数の塩溶液を入れた専用の窒素ガス室を用いて、週一回の頻度で実施する。
【0119】
滅菌室に再現可能なRHレベルを作る方法は公知であり、その後、材料パネルの品目を、B.subtillisで汚染させ、周囲空気で乾燥させ、適当な重量の水(試料の吸着水)とともに滅菌室に置く。上記の滅菌プロセスは、10〜80%の範囲内で直線的に変化するRHで、例えば10〜15%RH、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%のRHで、試験する。室温以外の試験温度で行う試験では、滅菌プロセスの開始前に、試験温度に20分間、平衡化させる。また、最短から二番目の効果時間が用いられる。いずれのRHレベルでも、成功とは三回の試験ですべで0CFU/mlとなることである。三回の試験で一回の失敗(正のB. subtillis var nigerの培養)は、その測定の失敗と考えられ、これが測定パラメーターの限度を設定する。
【0120】
例えば、もし滅菌が0%RHでは失敗し15%で有効であるのなら、0〜15%の間で正確に%RHを決める試験を追加して、滅菌室中で必要な加湿及び/又は乾燥のための効果的な条件の範囲を最適化する。
【実施例19】
【0121】
「NOガス圧の滅菌効率への影響」
低圧の圧力計を滅菌室チューブに取り付ける。三方栓(ルアーロック)を直接または短いチューブを経由してゲージに取り付ける。そこより、60ccの注射器または必要ならポンプで真空にする。滅菌室を止め栓で密封してその真空を維持する。滅菌試験に用いるNOガス圧は、ガス発生室中のジアゼニウムジオレート量を、通常レベルの6.8g/1000ccから変更することで調整する。ガス発生室中で1.7、3.4、6.8gms(コントロール)のジアゼニウムジオレートを使用し、試験ではシュウ酸量を10:1の比率に維持しながら滅菌を行う。デッドスペースも考慮されている。成功は、三回の試験0CFU/mlとなることである。三回の試験で一回の失敗(正のB. subtillis var nigerの培養)は、その測定の失敗と考えられ、これが測定パラメーターの限度を設定する。
【実施例20】
【0122】
「周囲空気の滅菌効率への影響」
本方法のNO滅菌の究極のメカニズムが表面凝縮液上での亜硝酸(HNO2)の形成であるため、周囲空気を用いるか排除するかは非常に重要である。本プロセスでは少量の周囲空気を導入することが有利であろう。凝縮水中に溶解している少量のO2が、本発明の方法で使用される条件下で、十分な量の亜硝酸を生成することができる。
【0123】
低圧の圧力計を、滅菌室のチューブに取り付ける。三方栓(ルアーロック)を、直接または短いチューブを経由してゲージに取り付ける。そこより、60ccの注射器を、必要ならポンプで真空にする。滅菌室は止め栓で密封して、その真空を維持する。周囲空気の入った目盛りつきの注射器を止め栓に刺しこみ、既知量の空気を滅菌室に投入できる。ジアゼニウムジオレートは1モル当たり2モルの量のNOを発生することと理想気体の法則を用いて、ガス発生室内のジアゼニウムジオレートの量を、1ATMで、容積1リットル当たり6.8gmに調整する。デッドスペースを決定し、ジアゼニウムジオレートの質量で調整する。滅菌室中で1、2.5、5、10、15、及び20%の周囲空気の体積で試験を行う。25℃と、上記試験で求めた2つの関連する極限温度で、これらの試験を実施する。三回の試験で、材料パネル中のB. subtilis汚染した品目がすべてゼロ成長の場合、結果が良好と考える。三回の試験で一回の失敗(正のB. subtillis var niger培養)は、その測定での失敗と考え、これが測定パラメーターの限度を設定する。低レベルの周囲空気での失敗は、酸素が必要であることを示し、このプロセスにおけるNOに対する作用メカニズムが、亜硝酸の精製に関連している可能性があることの証拠を提供する。
【0124】
周囲空気と湿度との間の相互依存の可能性は、すでに述べた通りである。
【実施例21】
【0125】
「いろいろな窒素酸化物を用いる滅菌」
一酸化窒素と空気の混合物は反応して、多くの異なる窒素酸化物を含む混合物となる。混合物中の各酸化窒素種の濃度は、温度や圧力、一酸化窒素の初期濃度で変動する。いろいろな酸化窒素種の大気下での濃度を、直接測定したり、確立された方法を用いて予測することができる。
【0126】
例えば、湿った空気中でのNO酸化の詳細な化学動力学は、入手可能な化学動力学ソフトウェア(例えば、ケムキン・ソフトウェア)や文献中の動力学データを用いてシミュレーションすることができる。NO空気混合物から得られる組成物や存在化合物種の濃度を予測するのに、密閉系の均一なバッチ型反応器モデルが用いられる。
【0127】
二種の異なるNO初期濃度での解析結果を、下の表6に示す。これらの結果より、5分後に、NOが、NO2、N24、硝酸、亜硝酸HNO3、及び少量のN23とN25に酸化されていることがわかる。
【0128】
【表8】

【0129】
本発明の他の実施様態のシステムおよび方法では、二酸化窒素及び/又は四酸化二窒素などの他の窒素酸化物からなる滅菌剤ガスが使用される。これらの窒素酸化物は、ガス発生室によって供給される一酸化窒素と空気から生成できる。他の実施様態においては、二酸化窒素及び/又は四酸化二窒素を加圧タンクから供給できる。NO2またはN24は、タンク中で高濃度で保存できるし、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスで希釈して低濃度の混合物とすることもできる。あるいは、NO2またはN24を空気で希釈してもよい。
【0130】
このガスまたは混合ガスを、滅菌室に流体的に連結した計量調節器または他の当業界の熟練者には公知のガス輸送方法により滅菌室に送ることができる。
【実施例22】
【0131】
「いろいろな窒素酸化物の滅菌効力」
ガスを正確な量で測定できるガラス容器で試験を行う。試験は、106のBacillus stearothemophilus胞子を摂取したステンレス鋼の板からなる生物指標(BI)を用いて行う。このBI板をそれぞれ、タイベック滅菌パウチに加熱密閉し、ガラス容器に入れる。この容器には、ガスの導入の順序や時期を正確に制御した手順で得たいろいろなガス混合物が充たされている。
【0132】
ある手順では、ガラス容器を3インチHg(絶対圧)に脱気する。滅菌剤ガスとしてNOまたはNO2を、滅菌剤ガスと希釈剤ガスで充填されたとき5%濃度(体積濃度)となる量で添加する。5分後に、大気圧になるまで容器に空気または窒素を添加する。BIは、空気または窒素に10分間曝す。その後、パウチ中のBIを容器から取り出し、微生物学フードに入れる。生物指標をパウチから取り出し、滅菌したトリプチックソイ培地の入ったチューブに入れ、約55〜約60℃で培養し、成長を観察する。
【0133】
胞子の試験結果を表9に示す。
【0134】
【表9】

【実施例23】
【0135】
「特定の窒素酸化物への暴露時間を含む滅菌サイクル」
酸化窒素ガスがチューブ内側の空間または空孔(即ち、内腔)へ浸透し内腔の胞子を不活性化する能力を評価する。用いる胞子は、酸化窒素ガスに最も耐性の強いものである。
【0136】
次の構成の内腔を試験する。
【0137】
(a)17インチステンレス(SS)チューブ、内径:2.5mm、「U」字状に屈曲
【0138】
(b)60インチポリエチレン(PE)チューブ、内径:4.5mm、コイル状、タイベックパウチ内
【0139】
(c)60インチPEチューブ、内径:4.5mm、外径:1.5mm、PEEKチューブを内蔵、コイル状、タイベックパウチ内
【0140】
ワイヤ状の生物指標に、106のBacillus stearothemophilus胞子(ATCC7953)、(ラベンロット:3W67583)を接種し、これらの構造の各チューブの中心に置く。その際、コイル状のポリエチレンチューブは、タイベック滅菌パウチ内に加熱密閉した。
【0141】
各内腔試料は、個別に試験する。ステンレス鋼チューブ(三個の試料:SS−1、SS−2、SS−3)、ポリエチレンチューブ、及びPEEKカテーテル内蔵ポリエチレンチューブをそれぞれ、抵抗性試験装置に入れ、次のガスサイクルに5分間23℃で暴露した。このガスサイクルは、次の通りである。
【0142】
この滅菌室/抵抗性試験装置を脱気し、2分間真空に維持する。次いでNOガスを滅菌室に入れ、真空を1インチHg低下させる。この条件を2分間維持する。次いで、この室が大気圧となるまで空気を加え、その条件で5分間維持する。
【0143】
胞子の試験結果を表10に示す。14日間培養後、コントロールの試料にはすべて細菌の成長が見られ、ガスに5分間暴露した試料には細菌の成長が見られない。
【0144】
【表10】

【実施例24】
【0145】
「不溶性結晶性沈殿の滅菌効率への影響」
多くの研究により、水不溶性の結晶中に閉塞された胞子を、特にガス状の滅菌剤で死滅させることがいかに難しいかが明らかとなっている。例えば、Abbott CF et al., J Pharm Pharmacol 8:709-720、1956;Doyle JE and Ernst RR、Applied Microbiology 15(4):726-730、1967を参照されたい。滅菌効率の測定のために、ドイルとエルンストの方法を、胞子の調整と分離、結晶性の炭酸カルシウム内への胞子の閉塞、閉塞した胞子の回収に用いる。
【0146】
106胞子/mlを含む10mlの1.11%CaCl2溶液を調整する。これに、10mlの1.06%のNa2CO3を速やかに加え、混合物を激しく振盪する。Ca2CO3の結晶が直ちに生成し、大量の胞子が結晶に取り込まれる。この結晶を蒸留水を用いて、三回の20,000×gの遠心分離工程で洗浄する。この結晶を、10mlの蒸留水と0.2%のメチルセルロースに加えて、作業を簡単にする。10μlの結晶懸濁液を、ろ紙上に広げ、室温で乾燥し、さらに90℃で16時間乾燥する。
【0147】
滅菌剤に暴露後、この短冊状の紙を、25mlの3.0%滅菌NH4Cl溶液に3日間0℃で入れ、結晶を溶解させる。この短冊と溶液をブレンダーに入れ、5分間超音波照射する。試料を希釈し、トリプトングルコース酵母エキス寒天に載せて、カウントする。三回の別々の試験でゼロ成長である場合を、好ましい結果と考える。
【実施例25】
【0148】
「長くて狭い閉塞末端を持つ内腔を有する装置での滅菌効率」
多くの研究で、長くて狭く、末端の閉塞した内腔を確実に滅菌することが難しいことが示されている。例えば、Alfa MC,Infect Control Ster Technol April:26-36、1997;およびRutala W Aetal., Infect Control HospEpidemio l19:798-804、1998を参照。本滅菌プロセスのこの種の装置を効果的に滅菌させる能力を調べるため、無孔性のテフロン(登録商標)チューブ(内径≦3mm)を125cmの長さにカットし、B.subtillis var niger(106CFU/ml)の培養液を、60mlの注射器を用いて、チューブ内に挿入する。このチューブを、脱液し、空気乾燥させる。チューブの一部を、ぴったりあった栓で閉鎖する。この栓のガス気密性を、60ccの注射器を用いて少し空気圧をかけて試験する。チューブの一方の末端を密封する他の方法は、ヒートシール、溶媒溶接、クランプ固定である。開放端または密閉端を持つチューブは、折れ曲がらないように注意して巻き、処理用の滅菌室に納める。滅菌処理の終了後、このチューブを4インチ長に切断し、このチューブ断片が完全に漬かるのに十分な量のLBを含む滅菌培養チューブに入れる。滅菌効率は、上述のように評価する。
【実施例26】
【0149】
「封入継手を持つ装置での滅菌効率」
手術用のはさみと鉗子とを、106CFU/mlの汚染ブロスに浸漬して回り継ぎ手の上まで汚染させる。装置を細菌ブロスに漬けて、装置のアーム間に細菌が入るようにしながら、この回り継ぎ手を動かす。この装置を空気乾燥し、滅菌処理にかける。三回の個別の試験においてゼロ成長であれば、好ましい結果と考える。
【実施例27】
【0150】
「各滅菌パウチ内での装置の滅菌」
手術用のはさみと鉗子とを、106CFU/mlの汚染ブロスに浸漬して、回り継ぎ手の上まで汚染させる。この装置を乾燥し、V.ミュラー・デュアル・ピール・シールパウチ(フィッシャーサイエンティフィック)中に密封し、処理装置の滅菌室に挿入する。処理の後、滅菌法で滅菌条件下で、汚染した鉗子を注意してパウチから取り出し、滅菌LB培地を含む培養フラスコに入れ、滅菌効率を上述のように測定する。三回の個別の試験においてゼロ成長であれば、好ましい結果と考える。他の品目、例えば長尺の狭い内腔チューブを、この試験手順に加えてもよい。
【実施例28】
【0151】
「二段処理サイクル」
全体としての滅菌効率は、ガスが微生物に接触する効率と接触する微生物を殺傷する効率とに依存する。本発明の滅菌方法のある好ましい実施様態においては、滅菌用滅菌剤の処理サイクルが、滅菌ガスの装置内への流入と接触する微生物の殺傷とをともに最大にまで増加させる。医療用具の凹部、内腔、間隙、割れ目、接続表面、内表面へのガスの流入は、(特に)ガス分子の大きさや、拡散性、「粘着性」、固体のまたは液体材料の内部や表面への吸着性に依存する。
【0152】
NOは分子が小さく粘着性が低いため、NO2よりも輸送性能に優れることがわかっている。本発明のある好ましい実施様態においては、この滅菌サイクルが二段からなる。一段目では、滅菌対象物の表面からNOが侵入する。二段目では、NOがNO2や他の窒素酸化物に酸化される。このNO2や他の窒素酸化物が、追加の効果的な微生物殺傷モードとなる。この二段方式は、滅菌ガス体積を減少させ、また隠れた表面を持っていたり及び/又は複雑な形状を持つ装置を滅菌するに必要な時間を短縮する。
【0153】
この好ましい二段処理サイクルは、例えば次のように実施される。滅菌される装置を、真空に発生・維持でき、滅菌ガスと空気とを受け入れることができる部屋に置く。この滅菌室を密閉する。この滅菌室を脱気し、真空レベルを3インチHg(絶対圧)未満とする。最終的な滅菌混合ガスとして1〜8%の濃度に相当する量のNOガスを脱気した部屋に供給する。この条件で約30秒〜約5分間維持する。加湿空気を入れて、部屋を大気圧とする。滅菌剤の濃度に応じて、この条件を約30秒〜約数時間維持する。滅菌室を脱気・空気置換して滅菌後の装置を取り出す。
【0154】
この二段処理サイクルは、(1)NOと空気とを同時に導入するサイクルや(2)NO2を空気または窒素中で導入するサイクルより、内腔を有する対象物を滅菌するのにより効果的である
【実施例29】
【0155】
「ポリマーの滅菌」
ポリマーが滅菌可能かどうかは、ポリマーを胞子溶液で接種し、乾燥し、窒素酸化物に暴露することで決めることができる。暴露後、胞子をポリマーから成長培地に洗い流し、培養して成長を見る。
【0156】
「一酸化窒素滅菌法の生吸収性ポリマーへの効果」
本例では、ポリエステル系の生吸収性ポリマーの滅菌前後の経時的な分子量分布の変化を評価する。具体的には、三種の滅菌方法、エチレンオキシド(EtO)処置と、ガンマ線照射、窒素酸化物、を用いて本発明の方法の効果を評価する。ポリエステル材料は、ラクテル(R)DLPLG(ポリ−DL−ラクチド−コ−グリコライド、50/50)、DLPLA(ポリ−DL−ラクチド−COOH)、LPLA(ポリ−L−ラクチド)、およびDURECT社(米国)より入手したPCL(ポリ−e−カプロラクトン)ポリマーである。処理試料は処理後直ちに評価する(0日)。試料は、本発明の方法(または工業的なEtO標準条件(100%EtO、1時間、57℃、≧70%RH、次いで、15時間の散気)およびガンマ線照射(26.8kGy)で処理する。各滅菌方法に対して各ポリマーの未処理コントロールの試料を準備する。
【0157】
NOXで処理した試料すべてで、バルクポリマーのMW分布に大きな変化が見られない。いくつかの試料では、クロマトグラムの低MW領域(保持時間:約10分)で、いくらか小さな変化がある。EtO処理の試料は、コントロールの試料に比べて、形状に変化があり、タイベック(R)滅菌パウチから分離しにくく、バッグの表面に付着している。バルクポリマーのMW分布には大きな変化はない。すべての照射試料では、バルクポリマーのMW分布に検知できる変化が現れる。
【0158】
三種の滅菌処置(NOX、EtO、及び照射)を、四種の生吸収性ポリエステルポリマー:ラクテル(R)DLPLG(ポリ−DL−ラクチド−コ−グリコライド、50/50)、DLPLA(ポリ−DL−ラクチド−COOH)、LPLA(ポリ−L−ラクチド)およびPCL(ポリ−e−カプロラクトン)のバルク試料に適用する。ポリマー試料は、受領後直ちに(0日と表示、時点1)GPCクロマトグラフィーでその分子量を測定する。窒素酸化物で処理した試料はコントロールの試料と比べて、MW分布に関して大きな差異を示さない。EtO処理のポリマー試料はMW分布に大きな差異を示さないが、コントロールの試料に比べて肉眼的に変形が認められ、滅菌パウチに付着する。ガンマ線照射のポリマー試料は、MW分布に検知できる変化を示し、その平均分子量が低下し、バルクポリマー鎖が断片化していることを示す。ガンマ線照射による変化は、PCL試料で最も著しい。
【実施例30】
【0159】
「タンパク質の滅菌」
Stearothermophilusの胞子を殺傷することが知られている滅菌条件下で、試料タンパク質を試験し、この滅菌条件がタンパク質の生物学的機能に影響を与えるか試験する。トリプシンをタンパク質試料として用いる。滅菌サイクルの間はトリプシンは粉末状であり、後ほど溶液としてその機能を評価する。同一滅菌容器内にこのタンパク質の粉末とともに生物指標を含める。
【0160】
本発明の代表的な実施様態を記述するのに、本明細書では、本発明の方法及び/又はプロセスを、複数の工程のある特別な組み合わせとして表す。しかしながら、本方法あるいはプロセスは、記載の特別な工程の組み合わせのみによるのでなく、本方法またはプロセスはこれらの特別な順序の組合わせに限定されるわけではない。当業界の通常の技術者が考えるように他の工程の組合わせも可能である。したがって、本明細書記載の特定の工程の組み合わせが請求項を制限するものと考えてはならない。また、本発明の方法及び/又はプロセスに関する請求項は、記載順序でのこれらの工程の性能に限られるのではなく、当業界の熟練者なら、この組み合わせが変更可能であり、変更しても本発明の精神及び範囲にとどまることを理解するであろう。
【実施例31】
【0161】
追加の滅菌試験において、空気中または窒素中で、また湿度の存在下で、NOとNO2の濃度を変えた場合の有効性を評価した。試験は、ステンレススチール板上にBacillus stearothemophilus胞子をのせた生物指標(ラベン36100ST3368092)を用いて行い、その際、これらの指標は、タイベックのパウチまたはタイベックパウチ中のミクロ遠心管に入れた。いずれも前もって20マイクロリットルの水で80%を超える相対湿度に調湿された300mlのパール圧力容器と、70%を超える相対湿度の加湿空気を用いる67リットルの「抵抗性試験装置」を試験容器として用いた。一段の試験の後に、濃度が0%、0.025%、0.050%、0.100%、0.150%、0.200%、0.250%、0.350%のNO2に約24時間、生物指標を暴露し、死滅胞子と生存胞子の存在を評価した。図4は、このような試験の結果であり、窒素中0.200%を超える濃度のNO2を24時間暴露すると、生物指標の試験胞子が死滅することを示している。
【0162】
他の回の滅菌試験においては、大気下で、0〜1.00%の間の濃度で、また6.0%の濃度で5分〜120分の範囲で時間を代えて、生物指標をNOに暴露した。図5にこれらの試験の結果を示す。6%のNOで大気下で、暴露時間が5分〜60分、また0.35%のNOで暴露時間が60分〜120分で、持続する滅菌効果が得られた。図6は、大気下でのNOの滅菌性能を調べたもので、NO濃度が約0.35%で処理時間が約60分間以上で、持続する効果が得られている。図7は、NOを用いて大気下でいろいろな濃度と暴露時間を比較したもので、ここでは、NOの濃度(%)と暴露時間(分)の積がNO濃度単独より優れた滅菌性能の指標となっている。
【0163】
上記の本発明の実施様態は、説明及び明細を記述の目的とするものである。開示されている具体的な形態に限定されるわけではない。上記の開示を基に本明細書に記載の実施様態の変更、改変が数多く可能であることは、当業界の通常の知識を持つものには明白であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を滅菌するに十分な時間、対象物を滅菌剤ガスに暴露する工程を含む対象物を滅菌する方法であって、該滅菌剤ガスが一種以上の窒素酸化物を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記滅菌剤ガスが滅菌剤ガス発生組成物より発生する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記滅菌剤ガスが、NO、NO2、NO3、N23、N24、N25、N2O、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記滅菌剤ガスが、NO、NO2、N24、N23、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記対象物が滅菌室において前記滅菌剤ガスに暴露される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記滅菌剤ガスが、前記滅菌室に運ばれる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記滅菌剤ガスの発生源が前記滅菌室内に位置している請求項5に記載の方法。
【請求項8】
滅菌室が滅菌剤ガスの発生源に結合している請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記滅菌剤ガスの発生源がガス発生室である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ガス発生室がNOを含む部屋である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ガス発生室がNOを含む加圧された部屋である請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記滅菌室が密閉可能である請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記ガス発生室が滅菌剤ガス発生組成物を含む請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記滅菌室がさらに滅菌剤ガス発生組成物を含む請求項5に記載の方法。
【請求項15】
前記滅菌剤ガス発生組成物が少なくとも一種の滅菌剤ガス発生化合物を含む請求項2に記載の方法
【請求項16】
前記滅菌剤ガス発生組成物がさらに酸を含む請求項2に記載の方法
【請求項17】
前記滅菌室がさらにガス導入口を有する請求項5に記載の方法。
【請求項18】
時間が約30秒〜約20分間である請求項1に記載の方法。
【請求項19】
時間が約30秒〜約12時間である請求項1に記載の方法。
【請求項20】
時間が約2分〜約24時間である請求項1に記載の方法。
【請求項21】
さらに前記対象物を加湿空気に暴露させることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項22】
さらに前記対象物を、前記対象物を前記滅菌剤ガスに暴露前、暴露中及び/又は暴露後に、加湿空気に暴露させることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記対象物を滅菌剤ガスに暴露する前に前記滅菌室を脱気する請求項5に記載の方法。
【請求項24】
加湿空気の導入前に約30秒〜約60分間、前記対象物を前記滅菌剤ガスに暴露する、請求項5に記載の方法。
【請求項25】
加湿空気の導入前に約1秒〜約5分間、前記対象物を前記滅菌剤ガスに暴露する、請求項5に記載の方法。
【請求項26】
滅菌室に入るすべてのガスが前もって濾過されている請求項5に記載の方法。
【請求項27】
対象物を滅菌する方法であって、
対象物を滅菌室に置く、
滅菌室を密閉する、
滅菌室を脱気する、
脱気した部屋に滅菌剤ガスを導入する(ただし、該滅菌剤ガスは一種以上の窒素酸化物を含む)、
約1秒〜約5分間待つ、
加湿空気を滅菌室に加える、及び
約30秒〜約20分間待つ、ことを含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
前記対象物を前記滅菌剤ガスに暴露後に、前記滅菌室がガスで置換される請求項5または27に記載の方法。
【請求項29】
前記滅菌剤ガスの導入前に、前記滅菌室を真空レベルが2インチHg未満となるまで脱気する請求項5に記載の方法。
【請求項30】
前記方法が周囲圧力で行われる請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記滅菌剤ガスへの暴露が、約40%〜約80%の湿度を含む請求項1または5に記載の方法。
【請求項32】
前記滅菌室の酸素濃度が約0%〜約21%である請求項5に記載の方法。
【請求項33】
前記方法が約0℃〜約90℃の温度で行われる請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記方法が約18℃〜約30℃の温度で行われる請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記時間が約2分〜約24時間である請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記対象物が医療用具である請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記医療用具が移植材料である請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記対象物がステントである請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記医療用具が心臓手術製品、整形外科手術製品、及び歯科用手術製品からなる群から選ばれる請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記対象物が、心臓移植材料、整形外科の移植材料、歯科用移植材料、胃腸の移植材料、及び血管用の移植材料からなる群から選ばれる移植材料である請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記対象物が少なくとも一種の材料を含み、その材料がポリ(L−ラクチド)、ポリ(DL−ラクチド)、50/50ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコライド)、ポリ(ε−カプロラクトン)及びこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記医療用具が金属、非金属、ポリマーまたはプラスチック、エラストマー、または生体由来材料を含む請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記医療用具がステンレス鋼、アルミニウム、ニチノール、コバルトクロム、チタン、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる材料を含む請求項36に記載の方法。
【請求項44】
前記医療用具がガラス、シリカ、およびセラミックからなる群から選ばれる材料を含む請求項36に記載の方法。
【請求項45】
前記医療用具が、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンオキシド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスルホン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリエーテルイミド、ポリフッ化ビニリデン、これらのコポリマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる材料を含む請求項36に記載の方法。
【請求項46】
前記医療用具が、ポリシロキサン、フッ素化ポリシロキサン、エチレンプロピレンゴム、フルオロエラストマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる材料を含む請求項36に記載の方法。
【請求項47】
前記医療用具が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリパラジオキサノン、ポリトリメチレンカーボネート、これらのコポリマー、コラーゲン、エラスチン、キチン、サンゴ、ヒアルロン酸、骨、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる材料を含む請求項36に記載の方法。
【請求項48】
前記医療用具がさらに生物活性な膜を含む請求項36に記載の方法。
【請求項49】
前記生物活性な膜が、生体親和性膜、感染防止膜、抗菌膜、薬物放出膜、抗血栓性膜、潤滑性膜およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記生物活性な膜が、ヘパリン、ホスホリルコリン、ウロキナーゼ、ラパマイシン、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記生物活性な膜が親水性または疎水性の膜を含む請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記生物活性な膜が、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−コ−プロピレングリコール、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール−コ−ビニルアセテート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒアルロン酸、親水性置換体、モノマー類、不飽和プレポリマー類、未架橋ポリマー類、これらのコポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれるポリマーを含む請求項48に記載の方法。
【請求項53】
前記生物活性な膜が、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリエステル、ポリアミド、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)、ポリウレタン、ポリ(シロキサン)類、シリコーン類、ポリ(塩化ビニル)、フッ素化エラストマー、合成ゴム、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリエーテルケトン、ABSゴム、ポリエーテルイミド、これらの疎水性置換体、これらの前駆体モノマー、これらのコポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれるポリマーを含む請求項48に記載の方法。
【請求項54】
前記対象物が、生吸収性ポリマー、薬物保持性ポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる材料を含む請求項1に記載の方法。
【請求項55】
前記移植材料が、心臓血管ステント、周辺薬剤放出ステント、ポリマー被覆移植材料、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項37に記載の方法。
【請求項56】
前記対象物が、整形外科の骨グラフトおよび骨格結合材料からなる群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項57】
前記対象物が生物学的な製品であって、該生物学的な材料が、組織、臓器、創傷治癒製品、および組織工学製品からなる群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項58】
前記対象物がタンパク質である請求項1に記載の方法。
【請求項59】
対象物を滅菌する方法であって、
滅菌剤ガスを含むガス発生室を提供し、
該ガス発生室と滅菌室につなぎ、
対象物を該滅菌室に入れ、
ガス発生室からの滅菌剤ガスを滅菌室に運び(ただし、該滅菌剤ガスは一種以上の窒素酸化物を含む)、
対象物を滅菌するに十分な時間該対象物を滅菌剤ガスに暴露する、ことを含むことを特徴とする方法。
【請求項60】
対象物を滅菌する方法であって、
流体的にガス発生室と連結した滅菌室に対象物を入れ(ただし、ガス発生室は滅菌剤ガスを含む)、
該滅菌剤ガスをガス発生室から滅菌室に送り(ただし、該滅菌剤ガスは一種以上の窒素酸化物を含む)、ことを含むことを特徴とする方法。
【請求項61】
対象物を滅菌する方法であって、
滅菌剤ガス発生組成物を含むガス発生室を提供し、
該ガス発生室を滅菌室に連結し、
対象物を滅菌室に入れ、
該滅菌剤ガス発生組成物を活性化させ、
該滅菌剤ガスをガス発生室から滅菌室に送り(ただし、該滅菌剤ガスは一種以上の窒素酸化物を含む)、
対象物を滅菌させるのに十分な時間、該対象物を滅菌剤ガスに暴露させる、ことを含むことを特徴とする方法。
【請求項62】
対象物を滅菌する方法であって、
流体的にガス発生室と連結した滅菌室に対象物を入れ(ただし、ガス発生室は滅菌剤ガスを含む)、
滅菌ガス発生組成物を活性化させ、
該滅菌剤ガスをガス発生室から滅菌室に送り(ただし、該滅菌剤ガスは一種以上の窒素酸化物を含む)、ことを含むことを特徴とする方法。
【請求項63】
前記滅菌剤ガス発生組成物が炭素系のジアゼニウムジオレート化合物を含む請求項2に記載の方法。
【請求項64】
前記滅菌剤ガス発生組成物が亜硝酸金属塩を含む請求項2に記載の方法。
【請求項65】
前記滅菌剤ガス発生組成物が、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸マグネシウム、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる亜硝酸金属塩を含む請求項2に記載の方法。
【請求項66】
前記滅菌剤ガス発生組成物がさらに酸を含む請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記酸が硫酸、マレイン酸、塩酸、亜硝酸、硝酸、およびこれらの混合物からなる群より選ばれる請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記滅菌剤ガス発生組成物がさらにプロトン供与体を含む請求項64に記載の方法。
【請求項69】
前記酸が固体である請求項66に記載の方法。
【請求項70】
前記亜硝酸金属塩が固体である請求項64に記載の方法。
【請求項71】
対象物を滅菌するためのシステムまたは装置であって、流体的に滅菌剤ガスの発生源に連結した滅菌室を有し、該滅菌剤ガスが一種以上の窒素酸化物を含むことを特徴とするシステムまたは装置。
【請求項72】
対象物を滅菌するためのシステムまたは装置であって、滅菌室を有し、該滅菌室がさらに滅菌剤ガスの発生源を有し、該滅菌剤ガスが一種以上の窒素酸化物を含むことを特徴とするシステムまたは装置。
【請求項73】
前記滅菌剤ガスが、NO、NO2、NO3、N23、N24、N25、N2O、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項71または72に記載のシステムまたは装置。
【請求項74】
前記滅菌剤ガスが、NO、NO2、N2O4、N23、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項71または72に記載のシステムまたは装置。
【請求項75】
前記滅菌剤ガスの発生源が滅菌剤ガス発生組成物である請求項71または72に記載のシステムまたは装置。
【請求項76】
さらにスクラビングシステムを含む請求項71または72に記載のシステムまたは装置。
【請求項77】
前記スクラビングシステムが、NOをNO2に変換する酸化剤を含む請求項76に記載のシステムまたは装置。
【請求項78】
前記スクラビングシステムがNO2を捕集する吸着剤を含む請求項76に記載のシステムまたは装置。
【請求項79】
前記システムまたは装置の重量が20ポンド未満である請求項71または72に記載のシステムまたは装置。
【請求項80】
前記システムまたは装置が携帯型である請求項71または72に記載のシステムまたは装置。
【請求項81】
前記滅菌室が密閉できる請求項71または72に記載のシステムまたは装置。
【請求項82】
前記滅菌剤ガスの発生源がガス発生室である請求項71または72に記載のシステムまたは装置。
【請求項83】
前記ガス発生室がNOを含む部屋である請求項82に記載のシステムまたは装置。
【請求項84】
前記ガス発生室がNOを含む加圧した部屋である請求項82に記載のシステムまたは装置。
【請求項85】
前記滅菌剤ガス発生組成物がガス発生室に含まれている請求項75に記載のシステムまたは装置。
【請求項86】
前記滅菌剤ガス発生組成物が少なくとも一種の滅菌剤ガス発生化合物を含む請求項75に記載のシステムまたは装置。
【請求項87】
前記滅菌剤ガス発生組成物がさらに酸を含む請求項75に記載のシステムまたは装置。
【請求項88】
前記滅菌室がさらにガス導入口を有する請求項71または72に記載のシステムまたは装置。
【請求項89】
前記滅菌室が流体的に空気源に連結している請求項71または72に記載のシステムまたは装置。
【請求項90】
前記滅菌室が流体的に加湿空気源に連結している請求項71または72に記載のシステムまたは装置。
【請求項91】
さらに前記滅菌室内の相対湿度を測定する湿度計を有する請求項90に記載のシステムまたは装置。
【請求項92】
前記滅菌室が流体的に真空と連結している請求項71または72に記載のシステムまたは装置。
【請求項93】
さらに前記滅菌室内に真空レベル測定用のゲージを備える請求項71または72に記載のシステムまたは装置。
【請求項94】
さらに滅菌室の温度の制御用の加熱部品を備える請求項71または72に記載のシステムまたは装置。
【請求項95】
さらに滅菌室の温度の制御用の冷却部品を備える請求項71または72に記載のシステムまたは装置。
【請求項96】
さらに滅菌室の温度の測定用のゲージを備える請求項71または72に記載のシステムまたは装置。
【請求項97】
前記滅菌室が、(i)真空を維持可能で、(ii)滅菌ガスを受け入れ可能で、(iii)空気を受け入れ可能である請求項71または72に記載のシステムまたは装置。
【請求項98】
前記滅菌剤ガス発生組成物が炭素系のジアゼニウムジオレート化合物を含む請求項75に記載のシステムまたは装置。
【請求項99】
前記滅菌剤ガス発生組成物が亜硝酸金属塩を含む請求項75に記載のシステムまたは装置。
【請求項100】
前記滅菌剤ガス発生組成物が、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸マグネシウム、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる亜硝酸金属塩を含む請求項75に記載のシステムまたは装置。
【請求項101】
前記滅菌剤ガス発生組成物がさらに酸を含む請求項75に記載のシステムまたは装置。
【請求項102】
前記酸が、硫酸、マレイン酸、塩酸、亜硝酸、硝酸、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項101に記載のシステムまたは装置。
【請求項103】
前記滅菌剤ガス発生組成物がさらにプロトン供与体を含む請求項75に記載のシステムまたは装置。
【請求項104】
前記酸が固体である請求項101に記載のシステムまたは装置。
【請求項105】
前記亜硝酸金属塩が固体である請求項99に記載のシステムまたは装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−542333(P2009−542333A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518282(P2009−518282)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/015093
【国際公開番号】WO2008/005313
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(506233162)ノクシライザー,インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】NOXILIZER, INCORPORATED
【Fターム(参考)】