説明

滅菌バリヤを備えたフォリイ・カテーテル

【課題】病原性有機体の導入を最小にする改善された尿道カテーテルおよびその使用方法を提供することにある。
【解決手段】患者の尿道内に留置導入するための尿道カテーテル(30、100)。カテーテルは、ポリマーで形成された細長いフレキシブル本体部分(12)を有している。細長いフレキシブル本体部分(12)はフレキシブル導入部材(32)を有し、該フレキシブル導入部材(32)は長手方向ボアを備えている。該長手方向ボアは、フレキシブル本体部分(12)に沿って導入部材(32)をスライド可能に位置決めできる。フレキシブル導入部材(32)には、フレキシブルポリマースリーブ(40)が取付けられる。該フレキシブルポリマースリーブ(40)は、フレキシブル本体部分(12)の実質的部分をカバーできる。本発明の方法および装置は、カテーテルに無菌スリーブバリヤを設けることにより、感染の傾向を最小にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2007年7月16日付米国仮特許出願第60/949,894号および2007年9月24日付米国仮特許出願第60/974,644号の利益を主張する。尚、両出願はその全体を本願に援用する。
【0002】
本願に開示する装置および方法は、広くは尿道カテーテルに関し、より詳しくは、病原性有機体の導入を最小にする改善された尿道カテーテルに関する。
【背景技術】
【0003】
フォリイ・カテーテル(Foley catheter)のような留置尿道カテーテルを使用する場合、カテーテルを数日留置しておくときに、感染の危険が重大な問題となる。臨床研究によれば、カテーテルは、病原性有機体が侵入する導入路を形成することが証明されている。カテーテルの内部を通ってアクセスする有機体(organisms)に関しては、さもなくばカテーテルに連結される尿ドレナージバッグ内で増殖するであろう有機体を殺す手段を形成することが一般的になっている。また、有機体が、尿道の壁とカテーテルの外面との間の尿道通路に侵入することを防止する試みがなされている。
【0004】
有機体が尿道とカテーテルとの間の尿道通路に侵入することを防止するバリヤを提供することを目的とした試みは、ときどき、組織に大きい刺激および炎症を引起こし、このため、留置カテーテルの使用に付随する感染の傾向が顕著に増大される。理解されようが、フォリイ・カテーテルのような留置カテーテルは単なる例であり、他のドレナージチューブ並びに静脈カテーテルに付随する同様な問題を有している。
【0005】
感染を無くしまたは最小にすることを意図したカテーテルを提供する試みは、カテーテルの製造に関連する条件に耐え得る殺菌薬を用いたカテーテルを産出している。このようなカテーテルは、しばしば、表面に流出するベース材料内の殺菌薬を用いることにより殺菌効果を達成する。これらの或るものは、尿道カテーテルに使用したときに、尿道の壁に刺激を引起こしている。
【0006】
その後に開発された留置カテーテルは、感染を低減させる試みにおいて幾分異なるアプローチに頼っている。殆どのカテーテルの管状部分は疎水性合成エラストマで形成されているので、これらのカテーテルの内面および外面を含む全表面は、しばしば親水性ポリマーでコーティングされ、抗生物質を含む殺菌薬の水溶液または懸濁液をコーティング内に吸収できるようになっている。
【0007】
永年に亘って、銀および銀塩が抗菌薬として使用されてきた。感染の予防およびコントロールに、銀塩、銀コロイドおよび銀錯体が使用されている。例えば、結膜炎、尿道炎および膣炎にはコロイド状金属銀が使用されている。例えば金、亜鉛、銅およびセリウム等の他の金属も、単独でおよび銀と組合わせて使用するときに抗菌性を有することが判明している。これらの金属および他の金属は、微量でも、「オリゴジナミー(oligodynamic、微量でも殺菌作用のあること)」と呼ばれる抗菌性を呈することが証明されている。
【0008】
また、銀は、カテーテル、カニューレおよびステント等の医療器具に抗菌薬として使用することが知られている。抗菌性医療器具を得る1つの慣用アプローチは、例えば蒸着コーティング、スパッタリングコーティングまたはイオンビームコーティングにより、基板の表面上に直接金属銀をデポジットすることである。しかしながら、これらの非接触デポジションコーティング技術は、接着力が弱いこと、コーティングの均一性に欠けること、および特殊な加工条件(例えば、或る銀塩の感光性のため暗所を用意する必要があること)を必要とすることを含む多くの欠点を有している。
【0009】
これらのコーティングの1つの特別な欠点は、コーティングを形成する方法が、カテーテルまたはステントの内部ルーメン等の隠れた領域または閉領域を充分にコーティングできないことである。また、これらの方法は、金属銀に非常に良く似たコーティングを形成し、このため、コーティングは、銀を放出することがなく、抗菌性を得るにはコーティングに接着する必要がある。基板上には高濃度の銀がデポジットされるが、水性流体中に露出放出される自由銀イオンは極く僅かである。このため、これらのコーティングでは、極く限られた抗菌性が得られるに過ぎない。しかしながら、これらのコーティングは水性流体中に充分な銀イオンを放出しないため、器具の挿入時に体内に搬入されるバクテリアから殆どまたは全く保護できずかつ周囲組織への感染を防止できない。
【0010】
多くの医療器具では、器具表面上に潤滑コーティングを塗布するのが有効である。潤滑コーティングは器具の挿入を補助し、組織への外傷およびバクテリアの付着を低減させる。潤滑コーティングすることも望まれる医療器具の表面上に銀および他の金属を直接付着する慣用方法の他の欠点は、器具の抗菌性コーティング上に、第二の潤滑コーティングを塗布しなければならず、製造コストが嵩んでしまうことである。
【0011】
抗菌性医療器具を得る他のアプローチは、医療器具を形成するポリマー基板材料内に、銀、銀塩および他の抗菌性化合物を組入れることである。オリゴジナミー金属は、種々の方法でポリマー基板内に物理的に組入れることができる。例えば、ポリマー物品の形成前に、例えばペレット状の固体ポリマー上に銀塩の溶液がディッピングされ、スプレーまたはブラシ塗布される。或いは、固形の銀塩を微細に粉砕されたポリマー樹脂または液状樹脂と混合し、次にこれを物品に成形する。また、重合前に、オリゴジナミー化合物を材料のモノマと混合することができる。
【0012】
或る場合には、カテーテルの全表面に殺菌薬が塗布されると、刺激に遭遇することが判明した。同様に、カテーテルの表面内に抗生物質を含浸させた場合には、当該特定抗生物質により休眠させられるか殺される有機体のみに有効である。したがって防護フローラが損傷を受け、通常はフローラによって抑制されてしまう他の有機体がはびこってしまうため、抗生物質含浸カテーテルを使用すると、感染が防止されるのではなく、かえって感染を誘発することにもなる。
【0013】
また、カテーテルの表面を親水性にすると、他の問題が生じる。この点での最も重要な問題の1つが、コーティングの真の性質である濡れ可能な表面を形成する親水性によってもたらされる。かくして、このような濡れ可能表面がひとたび尿のような生理学的流体(該流体にはその組成中に塩および他の固体化合物が含まれている)と接触すると、このような生理学的流体の水性成分の捕捉による親水性コーティングが、コーティング並びに組成物の他の固体成分の付着物に隣接する過飽和状態により、塩の付着物の核を形成できる。残念な最終結果は、詰まったカテーテルまたはカテーテルの外表面上に塩等の鋭い付着物が形成されたカテーテルとなってしまうことである。
【0014】
下記特許文献1には、N−ビニルピロリドンと接触させかつ電離放射線に曝露させることにより親水性をもたせたシリコーン本体部分を備えたカテーテルが提案されている。下記特許文献2および3には、天然ゴムまたは合成ゴムで作られかつ刺激および感染を低減するという上記目的のため親水性アクリレートまたはメタクリレートポリマーがグラフト重合された外面コーティングを備えた留置フォリイ・カテーテルであって、親水性ポリマーに抗生物質または殺菌薬が含浸されていることが表示された留置フォリイ・カテーテルが提案されている。
【0015】
下記特許文献4には、疎水性エラストマで形成された本体部分と、体内へのカテーテルの入口部位での限定部分に沿って殺菌薬を受入れる親水性エラストマがコーティングされた両端部の間の外表面の所定の選択部分とを備えたカテーテルが提案されている。
【0016】
下記特許文献5には、殺菌薬組成物、これらの組成物の製造方法、およびカテーテルおよびインプラント等の医療器具へのこれらの組成物の使用方法が提案されている。組成物は、イオンの異なる水溶性のため、組成物中の活性イオンの放出動力学(release kinetics)を変化させ、これにより、抗菌薬放出プロファイルを所与の用途に適合させかつ一定時間一様の抗菌活性を与える。より詳しくは、銀のような1種類以上のオリゴジナミー金属の塩からなるコロイドを含有するポリマー組成物が提案されている。この提案された方法は、1種類以上のオリゴジナミー金属塩の溶液とポリマー溶液または分散液とを混合する段階、および最初の金属塩の幾つかまたは全部と反応する他の塩を溶液に添加することにより塩のコロイドを沈殿させる段階を有している。この組成物は医療器具のような物品内に組入れられるか、物品上に施されるコーティングとして用いることができる。物品の表面の全部または一部に施されるコーティングが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第4,055,682号明細書
【特許文献2】米国特許第3,566,874号明細書
【特許文献3】米国特許第3,695,921号明細書
【特許文献4】米国特許第4,515,593号明細書
【特許文献5】米国特許第7,179,849号明細書
【特許文献6】米国特許第6,329,488号明細書
【特許文献7】米国特許第5,290,585号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】George Woods著「ICIポリウレタンブック(ICI Polyurethanes Book)(John Wiley and Sons社発行、New York、N.Y.1987年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
理解されようが、閉尿ドレナージシステムの使用時には、膀胱内への幾つかのバクテリア侵入ルートが存在する。フォリイ・カテーテルの内部および外部に上記抗菌コーティングその他を用いると、尿路感染(urinary tract infections:UTI)の発生を劇的に低減できることが証明されている。しかしながら、このようなカテーテルの配置時には、挿入中に尿道内にいかなるバクテリアも侵入しないようにするため、無菌技術を用いなくてはならない。挿入中のカテーテルの無菌ハンドリングにもかかわらず、幾つかの問題が生じる。今日使用されているカテーテルは、ひとたび配置されると周囲の環境に曝され、あらゆる体液の溢流等により、バクテリアのルーメン外上昇の傾向が高まる。また、患者の外尿道口とフォリイ・カテーテルとの間の界面はカテーテルのコーティングによってのみ保護されることを考えれば、他の問題も生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0020】
一態様では、体開口内に留置導入するカテーテルが提供される。本発明のカテーテルは、ポリマーで形成された細長いフレキシブル本体部分を有し、該細長いフレキシブル本体部分は、第一端部および第二端部と、少なくとも1つの内部ルーメンと、外表面とを備えている。カテーテルはフレキシブル導入部材を有し、該フレキシブル導入部材は、第一端部および第二端部を備えかつ細長いフレキシブル本体部分の外表面の周囲に配置される。カテーテルはフレキシブルポリマースリーブを更に有し、該フレキシブルポリマースリーブは第一端部および第二端部を備え、第一端部はフレキシブル導入部材に同心状に取付けられる。
【0021】
他の態様では、留置カテーテルによる感染の傾向を最小にする方法が提供される。本発明の方法は、カテーテルを用意する段階を有し、カテーテルは、ポリマーで形成されかつ第一端部および第二端部、少なくとも1つの内部ルーメン、および外表面を備えた細長いフレキシブル本体部分と、第一端部および第二端部を備えかつ細長いフレキシブル本体部分の外表面上でこの外表面に沿ってスライド可能に位置決めする長手方向ボアを有するフレキシブル導入部材と、第一端部および第二端部を備えたフレキシブルポリマースリーブとを有し、該フレキシブルポリマースリーブの第一端部はフレキシブル導入部材の第二端部に取付けられ、フレキシブルポリマースリーブは、細長いフレキシブル本体部分の少なくとも実質的部分をカバーするのに充分な長さを有し、細長いフレキシブル本体部分に接触することなく、フレキシブル導入部材を掴むことにより、カテーテルを患者の体内に配置する段階を更に有している。これにより、体開口を通って病原性有機体が進入する機会が最小になる。
【0022】
他の態様では、体開口内に留置導入するカテーテルが提供される。このカテーテルは、ポリマーで形成されかつルーメンおよび外表面を備えた細長本体を有している。カテーテルはまた、細長本体の外表面に沿ってスライドするように構成された導入部材を有している。カテーテルは更に、第一端部および第二端部を備えかつ細長本体の実質的部分をカバーするポリマースリーブを有し、第一端部は導入部材に固定される。
【0023】
一形態では、フレキシブル導入部材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、またはこれらのコポリマーおよびターポリマーから選択されたフレキシブルポリマーで形成される。
【0024】
他の形態では、フレキシブルポリマースリーブは、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、またはこれらのコポリマーおよびターポリマーから選択されたシート形成ポリマーで形成される。
【0025】
更に別の形態では、ポリマーコーティングは、細長いフレキシブル本体部分の外表面の少なくとも一部およびフレキシブル導入部材の少なくとも1つの表面に設けられる。
【0026】
更に別の形態では、ポリマーコーティングは、少なくとも1つのポリマーと、1種類以上のオリゴジナミー金属の塩または酸化物を含むコロイドとからなる組成物を有し、1種類以上のオリゴジナミー金属の塩または酸化物は、1種類以上の有機体が組成物に微生物付着することを抑制する。
【0027】
一実施形態では、カテーテルおよび付随するドレナージシステムの製品寿命中に感染コントロールする付加保護層が設けられた、改善されたカテーテルが提供される。
【0028】
上記および他の特徴は、添付図面を参照して述べる以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0029】
以下、本発明の固定器具および固定器具システムの幾つかの実施形態を参照して、本発明の上記および他の特徴を説明する。固定器具および固定システムの図示の実施形態は例示のためのものであり、本発明を限定するものではない。添付図面は以下の図面を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の好ましい一実施形態による尿道カテーテルを示す斜視図である。
【図2】男性患者の尿路に対して図1のカテーテルを配置する方法を示す側面図である。
【図3】女性患者の尿路に対して図1のカテーテルを配置する方法を示す側面図である。
【図4】カテーテルのチップを示す側面図である。
【図5】導入部材を示す側面図である。
【図6】カテーテルのスリーブおよび細長いフレキシブル本体部分を示す側面図である。
【図7】図5のカテーテルの断面図であり、フレキシブル本体部分および導入部材上のポリマーコーティングを示すものである。
【図8】引裂きストリップを示す側面図である。
【図9】貯尿バッグおよび関連カテーテルを示す斜視図である。
【図10】水/空気ポンプを示す図面である。
【図11】本発明の他の好ましい実施形態を示す斜視図である。
【図12】図11のカテーテルの側面図であり、それぞれ、図12Aはキャップを備えた導入器、図12Bはキャップを備えていない導入器を示すものである。
【図13】カテーテルに連結される導入器組立体を示す図面である。
【図14】カテーテル法を示す図面である。
【図15】カテーテル法の他の態様を示す図面である。
【図16】モデル内に挿入された、カテーテル法実施装置を示す図面である。
【図17】尿をファンネルで受けかつバクテリアの侵入を防止するのにカテーテルを用いる方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図示の目的で選択された特定実施形態を参照して、種々の態様を説明する。本明細書に開示するカテーテルの精神および範囲は、選択された形態に限定されるものではないことは理解されよう。また、添付図面は特別な比率または縮尺に従って描かれたものではなく、図示の実施形態には多くの変更をなし得るものであることに留意されたい。全図面を通して、同じ部品には同じ参照番号が使用されている。
【0032】
一実施形態では、尿道カテーテルチューブはフレキシブルポリマースリーブによりカバーされており、この場合、スリーブは、バクテリアが患者の体内に移動することすなわち侵入することを防止することにより汚染から保護する滅菌バリヤを形成する。スリーブは、汚染物質が、例えばチューブに不意に接触することにより、または空気中の汚染物質がチューブに付着することによりチューブの外表面に到達することを防止する。一実施形態では、フレキシブルスリーブは、スライド可能な導入部材に取付けられる。スライド可能な導入部材は患者の尿道に隣接して調節可能に配置され、導入部材は、カテーテルが患者内に挿入される深さに従って、カテーテルチューブに沿ってスライドできる。同様に、導入部材に取付けられたフレキシブルスリーブは、カテーテルの少なくとも大部分をカバーすべく完全に延びることができ、或いはスリーブは、カテーテルのより小さい部分をカバーする必要がある場合には、収縮しまたはひだを付して畳むことができる。一般に、スリーブは、環境に露出されるカテーテル部分(この部分は、初期挿入時または後の調節時に患者の体内にカテーテルがどれだけ入るかに基いて長さが異なる)をカバーする。このようにして、保護スリーブは、汚染から患者を保護する。
【0033】
一実施形態として、尿道カテーテルチューブを備えた「タッチレス」システムがある。チューブは、導入器に取付けられたフレキシブルポリマースリーブによりカバーされる。導入器には、尿道内へのカテーテルの配置を補助する留置セグメントを設けることができる。タッチレスシステムにはまた、真の閉システムを提供すべく、キャップを設けることができる。この閉システムは、カテーテルの環境との接触を最小にする。
【0034】
本明細書および特許請求の範囲の記載に使用される下記の用語およびフレーズは、次のような意味を有している。
【0035】
「金属(Metal or metals)」は、実質的に純粋な金属、合金または酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物、ハロゲン化物または水素化物等の化合物の形態の1種類以上の金属を含む。
【0036】
「オリゴジナミー金属(Oligodynamic metals)」は、銀、プラチナ、金、亜鉛、銅、セリウム、ガリウム、オスミウム、パラジウム、イリジウム、錫、アンチモニ、ビスマス、またはこれらの金属と同じまたは他の金属との混合物である。
【0037】
「貴金属」とは、銀、金、プラチナおよびパラジウム、またはこれらの金属と同じまたは他の金属との混合物である。
【0038】
「抗菌活性(antimicrobial activity)」とは、コーティングの近傍上および近傍内での微生物の成長を抑制するのに充分な濃度でコーティングが接触する溶液中に、抗菌薬または貴金属の原子、イオン、分子またはクラスタが放出されることを意味する。抗菌効果を測定する最も一般的な方法は、微生物成長抑制試験(微生物静力学的または殺菌的抑制効果を表示する試験)または対数的減少試験(殺菌的効果を表示する試験)のゾーンである。抑制試験のゾーン(zone of inhibition test:ZOI)内では、試験すべき材料がバクテリアローン(bacterial lawn)(または他の微生物種のローン)上に置かれかつ培養される。比較的小さい(1mmより小さい)ZOIまたは無ZOIは、有効でない抗菌効果を表示し、一方、より大きい(5mmより大きい)ZOIは、非常に有効な抗菌効果を表示する。一般にZOIは、抑制矯正ゾーン(corrected zone of inhibition:CZOI)として報告され、この抑制矯正ゾーン内では、試験サンプルのサイズがゾーンから減算される。生存できるバクテリアの対数的減少試験は、抗菌処理の効能の定量的測定であり、例えば5log減少は、100,000倍だけ微生物の数が減少することを意味する(例えば、物品が100,000個の関連微生物を含んでいる場合には、5log減少とは、関連微生物の数を1個に減少するということである)。一般に、3log減少は、殺菌効果があることを示すものである。対数減少試験は、バクテリアまたは他の微生物種の接種材料と試験処理との組合せ、試験処理による接種材料の培養、バクテリアまたは他の微生物種の回収、および連続希釈を用いてバクテリアまたは他の微生物種を列挙することを含んでいる。
【0039】
「抗炎症効果(Anti-inflammatory effect)」とは、紅斑(発赤)、水腫(腫脹)、痛みおよび痒み(これらは炎症状態の特徴である)のうちの1つ以上の症状の軽減を意味する。
【0040】
「生体適合性(Biocompatible)」とは、意図した用途に対して好ましくない重大な宿主応答が全く発生しないことを意味する。生体適合性材料は、意図した用途に対して無毒である。したがって、人への用途に対しては、生体適合性は、人体または人体組織に対して無毒であるのが最も好ましい。
【0041】
「潤滑性ポリマー(Lubricous polymers)」とは、水、または水ベースまたはアルコールベースの電解液で濡れたときに潤滑性を帯びるポリマーをいう。殆どの潤滑性ポリマーは親水性であるが、幾つかの疎水性ポリマーは、濡れたときに充分な潤滑性を有するならば、潤滑性ポリマーとして機能することもある。
【0042】
「親水性(Hydrophilic)」とは、水滴が、この親水性材料の表面上には容易に玉を形成せず、それどころか、水滴が45°より小さい接触角を形成する傾向を有し、表面上に容易に拡散する性質をいう。用語「親水性ポリマー」とは、濡れたときに親水性を有しかつ濡れた状態で潤滑性を呈するポリマーを含む。また、「親水性ポリマー」とは、「水膨潤性(water swellable)」ポリマーを含み、ここで、「水膨潤性」とは、水に溶けないが充分な水を吸収し、水和状態において潤滑性を帯びる実質的な親水性ポリマーを意味する。これらの定義は、全て、水和剤として水を例に挙げたが、ポリマーを水和させまたは膨潤させることができる、体液を含む他の水ベースまたはアルコールベース電解液をも含むと理解すべきである。
【0043】
「疎水性(Hydrophobic)」とは、水滴が、このような疎水性材料の表面上に玉を容易に形成することを意味する。
【0044】
「溶剤(Solvent)」とは、基板にコーティングを塗布する前に、本明細書に開示するコーティングの成分を溶解し、分散させまたは懸濁させるのに使用する液体媒体を説明するのに本明細書で使用される用語である。本明細書で使用されるとき、この用語は、コーティングの成分が溶剤中に完全に溶解されること、またはポリマーの幾分かの膨潤を促進するのに有効であることを意味するものではない。
【0045】
カテーテルは多くの目的に使用できる。例えば、カテーテルは、治療を受けている患者が患者のベッドを離れる必要なくして、患者がトイレに行くことを可能にする器具である尿道カテーテルとして使用できる。これは、治療を受けている男性および女性の両方にとって有効である。例えば、尿失禁のある患者および無意識の尿漏れとして知られる状態をもつ患者は、カテーテルの短期使用にコスト上の利益を有するであろう。他の例は、大手術を受けた患者または医療器具の入力および出力の正確なモニタリングを必要とする集中治療室(ICU)内での治療のように患者の移動が制限される手術を受けている患者である。この例では、患者は、長時間カテーテルを使用することによる利益を受けるであろう。
【0046】
尿カテーテル法では、尿道カテーテル(例えばフォリイ・カテーテル)が、患者の尿道を通して膀胱内に挿入される。患者の体内でカテーテルの端部に配置されたバルーンは、カテーテルがひとたび患者の膀胱に到達した後に滑り出てしまうことを防止するため、無菌水により膨張される。このようにして、患者の尿は、膀胱から体外の貯尿バッグに搬送される。他の実施形態では、フォリイ・カテーテルを使用して、液体が膀胱内に注入される。カテーテル法は、自己カテーテル法も首尾良く行うことができるが、通常、医者により行われ、時には看護師により行われる。
【0047】
尿カテーテル法の実施時の1つの関心事は尿路感染である。尿路感染は、カテーテルの外表面に付着して侵入する病原性有機体(病原性有機体は、器具が挿入されまたは調節されるときに患者の体内に搬送される)により引起こされる。一実施形態では、カテーテル器具は、スライド可能なフレキシブルスリーブと、チューブをカバーして病原性有機体がカテーテルの外表面に付着して侵入することを防止する導入部材とを有している。
【0048】
アンカーリングシステムの実施形態のコンポーネンツの説明を補助するため、以下の座標用語を使用する。「長手方向軸線(longitudinal axis)」とは、カテーテルの一セクションに対してほぼ平行な方向をいう。図1において、長手方向軸線は、細長いフレキシブル本体部分12に対してほぼ平行である。本明細書で使用するとき、「長手方向」とは、長手方向軸線に対して実質的に平行な方向をいう。用語「遠位(distal)」は、患者の身体に近いカテーテル10の端部について使用する。用語「近位(proximal)」は、ファンネル24の近くのカテーテル10の端部について使用する。
【0049】
図1を参照すると、ここには、身体の開口内に導入されるフォリイ・カテーテルのようなカテーテル10が示されている。カテーテル10は、短時間または長時間挿入される。カテーテル10は、ポリマーで形成された細長いフレキシブル本体部分12を有し、該本体部分12は、全体を参照番号14で示すチップ部分に終端している。本体部分12は、第一端部と、第二端部と、少なくとも1つの内部ルーメン20とを有している。内部ルーメン20は、ドレナージ(排液)に使用される。図示のように、細長いフレキシブル本体部分12はまた、外表面を有している。カテーテル10の遠位端(患者の近く)で、スリーブ40には導入部材32が取付けられている。
【0050】
カテーテル10は更にファンネル24を有し、該ファンネル24は、その近位端が、膨張ルーメンとドレナージルーメン20とに分かれている。膨張ルーメンは、チューブ72を介して水/空気ポンプ74に連結できる。水/空気ポンプ74は、水または空気を膨張ルーメン内に流すのに使用される。
【0051】
ファンネル24のドレナージルーメンの近位端は、チューブ68を介して、尿を貯尿バッグ70に導く。ファンネル24は、貯尿バッグ70および水/空気ポンプ74に連結されるのが好ましい。ファンネル24は長時間貯尿バッグ70に連結されるが、水/空気ポンプ74には、膀胱内でカテーテル10の遠位端を膨張させるのに充分な時間だけ連結できればよい。
【0052】
ファンネル24の第一開口は、尿を、図9に示す貯尿バッグ内に排出する。第二開口のコネクタが、流体を、図10に示すポンプから保持バッグすなわちバルーン内に送給する。
【0053】
スリーブ40は、図8に示すような引裂きストリップ76を有している。引裂きストリップ76は、カテーテル10が配置された後にカテーテル10からスリーブ40を除去するのに使用される。他の実施形態では、引裂きストリップ76は、スリーブ40の過剰長さを引裂き除去すべく配置される。
【0054】
図2は図1のカテーテルの側面図であり、男性患者の尿路に対する配置方法を示すものである。細長いフレキシブル本体部分12の第二端部18のドレナージルーメンは、近位端のファンネル24を患者の体内のドレナージポート26に連結して、尿を、患者の膀胱60から貯尿バッグ70に搬送できる。カテーテル10のフレキシブル本体部分12は、膀胱60から患者の体内の外尿道口(meatus opening)46を通り、更に導入部材とスリーブ40を通って、最終的にファンネル24まで延びている。本体部分12の遠位端のドレナージポート26より近位側の位置で、膨張可能な保持バッグすなわちバルーン28が本体部分12を包囲している。バルーン28は、慣用態様で本体部分12にシールされるか、連結されている。長手方向に延びている膨張ルーメン(図4)が、膨張ポート30に終端している。該膨張ポート30は、バルーン28の内部および水または空気を導入するバルブ端部またはアームに連通している。水は膨張形バルーン28を膨張させて、チップ14を、膀胱60内のカテーテル10の本体部分12の第一端部16上に保持する。
【0055】
細長いフレキシブル本体部分12は、シリコーンゴムのように疎水性でかつ接触する生理学的流体に対して一般的に不活性でかつ生体適合性を有する比較的フレキシブルな比較的広範囲のポリマーまたはエラストマから形成できる。
【0056】
フレキシブルポリマースリーブ40は、第一端部および第二端部を有している。フレキシブルポリマースリーブ40の第一端部は、フレキシブル導入部材32に取付けられている。図2に示すように、フレキシブルポリマースリーブ40は、細長いフレキシブル本体部分12の少なくとも実質的部分をカバーするのに充分な長さを有している。フレキシブルポリマースリーブ40は、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルまたはこれらのコポリマーおよびターポリマー等のシート形成ポリマーで形成できる。或る形態では、フレキシブルポリマースリーブ40は、ポリ塩化ビニリデン、低密度ポリエチレンまたは線状低密度ポリエチレンで形成される。
【0057】
一形態では、フレキシブルポリマースリーブ40の第一端部は、フレキシブル導入部材32の第一端部の周囲から第二端部の周囲まで、フレキシブル導入部材32内で同心状に取付けられている。
【0058】
カテーテル10の細長いフレキシブル本体部分12およびフレキシブル導入部材32の1つ以上の表面は、上記特許文献5(その全内容は本願に援用する)に開示されているポリマーコーティングによりコーティングされる。
【0059】
図3は図1のカテーテルの側面図であり、女性患者の尿路に対してカテーテルを配置する方法を示すものである。この図面に示すように、女性患者にもフォリイ・カテーテルを使用できる。この実施形態では、カテーテルは尿を取出すのに使用されている。図2と同様に、患者の体内のドレナージポート26が、尿を、患者の膀胱60から貯尿バッグ70に搬送する。
【0060】
図4は、カテーテルのチップ14を示す側面図である。チップ14は一般に小さくて、患者の外尿道口内への挿入を容易にしている。チップ14は、チューブの患者側端部に配置されているところが示されている。チップ14には、該チップへの流体の出入りを可能にするドレナージポート26が示されている。チップ14の近くには、保持バッグすなわちバルーンに空気または液体を供給する膨張ポート30が設けられている。
【0061】
図5は、スライド可能な導入部材32を示す側面図である。導入部材32は、第一端部34と、第二端部36と、長手方向ボア38とを有している。長手方向ボア38は、細長いフレキシブル本体部分12の外表面上で該本体部分に沿ってフレキシブル導入部材32をスライド可能に位置決めする。導入部材32はスリーブ40の第一端部に取付けられており、これにより、スリーブ40をカテーテル10の適当な長さに沿って調節可能に配置できる。フレキシブル導入部材32は、広範囲の疎水性材料および親水性材料から形成できる。適当なポリマーとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルまたはこれらのコポリマーおよびターポリマーがあるが、これらに限定されるものではない。チューブ上のポリマーコーティングは、有機体の導入を最小にしかつ刺激を低減させるべく塗布される。同様に、導入部材32上にもコーティングが塗布される。コーティングについては、図7においても更に論じる。
【0062】
図6は、カテーテル10のスリーブ40および細長いフレキシブル本体部分12を示す側面図である。スリーブ40の第二端部44は、細長いフレキシブル本体部分12の第二端部18の近くに取付けられている。この実施形態では、スリーブ40の第一端部16が、本体部分12の第一端部の近くに終端しているところが示されている。しかしながら、使用に際しては、本体部分12の第一端部が膀胱内に挿入され、したがってこの場合にはスリーブ40は、チューブの全長より短い長さをカバーすることになる。
【0063】
スリーブ40は、挿入時または使用時に、微生物が不意に本体部分12に接触しまたは付着することを防止するバリヤを構成する。図示の実施形態では、スリーブ40は、スライド可能な導入部材32に取付けられており、カテーテル10に沿ってスライドできる。このように、スリーブ40は、導入部材32が患者から離れる方向にスライドするときに、ひだ65を付して畳まれるすなわちアコーディオン状になるフレキシビリティを有している。スリーブ40のフレキシビリティは、導入部材32が患者に隣接する方向にスライドするとき、スリーブ40の長さを増大することを可能にする。
【0064】
図7に示すように、ポリマーコーティング48が、細長いフレキシブル本体部分12の外表面にグラフト重合されている。同様に、ポリマーコーティング50がフレキシブル導入部材32の外表面にグラフト重合されているところが示されている。
【0065】
ポリマーコーティングは、カテーテルの少なくとも一部に沿って塗布される。一実施形態では、ポリマーコーティング48は、細長いフレキシブル本体部分12の全長に沿って塗布されている。或いは、コーティング48は、男性患者または女性患者に関連してまたはこれらの患者の体内に関連して配置されかつ使用するのに充分な長さとなるように、細長いフレキシブル本体部分12の一部のみに沿って塗布できる。この点に関して特に図2および図3を参照すれば、カテーテル10が男性患者または女性患者の尿路内に配置されているところが示されている。外表面のコーティング48が設けられたカテーテルの部分は、尿路の内壁のような体開口である外尿道口46に全体として隣接しており、ポリマーコーティング48は、少なくとも患者の外尿道口46の両端部に跨って設けられている。この構成により、少なくとも尿道の内壁には殺菌薬が適用される。
【0066】
ポリマーコーティングは、種々の時点でカテーテルに塗布できる。一実施形態では、ポリマーコーティング48はカテーテル10の製造時に設けられ、コーティングされたカテーテル10は、無菌状態でパッケージされるか、後で使用されるときに適当な手段によりパッケージされかつ殺菌される。このような場合、受入れらているパッケージング技術を用いることにより、カテーテルは無菌パッケージから取出され、チップ部分14が、図2および図3に示すように尿道を上方に通され、カテーテル10を配置する。
【0067】
ポリマーコーティングは、カテーテルの異なる部分に沿って塗布できる。一実施形態では、図7に最も良く示すように、ポリマーコーティング48は本体部分12の外表面に限定され、ドレナージルーメン20を形成する内壁上には同様なコーティングは設けられない。これにより、ドレナージルーメンの表面へのこびりつきおよび/または塞栓が予防される。ポリマーコーティング48への殺菌薬の長手方向塗布が最小化された形態では、体組織と殺菌薬との接触が小さくなり、体組織の刺激が大幅に軽減される。もちろん、或る量の殺菌薬または事実上全ての殺菌薬を組織刺激薬で構成できることは理解されよう。
【0068】
図8は、スリーブ40の遠位端と近位端との間に配置された引裂きストリップ76を示す側面図である。引裂きストリップ76は、本体部分12からスリーブ40の全体を除去するか、カテーテル10の配置後にスリーブ40の過剰部分を引裂き除去するのに使用できる。図8に示すように、スリーブ40は、チューブの本体部分12上でひだを付して畳まれている。引裂きストリップ76に沿ってスリーブ40を切断することにより、スリーブ40の全体または過剰長さを除去できる。
【0069】
図9は、貯尿バッグ70を示す斜視図である。貯尿バッグ70は開口71を有している。開口71は、チューブ68を介して、カテーテル10の近位端のファンネル24(図1)に連結される。貯尿バッグ70は、1回使用後に使い捨てるか、空にして多数回使用するように設計できる。
【0070】
図10は、水/空気ポンプ74を示す側面図である。ポンプ74は、開口75およびチューブ72を通して、水をカテーテルのファンネル24内に、最終的には患者の膀胱内に配置された保持バッグすなわちバルーン28(図2)内にポンピングできる。バルーン28は、カテーテルのチップ14を膀胱内に保持し、かつドレナージポート26(図2)を適正位置に維持して尿が通り得るようにする。
【0071】
以下に示すように、閉形尿ドレナージシステムの使用時に、バクテリアが膀胱内に侵入する幾つかのルートがある。本明細書に開示する抗菌コーティングをフォリイ・カテーテルの内面および外面に使用することにより、UTI(尿路感染)の発生を劇的に低減できる。カテーテルの挿入時にバクテリアが尿路内に引き込まれないようにするため、無菌技術が用いられている。カテーテル上に保護無菌スリーブを備えた、本明細書に開示するカテーテルの使用により、汚染問題を最小にでき、したがって看護効率が高められる。患者の外尿道口とフォリイ・カテーテルとの間の界面がカテーテル上のコーティングのみによって保護される構成の従来設計のフォリイ・カテーテルとは異なり、本明細書に開示するカテーテルは完全な解決を達成できる。
【0072】
再び図1−図10を参照すると、フレキシブル導入器32は、前述のように、集中的な迅速殺菌効果を発揮すべく、細長いフレキシブル本体部分12のポリマーコーティング48とは異なった殺菌活性プロファイルをもつように設計され、所定位置に残して置かれて、バクテリアのあらゆる侵入ルートを本質的に遮断するか、配置後に除去される。前述のように、フレキシブル導入器32は、カテーテル10の細長いフレキシブル本体部分12上に嵌装されかつファンネル24の近くに取付けられたフレキシブルポリマースリーブ40に同軸状に取付けられている。当業者ならば理解されようが、この構成により、カテーテル10が配置されるときおよび患者の体内に留置される間にカテーテルの外面が操作され、内面は無菌である。図2および図3により詳細に示すように、カテーテル10の細長いフレキシブル本体部分12が尿道内に前進されるとき、フレキシブルスリーブ40はアコーディオン状に変形される。任意であるが、引裂きストリップ(図8)を設け、カテーテルの配置後に除去することができる。
【0073】
他の形態では、留置カテーテルによる感染の傾向を最小にする方法が提供される。この方法はカテーテルを用意する段階を有し、カテーテルはポリマーで形成された細長いフレキシブル本体部分を有し、該細長いフレキシブル本体部分は第一端部および第二端部と、少なくとも1つの内部ルーメンと、外表面とを備え、カテーテルはフレキシブル導入部材を有し、該フレキシブル導入部材は細長いフレキシブル本体部分の外表面の周囲に第一端部および第二端部を備え、カテーテルは更にフレキシブルポリマースリーブを有し、該フレキシブルポリマースリーブは第一端部および第二端部を備え、第一端部はフレキシブル導入部材の第二端部に取付けられている。一実施形態では、フレキシブルポリマースリーブは、細長いフレキシブル本体部分の少なくとも実質的部分をカバーしかつ該本体部分に接触することなくフレキシブル導入部材を掴んで患者の体内にカテーテルを配置するのに充分な長さを有し、これにより、体開口を通って病原性有機体が侵入する機会が最小になる。一実施形態では、フレキシブル導入部材は、該導入部材を細長いフレキシブル本体部分上で該本体部分に沿ってスライド可能に位置決めするための長手方向ボアを有している。
【0074】
図11−図16には、本発明の好ましい実施形態による他の「タッチレス」カテーテル法システムが示されている。図11に示すカテーテル100は、図1に示したカテーテル10の導入部材32が導入器80/留置セグメント78に置換されている点を除き、図1のカテーテル10と同じである。カテーテル100を用いたタッチレスシステムの長所の1つは、フォリイ・カテーテルと周囲の環境との接触が最小になり、カテーテルシャフトに沿うバクテリアのルーメン外部からの侵入を防止しまたは少なくとも最小にできることである。このタッチレスシステムは、男性患者および女性患者の両方に使用できる。
【0075】
理解されようが、本明細書に開示するカテーテルの実施形態は、フォリイ・カテーテルおよびドレナージシステムの物品寿命サイクルにおける感染コントロールのための付加保護層を提供する。付加保護層は、汚染物質に不意に接触する機会を潜在的に無くし、かつカテーテルの外部から膀胱内にバクテリアが移動することを防止するバリヤを提供する。
【0076】
図11に示すタッチレスカテーテルシステムは、スリーブ40と、導入器80と、カテーテル100とを有している。システムには更にキャップ62を設けることができる。導入器80の少なくとも一部は尿道内に配置される。図示の実施形態では、この部分は留置セグメント78である。セグメント78は、ソフトでフレキシブルな材料から作られている。図11に示すスリーブ40は、チップを含むカテーテル100のシャフト全体を包囲している。キャップ62は、潤滑剤または防腐剤のような薬剤のリザーバとして機能できる。キャップ62は、真の閉システムを提供する。
【0077】
図12Aおよび図12Bは、それぞれ、着脱可能なキャップ62が装着された導入器80およびキャップ62が取外された導入器80を示す側面図である。図12Aには、キャップ62が装着された導入器80が示されている。キャップ62は、カテーテルが使用されていない時に更にバクテリアから保護する役割を果たす。図示のように、キャップ62は、留置セグメント78を備えた導入器80に取付けられている。他の実施形態では、キャップは、細長いフレキシブル本体部分12の一端に取付けることができる。導入器80に近いキャップ62内の開口は、潤滑剤または防腐剤64を貯蔵するのに使用できる。
【0078】
図12Bには、キャップ62が取外された導入器80が示されている。チューブの細長いフレキシブル本体部分の周囲の薬剤64が示されている。薬剤64は、感染を最小にする付加手段を構成する。或いは、潤滑剤64は、尿道内へのカテーテルの挿入により生じる刺激を最小にする。
【0079】
図13には、導入器80/留置セグメント78が示されている。導入器80は、スリーブ40の遠位端(すなわち、患者側の端部)に配置されかつ半剛性ポリマーで形成されている。留置セグメント78は、導入器80の延長部である。
【0080】
患者がカテーテル法の実施の用意がなされている間、「ノータッチ」システムすなわち「タッチレス」システムは、カテーテルと周囲の環境との接触を最小にする。図12−図16には、カテーテル100の挿入方法が示されている。最初に、図13に示すように、システムからキャップ62が取外される。これにより、図12Bに示すように、潤滑剤および/または防腐剤が導入器80の留置セグメント78上に残された状態になる。次に、図14および図15に示すように、留置セグメント78が尿道の外尿道口46内に配置される。この挿入過程で、留置セグメント78は、看護師が、尿道に容易にアクセスすることおよび支持することを可能にする。潤滑剤および/または防腐剤64は、カテーテルシャフトが導入器80を通って前進されるときに、カテーテルシャフトを横切って拡散される。カテーテル100が使用されている間、スリーブ40は、カテーテル100と周囲の環境(例えば、部屋および体液内の汚染物質)との直接接触を防止する。図16には、カテーテル100が患者の一モデルの外尿道口46内に挿入されているところが示されている。また、ドレナージルーメンチューブ68により、尿が貯尿バッグ70に排出されているところが示されている。
【0081】
カテーテルが取出されるとき、スリーブは、看護師とカテーテルとの間のバリヤを形成する。完全に取出されると、キャップが導入器に被せられ、残った尿がこぼれるのを防止する。
【0082】
図17には、カテーテルの使用方法が示されている。当業者ならば、この図示した方法は種々の態様で変更できることが理解されよう。例えば、他の実施形態では、図示の方法の種々の部分を結合でき、他の順序に再構成できまたは除去できる等である。
【0083】
本発明のカテーテル使用方法は、ステップ1700でスタートする。ステップ1710では、チップと、導入部材と、細長いフレキシブル本体部分と、スリーブとを備えたカテーテルが用意される。次にステップ1720では、患者または医療従事者が、ファンネルを介して、貯尿バッグおよびポンプをカテーテルに連結する。次にステップ1730では、カテーテルのチップを患者の膀胱内に挿入する。ステップ1740では、カテーテルのチップに配置されたバルーン内および膀胱内に水がポンピングされ、カテーテルを膀胱内に維持しかつドレナージポートを膀胱内の適当位置に維持する。次にステップ1750で、患者の尿を、カテーテルからファンネルを介して貯尿バッグ内に排出する。この方法はステップ1760で終了する。
【0084】
以下の詳細な説明は、尿カテーテル法に関する例および詳細を述べるものである。より詳しくは、ポリマーコーティング48、50に関する詳細(これらのコーティングの濃度および放出時間特性を含む)を説明する。
【0085】
ポリマーコーティング48、50は、多くの薬剤で構成できる。また、ポリマーコーティング48とポリマーコーティング50とは、同じでも異ならせてもよい。例えば、ポリマーコーティング48、50を形成する抗菌薬組成物は、ポリマーと、1種類以上のオリゴジナミー薬剤からなるコロイドとで構成できる。用語「オリゴジナミー薬剤(oligodynamic agent)」とは、少量であっても抗菌活性を呈するあらゆる化合物をいう。
【0086】
親水性ポリマー、疎水性ポリマーおよびこれらの両種類のポリマーの混合物を含むあらゆるポリマーを使用できる。親水性ポリマーの使用は、このようなポリマーが付加利益を有しているために有利である。これらの付加利益として、患者に快適性を与える高い潤滑性、組成物からのオリゴジナミーイオンの放出を補助する、身体からの水性流体の高い吸収性、バクテリアの付着防止、および或る金属塩に対する優れた溶解性がある。有効な親水性ポリマーは、水に溶解するか、水を含む有機溶剤に溶解するポリマーである。ポリマーを沈殿させることなくポリマー組成物に水を添加できると、水溶性塩をコーティング組成物に直接添加することが容易になる。水は、ポリマー組成物内での塩コロイドの形成を容易にする。この理由から、ポリマー溶液には、1−50重量%、より好ましくは5−30重量%の水を含有させることができる。
【0087】
塩コロイドは、アルコール、有機溶剤、または水を殆どまたは全く含有していないアルコールおよび有機溶剤の両者を用いても形成できるので、水の使用は制限されない。疎水性ポリマーが用いられる場合には、0−1重量%の水を含有するアルコールおよび有機溶剤を使用できる。
【0088】
組成物を形成するのに使用できるポリマーの例として、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリウレタンユリアおよびこれらのコポリマーを含むポリウレタンと;ポリビニルピロリドンと;ポリビニルアルコールと;ポリエチレングリコールおよびこれらのコポリマーと;ポリプロピレングリコールおよびこれらのコポリマーと;ポリオキシエチレンおよびこれらのコポリマーと;ポリアクリル酸と;ポリアクリルアミドと;カルボキシメチルセルロースと;グリコプロテインと;プロテオグリカンと;グリコスアミノグリカンと;リポプロテインと;リポサッカリドと;セルロースおよびその誘導体と;デキストランおよび他のポリサッカリドと;スターチと;グアー;キサンタンおよび他のガムおよび増粘剤;コラーゲン;ゼラチン;他の自然界に存在するポリマー;ポリテトラフルオロエチレン;ポリ塩化ビニル(PVC);ポリ酢酸ビニル;ポリ(エチレンテレフタレート);シリコーン;ポリアミド;ポリユリア;スチレンブロックコポリマー;ポリメチルメタクリレート;アクリルブタジエンスチレンコポリマー;ポリエチレン;ポリスチレン;ポリプロピレン;天然ゴムおよび合成ゴム;アクリロニトリルゴム;および上記物質のいずれかの混合物およびコポリマーがあるが、これらに限定されるものではない。ポリマーの選択は、コーティングされる基板に基いて定められる。一形態では、ポリウレタンまたはポリエーテルポリウレタンユリア等のポリウレタンコポリマーである。他の形態では、基板への接着性の高いコーティングを形成すべく、基板と化学的に同等または同一の疎水性ポリマーが、単独でまたは親水性ポリマーと組合せて使用される。
【0089】
コロイドは、一つ以上のオリゴジナミー塩からなる。オリゴジナミー金属カチオンは、塩Aと呼ばれる塩類から得られる。他の形態では、オリゴジナミー塩は、オリゴジナミー金属の1種類以上の塩からなる。塩は、同じオリゴジナミー金属の異なる塩でもよいし、異なるオリゴジナミー金属の塩でもよい。この場合に有効なオリゴジナミー金属として、銀、プラチナ、金、亜鉛、銅、セリウム、ガリウム、オスミウム等があるが、これらに限定されるものではない。更に別の形態では、オリゴジナミー金属は銀である。
【0090】
コロイドを形成するのに、他の金属の塩を使用できる。後述するように、これらの塩は、塩Bと呼ばれる。これらの塩はカチオンイオンを含んでおり、これらのカチオンイオンとして、カルシウム、ナトリウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、マンガン等があり、更に、銅、亜鉛等のオリゴジナミー金属のカチオンがあるが、これらに限定されるものではない。これらの塩はアニオンを含んでおり、これらのアニオンとして酢酸塩(アセテート)、アセチルサリチレート(acetylsalicylates)、アスコルベート(ascorbates)、ベンゾエート(benzoates)、酒石酸水素塩、臭化物、カーボネート、塩化物、クエン酸塩(シトレート)、フォレート(folates)、デオキシコレート(deoxycholates)、グルコネート、ヨウ素酸塩、ヨウ化物、ラクタート、ラウラート(laurates)、オキザラート、パルミテート、パラアミノベンゾエート、パラアミノサリチレート、パーボレート(perborates)、フェノスルホネート、ホスフェート、ピクレート、プロピオネート、サリチラート、ステアラート、スクシナート、サルファジアジン、スルフェート、硫化物、スルホナート、タートラート、チオシアン酸塩、チオグリコラート、チオ硫酸塩等のアニオン、並びに銀プロテインおよび銀エチレンジアミンテトラ酢酸があるが、これらに限定されるものではない。塩Bとしても機能する酸化物として、カルシウム、ナトリウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、マンガン等の酸化物、および銅および亜鉛等のオリゴジナミー金属カチオンがあるがこれらに限定されるものではない。
【0091】
組成物には補助成分を含めることができる。これらの補助成分として、粘度および流動性調節剤、酸化防止剤、慣用顔料、脱泡剤または除泡剤および脱色剤があるが、これらに限定されるものではない。組成物には更に、組成物に着色しまたは放射線不透過性を付与しまたは美的外観を高めるための慣用染料および顔料を含めることができる。組成物には更に、付加潤滑剤および患者の快適性および組織の健康性を高める添加物を含めることができる。
【0092】
下記機構と結合することを望む訳ではないが、コロイド中に存在する種々の金属塩の溶解性の差異から、本明細書に開示する幾つかの形態の多くの優れた特性が得られると考えられる。コロイド中での金属塩のこれらの溶解性の差異により、オリゴジナミー金属(単一または複数)に対して変化する放出動力学が得られる。例えば、本明細書に開示する組成物を備えた医療器具またはこれらの組成物でコーティングされた医療器具を用いれば、高い水溶性をもつこれらの塩はかなり迅速にコーティングから放出され、患者への器具の挿入時に導入されるバクテリアを殺すべく、抗菌活性の高い初期用量を与える。この初期用量はときどき「迅速殺菌(quick kill)」と呼ばれ、この抗菌活性は、コーティングされた器具または組成物がバクテリア培養基内に置かれたときに器具または組成物の周囲にバクテリアが全く成長しないゾーンを形成するための器具および組成物の能力として確認される。この試験は、「抑制ゾーン(zone of inhibition)」定量法として知られている。低い水溶性を有するこれらの塩は、組成物からゆっくり放出され、長時間の抗菌活性を維持できる。
【0093】
組成物中の溶解度が変化する塩を選択することにより、組成物を、当該組成物からなる物品の特定用途に適合させることができる。一形態では、本明細書に開示する組成物は、カテーテル10または100の挿入中に導入される、フレキシブル本体部分12の表面22上およびフレキシブル導入部材32または導入器80上および周囲の流体中および組織内でのバクテリアを、バクテリアの侵入および成長の長期防止後に抗菌金属塩を迅速放出することにより、および長時間に亘る溶解性の小さい金属塩のゆっくりとした放出の後に殺すように適合される。他の形態では、組成物は非常に低い溶解性をもつ銀塩を含有し、したがって、物品を包囲する流体中への銀の放出を減少させ、コーティングされた物品の表面上への微生物の付着抑制が維持されている間に、組織が銀イオンに露出されることが低減される。オリゴジナミー薬剤の放出を適合させるこの能力は、瞬間的抗菌活性および継続的抗菌活性の両方が得られるため、慣用の抗菌組成物に比べて優れている。
【0094】
組成物は、任意量の1種類以上のオリゴジナミー金属塩、酸化物または塩と酸化物との組合せを含有できる。或る形態では、組成物は、約40−50%(組成物中の全固形分の重量に基いた百分率)の1種類以上のオリゴジナミー金属塩、酸化物または塩と酸化物との組合せ、または約30−40%、または約20−30%、または約15−25%、または約10−20%、または約5−15%、または約3−8%、または約4−6%(組成物中の全固形分の重量に基いた百分率)の1種類以上のオリゴジナミー金属塩、酸化物または塩と酸化物との組合せを含有している。或る形態では、組成物は、約5%(組成物中の全固形分の重量に基いた百分率)の1種類以上のオリゴジナミー金属塩、酸化物または塩と酸化物との組合せ、または0%より大きく約5%まで、または0%より大きく約2%まで、または約3−4%(組成物中の全固形分の重量に基いた百分率)の1種類以上のオリゴジナミー金属塩、酸化物または塩と酸化物との組合せを含有している。或る形態では、組成物は、約2.5%(組成物中の全固形分の重量に基いた百分率)の1種類以上のオリゴジナミー金属塩、酸化物または塩と酸化物との組合せ、または約1%(組成物中の全固形分の重量に基いた百分率)の1種類以上のオリゴジナミー金属塩、酸化物または塩と酸化物との組合せを含有している。
【0095】
或る形態では、コーティングされたカテーテルは、コーティングされていないカテーテルに比べて、1種類以上のバクテリア、真菌または他の微生物の付着を低減させる。一形態では、コーティングは、試験管内で、5−95%の微生物付着の低減を達成する。或る形態では、コーティングは、少なくとも約30%、または少なくとも約50%、または少なくとも約75%、または少なくとも約90%、または少なくとも95%の微生物付着の低減を達成する。本明細書で使用するとき、微生物付着の低減は、上記特許文献5(該特許文献5の内容は本願に援用する)の例18で説明された手順を用いて決定される。
【0096】
一形態では、コーティングされたカテーテルは、バクテリア、真菌または他の微生物の1種類以上の種または菌株での抑制試験ゾーンを用いて証明されているような、周囲の組織および流体での抗菌効果を有している。抗菌効果の例として、微生物に関する成長抑制、殺菌および他のあらゆる有害効果があるが、これらに限定されるものではない。他の形態では、抑制ゾーンは全く形成されない。更に別の形態では、限定された抑制ゾーンが形成される。また、1つの種の幾つかの菌株には抑制ゾーンが形成される或る形態が存在するが、他の形態は存在せず、または幾つかの種については抑制ゾーンは形成されない。微生物間で抑制ゾーンが異なる他の形態が存在する。本明細書で使用するとき、抑制ゾーンは、上記特許文献5(該特許文献5の内容は本願に援用する)の例19で説明された手順を用いて決定される。一形態では、カテーテルは、コロイド状銀塩化物からなる組成物でコーティングされる。これにより得られるカテーテルは、カテーテル表面上への微生物の付着を低減させまたは無くすことができるが、銀塩化物の低い溶解性のため、低速で周囲の組織に銀を放出し、したがってカテーテルは抑制定量ゾーン内に複数のゾーンを形成しない。
【0097】
オリゴジナミー金属は、種々の時点で放出される。オリゴジナミー金属の放出プロファイルを適合させることにより、表面上および周囲の組織および流体に任意の組合せの抗菌効果をもつカテーテルを開発することができる。かくして、上記効果の任意の組合せが達成される。例えば或る形態では、微生物の特定種または菌株を低減できる一方で、これらの形態が同じ種または菌株について抑制ゾーンを殆どまたは全く形成しないように構成できる。微生物間で抑制ゾーンおよび微生物付着性の両方が異なる形態も存在する。
【0098】
異なる量のオリゴジナミー金属を放出させることもできる。例えば、最初の24時間以内に、組成物中のオリゴジナミー金属の5−100%のいずれかの量を放出させることができる。したがって、単一カテーテルから、種々の放出プロファイルを達成できる。或る形態では、最初の24時間以内に、コーティング中の75−100%のオリゴジナミー金属が放出される。他の形態では、最初の24時間以内にコーティング中の50−75%のオリゴジナミー金属が放出され、または最初の24時間以内にコーティング中の25−50%、または0−25%のオリゴジナミー金属が放出される。他の実施形態では、最初の24時間以内に約75%のオリゴジナミー金属が放出され、または最初の24時間以内に約40%のオリゴジナミー金属が放出される。他の形態は、長時間に亘る放出を行う。このような形態の1つでは、最初の1日に約38%が放出され、21日以内に約80%が放出される。本明細書で使用するとき、放出は、上記特許文献5(該特許文献5の内容は本願に援用する)の例20の溶離試験で説明された手順を用いて決定される。
【0099】
本発明のポリマーコーティング組成物の他の長所は、濡れ摩擦係数(wet coefficient of friction:COF)を達成できることである。コーティング組成物は、高潤滑性コーティングが作られるか、殆ど潤滑性のない親水性コーティングが作られるように処理される。コーティングされたカテーテルが体内の所定位置に配置された後に好ましくない滑りまたは移動を生じる危険を低減させると同時に、組織の刺激および炎症を低減させるのに充分な親水性が得られるようにするため、約0.100−約0.0300の範囲内の中間COF値をもつ形態が存在する。高潤滑性が望まれる他の形態では、約0.040−約0.060の範囲内のCOF(水中に1時間浸漬後)を達成でき、または1時間浸漬後の約0.300−約0.400の範囲内のCOF、または約0.100−約0.200の範囲内のCOF、または約0.200−約0.300の範囲内のCOFを達成できる。他の実施形態では、1時間浸漬後の約0.337−約0.373の範囲内のCOF、または約0.040−約0.060の範囲内のCOF、または約0.100−約0.300の範囲内のCOFを達成できる。本明細書で使用するとき、COFは、上記特許文献5(該特許文献5の内容は本願に援用する)の例21で説明された手順を用いて決定される。この例21は気管内チューブに関するものであるが、カテーテル等の全てのコーティングされた表面に対して使用できるものである。
【0100】
本明細書に開示するポリマーコーティングの形成に使用される組成物の他の長所は、ポリマー組成物内にコロイドを形成することにより、最小粒径を有する金属塩用超微細粒子が形成されることである。この最小粒径は、沈殿および凝集を低減させる。組成物中にコロイドを使用することにより、従来技術で使用されている懸濁液に付随する困難性なくして多量の抗菌性金属を組入れることができる。
【0101】
慣用の抗菌ポリマー組成物に付随する問題を低減させるか無くすことにより、長時間に亘って最適抗生物質活性を得るべく選択された特定塩組合せにより適合化できる特定抗菌イオン放出プロファイルを有する特定抗菌イオン濃度をもつ再現性ある組成物を得ることができる。例えば、このような組成物は、例えばフォリイ・カテーテルのように長期間使用する器具について、5日以内、または14日以内、または30日以内に、多量の組成物のオリゴジナミー薬剤を放出するように適合化できる。
【0102】
適合化された濃度および時間放出デリバリを、特定銀塩のコロイドを含有するポリウレタン組成物に関連して以下に更に説明する。これは1つの形態の単なる一例であって、当業者ならば、本発明の開示に基いて、特定目的に適した放出プロファイルを有する組成物を提供すべく、異なる溶解性をもつ塩を拾い出しかつ選択できることは理解されよう。
【0103】
一実施形態では、CardioTech International, Inc.社から入手できるポリエーテル ポリウレタン−尿素ブロックコポリマーの4.7%溶液から、75/25重量比のTHF/アルコール混合物であるコーティング溶液が形成される。充分な量の10%銀硝酸塩(AgNO)水溶液がコポリマー溶液に添加され、溶液中のコーティング固形分の重量に基いて約15%の最終銀濃度を形成する。
【0104】
一実施形態では、塩化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムおよび乳酸ナトリウム(いずれも1.0%溶液)が、充分な量でコポリマー溶液に添加され、各塩を組成物中に存在する15%の銀硝酸塩と反応させる。最終コーティング組成物内には、塩化銀、ヨウ化銀、クエン酸銀、酢酸銀および乳酸銀のコロイドが形成される。コーティング組成物はまた、25%の未反応銀硝酸塩、並びに銀硝酸塩および亜鉛硝酸塩の生成物を含有している。組成物中の種々の塩の溶解性の差異により、当該組成物でコーティングされた器具が体液に露出されたときに、コーティング組成物中のオリゴジナミー銀の種々の延長された放出速度を得ることができる。
【0105】
この実施形態では、銀硝酸塩は組成物中に存在する塩のうち最も溶解性が高く、したがって、コーティングが体液に最初に露出されたときに迅速に放出される。銀硝酸塩よりは溶解性が低いが、存在する他の塩よりは高い溶解性を有する乳酸ナトリウムが次に放出される。次に酢酸銀が放出され、相対溶解性に基いて、その後にクエン酸銀、次に銀塩化物、および最後に銀ヨウ化物がコーティング組成物から放出される。
【0106】
薬剤は、種々の時点で放出させることができる。例えば、組成物からのオリゴジナミー薬剤の初期放出および放出期間は、幾つかのファクタに基いて定められる。これらのファクタとして、コロイド中に形成された特定塩の相対水溶性およびコロイド中の塩の濃度がある。この放出は、例えば数日から数ヶ月に亘る期間に定めることができ、コーティングすべき器具の意図した目的で組成物中に形成された塩の選択および塩の数により適合化される。
【0107】
ポリマーコーティングは、多くの組成物で形成できる。例えば、本明細書に開示したポリマーコーティングの組成物には、オリゴジナミー金属の塩または酸化物に加えて1種類以上の付加活性剤を含有させることができる。活性剤は組成物中に保持しておくか、所望速度で組成物から放出させまたは所望の放出プロファイルをもたせることができる。このような活性剤の限定されない例として、抗バクテリア薬等の抗菌薬、免疫増進剤、抗がん剤、脈管形成剤、ポリミキシン、抗真菌薬、抗ウイルス薬、抗生物質、発育因子、サイトキン、免疫グロブリン、製剤、ヌトラセウティカルズ(nutraceuticals)、アンギオスタティック剤(angiostatics agent)があり、これらには、血液凝固抑制剤、抗腫瘍剤、発育因子、抗脈管形成剤、殺精子剤、麻酔薬、鎮痛剤、血管拡張物質、傷治癒薬、植物エキスおよび他の治療薬および診断薬が含まれる(但し、これらに限定されない)。他の活性剤として、除草剤、殺虫剤、除藻類剤、防臭剤、防霧剤、およびUVおよび他の遮光剤がある。組成物には更に、オリゴジナミー金属の抗菌効果を高める金属塩、例えばプラチナ群金属または電食作用を促進する他の金属を含めることができる。或る形態では、付加抗菌化合物とオリゴジナミー金属化合物とを組合せることにより、増強された抗菌活性、例えば協力抗菌活性が得られる。
【0108】
一実施形態では、活性剤は、組成物の組成物中に任意の量で有利に存在する。この量は、組成物の乾量に基いて、組成物の乾量の約0.1−約50%、または1−30%を含むことができる。
【0109】
下記薬剤は、抗菌活性、抗バクテリア活性、抗ウイルス活性または抗真菌活性を有し、かつ本明細書に開示するポリマーコーティングの組成物中のポリマーおよびコロイドに同伴する薬剤の種類の例である。当業者ならば、これらの薬剤は非限定的な例であること、および他の活性剤を、特別に列挙した薬剤を組入れるのと同様な方法で、本明細書に開示したポリマーコーティングのコポリマー中に組入れることができることが理解されよう。
【0110】
本明細書に開示するポリマーコーティングの組成物には、付加成分を含めることもできる。例えば、組成物には、オリゴジナミー金属の抗菌効果を高める金属、例えばプラチナ群の金属または電食作用を促進する他の金属の塩を含めることができる。また、組成物には、オリゴジナミー金属の放出に影響を与える薬剤を含めることができる。
【0111】
或る形態では、活性剤は1種類以上のビグアニドを有し、ビグアニドの多くは、抗菌活性、抗ウイルス活性、抗バクテリア活性または抗真菌活性またはこれらの幾つかを組合せた活性を有している。本明細書で使用する用語「ビグアニド(biguanide)」には、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)塩酸塩およびクロルヘキシジン化合物が含まれる。クロルヘキシジンとは、化学的化合物N,N’’−ビス(4−クロロフェニル)−3,12−ジイミノ−2,4,11,13−テトラアザテトラーデ−カネジイミドアミド(CAS登録番号55−56−1)を示す用語である。クロルヘキシジン化合物としてクロルヘキシジンをもたない塩基並びにクロルヘキシジンの塩があり、これらには、クロルヘキシジン・ジホスファニレート、クロルヘキシジン・ジグルコネート、クロルヘキシジン・ジアセテート、クロルヘキシジン・ジヒドロクロリド、クロルヘキシジン・ジクロリド、クロルヘキシジン・ジヒドロヨージド、クロルヘキシジン・ジペルクロレート、クロルヘキシジン・ジニトレート、クロルヘキシジン・スルフェート、クロルヘキシジン・サルファイト、クロルヘキシジン・チオスルフェート、クロルヘキシジン・ジアシッド・ホスフェート、クロルヘキシジンジフルオロホスフェート、クロルヘキシジン・ジホルメート、クロルヘキシジン・ジプロピオネート、クロルヘキシジン・ジヨードブチレート、クロルヘキシジン・ジ・n・バレレート、クロルヘキシジン・ジカプロエート、クロルヘキシジン・マロネート、クロルヘキシジン・スクシネート、クロルヘキシジン・スクシナメート、クロルヘキシジン・マルエート、クロルヘキシジン・タートレート、クロルヘキシジン・ジモノグリコレート、クロルヘキシジン・モノ・ジグリコレート、クロルヘキシジン・ジラクテート、クロルヘキシジン・ジ・α・ヒドロキシイソブチレート、クロルヘキシジン・ジグルコヘプトネート、クロルヘキシジン・ジ・イソチオネート、クロルヘキシジン・ジベンゾエート、クロルヘキシジン・ジシナメート、クロルヘキシジン・ジマンデレート、クロルヘキシジン・ジ・イソフタレート、クロルヘキシジン・イソシオネート、クロルヘキシジン・ジ・ヒドロキシ・ナプソエート、およびクロルヘキシジン・エンボネートがあるが、これらに限定されるものではない。クロルヘキシジン塩として、アセテート(酢酸塩)、フォメート、グルコネート、ヒドロクロリド、イソエチオネート、ラクテート(乳酸塩)、およびクロルヘキシジンのスクシナメートがある。これらのビグアニド化合物は当業界で知られており、慣用方法で製造できる。他の多くのビグアニドが知られており、本発明に使用することも考えられる。ビグアニドはポリマーを形成することもできる。これらのビグアニドポリマーを使用することも考えられる。
【0112】
抗菌活性を呈する多くの活性剤がある。例えばクロルヘキシジンは、抗菌活性をも呈する活性剤である。任意の有効量のクロルヘキシジンを使用することができる。或る形態では、クロルヘキシジンは、組成物中の全固形分に基いて、0%より大きく約50%までの量(重量%)、または0%より大きく約10%までの量、または約10%と約50%との間の量、または約2%と約10%との間の量、または約10%と約20%との間の量、または約20%と30%との間の量、または約25%と約50%との間の量、または約30%と約40%との間の量、または約40%と約50%との間の量で使用される。
【0113】
或る形態では、活性剤は1種類以上の塩素化フェノールを有し、多くの塩素化フェノールは、抗菌活性、抗バクテリア活性、抗ウイルス活性または抗真菌活性またはこれらの幾つかの組合せ活性を有している。使用できる塩素化フェノール化合物として、パラクロロメタキシレノール、ジクロロメタキシレノール、トリクロサン(2,4,4’−トリクロロ−2ヒドロキシ・ジフェニル・エーテル)、2−クロロフェノール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール、2,4−ジクロロフェノール、2,4,6−トリクロロフェノール、2,3,4,6−テトラクロロフェノール、ペンタクロロフェノール、4−クロロレソルシノール、4,6−ジクロロレソルシノール、2,4,6−トリクロロレソルシノール、アルキルクロロフェノール(p−アルキル−o−クロロフェノール、o−アルキル−p−クロロフェノール、ジアルキル−4−クロロフェノールおよびトリアルキル−4−クロロフェノールを含む)、ジクロロ−m−キシレノール、クロロクレゾール、o−ベンジル−p−クロロフェノール、3,4,6−トリクロロフェノール、4−クロロ−2−フェニルフェノール、6―クロロ−2−フェニルフェノール、o−ベンジル−p−クロロフェノール、および2,4−ジクロロ−3,5−ジエチルフェノールがあるが、これらに限定されるものではない。
【0114】
或る形態では、活性剤は1種類以上の第四級アンモニウム化合物からなり、該第四級アンモニウム化合物としてモノマーおよびポリマー第四級アンモニウム化合物があり、これらの多くは、抗菌活性、抗バクテリア活性、抗ウイルス活性または抗真菌活性またはこれらの幾つかを組合せた活性を有するが、これらに限定されるものではない。第四級アンモニウム化合物の例として、ベンズアルコニウムクロリド、ベンズエトニウムクロリド、他のベンズアルコニウムまたはベンズエトニウムハリド、セチルピリジニウムクロリド、デクオリニウム(dequalinium)クロリド、N−ミリスチル−N−メチルモルホリニウム・メチルスルフェート、ポリ−[N−[3−(ジメチルアンモニオ)プロピル〕−N’−〔3−(エチレンオキシエチレン・ジメチルアンモニオ)プロピル〕ユリアジクロリド]、α−4−[1−トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリド−2−ブテニル]−ω−トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリド、α−4−[1−トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリド−2−ブテニル]ポリ[1−ジメチルアンモニウムクロリド−2−ブテニル]―ω−トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリド、ポリ〔オキシ−エチレン(ジメチルイミニオ)エチレン(ジメチルイミニオ)−エチレンジクロリド〕、エチルヘキサデシル・ジメチルアンモニウム・エチルスルフェート、ジメチルアンモニウム・エチルスルフェート・ジメチルエチルベンジル・アンモニウムクロリド、ジメチルベンジルアンモニウムクロリド、およびセチルジメチルエチル・アンモニウムブロミドがあるが、これらに限定されるものではない。
【0115】
他の実施形態では、活性剤は、一般的な抗菌薬、サイトキン、免疫グロブリンまたは製剤およびヌトラセウティカルズからなる。抗菌薬、抗感染薬、抗ウイルス薬および抗バクテリア薬として有効な一般的な活性剤として、アレキシジン、アミノグリコシド(例えば、ゲンタマイシンおよびトブラマイシン(Tobramycin))、アモキシシリン、アムホテリシン、アムピシリン、バシトラシン、ベクロメタゾン、ベンゾカイン、安息香酸、ピプラシルおよびアズトネオナム(aztneonam)等のβ−ラクタン、ベータメタゾン、バイアキシン、セフタジダイム等のセファロスポリン、セトリミド、クロラムフェニコル、クロラムフェニコル、クラリスロマイシン、クロトリマゾール、サイクロスポリン、ドサイクリン、エリスロマイシン、エチレンジアミン・テトラ酢酸(EDTA)、フラゾリジン、フシジン酸、グラミシジン、ヨウ素およびポビドンヨウ素およびプルロニック−ヨウ素錯体等のヨウ素錯体、マクロリド、ミコナゾール、ミノサイクリン、ネオマイシン、ナイスタチン、オクテニジン、ヒドロクロリド、オフロキサシン、パラクロロメタキシレン、ペニシリン、ペントキシフィリン、フェノール化合物(例えば、オルトフェニルフェノール)、フェノキシメチルペニシリン、ピクロキシジン、ポリミキシン、キノロン抗生物質(例えば、ノルフロキサシン(Norfloxacin)、オキソリニック酸、シプロフロキサシン、ペフロキサシン、エノキサシン、AM−833、ピペミディック酸およびピロミディック酸、6,8−ジフルオロ−1−(2−フルオロエチル)−1,4−ジヒドロ−4−オクソ−7−(4−メチル−1−ピペラジニイ−1)−キノリン−3−カルボキシル酸、ナラディキシック酸、およびこれらの塩)リファムピシン、ソルビン酸、スルファマイロン、スルファナミド、テトラサイクリン、トリクロカルバン、バンコマイシン、ジスロマックス、誘導体、代謝産物、およびこれらの混合物、または同様な抗菌活性を有する化合物があるが、これらに限定されるものではない。
【0116】
活性剤として有効な薬剤の他の幾つかの例として、ノンオキシノール9、アセブトロール、アセチルシステイン、アセチルサリサイクル酸、アサイクロビア(acyclovir)、AZT、アルプラゾラム、アルファカルシドール、アラントイン、アロプリノール、アムブログゾール(ambroxol)、アミカシン、アミロリド、アミノアセチル酸、アミノダローン、アミトリプチリン、アムロジピン、アスコルビン酸、アスパータム、アステミゾール、アテノロール、ベンゼラザイド、ベザフィブレート、バイオチン、ビペリデン、ビソプロロール、ブロマゼパム、ブロムヘキシン、ブロモクリプチン、バデソニド、バフェグザマック、バフロメジル、バスピロン、カフェイン、カムホルカプトプリル、カルバマゼピン、カルビドパ、カルボプラチン、セファクロール、セファレキシン、セファトロキシル、セファゾリン、セフィキシム、セフォタキシム、セフタジダイム、セフトリアグゾン、セファロキシム、セレジリン、クロラムフェニコル、クロル−フェニラミン、クロルタリドン、コリン、シラスタチン、シメチジン、シサプリド、シスプラチン、クラブラン酸、クロミプラミン、クロザピン、クロナゼパム、クロニジン、コデイン、コレスチラミン、クロモグリシック酸、シアノコバラミン、シプロテロン、デソゲストレル、デキサメタゾン、デキサパンテノール、デキストロメトロファン、デキストロプロポキシフェン、ディアゼパム、ディクロフェナック、ディゴキシン、ジヒドロコデイン、ジヒドロエルゴタミン、ジヒドロエルゴトキシン、ジルチアゼム、ジフェニドラミン、ジピリダモール、ジピロン、ジソピラミド、ドンペリドン、ドーパミン、ドキシサイクリン、エナラプリム、エフェドリン、エピネフリン、エルゴカルシフェロル、エルゴタミン、エストラジオール、エチニルエストラジオール、エトポサイド、オイカリプタス、グロバラス、ファモチジン、フェロジピン、フェノフィブレート、フェノテロール、フェンタニル、フラビン・モノヌクレオチド、フラコナゾール、フラナリジン、フルオロウラシル、フルオキセチン、フルルビプロフェン、フロセミド、ガロパミル、ゲムフィブロジル、ギングコビロバ、グリベンクラミド、グリピジド、グリシリザグラブラ、グレープフルーツシードエキス、グレープシードエキス、グリセオフルビン、グアイフェネジン、ハロペリドール、ヘパリン、ヒアルロン酸、ヒドロクロロチアジド、ヒドロコドン、ヒドロコルチゾン、ヒドロモルホン、イプラトロピウム・ヒドロオキシド、イブプロフェン、イミペネム、インドメタシン、イオへグゾール、イオパミドール、イソソルバイド・ジニトレード、イソソルバイド・モノニトレート、イソトレチノイン、ケトチフェン、ケトコナゾール、ケトプロフェン、ケトロラック、ラベタロール、ラクツロース、レシチン、レボカミチン、レボドパ、レボグルタミド、レボノルゲストレル、レボチロキシン、リドカイン、リパーゼ、イミプラミン、リシノプリル、ロペラミド、ロラゼパム、ロバスタチン、メドロキシプロゲステロン、メンソール、メトトレキセート、メチルドーパ、メチルプレドニソロン、メトクロプラミド、メトプロロール、ミコナゾール、ミダゾラム、ミノサイクリン、ミノキシジル、ミソプロストール、モルフィン、N−メチルエフェドリン、ナフチドロフリル、ナプロキセン、ニカルジピン、ニセルゴリン、ニコチナミド、ニコチン、ニコチン酸、ニフェジピン、ニモジピン、ニトラゼパム、ニトレンジピン、ニザチジン、ノルクチステロン、ノルフロキサシン、ノルゲストレル、ノルトリプチリン、オメプラゾール、オンダンステロン、パンクレアチン、パンテノール、パントテン酸、パラセタモール、フェノバービタル、誘導体、メタボライト、および同様な活性を有する他の化合物があるが、これらに限定されるものではない。単一用語として表現されているが、ときには化合物の1つのクラスを表すものと解釈されるすべての用語は、化合物のいずれかの群(例えば全てのテトラサイクリン、全てのエリスロマイシン等)を意味するものと理解すべきである。
【0117】
他の薬剤として、他の抗バクテリア薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬または抗感染薬、抗トロンビン薬、抗炎症薬、抗腫瘍薬、抗脈管形成薬、殺精子薬、麻酔薬、鎮痛薬、血管拡張物質、傷治療薬、他の治療薬および診断薬およびこれらの混合物があるが、これらに限定されるものではない。
【0118】
他の形態では、活性剤は、除草剤、殺虫剤、除藻類剤、防臭剤、防霧剤またはUVおよび他の遮光剤の1つ以上を有している。
【0119】
本明細書に開示するポリマーコーティングの組成物には、これらの活性剤または他の活性剤の任意の組合せを含めることができる。また、この組成物には、着色剤、脱色防止剤、活性剤の放出および放出速度に影響を与える薬剤、界面活性剤、接着剤、活性剤の活性を高める薬剤、溶解剤、組成物の潤滑性を高める薬剤、および組成物に有益な特性を与える他の薬剤を含めることができる。
【0120】
或る実施形態では、組成物は、2種類以上の活性剤の組合せを含んでいる。所望の結果が得られる任意の組合せを用いることができる。或る実施形態は、ポリマーおよびオリゴジナミー金属コロイドと一緒に、ビグアニド(より詳しくは、クロルヘキシジン化合物)、第四級アンモニウム化合物および塩素化フェノール(例えば、ベンザルコニウム・塩化およびパラクロロメタキシレノールまたはトリクロサン)と、トリクロサンおよび他の薬剤(例えば、ラミシジン、ポリミキシン、ノルフロキサシン、スルファマイロン、ポリヘキサメチレン・ビグアニド、アレキシジン、ミノサイクリン、ヨウ素、ベンザルコニウム塩化物およびリファムピシン)と、クロルヘキシジン+トリクロサン(任意であるが、コロイドの一部としてまたはコロイドに加えて、銀スルファジアジンを含むことができる)と、クロルヘキシジンを含まないベースおよびトリクロサンまたはこれらの2つの薬剤の組合せから得られる複合体を含む組合せとの組合せを含む。他の例として、銀スルファジアジン(コロイドの一部としてまたはコロイドに加えて)およびピペラシリンナトリウムと、ピペラシリンを含む銀スルホンアミド(コロイドの一部としてまたはコロイドに加えて)と、塩素化フェノールおよび他の抗感染薬または抗菌薬を含む銀(コロイドの一部としてまたはコロイドに加えて)とがある。
【0121】
ポリマーコーティングを作るには多くの方法がある。例えば、ポリマーコーティングを作るため、最初にコロイドが形成され、次にポリマー組成物に添加されるか、その場でポリマー組成物内で形成される。コロイド形成方法は、例えば、2種類以上の塩(少なくとも一方の塩は、オリゴジナミー薬剤の塩である)を結合することを有している。これらの塩を、塩Aおよび塩Bと呼ぶことにする。塩Aは、1種類以上のオリゴジナミー薬剤からなる。塩Bは、塩Aと反応してコロイドを形成できる1種類以上の塩からなる。塩Aおよび塩Bは、任意の量でかつ任意の順序で結合される。或る形態では、塩Aは、塩Bと比べたとき、理論量でまたは過剰量で存在する。或る場合には、塩Bは、塩Aと比べたとき、理論量でまたは過剰量で存在する。
【0122】
任意であるが、組成物には付加成分を添加できる。これらの成分として、付加オリゴジナミー薬剤、電食作用を生じさせる付加溶解可能塩、および本明細書に開示する組成物すなわちポリマーコーティングに有利な特性を付与しまたは組成物の抗菌薬活性を高める任意の他の成分があるが、これらに限定されるものではない。このような成分として、抗菌薬、抗生物質および他の医薬があるが、これらに限定されるものではない。
【0123】
開示する一形態では、組成物は、溶液を形成し、分散させ、または1種類以上のポリマーの溶液および分散液を結合することにより作られる。次に、塩Aを含む溶液がポリマー組成物に添加される。次に、塩Bを含む溶液がポリマー組成物に添加され、塩Aのオリゴジナミー薬剤(単一または複数)のコロイド状塩(単一または複数)を沈殿させる。オリゴジナミー薬剤が金属塩である場合には、塩Aの金属カチオンが塩Bのアニオンと反応する。塩Bは、塩Aの残量の幾分かまたは全部と反応するのに充分な量が、ポリマー組成物中に添加される。任意であるが、次に、他の塩が、塩Aの残量の幾分かまたは全部と反応する量で添加される。
【0124】
開示する他の形態では、過剰量または理論量の塩Aを添加した後に、塩Bがポリマー組成物に添加される。更に別の形態では、塩Aおよび塩Bが結合されてコロイドを形成し、該コロイドは次にポリマー組成物に添加される。
【0125】
この実施形態では、これらの方法で形成される最終ポリマー組成物は、塩Aのオリゴジナミーカチオンおよび塩Bのアニオンからなる1種類以上のコロイド状の塩と、塩Aのアニオンおよび塩Bのカチオンからなる1種類以上の溶解可能な塩とを含んでいる。また、溶液中では反応しないが、コロイドの安定化、抗菌薬のイオン放出速度の修正、電食作用の促進、抗菌薬の有効性の増強、または生体適合性の向上等の何らかの有益効果が得られる他の塩を、組成物に添加できる。更に、組成物には、医薬、潤滑剤、栄養剤、酸化防止剤、染料および顔料、および他の添加物(但しこれらに限定されない)を含む他の化合物を添加できる。
【0126】
上述のように、本明細書に開示するポリマーコーティングの組成物を形成するのに、任意のポリマーを使用できる。親水性ポリマーを使用する場合には、ポリマーは、水溶性であるか、幾分かの水を含む有機溶剤に溶解できるものが好ましい。ポリマーを沈殿させることなくポリマー組成物に水を添加できると、水溶性塩をコーティング組成物に直接添加することが可能になる。ポリマー組成物に水を用いることにより、塩の溶解性が増大し、この結果、より微細でかつより安定したコロイドを形成できる。しかしながら、この場合、含水量が非常に多いと、コーティング組成物の乾燥に長時間を要する。このため、一形態では、親水性ポリマー組成物中の水の量は約50%以下にする。このような濃度にすることにより、組成物中の水により得られる有利な特性を維持しつつ、より高速の乾燥時間を得ることができる。
【0127】
これに対し、疎水性ポリマーを、単独で、または親水性ポリマーと組合わせて使用する場合には、疎水性ポリマーがコロイドと一緒に沈殿するのを避けるため、組成物中に存在する水の量を制限することが望まれる。このような場合には、ポリマー組成物中に存在する水の量は1%以下であるのが好ましい。本明細書に開示するポリマーコーティングは、組成物中に水が存在しない場合でも実施できるが、幾分かの水が存在することが好ましい。かくして、疎水性ポリマーを用いる場合には、ポリマー組成物の含水量は、約0.1−1重量%にする。疎水性ポリマーを用いる場合には、アルコールまたは有機溶剤に溶解できる塩を用いるのが有利である。
【0128】
本発明に使用するのに適した水溶性銀塩の例として、硝酸銀、酢酸銀および乳酸銀があるが、これらに限定されるものではない。当業者ならば、上記列挙した「塩B」の多くは水溶性でありかつ本発明で水溶性塩として使用するのに適していることが理解されよう。アルコールおよび有機溶剤に溶解できる塩の例として、硝酸銀、ヨウ化ナトリウム、乳酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、三塩化金、三臭化金、塩化パラジウム、および水素−ヘキサクロロプラチネートがあるが、これらに限定されるものではない。本明細書に開示するポリマーコーティングに有効なアルコールの例として、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびブタノールがあるが、これらに限定されるものではない。オリゴジナミー塩の溶液の形成に使用できる有機溶剤の例として、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホオキシド(DMSO)、およびアセトニトリルがあるが、これらに限定されるものではない。これらの有機溶剤は、少量の水を含有する場合に特に有効である。
【0129】
スーパークリチカルフルイドから、ポリマー組成物を作ることもできる。最も一般的なこれらの流体は、液化二酸化炭素である。
【0130】
一形態では、コロイドが形成されるポリマー組成物は、親水性ポリマーのポリウレタンユリアである。このポリマーは、ジオール、水および有機ジイソシアネートの1つ以上の実質的に非共有架橋反応生成物である。ポリマーのユリアセグメントは、高い強度、大きい粘弾性および小さい水吸収性が得られる。これらのポリマーは、一般に、強度および弾性を維持するとともに、50−100重量%の量で水を吸収する。
【0131】
これらのポリマーの形成に有効なジオールとして、250−20,000の平均分子量をもつ中鎖および長鎖ポリ(オキシエチレン)グリコールがあるが、これに限定されるものではない。このようなジオールの例として、ユニオンカーバイド(Union Carbide)社から市販されている「カーボワックス(Carbowax)」がある。
【0132】
これらのポリマーの形成に有効な有機ジイソシアネートとして、テトラメチレン・ジイソシアネート、ヘキサメチレン・ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレン・ジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、イソホロン・ジイソシアネート、ジエチルベンゼン・ジイソシアネート、デカメチレン・1,10−ジイソシアネート、シクロヘキシレン・1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン・1,4−ジイソシアネート、メチレン・ビス(シクロヘキシル−4−ジイソシアネート)、2,4−および2,6−トリレン・ジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタン・ジイソシアネート、1,5−ナフタレン・ジイソシアネート、ジアニシジン・ジイソシアネート、トリジン・ジイソシアネート、キシレン・ジイソシアネート、およびテトラヒドロナフタレン−1,5−ジイソシアネートがあるが、これらに限定されるものではない。
【0133】
他の形態では、ポリマーコーティング組成物は、親水性ポリウレタンと、コーティングすべきポリマー基板と同様または同一のポリマーと、および任意であるが、コーティング接着および物理的特性を補助する他のポリマーとの組合せからなる。抗菌塩コロイドは、前述のようにこの組成物で作られるが、使用される第二ポリマーに基いて、塩溶液を作るのに使用される幾分かの水または全部の水がアルコールまたは他の有機溶剤に置換され、第二ポリマーの沈殿を防止する点が異なっている。他の例外は、選択される塩は、ポリマーが溶解できる溶剤と相容性のある溶剤中に溶解できなくてはならないことである。一例として、THF中の親水性ポリエーテル・ポリウレタンユリアの溶液は、等量の塩化メチレンまたはTHF中のポリ塩化ビニル(PVC)の溶液と組合わせることができる。次に、硝酸銀がエタノール中に溶解されかつ沈殿することなく溶液中に添加される。溶液に水が添加されるとPVCが沈殿する傾向があるため、硝酸銀を溶解するのに、水の代わりにエタノールが使用される。最後に、エタノール/水中の塩化亜鉛の希釈液がポリマー組成物にゆっくりと添加され、PVCを沈殿させることなく、微細な塩化銀コロイドを作る。コーティング中での水の最終濃度は、1%より小さい。次に、コーティング溶液を使用して、PVCカテーテルを浸漬コーティングする。完成したコーティングは、良く接着しており、濡れたときに耐久性および潤滑性を有しかつコロイド状の抗菌塩を含んでいる。
【0134】
他の形態では、ポリマー組成物は、本願に援用する上記特許文献6に開示されているように、親水性ポリマーを有している。一般に、ポリマーは、次の配合物、すなわち、(1)1種類以上のポリイソシアネート、(2)少なくとも2つの官能基(これらの官能基は、同じでも異なるものでもよく、かつイソシアネートの官能基と反応する)を備えた1種類以上の潤滑性ポリマー、(3)少なくとも2つの官能基(これらの官能基は、同じでも異なるものでもよく、かつシリコーンゴム基板と反応するイソシアネートの官能基および他の官能基と反応する)を備えた1種類以上の有機官能シランから作られるポリウレタン−ユリア−シランコポリマーである。これらのコポリマーは種々の方法で作ることができるが、最初にポリイソシアネート(単一または複数)および潤滑性ポリマー(単一または複数)からプレポリマーを形成し、次に有機官能シラン(単一または複数)と反応させることにより作るのが好ましい。任意であるが、イソシアネートとポリオールとの反応時に触媒を用いることができる。
【0135】
これらのポリマーの形成に有効なイソシアネートとして、4,4’−ジフェニルメタン・ジイソシアネートおよびこの位置異性体、2,4−および2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)およびこの位置異性体、3,4−ジクロロフェニル・ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(HMDI)、4、4’−ジフェニルメタン・ジイソシアネート(MDI)、1,6−ヘキサメチレン・ジイソシアネート(HDI)およびこの位置異性体、イソホロン・ジイソシアネート(IPDI)、およびトリメチロールプロパンおよびジフェニルメタン・ジイソシアネートまたはトルエン・ジイソシアネートのアダクトのようなジイソシアネートのアダクトがあるが、これらに限定されるものではない。
【0136】
これらのポリマーの形成に有効なポリオールとして、ポリエチレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ヒマシ油ポリオール、およびデスモフェン(Desmophen)A450、A365およびA160(Mobay Corporation社から入手可能)を含むポリアクリレートポリオール、ポリ(エチレン・アジペート)、ポリ(ジエチレングリコール・アジペート)、ポリカプロラクトン・ジオール、ポリカプロラクトン−ポリアジペート・コポリマー・ジオール、ポリ(エチレン−テレフタレート)ジオール、ポリカーボネート・ジオール、ポリテトラメチレン・エーテル・グリコール、ポリオキシプロピレン・ジオールのエチレンオキシド・アダクト、およびポリオキシプロピレン・トリオールのエチレンオキシド・アダクトがあるが、これらに限定されるものではない。
【0137】
これらのポリマーの形成に有効な触媒として、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N−ジメチル・シクロヘキサミン−ビス(2−ジメチル・アミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’,N’’−ペンタメチル−ジエチレン−トリアミン、および1−2(ヒドロキシプロピル)イミダゾール等の第三アミン、および錫、オクタン酸第一錫、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫メルカプチド、第二鉄アセチルアセトネート、およびジブチル錫ジリシノレエートがあるが、これらに限定されるものではない。
【0138】
これらのポリマーの形成に有効なシランとして、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピル−トリメトキシ・シラン、およびN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチル−ジメトキシ・シランのようなジアミノ−アルコキシシランがあるが、これらに限定されるものではない。
【0139】
ポリマーは、種々の部分重量から形成できる。例えば、これらのポリマーは、全ポリマーの重量に基いて7−12重量%のシランを含むのが好ましい。アルコールまたは他のイソシアネート反応性官能基に対するイソシアネート官能基の1つの比は、1.1:1−2:1である。ポリマー溶液の粘性は、ポリマーの分子量および溶液の固形分に関連しており、かつ溶液に溶剤を添加することにより調節される。一形態では、浸漬コーティング用のコポリマー溶液は、約1.5cS(センチストークス)−約20cSの範囲内の動粘性、および約0.4−約5の範囲内の固形分を有している。
【0140】
更に別の態様では、ポリマー組成物は、本願に援用する上記特許文献7に開示されているような親水性ポリマーの溶液を有している。ポリマーは、適当量のイソシアネート、ポリオールおよびポリビニル・ピロリドン(PVP)原液を混合することにより作られる。粘性および固形分を調節するため、付加溶剤を添加できる。固形分は、使用される溶剤および他の考察に基づいて、0.4−15%の範囲内にすることができる。ポリオール中の全OH基に対するイソシアネート中の全NCO基の理論比は、0.75−3.0の範囲内で変えることができる。一形態では、イソシアネートは、1分子当り少なくとも2つのNCO基を有し、ポリオールは、1分子当り少なくとも2つのOH基を有している。PVPに対する現場で形成されるポリウレタンの比は、0.05−3.0重量%の範囲内にある。
【0141】
一実施形態では、これらのポリマーを形成するのに用いられるPVPは、約50,000−2.5百万ダルトンの範囲内の平均分子量を有している。特定PVPポリマーとして、Kollidon 90、Luviscol K90、Luviscol K80、Luviscol K60(これらの全てが、BASF社(Parsippany、ニュージャージ州)から入手できる)。およびPlasdone 90、PVP K90およびPVP K120(これらの全てが、GAF社から入手できる)がある。
【0142】
一実施形態では、これらのポリマーの形成に適したイソシアネートとして、ポリメチレンポリフェニル・イソシアネート、4,4’−ジフェニルメタン・ジイソシアネートおよびその位置異性体、2,4−トリレン・ジイソシアネートおよびその位置異性体、3,4−ジクロロフェニル・ジイソシアネート、イソホロン・イソシアネート、および例えばCasChem社(Bayonne、ニュージャージ州)からVorite 63として入手できるイソシアネート・プレポリマーのようなイソシアネートのアダクトまたはプレポリマーがあるが、これらに限定されるものではない。本発明に有用性を有するポリイソシアネートの他の例として、上記非特許文献1にリストアップされているものがある。
【0143】
一実施形態では、これらのポリマーの形成に有効なポリオールとして、ポリエステル・ポリオール、ポリエーテル・ポリオール、改質ポリエーテル・ポリオール、ポリエステル・エーテル・ポリオール、ヒマシ油ポリオール、およびMobay Corporation社(Pittsburgh、ペンシルベニア州)から入手できるDesmophen A450、Desmophen A365およびDesmophen A160を含むポリアクリレート・ポリオールがあるが、これらに限定されるものではない。一形態では、CasChem, Inc.社から入手できるDB油、Polycin-12、Polycin 55およびPolycin 99Fのようなヒマシ油およびヒマシ油誘導体(但し、これらに限定されない)を含むポリオールを使用できる。他の形態では、Mobay Corporation社から入手できるDesmophen 651A-65、Desmophen 1300-75、Desmophen 800、Desmophen 550 DU、Desmophen-1600U、Desmophen-1920DおよびDesmophen 1150、およびUnion Carbide(Danbury コネチカット州)から入手できるNiax E-59その他(但し、これらに限定されない)を含むジオールを使用できる。
【0144】
これらのポリマーの形成に使用するのに適した溶剤として、イソシアネート、ポリオールおよびポリビニル・ピロリドンを溶解できる(但し、これらのいずれとも反応しない)溶剤がある。このような溶剤として、塩化メチレン、ジブロモメタン、クロロホルム、ジクロロエタンおよびジクロロエチレンがあるが、これらに限定されるものではない。
【0145】
一実施形態では、このポリマー溶液を含む組成物をコーティングとして使用する場合には、コーティングを基板に塗布した後、約75°F−約350°Fの範囲内の温度で、約2分間−約72時間の範囲内の時間をかけて硬化させる。
【0146】
ポリウレタンポリマーコーティング中の硝酸銀および塩化ナトリウムから塩化銀のコロイドを形成する方法について以下に説明する。この方法は本明細書で説明するポリマーコーティングの一形態の単なる一例であること、および任意のポリマー、またはポリマーとポリマー溶液中にコロイドを形成する塩の任意の混合物との組合せを使用できることを理解すべきである。
【0147】
この実施形態では、最初に、75/25重量比のTHF/エタノールの混合物中に、ポリエーテル・ポリウレタン−ユリアブロックコポリマーの4.7%溶液が作られる。充分な量の10%硝酸銀(AgNO)水溶液が、CardioTechコポリマー溶液中に添加され、溶液中のコーティング固形分に基いて、約15%の最終銀濃度を作る。次に、塩化ナトリウム(NaCl)の1.0%水溶液が、50%AgNOと充分に反応する量で攪拌しながら、溶液中にゆっくりと添加される。NaClがAgNOと反応して、AgNOの1/2から、水溶性の小さい塩(AgCl)と、水溶性の塩(NaNO)のコロイド状懸濁液を作る。最終コーティング溶液中の水の量は、全溶剤重量の約30%である。コーティング溶液中の最終ポリマー濃度は、溶剤およびポリマーの重量に基き、3.3%である。
【0148】
この実施形態では、次に、16Frラテックスフォリイ・カテーテルが、組成物溶液中に浸漬され、制御された速度で引出され、標準方法を用いて乾燥させることにより、組成物でコーティングされる。完成したコーティングは、水溶性を有し、したがって高速放出されるAgNOと、非水溶性で、したがってゆっくりと放出されるAgClとを含有している。
【0149】
この実施形態では、本明細書に開示するポリマーコーティングの組成物中に、活性剤が適当な方法で組入れられる。例えば、一形態では、活性剤は、組成物および活性剤の両方に適した溶剤のコポリマー組成物の成分と混合される。このような溶剤として、組成物の製造方法において上述した溶剤があるが、これらに限定されるものではない。
【0150】
他の形態では、活性剤(単一または複数)は、重合前にコポリマーを形成するモノマーと混合される。この形態では、活性剤がポリマー条件によって活性を失われないこと、および重合を妨げないことが望まれる。次に、モノマー成分が、当業界で知られた方法により重合される。更に別の方法では、ポリマーが前述のようにして形成され、その後、ポリマー溶液に活性剤が添加される。
【0151】
活性剤は、本明細書に開示するポリマーコーティングのポリマー組成物中で溶解できても或いはできなくてもよく、または溶解性活性剤と非溶解性活性剤との組合せでもよい。溶解された活性剤は、任意の手段で達成できる。或る形態では、活性剤は、本明細書に開示する組成物を作るのに使用されるいずれかの溶液に添加する前に、最初に適当な溶剤中で溶解される。或る形態では、活性剤は、本明細書に開示する組成物の溶液に乾燥活性剤を直接添加することにより溶解できるようになり、前記組成物中に溶解する。
【0152】
本明細書に開示するポリマーコーティングの或る形態には、非溶解性活性剤が使用される。一形態では、活性剤は、本明細書に開示する溶液に添加する前に、別の溶剤中に分散される。他の形態では、本明細書に開示する組成物を作るのに使用される任意の溶液中に直接分析される。これらの技術の組合せも使用される。
【0153】
前述のように、本明細書に開示するポリマーコーティングの抗菌組成物は、予成形カテーテルのコーティングとして使用され、オリゴジナミーイオンの継続的放出により、カテーテルの表面およびカテーテルを包囲する環境に抗菌活性を付与する。コーティングは、カテーテルの任意の表面または表面群の全部または一部に塗布できる。他の形態では、1つ以上の表面の一部のみにコーティングされる。他の形態では、幾つかの表面の全体がコーティングされ、一方、他の表面は一部のみがコーティングされる。部分コーティングは、例えば、カテーテルまたはカテーテルコンポーネントの一部のみをコーティング組成物中に浸漬するか、カテーテルまたはカテーテルコンポーネントの一部のみにコーティング組成物をスプレーすることにより行うことができる。
【0154】
或る形態では、本明細書に開示する組成物は、高固形分溶液として作られかつ単独でまたは他のポリマーと混合されて、カテーテル上にコーティングするのではなく、カテーテル自体を形成する。本明細書に開示するカテーテルまたはカテーテルコンポーネンツの形成に有効なポリマーとして、天然ゴムまたは合成ゴム(特に、ラテックスゴム、アクリロニトリルゴム)、PVCプラスチゾル、PVCポリウレタン、シリコーン、ポリカーボネート、アクリル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ(エチレン・テレフタレート)、ポリエステル、ポリユリア、スチレン−ブロック・コポリマー、ポリメチル・メタクリレート、アクリル−ブタジエン−スチレン・コポリマー、ポリスチレン、セルロースおよび上記いずれかの誘導体およびコポリマーがあるが、これらに限定されるものではない。
【0155】
非制限的な例として、本明細書に開示する組成物は、標準形態の浸漬方法により、カテーテルおよび他の浸漬ラテックス物品の製造のためにラテックスゴム中に混合でき、ビニルプラスチゾルは浸漬可能かつ鋳造可能な抗菌PVC器具を作るべく組成物と混合できる。かくして、最終物品は、他のポリマー成分と混合される、本明細書に開示する1種類以上の組成物で形成できる。
【0156】
或いは、本明細書に開示する組成物は、カテーテルの浸漬製造に使用できる高固形分コーティング組成物に配合できる。本明細書に開示する組成物は、他の方法、例えば射出成形および押出成形により乾燥および溶融加工できる。組成物は、抗菌物品の射出成形および押出成形を行うため、単独で使用するか、他の任意の溶融加工可能材料と配合することができる。
【0157】
例えばポリマーコーティング48および/またはポリマーコーティング50のようなコーティングとして使用するとき、組成物は、当業界で知られた方法を含む任意の手段により塗布できる。例えば、組成物は物品上にブラシで塗布するか、スプレーすることができ、或いは物品を組成物中に浸漬することができる。例えば、カテーテルは、約10−80ipm(inches per minute:1分間当りのインチ)の速度または約40ipmの速度で、抗菌ポリマー溶液中に浸漬できる。カテーテルは、約0−30秒間または約5−15秒間抗菌ポリマー溶液中に留めておくことができる。次にカテーテルは、約10−80ipmまたは約15−30ipmの速度で引出すことができる。ひとたびカテーテルが、本明細書に開示するコポリマーでコーティングされたならば、少なくとも約10分間空気乾燥させ、次にオーブン内で約40−100℃の温度で、約5−60分間乾燥させることにより、乾燥が完了する。一形態では、オーブン乾燥は、約50℃の温度で、約15分間行われる。任意であるが、カテーテルは、残留溶剤を除去するため、約40−100℃の温度で、約5−60分間、熱風流で乾燥させることができる。当業者ならば、前述のパラメータは単なる例示であり、基板およびコーティングの組成物およびコーティングされた物品の所望の特徴に基いて変えられることは理解されよう。
【0158】
カテーテルの単位表面積内に含有されるオリゴジナミー金属化合物の種々の量は、表面積の1平方センチメートル当りのオリゴジナミー金属化合物のマイクログラムの単位(μg/cm)で表される。このパラメータの操作により、放出速度すなわち放出プロファイルを調節する付加手段が得られる。達成可能な任意の濃度を使用できる。或る形態では、物品は、約40−約50μg/cmのオリゴジナミー金属化合物(単一または複数)、または約50−約100μg/cm、または約50−約75μg/cm、または約25−約50μg/cm、または約30−約40μg/cm、または約20−約30μg/cm、または約25−約30μg/cm、または約10−約20μg/cm、または約15−約200μg/cm、または約10−約15μg/cm、または約5−約15μg/cm、または約5−約10μg/cm、または約4−約7μg/cm、または約11−約14μg/cmのオリゴジナミー金属化合物(単一または複数)を含有している。或る形態では、物品は、約13−約8μg/cmのオリゴジナミー金属化合物(単一または複数)を含有している。上記範囲は、コーティングされた物品並びに組成物から形成された物品について得られる。
【0159】
前述のように、一形態では、本明細書に開示する組成物は、カテーテルの表面にコーティングされるか、カテーテルの形成に使用される。これと同じことは、組成物が1種類以上の活性剤を有している場合についてもいえる。
【0160】
本明細書に開示の全ての目的または長所が、いずれかの特定実施形態によっては必ずしも達成できないことは理解すべきである。かくして、例えば、当業者ならば、本発明の実施形態は、本明細書で教示されまたは支持されたような他の目的または長所を達成する必要なくして、本明細書で教示されたような1つの長所または一群の長所を達成しまたは最適化する方法で実施できることが理解されよう。当業者ならば、本明細書に開示する変更形態に加えて、各特徴について他の既知の均等物を組入れることにより本発明の原理による器具および/またはシステムを構成できるであろう。
【0161】
以上、例示の実施形態について特別に説明したが、当業者ならば、種々の他の変更形態は明らかであろうし、かつ本発明の精神および範囲から逸脱することなく容易に達成できるであろう。また、本発明の実施形態の特定の特徴および態様の種々の組合せまたはサブ組合せが可能でありかつ本発明の範囲内に含まれることも理解されよう。したがって、開示された本発明のモードを変えるため、本明細書に開示の種々の特徴および態様を組合せるか、互いに置換できることも理解すべきである。かくして、本明細書に開示した本発明の範囲は、説明した特定実施形態により制限されるべきではなく、特許請求の範囲の記載により定められるべきものである。
【符号の説明】
【0162】
10、100 カテーテル
12 細長いフレキシブル本体部分
24 ファンネル
26 ドレナージポート
28 保持バッグ(バルーン)
32、80 導入部材(導入器)
40 スリーブ
48、50 ポリマーコーティング
70 貯尿バッグ
74 水/空気ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体開口内に留置導入するカテーテルにおいて、
ポリマーで形成された細長いフレキシブル本体部分を有し、該細長いフレキシブル本体部分は、第一端部および第二端部と、少なくとも1つの内部ルーメンと、外表面とを備え、
フレキシブル導入部材を有し、該フレキシブル導入部材は、第一端部および第二端部を備えかつ前記細長いフレキシブル本体部分の前記外表面の周囲に配置され、
フレキシブルポリマースリーブを更に有し、該フレキシブルポリマースリーブは第一端部および第二端部を備え、前記フレキシブルポリマースリーブの前記第一端部は前記フレキシブル導入部材に取付けられることを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記少なくとも1つの内部ルーメンと流体連通しかつ前記細長いフレキシブル本体部分の第二端部に配置されるファンネルを更に有していることを特徴とする請求項1記載のカテーテル。
【請求項3】
前記フレキシブルポリマースリーブの第二端部は、前記ファンネルに取付けられることを特徴とする請求項2記載のカテーテル。
【請求項4】
前記細長いフレキシブル本体部分の第一端部は、チップ部分に終端していることを特徴とする請求項3記載のカテーテル。
【請求項5】
前記フレキシブルポリマースリーブは、カテーテルの配置後に該フレキシブルポリマースリーブを取外すための、該フレキシブルポリマースリーブの少なくとも一部の長さに沿って長手方向に配置された引裂きストリップを更に有していることを特徴とする請求項4記載のカテーテル。
【請求項6】
前記ポリマーは疎水性ポリマーであることを特徴とする請求項1記載のカテーテル。
【請求項7】
前記カテーテルはフォリイ・カテーテルであることを特徴とする請求項1記載のカテーテル。
【請求項8】
前記フレキシブル導入部材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、またはこれらのコポリマーおよびターポリマーから選択されたフレキシブルポリマーで形成されていることを特徴とする請求項1記載のカテーテル。
【請求項9】
前記フレキシブルポリマースリーブは、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、またはこれらのコポリマーおよびターポリマーから選択されたシート形成ポリマーで形成されていることを特徴とする請求項1記載のカテーテル。
【請求項10】
前記フレキシブルポリマースリーブは、ポリ塩化ビニリデン、低密度ポリエチレンまたは線状低密度ポリエチレンで形成されていることを特徴とする請求項9記載のカテーテル。
【請求項11】
前記細長いフレキシブル本体部分の前記外表面の少なくとも一部および前記フレキシブル導入部材の少なくとも1つの表面にポリマーコーティングを更に有していることを特徴とする請求項1記載のカテーテル。
【請求項12】
前記ポリマーコーティングは、
少なくとも1つのポリマーと、
1種類以上のオリゴジナミー金属の塩または酸化物を含むコロイドとからなる組成物を有し、前記1種類以上のオリゴジナミー金属の塩または酸化物は、1種類以上の有機体が組成物に微生物付着することを抑制することを特徴とする請求項11記載のカテーテル。
【請求項13】
前記1種類以のオリゴジナミー金属の塩または酸化物は、1種類以上の病原の培養物培上に置かれたときに、1種類以上の病原に対する抑制ゾーンを形成することを特徴とする請求項12記載のカテーテル。
【請求項14】
前記1種類以のオリゴジナミー金属の塩または酸化物は、1種類以上の病原の培養物培上に置かれたときに、1種類以上の病原に対する抑制ゾーンを形成しないことを特徴とする請求項12記載のカテーテル。
【請求項15】
前記1種類以上のオリゴジナミー金属の塩または酸化物は銀塩であることを特徴とする請求項12記載のカテーテル。
【請求項16】
前記銀塩は、塩化銀、ヨウ化銀、クエン酸銀、乳酸銀、酢酸銀、プロピオン酸銀、サリチル酸銀、臭化銀、アスコルビン酸銀、銀ラウレルスルフェート(silver laurel sulfate)、リン酸銀、硫酸銀、酸化銀、安息香酸銀、炭酸銀、銀スルファジアジン(silver sulfadiazine)、銀グルコネート(silver gluconate)から選択されることを特徴とする請求項15記載のカテーテル。
【請求項17】
前記コロイドは、2種類以上のオリゴジナミー金属の塩からなることを特徴とする請求項12記載のカテーテル。
【請求項18】
1種類以上のオリゴジナミー金属塩は、異なる水溶性を有していることを特徴とする請求項12記載のカテーテル。
【請求項19】
前記ポリマーコーティングのポリマーは、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリサッカリド、スターチ、グアー、キサンタンおよび他のガム、コラーゲン、ゼラチン、生物学的ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ(エチレン・テレフタレート)、シリコーン、ポリエステル、ポリアミド、ポリユリア、スチレン−ブロックコポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、アクリルーブタジエンースチレンコポリマー、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、天然ゴムおよび合成ゴム、アクニトリルゴム、セルロース、またはこれらの混合物、誘導体またはコポリマーから選択されることを特徴とする請求項12記載のカテーテル。
【請求項20】
前記組成物は更に、抗バクテリア剤、免役増進剤、抗真菌薬、抗ウイルス薬、抗生物質、製剤、麻酔薬、鎮痛剤、またはこれらの組合せから選択された少なくとも1つの活性剤からなることを特徴とする請求項12記載のカテーテル。
【請求項21】
前記カテーテルは、フレキシブル導入部材の第一端部に取付けることができる着脱可能なキャップを更に有していることを特徴とする請求項1記載のカテーテル。
【請求項22】
前記導入部材は留置セグメントを有していることを特徴とする請求項1記載のカテーテル。
【請求項23】
前記導入部材は更に、前記フレキシブル導入部材を前記外表面上でこの外表面に沿ってスライド可能に位置決めする長手方向ボアを有していることを特徴とする請求項1記載のカテーテル。
【請求項24】
前記フレキシブルポリマースリーブは、前記細長いフレキシブル本体部分の少なくとも実質的部分をカバーするのに充分な長さを有していることを特徴とする請求項1記載のカテーテル。
【請求項25】
留置カテーテルによる感染の傾向を最小にする方法において、
カテーテルを用意する段階を有し、前記カテーテルは、ポリマーで形成されかつ第一端部および第二端部、少なくとも1つの内部ルーメン、および外表面を備えた細長いフレキシブル本体部分と、第一端部および第二端部を備えかつ細長いフレキシブル本体部分の外表面の周囲に配置されるフレキシブル導入部材と、第一端部および第二端部を備えたフレキシブルポリマースリーブとを有し、該フレキシブルポリマースリーブの第一端部はフレキシブル導入部材に取付けられ、
前記細長いフレキシブル本体部分に接触することなくフレキシブル導入部材を掴むことにより、カテーテルを患者の体内に配置する段階を更に有し、これにより、体開口を通る病原性有機体の侵入が最小になることを特徴とする方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つの内部ルーメンと流体連通しかつ細長いフレキシブル本体部分の第二端部に配置されるファンネルを更に有することを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記フレキシブルポリマースリーブの第二端部は、ファンネルの近くに取付けられることを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記細長いフレキシブル本体部分の第一端部は、チップ部分に終端していることを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記フレキシブルポリマースリーブは、カテーテルの配置後に該フレキシブルポリマースリーブ少なくとも一部を取外すための、該フレキシブルポリマースリーブの少なくとも一部の長さに沿って長手方向に配置された引裂きストリップを更に有していることを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記ポリマーは疎水性ポリマーであることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項31】
前記カテーテルはフォリイ・カテーテルであることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項32】
前記フレキシブル導入部材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、またはこれらのコポリマーおよびターポリマーから選択されたフレキシブルポリマーで形成されていることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項33】
前記フレキシブルポリマースリーブは、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、またはこれらのコポリマーおよびターポリマーから選択されたシート形成ポリマーで形成されていることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項34】
前記フレキシブルポリマースリーブは、ポリ塩化ビニリデン、低密度ポリエチレンまたは線状低密度ポリエチレンで形成されていることを特徴とする請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記細長いフレキシブル本体部分の前記外表面の少なくとも一部および前記フレキシブル導入部材の少なくとも1つの表面にポリマーコーティングを更に有していることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項36】
前記ポリマーコーティングは、
少なくとも1つのポリマーと、
1種類以上のオリゴジナミー金属の塩または酸化物を含むコロイドとからなる組成物を有し、前記1種類以上のオリゴジナミー金属の塩または酸化物は、1種類以上の有機体が組成物に微生物付着することを抑制することを特徴とする請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記1種類以のオリゴジナミー金属の塩または酸化物は、1種類以上の病原の培養物培上に置かれたときに、1種類以上の病原に対する抑制ゾーンを形成することを特徴とする請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記1種類以のオリゴジナミー金属の塩または酸化物は、1種類以上の病原の培養物培上に置かれたときに、1種類以上の病原に対する抑制ゾーンを形成しないことを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記1種類以上のオリゴジナミー金属の塩または酸化物は銀塩であることを特徴とする請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記銀塩は、塩化銀、ヨウ化銀、クエン酸銀、乳酸銀、酢酸銀、プロピオン酸銀、サリチル酸銀、臭化銀、アスコルビン酸銀、銀ラウレルスルフェート(silver laurel sulfate)、リン酸銀、硫酸銀、酸化銀、安息香酸銀、炭酸銀、銀スルファジアジン(silver sulfadiazine)、銀グルコネート(silver gluconate)から選択されることを特徴とする請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記コロイドは、2種類以上のオリゴジナミー金属の塩からなることを特徴とする請求項36記載の方法。
【請求項42】
1種類以上のオリゴジナミー金属塩は、異なる水溶性を有していることを特徴とする請求項36記載の方法。
【請求項43】
前記ポリマーコーティングのポリマーは、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリサッカリド、スターチ、グアー、キサンタンおよび他のガム、コラーゲン、ゼラチン、生物学的ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ(エチレン・テレフタレート)、シリコーン、ポリエステル、ポリアミド、ポリユリア、スチレン−ブロックコポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、アクリルーブタジエンースチレンコポリマー、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、天然ゴムおよび合成ゴム、アクニトリルゴム、セルロース、またはこれらの混合物、誘導体またはコポリマーから選択されることを特徴とする請求項36記載の方法。
【請求項44】
前記組成物は更に、抗バクテリア剤、免役増進剤、抗真菌薬、抗ウイルス薬、抗生物質、製剤、麻酔薬、鎮痛剤、またはこれらの組合せから選択された少なくとも1つの活性剤からなることを特徴とする請求項36記載の方法。
【請求項45】
前記導入部材は更に、前記フレキシブル導入部材を前記外表面上でこの外表面に沿ってスライド可能に位置決めする長手方向ボアを有していることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項46】
前記フレキシブルポリマースリーブは、前記細長いフレキシブル本体部分の少なくとも実質的部分をカバーするのに充分な長さを有していることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項47】
体開口内に留置導入するカテーテルにおいて、
ポリマーで形成されかつルーメンおよび外表面を備えた細長本体と、
該細長本体の外表面に沿ってスライドするように構成された導入部材と、
第一端部および第二端部を備えかつ前記細長本体の実質的部分をカバーするポリマースリーブとを有し、前記第一端部は前記導入部材に固定されることを特徴とするカテーテル。
【請求項48】
前記導入部材の一部のみが、前記体開口内に挿入されるように構成されていることを特徴とする請求項47記載のカテーテル。
【請求項49】
前記ポリマースリーブの前記第二端部は、前記細長本体の近位端に固定されることを特徴とする請求項47記載のカテーテル。
【請求項50】
前記ポリマースリーブは前記導入部材から取外すことができることを特徴とする請求項47記載のカテーテル。
【請求項51】
前記細長本体は第一オリゴジナミー薬剤を有していることを特徴とする請求項47記載のカテーテル。
【請求項52】
前記第一オリゴジナミー薬剤は、前記細長本体の前記外表面の少なくとも一部のコーティングであることを特徴とする請求項51記載のカテーテル。
【請求項53】
前記導入部材は第二オリゴジナミー薬剤を有していることを特徴とする請求項51記載のカテーテル。
【請求項54】
前記第一オリゴジナミー薬剤は、前記第二オリゴジナミー薬剤とは異なるものであることを特徴とする請求項53記載のカテーテル。
【請求項55】
前記第一オリゴジナミー薬剤は、前記第二オリゴジナミー薬剤とは異なる活性プロファイルを有していることを特徴とする請求項53記載のカテーテル。
【請求項56】
前記第二オリゴジナミー薬剤は、迅速殺菌形効果を与えることを特徴とする請求項53記載のカテーテル。
【請求項57】
前記スリーブの少なくとも一部の引裂きストリップを更に有していることを特徴とする請求項47記載のカテーテル。
【請求項58】
前記導入部材に取付けることができる着脱可能なキャップを更に有していることを特徴とする請求項47記載のカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2010−533562(P2010−533562A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517145(P2010−517145)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/070227
【国際公開番号】WO2009/012336
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(510014755)シー.アール.バード,インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】C.R.BARD,INC.
【住所又は居所原語表記】Bard Medical Division,8195 Industrial Blvd.,Covington,Georgia 30014 United States of America
【Fターム(参考)】