説明

滑り軸受

【課題】低コスト、簡易な構造であるとともに、断熱スリーブなどが不要で摩擦トルクも低く維持できる滑り軸受を提供する。
【解決手段】滑り軸受1は、内輪2と、外輪3と、この内輪2と外輪3との間に介在する摺動部材4とを備えてなり、内輪2は、外周に曲面2aを、内周に支持軸と嵌合する軸受孔5をそれぞれ有し、摺動部材4は、内輪2の外周の曲面2aに対向接触して摺動する曲面4aを有する樹脂組成物の成形体であり、外輪3は、一方の軸受端面3dと円筒部3cを有する第1部材3aと、他方の軸受端面3eとフランジ3fを有する第2部材3bとから構成され、外輪3は、第1部材3aと第2部材3bの嵌合内部に摺動部材4を該外輪3に対して回転不能に保持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は滑り軸受に関し、特に、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置における定着装置の定着ローラや加圧ローラなどの加熱されるローラ(ヒートローラ)の支持に用いる滑り軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、画像形成装置は、その定着装置において、光学装置で形成された静電潜像にトナーを付着させ、このトナー像をコピー用紙に転写し、さらに定着させるものである。この定着工程では、ヒータを内蔵した定着ローラと加圧ローラとの間にトナー像を通過させる。これにより、トナー像からなる転写像がコピー用紙上に加熱融着によって定着される。
【0003】
定着ローラは、線状ないし棒状のヒータを軸心部に内蔵した軟質の金属製であり、両端に小径の軸部が突出した円筒状に形成されている。定着ローラは、アルミニウム、またはアルミニウム合金(A5056、A6063)などの熱伝導性に優れた金属材料からなる。定着ローラの表面は、旋削や研磨などで仕上げられる。また、定着ローラ表面には、フッ素樹脂などの非粘着性の高い樹脂がコーティングまたは被覆してある。定着ローラの表面の温度は、ヒータにより180〜250℃前後に加熱される。
【0004】
加圧ローラは、シリコンゴムなどで被覆された鉄材または軟質材からなり、コピー用紙を定着ローラに押圧して回転駆動するものである。加圧ローラは、加熱ローラからの伝熱により、約70〜150℃に加熱される。あるいは、定着ローラと同様に内部にヒータが設けられ150〜250℃前後に加熱される。以降、上記した定着ローラ、加圧ローラなどのように、内蔵されたヒータ、または、他部材からの伝熱により加熱されるローラを「ヒートローラ」と記す。
【0005】
高温に加熱されるヒートローラは、両端の軸部で深溝玉軸受からなるボールベアリングを介してハウジングに回転自在に支持されており、このボールベアリングとヒートローラの軸部との間に、合成樹脂などからなる断熱スリーブが介在させてある。これは、ヒートローラの加熱時に両端部のボールベアリングから熱が逃げてヒートローラの軸方向に沿う温度分布が不均一になるのを防止するのとともに、軸受の高温劣化を防止するためである。
【0006】
また、ヒートローラの支持軸受としては、樹脂製滑り軸受を用いるものがある。例えば、滑り軸受を、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの合成樹脂から形成しているものがある。具体例としては、耐熱性および機械的強度の優れたPPS樹脂などをリング状の軸受本体として、その摺動面にフッ素樹脂層を接着するか、または、フッ素樹脂を配合したPPS樹脂などで滑り軸受全体を一体成形する技術が知られている(特許文献1参照)。
【0007】
樹脂製滑り軸受を使用する場合、樹脂製滑り軸受自体が断熱性を有するため、一般的には、該樹脂製滑り軸受とヒートローラの軸部との間に断熱スリーブを介在させない。通常、画像形成装置の定着装置において、中級機から高級機はヒートローラ軸受にボールベアリングが使用され、普及機は樹脂製滑り軸受が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−117678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した画像形成装置における定着装置のヒートローラ用の軸受である深溝玉軸受は、構造が複雑で製造コストも高価である。また、温度分布の不均一化、軸受の高温劣化を防止するために、上述の樹脂製断熱スリーブが必要となり、さらに高価になる。また、ヒートローラの支持軸のたわみや取り付け精度などモーメント荷重によって軸受が破損するなど品質に問題がある。
【0010】
これに対して、PPS樹脂などの樹脂製滑り軸受は、断熱スリーブを介在させることなく使用でき、構造が簡単で射出成形できることから、低コストで生産できるという利点を有する。しかし、この樹脂製滑り軸受は、深溝玉軸受と比べて、摩擦トルクが約2〜5倍程度も高いという問題がある。特に、ヒートローラの軸受摺動面粗さが粗いと、さらに摩擦トルクが大きくなり、同時に摩耗も大きくなり仕様を満足できなくなるといった問題がある。
【0011】
また、摩擦トルクを小さくするため、軸受摺動面にグリースを塗布するとしても、荷重を強く受ける部分などではグリース不足となり、仕様を満足できなくなる場合がある。
【0012】
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、低コスト、簡易な構造であるとともに、断熱スリーブなどが不要で摩擦トルクも低く維持できる滑り軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の滑り軸受は、内輪と、外輪と、この内・外輪間に介在する摺動部材とを備えてなる滑り軸受であって、上記内輪は、外周に曲面を、内周に支持軸と嵌合する軸受孔をそれぞれ有し、上記摺動部材は、上記内輪の外周の曲面に対向接触して摺動する曲面を有する樹脂組成物の成形体であり、上記外輪は、一方の軸受端面と円筒部を有する第1部材と、他方の軸受端面とフランジを有する第2部材とから構成され、上記第1部材と上記第2部材の嵌合内部に上記摺動部材を該外輪に対して回転不能に保持することを特徴とする。
【0014】
上記摺動部材が、1ヶ所の合い口を有する環状体であることを特徴とする。あるいは、上記摺動部材が、複数に等分割される環状体であることを特徴とする。
【0015】
上記樹脂組成物のベース樹脂が、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、およびポリイミド(PI)樹脂から選ばれる少なくとも1つの合成樹脂であることを特徴とする。
【0016】
上記樹脂組成物が、固体潤滑剤および繊維状補強材から選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする。また、上記固体潤滑剤が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、黒鉛、および二硫化モリブデンから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする。また、上記繊維状補強材が、炭素繊維およびアラミド繊維から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする。
【0017】
上記内輪および上記外輪が、金属製であることを特徴とする。また、上記内輪が、焼結金属からなることを特徴とする。特に、上記内輪が、含油焼結金属からなることを特徴とする。また、上記内輪が、転がり玉軸受用の内輪であることを特徴とする。
【0018】
上記内輪と上記外輪とが、非接触に保持されていることを特徴とする。
【0019】
上記内輪の外周の曲面が凹曲面であり、上記摺動部材の曲面が凸曲面であることを特徴とする。また、上記摺動部材の凸曲面は、軸方向中央部の全周に非曲面部が形成されていることを特徴とする。また、上記摺動部材が、上記樹脂組成物の射出成形体であり、上記非曲面部に射出成形におけるパーティングラインが形成されていることを特徴とする。
【0020】
上記内輪および上記摺動部材の摺動面に潤滑剤が塗布されることを特徴とする。また、上記潤滑剤が、フッ素グリースおよびウレアグリースから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする。
【0021】
上記摺動部材の摺動面に、潤滑剤保持ポケットが形成されていることを特徴とする。また、上記潤滑剤保持ポケットが、ハ字型を示す2列の矩形の複数の溝であり、上記ハ字の下側が上記摺動部材の回転方向に向くように形成されていることを特徴とする。また、上記矩形の複数の溝が、上記回転方向側の矩形辺から、その対向辺に向かって溝が深くなる傾斜溝であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の滑り軸受は、内輪と、外輪と、この内・外輪間に介在する摺動部材とを備えてなり、上記内輪は、外周に曲面を内周に支持軸と嵌合する軸受孔をそれぞれ有し、上記摺動部材は、内輪の外周の曲面に対向接触して摺動する曲面を有する樹脂組成物の成形体であり、上記外輪は、一方の軸受端面と円筒部を有する第1部材と、他方の軸受端面とフランジを有する第2部材とから構成され、上記第1部材と上記第2部材の嵌合内部に摺動部材を該外輪に対して回転不能に保持するので、ボールベアリング(転がり玉軸受)と比較して部品点数が少なく構造が簡単である。そのため、製造工程、組立時間が短縮でき、安価に提供できる。さらに、上記摺動部材が樹脂組成物の成形体であるので、ボールベアリングにはない自己断熱性効果を有し、別途、断熱スリーブなどが不要となる。また、摩擦トルクと製造コストの両面において、ボールベアリングと従来の樹脂製滑り軸受の中間特性を有する。
【0023】
上記摺動部材を1ヶ所の合い口を有する環状体とする、あるいは、複数に等分割される環状体とすることで、該摺動部材の内輪への組付けが容易となる。また、摺動部材の熱膨張による応力集中破壊が防止できる。
【0024】
上記樹脂組成物のベース樹脂を、PPS樹脂、PEEK樹脂、PAI樹脂、およびPI樹脂から選ばれる少なくとも1つの合成樹脂とすることで、耐熱性に優れ、200℃程度まで使用可能になる。このため、ヒートローラの支持軸受として好適に利用できる。
【0025】
上記樹脂組成物に固体潤滑剤を配合することで、摩擦トルクが低減される。また、上記樹脂組成物に繊維状補強材を配合することで、摺動部材を補強するとともに耐摩耗性が高くなり、さらに、高弾性化によって、より高温環境での使用が可能となる。
【0026】
上記固体潤滑剤を、PTFE樹脂、黒鉛、および二硫化モリブデンから選ばれる少なくとも1つとすることで、潤滑特性に優れ、摩擦トルクがより安定する。
【0027】
上記繊維状補強材を、炭素繊維およびアラミド繊維から選ばれる少なくとも1つとすることで、摺動相手材となる内輪の摩耗が抑制できる。また、摺動部材の耐摩耗性および高温での弾性率の保持性をより高めることができる。
【0028】
上記内輪および上記外輪を金属製とすることで、滑り軸受自体の機械的強度が高くなる。また、上記内輪を焼結金属から構成することで、潤滑剤の保有効果が高くなる。特に、上記内輪を含油焼結金属から構成することで、含浸された油と、摺動面に塗布される潤滑剤との相乗効果が期待できる。
【0029】
上記内輪として転がり玉軸受(ボールベアリング)用の内輪を利用することで、摺動部材との摺動面となる外周曲面が、該内輪の転走面であり、高精度であるため、回転性能の安定化に繋がる。
【0030】
上記内輪と上記外輪とが、非接触に保持されている構成とすることで、内・外輪間の摩擦損失をなくすことができる。
【0031】
上記内輪の外周の曲面を凹曲面とし、上記摺動部材の曲面を該凹曲面と対向接触して摺動する凸曲面とすることで、内輪と外輪の軸方向の位置ずれなどを防止できる。
【0032】
上記摺動部材の凸曲面において、軸方向中央部の全周に非曲面部を形成することで、この部分に潤滑剤を保持することができる。
【0033】
上記摺動部材が上記樹脂組成物の射出成形体であり、上記非曲面部に射出成形におけるパーティングラインが形成されることで、摺動部材の射出成形が容易であり、パーティングラインの突状が内輪の摺接面と干渉しない。
【0034】
上記内輪および摺動部材の摺動面に潤滑剤を塗布することで、摩擦トルクがさらに低減され、摺動部材の焼き付きを防止でき、性能寿命を大幅に長くすることができる。特に、上記潤滑剤をフッ素グリースおよびウレアグリースから選ばれる少なくとも1つとすることで、高温下においても安定した潤滑性能、低摩擦トルクを有する。
【0035】
上記摺動部材の摺動面に潤滑剤保持ポケットを形成することで、潤滑剤を摺動面に安定的に供給することができる。
【0036】
上記潤滑剤保持ポケットが、ハ字型を示す2列の矩形の複数の溝であり、ハ字の下側が摺動部材の回転方向に向くように形成されている構成とすることで、摺動部材回転時において、潤滑剤が各溝のハ字の下側から上側、すなわち、滑り軸受幅方向の中央部に常に掻き寄せられる。よって、滑り軸受が荷重を最も受ける滑り軸受幅方向の中央部において、潤滑剤による膜が容易に継続的に形成され、滑らかで、かつ低摩擦トルクの回転が得られる。さらに、上記矩形の複数の溝を、回転方向側の矩形辺からその対向辺に向かって溝が深くなる傾斜溝とすることで、潤滑剤が掻き寄せられやすく、上記効果が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の滑り軸受の一例を示す斜視図である。
【図2】図2は図1の滑り軸受の軸方向断面図である。
【図3】図1の滑り軸受の摺動部材のみの正面図および軸方向断面図である。
【図4】図1の滑り軸受の外輪のみの正面図および軸方向断面図である。
【図5】図1の滑り軸受の内輪のみの正面図および軸方向断面図である。
【図6】溝状の潤滑剤保持ポケットが形成された摺動部材の内周面の一部拡大図である。
【図7】軸加熱式高温ラジアル試験機の概略図である。
【図8】回転トルク比較試験結果を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の滑り軸受の一実施例を図1および図2により説明する。図1は本発明の滑り軸受の斜視図であり、図2は該滑り軸受の軸方向の断面図および一部拡大断面図である。図1および図2に示すように、滑り軸受1は、内輪2と、外輪3と、この内輪2と外輪3との間に介在する摺動部材4とを備えてなる。図2に示すように、内輪2は、外周に曲面2aを、内周に支持軸と嵌合する軸受孔5をそれぞれ有している。摺動部材4は、内輪2の外周の曲面2aに対向接触して摺動する曲面4aを有する。外輪3は、一方の軸受端面3dと円筒部3cを有する第1部材3aと、他方の軸受端面3eとフランジ3fを有する第2部材3bとから構成される。外輪3は、第1部材3aと第2部材3bの嵌合内部に摺動部材4を該外輪3に対して回転不能に保持している。
【0039】
滑り軸受1の組み立て順は、まず、内輪2に摺動部材4を弾性変形により嵌め込み、内輪2の外周の曲面2aと摺動部材4の曲面4aとを合せる。次いで、摺動部材4に一方の軸方向から第1部材3aを組み込む。最後に、他方の軸方向から第2部材3bを第1部材3aに圧入嵌合して、滑り軸受1を一体としている。なお、摺動面にグリース等の潤滑剤を塗布する場合は、摺動部材4を内輪2に組み込む前に、予め塗布しておくことが好ましい。
【0040】
摺動部材4のみの正面図および軸方向断面図を図3に示す。図2および図3に示すように、摺動部材4は、内周に、内輪2の外周の曲面2aに対向接触する曲面4aを有する環状体である。摺動部材4の外周面4bは、外輪3の第1部材3aと第2部材3bとの嵌合内部に周方向の位置ずれなく保持できるよう、第1部材3aの円筒部3cの内周面と接触する円周面(軸方向断面では直線)としている。同様に、摺動部材4の両端面4cは、嵌合内部に軸方向の位置ずれなく保持できるよう、第1部材3aおよび第2部材3bの内面に接触する平面としている。また、摺動部材の外周面4bの端部に段差部4dを設けることが好ましい。外輪3の第1部材3aおよび第2部材3bをプレス板金により製造する場合、内周面の角部に丸みができるが、上記段差部4dを設けることで、摺動部材4が外輪3の該部分と干渉することを避けることができる。
【0041】
摺動部材4は、外輪3の第1部材3aと第2部材3bとの嵌合内部に、該外輪3に対して周方向に回転不能に保持される。回転不能とするには、第1部材3aと第2部材3bとの間で圧入嵌合により摺動部材4を締め付ける構成や、摺動部材4および外輪3の一部に該回転を阻害するピン等嵌合構造を設ける構成とすることなどが挙げられる。なお、ピン等の嵌合構造は、摺動部材4の合い口4e部に嵌め合うようにすることができる。
【0042】
図3に示すように、摺動部材4は、1ヶ所の合い口4eを有する環状体である。摺動部材4は樹脂製であるので、内輪2や外輪3を金属製とした場合、これらの部材とは線膨張係数が異なる。この場合であっても、合い口4eを設けることで、高温時の熱膨張を該合い口部分に逃すことができ、応力集中による摺動部材の破損を防止できる。また、摺動部材4を内輪2に弾性変形により組み込む際に、合い口4eの部分が広がるため、組み込み性に優れる。摺動部材4のその他の態様として、同様の合い口(非連結部)を複数設け、複数に等分割される環状体とすることもできる。この場合も同様の効果が得られる。
【0043】
摺動部材4は、樹脂組成物の成形体である。該樹脂組成物のベース樹脂となる合成樹脂の種類は特に限定されないが、少なくとも該滑り軸受の使用条件(耐熱性、機械的強度など)に見合う特性を有する合成樹脂である必要がある。また、射出成形可能な合成樹脂であれば、製造が容易であり、寸法精度も均一にできるので好ましい。
【0044】
摺動部材4を成形する樹脂組成物のベース樹脂となる合成樹脂としては、例えば、ポリアミド6(PA6)樹脂、ポリアミド6−6(PA66)樹脂、ポリアミド6−10(PA610)樹脂、ポリアミド6−12(PA612)樹脂、ポリアミド4−6(PA46)樹脂、ポリアミド9−T(PA9T)樹脂、ポリアミド6−T(PA6T)樹脂、ポリメタキシレンアジパミド(ポリアミドMXD−6)樹脂などのポリアミド(PA)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)樹脂、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)樹脂などの射出成形可能なフッ素樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂、PPS樹脂、PEEK樹脂、PAI樹脂、射出成形可能なPI樹脂などが挙げられる。なお、各ポリアミド樹脂において、数字はアミド結合間の炭素数を表し、Tはテレフタル酸残基を表す。これらの各合成樹脂は単独で使用してもよく、2種類以上混合したポリマーアロイであってもよい。
【0045】
これらの合成樹脂の中で、耐熱性に優れ、200℃程度まで使用可能になることから、PPS樹脂、PEEK樹脂、PAI樹脂、およびPI樹脂から選ばれる少なくとも1つの合成樹脂を用いることが好ましい。これらの樹脂で摺動部材を成形し、内・外輪は金属製とすることで、画像形成装置の高温下で使用する定着ローラなどのヒートローラを支持する滑り軸受にも好適に使用できる。
【0046】
摺動部材4を成形する樹脂組成物において、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維などの繊維状補強材を配合することができる。これらの繊維状補強材は、1種類を配合しても2種類以上を組み合わせて配合してもよい。樹脂組成物に、これらの繊維状補強材を含むことで、摺動部材が補強されるとともに耐摩耗性が高くなる。さらに、高弾性化によって、より高温環境での使用が可能となる。
【0047】
上記繊維状補強材の中でも、炭素繊維およびアラミド繊維から選ばれる少なくとも1つを配合することが好ましい。これらを用いることで、摺動部材における上記補強効果を維持しながら、摺動相手材となる内輪の摩耗を抑制できる。また、摺動部材の耐摩耗性および高温での弾性率の保持性をより高めることができる。
【0048】
摺動部材4を成形する樹脂組成物において、PTFE樹脂粉末、黒鉛、二硫化モリブデン、ポリイミド樹脂やフェノール樹脂や全芳香族ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂粉末などの固体潤滑剤を配合することができる。これらの固体潤滑剤は、1種類を配合しても2種類以上を組み合わせて配合してもよい。固体潤滑剤を配合することで、摩擦トルクが低減される。
【0049】
上記固体潤滑剤の中でも、PTFE樹脂粉末、黒鉛、および二硫化モリブデンから選ばれる少なくとも1つを配合することが好ましい。これらを用いることで、摺動部材の潤滑特性が優れ、摩擦トルクがより安定する。
【0050】
外輪3のみの正面図および軸方向断面図を図4に示す。図2および図4に示すように、外輪3は、軸方向に分割された第1部材3aと第2部材3bとの2部材からなる。外輪3において、一方の部材である第2部材3bの開口部3g側の軸方向端部の外周全周にフランジ3fを設けることで、該軸方向端部の機械的強度に優れ、他方の部材である第1部材3aを、第2部材3bの開口部3gに強固に嵌合することができる。また、嵌合する際の作業性にも優れる。また、定着装置等の装置内での軸方向の位置決め部材とすることができる。
【0051】
第1部材3aの軸受端面3dは、外輪3の一方の端面を構成し、第2部材3bの軸受端面3eは、外輪3の他方の端面を構成する。また、第1部材3aの円筒部3cは、外輪3の外径面の一部(軸方向で略半分)を構成する。第1部材3aの円筒部3cの軸方向長さは、第2部材3bとの関係で、該第1部材3aの円筒部3cが、第2部材3bの開口部3gに嵌合できる長さであればよい。また、軸方向の重量バランスを略均一とするため、第2部材3bのフランジ3fが、滑り軸受1の軸方向中央部に位置することが好ましい。また、強固に嵌合するため、第1部材3aの円筒部3cの外径寸法を、第2部材3bの開口部3gの内径寸法より若干大きくし、第1部材3aを第2部材3bの開口部3gに圧入嵌合することが好ましい。
【0052】
外輪3は、摺動部材4を保持するための嵌合形状(第1部材3aおよび第2部材3b)を作製できるものであれば、その材質は特に限定されず、金属製や合成樹脂製にすることができる。金属材料としては、例えば、冷間圧延鋼(SPCC)、肌焼き鋼(SCM)、熱間圧延鋼(SPHC)、炭素鋼(S25C〜S55C)、ステンレス鋼(SUS304〜SUS316)、軟鋼(SS400)などの鉄系金属材料、銅−亜鉛合金、銅−アルミニウム−鉄合金などの銅系金属材料、アルミ−シリコン合金などのアルミニウム系金属材料が挙げられる。また、樹脂材料としては、上述の摺動部材に用いるものなどが挙げられる。滑り軸受自体の機械的強度の向上が図れることから、外輪2は金属製とすることが好ましい。例えば、第1部材3aおよび第2部材3bは、冷間圧延鋼(SPCC)の板金をそれぞれの形状にプレス加工して製造することが好ましい。
【0053】
内輪2のみの正面図および軸方向断面図を図5に示す。図5に示すように、内輪2は、軸方向断面が凹状のR形状である外周の曲面2aが、摺動部材との摺動面となるものである。このような形状とすることで、内輪2として、既存の深溝玉軸受などの転がり玉軸受(ボールベアリング)用の内輪を転用して用いることができる。この場合、摺動部材との摺動面となる外周曲面2aが、該転がり玉軸受の内輪転走面であり、高精度であるため、回転性能の安定化に繋がる。また、別途、本発明の滑り軸受用に内輪を製造する必要がなく、製造コストの削減が図れる。
【0054】
内輪2は、その材質は特に限定されず、金属製や合成樹脂製にすることができる。金属材料としては上述の外輪3に用いるものが、樹脂材料としては上述の摺動部材に用いるものがそれぞれ挙げられる。外輪3と同様に、滑り軸受自体の機械的強度の向上が図れることから、内輪2も金属製とすることが好ましい。
【0055】
また、内輪2は、焼結金属製とすることが好ましい。焼結金属製とすることで、内輪2および摺動部材4の摺動面に塗布する潤滑剤の保有効果が高くなる。さらに、該焼結金属に潤滑油を含浸した含油焼結金属とすることがより好ましい。含浸された潤滑油と、摺動面に塗布される潤滑剤とにより、長期間にわたり潤滑効果が維持できるなど、相乗効果が期待できる。焼結金属の種類は特に限定されず、例えば、Fe系、あるいはCu系、Fe−Cu系、Cu−Sn系やCu−Fe−Sn系の合金が使用できる。また、これらにカーボン、黒鉛、二硫化モリブデンなどを添加したものも使用できる。これらの焼結金属の中でも、放熱性に優れ、また圧縮成形による製造が容易であり、寸法変化も小さく低コストで生産できることから、CuおよびFeから選ばれた少なくとも一つを主成分とする焼結金属が好ましい。
【0056】
次に、図2に基づき、内輪2と摺動部材4との摺動面について詳細に説明する。滑り軸受1において、摺動部材4の曲面4aと内輪2の外周の曲面2aとが摺動面であり、摺動部材4は外輪3に回転不能に保持されているので、摺動部材4および外輪3が内輪2に対して共回りする。
【0057】
内輪2と摺動部材4とが接触し、内輪2と外輪3とは隙間3hを設けて非接触とすることが好ましい(図2参照)。このような構成とすることで、内・外輪間の摩擦損失をなくすことができる。
【0058】
図2に示す例では、内輪2の外周の曲面2aが、その軸方向断面が凹状のR形状である凹曲面であり、摺動部材4の曲面4aが、その軸方向断面が内周2の外周の曲面2aに対応する凸状のR形状である凸曲面である。このような相補的な形状とすることで、外輪および摺動部材と、内輪との軸方向の位置ずれなどを防止できる。また、摺動部材4の曲面4aを上記のような凸曲面とすることで、上述のように、内輪側に既存の転がり玉軸受用の内輪を利用できる。
【0059】
図2に示す例では、摺動部材4の曲面4a(凸曲面)は、軸方向中央部の全周に非曲面部4fが形成されている。非曲面部4fは、軸方向断面が直線のフラット形状である。非曲面部4fを形成することで、該非曲面部4fと内輪2の外周の曲面2aとの間に空間部分が確保される。この部分が潤滑剤保持ポケット6となり、該部分に潤滑剤を保持することができる。摺動部材4の曲面4aの軸方向断面が円弧状である場合は、非曲面部4fは、軸方向断面における円弧頂点からの距離が、該円弧半径の2〜15%の長さとすることが好ましい。この範囲とすることで、必要十分な潤滑剤量を保持しながら、摺動部材4の曲面4aと内輪2の外周の曲面2aとが安定して摺接できる。なお、図2に示す例では、非曲面部4fの軸方向断面における円弧頂点からの距離を、摺動部材4の曲面4aの円弧半径の15%としている。
【0060】
また、摺動部材4が射出成形体である場合、非曲面部4fに型割り面(パーティングライン(PL))を設定することで、PLの突状が内輪2の摺接面である曲面2aと干渉しない。そのため、少なくとも内周側のPL痕の研磨などの後処理を省略することができ、製造が容易となる。
【0061】
内輪2および摺動部材4の摺動面には、潤滑油やグリースなどの潤滑剤を塗布することが好ましい。本発明の滑り軸受は、上述の樹脂製の摺動部材を内・外輪間に介在させる構成であるので低摩擦特性を有するが、摺動面に潤滑剤を塗布することで、摩擦トルクがさらに低減できる。この結果、摺動部材の焼き付きを防止でき、性能寿命を大幅に長くすることができる。潤滑剤を塗布する場合、摺動部材4の摺動面に、上述したような潤滑剤保持ポケット6を形成することが好ましい。潤滑剤保持ポケット6を形成することで、潤滑剤が該潤滑剤保持ポケット6に保持され、長期にわたり摺動面に潤滑剤を安定して供給することができる。
【0062】
潤滑剤保持ポケット6の形状は、図2に示すような非曲面部4fのほか、ディンプル状、溝状のようなものであってもよい。図6に溝状の潤滑剤保持ポケットの例を示す。図6は、溝状の潤滑剤保持ポケットが形成された摺動部材の内周面の一部拡大図である。図6に示す潤滑剤保持ポケット6は、摺動部材4の内周の曲面4aの全周に設けられたハ字型を示す2列の矩形の複数の溝6aから構成され、ハ字の下側が摺動部材4の回転方向に向くように形成されている。摺動部材4の回転時において、摺動部材4と内輪との間に封入されている潤滑剤は、各溝6a内においてハ字の下側から上側に向かって掻き寄せられて移動する。各溝6aにおけるハ字の上側は、摺動部材4の曲面4aの幅方向中央部に位置しているため、上記移動により潤滑剤は該中央部に移動することになる。なお、摺動部材4の回転時とは、摺動部材4が内輪2に対して相対的に回転するときであり、摺動部材4が固定で内輪2が回転する場合も含む。
【0063】
また、各溝6aは、回転方向側の矩形辺6bから、その対向辺6cに向かって溝が深くなる傾斜溝とすることが好ましい。回転方向側からその反対側に向かって溝を深くする形状とすることで、摺動部材4の回転時において、該傾斜がない場合よりも潤滑剤を掻き寄せやすくなる。
【0064】
以上のような潤滑剤保持ポケット6を摺動部材4の摺動面に形成することで、滑り軸受が荷重を最も受ける滑り軸受幅方向の中央部において、潤滑剤による膜が容易に継続的に形成され、滑らかで、かつ低摩擦トルクの回転が得られる。なお、潤滑剤保持ポケット6として、図2に示す非曲面部4fと、図6に示す複数の溝6aとを組み合わせて形成するなど、複数の構成の組み合わせとしてもよい。
【0065】
本発明の滑り軸受において、内輪2および摺動部材4の摺動面に塗布する潤滑剤であるグリースは、通常、滑り軸受に用いられるグリースであれば特に制限なく用いることができる。グリースを構成する基油としては、例えば、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油などの鉱油、ポリブテン油、ポリ−α−オレフィン油、アルキルベンゼン油、アルキルナフタレン油、脂環式化合物などの炭化水素系合成油、または、天然油脂やポリオールエステル油、りん酸エステル油、ジエステル油、ポリグリコール油、シリコーン油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、フッ素化油などの非炭化水素系合成油などが挙げられる。これらの基油は、単独または2種類以上組み合せて用いてもよい。
【0066】
また、グリースを構成する増ちょう剤としては、例えば、アルミニウム石けん、リチウム石けん、ナトリウム石けん、複合リチウム石けん、複合カルシウム石けん、複合アルミニウム石けんなどの金属石けん系増ちょう剤、ジウレア化合物、ポリウレア化合物などのウレア系化合物、PTFE樹脂などのフッ素樹脂粉末が挙げられる。これらの増ちょう剤は、単独または2種類以上組み合せて用いてもよい。
【0067】
本発明の滑り軸受は、画像形成装置の高温下で作動する定着ローラなどの支持に使用するため、グリースにも耐熱性が必要となることから、上記の中でも、フッ素化油を基油としフッ素樹脂粉末を増ちょう剤とするフッ素グリース、または、ウレア系化合物を増ちょう剤とするウレアグリースを用いることが好ましい。また、これらを混合したグリースを用いることもできる。なお、上記各グリースには必要に応じて公知の添加剤を含有させることができる。
【実施例】
【0068】
実施例1
定着ローラ用滑り軸受材であるNTN精密樹脂製ベアリーAS5056(PPS樹脂組成物(PTFE樹脂および黒鉛を配合))を用いて、摺動部材を射出成形で製造した。外輪の第1部材は、板金(SPCC)をプレスで絞り加工を行い、外輪の第2部材も同様のプレス加工を行って製造した。内輪としては、ボールベアリング6805の内輪を転用した。このようにして得た、摺動部材、第1部材、第2部材、内輪を用いて、図2に示す構成で、外形寸法をNTN製定着ローラ用ボールベアリング:止め輪付6805ZZと同寸法に設計した滑り軸受を製造した。まず、フッ素グリース(NOKクリューバー製NOXLUB BF4023)を内輪の外周の曲面に満遍なく塗布(約5g)し、この内輪に摺動部材を組み付け、次いで、内輪と組み付けた摺動部材を第1部材と第2部材で圧入により挟み込んで製造した。得られた滑り軸受を以下に示す回転トルク試験に供し、回転トルクを求めた。結果を図8に示すとともに、製造コストを考慮した総合判定を表1に併記した。
【0069】
<回転トルク試験>
図7に示す軸加熱式高温ラジアル試験機10を用いて試験軸受11の回転トルクを測定した。軸加熱式高温ラジアル試験機10は、複写機の定着装置の定着ローラを模した定着ローラ12について、その内径からカートリッジヒータ13で加熱し、熱電対14で定着ローラ12の表面温度を所定の温度にコントロールするものである。試験は、試験軸受11をハウジング15内に組み付け、試験軸受11の内輪内径に定着ローラ12を挿入する。ハウジング15の下部より、ボールベアリング17を介して押し上げ、200Nの荷重16を負荷した。定着ローラ12材にアルミニウム(A5052)の旋削加工品(表面粗さRa0.5〜0.7μm)を用い、定着ローラ12の回転数は230rpm、定着ローラ12の表面温度は180℃、試験時間は20hである。潤滑は、ドライで試験を行なった。この状態で、定着ローラ12を、カップリング18を介して駆動モータ19で回転させた。試験軸受11の回転トルクは、共回りするハウジング15の回転力をロードセル(図示せず)で測定して算出した。
【0070】
<製造コスト>
製造コスト(算出コスト)については、実施例1を100とした場合の相対評価で数値化し、それぞれ記録した。
【0071】
<総合判定>
図8の回転トルク試験結果と、表1の製造コストとを考慮して、回転トルクおよび算出コストともに劣るものがない場合は、両者のバランスが良好であると総合判定し「○」印を、回転トルクと算出コストのうちどちらか一つでも劣るものがあれば、両者のバランスが不良であると総合判定し「×」印を、それぞれ記録した。
【0072】
比較例1
試験軸受として、NTN製定着ローラ用ボールベアリング:止め輪付6805ZZを用いて、実施例1と同様の試験および評価を実施した。結果を図8および表1に併記する。
【0073】
比較例2
試験軸受として、NTN精密樹脂製ベアリーAS5056を用いてNTN製定着ローラ用ボールベアリング:止め輪付6805ZZと同寸法に射出成形した滑り軸受を用いて、実施例1と同様の試験および評価を実施した。結果を図8および表1に併記する。
【0074】
【表1】

【0075】
図8の回転トルクの比較試験の結果、実施例1の滑り軸受は、比較例1のボールベアリングと比べて回転トルクが若干大きいものの、比較例2の滑り軸受と比べて回転トルクの大幅な軽減が確認された。表1からも明らかなように、実施例1の滑り軸受は、ボールベアリング、従来の滑り軸受より総合的に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の滑り軸受は、摩擦トルクが低く自己断熱性効果を有しながら、ボールベアリングと比較して部品点数が少なく構造が簡単であり、摩擦トルクと製造コストの両面において、ボールベアリングと従来の樹脂製滑り軸受の中間特性を有するので、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置における定着装置の加熱ローラや加圧ローラなどのヒートローラを支持する滑り軸受として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0077】
1 滑り軸受
2 内輪
2a 内輪の曲面
3 外輪
3a 第1部材
3b 第2部材
3c 円筒部
3d 一方の軸受端面
3e 他方の軸受端面
3f フランジ
3g 開口部
3h 隙間
4 摺動部材
4a 摺動部材の曲面
4b 外周面
4c 端面
4d 段差部
4e 合い口
4f 非曲面部
5 軸受孔
6 潤滑剤保持ポケット
6a 溝
6b 矩形辺
6c 対向辺
10 軸加熱式高温ラジアル試験機
11 軸受試験片
12 定着ローラ
13 カートリッジヒータ
14 熱電対
15 ハウジング
16 荷重
17 ボールベアリング
18 カップリング
19 駆動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪と、外輪と、この内・外輪間に介在する摺動部材とを備えてなる滑り軸受であって、
前記内輪は、外周に曲面を、内周に支持軸と嵌合する軸受孔をそれぞれ有し、
前記摺動部材は、前記内輪の外周の曲面に対向接触して摺動する曲面を有する樹脂組成物の成形体であり、
前記外輪は、一方の軸受端面と円筒部を有する第1部材と、他方の軸受端面とフランジを有する第2部材とから構成され、前記第1部材と前記第2部材の嵌合内部に前記摺動部材を該外輪に対して回転不能に保持することを特徴とする滑り軸受。
【請求項2】
前記摺動部材が、1ヶ所の合い口を有する環状体であることを特徴とする請求項1記載の滑り軸受。
【請求項3】
前記摺動部材が、複数に等分割される環状体であることを特徴とする請求項1記載の滑り軸受。
【請求項4】
前記樹脂組成物のベース樹脂が、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも1つの合成樹脂であることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の滑り軸受。
【請求項5】
前記樹脂組成物が、固体潤滑剤および繊維状補強材から選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項記載の滑り軸受。
【請求項6】
前記固体潤滑剤が、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、黒鉛、および二硫化モリブデンから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項5記載の滑り軸受。
【請求項7】
前記繊維状補強材が、炭素繊維およびアラミド繊維から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項5または請求項6記載の滑り軸受。
【請求項8】
前記内輪および前記外輪が、金属製であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項記載の滑り軸受。
【請求項9】
前記内輪が、焼結金属からなることを特徴とする請求項8記載の滑り軸受。
【請求項10】
前記内輪が、含油焼結金属からなることを特徴とする請求項9記載の滑り軸受。
【請求項11】
前記内輪が、転がり玉軸受用の内輪であることを特徴とする請求項8、請求項9または請求項10記載の滑り軸受。
【請求項12】
前記内輪と前記外輪とが、非接触に保持されていることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか一項記載の滑り軸受。
【請求項13】
前記内輪の外周の曲面が凹曲面であり、前記摺動部材の曲面が凸曲面であることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか一項記載の滑り軸受。
【請求項14】
前記摺動部材の凸曲面は、軸方向中央部の全周に非曲面部が形成されていることを特徴とする請求項13記載の滑り軸受。
【請求項15】
前記摺動部材が、前記樹脂組成物の射出成形体であり、前記非曲面部に射出成形におけるパーティングラインが形成されていることを特徴とする請求項14記載の滑り軸受。
【請求項16】
前記内輪および前記摺動部材の摺動面に潤滑剤が塗布されていることを特徴とする請求項1ないし請求項15のいずれか一項記載の滑り軸受。
【請求項17】
前記潤滑剤が、フッ素グリースおよびウレアグリースから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項16記載の滑り軸受。
【請求項18】
前記摺動部材の摺動面に、潤滑剤保持ポケットが形成されていることを特徴とする請求項16または請求項17記載の滑り軸受。
【請求項19】
前記潤滑剤保持ポケットが、ハ字型を示す2列の矩形の複数の溝であり、前記ハ字の下側が前記摺動部材の回転方向に向くように形成されていることを特徴とする請求項18記載の滑り軸受。
【請求項20】
前記矩形の複数の溝が、前記回転方向側の矩形辺から、その対向辺に向かって溝が深くなる傾斜溝であることを特徴とする請求項19記載の滑り軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−145187(P2012−145187A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5221(P2011−5221)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】