説明

滑り軸受

【課題】改良された滑り軸受を提供すること。
【解決手段】本発明の滑り軸受(1)は、支持層(3)と、軸受金属層(18)および摺動層(4)の少なくともいずれか一方とを備える半体シェル(2)の形態の滑り軸受(1)であって、上記支持層(3)は一体的に接合された数個のセグメント(5)から構成され、各セグメント間には接続領域(6)が夫々形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持層と、軸受金属層および/または摺動層とを備える半体シェルの形態の滑り軸受(sliding bearing)、および、上記支持層は平坦基材を上記滑り軸受半体シェルへと成形することにより該平坦基材から形成されると共に、上記支持層に対しては少なくともひとつの付加的層が装着されるという、上記滑り軸受を製造する方法、ならびに、上記滑り軸受の使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に滑り軸受の強度および摩擦学的特性に関し、滑り軸受に対する部分的に相反する種々の要件を満足するために、先行技術においては、鋼鉄製の支持シェル上に軸受金属層および/または摺動層を装着することが通常なので、摺動特性は上記軸受金属層もしくは摺動層により決定され、且つ、強度特性は上記支持層により決定される。
【0003】
安定的な層を達成すると共に、フレッティング(fretting)を回避し、且つ、必要とされる軸受の外郭形状を達成するために、軸受の円周方向長さは軸受取付け部材に対し、製造過程で加圧により十分に高レベルの張力が確立される如くされねばならない。幾何学的に、このことは、上記軸受取付け部材の上方における膨出分(expansion)と、主として、所謂る軸受突出分(bearing protrusion)とにより達成される。
【0004】
増大する応力により、この張力は増大し、最近のモータにおける熱膨張および動的な波浪荷重と重畳される。故に、従来的に使用される鋼鉄シェル材料においても、摺動層に対する軸受金属もしくは合金においても、塑性効果および擬似弾性効果が生じ、これは最終的には軸受シェルの幾何学形状の変化に帰着する。幾何学形状における上記変化は、最終的に、一方では上記膨出分の喪失に帰着し、他方では上記軸受突出分の減少に帰着する。結果として上記軸受はもはや安定的でなく、このことは、微小運動が可能であることを意味し、該運動は、フレッティングに帰着するか、または、滑り軸受半体シェルもしくは軸受の回転を引き起こしさえする。
【0005】
この問題を克服するために、理論的には、更に大きな寸法的安定性を有する鋼鉄を使用することが可能である。しかし、このことの不都合は、変形に対する耐性が更に大きいと、たとえばロール圧接または複合鋳造の如く滑り軸受複合材料を製造する習用の方法の使用可能性が制限される、ということである。特に、経済的条件に関して特に興味深い接合技術であるロール圧接の場合には、そのために必要とされる成形力に起因する寸法制限が在る。また、複合鋳造の場合には、更に大寸である部品の遠心鋳造の間における過剰に急激な冷却条件は鋼鉄の構造に対して悪影響を有し、結果として、上記鋼鉄は、更なる困難性を以てのみ成形され得るか、もはや経済的には成形され得ない。
【0006】
先行技術からは、滑り軸受に対する鋼鉄製支持層上への爆発圧着により、更に大きな軸受幅を以て、該鋼鉄製支持層上へと軸受金属が装着され得ることが知られている。しかし、これには非常な高コストが伴い、このことは、該方法が経済的条件においては大量生産に適用することが非常に困難なことを意味する。これに加え、この方法に依れば、利用可能な挟持物の最大幅も制限される。
【0007】
耐荷力および留置能力に関する種々の要件を満足するために、特許文献1においては、燃焼エンジン用の滑り軸受であって軸受半体シェルを備えるという滑り軸受が提案され、該軸受は、連続的な鋼鉄製支持シェル上に、円周方向において連続的な複数の個別的な区画であって異なる材料特性を有するという複数の個別的な区画から成る軸受金属層を備えることから、上記半体シェルの特定の角度的区画において生ずる最大荷重に対して更に硬質の軸受金属区画が提供され得る一方、更に柔軟な軸受金属区画は、良好な調節性および良好な留置特性を有している。
【0008】
同一の目的で、本出願人の特許文献2からは、支持層上に装着された作動層は2つの部分的作動層から成ることが知られ、その場合、ひとつの部分的作動層は塵埃粒子に対する更に効果的な留置能力を確実とし、且つ、第2の部分的作動層は、滑り軸受の耐摩耗性および耐荷力を確実としている。
【0009】
通常、滑り軸受においては、2つの異なる滑り軸受半体シェルが使用される、と言うのも、滑り軸受の下側の滑り軸受半体シェルの機械的および摩擦学的な要件もしくは荷重は、上側の滑り軸受半体シェルとは異なるからである。
【0010】
通常、下側の滑り軸受半体シェルに対しては、上側の滑り軸受半体シェルよりも強固な軸受材料が使用される。このことは真実である、と言うのも特に、始動段階もしくは荷重変化動作において、斯かる滑り軸受の潤滑油間隙の幾何学形状は軸受円周の全体にわたり一定でなく、特に流体力学的な滑り軸受の場合に滑り軸受の負荷段階において、下側の滑り軸受半体シェルの軸受材料の領域においては、上側の滑り軸受半体シェルよりも優れた摩擦学的特性が必要とされるからである。この場合には、たとえば特許文献3に記述された如く、滑り軸受半体シェル同士を一体的に溶接して軸受ブッシュを形成することも知られている。この場合、軸受材料は平坦な鋼鉄帯片上へと装着され、挟持物は、2つの滑り軸受半体シェルが電子溶接により一体的に接合される前に、滑り軸受半体シェルに対して押圧されることにより成形される。
【0011】
これに加え、特許文献4は、特許文献3におけるのと類似した軸受ブッシュを記述しており、此処で該軸受ブッシュは、溶接もしくは硬質半田付けにより一体的に接合された2つの半体シェルから成ることから、更に大きな負荷を受ける半体シェルに対しては、負荷が少ない上側半体シェルに対するよりも高い等級の軸受材料が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】GB549 433A
【特許文献2】国際特許出願公開公報第WO2009/059344A2号
【特許文献3】DE24 39 096A
【特許文献4】DD42 189B
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の基礎となる目的は、燃焼エンジンに対する優れた滑り軸受を提供するに在る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記目的は、半体シェルの形態である上述の滑り軸受と、上記滑り軸受半体シェルを製造する方法と、上記滑り軸受半体シェルの使用法であって、上記滑り軸受において上記支持層は一体的に接合された数個のセグメントから成り、それらの間には接続領域が夫々形成され、また上記方法によれば、上記支持層は数個のセグメントから構成されると共に、各セグメントは、材料接合および/または形状接合様式で、および/または、圧力嵌め接続により一体的に接合され得るという使用法と、自動車の動力伝達系路における上記滑り軸受の使用とにより、個別的に達成される。
【発明の効果】
【0015】
製造および経済的な観点からは、上記支持層を一体的に接合されるべき数個の個別的なセグメントへと分割することにより、習用の滑り軸受半体シェルと比較しての明確な不都合であって、一方では幾つかの製造段階が必要とされ、且つ、他方では、特に、各セグメントが一体的に溶接され、熱が接続領域へと導入されて構造の変化を起こし得る場合には個別的なセグメントの接合は完全に容易ではないという事実に関連付けられるという明確な不都合があり、特に、更に厚寸の支持層の場合には、個別的なセグメント間における端面領域における完全な表面接続は問題的であるが、この新規な滑り軸受タイプの利点は、それを上回る。更に、この様にすると、更に大きな幅を備える滑り軸受半体シェルを製造し得る。本発明の意味の範囲内において、広幅な滑り軸受半体シェルとは、幅に対する合計壁厚の比率が、少なくとも1:10、特に少なくとも1:20もしくは少なくとも1:25である半体シェルとして定義される。故に、滑り軸受半体シェルの製造機による大量生産に対する複雑な調節なしで斯かる大寸の滑り軸受半体シェルを製造することが可能である、と言うのも、個別的なセグメントの更に小寸のサイズに依り、支持層上の軸受金属層または摺動層の配置構成に対して既存の機械が依然として使用され得るからである。特に、この様にすると斯かる大寸の滑り軸受半体シェルに対してロール圧接の方法を使用し続け得る、と言うのも、個別的なセグメントの必要な成形力は、同一の滑り軸受サイズに対する連続的な支持層と比べて減少され得るからであり、特に、支持層が、少なくとも殆ど完全に半円形に成形される必要が無いからである。滑り軸受半体シェルの製造に対して経済的な観点から興味深いロール圧接に加え、たとえばPVDもしくはCVD方法の如き他の被覆方法も使用され続け得るので、この場合には、斯かる大寸の滑り軸受半体シェルの大量生産に対して、たとえばスパッタリング装置などの既知の幾何学形状の被覆チャンバが使用され得ることが格別の利点であることから、蒸着の間におけるたとえば濃淡などの公知の影響に起因する大寸の滑り軸受半体シェルの被覆に対して知られる複雑な形状寸法が回避され得るので、個別的な各セグメントは適用される層の層厚みの非常な高精度を以て製造され得る。更に、この様にすると異なる材料を組み合わせて支持層を製造することも可能であることから、滑り軸受半体シェルの要件の更に良好な調節が可能とされるだけでなく、この様にすると、滑り軸受半体シェルに対して公知でない新たな特性変化態様も利用可能とされ得る。更に大寸の軸受幅を達成することに加え、提案された滑り軸受によれば又は滑り軸受を製造する方法においては、たとえば少なくとも10mm、特に少なくとも15mm、好適には少なくとも30mmの層厚みである更に大きな層厚みが支持層に対して更に容易に達成され得ることも利点である、と言うのも、個別的なセグメントの必要な成形が、完全な滑り軸受半体シェルと比較して、更に少ないエネルギ使用量にて達成され得るからである。この様にすると、更に経済的な軸受保持も可能である、と言うのも、僅かに数種類の幅の支持層帯片のみが、半完成材料として保持されるべきだからである。
【0016】
上記軸受金属層および/または摺動層が数個のセグメントから成ること、または、上記少なくともひとつの付加的層もまた数個のセグメントで構成されることも可能である。故に、上記滑り軸受は“パッチワーク軸受”の形態で構成され得ることから、滑り軸受に対する異なる要件の更に良好な調節が可能である、と言うのも、種々に負荷を受ける滑り軸受半体シェルの領域に対して、特有の様式にて特有の材料が使用されるからである。故に、これに加え、滑り軸受のセグメントにおける材料特性を相互に更に効果的に調和させ得ることから、たとえば、個別的な層の相互に対する接着性が向上され得る。しかもこの様にすると、材料の非互換性の故に習用の方法を使用するならば製造が困難である材料で作成された滑り軸受半体シェルもまた製造され得る。
【0017】
上記摺動層と軸受金属層との間、または、軸受金属層と支持層との間、または、上記支持層の後側上には、少なくともひとつの付加的層が配置され得ることから、この場合に滑り軸受半体シェルの全ての層が数個のセグメントから成るので、この変更実施例において、個別的なセグメント同士の間における上記接続領域は、摺動層の表面から、支持層の、または、その上に配置された付加的層の後側まで連続的に延在する。故に、上記滑り軸受半体シェルの個別的なセグメントは、一体的に接合されて完成した滑り軸受半体シェルとされる前に完全に製造されると共に、最終製造段階においては、個別的なセグメント同士の接合、または、可能的には表面処理のみが、先行技術から公知の精密中刳りなどにより実施される必要がある、ということが可能である。故に、保存されると共に異なる材料特性を有する各セグメントから比較的に短時間で滑り軸受が組立てられ得る様に、事前作製された個別的なセグメントを保存することが可能であることから、滑り軸受半体シェルの大量生産が簡素化され得る。
【0018】
既に言及された如く、好適な変更実施例においては、上記支持層もしくは軸受金属層もしくは摺動層もしくは少なくともひとつの付加的層の少なくともひとつのセグメントは、同一層の付加的セグメントの材料とは異なる特性を有する材料から作成される。故に、滑り軸受半体シェルにおいては、先行技術からの公知の滑り軸受半体シェルにおいてはこれまで示されていない、複数の特性の組み合わせが達成され得る。
【0019】
特に、上記異なる特性は、各セグメントの硬度および/または内部応力である。故に、上記滑り軸受半体シェルを、高圧の新たな構成を有する高度に負荷可能な燃焼エンジンに対し、または、滑り軸受半体シェルの機械的負荷性の特別の要件に対し、更に効果的に調節することが可能である。他方、個別的なセグメントの異なる内部応力変化態様によれば、長期にわたり滑り軸受の上記膨出分もしくは軸受突出分を維持することが可能であることから、滑り軸受半体シェルの後側の領域においてフレッティングの問題が更に効果的に回避されるので、滑り軸受は更に長い寿命を有する。異なる特性を有する複数の材料を使用することにより、特にオイル送給ラインを備えた領域、すなわち、作動表面の領域にて潤滑油を供給するためのオイル孔を備えた領域にて、軸受においてキャビテーションの傾向がある箇所が更に容易に制御され得る。
【0020】
内部応力に関しては、平坦帯片を滑り軸受半体シェルへと成形することにより、軸受の後側には引張応力が蓄積され且つ滑り軸受の内部には圧縮応力が蓄積されることを銘記すべきである。通常、上記の各張力は均等化される。しかし、上記滑り軸受半体シェルは成形の後で、たとえば摺動表面を精密中刳りすることで更に処理されることから、完成した滑り軸受においては引張応力が支配的なので、上記滑り軸受は更に内方に変形する傾向を有し、すなわち、滑り軸受が“畳み込まれる”虞れがある。結果として、軸受取付け部材における滑り軸受半体シェルの位置決めが悪化される。このことは、本発明に従い数個のセグメントから滑り軸受半体シェルを製造することにより効果的に阻止され得、すなわち、滑り軸受半体シェルの内部応力変化態様が改善され得る。
【0021】
この様にして滑り軸受半体シェルの異なる要件を更に効果的に制御するために、上記支持層もしくは軸受金属層もしくは摺動層もしくは少なくともひとつの付加的層の少なくともひとつのセグメントは、同一層の付加的セグメントの材料とは異なる組成を有する材料で作成され得る。この様にして、滑り軸受は、中型から大型の2ストロークおよび4ストローク燃焼エンジンであって、基本的に環境に関して駆動器は排気が少なく且つ更に効率的であり、たとえば、更に高い点火圧力、更に高い動作温度、代替的な燃料および潤滑油、および、更に長いメンテナンス間隔を有するという燃焼エンジンにおける技術的要件に対して更に効果的に調節され得、このことは、先行技術からの現在の滑り軸受によっては達成され得ない、と言うのも、それらは効率の限界に達したからである。この問題に対する代替的な手法、すなわち、使用される合金の最適化とは異なり、本発明の利点は、公知の実績ある合金、すなわち、対応して応力を受ける軸受の箇所に特有の合金が、使用され続け得るということである。連続的な層を備えた滑り軸受と比較して、更に小寸であれば更に容易に製造可能である軸受セグメントによれば、習用の鋼鉄を基礎とした組成が使用かつ組み合わされ得ることから、軸受を形成する2つの滑り軸受半体シェルの分割面の領域であって、設置状態において最大の応力が生ずるという領域において、更に大きな強度のシェル片が使用される。故に、同様に、変形技術に関し、強度増進セグメントを、この特性の無いセグメントと組み合わせることが可能である。
【0022】
上記滑り軸受半体シェルの好適な変更実施例においては、この様にして、滑り軸受半体シェルの異なる角度領域における異なる応力に関して滑り軸受の機械的特性に関して改善を可能とすべく、少なくとも上記支持層の各セグメントは、半体シェルの円周方向において相互に隣接して配置される。
【0023】
各セグメントは、特に、材料接合および/または形状接合様式で、および/または、圧力嵌め接続により、一体的に接合される。特に、此処では、材料接合接続が好適である、と言うのも、技術プロセスに関してこれは、形状接合接続よりも、あるいは、圧力嵌め接続よりも少ない労力を必要とするからであるが、材料接合接続における熱の導入により脆弱な混合結晶が形成され得ることが予測され、それは接続領域において滑り軸受半体シェルの破損に繋がり得ることから、脆弱な金属間相に由来する裂開により滑り軸受半体シェル全体の疲労強度が低減され得るなら、後者の2つの接続方法が好適に利用され得る。
【0024】
上記各セグメントは、漸進的変化部なしで、部分的に重なり合うと共に相互に隣接して配置され得ることから、上記接続領域においては、上記接続を生成するために更に大きな表面が利用可能とされ得る。更に、個別的なセグメントの材料接合接続によれば、夫々の溶接継目は、各セグメントの前面および後面の領域において滑り軸受半体シェルの径方向に僅かにオフセットして配置されることから、接続領域における支持層もしくは各セグメントへの熱の導入に関して少ない不都合さを以て材料接合処置が実行され得る、ということは利点である。
【0025】
単一もしくは複数の接続領域は半体シェルの円周方向に傾斜されることも可能なので、円周方向においては、ひとつのセグメントから次のセグメントへの“摺動”遷移部が配備され得、これは、滑り軸受半体シェルの機械的な負荷能力の増大に帰着し得る。
【0026】
滑り軸受半体シェルの異なる角度領域において該半体シェルに対する異なる機械的および摩擦学的な要件を適合させるために、たとえば、高度に負荷される領域における層の接着強度を更に高めるべく、または、摩擦学的な条件において特に負荷される滑り軸受半体シェルの領域における摺動層上に付加的な作動層を形成すべく、上記半体シェルの各セグメントの内の少なくとも2つのセグメントが、相互に重ねて配置された異なる個数の層を有することが可能である。
【0027】
この場合、相互に重ねて配置された異なる個数の層によってさえも、半体シェルの全体的層厚みが径方向において少なくとも略々一定ならば、それは利点である、と言うのも、この様にすると、潤滑油間隙の幾何学形状の更に良好な設計が可能とされるからである。
【0028】
但し、先行技術から知られる如き種類の“溝型の軸受”が形成される様に半体シェルの各セグメントの内の少なくとも2つのセグメントが異なる全体的層厚みを有するならば好適であり得、または、滑り軸受半体シェルの各セグメントの配置に依存して、すなわち、各セグメントが円周方向もしくは径方向において相互に隣接して配置されるなら、特に、円周方向において滑り軸受半体シェルの中央セグメントが更に小さな層厚みを有すべく設計されることからオイル案内のために一種の溝が形成されるなら、オイル供給に関する改善を達成することも可能である。
【0029】
上記支持層の各セグメントの内の少なくともひとつのセグメントが、軸受金属層および/または摺動層の数個のセグメントもしくは区画を備えることから、滑り軸受半体シェルの製造コストは相当に増大することもあるが、支持層の各セグメントの内部応力経路は軸受金属層もしくは摺動層の数個のセグメントもしくは区画に対して分散されることから、一方では、既存の内部応力変化態様に依り、支持層の後側におけるフレッティング防止特性に関して改善が達成され得、他方では、滑り軸受の摩擦も改善され得る、という利点が達成される、と言うのも、支持されるべき構成要素の方向において、上記内部応力経路は、支持層の上側に配置された付加的層のひとつの個別的なセグメント内へと完全には伝達されないからである。
【0030】
好適実施例において、2つのセグメント間の接続領域は各セグメントの材料から作成されるので、これらのセグメントの材料接合接続に対して付加的材料は不要であることから、上記接続領においては個別的なセグメントの特性の更に良好な連続性も達成され、このことは、接続領域の特性の急激な変化が更に効果的に回避され得ることを意味する。
【0031】
上記方法のひとつの変更実施例に依れば、上記少なくともひとつの付加的層は、上記支持層の各セグメントを相互に接合する前に、装着される。故に、各セグメントは一体的に接合されて層構造を形成する前に作製されることから、可能的には、材料接合による個別的なセグメントの接続の間に問題が生ずることがある、と言うのも、熱の付与により、相互に重ねられた各層は同時に溶融され、可能的に混合された相が滑り軸受半体シェルの径方向に形成されることで、接続領域は可能的に脆弱化されるからであるが、既に上記で言及された如く、“パッチワーク軸受”としての上記滑り軸受半体シェルの実施例において、斯かる滑り軸受半体シェルの大量生産は簡素化され得るという利点が達成される、と言うのも、必要に応じて既に製造されたセグメントが、滑り軸受に対する要件に従い、異なる組み合わせで一体的に接合されることのみが必要だからである。
【0032】
各セグメントを成形して滑り軸受半体シェルとすることは、少なくともひとつの付加的層の装着の後においてのみ実施され得る。換言すると、このことは、上記少なくともひとつの付加的層は、平面的な、すなわち平坦な支持層上へと装着されることを意味することから、被覆自体が簡素化され得る、と言うのも、たとえば、スパッタリング技術もしくはPVD方法による滑り軸受半体シェルの被覆に対して複雑な運動パターンが実施される必要がないので、その層の品質自体も改善され得るからである。故に、個別的な層に対して更に大きな層厚みを提供することも可能であることから、滑り軸受半体シェル全体に対して、延長された寿命を提供し得る。これに加え、平坦な基材の場合、シェルの成形に先立つ軸受帯片の寸法的成形に対し、好適な剪断もしくは切断方法が使用され得る。平坦な基材によれば、更に良好な熱の導通が可能であり、その場合、各層の領域において硬度の喪失が更に効果的に回避され得ることも利点である。
【0033】
この場合、支持層の各セグメントの接合が滑り軸受半体シェルへの成形に先立ち実施されるならば、それは利点であり得る、と言うのも、この場合、変形の間に開始される応力も接続領域へと延在することから、特性変化態様は各セグメント間における特性の急激な変化を全くもしくは殆ど有さないからである。
【0034】
好適には、上記支持層の各セグメントはレーザ溶接により接合される、と言うのも、この方法において、接合されるべき各セグメントへの熱の付与は、滑り軸受半体シェルの円周方向で見たときに小寸の、すなわち狭幅の領域に制限され得ることで、特に、特性の連続的な進展が円周方向において達成され得るからである。熱の影響を低減することにより、たとえば、冷温硬化されてロール圧接されたアルミニウム合金は接続領域において硬度を喪失しないことが可能である。このこともまた、厚寸壁の滑り軸受半体シェルが製造されるときには格別の利点である。但し、これに加え、たとえば、軸受セグメントと協働する少なくともひとつの付加的層に対する鋳造方法もしくはロール圧接から帰着する、相当に異なる製造法に起因する状態の残留応力であって、不適切な許容誤差に繋がるという残留応力もまた、更に効果的に制御され得る。故に、結果として、突出分による膨出分の不都合で顕著な変化もまた更に効果的に回避され得ることで、滑り軸受が何らかの場合に破損する傾向が更に少なくなる。先行技術において通常的である様に、上記残留張力状態を低減すべく熱的な前処理を使用することは適切でない、と言うのも、このことには、特に軸受金属の硬度の喪失を伴うからである。
【0035】
この場合、少なくとも2MW/cm2、特に少なくとも3MW/cm2のレーザ光線のビーム強度が使用されるならば、そのことは利点である、と言うのも、この様にすると個別的なセグメントの最深の層内へのエネルギの印加が可能であることから、特に強度の一貫性に関し、接続の品質、すなわち溶接の品質が高められ得るからである。
【0036】
既に上記で言及された如く、各セグメントは好適には、付加的材料なしで一体的に溶接される。
【0037】
また、各セグメントが、滑り軸受半体シェルの径方向で見て、後側および前側の両方から一体的に溶接されるならば、そのこともまた利点であり得る、と言うのも、この様にすると更に短い処理時間が達成され得、特に、更に長時間に亙るエネルギの印加に起因して外側縁部領域において不都合な混合相が生成されることも回避され得るからである。両側から溶接することにより、径方向で見てセグメントの芯部領域、すなわち中央領域に至るために必要な時間が短縮化され得る如く、溶接時間は短縮され得る。
【0038】
上記において既に説明された如く、上記支持層の少なくとも2つのセグメントに対して異なる特性を備える複数種の金属もしくは合金が使用されるか、または、更なる変更実施例に従い異なる複数種の金属もしくは合金が使用されるならば、そのこともまた上述の理由に依り利点である。
【0039】
本発明に依れば、上記少なくともひとつの付加的層の各セグメントの内の少なくとも2つのセグメントは異なる被覆方法により作製されることも可能であることから、たとえば、スパッタリングもしくはPVD技術により被覆されたセグメントと、ロール圧接されたセグメントとを備える滑り軸受が入手可能とされ得ることから、先行技術から知られる如く、PVDもしくはスパッタリング・プロセスにより、軸受金属に対しもしくは摺動層に対して高品質の層、特に、高強度の層が提供され得、上記各層は滑り軸受半体シェルにおいて大きな負荷を受ける領域に配置され得る。
【0040】
本発明の更に良好な理解のために、本発明は、相当に簡素化された表現とされた以下の図面に関して更に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】セグメント化された支持層を備えた滑り軸受半体シェルの側面図である。
【図2】全ての層がセグメント化された滑り軸受半体シェルの変更実施例の側面図である。
【図3】径方向に配置された複数のセグメントを備えた滑り軸受半体シェルの別の変更実施例の平面図である。
【図4】2つのセグメント間における接続領域の変更実施例の側面図である。
【図5】各セグメントにおいて異なる個数の層を備えた滑り軸受半体シェルの更なる変更実施例の側面図である。
【図6】各セグメントの異なる層厚みを備えた滑り軸受半体シェルの変更実施例の前面図である。
【図7】滑り軸受半体シェルへと成形される前において数個のセグメントから成る被覆済みの平坦基材の断面の側面図である。
【図8】各セグメント間において軸心方向に延在する接続領域を備えた滑り軸受半体シェルの平面図である。
【図9】各セグメント間において軸心方向に対して傾斜して延在する接続領域を備えた滑り軸受半体シェルの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
最初に、種々に記述された代表的実施例において、同一の部材は同一の参照番号および同一の構成要素名称が付与されることから、説明全体を通して含まれた開示内容は、同一の参照番号および同一の構成要素名称を有する同一の部材に対して適用され得ることを銘記されたい。同様に、説明において、たとえば頂部、底部、側部などの如く位置に関する詳細は、現在において記述され且つ表現された図面に関しており、位置が変化した場合には、その新たな位置に対して適合されるべきである。更に、図示かつ記述された種々の代表的実施例からの個別的な特徴もしくは特徴の組み合わせもまた、それら自体が独自のまたは発明的な解決策を表し得る。
【0043】
図1は、支持層3と、作動層と称されることが多い摺動層4とから成る半体シェル2の形態の滑り軸受1を示している。滑り軸受1のこの変更実施例において支持層3は、接続領域6を形成することにより一体的に接合された3個の別体的に製造されたセグメント5から成る。この変更実施例において摺動層4は、支持層3の内側表面7上に連続的に延在すると共に、上記支持層に対して接合される。
【0044】
“少なくとも約180°”という語句は、本発明の意味の範囲内において、この種の半体シェル2は、たとえば180°よりも最大で5°小さいという角度範囲などの僅かに小さい角度範囲も有し得る如く定義されることから、半体シェル2は、180°の角度範囲の軸受領域形成部内へと嵌合され得ると共に、該半体シェルは、先行技術から知られる如く軸受取付け部材である軸受領域における張力の形成を以て保持され得る。結果として半体シェル2は、加圧プロセスにより確立された十分に大きな応力もしくは加圧圧力を達成するために、膨出分を含み得る。上記応力もしくは加圧圧力はまた、半体シェル2が所謂る軸受突出分を有し、すなわち該半体シェルは、円周方向における長さであって、同一方向における対応軸受取付け部材の長さよりも、たとえば、Fを1000、特に800、好適には650の値を有する係数として、(軸受の直径+軸受の直径/F)という式に従い計算される量だけ大きいという長さを有することからも達成され得る。
【0045】
図1においては3個のみのセグメント5が示されるが、本発明の有効範囲内においては、支持層3に対し、たとえば4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個などのセグメント5などの、3個より多いセグメント5も使用され得ることから、支持層3の個別的な複数のセグメント5の間にも、更に多数の接続領域6が可能である。更に、支持層3を製造するために、2個のみのセグメント5が使用されることが可能である。
【0046】
上記滑り軸受1、すなわち半体シェル2は、個別的な複数のセグメント5が一体的に接合される如き様式で製造され得る。各セグメント5間の接続は、形状接合および/または材料接合により、および/または、圧力嵌め接続を介して達成され得る。更に、個別的な複数のセグメント5が、それらの成形後に、すなわち、平坦な材料帯片から、上記滑り軸受半体シェルの対応曲率半径を備えた対応セグメント5への成形後に一体的に接合されること、または、個別的な複数のセグメントが成形に先立ち一体的に接合され且つ加圧プロセスを介して複合体全体から半体シェル2へと成形されることが可能である。
【0047】
この変更実施例における摺動層4は、たとえば、メッキにより、または、ロール圧接により、または、たとえばスパッタリング技術の如きPVD方法により、または、CVD方法などにより、滑り軸受半体シェルを製造する先行技術から知られる方法に従い各セグメント5を一体的に接合した後で、既に事前形成された半体シェル形状の支持層3上に装着される。既に言及された上記各方法は先行技術に属することから、且つ、反復を回避するために、当業者におかれては適切な文献を参照されたい。
【0048】
図2は、半体シェル2の形態の滑り軸受1の異なる変更実施例を示している。図1に係る変更実施例におけるのと同様に、この変更実施例においても支持層3は数個のセグメント5により形成され、その際、図2に係る表現において支持層3は3個のセグメント5により形成されるが、この変更実施例においては、支持層3に対し、接続された3個よりも少ないもしくは多い個数のセグメント5が使用され得ることも真実である。摺動層4は、支持層3上に配置され、且つ、該支持層3に対して接合される。図1に係る変更実施例と異なり、滑り軸受1のこの変更実施例においては、摺動層4もまた複数のセグメント9により形成される。この場合、支持層3のセグメント5間の接続領域6は、摺動層4の2つのセグメント9間の付加的接続領域10の下側に位置する。故に、接続領域6、10は円周方向11において相互にオフセットして配置されることも可能である。更に、摺動層4は支持層3のセグメント5の個数とは異なる個数のセグメント9から成ることが可能であり、たとえば、滑り軸受1は、支持層3の3個のセグメント5と、摺動層4の2個のみのセグメント5、または、4個もしくは5個もしくは6個などのセグメント9とを備え得る。
【0049】
破線によれば、摺動層4上に付加的層12が配置され得ることが示される。該付加的層12は、たとえば、慣らし運転層の形態とされ得る。上記付加的層12が摺動層4により形成されることも可能であり、それにより、この場合に図2において参照番号4により表される摺動層は、所謂る軸受金属層として設計され得る。軸受金属層の代わりに、図2において参照番号4により表された上記摺動層は接合層であることから、支持層3−接合層−摺動層4という層構造が提供されることも可能である。
【0050】
図2における破線によれば、内側表面7とは逆の後側表面である支持層3の後側13上には、支持層3の後側におけるフレッティングの発生もしくはフレッティングの問題を回避するためにフレッティング防止層が配置され得ることも表される。
【0051】
概略的に、図1および図2において本発明に対して示された層構造は制限的でないことを銘記すべきである。必要であれば、個別的に示された各層の間に接合層もしくは拡散障壁層の如き付加的層が配置可能であり、すなわち、たとえば、摺動層4と支持層3との間における接合層、または、支持層3とフレッティング防止層14との間における接合層、または、摺動層4と軸受金属層との間における拡散障壁層、または、軸受金属層と支持層3との間における拡散障壁層などである。基本的に、斯かる滑り軸受の設計態様は先行技術から知られており、先行技術が参照される。
【0052】
図2において同様に破線により示される如く、全ての層が個別的なセグメント5、9から構成され、それらの間には接続領域6、10が形成されることが可能であり、または、そのことは本発明の好適実施例の変更例である。特に、この様にして接続領域6、10は半体シェル2の径方向において相互に重ねて配置され得ることから、上記半体シェルは数個のセグメント5、9から成り得ることで、上記セグメント5、9は事前作製され得る。但し、既に言及された如く径方向において相互に重ねて配置された少なくとも2つの層の個別的なセグメント5、9間の接続領域6、10が、円周方向11において相互にオフセットして配置され得ることが可能である。
【0053】
上記半体シェル1の製造に関しては先の説明を参照されたいが、特に、個別的なセグメント5、9を、材料接合および/または形状接合様式で、且つ/又は、加圧接続を介して、一体的に接合することが可能である。更に、各セグメント5の成形は、たとえば摺動層4、または、軸受金属層および摺動層4、または、上述の異なる層複合体の如き付加的層を載置する前にもしくは後に行われることが可能であり、あるいは、複数の平坦基材に対して被覆が行われるとき、これらの基材は、被覆の後であり且つ半体シェル2へと成形されるに先立ち、一体的に接合されることも可能である。
【0054】
また、半完成品を半体シェル2へと成形した後、図1に係る変更実施例におけるのと同様に、支持層3および可能的に配備された軸受金属層が個別的なセグメント5から作成され、且つ、摺動層4が上記層状複合体上へと載置されることも可能なので、この場合における摺動層4は、軸受金属層の各セグメントの内側表面の全体にわたり連続的に延在する。
【0055】
図1および図2に係る変更実施例において、個別的な層の個別的なセグメント5、9は、円周方向11において、相互に隣接して配置され且つ一体的に接合される。セグメント5、9の上記配置構成の上記変更実施例は、本発明の有効範囲内である好適な変更例である。
【0056】
図3に示された如く、セグメント5、9は、軸心方向15において相互に隣接して配置されることで、セグメント5、9が円周方向11に連続的に延在することも可能である。
【0057】
図3に係る変更実施例において個別的なセグメント5、9は円周方向11における数個のセグメント5、9から構成されることも可能であることから、図1または図2の変更実施例と図3に係る変更実施例との組み合わせであるという変更例が可能である。
【0058】
図3に係る変更実施例における滑り軸受1において個別的に配置可能な各層に関しては、上記の説明を参照されたい。
【0059】
個別的なセグメント5、9を接合するためには、これらのセグメントは、可能的には相互から離間されて相互に当接して配置可能であることから、個別的なセグメント5、9を離間する場合、上記接続領域6、10は、溶接の場合に通常である様に、付加的材料により充填される。必要であれば、個別的なセグメント5、9は、たとえばV形状断面を有する溶接溝を形成するために、接続領域6、10において斜端面形成され得る。更に、図4に示された如く、支持層3の各セグメント5は、または概略的には、滑り軸受1の個別的な層のセグメント5、9は、接続領域6において部分的に重ね合わせて配置され且つ一体的に接合されることが可能であり、この場合、滑り軸受1の個別的なセグメント5もしくは付加的セグメント9は、相互に隣接して配置されたセグメント5の対向端面16、17の領域において段部状に形成され、ひとつのセグメントは内側表面7の領域において段状形成されると共に、一体的に接合されるべき2つのセグメント5のひとつのセグメントは、後側13の領域において鏡像的に段状形成されることから、2つのセグメント5は図4に示された如く相互に重ねて配置され得る。この種の接続の好適実施例において、漸進的変化部の寸法は、内側表面7または後側13の領域において漸進的変化部なしで、各セグメントが相互に隣接して配置されて相互に融合する様に、すなわち、表面上にては各セグメント5、9間に漸進的変化部が無い様に、選択される。
【0060】
図5は、支持層3の各セグメント5が、異なる個数の付加的層に対する支持体であるという滑り軸受1の変更実施例を示している。支持層3のセグメント5の各々上には、軸受金属層18および摺動層4が配置される。支持層3の外側の2つのセグメント5は各々、作動表面19上の付加的層を備え、該付加的層はこの場合、慣らし運転層20または摩滅層として設計される。接続領域6もしくは10は径方向において相互に重ねて配置されることから、図2に係る変更実施例におけるのと同様に、滑り軸受1は、別体的に製造された3個の全体的セグメントから成る。全体的セグメントとは、上記滑り軸受半体シェルの複数のセグメントの内のひとつのセグメントの完全な層構造として定義される。
【0061】
慣らし運転層20または摩滅層は、滑り軸受端面21、22から、それ自体が慣らし運転層20の無い中央領域23まで延在する。滑り軸受1の側部領域における上記付加的な慣らし運転層20もしくは摩滅層の配置は、慣らし運転層20を備えたこれらの領域の少なくとも一方において潤滑油による塵埃の付着が最大なので、利点を有している、と言うのも、この付加的な慣らし運転層20によれば、滑り軸受1の更に良好な適合性が達成されるからである。
【0062】
当然乍ら全体的セグメントもまた、上記において既に説明された如く、異なる層構造を有することが可能であり、特に慣らし運転層20の代わりに別の層が配置可能であり、この場合に、全ての全体的セグメントの内の少なくとも2つの全体的セグメントである個別的な全体的セグメントは、異なる個数の個別的な層を有する。各全体的セグメントの内のいずれも、相互に重ねて配置された同一個数の層を有さない、ということも可能である。
【0063】
この変更実施例において全体的層厚み24は半体シェル2の全体にわたり一定であることから、更に多い個数の個別的な層を有する全体的セグメントにおいて、各層の内の少なくともひとつの層は、上記滑り軸受半体シェルの中央領域23における同一の層と比較して、少ない層厚みを有している。
【0064】
中央領域23において径方向で最も内側の層よりも大きなレベルの強度も有し得る慣らし運転層20、または、径方向において最も内側の付加的層が配置されるという端面21、22から始まる角度範囲は、夫々の端面21、22にて始まり、45°まで、特に30°までの範囲にわたり延在し得る。この場合には、滑り軸受1の2つの外側区画の内の一方において付加的層が配置されることも可能であり、そのことは、この場合において半体シェル2の設置位置が製造前に既知であれば、利点である。
【0065】
概略的に、本発明の全ての変更実施例においては、半体シェル2の冠部から測定された±25°、特に±15°の角度範囲において上記滑り軸受半体シェルの冠部領域において、他の各セグメント5よりも大きな強度を有するセグメント5、特に、更に強力な摺動層4および/または更に強力な支持層3を配置することが可能である。この様にして、点火圧力により引き起こされる更に大きな応力は、更に効果的に対処され得る。
【0066】
対照的に、図6は、滑り軸受1の経路の全体にわたり軸心方向15において異なる全体的層厚み24を有する本発明の変更実施例を示しており、その場合に簡潔さのために2つのみの層、すなわち支持層3および摺動層4が示されているが、この変更実施例においては、2つより多い個別的な層も配備され得る。支持層3もしくは摺動層4のセグメント5もしくは9は、図3に係る変更実施例においても示された如く、軸心方向14において相互に隣接して配置される。同様に、セグメント5もしくは9の間の接続領域6もしくは10は、径方向において相互に並んで配置される。
【0067】
この変更実施例において支持層3は、径方向15における経路全体にわたり均一な層厚みを以て設計される。対照的に、軸心方向15において摺動層4は、変化する厚みの領域、すなわち、大きな層厚みを有する更に厚寸の縁部領域25、26と、比較的に薄寸である層厚みを有する中央領域27とを有している。特に、この様にすると、滑り軸受1の縁部負荷は更に効果的に対処可能であり、このことはまた、縁部領域25、26において、上記中央領域と比べて大きな強度の材料が、少なくとも径方向の最も内側の層において配備され場合にも達成され得る。
【0068】
但し、摺動層4は、軸心方向15において均一な層厚みを有すべく、且つ、支持層3は後側13の領域において、縁部領域25、26においては更に大きな層厚みを且つ中央領域27においては更に小さな層厚みを有する如き層厚み経路を有すべく設計されることも可能である。
【0069】
これに加え、本発明のこの変更実施例においては、個別的な領域、すなわち縁部区画25もしくは26または中央区画27は異なる個数の個別的な層を有し、すなわち、故にセグメント5、9は異なる個数の層を有することも可能である。
【0070】
また、相互に重ねて配置された少なくとも2つの層間にて、ひとつの層内におけるセグメントの個数が後側13から作動表面19の方向において増大する様に、支持層3の複数のセグメント5の内の少なくともひとつのセグメントは、軸受金属層18および/または摺動層4の数個のセグメントもしくは区画を備えることも可能である。この設計態様によれば、夫々の使用条件に対して所望された滑り軸受1の機械的特性および摩擦学的特性の更に繊細な調節が可能である。
【0071】
図7は、滑り軸受1の半体シェル2を製造する半完成品28を示している(参照番号の割当て:図1)。上記半完成品は、依然として平坦状態であり、すなわち、半体シェル2へと成形される前である。半完成品28は、相互に隣接して配置された2つのセグメント5を備える支持層3と、セグメント5の頂部上に配置された2つのセグメント9を備える摺動層4とを備える。個別的なセグメント5、9は図1においては例示的にのみ、滑り軸受1の円周方向11(図1)に示される。支持層3の各セグメント5間の接続領域6においては、径方向において、すなわち作動表面19の方向において、頂部にV形状溝29が配備され、このことは、摺動層4もしくはそのセグメント9が、軸心方向15において相互に対置された外側端面30、31の領域において斜端面形成された縁部領域を有するだけでなく、摺動層4の各セグメント9間においても斜端面形成部32、33を有することを意味する。この様にして、後時における半体シェル2への成形が簡素化されると共に、それにより摺動層4において引き起こされる応力が減少される。必要であれば、成形後における摺動層4の各セグメント9間のこの領域もまた、たとえば図2に係る変更実施例に対して記述された如く、接続領域10の形成を以て、材料接合様式で一体的に接合され得る。
【0072】
当然乍ら、上記溝29は異なる断面を有することも可能であり、これにより成形の簡素化が可能とされる。溝29が摺動層4の層厚みの全体にわたり支持層3の表面7まで延在することも絶対的に必要ではないが、該溝29は、摺動層4の、すなわちそのセグメント9の層厚みよりも小さい深度を有し得る。
【0073】
基本的に、2つより多い層である滑り軸受1の設計態様によれば、ひとつより多い層が斯かる溝を備え得ることが可能であり、その場合に側壁の斜端面もまた、夫々の層の半径に適合して異なり得る。
【0074】
図8および図9は夫々、支持層3のセグメント5の平面図を示している。明瞭化を高めるために、更なる可能的な層の全ては排除されている。
【0075】
図8には、各接続領域6がセグメント5間において軸心方向15に整列されたという本発明の好適実施例が示される。
【0076】
但し、図9に示された如く、2つのセグメント間の接続領域6が軸心方向15に対して傾斜されることも可能である。特にこの場合、上記の理由のために、軸心方向15に対して接続区画6が採用する傾斜角度34は、2°の下限値と30°の上限値とを有する範囲から選択される。但し、この傾斜角度を、7°の下限値と25°の上限値とを有する範囲から選択することも可能である。
【0077】
基本的に、滑り軸受1の個別的な層は、滑り軸受1の夫々の層に対して先行技術から知られる材料、または、滑り軸受1に対して使用され得る材料で作成され得る。滑り軸受1は少なくとも主として、金属もしくは合金から作成される。“少なくとも主として”という語句は、滑り軸受1の径方向の最内側層は、すなわち、支持されるべき構成要素と対向される層は、潤滑油被覆によっても形成され得ることを意味すると理解される。必要であれば、上記潤滑油被覆層もまた、幾つかの部分層から構成され得る。特に、潤滑油被覆層を半体シェル2の径方向の最内側層として滑り軸受1上へと載置する場合、径方向の最内側層は、たとえば半完成品28などの半完成品を半体シェル2へと成形した後で適用されることから、上記潤滑油被覆層は、滑り軸受1における複数のセグメントの形成なしで連続的に配置される。このことは実証される、と言うのも、潤滑油被覆の簡単な吹き付けと、潤滑油被覆の重合可能な成分の次続的な重合とにより、潤滑油被覆層が製造され得ることは公知だからである。但し当然乍ら、滑り軸受1に複数のセグメントの形態の潤滑油被覆層を配置することも可能である。
【0078】
支持層3、または、該支持層3の少なくとも個別的なセグメント5は好適には、鋼鉄、または、この目的に対して当業者に知られた例えば真鍮などの材料で作成され得る。圧力嵌めの要件に従う他の材料も使用され得る。
【0079】
上記各セグメントに対し、または、少なくとも軸受金属層18の個別的なセグメントに対し、たとえば以下の合金が使用され得る。
【0080】
(部分的にDIN ISO 4381から4383に従う)アルミニウム基材による軸受金属:
AlSn6CuNi、AlZn5SiCuPbMg、AlSn20Cu、AlSi4Cd、AlCd3CuNi、AlSi11Cu、AlSn6Cu、AlSn40、AlSn25CuMn、AlSi11CuMgNi、AlZn4SiPb;
【0081】
(部分的にDIN ISO 4383に従う)銅基材による軸受金属:
CuPb10Sn10、CuSn10、CuPb15Sn7、CuPb20Sn4、CuPb22Sn2、CuPb24Sn4、CuPb24Sn、CuSn8P、CuPb5Sn5Zn、CuSn7Pb7Zn3、CuPb10Sn10、CuPb30
【0082】
鉛基材による軸受金属:
PbSb10Sn6、PbSb15Sn10、PbSb15SnAs、PbSb14Sn9CuAs、PbSn10Cu2、PbSn18Cu2、PbSn10TiO2、PbSn9Cd、PbSn10
【0083】
スズ基材による軸受金属:
SnSb8Cu4、SnSb12Cu6Pb
【0084】
当然乍ら、アルミニウム、銅、鉛もしくはスズ基材により言及された軸受金属以外の軸受金属、特に、先行技術から知られる軸受金属の全てが使用され得る。
【0085】
但し好適には、鉛を含まない軸受金属が使用される。
【0086】
各セグメントに対し、または、少なくとも単一もしくは複数の接着剤層の個別的なセグメントに対し、たとえば、アルミニウム、もしくは、AlSc3の如きアルミニウム合金、または、Mn、Ni、Fe、Cr、Co、Cu、Ag、Mo、Pdおよびそれらの合金およびNiSn合金もしくはCuSn合金などの層が使用され得ることから、此処でも、接着力を高めるために、先行技術から知られる材料の全てが使用され得る。
【0087】
各セグメントに対し、または、少なくとも拡散障壁層の個別的なセグメントに対し、同様にアルミニウムもしくはアルミニウム合金の層、または、ニッケル層、または、Mn、Ni、Fe、Cr、Co、Cu、Ag、Mo、Pdおよびそれらの合金の層などが使用され得る。
【0088】
各セグメントに対し、または、少なくとも摺動層4の個別的なセグメント9に対し、たとえばAlSn20Cu、AlSn40Cu、AlBi15Mo2、AlBi11Cu0.5Ni0.5、AlBi25Cuの如きアルミニウム系合金、たとえばSnSb15Cu5、SnSb4Cu1などのスズ系合金、CuBi20などの銅系合金、ビスマス系合金、銀系合金、Bi、Ag、Sn、白色合金、ニッケルの合金などが使用され得る。上記のリストは例示的にのみ与えられることを銘記されたい、と言うのも、セグメント9の摺動層4に対し、基本的には先行技術から知られる材料の全てが使用され得るからである。
【0089】
基本的に、たとえばセグメント5もしくは9などの個別的なセグメントは、たとえば、この様にして滑り軸受1に対する更に大きな軸受幅を可能とするために、同一材料で作成された層において作製される。しかし、本発明の好適な変更実施例において、滑り軸受1のひとつの層における各セグメントは異なる材料で作成され、すなわち、少なくとも2つのセグメントが異なる材料から作成される。また、全てのセグメントに対して同一の材料が使用されることも可能であるが、ひとつの層における少なくとも2つのセグメントの材料は、相互に異なる特性、特に、異なる硬度もしくは異なる内部応力パターンを有する。このことは達成され得る、と言うのも、先行技術から知られる如く、各材料は異なる前処理に委ねられることから、各材料の同一の成分に関わらず、各セグメントは異なる特性変化態様を有し得るからである。特に、支持層3に加え、すなわち支持層3の各セグメント5に加え、摺動層4の各セグメント9、および/または、軸受金属層18の各セグメント、または、少なくともひとつの付加的層の各セグメントは、同一の層の付加的セグメントの材料とは異なる特性を有する材料から成る。
【0090】
この点に関しては、本発明の有効範囲内において、支持層3に加えて摺動層4のみを、または、支持層3に加えて軸受金属層18のみを備えるという実施例を実現し得ることを銘記すべきである。
【0091】
既に言及された如く、滑り軸受1の個別的な層の個別的なセグメントは、上述の潤滑油被覆層を除き、プラスチックからではなく、金属もしくは合金から作成される。更に、上記各層は好適には、焼結材料からは作成されない。
【0092】
ひとつの層において合金を使用する場合、この層の各セグメントは異なる合金から作成され得る。
【0093】
既に言及された如く、滑り軸受1の製造のために、ひとつの層における個別的なセグメント、すなわち特に支持層3の各セグメント5、および、必要であれば、付加的層の各セグメント、すなわち例えば摺動層4および/または軸受金属層18のセグメント9は、材料接合様式または形状接合様式で、および/または、圧力嵌め接続を介して、一体的に接合され得る。この場合、基本的に、材料接合接続を生成するために、たとえば電子ビーム溶接、または、半田付けプロセス、特に概略的な先行技術から知られる硬質半田付けプロセスの如き任意の溶接プロセスが可能である。付加的材料と、個別的なセグメントの付加的材料との間の材料の適合性に対して考察が為されるべきである。故に、公知の付加的材料が選択されるべきである。
【0094】
上記方法の好適な変更実施例において、滑り軸受1のひとつの層における各セグメントはレーザ光線溶接により一体的に接合されることから、この場合に好適には溶接接続部を作製するために付加的材料が使用される必要はないが、上記接続部は、接続領域6もしくは10におけるセグメントの材料を溶融することにより形成される。故に、利点は、特に接続領域6、9である接続領域に隣接する領域を過剰に加熱せずに上記接続部が作製されることであり、その場合には更に、ひとつの層において個別的なセグメントは、少なくとも完全に層厚みの全体にわたり一体的に接合され、すなわち、層厚みの全体にわたり延在する溶接継目が形成される。この場合に“少なくとも約”とは、セグメントの内部の芯部領域であって、夫々の層の層厚みの5%までにも達し得るという芯部領域は接合されないことが完全に可能であることを意味する。故に、この“不都合”は斟酌される、と言うのも、各セグメント間の接続領域に隣接する近傍領域の温度負荷のこの様な更なる減少が達成され得るからである。但し、これに対する前提条件は、滑り軸受半体シェルが強度要件に対応することである。
【0095】
好適には、レーザ溶接のためには、更に大きな信頼性を以て十分に深い加熱を達成するために、すなわち、滑り軸受1のひとつの層の芯部に至るまで材料の溶融を達成するために、少なくとも2MW/cm2のレーザ光線のビーム強度が使用される。
【0096】
各セグメント間の上記接続領域の近傍における個別的な当該セグメントに対する温度の影響を低減するために、上記溶接は好適には、後側、すなわち後側13から、および、前側、すなわち作動表面19から実施され、これにより概略的に溶接は一側面から、すなわち例えば、後側13の方向から、または、作動表面19の方向から実施され得る。
【0097】
好適には、個別的なセグメントの溶接は、それらが半体シェル2へと成形される前に、すなわち、たとえば半完成品28などの半完成品の平坦状態において、実施される。また、支持層3に加えての滑り軸受1の少なくともひとつの付加的層の装着もしくは載置は、支持層3の各セグメント5の成形に先立ち実施されることも好適である。換言すると、このことは、好適には平坦な基材、すなわち支持層3の平面的もしくは平坦なセグメント5が被覆されることを意味する。
【0098】
支持層3の各セグメント5上への個別的な層の載置は、滑り軸受1の各セグメントの溶接に先立ち実施されることも好適である。本発明の上記変更実施例はまた、支持層3の各セグメント5上への個別的な層の載置のために、異なる載置プロセスが適用され得、たとえば、滑り軸受1のひとつの層において、PVD層に対するもしくはロール圧接層に対するメッキ層の組み合わせがあり得るという利点も有している。
【0099】
溶接に加え、各セグメントを形状接合により接合することも可能である、と言うのも、たとえば、他のセグメントに向かう端面は、溝、特にたとえば蟻継ぎ断面を備えたアンダカット溝を備え、且つ、付加的セグメントは対応する端面上で、その溝に対応するウェブを有するからである。必要であれば、上記形状接合による接合部は、特に半体シェル2への成形の間において、圧力嵌めもされ得る。
【0100】
本発明は、非常に異なる材料組み合わせを用いて総括的に試験されたことから、以下においては、記述の範囲を超えない様に、行われた実験の幾つかが部分的に記述される。
【実施例1】
【0101】
350mmの幅を有する支持層3と、AlSn40Cu1で作成された軸受金属層とに対し、異なる前処理が行われた2枚の鋼鉄帯状体がロール圧接され、その場合、接合された各鋼鉄帯状体の15.5mmの同一の端部厚みにより、通過毎の大きな減少を有する鋼鉄帯状体の軸受金属層18は、約10%大きいレベルの硬度を有する。接合された2枚の鋼鉄帯状体から、ひとつの半体シェル2に対し、複数のセグメントが1,250mmの長さに切り取られ、且つ、それらの切り取りラインに沿いレーザ溶接により一体的に接合される。この様にして作成された半完成品は3つのセグメントを備え、軸受金属層18を備えた帯状体からの中央のセグメントは更に大きな硬度を有し且つその鋼鉄は更に低い内部応力を備えるが、各外側区画の軸受金属層18は、対応して低い硬度を有していた。上記半完成品から、500mmの有効幅および1,000mmの有効長を備えた2枚の軸受プレートが切り出され、軸受シェルへと成形された。上記滑り軸受半体シェルによる滑り軸受1を試験したところ、円周方向に沿い各軸受金属層18が同一寸法かつ均一特性であるという滑り軸受よりも、相当に良好な性能特性が明らかとされた。
【実施例2】
【0102】
滑り軸受におけるキャビテーション損傷は主として、非常に特定の場所において見出される。斯かるキャビテーション損傷を阻止するために、特に硬質な軸受材料が使用されねばならないが、このことは習用の軸受においては、摩擦学的特性と、塵埃を留置する能力との相当の低下に帰着する。もし、キャビテーションにより影響されやすい円周方向領域においてAlSn10Cu1合金で作成された軸受金属層を有する軸受シェル・セグメントが使用され乍らも、他の区画に対してはAlSn20Cu1の軸受金属層が使用されるなら、キャビテーション損傷区画の領域における更に強固な軸受金属に依り、滑り軸受1の全体的な挙動に対するAlSn20Cu1合金の塵埃不浸透性および摩擦学的に好適な特性を喪失せずに、キャビテーション損傷が回避され得る。
【実施例3】
【0103】
同一サイズの3枚のプレートが相互に溶接され、それらの中央のプレートは、AlSn40Cu合金で作成された軸受金属層を備え、且つ、2枚の外側のプレートはSnSb40Cu3合金で作成された軸受金属層を備え、夫々が鋼鉄製支持シェル上とされた。この種の軸受シェルはコンロッド軸受に対して使用されると共に、習用のコンロッド軸受であって、主要負荷を支持するために、鋼鉄製支持シェルと、AlSn40Cuで作成されて装着された軸受金属層とを備える均一な軸受シェルを有するという習用のコンロッド軸受と比較された。上記の各軸受は、250時間の動作にわたり燃焼エンジンで試験かつ検査された。習用の軸受の動画は、軸受の円周方向領域全体に亙る塵埃粒子による摩滅の明確な痕跡を示し、このことは負荷の主要領域において、長期の使用に亙る負荷担持能力の減少に帰着した。しかし、本発明に係る軸受は、SnSb40Cu3から成る柔軟な軸受領域内への塵埃粒子の相当の留置を示し、その場合にAlSn40Cuで作成された軸受金属層は、負荷の主要領域において実質的に擦過が無かった。
【実施例4】
【0104】
滑り軸受1の後側13におけるフレッティングを回避するために、支持層3は2種類の異なる鋼鉄から作成され、その場合に外側の2つのセグメント5はC10鋼などから作成され、且つ、上記支持層の中央区画におけるセグメント5はC22型鋼などから作成された。異なる応力の故に、すなわち、製造過程における滑り軸受半体シェル1の軸受ホルダ内への加圧の間におけるこれらの2種類の鋼鉄の異なる内部応力経路の故に、十分に高レベルの応力が蓄積され得る。上記滑り軸受1は、一個のみのセグメント、すなわち連続的な支持層3を備える先行技術からの滑り軸受と比較された。この場合、滑り軸受半体シェルが回転し始めるまで、増大する負荷により試験が実施された。本発明に係る滑り軸受は、5,000時間の運転時間後でも、フレッティングの痕跡は非常に少ないことが示された。これに加え、上記軸受は、滑り軸受半体シェルが回転し始める前は、相当に大きな負荷を支持し得ることが示された。
【0105】
この例において、協働する滑り軸受半体シェル同士の分離領域であって、設置状態において最大の応力が生ずるという分離領域においては、更に強固な鋼鉄片が装着された。
【0106】
フレッティングが在る円周方向領域を備える軸受においては、斯かる高強度のセグメントがこの領域においても使用され得る。同じことが、軸受のキャビテーションにより影響される部分、特にオイル孔を備えた領域に当てはまる。
【実施例5】
【0107】
設計されたシステムは適切なサイズでなく、且つ、更に大寸の滑り軸受1に対する特別の工場の建設は、必要とされる部材片の個数が少ないので不経済なので、現在において大量生産されている更に大寸の軸受の化学的なおよび主として物理的な被覆方法は不経済であることから、各半体シェル2は、半体シェル2の縁部領域における鋼鉄/鉛青銅構造のセグメント5と、半体シェル2の冠部領域における鋼鉄/AlZn5構造とから成るという滑り軸受1により製造された。これに加え、摺動層4上のセグメント上へと、グラファイトとMoS2sとを備えるポリアミドイミド基材による摺動塗料層が、固形潤滑剤として適用された。上記半体シェル2は、負荷能力と、フレッティング傾向との両方に関し、非常に良好な結果を示した。
【実施例6】
【0108】
実施例5が反復され、その場合、縁部セグメントに対しては鋼鉄/鉛青銅/ニッケル/摺動塗料構造が選択され、且つ、冠部セグメントに対しては、鋼鉄/AlBi11Cu0.5Ni0.5スパッタリング層が選択された。この様にすると、実施例5の結果が向上され得た。
【0109】
上記代表的実施例によれば、滑り軸受1の可能的な変更実施例が示されるが、この点においては、本発明は詳細に示された本発明の変更実施例に限定されるのではなく、個別的な変更実施例の多様な組み合わせも可能であり、且つ、本発明の技術的処置に関する教示に依る上記可変性は、この技術分野における当業者の技術範囲内に在ることを銘記すべきである。
【0110】
形式性の点として、滑り軸受1の構造の更に良好な理解のために、該滑り軸受およびその構成要素は、部分的には縮尺に合わせては表現されず、且つ/又は、サイズが拡大および/または縮小されたことを銘記されたい。
【符号の説明】
【0111】
1 滑り軸受
2 半体シェル
3 支持層
4 摺動層
5 セグメント
6 接続領域
7 表面
9 セグメント
10 接続領域
11 円周方向
12 層
13 後側
14 フレッティング防止層
15 方向
16 端面
17 端面
18 軸受金属層
19 作動表面
20 慣らし運転層
21 滑り軸受端面
22 滑り軸受端面
23 中央領域
24 全体的層厚み
25 縁部領域
26 縁部領域
27 中央領域
28 半完成品
29 溝
30 端面
31 端面
32 斜端面形成部
33 斜端面形成部
34 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層(3)と、軸受金属層(18)および摺動層(4)の少なくともいずれか一方とを備える半体シェル(2)の形態の滑り軸受(1)において、
前記支持層(3)は一体的に接合された数個のセグメント(5)から形成され、各セグメント間には接続領域(6)が夫々形成されることを特徴とする、滑り軸受(1)。
【請求項2】
前記軸受金属層(18)および前記摺動層(4)の少なくともいずれか一方は、数個のセグメント(9)から成ることを特徴とする、請求項1に記載の滑り軸受(1)。
【請求項3】
前記摺動層(4)と前記軸受金属層(18)もしくは前記支持層(3)との間、または、前記軸受金属層(18)と前記支持層(3)との間、または、前記支持層(3)の後側上には、少なくともひとつの付加的層が配置され、且つ、
前記層の全ては、数個のセグメント(5、9)から成ることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の滑り軸受(1)。
【請求項4】
少なくとも、前記支持層(3)もしくは前記軸受金属層(18)もしくは前記摺動層(4)もしくは前記少なくともひとつの付加的層の少なくともひとつのセグメント(5、9)は、同一層の付加的セグメント(5、9)の材料とは異なる特性を有する材料から作成されることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一つ請求項に記載の滑り軸受(1)。
【請求項5】
前記異なる特性は、前記セグメント(5、9)の硬度および内部応力の少なくともいずれか一方であることを特徴とする、請求項4に記載の滑り軸受(1)。
【請求項6】
少なくとも、前記支持層(3)もしくは前記軸受金属層(18)もしくは前記摺動層(4)もしくは前記少なくともひとつの付加的層の少なくともひとつのセグメント(5、9)は、同一層の付加的セグメント(5、9)の材料とは異なる組成を有する材料から作成されることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか一つの請求項に記載の滑り軸受(1)。
【請求項7】
少なくとも前記支持層(3)の各セグメント(5、9)は前記半体シェル(2)の円周方向(11)において相互に隣接して配置されることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか一つの請求項に記載の滑り軸受(1)。
【請求項8】
前記各セグメント(5、9)は、材料接合および形状接合様式ならびに圧力嵌め接続の少なくともいずれか一つにより一体的に接合されることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか一つの請求項に記載の滑り軸受(1)。
【請求項9】
前記各セグメント(5、9)は、部分的に重なり合うと共に、一切の漸進的変化部なしで相互に結合されるべく配置されることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一つの請求項に記載の滑り軸受(1)。
【請求項10】
単一もしくは複数の前記接続領域(6、10)は、前記半体シェル(2)の円周方向(11)において傾斜されることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一つの請求項に記載の滑り軸受(1)。
【請求項11】
前記半体シェル(2)の前記セグメント(5、9)の内の少なくとも2つのセグメントは、相互に重ねて配置された異なる個数の層を有することを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれか一つの請求項に記載の滑り軸受(1)。
【請求項12】
相互に重ねて配置された異なる個数の層による径方向における前記半体シェル(2)の全体的層厚みは、少なくともほぼ一定であることを特徴とする、請求項11に記載の滑り軸受(1)。
【請求項13】
前記半体シェル(2)の前記セグメント(5、9)の内の少なくとも2つのセグメントは、異なる全体的層厚みを有することを特徴とする、請求項1から請求項11のいずれか一つの請求項に記載の滑り軸受(1)。
【請求項14】
前記支持層(3)の前記セグメント(5)の内の少なくともひとつのセグメントは、前記軸受金属層(18)および前記摺動層(4)の少なくともいずれか一方の数個のセグメント(9)を備えることを特徴とする、請求項1から請求項13のいずれか一つの請求項に記載の滑り軸受(1)。
【請求項15】
2つのセグメント(5、9)の間における前記接続領域(6、10)は、該セグメント(5、9)の材料から形成されることを特徴とする、請求項1から請求項14のいずれか一つの請求項に記載の滑り軸受(1)。
【請求項16】
支持層(3)と、少なくともひとつの付加的層とを備える滑り軸受半体シェルであって、前記支持層(3)は平坦基材を滑り軸受半体シェルへと成形することにより形成され、且つ、前記支持層(3)上には少なくともひとつの付加的層が装着されるという滑り軸受半体シェルを製造する方法において、
前記支持層(3)は数個のセグメント(5)から構成され、且つ、各セグメント(5)は、材料接合および形状接合様式ならびに圧力嵌め接続の少なくともいずれか一つにより一体的に接合されることを特徴とする、方法。
【請求項17】
前記少なくともひとつの付加的層もまた数個のセグメントから構成されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくともひとつの付加的層は、前記支持層(3)の各セグメント(5)の一体的な接合に先立ち装着されることを特徴とする、請求項16または請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記滑り軸受半体シェルへの前記各セグメント(5)の成形は、前記少なくともひとつの付加的層の装着後に実施されることを特徴とする、請求項16から請求項18のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項20】
前記支持層(3)の前記各セグメント(5)の前記接合は、それらを滑り軸受半体シェルへと成形するに先立ち実施されることを特徴とする、請求項16から請求項19のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項21】
前記支持層(3)の前記各セグメント(5)はレーザ溶接により接合されることを特徴とする、請求項16から請求項20のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項22】
前記レーザ光線のビーム強度は少なくとも2MW/cm2であることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記各セグメント(5、9)は、一切の付加的材料なしで一体的に溶接されることを特徴とする、請求項16から請求項22のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項24】
前記各セグメント(5、9)は、前記滑り軸受半体シェルの径方向で見て、後側および前側の両方から溶接されることを特徴とする、請求項16から請求項23のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項25】
前記支持層(3)の少なくとも2つのセグメント(5)に対し、異なる特性を有する金属もしくは合金が使用されることを特徴とする、請求項16から請求項24のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項26】
前記支持層(3)の少なくとも2つのセグメント(5)に対し、異なる金属もしくは合金が使用されることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくともひとつの付加的層の各セグメントの内の少なくとも2つのセグメントは、異なる被覆方法により作製されることを特徴とする、請求項16から請求項26のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項28】
自動車の動力伝達系路において使用される、請求項1から請求項15のいずれか一つの請求項に記載の滑り軸受(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−2359(P2012−2359A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135486(P2011−135486)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(504101245)ミーバ グライトラガー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (16)
【Fターム(参考)】