説明

漏洩検知管

【課題】 蓋の取り外しを容易にするとともに、構造を簡素化し製造コストの低減を図る。
【解決手段】 検知管頭部3の上方開口部4と、蓋5の周面との間に設けた隙間7にゴム状の弾性部材8が介装されている。ドライバー36の先端部をすり鉢状に形成した上方開口部4の内周面6と弾性部材8との間に差し入れ、内周面6の上端6aを回動支点としてドライバー36を回動させる。この回動によって、蓋5が持ち上げられ、蓋5と上方開口部4との間に隙間が形成されるから、手で蓋5の周部を把持し蓋5を取り外す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンスタンドの地下に設置されているタンクの周囲に埋設され、タンクから地中に漏洩した油類を検知する漏洩検知管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の漏洩検知管としては、ガソリンスタンドのタンクの周囲に埋設され鋼鉄等によって有底円筒状に形成された検知管と、この検知管の上方開口部を閉塞する蓋とを備え、検知管の下部周面にタンクから漏洩した油類を収集させるための多数の小孔が設けられたものがある。この漏洩検知管では、定期的に蓋を開けて検知棒を検知管内に挿入し、油の付着を確認することによってタンク内から地中への油類の漏洩を検知するようにしている。この構造の漏洩検知管では、検知管の開口部の周面と蓋の周面との間に形成されているわずかな隙間に砂利や土が入り込みやすく、これら砂利や土が入り込むと蓋が開けにくくなるという問題があった。
【0003】
この問題を解決するものとして、蓋を中蓋と上蓋とで構成し、中蓋の中央部に凸部を設け、上蓋の中央部にねじ孔を螺設し、このねじ孔に螺合させたねじを回転させて前進させることにより、ねじの先端で凸部を押圧して上蓋を中蓋から浮き上がらせるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−296200号公報(段落「0016」ないし「0018」、図1および図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の漏洩検知管においては、蓋を中蓋と上蓋との2部材によって構成しなければならないことやねじ孔や凸部を設けなければならないために、構造が複雑になり、かつ製造コストも嵩むという問題があった。
【0005】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、蓋の取り外しを容易にするとともに、構造を簡素化し製造コストの低減を図った漏洩検知管を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、少なくとも上端に開口部が設けられた検知管と、この検知管の開口部を閉塞する蓋とを備えた漏洩検知管において、前記蓋の周面と前記開口との間に隙間を設け、この隙間に環状であってゴム状の弾性部材を介装したものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記開口部をすり鉢状に形成したものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に係る発明において、前記蓋の周面の一部に鍔を設けたものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のうちいずれか一項に係る発明において、前記弾性部材の前記開口部と対接する面の一部に環状の溝を設けたものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、検知管の開口部と弾性部材との間に工具の先端部を差し入れる際に、弾性部材の弾性変形を利用して容易に差し入れることができるため蓋の取り外し作業が容易になる。また、検知管の開口部と蓋との間の隙間に弾性部材を介装するだけの構造であるため構造が簡素化され、製造コストの低減を図ることができる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、検知管の開口部と弾性部材との間に差し入れた工具が傾斜するから、工具を回動させることにより検知管の開口部の上端縁を支点として、てこの作用により蓋を持ち上けることができるため小さな力で蓋を持ち上げることができる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、検知管の開口部と弾性部材との間に差し入れた工具を回動させるとき、弾性部材を介して工具の先端部が鍔に係合するから蓋を確実に持ち上げることができる。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、検知管の開口部と弾性部材との間に工具を差し入れるとき、溝によって弾性部材が弾性変形しやすくなるため作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は本発明に係る漏洩検知管を示し、同図(A)は平面図、同図(B)は同図(A)におけるI(B)-I(B) 線断面図、図2は図1(B)の要部を拡大して示す断面図、図3ないし図5は図1(A)におけるIII-III 線における要部を拡大して示す断面図、図4は蓋を取り外すためにドライバーを差し入れた状態を示し、図5は差し入れたドライバーによって蓋を取り外している状態を示す。
【0015】
図1(B)に全体を符号1で示す漏洩検知管は、鋼鉄、ステンレス鋼または塩化ビニール等によって有底円筒状に形成され地中に直接埋設された検知管2と、この検知管2の上端部に取り付けられた検知管頭部3と、この検知管頭部3の上方開口部4を閉塞する蓋5と、この蓋5の上端部の周面と検知管頭部3の上方開口部4の周面6との間に設けられた隙間7に介装されたゴム状の弾性部材8と、蓋5に接続部材9を介して取り付けられたプラスチックによって有底円筒状に形成された保護管10とによって概ね構成されている。
【0016】
検知管頭部3は鋼鉄、ステンレス鋼または塩化ビニール等によって略円筒状に形成されており、図3に示すように内周面の中央部には円環状の内フランジ11が一体に突設されている。また、この検知管頭部3の上方開口部4はすり鉢状に形成されており、周面6の断面がテーパー状に形成されている。上記した検知管2は、この検知管頭部3の上端が地表12と略同一面となるように地中に埋設されている。
【0017】
蓋5はプラスチックによって略キャップ状に形成されており、筒部13の周面の中央部にはOリング14が装填される環状の溝15が設けられている。16は蓋5の筒部13の周面の上部に設けられた環状の係合部であって、蓋5によって検知管頭部3の上方開口部4を閉塞することにより、上方開口部4の周面6に係合する。17は蓋5の天井部18の周面の上端部に設けられた鍔である。19は蓋5の天井部18の中央部に一体に下方に向かって突設した凸部であって、中央部にねじ孔19aが螺設されている。
【0018】
隙間7は断面が略台形を呈し、蓋5の周囲に環状に設けられている。この隙間7に介装される弾性部材8はこの隙間7と略同じ形状に形成されており、外周部の下部には環状の溝20が設けられている。
【0019】
接続部材9はプラスチックによって略円柱状に形成されており、中央部に凹部21が設けられ、この凹部21の天井部にはねじ挿通孔22が設けられている。また、接続部材9の上面には、径が異なる環状の筒体23,24が同心円上に一体に突設されている。25は接続部材9の周面に埋設されたねじ部材であって、円周方向に等角度おいて4個設けられている。上記した蓋5は、接続部材9のねじ挿通孔22に挿通され、蓋5のねじ孔19aに螺合されたねじ26によって接続部材9に取り付けられている。
【0020】
27は環状に形成されたアンテナ基板であって、蓋5の天井部18と接続部材9の筒体23,24とに挟持されており、漏洩した油を検知したセンサ(図示せず)による漏洩情報を無線によって受信装置(図示せず)に送信する。保護管10は、上端部がパッキン28で被冠した状態で接続部材9のねじ部材25に螺合させたねじ29によって接続部材9の周面に取り付けられており、検知管2内に延在するように検知管2内に収納される。
【0021】
30はブラケット31を介して接続部材9に取り付けられた制御基板であって、保護管10内に収納されており、電子部品32と電池33とが実装されている。図1(B)において、34は上端が制御基板30に実装されたコネクタ35に接続されたコードであって、下端側が保護管10の底部の孔(図示せず)から引き出されている。このコード34の下端部には油の漏洩を検知するセンサが接続されている。
【0022】
次に、このように構成された漏洩検知管の蓋を取り外す作業について説明する。先ず、漏洩検知管1によって油の漏洩を検知するための動作について説明する。予め、検知管2をタンク(図示せず)の周囲の4箇所に、検知管頭部3の上端が地表12と略同一面となるように地中に埋設しておく。また、図3に示すように、蓋5にブラケット31を介して制御基板30を取り付けるとともに、接続部材9を介して保護管10を取り付ける。また、蓋5の溝15にOリング14を嵌合させるとともに、弾性部材8を蓋5の天井部18の周面に取り付ける。
【0023】
この状態で、検知管頭部3の上方開口部4から保護管10を挿入し、蓋5の係合部16が検知管頭部3の上方開口部4の周面6に係合するとともに、蓋5の筒部13の下端が検知管頭部3の内フランジ11に係合することにより、蓋5によって上方開口部4が閉塞される。このとき、弾性部材8が蓋5の天井部18の周面と、検知管頭部3の上方開口部4の周面6の間に設けた隙間7に介装され、隙間7が弾性部材8によって密閉されるから、この隙間7に砂利や土が入り込むようなことがない。
【0024】
したがって、ガソリンタンクから油が漏洩した場合は、この漏洩した油が漏洩検知管1のセンサによって検知され、検知された漏洩情報がアンテナ基板27を介して無線によって受信装置(図示せず)に送信される。
【0025】
次に、図4および図5を用いて、センサや電池33を交換したり、漏洩検知管1を保守点検するために、検知管頭部3の上方開口部4から蓋5を取り外す場合について説明する。この場合は、図4に示すように、工具としてのドライバー36の先端部を弾性部材8と検知管頭部3の上方開口部4の周面6との間に差し入れ、周面6に沿ってドライバー36を下方に移動させる。このとき、弾性部材8の周面の下部に溝20が設けられているため、溝20によって弾性部材8が弾性変形しやすくなるため作業性が向上する。
【0026】
ドライバー36の先端が蓋5の係合部16の上端面に当接したら、図5に示すようにドライバー36を周面6の上端6aを回動支点として図中時計方向に回動させる。この回動により、ドライバー36から弾性体8を介して蓋5に上方へ向かう力が加わるから、蓋5が上方に持ち上げられ、蓋5と検知管頭部3の上端面との間に隙間が形成される。したがって、蓋5の周部を手で把持し、持ち上げることにより、検知管頭部3の上方開口部4から蓋5および保護管10ならびにセンサ等が取り外される。
【0027】
このように、検知管頭部3の上方開口部4がすり鉢状に形成されているため、ドライバー36を周面6の上端6aを回動支点として回動させることができるから、てこの作用により蓋5を持ち上けることができるため小さな力で蓋5を持ち上げることができる。また、蓋5に鍔17を設けたことにより、検知管頭部3の上方開口部4と弾性部材8との間に差し入れたドライバー36を回動させるとき、弾性部材8を介してドライバー36の先端部が鍔17に係合するから蓋5を確実に持ち上げることができる。また、本発明によれば、検知管頭部3の上方開口部4と蓋5との間の隙間7に弾性部材8を介装するだけの構造であるため構造が簡素化され、製造コストの低減を図ることができる。また、検知管頭部3の上方開口部4と弾性部材8との間にドライバー36の先端部を差し入れる際に、弾性部材8の弾性変形を利用して容易に差し入れることができるため蓋5の取り外し作業が容易になる。
【0028】
なお、本実施の形態においては、油の漏洩をセンサによって検知しアンテナ基板27を介して無線によって漏洩情報を受信装置に送信するようにしたが、検知管2の下部に多数の小孔を設け、この小孔から検知管2内に油を収集し検知棒によって油の漏洩を検知するようにしてもよい。その場合は、接続部材7、保護管8、制御基板30、センサ等が不要になり、蓋4も必ずしもプラスチックによって形成する必要はなく金属によって形成してもよい。また、検知管頭部3の上方開口部4をすり鉢状に形成したが、蓋5の天井部の周面をすり鉢状に形成すれば、上方開口部4を必ずしもすり鉢状に形成することはない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る漏洩検知管を示し、同図(A)は平面図、同図(B)は同図(A)におけるI(B)-I(B) 線断面図である。
【図2】図1(B)の要部を拡大して示す断面図である。
【図3】図1(A)におけるIII-III 線における要部を拡大して示す断面図である。
【図4】図1(A)におけるIII-III 線における要部を拡大して示す断面図であって、蓋を取り外すためにドライバーを差し入れた状態を示す。
【図5】図1(A)におけるIII-III 線における要部を拡大して示す断面図であって、差し入れたドライバーによって蓋を取り外している状態を示す。
【符号の説明】
【0030】
1…漏洩検知管、2…検知管、3…検知管頭部、4…上方開口部、5…蓋、7…隙間、8…弾性部材、10…保護管、12…地表、17…鍔、20…溝、27…アンテナ基板、30…制御基板、36…ドライバー(工具)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも上端に開口部が設けられた検知管と、この検知管の開口部を閉塞する蓋とを備えた漏洩検知管において、前記蓋の周面と前記開口との間に隙間を設け、この隙間に環状であってゴム状の弾性部材を介装したことを特徴とする漏洩検知管。
【請求項2】
請求項1記載の漏洩検知管において、前記開口部をすり鉢状に形成したことを特徴とする漏洩検知管。
【請求項3】
請求項1または2記載の漏洩検知管において、前記蓋の周面の一部に鍔を設けたことを特徴とする漏洩検知管。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちいずれか一項記載の漏洩検知管において、前記弾性部材の前記開口部と対接する面の一部に環状の溝を設けたことを特徴とする漏洩検知管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−80077(P2009−80077A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251122(P2007−251122)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】