説明

漏電遮断器

【課題】簡易な構成で、主接点の強制開極となる原因事由を表示し、その原因事由に応じて主接点を強制開極する。
【解決手段】交流電源を含む主回路を開極する漏電遮断器であって、主回路の漏電を検出する漏電検出回路と、中性線欠相を検出する欠相検出回路と、漏電又は欠相の検出に応じて主回路を開極する開極制御機構と、漏電又は欠相の検出に応じて主回路の強制開極の原因を表示する表示制御機構と、単一のコイルを含み漏電又は欠相の各検出回路からの出力に応じて、表示,開極制御機構の各動作を制御する表示開極制御部と、所定方向の通電電流をコイルに流す第1スイッチング素子と、反対方向の通電電流をコイルに流す第2スイッチング素子と、を備える。表示開極制御部は、第1又は第2スイッチング素子からの通電電流の方向及び通電時間に応じて、表示,開極制御機構の各動作を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏電又は過電流を検出して主回路を遮断する漏電遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主回路に漏電若しくは過電流が発生した場合、又は中性線欠相(N相欠相)が発生した場合においては、漏電遮断器は、漏電検出及び欠相検出のうちいずれの場合においても、共通の電磁釈放機構を用いて主回路の開閉を制御していた。この制御により、従来の漏電遮断器は、主回路を強制的に開極していた。更に、従来の漏電遮断器は、主回路の強制開極時に、漏電及び欠相を共通に表示可能な表示部材を用いて、漏電状態又は欠相状態を表示していた。
【0003】
この様な従来の漏電遮断器においては、漏電及び欠相に対して同一の電磁釈放機構及び表示部材が用いられていたため、主回路が強制開極した場合に漏電が発生しているのか、又は、欠相が発生しているのかの判別が困難であるという課題があった。
【0004】
この課題を解決するものとして、例えば特許文献1が知られている。特許文献1の欠相保護付漏電遮断器は、漏電検出用の電磁釈放装置を駆動する漏電保護回路、及び、欠相検出用の電磁釈放装置を駆動する欠相保護回路を含む構成である。
【0005】
この漏電保護回路においては、零相変流器の2次巻線の出力が電圧に変換されて漏電保護用ICの検出端子に入力される。漏電電流が流れると、検出端子の入力電圧が所定レベルを超え、漏電保護用ICにおいて漏電検出が行われる。これにより、漏電検出信号が出力端子から出力されてサイリスタがオンとなり、電磁釈放装置のコイルに励磁電流が流れて主接点が強制的に開極され、負荷の保護が図られる。
【0006】
また、特許文献1における欠相保護回路においては、2つの入力端子からの入力電圧がダイオードブリッジにより全波整流されて欠相保護用ICに入力される。中性線と接続する入力端子からの検出線が2つの各入力端子間に接続された分圧抵抗の分圧点に接続され、この分圧点が更に抵抗を通じて欠相保護用の検出端子に接続される。検出端子の電圧は、電源及び負荷が正常に接続されている場合には振幅の揃った脈流電圧が現れる。中性線が断線して欠相が生じると、2つの電圧線の各相の負荷による分圧比によって交互に大小となる脈流電圧となり、検出端子の電位が所定レベルを越え、欠相保護用ICにおいて欠相検出が行われる。これにより、欠相検出信号が出力端子より出力されてサイリスタがオンとなり、電磁釈放装置のコイルに励磁電流が流れて主接点が開極され、負荷の保護が図られる。
【0007】
従って、特許文献1の欠相保護付漏電遮断器によれば、漏電検出による主接点の強制開極と、欠相検出による主接点の強制開極とを容易に判別できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3687543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述した特許文献1の欠相保護付漏電遮断器では、漏電検出用及び欠相検出用の各電磁釈放装置に、各電磁釈放装置内に設けられた各プランジャの移動を制御する電磁石(コイル)が設けられていた。
【0010】
このため、従来の欠相保護付漏電遮断器の内部構成が複雑となり、例えば漏電検出用及び欠相検出用の各電磁釈放装置毎にプランジャ及び電磁石(コイル)を設ける必要があり、部品点数の増加を避けられなかった。
【0011】
そこで、本発明は、前述した従来の事情に鑑みてなされたもので、簡易な構成で、主接点の強制開極となる原因事由を表示すると共に、その原因事由に応じて主接点を強制開極する漏電遮断器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前述した漏電遮断器であって、交流電源を含む主回路を開極する漏電遮断器であって、前記主回路に流れる漏電電流を検出する漏電検出回路と、中性線の欠相を検出する欠相検出回路と、前記漏電電流又は前記中性線の欠相の検出に応じて、前記主回路を強制的に開極する開極制御機構と、前記漏電電流又は前記中性線の欠相の検出に応じて、前記主回路の強制開極の原因を表示する表示制御機構と、単一のコイルを含み、前記漏電検出回路又は前記欠相検出回路からの出力に応じて、前記表示制御機構及び前記開極制御機構の動作を制御する表示開極制御部と、前記漏電検出回路又は前記欠相検出回路からの出力に応じて、所定方向の通電電流を前記コイルに流す第1スイッチング素子と、前記漏電検出回路又は前記欠相検出回路からの出力に応じて、前記所定方向とは反対方向の通電電流を前記コイルに流す第2スイッチング素子と、を備え、前記表示開極制御部は、前記第1スイッチング素子又は前記第2スイッチング素子からの前記通電電流の方向及び通電時間に応じて、前記表示制御機構及び前記開極制御機構の動作を制御する。
【0013】
また、本発明は、前述した漏電遮断器であって、前記表示開極制御部は、前記出力電流の前記コイルに対する通電時間に応じて、前記主回路の強制開極の原因として、漏電又は前記欠相を表示する様に前記表示制御機構を制御する。
【0014】
また、本発明は、前述した漏電遮断器であって、前記表示開極制御部は、前記漏電又は前記欠相のうち、前記コイルに対する通電時間が短い前記出力電流に応じて、前記主回路の強制開極の原因として前記漏電を表示する様に前記表示制御機構を制御する。
【0015】
また、本発明は、前述した漏電遮断器であって、前記出力電流の前記コイルに対する通電時間の計測終了時点は、前記交流電源における交流電圧のゼロクロス時点である。
【0016】
また、本発明は、前述した漏電遮断器であって、前記出力電流の前記コイルに対する通電時間の計測開始時点は、前記交流電源における交流電圧のゼロクロス時点である。
【0017】
また、本発明は、前述した漏電遮断器であって、前記表示開極制御部は、第1スイッチング素子からの前記通電電流の半周期の回数に応じて、前記強制開極の原因を切り替える様に前記表示制御機構を制御する。
【0018】
また、本発明は、前述した漏電遮断器であって、前記表示開極制御部は、前記漏電遮断器の外部からの入力電流の方向及び前記通電時間に応じて、前記開極制御機構の動作を制御する。
【0019】
更に、本発明は、前述した漏電遮断器であって、交流電源を含む主回路を開極する漏電遮断器であって、前記主回路に流れる漏電電流を検出する漏電検出回路と、中性線の欠相を検出する欠相検出回路と、前記漏電電流及び前記中性線の欠相を除く異常事態を検出する異常検出回路と、前記漏電電流、前記中性線の欠相及び前記異常事態のうちいずれかの検出に応じて、前記主回路を強制的に開極する開極制御機構と、前記漏電電流、前記中性線の欠相及び前記異常事態のうちいずれかの検出に応じて、前記主回路の強制開極の原因を表示する表示制御機構と、単一のコイルを含み、前記漏電検出回路、前記欠相検出回路及び前記異常検出回路のうちいずれかの出力に応じて、前記表示制御機構及び前記開極制御機構の動作を制御する表示開極制御部と、前記漏電検出回路、前記欠相検出回路及び前記異常検出回路のうちいずれかの出力に応じて、所定方向の通電電流を前記コイルに流す第1スイッチング素子と、前記漏電検出回路、前記欠相検出回路及び前記異常検出回路のうちいずれかの出力に応じて、前記所定方向とは反対方向の通電電流を前記コイルに流す第2スイッチング素子と、を備え、前記表示開極制御部は、前記第1スイッチング素子又は前記第2スイッチング素子からの前記通電電流の方向及び通電時間に応じて、前記表示制御機構及び前記開極制御機構の動作を制御する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡易な構成で、主接点の強制開極となる原因事由を表示すると共に、その原因事由に応じて主接点を強制開極することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施形態の漏電遮断器の全体構成を表すブロック図
【図2】第1の実施形態において強制開極の原因を表示する際の表示開極制御部の動作概要を概念的に説明するための説明図
【図3】第1の実施形態において強制開極する際の表示開極制御部の動作概要を概念的に説明するための説明図
【図4】第1の実施形態の漏電遮断器の動作を説明するタイミングチャート、(A)漏電の検出時のタイミングチャート、(B)中性線の欠相検出時のタイミングチャート
【図5】第2の実施形態の漏電遮断器の全体構成を表すブロック図
【図6】第2の実施形態において強制開極の原因を表示する際の表示開極制御部の動作概要を概念的に説明するための説明図
【図7】第2の実施形態において強制開極する際の表示開極制御部の動作概要を概念的に説明するための説明図
【図8】第1の実施形態の漏電遮断器の動作を説明するタイミングチャート、(A)漏電の検出時のタイミングチャート、(B)中性線の欠相検出時のタイミングチャート、(C)異常事態の検出時のタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る漏電遮断器の各実施形態について、図面を参照して説明する。本発明に係る漏電遮断器は、例えば住宅用分電盤の主幹ブレーカの一部として用いられる。
【0023】
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、漏電遮断器は、交流電源及び負荷を含む主回路に接続され、漏電又は漏電以外の事由(例えば、中性線欠相等の欠相)を検出したとき、負荷の保護を図るために主回路を強制的に開極(遮断)する。これにより、漏電遮断器は、漏電又は漏電以外の事由から負荷の保護を図ることができる。
【0024】
更に、第1の実施形態では、漏電遮断器は、主回路を強制的に開極する前に、主回路の強制開極の原因事由として、表示制御機構を用いて漏電又は欠相を表示する。これにより、修繕対応者は、主回路に漏電又は欠相のいずれかが発生した場合に、強制開極の原因事由を簡易に確認でき、漏電又は欠相に応じた修繕対応を素早く行うことができる。
【0025】
図1は、第1の実施形態の漏電遮断器1の全体構成を表すブロック図である。漏電遮断器1は、タイマTM、漏電検出回路11、欠相検出回路12、ダイオードD1〜D4、スイッチング素子としての表示用サイリスタSCR1、スイッチング素子としての開極用サイリスタSCR2、表示開極制御部CU1、表示制御機構15及び開極制御機構16を含む構成である。
【0026】
スイッチS1は、負荷5が使用される場合に、負荷5のユーザ又は不図示のスイッチ制御部等によりオン(導通)され、交流電源ACからの電力がスイッチS1、端子T1、端子T3、端子T4及び端子T2を介して負荷5に供給される。なお、スイッチS1の動作は、後述の各実施形態においても同様である。
【0027】
交流電源ACの一端はスイッチS1の一端に接続され、交流電源ACの他端は負荷5の他端に接続されている。負荷5の一端は端子T2に接続され、更に、端子T2には、表示用サイリスタSCR1のカソード端子、及び端子T4を介して開極用サイリスタSCR2のアノード端子がそれぞれ接続されている。
【0028】
スイッチS1の他端は表示開極制御部CU1(図2、図3参照)の他端に接続され、表示開極制御部CU1の一端は端子T1に接続されている。更に、端子T1には、表示用サイリスタSCR1のアノード端子、及び端子T3を介して開極用サイリスタSCR2のカソード端子が接続されている。
【0029】
漏電検出回路11は、ダイオードD1を介して表示用サイリスタSCR1のゲート端子、及びダイオードD2を介して開極用サイリスタSCR2のゲート端子にそれぞれ接続されている。漏電検出回路11は、主回路MCにおいて漏電電流が流れているか否か、即ち、主回路MCに漏電が発生したか否かを検出する。漏電検出回路11は、主回路MCにおいて漏電を検出した場合に、表示制御機構15が漏電発生を表示するために、ダイオードD1を介して表示制御信号(具体的には電流)を表示用サイリスタSCR1のゲート端子に出力する。
【0030】
なお、漏電検出回路11の漏電検出方法は公知の漏電検出方法を適用可能であり、例えば、漏電検出回路11は、零相変流器を含み、零相変流器の2次巻線の出力が所定レベルを超えると主回路MCに漏電電流が流れていることを検出する。
【0031】
なお、ダイオードD1,D2は、漏電検出回路11からの出力、即ち表示制御信号,開極制御信号が確実に表示用サイリスタSCR1,開極用サイリスタSCR2の各ゲート端子に入力される方向に接続されている。即ち、ダイオードD1のアノード端子は漏電検出回路11に接続され、ダイオードD1のカソード端子は表示用サイリスタSCR1のゲート端子に接続されている。同様に、ダイオードD2のアノード端子は漏電検出回路11に接続され、ダイオードD2のカソード端子は開極用サイリスタSCR2のゲート端子に接続されている。
【0032】
更に、漏電検出回路11は、主回路MCにおいて漏電を検出した場合に、開極制御機構16が主回路MCを開極するために、ダイオードD2を介して開極制御信号(具体的には電流)を開極用サイリスタSCR2のゲート端子に出力する。
【0033】
欠相検出回路12は、ダイオードD4を介して表示用サイリスタSCR1のゲート端子、及びダイオードD3を介して開極用サイリスタSCR2のゲート端子にそれぞれ接続されている。欠相検出回路12は、主回路MCにおいて中性線欠相が発生したか否かを検出する。欠相検出回路12は、主回路MCにおいて中性線欠相を検出した場合に、表示制御機構15が中性線欠相の発生を表示するために、ダイオードD4を介して表示制御信号(具体的には電流)を表示用サイリスタSCR1のゲート端子に出力する。
【0034】
なお、欠相検出回路12の中性線欠相の検出方法は既に知られている。例えば、欠相検出回路12は、単相3線交流電路における第1相電圧と中性線電圧との電圧差及び第2相電圧と中性線電圧との電圧差を測定する機構を含む。更に、欠相検出回路12は、中性線が何らかの事由に基づいて断線した場合に、各電圧差の値が異なって三相交流電圧のバランスが崩れることにより、主回路MCにおいて中性線欠相の発生を検出する。
【0035】
なお、ダイオードD3,D4は、欠相検出回路12からの出力、即ち開極制御信号,表示制御信号が確実に開極用サイリスタSCR2,表示用サイリスタSCR1の各ゲート端子に入力される方向に接続されている。即ち、ダイオードD3のアノード端子は欠相検出回路12に接続され、ダイオードD3のカソード端子は開極用サイリスタSCR2のゲート端子に接続されている。同様に、ダイオードD4のアノード端子は欠相検出回路12に接続され、ダイオードD4のカソード端子は表示用サイリスタSCR1のゲート端子に接続されている。
【0036】
更に、欠相検出回路12は、主回路MCにおいて中性線欠相の発生を検出した場合に、開極制御機構16が主回路MCを開極するために、ダイオードD3を介して開極制御信号(具体的には電流)を開極用サイリスタSCR2のゲート端子に出力する。
【0037】
表示用サイリスタSCR1は、漏電検出回路11又は欠相検出回路12からの表示制御信号の入力に応じて、表示用サイリスタSCR1のアノード端子からカソード端子の方向に、表示開極制御部CU1への通電電流を出力する(流す)。
【0038】
開極用サイリスタSCR2は、漏電検出回路11又は欠相検出回路12からの表示制御信号の入力に応じて、開極用サイリスタSCR2のアノード端子からカソード端子の方向に、表示開極制御部CU1への通電電流を出力する(流す)。
【0039】
タイマTMは、表示開極制御部CU1(のコイルL1。図2又は図3参照)に流れる通電電流、即ち、表示用サイリスタSCR1又は開極用サイリスタSCR2からの励磁電流の通電時間を計測する。漏電検出回路11及び欠相検出回路12は、この計測された通電時間をそれぞれ入力している。
【0040】
なお、漏電検出回路11は、タイマTMからの出力、即ち表示開極制御部CU1に流れる励磁電流の通電時間に応じて、前述した表示制御信号又は開極制御信号の表示用サイリスタSCR1又は開極用サイリスタSCR2へのそれぞれの出力を停止する。
【0041】
同様に、欠相検出回路12は、タイマTMからの出力、即ち表示開極制御部CU1に流れる励磁電流の通電時間に応じて、前述した表示制御信号又は開極制御信号の表示用サイリスタSCR1又は開極用サイリスタSCR2へのそれぞれの出力を停止する。
【0042】
次に、表示開極制御部CU1、表示制御機構15及び開極制御機構16の動作について、図2及び図3を参照して説明する。
【0043】
図2は、第1の実施形態において強制開極の原因を表示する際の表示開極制御部CU1の動作概要を概念的に説明するための説明図である。図3は、第1の実施形態において強制開極する際の表示開極制御部CU1の動作概要を概念的に説明するための説明図である。
【0044】
表示開極制御部CU1は、図2に表す様に、コイルL1、プランジャPJ、2つの永久磁石PM1,PM2、2つのバネB1,B2、2つの突起物K1,K2を含む構成である。漏電又は欠相が発生していない定常状態においては、プランジャPJは、各永久磁石PM1,PM2に付勢されている各バネB1,B2を介して、各永久磁石PM1,PM2から等距離の間隔を保持する様に安定的に位置している。
【0045】
即ち、定常状態においては、プランジャPJには、コイルL1に励磁電流が流れていなく電磁力の影響を受けないため、各バネB1,B2から受ける各復元力がつりあっている状態である。
【0046】
コイルL1は、その両端が主回路MCに接続されている。
【0047】
プランジャPJは、鉄心等で構成され、図2の紙面左右方向に各バネB1,B2を介して永久磁石PM1,PM2に付勢されている。更に、プランジャPJは、コイルL1を貫通する様に設けられている。
【0048】
図2に表す様に、漏電遮断器1が主回路MCの強制開極の原因を表示する場合、コイルL1には、表示用サイリスタSCR1からコイルL1への励磁電流が図2の紙面右方向に流れる。この表示用サイリスタSCR1からの励磁電流に応じて、コイルL1内のプランジャPJは、バネB1からの復元力を超える電磁力を受けることにより、図2の紙面左方向に動作する。
【0049】
特に、タイマTMの計測によって少なくとも半周期以上に相当する励磁電流が流れると、プランジャPJの図2の紙面左方向への動作に応じて、プランジャPJに設けられている突起物K1が表示制御機構15のカウントアップボタンCBを押下する。
【0050】
例えば、少なくとも半周期に相当する図2の紙面左方向への励磁電流が1回コイルL1に流れるとする。この場合、プランジャPJは、その励磁電流を基に発生した電磁力によって、プランジャPJに設けられている突起物K1を介して、カウントアップボタンCBを1回押下する。
【0051】
これにより、表示制御機構15は、カウントアップボタンCBの出力(1回の押下)に応じて、主回路MCの強制開極の原因事由を表示するための状態表示部CWに、漏電状態表示窓ELのみを表示可能に制御する。
【0052】
また、例えば、後述する様に、少なくとも半周期に相当する図2の紙面左方向への励磁電流が2回コイルL1に流れるとする。この場合、プランジャPJは、その励磁電流を基に発生した電磁力によって、プランジャPJに設けられている突起物K1を介して、カウントアップボタンCBを2回押下する。
【0053】
これにより、表示制御機構15は、カウントアップボタンCBの出力(2回の押下)に応じて、主回路MCの強制開極の原因事由を表示するための状態表示部CWに、欠相状態表示窓NLのみを表示可能に制御する。
【0054】
なお、以下の各実施形態において、リセットボタンRBは、漏電遮断器1又は後述の漏電遮断器2に設けられる不図示のハンドルのユーザによる操作に応じて押下され、この押下に応じて、カウントアップボタンCBの出力をリセットする。
【0055】
図3に表す様に、漏電遮断器1が主回路MCを強制開極する場合、コイルL1には、開極用サイリスタSCR2からコイルL1への励磁電流が図3の紙面左方向に流れる。この開極用サイリスタSCR2からの励磁電流に応じて、コイルL1内のプランジャPJは、バネB2からの復元力を超える電磁力を受けることにより、図3の紙面右方向に動作する。
【0056】
特に、タイマTMの計測によって少なくとも半周期以上に相当する励磁電流が流れると、プランジャPJの図3の紙面右方向への動作に応じて、プランジャPJに設けられている突起物K2が開極制御機構16を押下する。これにより、開極制御機構16は、プランジャPJに設けられている突起物K2の押下に応じて、主回路MCを強制開極する。
【0057】
なお、以下の各実施形態において、漏電遮断器1が主回路MCを強制開極すると、交流電源ACからの電力が漏電遮断器1にも供給されなくなるため、漏電遮断器1は、強制開極の原因事由を表示制御した後に、主回路MCを強制開極することが好ましい。
【0058】
なお、以下の各実施形態において、前述した表示制御機構15の動作は、公知の技術を適用可能である。例えば、前述した特許文献1の欠相保護付漏電遮断器における漏電表示部材及び欠相表示部材の表示制御方法を適用可能である。
【0059】
なお、以下の各実施形態において、前述した開極制御機構16の動作は、公知の技術を適用可能である。例えば、前述した特許文献1の欠相保護付漏電遮断器における主接点の強制開極方法を適用可能である。
【0060】
次に、漏電遮断器1が主接点MCの強制開極する原因事由(漏電、中性線欠相)を表示した上で主回路MCを強制開極する動作について、図4を参照して説明する。図4は、第1の実施形態の漏電遮断器1の動作を説明するタイミングチャートである。同図(A)は、漏電の検出時のタイミングチャートである。同図(B)は、中性線の欠相検出時のタイミングチャートである。
【0061】
図4(A)及び図4(B)において、第1段は、表示用サイリスタSCR1に入力されるゲート信号の時間変化を表す。第2段は、開極用サイリスタSCR2に入力されるゲート信号の時間変化を表す。第3段は、コイルL1への励磁電流の時間変化を表す。第4段は、プランジャPJの位置を表し、横軸はプランジャPJの定常状態における中心位置を表す。第5段は、状態表示部CWの表示状態の時間変化を表す。第6段は、主接点MCの状態の時間変化を表す。
【0062】
図4(A)において、漏電検出回路11は、主回路MCにおいて漏電を検出したとき、時刻t1〜時刻t3において、表示制御信号を表示用サイリスタSCR1に出力する。表示用サイリスタSCR1は、時刻t1の後、漏電検出回路11により出力された表示制御信号に応じて、コイルL1への励磁電流を少なくとも半周期相当の時間の間、コイルL1に流す(図2参照)。
【0063】
表示開極制御部CU1において、プランジャPJは、コイルL1への励磁電流の通電に起因して生じた電磁力がバネB1の復元力より大きくなり、定常状態におけるプランジャPJの中心位置から図2の紙面左方向に移動する。プランジャPJの移動距離は、時刻t2において図2の紙面左方向における最大値となる。
【0064】
プランジャPJが図2の紙面左方向における最大値の位置に移動したとき、プランジャPJに設けられた突起物K1は、表示制御機構15のカウントアップボタンCBを1回押下する。これにより、表示制御機構15は、状態表示部CWにおいて主接点MCを強制開極するための原因事由として、漏電状態表示窓ELのみを表示可能に制御する。
【0065】
漏電検出回路11は、タイマTMの出力に応じて、少なくとも半周期の励磁電流の通電時間が経過した後、時刻t3において、表示用サイリスタSCR1への表示制御信号の出力を停止する。これにより、時刻t3の後、表示用サイリスタSCR1のアノード間−カソード間を流れる励磁電流は減少し、時刻t5においてゼロになる。なお、コイルL1への励磁電流の減少に伴い、バネB1の復元力が電磁力を超えるため、プランジャPJの位置は中心位置に移動する。
【0066】
時刻t3の後、漏電検出回路11は、時刻t4において、開極制御信号を開極用サイリスタSCR2に出力する。開極用サイリスタSCR2は、時刻t4の後、漏電検出回路11により出力された開極制御信号に応じて、コイルL1への励磁電流を少なくとも半周期相当の時間の間、コイルL1に流す(図3参照)。
【0067】
表示開極制御部CU1において、プランジャPJは、コイルL1への励磁電流の通電に起因して生じた電磁力がバネB2の復元力より大きくなり、定常状態におけるプランジャPJの中心位置から図3の紙面右方向に移動する。プランジャPJの移動距離は、時刻t6において図3の紙面右方向における最大値となる。
【0068】
プランジャPJが図3の紙面右方向における最大値の位置に移動したとき、プランジャPJに設けられた突起物K2は、開極制御機構16を押下する。これにより、開極制御機構16は、主接点MCを強制開極する。即ち、図4の第6段に表す様に、主接点MCは導通(オン)の状態から非導通(オフ)の状態となる。
【0069】
漏電検出回路11は、タイマTMの出力に応じて、少なくとも半周期の励磁電流の通電時間が経過した後、時刻t7において、開極用サイリスタSCR2への表示制御信号の出力を停止する。これにより、時刻t7の後、開極用サイリスタSCR2のアノード間−カソード間を流れる励磁電流は減少し、時刻t8においてゼロになる。
【0070】
図4(B)において、欠相検出回路12は、主回路MCにおいて中性線欠相を検出したとき、時刻t1〜時刻t4において、表示制御信号を表示用サイリスタSCR1に出力する。表示用サイリスタSCR1は、時刻t1の後、欠相検出回路12により出力された表示制御信号に応じて、コイルL1への励磁電流を少なくとも半周期相当の時間の間、コイルL1に流す(図2参照)。
【0071】
表示開極制御部CU1において、プランジャPJは、コイルL1への励磁電流の通電に起因して生じた電磁力がバネB1の復元力より大きくなり、定常状態におけるプランジャPJの中心位置から図2の紙面左方向に移動する。プランジャPJの移動距離は、時刻t2において図2の紙面左方向における最大値となる。
【0072】
プランジャPJが図2の紙面左方向における最大値の位置に移動したとき、プランジャPJに設けられた突起物K1は、表示制御機構15のカウントアップボタンCBを1回押下する。これにより、表示制御機構15は、状態表示部CWにおいて主接点MCを強制開極するための原因事由として、漏電状態表示窓ELのみを表示可能に制御する。なお、コイルL1への励磁電流の減少に伴い、バネB1の復元力が電磁力を超えるため、プランジャPJの位置は中心位置に移動する。
【0073】
更に、表示用サイリスタSCR1は、欠相検出回路12が時刻t4まで表示制御信号を出力していることに応じて、2回目の少なくとも半周期相当の時間の間、コイルL1への励磁電流をコイルL1に流す(図2参照)。
【0074】
表示開極制御部CU1において、プランジャPJは、コイルL1への励磁電流の通電に起因して生じた電磁力がバネB1の復元力より大きくなり、定常状態におけるプランジャPJの中心位置から図2の紙面左方向に移動する。プランジャPJの移動距離は、時刻t3において図2の紙面左方向における最大値となる。
【0075】
プランジャPJが図2の紙面左方向における最大値の位置に移動したとき、プランジャPJに設けられた突起物K1は、表示制御機構15のカウントアップボタンCBを更に1回押下する。これにより、表示制御機構15は、カウントアップボタンCBが2回押下されたことになり、状態表示部CWにおいて主接点MCを強制開極するための原因事由として、欠相状態表示窓NLのみを表示可能に制御する。
【0076】
欠相検出回路12は、タイマTMの出力に応じて、少なくとも1.5周期の励磁電流の通電時間が経過した後、時刻t4において、表示用サイリスタSCR1への表示制御信号の出力を停止する。これにより、時刻t4の後、表示用サイリスタSCR1のアノード間−カソード間を流れる励磁電流は減少し、時刻t6においてゼロになる。なお、コイルL1への励磁電流の減少に伴い、バネB1の復元力が電磁力を超えるため、プランジャPJの位置は中心位置に移動する。
【0077】
時刻t4の後、欠相検出回路12は、時刻t5において、開極制御信号を開極用サイリスタSCR2に出力する。開極用サイリスタSCR2は、時刻t5の後、欠相検出回路12により出力された開極制御信号に応じて、コイルL1への励磁電流を少なくとも半周期相当の時間の間、コイルL1に流す(図3参照)。
【0078】
表示開極制御部CU1において、プランジャPJは、コイルL1への励磁電流の通電に起因して生じた電磁力がバネB2の復元力より大きくなり、定常状態におけるプランジャPJの中心位置から図3の紙面右方向に移動する。プランジャPJの移動距離は、時刻t7において図3の紙面右方向における最大値となる。
【0079】
プランジャPJが図3の紙面右方向における最大値の位置に移動したとき、プランジャPJに設けられた突起物K2は、開極制御機構16を押下する。これにより、開極制御機構16は、主接点MCを強制開極する。即ち、主接点MCは導通(オン)の状態から非導通(オフ)の状態となる。
【0080】
欠相検出回路12は、タイマTMの出力に応じて、少なくとも半周期の励磁電流の通電時間が経過した後、時刻t8において、開極用サイリスタSCR2への表示制御信号の出力を停止する。これにより、時刻t8の後、開極用サイリスタSCR2のアノード間−カソード間を流れる励磁電流は減少し、時刻t9においてゼロになる。なお、コイルL1への励磁電流の減少に伴い、バネB2の復元力が電磁力を超えるため、プランジャPJの位置は中心位置に移動する。
【0081】
以上により、第1の実施形態の漏電遮断器1によれば、コイルL1を含む表示開極制御部CU1を用いた簡易な構成で、コイルL1への励磁電流の方向及び通電時間に応じて、主接点の強制開極となる原因事由を表示できる。更に、漏電遮断器1によれば、主接点の強制開極となる原因事由を表示した後、その原因事由に応じて主接点を強制開極することができる。
【0082】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、漏電遮断器は、主回路の強制開極の他の原因事由として、第1の実施形態で説明した漏電及び欠相だけでなく他の異常事態が発生した場合にも、主回路を強制開極する。他の異常事態には、例えば雷サージによる過電流等が含まれる。これにより、漏電遮断器は、漏電又は漏電以外の事由から負荷の保護を図ることができる。
【0083】
更に、第2の実施形態では、漏電遮断器は、主回路を強制的に開極する前に、主回路の強制開極の原因事由として、表示制御機構を用いて漏電、欠相及び異常のうちいずれかを表示する。これにより、修繕対応者は、主回路に漏電、欠相及び異常のうちいずれかが発生した場合に、強制開極の原因事由を簡易に確認でき、漏電、欠相及び異常のうちいずれかに応じた修繕対応を素早く行うことができる。
【0084】
図5は、第2の実施形態の漏電遮断器2の全体構成を表すブロック図である。漏電遮断器2は、タイマTM、漏電検出回路11、欠相検出回路12、異常検出回路13、ダイオードD1〜D6、スイッチング素子としての表示用サイリスタSCR1、スイッチング素子としての開極用サイリスタSCR2、表示開極制御部CU2、表示制御機構17及び開極制御機構16を含む構成である。
【0085】
図5の漏電遮断器2の構成及び動作において、図1の漏電遮断器1の構成及び動作と同様のものには同様の符号で表されている。以下、漏電遮断器2の構成及び動作において、漏電遮断器1の構成及び動作と同様の内容の説明は省略し、漏電遮断器1の構成及び動作と異なる内容について説明する。
【0086】
スイッチS1の他端は表示開極制御部CU2(図6、図7参照)の他端に接続され、表示開極制御部CU2の一端は端子T1に接続されている。
【0087】
漏電検出回路11は、主回路MCにおいて漏電を検出した場合に、表示制御機構17が漏電発生を表示するために、ダイオードD1を介して表示制御信号(具体的には電流)を表示用サイリスタSCR1のゲート端子に出力する。
【0088】
欠相検出回路12は、主回路MCにおいて中性線欠相の発生を検出した場合に、表示制御機構17が中性線欠相の発生を表示するために、ダイオードD4を介して表示制御信号(具体的には電流)を表示用サイリスタSCR1のゲート端子に出力する。
【0089】
異常検出回路13は、ダイオードD6を介して表示用サイリスタSCR1のゲート端子、及びダイオードD5を介して開極用サイリスタSCR2のゲート端子にそれぞれ接続されている。異常検出回路13は、主回路MCにおいて漏電及び中性線欠相を除く他の異常事態(例えば、雷サージの発生による過電流等)が発生しているか否かを検出する。異常検出回路13は、主回路MCにおいて漏電を検出した場合に、表示制御機構17が異常事態発生を表示するために、ダイオードD6を介して表示制御信号(具体的には電流)を表示用サイリスタSCR1のゲート端子に出力する。
【0090】
なお、異常検出回路13の異常事態検出方法は公知の検出方法を適用可能であり、例えば、異常検出回路13は、零相変流器を含み、零相変流器の2次巻線の出力が所定レベルを超えると主回路MCに過電流が流れていることを検出する。
【0091】
なお、ダイオードD5,D6は、異常検出回路13からの出力、即ち開極制御信号,表示制御信号が確実に開極用サイリスタSCR2,表示用サイリスタSCR1の各ゲート端子に入力される方向に接続されている。即ち、ダイオードD5のアノード端子は異常検出回路13に接続され、ダイオードD5のカソード端子は開極用サイリスタSCR2のゲート端子に接続されている。同様に、ダイオードD6のアノード端子は異常検出回路13に接続され、ダイオードD6のカソード端子は表示用サイリスタSCR1のゲート端子に接続されている。
【0092】
更に、異常検出回路13は、主回路MCにおいて漏電を検出した場合に、開極制御機構16が主回路MCを開極するために、ダイオードD5を介して開極制御信号(具体的には電流)を開極用サイリスタSCR2のゲート端子に出力する。
【0093】
表示用サイリスタSCR1は、漏電検出回路11、欠相検出回路12及び異常検出回路13のうちいずれからの表示制御信号の入力に応じて、表示用サイリスタSCR1のアノード端子からカソード端子の方向に、表示開極制御部CU2への通電電流を出力する(流す)。
【0094】
開極用サイリスタSCR2は、漏電検出回路11、欠相検出回路12及び異常検出回路13のうちいずれからの表示制御信号の入力に応じて、開極用サイリスタSCR2のアノード端子からカソード端子の方向に、表示開極制御部CU2への通電電流を出力する(流す)。
【0095】
タイマTMは、表示開極制御部CU2(のコイルL1。図6又は図7参照)に流れる通電電流、即ち、表示用サイリスタSCR1又は開極用サイリスタSCR2からの励磁電流の通電時間を計測する。漏電検出回路11、欠相検出回路12及び異常検出回路13は、この計測された通電時間をそれぞれ入力している。
【0096】
なお、漏電検出回路11は、タイマTMからの出力、即ち表示開極制御部CU2に流れる励磁電流の通電時間に応じて、前述した表示制御信号又は開極制御信号の表示用サイリスタSCR1又は開極用サイリスタSCR2へのそれぞれの出力を停止する。
【0097】
同様に、欠相検出回路12は、タイマTMからの出力、即ち表示開極制御部CU2に流れる励磁電流の通電時間に応じて、前述した表示制御信号又は開極制御信号の表示用サイリスタSCR1又は開極用サイリスタSCR2へのそれぞれの出力を停止する。
【0098】
同様に、異常検出回路13は、タイマTMからの出力、即ち表示開極制御部CU2に流れる励磁電流の通電時間に応じて、前述した表示制御信号又は開極制御信号の表示用サイリスタSCR1又は開極用サイリスタSCR2へのそれぞれの出力を停止する。
【0099】
次に、表示開極制御部CU2、表示制御機構17及び開極制御機構16の動作について、図6及び図7を参照して説明する。
【0100】
図6は、第2の実施形態において強制開極の原因を表示する際の表示開極制御部CU2の動作概要を概念的に説明するための説明図である。図7は、第2の実施形態において強制開極する際の表示開極制御部CU2の動作概要を概念的に説明するための説明図である。
【0101】
表示開極制御部CU2は、第1の実施形態の表示開極制御部CU1と同様の構成及び動作をするため、同様の内容に関する説明は省略し、表示開極制御部CU1の動作と異なる内容について説明する。
【0102】
図6に表す様に、漏電遮断器2が主回路MCの強制開極の原因を表示する場合、コイルL1には、表示用サイリスタSCR1からコイルL1への励磁電流が図6の紙面右方向に流れる。この表示用サイリスタSCR1からの励磁電流に応じて、コイルL1内のプランジャPJは、バネB1からの復元力を超える電磁力を受けることにより、図6の紙面左方向に動作する。
【0103】
特に、タイマTMの計測によって少なくとも半周期以上に相当する励磁電流が流れると、プランジャPJの図6の紙面左方向への動作に応じて、プランジャPJに設けられている突起物K1が表示制御機構15のカウントアップボタンCBを押下する。
【0104】
例えば、少なくとも半周期に相当する図6の紙面左方向への励磁電流が1回コイルL1に流れるとする。この場合、プランジャPJは、その励磁電流を基に発生した電磁力によって、プランジャPJに設けられている突起物K1を介して、カウントアップボタンCBを1回押下する。
【0105】
これにより、表示制御機構17は、カウントアップボタンCBの出力(1回の押下)に応じて、主回路MCの強制開極の原因事由を表示するための状態表示部CWに、漏電状態表示窓ELのみを表示可能に制御する。
【0106】
また、例えば、後述する様に、少なくとも半周期に相当する図6の紙面左方向への出力電流が2回コイルL1に流れるとする。この場合、プランジャPJは、その励磁電流を基に発生した電磁力によって、プランジャPJに設けられている突起物K1を介して、カウントアップボタンCBを2回押下する。
【0107】
これにより、表示制御機構17は、カウントアップボタンCBの出力(2回の押下)に応じて、主回路MCの強制開極の原因事由を表示するための状態表示部CWに、欠相状態表示窓NLのみを表示可能に制御する。
【0108】
また、例えば、後述する様に、少なくとも半周期に相当する図6の紙面左方向への出力電流が3回コイルL1に流れるとする。この場合、プランジャPJは、その励磁電流を基に発生した電磁力によって、プランジャPJに設けられている突起物K1を介して、カウントアップボタンCBを3回押下する。
【0109】
これにより、表示制御機構17は、カウントアップボタンCBの出力(3回の押下)に応じて、主回路MCの強制開極の原因事由を表示するための状態表示部CWに、異常状態表示窓ALのみを表示可能に制御する。
【0110】
図7に表す様に、漏電遮断器2が主回路MCを強制開極する場合、コイルL1には、開極用サイリスタSCR2からコイルL1への励磁電流が図7の紙面左方向に流れる。この開極用サイリスタSCR2からの励磁電流に応じて、コイルL1内のプランジャPJは、バネB2からの復元力を超える電磁力を受けることにより、図7の紙面右方向に動作する。
【0111】
特に、タイマTMの計測によって少なくとも半周期以上に相当する励磁電流が流れると、プランジャPJの図7の紙面右方向への動作に応じて、プランジャPJに設けられている突起物K2が開極制御機構16を押下する。これにより、開極制御機構16は、プランジャPJに設けられている突起物K2の押下に応じて、主回路MCを強制開極する。
【0112】
次に、漏電遮断器2が主接点MCの強制開極する原因事由(漏電、中性線欠相、異常事態)を表示した上で主回路MCを強制開極する動作について、図8を参照して説明する。図8は、第2の実施形態の漏電遮断器2の動作を説明するタイミングチャートである。同図(A)は、漏電の検出時のタイミングチャートである。同図(B)は、中性線の欠相検出時のタイミングチャートである。同図(C)は、異常事態の検出時のタイミングチャートである。
【0113】
図8(A)、図8(B)及び図8(C)において、第1段は、表示用サイリスタSCR1に入力されるゲート信号の時間変化を表す。第2段は、開極用サイリスタSCR2に入力されるゲート信号の時間変化を表す。第3段は、コイルL1への励磁電流の時間変化を表す。第4段は、プランジャPJの位置を表し、横軸はプランジャPJの定常状態における中心位置を表す。第5段は、状態表示部CWの表示状態の時間変化を表す。第6段は、主接点MCの状態の時間変化を表す。
【0114】
なお、図8(A)及び図8(B)における漏電検出時及び中性線欠相検出時のタイミングチャートの説明は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。以下、図8(C)における異常事態検出時のタイミングチャートについて説明する。
【0115】
図8(C)において、異常検出回路13は、主回路MCにおいて雷サージの発生等の異常事態を検出したとき、時刻t1〜時刻t5において、表示制御信号を表示用サイリスタSCR1に出力する。表示用サイリスタSCR1は、時刻t1の後、異常検出回路13により出力された表示制御信号に応じて、コイルL1への励磁電流を少なくとも半周期相当の時間の間、コイルL1に流す(図6参照)。
【0116】
表示開極制御部CU2において、プランジャPJは、コイルL1への励磁電流の通電に起因して生じた電磁力がバネB1の復元力より大きくなり、定常状態におけるプランジャPJの中心位置から図6の紙面左方向に移動する。プランジャPJの移動距離は、時刻t2において図6の紙面左方向における最大値となる。
【0117】
プランジャPJが図6の紙面左方向における最大値の位置に移動したとき、プランジャPJに設けられた突起物K1は、表示制御機構17のカウントアップボタンCBを1回押下する。これにより、表示制御機構17は、状態表示部CWにおいて主接点MCを強制開極するための原因事由として、漏電状態表示窓ELのみを表示可能に制御する。なお、コイルL1への励磁電流の減少に伴い、バネB1の復元力が電磁力を超えるため、プランジャPJの位置は中心位置に移動する。
【0118】
更に、表示用サイリスタSCR1は、異常検出回路13が時刻t5まで表示制御信号を出力していることに応じて、2回目の少なくとも半周期相当の時間の間、コイルL1への励磁電流をコイルL1に流す(図6参照)。
【0119】
表示開極制御部CU2において、プランジャPJは、コイルL1への励磁電流の通電に起因して生じた電磁力がバネB1の復元力より大きくなり、定常状態におけるプランジャPJの中心位置から図6の紙面左方向に移動する。プランジャPJの移動距離は、時刻t3において図6の紙面左方向における最大値となる。
【0120】
プランジャPJが図6の紙面左方向における最大値の位置に移動したとき、プランジャPJに設けられた突起物K1は、表示制御機構17のカウントアップボタンCBを更に1回押下する。これにより、表示制御機構17は、カウントアップボタンCBが2回押下されたことになり、状態表示部CWにおいて主接点MCを強制開極するための原因事由として、欠相状態表示窓NLのみを表示可能に制御する。
【0121】
更に、表示用サイリスタSCR1は、異常検出回路13が時刻t5まで表示制御信号を出力していることに応じて、3回目の少なくとも半周期相当の時間の間、コイルL1への励磁電流をコイルL1に流す(図6参照)。
【0122】
表示開極制御部CU2において、プランジャPJは、コイルL1への励磁電流の通電に起因して生じた電磁力がバネB1の復元力より大きくなり、定常状態におけるプランジャPJの中心位置から図6の紙面左方向に移動する。プランジャPJの移動距離は、時刻t4において図6の紙面左方向における最大値となる。
【0123】
プランジャPJが図6の紙面左方向における最大値の位置に移動したとき、プランジャPJに設けられた突起物K1は、表示制御機構17のカウントアップボタンCBを更に1回押下する。これにより、表示制御機構17は、カウントアップボタンCBが3回押下されたことになり、状態表示部CWにおいて主接点MCを強制開極するための原因事由として、異常状態表示窓ALのみを表示可能に制御する。
【0124】
異常検出回路13は、タイマTMの出力に応じて、少なくとも2.5周期の励磁電流の通電時間が経過した後、時刻t5において、表示用サイリスタSCR1への表示制御信号の出力を停止する。これにより、時刻t5の後、表示用サイリスタSCR1のアノード間−カソード間を流れる励磁電流は減少し、時刻t7においてゼロになる。なお、コイルL1への励磁電流の減少に伴い、バネB1の復元力が電磁力を超えるため、プランジャPJの位置は中心位置に移動する。
【0125】
時刻t5の後、異常検出回路13は、時刻t6において、開極制御信号を開極用サイリスタSCR2に出力する。開極用サイリスタSCR2は、時刻t6の後、異常検出回路13により出力された開極制御信号に応じて、コイルL1への励磁電流を少なくとも半周期相当の時間の間、コイルL1に流す(図7参照)。
【0126】
表示開極制御部CU2において、プランジャPJは、コイルL1への励磁電流の通電に起因して生じた電磁力がバネB2の復元力より大きくなり、定常状態におけるプランジャPJの中心位置から図7の紙面右方向に移動する。プランジャPJの移動距離は、時刻t8において図7の紙面右方向における最大値となる。
【0127】
プランジャPJが図7の紙面右方向における最大値の位置に移動したとき、プランジャPJに設けられた突起物K2は、開極制御機構16を押下する。これにより、開極制御機構16は、主接点MCを強制開極する。即ち、主接点MCは導通(オン)の状態から非導通(オフ)の状態となる。
【0128】
異常検出回路13は、タイマTMの出力に応じて、少なくとも半周期の励磁電流の通電時間が経過した後、時刻t9において、開極用サイリスタSCR2への表示制御信号の出力を停止する。これにより、時刻t9の後、開極用サイリスタSCR2のアノード間−カソード間を流れる励磁電流は減少し、時刻t10においてゼロになる。なお、コイルL1への励磁電流の減少に伴い、バネB2の復元力が電磁力を超えるため、プランジャPJの位置は中心位置に移動する。
【0129】
以上により、第2の実施形態の漏電遮断器2によれば、コイルL1を含む表示開極制御部CU2を用いた簡易な構成で、コイルL1への励磁電流の方向及び通電時間に応じて、主接点の強制開極となる原因事由を表示できる。更に、漏電遮断器2によれば、主接点の強制開極となる原因事由を表示した後、その原因事由に応じて主接点を強制開極することができる。
【0130】
以上、添付図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0131】
なお、前述した表示用サイリスタSCR1又は開極用サイリスタSCR2からコイルL1への励磁電流の通電時間の計測終了時点は、交流電源ACにおける交流電圧のゼロクロス時点であることが好ましい。この場合、漏電検出回路11、欠相検出回路12及び異常検出回路13は、それぞれ交流電圧のゼロクロス時点を検出可能な測定器を含む。
【0132】
これにより、漏電検出回路11、欠相検出回路12及び異常検出回路13は、表示用サイリスタSCR1又は開極用サイリスタSCR2からのコイルL1への励磁電流の通電時間の制御に、別途タイマを設ける必要がなくなる。このため、漏電遮断器1及び漏電遮断器2を安価に構成可能である。
【0133】
なお、前述した表示用サイリスタSCR1又は開極用サイリスタSCR2からコイルL1への励磁電流の通電時間の計測開始時点は、交流電源ACにおける交流電圧のゼロクロス時点であることが好ましい。これにより、漏電遮断器1及び漏電遮断器2は、表示用サイリスタSCR1又は開極用サイリスタSC2からの励磁電流の半周期の通電時間を確実に確保し、プランジャPJの動作を確実に制御可能である。
【0134】
なお、前述した各実施形態では、スイッチング素子としてサイリスタを用いているが、他のスイッチング素子としてトランジスタを用いても良い。この場合、前述した各実施形態に説明した様に、タイマを必要とするが、漏電遮断器1及び漏電遮断器2を安価に構成可能である。
【符号の説明】
【0135】
1、2 漏電遮断器
5 負荷
11 漏電検出回路
12 欠相検出回路
13 異常検出回路
15、17 表示制御機構
16 開極制御機構
AC 交流電源
AL 異常状態表示窓
B1、B2 バネ
CB カウントアップボタン
CU1、CU2 表示開極制御部
CW 状態表示部
EL 漏電状態表示窓
K1、K2 突起物
L1 コイル
NL 欠相状態表示窓
PJ プランジャ
PM1、PM2 永久磁石
RB リセットボタン
S1 スイッチ
SCR1、SCR3 表示用サイリスタ
SCR2、SCR4 開極用サイリスタ
T1、T2、T3、T4 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源を含む主回路を開極する漏電遮断器であって、
前記主回路に流れる漏電電流を検出する漏電検出回路と、
中性線の欠相を検出する欠相検出回路と、
前記漏電電流又は前記中性線の欠相の検出に応じて、前記主回路を強制的に開極する開極制御機構と、
前記漏電電流又は前記中性線の欠相の検出に応じて、前記主回路の強制開極の原因を表示する表示制御機構と、
単一のコイルを含み、前記漏電検出回路又は前記欠相検出回路からの出力に応じて、前記表示制御機構及び前記開極制御機構の動作を制御する表示開極制御部と、
前記漏電検出回路又は前記欠相検出回路からの出力に応じて、所定方向の通電電流を前記コイルに流す第1スイッチング素子と、
前記漏電検出回路又は前記欠相検出回路からの出力に応じて、前記所定方向とは反対方向の通電電流を前記コイルに流す第2スイッチング素子と、を備え、
前記表示開極制御部は、前記第1スイッチング素子又は前記第2スイッチング素子からの前記通電電流の方向及び通電時間に応じて、前記表示制御機構及び前記開極制御機構の動作を制御する漏電遮断器。
【請求項2】
請求項1に記載の漏電遮断器であって、
前記表示開極制御部は、前記出力電流の前記コイルに対する通電時間に応じて、前記主回路の強制開極の原因として、漏電又は前記欠相を表示する様に前記表示制御機構を制御する漏電遮断器。
【請求項3】
請求項2に記載の漏電遮断器であって、
前記表示開極制御部は、前記漏電又は前記欠相のうち、前記コイルに対する通電時間が短い前記出力電流に応じて、前記主回路の強制開極の原因として前記漏電を表示する様に前記表示制御機構を制御する漏電遮断器。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の漏電遮断器であって、
前記出力電流の前記コイルに対する通電時間の計測終了時点は、前記交流電源における交流電圧のゼロクロス時点である漏電遮断器。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の漏電遮断器であって、
前記出力電流の前記コイルに対する通電時間の計測開始時点は、前記交流電源における交流電圧のゼロクロス時点である漏電遮断器。
【請求項6】
請求項1に記載の漏電遮断器であって、
前記表示開極制御部は、第1スイッチング素子からの前記通電電流の半周期の回数に応じて、前記強制開極の原因を切り替える様に前記表示制御機構を制御する漏電遮断器。
【請求項7】
請求項1に記載の漏電遮断器であって、
前記表示開極制御部は、前記漏電遮断器の外部からの入力電流の方向及び前記通電時間に応じて、前記開極制御機構の動作を制御する漏電遮断器。
【請求項8】
交流電源を含む主回路を開極する漏電遮断器であって、
前記主回路に流れる漏電電流を検出する漏電検出回路と、
中性線の欠相を検出する欠相検出回路と、
前記漏電電流及び前記中性線の欠相を除く異常事態を検出する異常検出回路と、
前記漏電電流、前記中性線の欠相及び前記異常事態のうちいずれかの検出に応じて、前記主回路を強制的に開極する開極制御機構と、
前記漏電電流、前記中性線の欠相及び前記異常事態のうちいずれかの検出に応じて、前記主回路の強制開極の原因を表示する表示制御機構と、
単一のコイルを含み、前記漏電検出回路、前記欠相検出回路及び前記異常検出回路のうちいずれかの出力に応じて、前記表示制御機構及び前記開極制御機構の動作を制御する表示開極制御部と、
前記漏電検出回路、前記欠相検出回路及び前記異常検出回路のうちいずれかの出力に応じて、所定方向の通電電流を前記コイルに流す第1スイッチング素子と、
前記漏電検出回路、前記欠相検出回路及び前記異常検出回路のうちいずれかの出力に応じて、前記所定方向とは反対方向の通電電流を前記コイルに流す第2スイッチング素子と、を備え、
前記表示開極制御部は、前記第1スイッチング素子又は前記第2スイッチング素子からの前記通電電流の方向及び通電時間に応じて、前記表示制御機構及び前記開極制御機構の動作を制御する漏電遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−204007(P2012−204007A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64685(P2011−64685)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】