説明

潤滑剤供給体及びその潤滑剤供給体を備えたボールねじ

【課題】ボールねじの作動トルクの増加及び磨耗粉の発生を抑制することが可能な潤滑剤供給体及びその潤滑剤供給体を備えたボールねじを提供する。
【解決手段】ねじ軸4と、ナット6と、複数の転動体8を備えたボールねじ2において、ねじ軸4の外周側に、潤滑油と樹脂とを混合した後、これらを固化させて円筒状に形成された本体24と、立毛部30と基部32から形成されているブラシ26を備えた潤滑剤供給体1を配置し、立毛部30が有する各繊維状部材28の基端部を、基部32を介して本体24の表面に取り付けるとともに、各繊維状部材28の先端部を、ねじ軸側転動溝10を含むねじ軸4の外周面に接触させるとともに、各繊維状部材28を、それぞれ、他の繊維状部材28と離間させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ねじ軸側転動溝等の被潤滑部位に潤滑剤を供給する潤滑剤供給体、並びに、その潤滑剤供給体を備えたボールねじに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ボールねじや軸受等、作動性や耐久性等を向上させるために潤滑性が要求される部品には、潤滑油や半固形状のグリース等、潤滑剤を含有した組成物(以下、「潤滑性組成物」と記載する)が充填されている場合が多い。
しかしながら、このような潤滑性組成物は、液体である潤滑油は勿論のこと、半固形状のグリースにおいても、軸受の回転時等、作動時に生じる温度上昇に伴って流動化し、潤滑性組成物が飛散するおそれがある。
【0003】
このため、潤滑性組成物の飛散を抑制するために、シール板等の密封部材によって潤滑性組成物の充填部を密封する必要があり、潤滑性組成物が充填される部品の構造が複雑となるおそれがあった。この場合、例えば、小型軸受のように、潤滑性組成物が充填される部品が、余剰部分が少ない部品である場合等では、密封部材を取り付けること自体が困難であるという問題が発生するおそれがある。
【0004】
このような問題を解決するために、密封部材を必要としない潤滑方式として、混合した潤滑油と樹脂とを固形化して形成された潤滑剤供給組成物が開発されており、実用化されている。
上述した樹脂をベースとして形成された潤滑剤供給組成物は、樹脂内に保持された潤滑油が、樹脂の表面に滲み出て潤滑作用を発現するものである。潤滑剤供給組成物としては、例えば、潤滑油を含有するポリエチレン(例えば、特許文献1〜3参照)や、分子量が1×10〜5×10度の超高分子量ポリエチレンに、潤滑グリースを保持させた潤滑性組成物(例えば、特許文献4参照)が用いられる。
【0005】
これらの潤滑剤供給組成物は、例えば、転がり軸受の内輪、外輪、転動体及び保持器から形成される軸受空間の充填物等、潤滑箇所に応じて加工されて、潤滑剤供給体として使用される。
しかしながら、上述したような潤滑剤供給組成物は、ポリエチレンをベースとして形成されている場合が多いため、作動時等に生じる温度上昇に伴って、約80℃ぐらいから軟化し始め、130〜140℃で完全に融解してしまうおそれがある。したがって、80℃以上の高温下では、機械的強度が低下してしまい、軸受等に充填して使用した際に、転動体の回転に伴い変形や破壊を生じて、充填部位から離脱するという問題が生じるおそれがある。
【0006】
このような問題を解決するために、高温下における使用が可能であり、機械的強度に優れ、極性の大きい潤滑油及びその潤滑油を基油としたグリースを、安定に保持した潤滑剤供給体(例えば、特許文献5参照)が用いられている。この潤滑剤供給体は、例えば、ボールねじに備えられる潤滑剤供給体として用いられており、円筒状に形成され、ねじ軸の外周側において、ねじ軸を内包するように配置されたナットの一側端に取り付けられている。
そして、この潤滑剤供給体は、外周面に細い溝が形成されており、この溝内に配置されたスプリングにより、一定の圧力でねじ軸の外周面へ向けてラジアル方向に加圧されて、ねじ軸との適切な接触状態を保持している。
【0007】
また、上述したような問題を解決するために、潤滑油を含有したゴムまたは合成樹脂から形成され、ねじ軸の外周面に接触する多数の突起部を内周面に備える潤滑剤供給体(例えば、特許文献6参照)が用いられている。この潤滑剤供給体も、特許文献5に記載されているものと同様に、例えば、ボールねじに備えられる潤滑剤供給体として用いられており、円筒状に形成され、ねじ軸の外周側において、ねじ軸を内包するように配置されたナットの一側端に取り付けられている。
そして、この潤滑剤供給体は、ねじ軸の外周面に接触する多数の突起部から、ゴムまたは合成樹脂内に保持された潤滑油が、突起部の表面に滲み出てねじ軸の外周面へ供給されて、潤滑作用を発現するものである。
【特許文献1】米国特許第3729415号明細書
【特許文献2】米国特許第3547819号明細書
【特許文献3】米国特許第3541011号明細書
【特許文献4】特公昭63−23239号公報
【特許文献5】特開2006−206917号公報
【特許文献6】特開平9−222154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献5に記載したような潤滑剤供給体は、スプリングによりねじ軸の外周面へ向けてラジアル方向に加圧されているため、ボールねじの作動時には、転動体やねじ軸等、潤滑剤供給体に対して相対移動する部品と接触した状態で、潤滑剤を供給することとなる。
このため、ボールねじの作動時には、潤滑剤供給体が、転動体やねじ軸等、潤滑剤供給体と相対移動する部品に対して摺動することとなる。したがって、ボールねじの作動に対する摩擦抵抗を生じてしまい、ボールねじの作動トルクが増加してしまうという問題が発生するおそれがある。
【0009】
また、ボールねじの作動時に潤滑剤供給体と転動体やねじ軸が摺動する部分では、潤滑剤供給体が磨耗し、この磨耗に伴って、ベースとなる樹脂が磨耗して磨耗粉が発生する可能性がある。
樹脂が磨耗して磨耗粉が発生すると、この発生した磨耗粉がボールねじの転動体転動路内に入り込む可能性があり、ボールねじの作動時における振動が増加してしまうという問題や、ボールねじの作動性及び耐久性が低下してしまうという問題が発生するおそれがある。
【0010】
また、樹脂が磨耗して磨耗粉が発生すると、ボールねじ周辺の機器に磨耗粉が飛散してしまう可能性があり、ボールねじ周辺の機器に、汚染等の悪影響を与えてしまうという問題が発生するおそれがある。
また、特許文献6に記載したような潤滑剤供給体は、ゴムまたは合成樹脂に潤滑油を含有させているため、強度を高くすることが困難であり、突起部の断面積を小さくすることが困難である。
【0011】
このため、ボールねじの作動時における、突起部の撓みによるねじ軸側転動溝への追従性に限界があり、取付け誤差等の要因によって、ねじ軸に対する突起部の接触圧力を減少させることが困難である。したがって、ボールねじの作動トルクが増加してしまうという問題が発生するおそれがある。
また、ゴムまたは合成樹脂としては、内部に潤滑油を含有可能な物性の材質に限定されるため、ボールねじの作動時に、ねじ軸側転動溝との摺動部における耐摩耗性が高い材質を採用することが困難である。
【0012】
このため、ボールねじの作動時に潤滑剤供給体が磨耗し、この磨耗に伴って磨耗粉が発生して、この発生した磨耗粉がボールねじの転動体転動路内に入り込む可能性や、ボールねじ周辺の機器に磨耗粉が飛散してしまう可能性がある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、ボールねじの作動時に相対移動する部品との摩擦抵抗を減少させることが可能な、潤滑剤供給体及びその潤滑剤供給体を備えたボールねじを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のうち、請求項1に記載した発明は、潤滑油と樹脂とを混合して固化させて形成され、その表面から前記潤滑油が滲出する潤滑剤供給体であって、
前記表面から突出する複数本の繊維状部材を有するブラシを備えることを特徴とするものである。
【0014】
本発明によると、樹脂に混合された潤滑油が滲出する潤滑剤供給体に、その表面から突出する複数本の繊維状部材を有するブラシを取り付けている。
このため、潤滑剤供給体の表面から滲出した潤滑油を、複数本の繊維状部材の先端部へ移動させることが可能となり、例えば、ねじ軸や転動体等、潤滑油の供給対象と、潤滑剤供給体の表面との接触を防止することが可能となる。
【0015】
次に、本発明のうち、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明であって、前記複数本の繊維状部材のうち少なくとも一本は、他の繊維状部材と離間していることを特徴とするものである。
本発明によると、複数本の繊維状部材のうち少なくとも一本が、他の繊維状部材と離間しているため、複数本の繊維状部材のうち少なくとも一本と、他の繊維状部材との間に隙間が形成される。
【0016】
このため、複数本の繊維状部材のうち少なくとも一本と他の繊維状部材との間に形成された隙間に、毛細管現象が発生することとなり、潤滑剤供給体の表面から滲出した潤滑油を、複数本の繊維状部材の先端部へ円滑に移動させることが可能となる。
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載した発明であって、前記複数本の繊維状部材のうち少なくとも二本以上の繊維状部材同士を接触させて接触繊維状部材を形成し、
前記接触繊維状部材は、他の繊維状部材と離間していることを特徴とするものである。
【0017】
本発明によると、複数本の繊維状部材のうち少なくとも二本以上の繊維状部材を接触させて接触繊維状部材を形成し、この接触繊維状部材は他の繊維状部材と離間しているため、接触繊維状部材と、他の繊維状部材との間に隙間が形成される。
このため、接触繊維状部材と他の繊維状部材との間に形成された隙間に、毛細管現象が発生することとなり、潤滑剤供給体の表面から滲出した潤滑油を、複数本の繊維状部材の先端部へ円滑に移動させることが可能となる。
【0018】
請求項4に係る発明は、請求項1から3のうちいずれか1項に記載した発明であって、前記ブラシは、前記表面に取り付けられる基部と、前記複数本の繊維状部材を有するとともに前記基部に取り付けられる立毛部と、を備えることを特徴とするものである。
本発明によると、ブラシは、表面に取り付けられる基部と、複数本の繊維状部材を有するとともに基部に取り付けられる立毛部を備えているため、複数本の繊維状部材を表面から突出した状態とすることが容易となり、潤滑剤供給体の製造が容易となる。
【0019】
請求項5に係る発明は、外周面に螺旋状のねじ軸側転動溝を有するねじ軸と、前記ねじ軸側転動溝に対向する螺旋状のナット側転動溝を内周面に有して前記ねじ軸の外周側に配置されるナットと、前記両転動溝間に形成された負荷転動路内に転動可能に装填された複数の転動体と、前記ねじ軸の外周側に配置される潤滑剤供給体と、を備えたボールねじであって、
前記潤滑剤供給体として、請求項1から4のうちいずれか1項に記載した潤滑剤供給体を備え、
前記潤滑剤供給体は、前記複数本の繊維状部材のうち少なくとも一本を前記ねじ軸側転動溝へ向けて配置されることを特徴とするものである。
【0020】
本発明によると、潤滑剤供給体の表面から滲出した潤滑油を、複数本の繊維状部材の一方の先端部へ移動させることが可能となるため、潤滑剤供給体の表面から滲出した潤滑油を、円滑にねじ軸側転動溝へ供給することが可能となる。
また、本発明によると、ねじ軸や転動体等、潤滑剤供給体に対して相対移動する部品と、潤滑剤供給体の表面との接触を防止することが可能となるため、ボールねじの作動時に、潤滑剤供給体に対して相対移動する部品と、潤滑剤供給体との摩擦抵抗を減少させることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ボールねじの作動時に、潤滑剤供給体に対して相対移動する部品との摩擦抵抗を減少させることが可能となるため、潤滑剤供給体の磨耗を抑制することが可能となり、ボールねじの作動トルクの増加及び磨耗粉の発生を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
まず、図1から図5を用いて、本実施形態の潤滑剤供給体を備えたボールねじの構成を説明する。
図1は、潤滑剤供給体1を備えたボールねじ2の断面図である。
図1中に示すように、ボールねじ2は、ねじ軸4と、ナット6と、複数の転動体8と、潤滑剤供給体1を備えている。
【0023】
ねじ軸4は、螺旋状のねじ軸側転動溝10を外周面に有しており、モータ等の回転動力源(図示せず)に連結されている。
ナット6は、ねじ軸4の外周側に配置されており、ねじ軸側転動溝10と対向する螺旋状のナット側転動溝12を内周面に有している。
【0024】
また、ナット6の一側端(図1中では右側)には、潤滑剤供給体1を介して、円筒状のシールキャップ14が、ボルト16を用いて取り付けられている。ボルト16の軸部外周には、それぞれ、スリーブ18が介装されている。
シールキャップ14の端部には、ラビリンスシール20が取り付けられており、ねじ軸4とシールキャップ14との間に形成される隙間から、塵芥等の異物が侵入することを防止している。
【0025】
各転動体8は、例えば、鋼球によって形成されており、ねじ軸側転動溝10とナット側転動溝12との間に形成される負荷転動路22内に、転動可能に装填されている。
したがって、ボールねじ2は、ねじ軸4(またはナット6)の回転運動に伴って、負荷転動路22内を複数の転動体8が転動することにより、ナット6(またはねじ軸4)が、転動体8の転動を介して、ねじ軸4の軸方向に沿って直線移動する構成となっている。すなわち、図1中に示すナット6の移動方向は、ねじ軸4の軸方向と同一の方向となっている。
【0026】
潤滑剤供給体1は、本体24とブラシ26を備えており、ねじ軸4の外周側において、ブラシ26が有する複数本の繊維状部材28を、ねじ軸側転動溝10へ向けて配置されている。繊維状部材28の説明は、後述する。
本体24は、潤滑油と樹脂とを混合した後、これらを固化させて円筒状に形成されており、その表面から潤滑油が滲出する構成となっている。
【0027】
ここで、潤滑油としては、例えば、テトラフェニルエーテル等、樹脂の融点以上で加熱した時点で相溶性が高い物性を有する第一の潤滑油と、オクタデシルジフェニルエーテル等、極性の小さい第二の潤滑油とを混合した混合潤滑油を用いる。
また、樹脂としては、例えば、ポリエチレンや、超高分子量ポリエチレンを用いる。更に、樹脂としては、ボールねじ2が、例えば、80℃以上の高温下で使用される場合は、耐熱性が高いポリエステルエラストマーを用いてもよい。なお、以下の説明では、一例として、樹脂としてポリエステルエラストマーを用いた場合を説明する。
【0028】
本体24の形成は、例えば、以下の手順に沿って行われる。
まず、ペレット状あるいは粉末状のポリエステルエラストマーと混合潤滑剤とを、ポリエステルエラストマーの融点以上の温度で混合して、均一に相溶させる。なお、ポリエステルエラストマーと混合潤滑剤に加え、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤等、劣化を防止する添加剤や、ガラス繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー等の強化材、あるいは、グラファイト、h−BN、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、MoS等の固体潤滑剤等を添加してもよい。
【0029】
次に、この溶解状態にある混合物を、目的とする形状の金型等に流し込んで冷却固化させる。なお、本体24を、溶解状態にある混合物を固化させた後、粉砕機等で粉砕し、粉砕後の材料を射出成形によって形成してもよい。
なお、本体24の構成は、上記に限定されるものではなく、潤滑剤を保持する機能を有していればよい。例えば、特開平11−303866号公報に開示されているような、フェルト等の繊維交絡体を用いることが好適である。
【0030】
図2は、ブラシ26の構成を説明する図である。
図2中に示すように、ブラシ26は、立毛部30と基部32を備えている。なお、ブラシ26としては、例えば、株式会社マサル商会製のシール用ブラシがあり、材質として、ナイロン、ポリプロピレン、塩化ビニール、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フッ素繊維、導電性を持たせたナイロンやアクリル等の樹脂材料や、鋼線、スチール線、ステンレス線、真鍮線、動物繊維、植物繊維等を用いる。
【0031】
立毛部30は、複数本の繊維状部材28を有している。
複数本の繊維状部材28は、それぞれ、直線状に形成されている。
繊維状部材28の一方の端部(以下、「基端部」と記載する)は、基部32に固定されている。なお、繊維状部材28を基部32に固定する方法としては、例えば、接着式、植込式、クランプ式等が挙げられる。
【0032】
図3は、図1中に円IIIで示した部分及びその周辺の拡大図である。
図3中に示すように、繊維状部材28の他方の端部(以下、「先端部」と記載する)は、ねじ軸側転動溝10を含むねじ軸4の外周面に接触している。
また、複数本の繊維状部材28は、それぞれ、他の繊維状部材28と離間している。したがって、複数本の繊維状部材28間には、それぞれ、隙間が形成されている。
【0033】
また、複数本の繊維状部材28は、それぞれ、ステンレス等の金属製繊維、PTFE等のフッ素系樹脂繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、ポリビニルアルコール繊維(ビニロン繊維)、レーヨン繊維、ナイロン(ポリアミド)繊維等の合成樹脂、ガラス繊維、カーボン繊維、セラミックス繊維等の無機繊維を、繊維構造体として用いている。なお、これらの繊維は、混紡や混織してもよく、また、複合繊維としてもよい。
【0034】
なお、本実施形態では、一例として、繊維構造体としてPTFEのみを用いた場合を説明する。
ここで、複数本の繊維状部材28が、ステンレス等の金属製繊維を繊維構造体として用いている場合は、繊維状部材28にコーティング処理を行い、硬質薄膜や固体潤滑膜を形成してもよい。コーティングとしては、例えば、クロム、金、ニッケル、亜鉛等の金属めっき、二硫化モリブデン等のイオンプレーティング膜やショット膜、ダイヤモンドライクカーボン等の蒸着膜等を用いる。
【0035】
複数本の繊維状部材28の直径は、それぞれ、1μmから1mmの範囲内に設定されている。これは、繊維状部材28の直径が1μm未満である場合、繊維状部材28の強度が十分ではないため、発塵量が増加するおそれがあるためである。一方、繊維状部材28の直径が1mmを超えている場合、繊維状部材28の強度が過度になり、ボールねじ2の作動時に、繊維状部材28とねじ軸4との間に発生する摩擦抵抗が増加して、ボールねじ2の作動トルクが増加するおそれがあるためである。また、繊維状部材28の直径が1mmを超えている場合、繊維状部材28が折れやすくなるため、折れた繊維状部材28が負荷転動路22内に残留して、ボールねじ2の作動を妨げる要因となるおそれがあるためである。
【0036】
なお、本実施形態では、一例として、複数本の繊維状部材28の直径を、それぞれ、10μmから0.5mmの範囲内に設定した場合を説明する。
複数本の繊維状部材28の長さは、それぞれ、本体24とねじ軸4との隙間に応じて、適宜設定する。この場合、本体24とねじ軸4との隙間が大きすぎると、後述するように、繊維状部材28の基端部から先端部へ移動する潤滑油が、先端部へ到達する前に飛散して、潤滑油をねじ軸側転動溝10へ供給することが困難となるおそれがある。一方、本体24とねじ軸4との隙間が小さすぎると、繊維状部材28の毛腰が硬くなり、繊維状部材28とねじ軸4との間に発生する摩擦抵抗が増加してしまうため、ボールねじ2の作動トルクが増加してしまうおそれがある。
【0037】
したがって、本体24とねじ軸4との隙間は、例えば、潤滑油の粘度や繊維状部材28の硬度に応じて設定し、繊維状部材28の長さは、設定した本体24とねじ軸4との隙間に応じて、例えば、その先端部が、ねじ軸側転動溝10に沿って接触する形状となるように揃えることが好適である。本実施形態では、一例として、複数本の繊維状部材28の長さを、先端部が、ねじ軸側転動溝10に沿って接触する形状となるように揃えた場合を説明する。
【0038】
基部32は、例えば、本体24に埋設されることによって、本体24の表面に固定されており、基部32が本体24の表面に固定されると、繊維状部材28の基端部が、基部32を介して本体24の表面に取り付けられ、繊維状部材28が、本体24の表面から突出した状態となる。なお、基部32を、本体24に接着することによって、本体24の表面に固定してもよい。
【0039】
また、基部32は、例えば、ゴムや金属等によって形成されている。ここで、基部32をゴムによって形成する場合は、例えば、ニトリルゴム、ポリアクリルゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム等、一般的に使用されているゴムを用いて、射出成形等によって形成する。
また、基部32を金属によって形成する場合は、例えば、シールド型の打ち抜き鋼板を用いて、基部32を形成する。なお、基部32を、ステンレスの細線等、成形時の過熱に耐えられる材質の、紐状の金属によって形成してもよい。
【0040】
以下、図4及び図5を参照して、基部32を本体24の表面に固定する手順について説明する。
図4は、基部32を本体24の表面に固定する前のブラシ26の状態を示す図である。
基部32を本体24の表面に固定する際には、まず、立毛部30を基部32に取り付けて直線状のブラシ26を形成した後、図4に示すように、基部32の両端部同士を連結して、環状のブラシ26を形成する。ここで、基部32の両端部同士を連結する際には、例えば、基部32の両端部同士を接着して連結してもよく、基部32の両端部同士を紐状の繊維で纏めて連結してもよい。
【0041】
図5は、基部32を本体24の表面に固定した状態を示す図である。
図5に示すように、環状のブラシ26を形成した後、このブラシ26が有する基部32を、埋設等の手段によって本体24の表面に固定し、基部32を本体24の表面に固定するとともに、繊維状部材28の基端部を、基部32を介して本体24の表面に取り付ける。環状のブラシ26が本体24の表面に固定されると、複数の繊維状部材28は、本体24の内周側において、本体24の周方向全体に亘って、その先端部を中心側へ向けて配置される。
【0042】
次に、上記の構成を備えたボールねじ2の作用・効果等を説明する。
ねじ軸4に連結されているモータ等の回転動力源を駆動させると、ねじ軸4に対して相対的にナット6が回転することにより、転動体8の転動を介してナット6が軸方向に移動する。
転動体8の転動を介してナット6が軸方向に移動すると、負荷転動路22内に装填されている多数の転動体8は、負荷転動路22内を転動しつつ移動する。また、ナット6の回転とともに、潤滑剤供給体1も、ねじ軸4及び転動体8に対して相対的に回転、すなわち、相対移動する。
【0043】
このとき、複数の繊維状部材28は、その基端部が基部32を介して本体24の表面に取り付けられているとともに、その先端部が、ねじ軸側転動溝10を含むねじ軸4の外周面に接触している。
そのため、本体24の表面から滲出した潤滑油が、複数の繊維状部材28において、繊維状部材28の基端部から先端部へ移動し、繊維状部材28の先端部へ移動した潤滑油が、ねじ軸側転動溝10を含むねじ軸4の外周面に供給される。
【0044】
また、複数本の繊維状部材28は、それぞれ、他の繊維状部材28と離間しており、複数本の繊維状部材28間には、それぞれ、隙間が形成されている。
このため、この隙間に毛細管現象が発生することとなり、本体24の表面から滲出した潤滑油は、複数の繊維状部材28において、繊維状部材28の基端部から先端部へ円滑に移動し、ねじ軸側転動溝10を含むねじ軸4の外周面へ円滑に供給される。
【0045】
したがって、本実施形態のボールねじ2であれば、潤滑剤供給体1が、潤滑油を含有した本体24の表面に取り付けられるとともに、複数本の繊維状部材28を有するブラシ26を備えており、複数本の繊維状部材28は、それぞれ、本体24の表面から突出している。
このため、ボールねじ2の作動時等に、本体24の表面から滲出した潤滑油を、複数本の繊維状部材28を介して、ねじ軸側転動溝10を含むねじ軸4の外周面へ円滑に供給することが可能となるとともに、ねじ軸4や転動体8等、潤滑剤供給体1に対して相対運動する部品と、本体24の表面との接触を防止することが可能となる。
【0046】
その結果、ボールねじ2の作動時に、潤滑剤供給体1と相対運動する部品との摩擦抵抗を減少させることが可能となるため、潤滑剤供給体1の磨耗を抑制することが可能となり、ボールねじ2の作動トルクの増加及び磨耗粉の発生を抑制することが可能となる。
また、潤滑剤供給体1に対して相対運動する部品と、本体24の表面との接触を防止することが可能となるため、本体24を形成する材質として、強度や耐摩耗性の高い材質を採用することが可能となる。
【0047】
その結果、従来と比較して、本体24を形成する材質として、潤滑油の含有率が高い材質を採用することが可能となり、潤滑剤供給体1の使用期間を延長することが可能となるとともに、潤滑剤供給体1の交換作業等に要するコスト及び手間を、低減することが可能となる。
また、複数本の繊維状部材28は、本体24の表面から滲出した潤滑油を、ねじ軸側転動溝10を含むねじ軸4の外周面へ円滑に供給する際の、潤滑油の移動経路を構成しているため、潤滑油を含有可能な材質によって形成する必要は無く、高い強度を有する構成とする必要も無い。
【0048】
その結果、複数本の繊維状部材28を形成する材質として、耐摩耗性の高い材質を採用することが可能となり、潤滑剤供給体1の使用期間を延長することが可能となるとともに、磨耗粉の発生を抑制することが可能となる。また、複数本の繊維状部材28の構成を、断面積の小さい構成とすることが可能となり、複数本の繊維状部材28と、潤滑剤供給体1と相対運動する部品との摩擦抵抗を減少させることが可能となるため、ボールねじ2の作動トルクの増加を抑制することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態のボールねじ2であれば、複数本の繊維状部材28が、それぞれ、他の繊維状部材28と離間しており、複数本の繊維状部材28間には、それぞれ、隙間が形成されているため、この隙間に毛細管現象が発生することとなる。
このため、本体24の表面から滲出した潤滑油を、複数の繊維状部材28において、繊維状部材28の基端部から先端部へ円滑に移動させ、ねじ軸側転動溝10を含むねじ軸4の外周面へ円滑に供給することが可能となる。
【0050】
また、複数本の繊維状部材28間に、それぞれ、隙間が形成されているため、ねじ軸側転動溝10を含むねじ軸4の外周面に付着した塵芥等の異物を、複数本の繊維状部材28間に取り込むことが可能となる。
その結果、複数本の繊維状部材28によって潤滑油が濾過されることとなり、潤滑油の劣化を遅延させることが可能となるため、潤滑剤供給体1の使用期間を延長することが可能となる。
【0051】
その結果、ボールねじ2の作動性及び耐久性を向上させることが可能となる。
さらに、本実施形態のボールねじ2であれば、複数本の繊維状部材28の直径を、それぞれ、1μmから1mmの範囲内に設定しているため、繊維状部材28の強度が適切なものとなる。
その結果、発塵量及びボールねじ2の作動トルクの増加を抑制することが可能となるとともに、ボールねじ2の作動を妨げる要因を低減することが可能となる。
【0052】
また、本実施形態のボールねじ2であれば、複数本の繊維状部材28の直径を、それぞれ、1μmから1mmの範囲内のうち、10μmから0.5mmの範囲内に設定している。
このため、複数本の繊維状部材28の直径を、それぞれ、1μmから1mmの範囲内のうち、10μmから0.5mmの範囲外に設定した場合と比較して、更に、発塵量及びボールねじ2の作動トルクの増加を抑制することが可能となるとともに、ボールねじ2の作動を妨げる要因を低減することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態のボールねじ2であれば、複数本の繊維状部材28の長さが、先端部が、ねじ軸側転動溝10に沿って接触する形状となるように揃えられているため、本体24の表面から滲出した潤滑油を、ねじ軸側転動溝10へ確実に供給することが可能となる。
また、本実施形態のボールねじ2であれば、繊維構造体としてPTFEのみを用い、複数本の繊維状部材28を形成しているため、繊維構造体として、ステンレス、ポリエステル、ポリエチレン、ガラス等を用いて繊維状部材28を形成した場合と比較して、ボールねじ2の作動時に、潤滑剤供給体1と相対運動する部品との摩擦抵抗を減少させることが可能となる。
【0054】
また、本実施形態のボールねじ2であれば、ブラシ26が、本体24の表面に取り付けられる基部32と、複数本の繊維状部材28を有するとともに、基部32に取り付けられる立毛部30を備えている。
このため、繊維状部材28を取り付けた立毛部30を基部32に取り付けてブラシ26を形成し、このブラシ26を本体24の表面に取り付けて潤滑剤供給体1を形成することが可能となるため、複数本の繊維状部材28を、本体24の表面から突出した状態とすることが容易となり、潤滑剤供給体1の製造が容易となる。
【0055】
なお、本実施形態のボールねじ2では、複数本の繊維状部材28が、それぞれ、他の繊維状部材28と離間している構成としたが、これに限定されるものではなく、複数本の繊維状部材28うち少なくとも一本が、他の繊維状部材28と離間している構成であればよい。もっとも、本実施形態のボールねじ2のように、複数本の繊維状部材28が、それぞれ、他の繊維状部材28と離間している構成とすることが、複数本の繊維状部材28間に隙間が形成される箇所が多くなり、本体24の表面から滲出した潤滑油を、ねじ軸側転動溝10を含むねじ軸4の外周面へ円滑に供給することが可能となる。また、複数本の繊維状部材28によって潤滑油が濾過されることとなり、潤滑油の劣化を遅延させることが可能となるため、好適である。
【0056】
また、本実施形態のボールねじ2では、複数本の繊維状部材28が、それぞれ、他の繊維状部材28と離間している構成としたが、これに限定されるものではなく、複数本の繊維状部材28が、それぞれ、他の繊維状部材28と接触している構成としてもよい。この場合、例えば、複数本の繊維状部材28が、それぞれ、他の繊維状部材28と接触して、全体として帯状に形成されていてもよい。もっとも、本実施形態のボールねじ2のように、複数本の繊維状部材28が、それぞれ、他の繊維状部材28と離間している構成とすることが、複数本の繊維状部材28間に形成された隙間に毛細管現象が発生して、本体24の表面から滲出した潤滑油を、ねじ軸側転動溝10を含むねじ軸4の外周面へ円滑に供給することが可能となるため、好適である。
【0057】
さらに、本実施形態のボールねじ2では、ブラシ26が、複数本の繊維状部材28を有する立毛部30を備えている構成としたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、ブラシ26が、二本以上の繊維状部材28を接触させて形成した接触繊維状部材を有しており、この接触繊維状部材が、他の繊維状部材と離間している構成としてもよい。この場合、接触繊維状部材は、例えば、二本以上の繊維状部材28を撚り合わせて形成してもよい。
【0058】
また、本実施形態のボールねじ2では、複数本の繊維状部材28の直径を、それぞれ、1μmから1mmの範囲内に設定したが、これに限定されるものではなく、複数本の繊維状部材28の直径を、それぞれ、1μmから1mmの範囲外に設定してもよい。もっとも、本実施形態のボールねじ2のように、複数本の繊維状部材28の直径を、それぞれ、1μmから1mmの範囲内に設定することが、繊維状部材28の強度が適切なものとなるため、好適である。
【0059】
また、本実施形態のボールねじ2では、複数本の繊維状部材28の長さを、その先端部が、ねじ軸側転動溝10に沿って接触する長さとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、本体24の表面から滲出した潤滑油を、ねじ軸側転動溝10を含むねじ軸4の外周面へ供給することが可能であれば、例えば、複数本の繊維状部材28の長さを、その先端部が、ねじ軸4の外周面に接触するとともにねじ軸側転動溝10に近接する長さとしてもよい。また、例えば、図6に示すように、複数本の繊維状部材28の長さを、その先端部が、ねじ軸4の外周面に近接する長さとしてもよい。なお、図6は、本実施形態の変形例を示す図である。
【0060】
また、本実施形態のボールねじ2では、複数本の繊維状部材28を、それぞれ、直線状に形成したが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、繊維状部材28を、繊維構造体をリファイナー等によって機械的に磨砕して擦り潰し、これを膨潤させてフィブリル化(繊維が枝状に分岐すること)させて形成してもよく、繊維状部材28を、繊維構造体を網目構造として形成してもよい。ここで、網目構造とは、一本の繊維状部材28を網状の繊維構造体から形成する場合と、繊維構造体を形成している繊維相互が網状になっている場合とが考えられる。なお、目開(オープニング)や、開口率(オープニングエリア)、線径(糸の太さ)等は、任意に設定することが可能であり、金網の場合には、JIS規格によって、前記の各値が規定されている。
【0061】
なお、繊維構造体を網目構造として形成した繊維状部材28としては、例えば、株式会社セミテックのメッシュクロス、樹脂網、金網等がある。メッシュクロスの材質としては、例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等を用いる。
また、本実施形態のボールねじ2では、本体24を、溶解状態にある潤滑油と樹脂との混合物を固化させて形成した後に、基部32を本体24に埋設して潤滑剤供給体1を形成しているが、これに限定されるものではない。すなわち、本体24を、溶解状態にある潤滑油と樹脂との混合物を固化させる際に基部32をインサート成形することにより、潤滑剤供給体1を形成してもよい。
【0062】
また、本体24を形成する金型に複数の柱状突起を設けておくことにより、本体24が複数の孔を有する構成として、これらの孔内に繊維状部材28を埋設してもよい。また、本体24を形成する金型に複数の壁状突起を設けておくことにより、本体24が複数の溝を有する構成として、これらの溝内に複数本の繊維状部材28を固定した基部32を埋設してもよい。
【0063】
また、本実施形態のボールねじ2では、ブラシ26を、立毛部30と基部32から形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、上述したように、本体24を、複数の孔を有する構成として、これらの孔内に繊維状部材28を埋設することとにより潤滑剤供給体1を形成してもよい。すなわち、ブラシ26の構成を、基部32を備えていない構成としてもよい。
【0064】
また、本実施形態のボールねじ2では、基部32を、ゴムや金属等によって形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、紐状の繊維によって形成してもよい。この場合、紐状の繊維としては、例えば、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維等、成形時の過熱に耐えられる材質の繊維を用いることが好適である。
【0065】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
図7は、本実施形態のボールねじに備えられる潤滑剤供給体1の構成を示す図である。
図7中に示すように、本実施形態の潤滑剤供給体1の構成は、ブラシ26の構成を除き、上述した第一実施形態と同様の構成となっている。
すなわち、本実施形態の潤滑剤供給体1に備えられるブラシ26は、複数本の繊維状部材28が、それぞれ、二本以上の繊維状部材28によって構成される繊維状部材グループ34を複数形成している。
【0066】
各繊維状部材グループ34は、環状に形成されたブラシ26の周方向に沿って、互いに間隔を空けて配置されており、基部(図示せず)を介して本体24に固定されている。なお、本実施形態では、一例として、各繊維状部材グループ34の間隔を、等間隔とした場合について説明するが、各繊維状部材グループ34の間隔は、これに限定されるものではなく、任意の間隔に設定すればよい。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様である。
【0067】
次に、上記の構成を備えたボールねじの作用・効果等を説明する。なお、以下の説明では、潤滑剤供給体1以外の構成については、上述した第一実施形態と同様であるため、異なる部分の動作を中心に説明する。
ねじ軸に連結されているモータ等の回転動力源を駆動させ、ねじ軸に対して相対的にナットが回転し、転動体の転動を介してナットが軸方向に移動すると、負荷転動路内に装填されている多数の転動体は、負荷転動路内を転動しつつ移動し、潤滑剤供給体1も、ねじ軸及び転動体に対して相対的に回転、すなわち、相対移動する。
【0068】
このとき、本体24の表面から滲出した潤滑油が、複数の繊維状部材28において、繊維状部材28の基端部から先端部へ移動し、繊維状部材28の先端部へ移動した潤滑油が、ねじ軸側転動溝を含むねじ軸の外周面に供給される。
また、複数の繊維状部材28は、繊維状部材グループ34を複数形成しており、これらの繊維状部材グループ34は、間隔を空けて配置され、基部を介して本体24に固定されているため、各繊維状部材繊維状部材グループ34間には、繊維状部材28とねじ軸側転動溝を含むねじ軸の外周面が接触しない部分が存在する。
【0069】
このため、本実施形態では、上述した第一実施形態のように、複数の繊維状部材28が、本体24の内周側において、本体24の周方向全体に亘って基部32に固定される場合と比較して、複数の繊維状部材28とねじ軸との接触部分が減少している。
したがって、本実施形態のボールねじ2であれば、複数の繊維状部材28が、二本以上の繊維状部材28によって構成された繊維状部材グループ34を複数形成しており、これらの繊維状部材グループ34は、間隔を空けて配置され、基部を介して本体24に固定されている。
【0070】
このため、複数の繊維状部材28が、本体24の内周側において、本体24の周方向全体に亘って基部32に固定されている場合と比較して、複数の繊維状部材28とねじ軸との接触部分が減少している。
その結果、ボールねじの作動時に、ねじ軸、すなわち、複数の繊維状部材28と相対運動する部品との摩擦抵抗を減少させることが可能となるため、繊維状部材28の磨耗を抑制することが可能となる。
【0071】
その他の作用・効果は、上述した第一実施形態と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第一実施形態の潤滑剤供給体を備えたボールねじの断面図である。
【図2】本発明の第一実施形態のブラシの構成を説明する図である。
【図3】図1中に円IIIで示した部分及びその周辺の拡大図である。
【図4】基部を本体の表面に固定する前のブラシの状態を示す図である。
【図5】基部を本体の表面に固定した状態を示す図である。
【図6】本発明の第一実施形態の変形例を示す図である。
【図7】本発明の第二実施形態のボールねじに備えられる潤滑剤供給体の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
1 潤滑剤供給体
2 ボールねじ
4 ねじ軸
6 ナット
8 転動体
10 ねじ軸側転動溝
12 ナット側転動溝
14 シールキャップ
16 ボルト
18 スリーブ
20 ラビリンスシール
22 負荷転動路
24 本体
26 ブラシ
28 繊維状部材
30 立毛部
32 基部
34 繊維状部材グループ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油と樹脂とを混合して固化させて形成され、その表面から前記潤滑油が滲出する潤滑剤供給体であって、
前記表面から突出する複数本の繊維状部材を有するブラシを備えることを特徴とする潤滑剤供給体。
【請求項2】
前記複数本の繊維状部材のうち少なくとも一本は、他の繊維状部材と離間していることを特徴とする請求項1に記載した潤滑剤供給体。
【請求項3】
前記複数本の繊維状部材のうち少なくとも二本以上の繊維状部材同士を接触させて接触繊維状部材を形成し、
前記接触繊維状部材は、他の繊維状部材と離間していることを特徴とする請求項1または2に記載した潤滑剤供給体。
【請求項4】
前記ブラシは、前記表面に取り付けられる基部と、前記複数本の繊維状部材を有するとともに前記基部に取り付けられる立毛部と、を備えることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載した潤滑剤供給体。
【請求項5】
外周面に螺旋状のねじ軸側転動溝を有するねじ軸と、前記ねじ軸側転動溝に対向する螺旋状のナット側転動溝を内周面に有して前記ねじ軸の外周側に配置されるナットと、前記両転動溝間に形成された負荷転動路内に転動可能に装填された複数の転動体と、前記ねじ軸の外周側に配置される潤滑剤供給体と、を備えたボールねじであって、
前記潤滑剤供給体として、請求項1から4のうちいずれか1項に記載した潤滑剤供給体を備え、
前記潤滑剤供給体は、前記複数本の繊維状部材のうち少なくとも一本を前記ねじ軸側転動溝へ向けて配置されることを特徴とするボールねじ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−240783(P2008−240783A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78875(P2007−78875)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】