説明

潤滑剤劣化検出装置および検出装置付き軸受

【課題】 潤滑剤の出入りが容易で、かつ小型化の可能な検出部を有し、軸受内部などへの配置の自由度が高く、安定した正確な検出が可能な潤滑剤劣化検出装置、およびその潤滑剤劣化検出装置を備えた検出装置付き軸受を提供する。
【解決手段】 この潤滑剤劣化検出装置1は、先端が潤滑剤6の配置空間10を介して平行に並ぶ2本の光ファイバ4,5と、一方の光ファイバ4の基端に配置した発光素子2と、他方の光ファイバ5の基端に配置した受光素子3と、この受光素子3の出力から潤滑剤6に混入している異物の量を検出する判定手段7とを備える。2本の光ファイバ4,5の両方は、光ファイバ固定部材11で覆って相互に固定する。この光ファイバ固定部材11には、光ファイバ先端側の端面から基端側へ延びて、前記2本の光ファイバ4,5間の空間10を露出させる溝12を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、潤滑剤の混入物などによる劣化状態を検出する潤滑剤劣化検出装置、およびその潤滑剤劣化検出装置を備えた検出装置付き軸受、例えば安全性やメンテナンス性が要求される鉄道車両や発電プラント、風車設備等に使用される潤滑剤劣化検出装置付き軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑剤を封入した軸受では、軸受内部の潤滑剤(グリース、油など)が劣化すると転動体の潤滑不良が発生し、軸受寿命が短くなる。転動体の潤滑不良を、軸受の振動状態などから判断するのでは、寿命に達して動作異常が発生してから対処することになるため、潤滑状態の異常をより早く検出できない。そこで、軸受内の潤滑剤の状態を定期的あるいはリアルタイムに観測し、異常やメンテナンス期間の予測を可能にすることが望まれる。
【0003】
潤滑剤の劣化の主要な要因として、軸受の使用に伴って発生する摩耗粉が潤滑剤に混入することが挙げられる。
軸受の摩耗状態を検出するものとしては、軸受のシールの内側に電極やコイル等のセンサを配置し、摩耗粉の混入する潤滑剤の電気的特性を前記センサで検出するようにしたセンサ付き軸受が提案されている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−293776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のセンサ付き軸受は、潤滑剤の電気的特性を検出するものであるため、大量の摩耗粉が入って導通が起こるなどの状況にならなければ、特性変化として検出されず、混入物の検出が困難な場合がある。
【0005】
このような課題を解決するものとして、例えば図5のように、発光側および受光側の光ファイバ46,47の各一端を検出対象となる潤滑剤45が存在する検出部48に対向させ、発光側の光ファイバ46の他端に発光素子43を、受光側の光ファイバ47の他端に受光素子44をそれぞれ配置した光学式の構成を考えた。
図5の構成では、発光素子43から出射された光が発光側の光ファイバ46を経由して検出部48に存在する潤滑剤45を透過し、さらに受光側の光ファイバ47を経由して受光素子44で検出され、受光素子44で検出される透過光量から潤滑剤45に混入する異物の量が推定される。
【0006】
しかし、図5の構成の場合、潤滑剤45が一定厚さに保たれるような構造の検出部48が必要であり、例えば軸受内部に封入された潤滑剤の劣化検出に用いるような場合、軸受内部での配置の自由度が低くなる。
【0007】
そこで、図6のように、検出部となる潤滑剤45の配置空間50を介して先端が並ぶ2本の光ファイバ46,47を設け、これら光ファイバ 46,47の先端を斜めにカットしてその斜めカット面を反射コーティングした反射面46a,47aとし、これら斜めの反射面46a,47aを、一方の光ファイバ46を通る光が先端の反射面46aで他方の光ファイバ47の反射面47aに向けて反射してこの反射面47aから他方の光ファイバ47内に反射する方向とする構成のものを考えた。この場合、一方の光ファイバ46の基端に発光素子43を、他方の光ファイバ47の受光素子44をそれぞれ配置し、受光素子44の出力から潤滑剤45に混入している異物の量を検出する。また、2本の光ファイバ46,47は、その先端の反射面46a,47aの最下位置まで樹脂51でモールドして固定状態とすることで、検出部となる潤滑剤45の配置空間50のギャップが変動しないようにし、安定した検出ができるようにする。
【0008】
このように構成した場合、反射部材を別途付加するといった複雑な構造とせずに、検出部となる潤滑剤45の配置空間50を小型化でき、構成部品も減らすことができる。これにより、軸受内部などへの設置において、配置の自由度を高めることができる。
【0009】
しかし、この構成の場合、検出部のギャップが小さくなることにより、以下のように検出部へ潤滑剤45が入り込み難くなり、正しい劣化検出が難しくなる恐れがある。すなわち、潤滑剤45の配置空間50において、両光ファイバ46,47の先端の反射面46a,47aの最下位置まで潤滑剤45が入り切らないで一部に隙間52が生じることがある。その場合、反射面46aで反射される光の一部は潤滑剤45を透過しないで他方の光ファイバ47に入射されてしまうことになり、正しく潤滑剤45の劣化検出を行えない。また、検出部のギャッップが小さくなることにより、検出部に一度入った潤滑剤45が入れ替わり難く、この点でも安定した劣化検出を行えない。
【0010】
この発明の目的は、潤滑剤の出入りが容易で、かつ小型化の可能な検出部を有し、軸受内部などへの配置の自由度が高く、安定した正確な検出が可能な潤滑剤劣化検出装置、およびその潤滑剤劣化検出装置を備えた検出装置付き軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の潤滑剤劣化検出装置は、先端が潤滑剤の配置空間を介して平行に並ぶ2本の光ファイバを設け、これら2本の光ファイバは、それぞれ先端を斜めにカットしてその斜めカット面を反射面とし、これら斜めの反射面は、一方の光ファイバを通る光が先端の反射面で他方の光ファイバの反射面に向けて反射してこの反射面から他方の光ファイバ内に反射する方向とし、前記一方の光ファイバの基端に発光素子を、他方の光ファイバの基端に受光素子をそれぞれ配置し、前記受光素子の出力から潤滑剤に混入している異物の量を検出する判定手段を設け、前記2本の光ファイバの両方を覆って相互に固定する光ファイバ固定部材を設け、この光ファイバ固定部材に、光ファイバ先端側の端面から基端側へ延びて、前記2本の光ファイバ間の空間を露出させる溝を設けたものである。
このように、投光側光ファイバおよび受光側光ファイバを、それらの先端が潤滑剤の配置空間を介して並ぶように設けると共に、それぞれの先端を斜めにカットしてその斜めカット面を反射面としたため、反射部材を別途付加するといった複雑な構造とせずに、検出部となる潤滑剤の配置空間を小型化でき、構成部品も減らすことができる。また、構成部品を減らすことによって、潤滑剤劣化検出装置の光学系をコンパクトで故障し難い構成とすることができる。
検出部である2本の光ファイバの先端間の潤滑剤の配置空間のギャップが変動すると、検出対象となる潤滑剤の厚さが変動する。潤滑剤を透過する透過光の強度は潤滑剤の厚さにも左右されるので、潤滑剤の厚さ変動は安定した検出の妨げになる。この潤滑剤劣化検出装置では、2本の光ファイバの両方を光ファイバ固定部材で覆って互いに固定状態としているので、検出部のギャップの変動がなく、安定した劣化検出が可能となる。
上記したように、2本の光ファイバ先端を対向配置して潤滑剤の検出部を構成すると、検出部のギャップが小さくなり、検出部へ潤滑剤が入り込み難くなるおそれがある。しかし、この潤滑剤劣化検出装置では、前記光ファイバ固定部材に、光ファイバ先端側の端面から基端側へ延びて、2本の光ファイバ間の潤滑剤の配置空間である検出部を露出させる溝を設けているので、検出部に潤滑剤が入り込み易く、投光側光ファイバの反射面で反射された光の全てを配置空間の潤滑剤に透過させることができ、正確な劣化検出を行うことができる。また、潤滑剤の配置空間への潤滑剤の出入りが容易になり、安定した劣化検出が可能となる。
これにより、検出部への潤滑剤の出入りが容易となり、かつ検出部を小型化でき、軸受内部などへの配置の自由度が高くなり、安定した正確な検出が可能である。
【0012】
この発明において、前記光ファイバ固定部材は、先端面が2本の光ファイバの先端よりも引っ込んだものであっても良い。この構成の場合、光ファイバ固定部材の溝をあまり深くしなくても、検出部である潤滑剤の配置空間を十分に露出させることができ、検出部へ潤滑剤を容易に入り込ませることができる。
【0013】
この発明において、前記光ファイバ固定部材は、先端面が2本の光ファイバの先端よりも突出したものであっても良い。この構成の場合、潤滑剤劣化検出装置を軸受の内部などに設置するときに、検出部が軸受の構成部材と干渉するのを防止することができる。
【0014】
この発明の検出装置付き軸受は、この発明の上記いずれかの構成の潤滑剤劣化検出装置を軸受に搭載したものである。
この構成によると、軸受内部に封入された潤滑剤の劣化を、リアルタイムで正確に検出することができる。これにより、軸受に動作異常が発生する前に潤滑剤の交換の必要性を判断でき、軸受の潤滑不良による破損を防ぐことができる。また、潤滑剤交換の必要性を潤滑剤劣化検出装置の潤滑剤によって判断できるため、使用期限前に廃棄される潤滑剤の量が減少する。
【発明の効果】
【0015】
この発明の潤滑剤劣化検出装置は、先端が潤滑剤の配置空間を介して平行に並ぶ2本の光ファイバを設け、これら2本の光ファイバは、それぞれ先端を斜めにカットしてその斜めカット面を反射面とし、これら斜めの反射面は、一方の光ファイバを通る光が先端の反射面で他方の光ファイバの反射面に向けて反射してこの反射面から他方の光ファイバ内に反射する方向とし、前記一方の光ファイバの基端に発光素子を、他方の光ファイバの基端に受光素子をそれぞれ配置し、前記受光素子の出力から潤滑剤に混入している異物の量を検出する判定手段を設け、前記2本の光ファイバの両方を覆って相互に固定する光ファイバ固定部材を設け、この光ファイバ固定部材に、光ファイバ先端側の端面から基端側へ延びて、前記2本の光ファイバ間の空間を露出させる溝を設けたため、検出部の小型化が可能で、かつ検出部への潤滑剤の出入りが容易で、軸受内部などへの配置の自由度が高く、安定した正確な潤滑剤劣化検出が可能となる。
この発明の検出装置付き軸受は、この発明の潤滑剤劣化検出装置を軸受に搭載したものであるため、軸受内部に封入された潤滑剤の劣化を、リアルタイムで正確に検出することができる。その結果、軸受に動作異常が発生する前に潤滑剤の交換の必要性を判断でき、軸受の潤滑不良による破損を防ぐことができる。また、潤滑剤交換の必要性を潤滑剤劣化検出装置の潤滑剤によって判断できるため、使用期限前に廃棄される潤滑剤の量が減少する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明の一実施形態を図1および図2と共に説明する。図1は、この実施形態の潤滑剤劣化検出装置の概略構成図を示す。この潤滑剤劣化検出装置1は、先端が潤滑剤6の配置空間10を介して並ぶ2本の光ファイバ4,5と、一方の光ファイバ4の基端に配置した発光素子2と、他方の光ファイバ5の基端に配置した受光素子3と、この受光素子3の出力から潤滑剤6に混入している異物の量を検出する判定手段7とを備える。前記潤滑剤6の配置空間10は、この潤滑剤劣化検出装置1における潤滑剤6の検出部となるものである。
前記2本の光ファイバ4,5は平行に揃えて配置され、それらの先端は、それぞれ斜めにカットした斜めカット面とされている。これらの斜めカット面は、蒸着膜、またはメッキ、または樹脂封止により反射コーティングした反射面4a,5aとされている。これら斜めの反射面4a,5aは、一方の光ファイバ4を通る光が先端の反射面4aで他方の光ファイバ5の反射面5aに向けて反射して、この反射面5aから他方の光ファイバ5内に反射する方向に向けられている。具体的には、一方の光ファイバ4は、発光素子2の発光面と対向する基端の端面に発光素子2から出射された光を入射させ、先端の反射面4aで反射させることで光路を90°曲げて、潤滑剤6の配置空間10に投光する投光側光ファイバとなるものである。また、他方の光ファイバ5は、潤滑剤6の配置空間10に対向する先端の面から潤滑剤6を透過した光を入射させ、先端の反射面5aで光ファイバ5内に反射させることで光路をさらに90°曲げて、受光素子3の受光面と対向する基端の端面から受光素子3に入射させる受光側光ファイバとなるものである。なお、両光ファイバ4,5の先端の互いに平行に対面する部分は、光の透過が可能な構成としておく。
このように投光側光ファイバ4および受光側光ファイバ5を配置することにより、発光素子2から出射された光が投光側光ファイバ4を介して潤滑剤6を透過し、その透過光が受光側光ファイバ5を介して受光素子3に入射される。
【0017】
前記2本の光ファイバ4,5の両方は、光ファイバ固定部材11で覆われて相互に固定状態とされている。具体的には、光ファイバ固定部材11は、先端面が2本の光ファイバ4,5の先端よりも引っ込んだものとされる。光ファイバ固定部材11としては、例えばモールド樹脂が用いられる。この光ファイバ固定部材11には、光ファイバ先端側の端面中央から基端側へ延びて、潤滑剤6の配置空間10を露出させる溝12が設けられている。
【0018】
前記発光素子2としては、LD、LED、EL、有機ELなどを用いることができ、発光回路8によって駆動される。前記受光素子3としては、フォトダイオード、フォトトランジスタなどを用いることができ、その出力を受ける受光回路9によって受光素子3の受光量が検出される。
【0019】
潤滑剤6が新品のときには透明に近い状態にあり、投光側光ファイバ4から投光されて潤滑剤6を透過する透過光の強度は高い。ところが、潤滑剤6に混入する異物の量が多くなると、透過光の強度が徐々に低下する。そこで、判定手段7は、透過光の強度に対応する受光素子3の出力から、潤滑剤6に混入している異物の量を検出する。潤滑剤6に混入する異物の量の増加は潤滑剤6の劣化の進行を意味するので、検出された異物の量から潤滑剤6の劣化具合を推定することができる。
【0020】
このように、この潤滑剤劣化検出装置1では、投光側光ファイバ4および受光側光ファイバ5を、それらの先端が潤滑剤6の配置空間10を介して並ぶように設けると共に、それぞれの先端を斜めにカットしてその斜めカット面を反射コーティングした反射面4a,5aとしているので、反射部材を別途付加するといった複雑な構造とせずに、検出部となる潤滑剤6の配置空間10を小型化でき、構成部品も減らすことができる。また、構成部品を減らすことによって、光学系をコンパクトで故障し難い構成とすることができる。これにより、例えば検出対象の潤滑剤6が封入された軸受の内部などへの設置において、配置の自由度を高めることができる。
【0021】
潤滑剤6の検出部10のギャップ、つまり2本の光ファイバ4,5の先端間の潤滑剤6の配置空間のギャップが変動すると、検出対象となる潤滑剤6の厚さが変動する。潤滑剤6を透過する透過光の強度は潤滑剤6の厚さにも左右されるので、潤滑剤6の厚さ変動は安定した検出の妨げになる。この潤滑剤劣化検出装置1では、2本の光ファイバ4,5の両方を光ファイバ固定部材11で覆って互いに固定状態としているので、検出部10のギャップの変動がなく、安定した劣化検出が可能となる。
【0022】
上記したように、2本の光ファイバ4,5の先端を対向配置して潤滑剤6の検出部10を構成すると、検出部10のギャップが小さくなり、検出部10へ潤滑剤6が入り込み難くなる恐れがある。しかし、この潤滑剤劣化検出装置1では、前記光ファイバ固定部材11に、光ファイバ先端側の端面から基端側へ延びて、2本の光ファイバ4,5間の潤滑剤6の配置空間(検出部)10を露出させる溝12を設けているので、検出部である潤滑剤6の配置空間10に潤滑剤6が入り込み易く、投光側光ファイバ4の反射面4aで反射された光の全てを配置空間10の潤滑剤6に透過させることができ、正確な劣化検出を行うことができる。また、潤滑剤6の配置空間10への潤滑剤6の出入りが容易になり、安定した劣化検出が可能となる。とくに、この実施形態では、前記光ファイバ固定部材11を、その先端面が2本の光ファイバ4,5の先端よりも引っ込んだものとしているので、光ファイバ固定部材11の溝12をあまり深くしなくても、検出部である潤滑剤6の配置空間10を十分に露出させることができ、検出部10へ潤滑剤6を容易に入り込ませることができる。
【0023】
図3は、この発明の他の実施形態の潤滑剤劣化検出装置における光学系の概略構成を示す正面図である。光学系以外の部分の構成は図1の実施形態の場合と同様であり、ここでは説明を省略する。この実施形態では、図1の実施形態の潤滑剤劣化検出装置1において、光ファイバ固定部材11を、先端面が2本の光ファイバ4,5の先端よりも突出したものとしている。
このように、光ファイバ固定部材11を、先端面が2本の光ファイバ4,5の先端よりも突出したものとすることにより、潤滑剤劣化検出装置1を軸受の内部などに設置する場合に、検出部10が軸受の構成部材と干渉するのを防止することができる。
【0024】
図4は、上記した潤滑剤劣化検出装置1を搭載した検出装置付き軸受を、鉄道車両用軸受ユニットに用いた一例の断面図である。この場合の鉄道車両用軸受ユニットは、検出装置付き軸受21とその内輪24の両側に各々接して設けられた付属部品である油切り22および後ろ蓋23とで構成される。軸受21は、ころ軸受、詳しくは複列の円すいころ軸受からなり、各列のころ26,26に対して設けた分割型の内輪24,24と、一体型の外輪25と、前記ころ26,26と、保持器27とを備える。
後ろ蓋23は、車軸20に軸受21よりも中央側で取付けられて外周にオイルシール28を摺接させたものである。油切り22は、車軸20に取付けられて外周にオイルシール29を摺接させたものである。これら軸受21の両端部に配置される両オイルシール28,29により軸受21の内部に潤滑剤が封止され、かつ防塵・耐水性が確保される。
【0025】
軸受21の外輪25の両端部には、それぞれシールケース30,31が取付けられ、これらシールケース30,31に前記オイルシール28,29が設けられる。シールケース31は、軸方向に複数の段部が階段状に並ぶ断面形状とした環状の部材であって、その一端部を軸受外輪25の内径面に圧入嵌合させることで、外輪25に取付けられる。このシールケース31の中間段部の内径面にオイルシール29が取付けられる。軸受21の内外輪24,25間の環状空間の他端部についても、上記した一端部と同様のシール構造とされる。
【0026】
この検出装置付き軸受21では、一方のシールケース31の内側に潤滑剤劣化検出装置1の電気回路部13および2本の光ファイバ4,5が共に設けられ、光ファイバ4,5の先端の検出部10は、観測ポイントである外輪25の内径面における転走面の脇に配置されている。潤滑剤劣化検出装置1の検出部10は、上記したように小型化され配置の自由度が高いので、このような位置への配置を容易に行うことができる。これにより、軸受21の潤滑に寄与する転走面の脇の潤滑剤の劣化検出が可能である。
【0027】
例えば軸受21の外輪25等は、その製造の工程が煩雑であり、強度的にも厳しい要求があるため、上記潤滑剤劣化検出装置1を搭載する場合、工程の増加等のうえで好ましくない場合があるが、簡易な部品であるシールケース31に潤滑剤劣化検出装置1を配置する場合、その取付工程が容易である。また、シールケース31に潤滑剤劣化検出装置1を配置する場合、その他の軸受構成部品については、潤滑剤劣化検出装置1を搭載しない一般の軸受と軸受部品の共通化が図れ、製造工程を同じにできて生産性に優れる。
【0028】
上記潤滑剤劣化検出装置1を搭載したこの検出装置付き軸受21では、軸受内部に封入された潤滑剤の劣化を、リアルタイムで正確に検出することができる。その結果、軸受21に動作異常が発生する前に潤滑剤の交換の必要性を判断でき、軸受21の潤滑不良による破損を防ぐことができる。また、潤滑剤交換の必要性を潤滑剤劣化検出装置1の出力によって判断できるため、使用期限前に廃棄される潤滑剤の量が減少する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の一実施形態に係る潤滑剤劣化検出装置の概略構成図である。
【図2】同潤滑剤劣化検出装置における光学系の概略構成を示す正面図である。
【図3】この発明の他の実施形態に係る潤滑剤劣化検出装置における光学系の概略構成を示す正面図である。
【図4】上記潤滑剤劣化検出装置を搭載した検出装置付き軸受の一例を示す断面図である。
【図5】潤滑剤劣化検出装置の提案例の概略構成図である。
【図6】潤滑剤劣化検出装置の他の提案例の光学系の概略構成を示す正面図である。
【符号の説明】
【0030】
1…潤滑剤劣化検出装置
2…発光素子
3…受光素子
4…投光側光ファイバ
4a…反射面
5…受光側光ファイバ
5a…反射面
6…潤滑剤
7…判定手段
10…潤滑剤の配置空間(検出部)
11…光ファイバ固定部材
12…溝
21…検出装置付き軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が潤滑剤の配置空間を介して平行に並ぶ2本の光ファイバを設け、これら2本の光ファイバは、それぞれ先端を斜めにカットしてその斜めカット面を反射面とし、これら斜めの反射面は、一方の光ファイバを通る光が先端の反射面で他方の光ファイバの反射面に向けて反射してこの反射面から他方の光ファイバ内に反射する方向とし、前記一方の光ファイバの基端に発光素子を、他方の光ファイバの基端に受光素子をそれぞれ配置し、前記受光素子の出力から潤滑剤に混入している異物の量を検出する判定手段を設け、前記2本の光ファイバの両方を覆って相互に固定する光ファイバ固定部材を設け、この光ファイバ固定部材に、光ファイバ先端側の端面から基端側へ延びて、前記2本の光ファイバ間の空間を露出させる溝を設けた潤滑剤劣化検出装置。
【請求項2】
請求項1において、前記光ファイバ固定部材は、先端面が2本の光ファイバの先端よりも引っ込んだものである潤滑剤劣化検出装置。
【請求項3】
請求項1において、前記光ファイバ固定部材は、先端面が2本の光ファイバの先端よりも突出したものである潤滑剤劣化検出装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の潤滑剤劣化検出装置を軸受に搭載した検出装置付き軸受。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−25646(P2008−25646A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196424(P2006−196424)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】