説明

潤滑剤組成物

【課題】 固体潤滑剤などの沈降・分離を防止もしくは軽減することができ、取り扱いやすく経済性に優れ、乾燥後水になじみにくく、水により流されにくく、錆びの防止にも有効な被膜を形成することができ、耐樹脂性、塗布性、乾燥性に優れた潤滑剤組成物;該潤滑剤組成物により形成された潤滑性被膜;及び、該潤滑性被膜を有する摺動部材を提供すること。
【解決手段】 潤滑油、ワックス、固体潤滑剤、アニオン系界面活性剤及び水性溶剤を含む潤滑剤組成物;該潤滑剤組成物により形成された潤滑性被膜;及び、該潤滑性被膜を有する摺動部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤組成物に関し、さらに詳細には、適用箇所に塗布し、希釈溶剤を揮発させた後に、低摩擦係数でかつ寿命の長い潤滑性被膜が形成される潤滑剤組成物に関する。本発明はさらに詳しくは、例えば、オーディオ・ビデオ機器、情報機器などの樹脂部品同士、樹脂部品と金属部品あるいは金属部品同士の摺動部に使用される潤滑剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、潤滑性被膜を適用するには、不燃性のフッ素系溶剤をキャリアにして、目的の部品の摺動部に塗布し、乾燥させて半固体状の潤滑性被膜を形成させることがなされている。この場合、フッ素系の溶剤を使用しているため、使用できる潤滑油が限定され、多くの場合、フッ素油、例えばパーフルオロポリエーテルを使用していた。しかし、フッ素油は高価であるため、より廉価なものが望まれている。
また、使用する潤滑剤組成物には、しばしば固体潤滑剤が添加され、該固体潤滑剤として例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が使用されてきている。しかし、PTFEの比重は、2.2程度であり、溶剤の比重より大きく、容易に沈降してしまうという欠点があった。
本発明者らは先に、潤滑剤組成物に使用する潤滑油となじみのよいワックスを添加し、固体潤滑剤をワックスで被覆することにより、沈降を効果的に抑制できることを見出した(特許文献1)。これにより固体潤滑剤の沈降という問題は低減したが、使用する溶剤がフッ素系の溶剤であるため、使用できる潤滑油が限定されるという問題、及びフッ素系溶剤及びフッ素油はいずれも高価であるという問題は依然として解決されていない。
この問題を解決するため本発明者らはさらに、潤滑油、ワックス、固体潤滑剤、界面活性剤及び水を含む潤滑剤組成物を開発した(特許文献2)。
一方、家電製品には、ヒンジ、ダンピング、樹脂歯車、開閉トレーなどの部品に潤滑剤が使用されている。家電製品には、耐衝撃性、寸法精度の面からPC樹脂やABS樹脂及びPC/ABSアロイ等が多く使用されており、使用する潤滑剤にはこれらの樹脂を冒さないことが要求される。
【0003】
【特許文献1】特開2002−20775
【特許文献2】特開2004−43537
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、高価なフッ素系溶剤及びフッ素油を使用しなくても、固体潤滑剤などの沈降・分離を防止もしくは軽減することができ、取り扱いやすく経済性に優れた潤滑剤組成物を提供することである。
本発明の目的はまた、乾燥後水になじみにくく、水により流されにくく、錆びの防止にも有効な被膜を形成することができる潤滑剤組成物を提供することである。
本発明の目的はさらに、特に樹脂部品の潤滑に優れた潤滑剤組成物であって、耐樹脂性、塗布性、乾燥性に優れた潤滑剤組成物を提供することである。
本発明の他の目的は、上記潤滑剤組成物により形成された潤滑性被膜を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、上記潤滑性被膜を有する摺動部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、潤滑油、ワックス、固体潤滑剤を含む潤滑剤組成物のキャリヤとして、水又は水と水溶性有機溶剤の混合物を使用し、さらにアニオン系界面活性剤を添加することによって、優れた潤滑剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下に示す潤滑剤組成物、この潤滑剤組成物により形成された潤滑性被膜、及びこの潤滑性被膜を有する摺動部材を提供するものである。
1.潤滑油、ワックス、固体潤滑剤、アニオン系界面活性剤及び水性溶剤を含む潤滑剤組成物。
2.潤滑油、ワックス、固体潤滑剤及びアニオン系界面活性剤の総和が1.0〜50.0質量%で、残分が水性溶剤である請求項1記載の潤滑剤組成物。
3.潤滑油が、ポリアルファオレフィン油、脂肪酸エステル油、炭酸エステル油、アルキルジフェニルエーテル油、アルキルベンゼン油、シリコーン油からなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1又は2記載の潤滑剤組成物。
4.ワックスが、モンタンワックス及びその誘導体、石油系ワックス及びポリエチレン系ワックスからなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項記載の潤滑剤組成物。
5.固体潤滑剤が、フッ素系ポリマー粉末及びフッ素含有コポリマー粉末からなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか1項記載の潤滑剤組成物。
6.固体潤滑剤が、ポリテトラフルオロエチレン粉末である請求項5記載の潤滑剤組成物。
7.水性溶剤が、水又は50質量%以上の水と50質量%以下の水溶性有機溶剤の混合物である、請求項1〜6のいずれか1項記載の潤滑剤組成物。
8.アニオン系界面活性剤が、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、及びリン酸エステル塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜7のいずれか1項記載の潤滑剤組成物。
9.請求項1〜8のいずれか1項記載の潤滑剤組成物により形成された潤滑性被膜。
10.請求項9記載の潤滑性被膜を有する摺動部材。
【発明の効果】
【0006】
本発明の潤滑剤組成物は、高価なフッ素系溶剤及びフッ素油を使用することなく、廉価な潤滑油及び水を使用して従来品以上の潤滑性能を発揮する潤滑性被膜を形成することができる。本発明の潤滑剤組成物は、保管中、固体潤滑剤などの沈降・分離が少ないため取り扱いやすく、潤滑性能、耐樹脂性、塗布性、乾燥性に優れており、特に樹脂部品同士の潤滑に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の潤滑剤組成物に使用する潤滑油は、特に制限されず、例えば、エステル系、鉱物油系、合成炭化水素系、フッ素系、シリコン系などが挙げられる。その中でも、ポリアルファオレフィン油、脂肪酸エステル油(例えば、多塩基酸を含む脂肪酸と脂肪族及び多価アルコールとのエステル油)、炭酸エステル油、アルキルジフェニルエーテル油、アルキルベンゼン油、シリコーン油からなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。耐樹脂性の観点からは、ポリアルファオレフィン油、炭酸エステル油が好ましく、価格の観点からはポリアルファオレフィン油が好ましい
潤滑油の具体例としては、ポリアルファオレフィン油の他、各種長鎖脂肪族アルコール炭酸エステル、例えばジアルキル炭酸エステル(アルキル基の炭素原子数は好ましくは8〜24)等が挙げられる。
本発明の潤滑剤組成物中の潤滑油の含有量は、好ましくは0.1〜50.0質量%、さらに好ましくは0.5〜35.0質量%、最も好ましくは1.0〜20.0質量%である。
【0008】
本発明の潤滑剤組成物には、使用する潤滑油と適度になじみの良いワックスを用いることが必要である。ワックスは、その融点付近の温度において、潤滑油中で溶解もしくは均一分散するもので、冷却後には均一に析出するものが適当である。
ワックスは、使用する潤滑油との関連で選定されるが、石油系ワックス、融点の異なる各種パラフィンワックス、各種マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス及びその誘導体、ポリエチレン系ワックス等のワックスが挙げられる。これらのうちから単独で、あるいは2種以上の組合せで使用することができる。使用する潤滑油としてポリアルファオレフィン油、炭酸エステル油が好ましいことから、ワックスも、エステル系のモンタンワックス及びその誘導体、石油系ワックス並びにポリエチレン系ワックスからなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。エステル変性あるいは部分ケン化された合成ワックス、例えばエステルモンタンワックス、部分ケン化モンタンワックス、部分ケン化ポリエチレンワックスなども好ましい。
本発明の潤滑剤組成物中のワックスの含有量は、好ましくは0.05〜20.0質量%、さらに好ましくは0.1〜10.0質量%、最も好ましくは1.0〜5.0質量%である。
潤滑油とワックスの質量比率は、固体潤滑剤の使用量及び使用される摺動部品の種類、潤滑条件等によっても変わるが、一般的にワックス:潤滑油で、5:95〜50:50の範囲が適当である。
【0009】
本発明の潤滑剤組成物に使用する固体潤滑剤としては、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、黒鉛、フッ素系ポリマー、フッ素含有コポリマーなど、各種のものが使用できる。これらの中でも、低摩擦が要求されることから従来品にも用いられているポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をはじめとするフッ素系ポリマー粉末及びフッ素含有コポリマー粉末が適当である。具体的にPTFE微粉末、ポリフッ化ビニリデン微粉末などがある。これらは、単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。本発明では、PTFEが最も好ましく使用される。また、使用する固体潤滑剤の平均粒径は、0.1〜10μmが適当である。
潤滑剤組成物への固体潤滑剤の添加量は、適用される潤滑箇所により決定される。一方、本発明では、ワックスを添加して固体潤滑剤の沈降を防止し又は低減する。この目的のためには、潤滑剤組成物中の固体成分(固体潤滑剤及びワックスの混合物)の加重平均比重を、液体成分(溶剤、潤滑油及び界面活性剤)の加重平均比重に近づけることが望ましく、例えば、比重差が±10%以内とすることが好ましい。
潤滑剤組成物中の固体潤滑剤の含有量は、一般に0.1〜20質量%が適当であり、0.2〜10.0質量%が好ましく、0.5〜5.0質量%がより好ましい。
【0010】
本発明の潤滑剤組成物に使用する界面活性剤は、アニオン系界面活性剤である。例えば、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等が挙げられる。カルボン酸塩としては、石けん(例えば、オレイン酸カリウム、ひまし油カリウム)、N−アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド等が、スルホン酸塩としては、アルキルスルホン酸塩(例えば、ドデカンスルホン酸ナトリウム)、ヒドロキシアルキルスルホン酸塩(例えば、ヒドロキシアルカン(C8〜C24)スルホン酸ナトリウム)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩−ホルマリン縮合物(例えば、β−ナフタレンスルホン酸塩−ホルマリン縮合物のナトリウム塩)、スルホコハク酸塩(例えば、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩等が、硫酸エステル塩としては、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩等が、リン酸エステル塩としては、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルリン酸塩等が挙げられる。
潤滑剤組成物中のアニオン系界面活性剤の含有量は、一般に0.5〜15.0質量%が適当であり、1.0〜10.0質量%が好ましく、2.0〜7.0質量%がより好ましい。
【0011】
本発明の潤滑剤組成物において、実質の潤滑に寄与する、水性溶剤以外の成分、すなわち、不揮発成分である、潤滑油、ワックス、固体潤滑剤及びアニオン系界面活性剤の総和は、好ましくは1.0〜50.0質量%、さらに好ましくは3.0〜40.0質量%、最も好ましくは5.0〜30.0質量%である。この範囲にすると十分な被膜が形成でき、かつ適度な溶液粘度が得られるので好ましい。
【0012】
本発明の潤滑剤組成物に使用する水性溶剤は水のみであっても良いし、水と水溶性有機溶剤の混合物であっても良い。作業性、経済性、環境への負荷の観点から、水と水溶性有機溶剤からなる溶剤中の水溶性有機溶剤の比率は、水100質量部に対して、好ましくは0〜50質量部、さらに好ましくは1〜20質量部、最も好ましくは2〜10質量部である。
水溶性有機溶剤としては、アルコール系(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノール)、グリコール系(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ)等が挙げられる。特に好ましいものは、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等である。
水溶性有機溶剤を含有させることにより、乾燥性、濡れ性等の性能を付与することができる。
潤滑剤組成物中の溶剤の含有量は、一般に50.0〜99.0質量%が適当であり、60.0〜97.0質量%が好ましく、70.0〜95.0質量%がより好ましい。
本発明の潤滑剤組成物には、通常、潤滑剤に使用される酸化防止剤、極圧剤、防錆剤等の各種添加剤を適宜添加することができる。これらの添加剤の含有量は、通常0.01〜5.0質量%である。
【0013】
本発明の潤滑剤組成物は通常の方法により製造できる。例えば、潤滑油、ワックス及び固体潤滑剤を混練し、次いでこの混練物にアニオン系界面活性剤を添加したものを溶剤に分散させる方法が挙げられる。
その方法は具体的に以下の工程を含む。
(イ)所定量の潤滑油、ワックス及び固体潤滑剤を混合し、ワックスの融点よりも5〜15℃程度高い温度まで加熱し、その後、放冷する。(ロ)冷却後、混練機、例えば3段ロールミル、コロイドミルなどを使用して均一になるまで混練する。(ハ)上記で得られた混練物にアニオン系界面活性剤を添加し、十分に混合した後、所定量の溶剤中に分散させる。(ニ)これを容器に取り、密閉する。
その他の方法として、潤滑油、ワックス、固体潤滑剤、アニオン系界面活性剤及び溶剤を一緒にボールミルなどを用いて分散させることもできる。
これらの方法で使用される各成分の量は、上記に説明したとおりものである。
【0014】
本発明の潤滑剤組成物は適用部材において、溶剤を揮発させた後に、潤滑油、ワックス、固体潤滑剤及びアニオン系界面活性剤を含有する潤滑性被膜を形成する。
本発明の潤滑剤組成物が適用される部材は、潤滑が必要とされるものであれば特に限定されるものではない。例えば、精密機器のスライド摺動部、ギア、軸受、電気接点などの潤滑・消音などが要求される箇所に適用される。本発明の潤滑剤組成物は、特に、オーディオ・ビデオ機器、情報機器などの樹脂部品同士、樹脂部品と金属部品あるいは金属部品同士の摺動部に好ましく適用され、とりわけ樹脂部品同士の摺動部に適用されるのが特に好ましい。このような樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、AS樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、GF強化ポリエチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、液晶性ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミノビスマレイミド、ポリビスアミドトリアゾール、ABS/PCポリマーアロイ等が挙げられ、特に好ましいものはABS、PC、POM、ABS/PCポリマーアロイ等である。
【0015】
本発明はさらに、潤滑性被膜を有する摺動部材に向けられている。
本発明の潤滑剤組成物は、ハケやブラシを用いて、あるいはスプレーにより、又は該潤滑剤組成物中への浸漬塗布によって、摺動部材などに適用することができる。その適用量は、溶剤が揮発した後の乾燥被膜の厚さとして好ましくは0.5〜300μm、さらに好ましくは10〜200μmが適当である。
【実施例】
【0016】
以下本発明を実施例及び比較例により詳しく説明する。
【0017】
実施例1〜5及び比較例1〜4
下記の表1に記載した組成(単位:質量%)により、各種潤滑剤組成物を製造した。
製造方法
所定量の潤滑油、ワックス及び固体潤滑剤を混合し、ワックスの融点より10℃高い温度まで加熱し、その後放冷した。冷却後、3段ロールミルで2パスした。得られた混練物に界面活性剤を添加し、十分に混合した後、所定量の溶剤中に分散させた。これを容器に取り、密閉した。
【0018】
上記のように製造した潤滑剤組成物の各種の物性を、下記の評価方法によって評価した。
耐樹脂性
1/4楕円臨界歪み測定法(株式会社潤滑通信社発行、「潤滑経済」、No.411、2000年6月、14頁右欄、図2 クラック発生点の歪量測定方法)に準拠
但し図2に示される治具において、a=127mm、b=38.1mm、t=2.0mmとし、クラックの発生箇所(Xの値)が112mm以上を合格、112mm未満を不合格とした。
○:クラック発生なし又はXの値が112mm以上
×:Xの値が112mm未満
潤滑性
試験機 :トライボギア HEIDON 14DR(新東科学 製)
試験片 :3/8φABS球/ABSプレート
荷重 :200g 摺動速度:600mm/min
摺動幅 :10mm 摺動回数:50回
評価 :摩擦係数(μ)
○:0.05未満 △:0.05〜0.10未満 ×:0.10以上
【0019】
再分散性試験
容量18mlの蓋付き試験管に試料約15mlを入れ、24時間静置後、振盪し、沈降した固体分の再分散の様子を目視にて観察した。
○:容易に分散 △:やや分散しにくい ×:分散しにくい
塗布性
PC板にクリーンスティックを用いて塗布した際の濡れ性、乾燥後の被膜状態を目視にて評価した。
○:良好 △:ややハジキあり ×:不良
乾燥性
PC板に塗布した際の乾燥までの時間
○:5分未満 ×:5分以上
【0020】
【表1】

上記表の特性評価欄中の「-」は、評価しなかったことを意味する。
【0021】
上記実施例、比較例で用いた各種成分は以下のとおりである。
PTFE:ポリテトラフルオロエチレン
PAO:ポリアルファオレフィン
COE:ジアルキルカーボネート
ワックス:モンタン酸部分ケン化エステルワックス
界面活性剤1:アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム
界面活性剤2:スルホコハク酸ナトリウム
界面活性剤3:ポリオキシエチレンアルキルエーテル
界面活性剤4:硬化ひまし油エチレンオキサイド付加物
防錆剤:アルケニルコハク酸系防錆剤
【0022】
上記表1に示される結果から、本発明の実施例1〜5の潤滑剤組成物はアニオン系界面活性剤を含有するため、種々の樹脂に対して悪影響を及ぼすことがなく、低摩擦係数で、且つ寿命の長い潤滑性被膜を提供すること、すなわち、耐樹脂性、潤滑性、再分散性、塗布性、乾燥性に優れていることが判る。
これに対して、ノニオン系界面活性剤を含有する比較例1〜4の潤滑剤組成物は、耐樹脂性、特にPCに対する耐性が不良である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油、ワックス、固体潤滑剤、アニオン系界面活性剤及び水性溶剤を含む潤滑剤組成物。
【請求項2】
潤滑油、ワックス、固体潤滑剤及びアニオン系界面活性剤の総和が1.0〜50.0質量%で、残分が水性溶剤である請求項1記載の潤滑剤組成物。
【請求項3】
潤滑油が、ポリアルファオレフィン油、脂肪酸エステル油、炭酸エステル油、アルキルジフェニルエーテル油、アルキルベンゼン油、シリコーン油からなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1又は2記載の潤滑剤組成物。
【請求項4】
ワックスが、モンタンワックス及びその誘導体、石油系ワックス及びポリエチレン系ワックスからなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項記載の潤滑剤組成物。
【請求項5】
固体潤滑剤が、フッ素系ポリマー粉末及びフッ素含有コポリマー粉末からなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか1項記載の潤滑剤組成物。
【請求項6】
固体潤滑剤が、ポリテトラフルオロエチレン粉末である請求項5記載の潤滑剤組成物。
【請求項7】
水性溶剤が、水又は50質量%以上の水と50質量%以下の水溶性有機溶剤の混合物である、請求項1〜6のいずれか1項記載の潤滑剤組成物。
【請求項8】
アニオン系界面活性剤が、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、及びリン酸エステル塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜7のいずれか1項記載の潤滑剤組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載の潤滑剤組成物により形成された潤滑性被膜。
【請求項10】
請求項9記載の潤滑性被膜を有する摺動部材。

【公開番号】特開2006−282945(P2006−282945A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−107946(P2005−107946)
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【出願人】(000162423)協同油脂株式会社 (165)
【Fターム(参考)】