説明

潤滑油組成物

【課題】銅腐食を最小にしつつ、優れたデポジットコントロール特性を示す潤滑油組成物を提供することにある。
【解決手段】(A) 潤滑粘度の油、及び(B) 添加剤成分としての、オキシアルキル化ヒドロカルビルフェノール縮合物[そのオキシアルキル基は式-(R’O)n- (式中、R’はエチレン基、プロピレン基又はブチレン基であり、かつnは独立に0から10までである)を有し、その混合物中のフェノール性ヒドロキシル基の45モル%未満がオキシアルキル化されておらず、かつその混合物中のオキシアルキル基の55モル%より多くが式-R’O- (n = 1) を有する]を含む潤滑油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は潤滑油組成物、更に特別にはピストンエンジン中の使用のための自動車潤滑油組成物、特にガソリン(火花点火)及びディーゼル(圧縮点火)クランクケース潤滑(このような組成物はクランクケース潤滑剤と称される)に関する。特に、専らではないが、本発明は腐食が関心事である潤滑油組成物中の良好な銅腐食特性を有する無灰洗剤添加剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
クランクケース潤滑剤は内燃エンジンにおける一般の潤滑のために使用される油であり、この場合、オイル・サンプが一般にエンジンのクランクシャフトの下に配置され、それに循環油が戻る。添加剤を幾つかの目的のためにクランクケース潤滑剤中に含むことが公知である。
普通に含まれ、また含まれた添加剤の中に、金属含有洗剤がある。これらはエンジン中のピストンデポジット、例えば、高温ワニス及びラッカーデポジットの生成を低減する添加剤である。それらは酸中和特性を有し、微細な固体を懸濁して保つことができる。それらは酸性有機化合物の金属塩(時折、石鹸と称される)をベースとする。一般に、金属洗剤は長い疎水性尾部を有する極性頭部を含み、その極性頭部は金属塩を含む。
潤滑剤仕様は、例えば、硫酸塩灰分として表される、金属の量を制限する点で、一層厳しくなりつつあり、また厳しくなってきていた。それ故、金属を含まない洗剤、所謂“無灰”洗剤を提供することにかなりの動機がある。
RD 417045 は金属を含まない洗剤としてエトキシル化メチレン橋かけアルキルフェノールを記載しており、これらは、例えば、下記の構造式により表し得る。
【0003】
【化1】

【0004】
式中、エトキシル化基の“n”は、例えば、1〜20の範囲の整数である。これらの化合物はメチレン橋かけフェノールを得るためのアルキル化フェノールとパラホルムアルデヒドの酸触媒反応、続いてエチレンオキサイドを使用するエトキシル化によりつくられると記載されている。この開示に従ってつくられた生成物は望ましくない程に高いレベルの非オキシアルキル化 (即ち、n = 0) 含量、望ましくない程に高いレベルのジ-及びポリ-オキシアルキル化 (即ち、n≧2) 含量その結果として低いレベルのモノ-オキシアルキル化 (即ち、n = 1) 含量を含む。高レベルのn≧2を有する製品は劣った油溶性を有し、増大されたレベルの曇り及び沈降物をもたらす。完全配合オイル内に含まれる場合、高レベルのn≧2を有する製品はまた劣ったデポジットコントロール特性を与える。高レベルのn = 0 を有する製品は完全配合オイル中で劣った銅腐食を与える。
この明細書において、略号‘n=0’は非オキシアルキル化を表すのに使用され、略号‘n=1’はモノ-オキシアルキル化を表すのに使用され、また略号‘n≧2’はポリ-オキシアルキル化(これはジ-オキシアルキル化、トリ-オキシアルキル化、テトラ-オキシアルキル化等を含む)を表すのに使用される。
EP-B-0 032 617 はエマルション-スラッジ生成をコントロール又は排除するためにRD 417045 に記載された添加剤と同様の添加剤(商品名“Prochinor GR77”として市販されている添加剤を含む)を含む潤滑剤を記載している。nは2から10までであることが好ましく、これはエチレンオキサイドを使用するエトキシル化により得られることが最も好ましく、また4,000〜6,000の分子量が好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術の文献のいずれもがn = 1 含量を最大にし、n = 0 含量を最小にし、かつ/又はn≧2含量を最小にすることの利益を記載していない。上記従来技術の文献のいずれもが銅腐食又はデポジットコントロールに関する添加剤の効果を記載していない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は銅腐食を最小にしつつ優れたデポジットコントロール特性を示す潤滑油組成物を提供する。潤滑油組成物において、油溶性オキシアルキル化洗剤におけるnの値が制御される。
第一の局面によれば、本発明は
(A) 潤滑粘度の油、及び
(B) 添加剤成分としての、オキシアルキル化ヒドロカルビルフェノール縮合物[フェノール官能基から調製されたオキシアルキル基は式-(R’O)n- (式中、R’はエチレン基、プロピレン基又はブチレン基であり、かつnは独立に0から10までである)を有し、
その縮合物のフェノール官能基の45モル%未満、好ましくは30モル%未満がオキシアルキル化されておらず (即ち、n = 0)、かつ
その縮合物のフェノール官能基の55モル%より多くがモノ-オキシアルキル化されている (即ち、n = 1)]
を含み、又はこれらを添加混合することによりつくられた潤滑油組成物を提供する。
第二の局面によれば、本発明は第一の局面に特定された添加剤成分(B) の製造方法を提供し、その方法は(1) ヒドロカルビルフェノール-アルデヒド縮合物を生成するための、酸又は塩基触媒の存在下の、ヒドロカルビルフェノールとアルデヒドの縮合、及び(2) 前記縮合物を塩基触媒、好ましくはナトリウム塩の存在下で、縮合物中のフェノール官能基の各当量について0.5当量〜3当量未満、好ましくは2.5当量未満、好ましくは2.0当量未満のエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート又はブチレンカーボネートでオキシアルキル化する工程によりオキシアルキル化ヒドロカルビルフェノールアルデヒド縮合物を生成することを含む。
第三の局面によれば、本発明は第一の局面に特定された添加剤成分(B) の製造方法を提供し、その方法は(1) ヒドロカルビルフェノールを塩基触媒、好ましくはナトリウム塩の存在下で、0.5当量〜3当量、好ましくは2.5当量未満、好ましくは2.0当量未満のエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート又はブチレンカーボネートでオキシアルキル化する工程及び(2) 酸又は塩基触媒の存在下の前記オキシアルキル化ヒドロカルビルフェノールとアルデヒドの縮合の工程によりオキシアルキル化ヒドロカルビルフェノール-アルデヒド縮合物を生成する工程を含む。
【0007】
第四の局面によれば、本発明は第二の局面又は第三の局面によりつくられ、又は得られる第一の局面に特定された添加剤成分(B) を提供する。
第五の局面によれば、本発明は潤滑剤の銅腐食特性に不利に影響しないでデポジットコントロール特性を改良するための第一の局面又は第四の局面に特定された添加剤成分(B) の使用を提供する。
第六の局面によれば、本発明は
(i) 少量の第一の局面に特定された一種以上の添加剤(B) 、過半量の潤滑粘度の油を用意して潤滑剤をつくり、
(ii) 潤滑剤を内燃エンジンのクランクケースに用意し、
(iii) 炭化水素燃料をエンジンの燃焼チャンバーに用意し、そして
(iv) 燃料を燃焼チャンバー中で燃焼することによる運転中の内燃チャンバーの表面の潤滑方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
この明細書中、下記の用語及び表現は、使用される場合には、以下の特有の意味を有する。
“活性成分”又は“(a.i.)”は希釈剤又は溶媒ではない添加剤物質を表す。
“含む”又はあらゆる同義語は記述された特徴、工程、もしくは整数又は成分の存在を明記するが、一つ以上のその他の特徴、工程、整数、成分又はこれらの群の存在又は追加を排除しない。“からなる”もしくは“実質的にからなる”という表現又は同義語は“含む”又は同義語の範囲内に含まれてもよく、“実質的にからなる”はそれが適用される組成物の特性に実質的に影響しない物質の混入を許す。
“ヒドロカルビル”は水素原子と炭素原子のみを含み、かつ炭素原子を介して化合物の残部に直接結合されている化合物の化学基を意味する。
本明細書に使用される“油溶性”もしくは “油分散性”という用語、又は同義語は化合物又は添加剤が可溶性、溶解性、混和性であり、又はあらゆる比率で油中に懸濁し得ることを必ずしも示さない。しかしながら、これらはそれらが、例えば、油を使用する環境でそれらの意図される効果を与えるのに充分な程度に油に可溶性又は安定に分散性であることを意味する。更に、その他の添加剤の追加の混入はまた所望により高レベルの特別な添加剤の混入を許してもよい。
“過半量”は組成物の50質量%を超える量を意味する。
“少量”は組成物の50質量%未満を意味する。
“TBN”はASTM D2896により測定された全アルカリ価を意味する。
“リン含量”はASTM D5185により測定され、
“硫黄含量”はASTM D2622により測定され、また
“硫酸塩灰分”はASTM D874により測定される。
また、使用される種々の成分(必須だけでなく、最適及び慣例の)が配合、貯蔵又は使用の条件下で反応し得ること及び本発明がまたあらゆるこのような反応の結果として得られ、又は得られた生成物を提供することが理解されるであろう。
更に、本明細書に示されたあらゆる上限及び下限の量、範囲及び比が独立に組み合わされてもよいことが理解される。
更に、本発明の成分は分離されてもよく、又は混合物中に存在してもよく、本発明の範囲内に留まる。
【0009】
適当な場合に、本発明の夫々及び全ての局面に関する本発明の特徴が、今、以下に更に詳しく記載される。
潤滑粘度の油(A)
潤滑粘度の油(しばしば“原料油”又は“ベースオイル”と称される)は潤滑剤の液体主成分であり、これに添加剤そしておそらくその他の油が、例えば、最終の潤滑剤(又は潤滑剤組成物)を生成するためにブレンドされる。また、ベースオイルは濃厚物をつくるだけでなく、それから潤滑剤をつくるのに有益である。
ベースオイルは天然(植物、動物又は鉱物)及び合成の潤滑油並びにこれらの混合物から選ばれてもよい。それは軽質蒸留鉱油から重質潤滑油、例えば、ガスエンジンオイル、潤滑鉱油、モーター自動車オイル及びヘビーデューティディーゼル油までの粘度の範囲であってもよい。一般に、油の粘度は100℃で2〜30、特に5〜20mm2s-1 の範囲である。
天然油として、動物油及び植物油(例えば、ヒマシ油及びラード油)、液体石油並びにパラフィン型、ナフテン型及び混合パラフィン-ナフテン型の水素化精製され、溶剤処理された潤滑鉱油が挙げられる。石炭又はシェールに由来する潤滑粘度の油がまた有益なベースオイルである。
【0010】
合成潤滑油として、炭化水素油、例えば、重合オレフィン及び共重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン));アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン);ポリフェノール(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェノール);並びにアルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド及びこれらの誘導体、類似体及び同族体が挙げられる。
合成潤滑油の別の好適なクラスはジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸)と種々のアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)のエステルを含む。これらのエステルの特別な例として、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2-エチルヘキシルジエステル、並びに1モルのセバシン酸を2モルのテトラエチレングリコール及び2モルの2-エチルヘキサン酸と反応させることにより生成された複雑なエステルが挙げられる。
合成油として有益なエステルとして、C5-C12モノカルボン酸及びポリオール、並びにポリオールエーテル、例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びトリペンタエリスリトールからつくられたものがまた挙げられる。
【0011】
未精製油、精製油及び再精製油が本発明の組成物中に使用し得る。未精製油は更に精製処理しないで天然又は合成源から直接得られたものである。例えば、レトルト操作から直接得られたシェール油、蒸留から直接得られた石油又はエステル化方法から直接得られ、更に処理しないで使用されるエステル油が未精製油であろう。精製油はそれらが一つ以上の性質を改良するために一つ以上の精製工程で更に処理された以外は未精製油と同様である。多くのこのような精製技術、例えば、蒸留、溶剤抽出、酸又は塩基抽出、濾過及びパーコレーションが当業者に知られている。再精製油は既に商用された精製油に適用される精製油を得るのに使用される方法と同様の方法により得られる。このような再精製油はまた再生油又は再加工油として知られており、使用済み添加剤及び油分解生成物の認可のための技術によりしばしば更に加工される。
ベースオイルのその他の例は合成軽油(gas-to-liquid(“GTL”))ベースオイルであり、即ち、ベースオイルはフィッシャー-トロプッシュ触媒を使用して水素及び一酸化炭素を含む合成ガスからつくられたフィッシャー-トロプッシュ合成炭化水素から誘導されたオイルであってもよい。これらの炭化水素は典型的にはベースオイルとして有益であるために更なる加工を必要とする。例えば、それらは、当業界で知られている方法により、水素異性化されてもよく、ハイドロクラッキングされ、水素異性化されてもよく、脱蝋されてもよく、又は水素異性化され、脱蝋されてもよい。
ベースオイルはAPI EOLCS 1509定義に従ってグループI〜Vにカテゴリー化されてもよい。
潤滑粘度の油が濃厚物をつくるのに使用される場合、それは必要により一種以上の補助添加剤と一緒に、例えば、1〜90質量%、例えば、10〜80質量%、好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは20〜70質量%の一種以上の添加剤の活性成分(上記成分(B) である)を含む濃厚物を与えるために濃厚物生成量(例えば、30質量%から70質量%まで、例えば、40〜60質量%)で存在する。濃厚物中に使用される潤滑粘度の油は好適な油性の、典型的には炭化水素、キャリヤー液体、例えば、潤滑鉱油、又はその他の好適な溶剤である。本明細書に記載された潤滑粘度の油だけでなく、脂肪族炭化水素、ナフテン系炭化水素、及び芳香族炭化水素が、濃厚物に適したキャリヤー液体の例である。
【0012】
濃厚物はそれらの使用の前に添加剤を取り扱うだけでなく、潤滑剤中の添加剤の溶解又は分散を促進するのに便利な手段を構成する。一つの型より多い添加剤(時折、“添加剤成分”と称される)を含む潤滑剤を調製する場合、夫々の添加剤は、夫々濃厚物の形態で、別々に混入されてもよい。しかしながら、多くの場合、単一濃厚物中に、一種以上の補助添加剤、例えば、以下に記載される補助添加剤を含む所謂添加剤“パッケージ”(また、“アドパック”と称される)を用意することが好都合である。
潤滑粘度の油は本明細書に特定された、少量の添加剤成分(B)及び、必要により、一種以上の補助添加剤、例えば、以下に記載されるものと組み合わせて、過半量で用意されて、潤滑剤を構成する。この調製は添加剤を油に直接添加することにより、又はそれをその濃厚物の形態で添加して添加剤を分散もしくは溶解することにより達成されてもよい。添加剤はその他の添加剤の添加の前、同時、又は後に当業者に知られているあらゆる方法により油に添加されてもよい。
好ましくは、潤滑粘度の油は潤滑剤の合計質量を基準として、55質量%より大きく、更に好ましくは60質量%より大きく、更に好ましくは65質量%より大きい量で潤滑剤中に存在する。好ましくは、潤滑粘度の油は潤滑剤の合計質量を基準として、98質量%未満、更に好ましくは95質量%未満、更に好ましくは90質量%未満の量で存在する。
本発明の潤滑剤は、特に内燃エンジン、例えば、火花点火又は圧縮点火2ストローク又は4ストローク往復エンジン中で、潤滑剤をそれらに添加することにより機械エンジン部品を潤滑するのに使用し得る。
【0013】
本発明の潤滑油組成物は油性キャリヤーとの混合の前後で化学的に同じに留まってもよく、また留まらなくてもよい特定成分を含む。本発明は混合前、もしくは混合後、又は混合の前及び後の両方で特定成分を含む組成物を含む。
濃厚物が潤滑剤をつくるのに使用される場合、それらは、例えば、濃厚物の質量部当り3〜100質量部、例えば、5〜40質量部の潤滑粘度の油で希釈されてもよい。
本発明の潤滑剤は潤滑剤の合計質量を基準として、リンの原子として表して、低レベルのリン、即ち、0.12質量%以下、好ましくは0.08質量%まで、更に好ましくは0.06質量%までのリンを含んでもよい。
典型的には、潤滑剤は低レベルの硫黄を含んでもよい。好ましくは、潤滑剤は潤滑剤の合計質量を基準として、硫黄の原子として表して、0.4質量%まで、更に好ましくは0.3質量%まで、最も好ましくは0.2質量%までの硫黄を含んでもよい。
典型的には、潤滑剤は低レベルの硫酸塩灰分を含んでもよい。好ましくは、潤滑剤は潤滑剤の合計質量を基準として、1.0質量%未満、好ましくは0.8質量%未満、更に好ましくは0.5質量%未満の硫酸塩灰分を含む。
好適には、潤滑剤は5以上、好ましくは7以上、例えば、16まで、好ましくは8〜16の全アルカリ価(TBN)を有してもよい。この塩基度は金属塩基、例えば、過塩基化(overbased)洗剤又は非金属塩基、例えば、窒素塩基(これらの例は分散剤、酸化防止剤(例えば、アルキル化ジフェニルアミン及びフェニレンジアミン)及び四級アンモニウム塩である)、又はこれらの組み合わせに由来し得る。好適には、潤滑剤中のTBNの30%まで、好ましくは40%まで、更に好ましくは50%まで、更に一層好ましくは60%までが非金属塩基に由来する。
添加剤成分(B)
潤滑剤中に45モル%未満のn = 0 を含む添加剤成分(B) の使用が45モル%以上のn = 0を含む添加剤成分(B) の使用よりも銅腐食を低減することがわかった。また、低モル%のn≧2 含量を有する添加剤成分(B) が潤滑剤中に使用される場合、潤滑剤が有利なデポジットコントロール特性を有意に有することがわかった。
(B) 中のオキシアルキル化縮合物は下記の一般構造式により表されることが好ましい。
【0014】
【化2】

【0015】
式中、
xは1〜50、好ましくは1〜40、更に好ましくは1〜30であり、
R1 及びR2 はH、1〜12個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、又は1〜12個の炭素原子及び少なくとも1個のヘテロ原子を有するヒドロカルビル基であり、かつ
Rは9〜100個、好ましくは9〜70個、好ましくは9〜50個、好ましくは9〜30個、好ましくは9〜20個、最も好ましくは9〜15個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。
上記式中、Rは-O-[CH2CH2O]nH 基に対してパラ位にあることが好ましい。
(B) 中のオキシアルキル化縮合物中で、縮合物のフェノール官能基の45モル%未満、好ましくは35モル%未満、更に好ましくは30モル%未満がオキシアルキル化されていない (即ち、n = 0)。
(B) 中のオキシアルキル化縮合物中で、縮合物のフェノール官能基の55モル%より多く、好ましくは60モル%より多く、好ましくは70モル%より多く、更に好ましくは80モル%より多く、更に一層好ましくは90モル%より多く、最も好ましくは95モル%より多くがモノ-オキシアルキル化されている (即ち、n = 1)。
有利には、(B) 中のオキシアルキル化縮合物中で、縮合物のフェノール官能基の5モル%未満がポリ-オキシアルキル化されており (即ち、n≧2)、これはジ-オキシアルキル化、トリ-オキシアルキル化、テトラ-オキシアルキル化等を含む。
【0016】
その混合物はGPC により測定して、1000〜4000未満、例えば、3000までの範囲の数平均分子量(Mn)を有することが好ましい。有利には、その混合物はGPC により測定して、1100〜6000未満、好ましくは4000未満、例えば、3500までの重量平均分子量 (Mw)を有する。有利には、Mw/Mn は1.10-1.60の範囲である。
好ましくは、その混合物は4-20、例えば、5-15、更に好ましくは6-10の数平均重合度を有する。
上記一般式中で、Rは好ましくは、独立に、9〜30個の炭素原子、好ましくは9〜15個の炭素原子、更に好ましくは12〜15個の炭素原子を有する分岐鎖アルキル基である。
本発明のオキシアルキル化縮合物混合物はヒドロカルビルフェノール縮合物をエチレンカーボネート(これが好ましい)、プロピレンカーボネート又はブチレンカーボネートでオキシアルキル化することによりつくられることが好ましい。
いずれの理論により束縛されたくないが、オキシアルキル化は縮合物ポリマーの末端単位で始まり、次第にポリマーの中央へと向かい、更にモノ-オキシアルキル(n=1)含量を生じると考えられる。しかしながら、立体因子が中央の単位との反応を抑制し、次いで更なる反応が末端単位で起こってジ-及びポリ-オキシアルキル(即ち、n≧2)含量を与え得る。
オキシアルキル化反応のためのカーボネートの使用は従来技術に記載されたようなエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの使用と較べて、本発明において必要とされるような“n”値及び量の極めて良好な制御を生じることがわかる。更に、触媒の適当な選択が実質的に完全にモノ-オキシアルキル (即ち、n=1) 含量からなる生成物を与え得る。ナトリウム塩、特に水酸化物及びカルボン酸塩、例えば、ステアリン酸塩が好ましい。
好適には、添加剤成分(B) は全潤滑剤質量を基準として0.1〜10質量%、例えば、0.1〜5質量%、例えば、0.1〜2質量%の量で存在する。
【0017】
補助添加剤
添加剤成分(B)と異なる、また存在してもよい補助添加剤が、潤滑剤中の代表的な有効量とともに、以下にリストされる。リストされた全ての値は活性成分質量%として記述される。
添加剤 質量% 質量%
(広い範囲) (好ましい範囲)
無灰分散剤 0.1-20 1-8
金属洗剤 0.1-15 0.2-9
摩擦改質剤 0-5 0-1.5
腐食抑制剤 0-5 0-1.5
金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート 0-10 0-4
酸化防止剤 0-5 0.01-3
流動点降下剤 0.01-5 0.01-1.5
消泡剤 0-5 0.001-0.15
補充耐磨耗剤 0-5 0-2
粘度改質剤(1) 0-6 0.01-4
鉱物又は合成ベースオイル 残部 残部
(1) 粘度改質剤はマルチグレードオイル中でのみ使用される。
典型的には添加剤又は夫々の添加剤をベースオイルにブレンドすることによりつくられた、最終潤滑剤は5質量%から25質量%まで、好ましくは5〜18質量%、典型的には7〜15質量%の補助添加剤を含んでもよく、残部は潤滑粘度の油である。
上記補助添加剤が以下のように更に詳しく説明される。当業界で知られているように、或る種の添加剤は多くの効果を与えることができ、例えば、単一添加剤が分散剤及び酸化抑制剤として作用し得る。
【0018】
分散剤はその主たる機能が固体及び液体の汚染物を懸濁して保持し、それによりそれらを不動態化し、エンジンデポジットを減少すると同時にスラッジデポジットを減少する添加剤である。例えば、分散剤は潤滑剤の使用中に酸化から生じる油不溶性物質を懸濁して維持し、こうしてスラッジ凝集及びエンジンの金属部分上の沈殿又は付着を防止する。
分散剤は、上記のように、通常無灰であり、金属を含み、それ故、灰を形成する物質とは対照的に、燃焼時に灰を実質的に形成しない非金属有機物質である。それらは極性頭部を有する炭化水素長鎖を含み、その極性は、例えば、O原子、P原子、又はN原子の組み込みから誘導される。その炭化水素は、例えば、40〜500個の炭素原子を有する、油溶性を与える親油性基である。こうして、無灰分散剤は油溶性ポリマー主鎖を含んでもよい。
オレフィンポリマーの好ましいクラスは、ポリブテン、特に、例えば、C4製油所流の重合により調製し得るような、ポリイソブテン(PIB)又はポリ-n-ブテンにより構成される。
分散剤として、例えば、長鎖炭化水素置換カルボン酸の誘導体が挙げられ、例は高分子量ヒドロカルビル置換コハク酸の誘導体である。分散剤の注目に値するグループは、例えば、上記酸(又は誘導体)を窒素含有化合物、有利にはポリアルキレンポリアミン、例えば、ポリエチレンポリアミンと反応させることによりつくられた、炭化水素置換スクシンイミドにより構成される。ポリアルキレンポリアミンとアルケニル無水コハク酸の反応生成物、例えば、米国特許第3,202,678号、同第3,154,560号、同第3,172,892号、同第3,024,195号、同第3,024,237号、同第3,219,666号、及び同第3,216,936号に記載されたものが特に好ましく、それらはそれらの性質を改良するために、後処理、例えば、ホウ化(米国特許第3,087,936号及び同第3,254,025号に記載されたような)、フッ素化そしてオキシル化されてもよい。例えば、ホウ化はアシル窒素含有分散剤をホウ素酸化物、ホウ素ハロゲン化物、ホウ素酸及びホウ素酸のエステルから選ばれたホウ素化合物で処理することにより達成されてもよい。
分散剤は、存在する場合には、1000〜3000、好ましくは1500〜2500の範囲の数平均分子量、かつ適度の官能性のポリイソブテンから誘導されたスクシンイミド分散剤であることが好ましい。そのスクシンイミドは高度に反応性のポリイソブテンから誘導されることが好ましい。
【0019】
金属洗剤は上記された金属塩である。塩は実質的に化学量論量の金属を含んでもよく、その場合にはそれらは通常又は中性の塩として通常記載され、典型的には0から80までの全アルカリ価即ちTBN(ASTM D2896により測定し得る)を有するであろう。多量の金属塩基が過剰の金属化合物、例えば、酸化物又は水酸化物と酸性ガス、例えば、二酸化炭素の反応により含まれる。得られる過塩基化洗剤は金属塩基(例えば、炭酸塩)ミセルの外層として中和された洗剤を含む。このような過塩基化洗剤は150以上、典型的には250から500以上までのTBNを有してもよい。
使用し得る洗剤として、金属、特にアルカリ金属又はアルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム及びマグネシウムの油溶性の中性また過塩基化されたスルホン酸塩、フェネート、硫化フェネート、チオホスホン酸塩、サリチル酸塩、及びナフテン酸塩並びにその他の油溶性カルボン酸塩が挙げられる。最も普通に使用される金属はカルシウム及びマグネシウムであり、これらは両方とも潤滑剤中に使用される洗剤中に、またカルシウム及び/又はマグネシウムとナトリウムの混合物中に存在してもよい。
特に好ましい金属洗剤は50から450までのTBN、好ましくは50〜250のTBNを有する中性及び過塩基化アルカリ金属又はアルカリ土類金属洗剤である。高度に好ましい洗剤として、アルカリ土類金属サリチル酸塩、特にサリチル酸マグネシウム及びサリチル酸カルシウム、特にサリチル酸カルシウムが挙げられる。
潤滑油組成物中の添加剤成分(B) 対あらゆる金属洗剤の質量比は0.1〜4、好ましくは0.1〜3、好ましくは0.1〜2、又は最も好ましくは0.2〜1.6の範囲であることが好ましい。金属洗剤の好ましい例はサリチル酸カルシウム、サリチル酸マグネシウム、スルホン酸カルシウム、スルホン酸マグネシウム、カルシウムフェネート及びこれらの混合物である。
【0020】
摩擦改質剤として、高級脂肪酸のグリセリルモノエステル、例えば、グリセリルモノ-オレエート;長鎖ポリカルボン酸とジオールのエステル、例えば、2量体化された不飽和脂肪酸のブタンジオールエステル;オキサゾリン化合物;並びにアルコキシル化アルキル置換モノ-アミン、ジアミン及びアルキルエーテルアミン、例えば、エトキシル化牛脂アミン及びエトキシル化牛脂エーテルアミンが挙げられる。
その他の既知の摩擦改質剤は油溶性有機モリブデン化合物を含む。このような有機モリブデン摩擦改質剤はまた潤滑油組成物に酸化防止信用及び耐磨耗信用を与える。好適な油溶性有機モリブデン化合物はモリブデン-硫黄コアーを有する。例として、ジチオカルバメート、ジチオホスフェート、ジチオホスフィネート、キサンテート、チオキサンテート、スルフィド、及びこれらの混合物が挙げられる。モリブデンジチオカルバメート、ジアルキルジチオホスフェート、アルキルキサンテート及びアルキルチオキサンテートが特に好ましい。モリブデン化合物は2核又は3核である。
本発明の全ての局面に有益な好ましい有機モリブデン化合物の一つのクラスは式Mo3SkLnQzの3核モリブデン化合物及びこれらの混合物であり、式中、Lはその化合物を油に可溶性又は分散性にするのに充分な数の炭素原子を有する有機基を有する独立に選ばれたリガンドであり、nは1から4までであり、kは4から7まで変化し、Qは中性電子供与性化合物、例えば、水、アミン、アルコール、ホスフィン、及びエーテルのグループから選ばれ、かつzは0から5までの範囲であり、非化学量論値を含む。少なくとも21個の合計炭素原子、例えば、少なくとも25個、少なくとも30個、又は少なくとも35個の炭素原子が全てのリガンドの有機基中に存在すべきである。
モリブデン化合物は0.1〜2質量%の濃度で潤滑油組成物中に存在してもよく、又は少なくとも10ppm(質量基準)、例えば、50〜2,000ppmのモリブデン原子を与える。
モリブデン化合物からのモリブデンは潤滑剤の合計質量を基準として10ppmから1500ppmまで、例えば、20〜1000ppm、更に好ましくは30〜750ppmの量で存在することが好ましい。或る適用について、モリブデンが500ppmより大きい量で存在する。
【0021】
酸化防止剤は酸化抑制剤と時折称される。それらは酸化に対する潤滑剤の耐性を増大し、過酸化物と化合し、変性してそれらを無害にすることにより、過酸化物を分解することにより、又は酸化触媒を不活性にすることにより作用し得る。酸化劣化は潤滑剤中のスラッジ、金属表面上のワニスのようなデポジット、及び増粘により証明し得る。
それらは遊離基脱除剤(例えば、立体障害フェノール、二級芳香族アミン、及び有機銅塩);ヒドロペルオキシド分解剤(例えば、有機硫黄添加剤及び有機リン添加剤);及び多機能剤(例えば、亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート(これらはまた耐磨耗添加剤として機能し得る)、及び有機モリブデン化合物(これらはまた摩擦改質剤及び耐磨耗添加剤として機能し得る))として分類し得る。
好適な酸化防止の例は銅含有酸化防止剤、硫黄含有酸化防止剤、芳香族アミン含有酸化防止剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤、ジチオホスフェート誘導体、金属チオカルバメート、及びモリブデン含有化合物から選ばれる。
ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩は耐磨耗剤及び酸化防止剤として頻繁に使用される。その金属はアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属、又はアルミニウム、鉛、スズ、亜鉛、モリブデン、マンガン、ニッケルもしくは銅であってもよい。亜鉛塩は、例えば、潤滑剤の全質量を基準として、0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜2質量%の量で潤滑剤中に最も普通に使用される。それらは既知の技術に従って最初に通常一種以上のアルコール又はフェノールとP2S5との反応により、ジヒドロカルビルジチオリン酸(DDPA)を生成し、次いで生成されたDDPAを亜鉛化合物で中和することにより調製されてもよい。例えば、ジチオリン酸は一級アルコールと二級アルコールの混合物との反応によりつくられてもよい。また、一方の酸のヒドロカルビル基が特性上完全に二級であり、かつ他方の酸のヒドロカルビル基が特性上完全に一級である場合、多種のジチオリン酸が調製し得る。亜鉛塩をつくるために、あらゆる塩基性又は中性亜鉛化合物が使用し得るが、酸化物、水酸化物及び炭酸塩が殆ど一般に使用される。市販の添加剤は中和反応中の過剰の塩基性亜鉛化合物の使用のために過剰の亜鉛を頻繁に含む。
【0022】
耐磨耗剤は摩擦及び過度の磨耗を減少し、通常硫黄もしくはリン又はその両方を含む化合物、例えば、多硫化物フィルムを関係する表面に付着することができる化合物をベースとする。本明細書に説明された亜鉛ジアルキルジチオホスフェート(ZDDP)の如きジヒドロカルビルジチオホスフェートが注目に値する。
無灰耐磨耗剤の例として、1,2,3-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、チアジアゾール、硫化脂肪酸エステル、及びジチオカルバメート誘導体が挙げられる。
錆及び腐食抑制剤は表面を錆及び/又は腐食に対して保護するのに利用できる。錆抑制剤として、ノニオン性ポリオキシアルキレンポリオール及びこれらのエステル、ポリオキシアルキレンフェノール、並びに陰イオン性アルキルスルホン酸が挙げられる。
流動点降下剤(それ以外に、潤滑油流動性改良剤として知られている)は、油が流れ、又は注入し得る最低温度を低下する。このような添加剤は公知である。これらの添加剤の典型例はC8-C18ジアルキルフマレート/酢酸ビニルコポリマー及びポリアルキルメタクリレートである。
ポリシロキサン型の添加剤、例えば、シリコーンオイル又はポリジメチルシロキサンは発泡制御を与え得る。
【0023】
少量の解乳化成分が使用されてもよい。好ましい解乳化成分がEP-A-330,522に記載されている。それはアルキレンオキサイドをビス-エポキシドと多価アルコールの反応により得られた付加物と反応させることにより得られる。解乳化剤は活性成分0.1質量%を超えないレベルで使用されるべきである。活性成分0.001〜0.05質量%の処理率が好都合である。
粘度改質剤(又は粘度指数改良剤)は高温及び低温運転性を潤滑剤に付与する。分散剤としてまた機能する粘度改質剤がまた知られており、無灰分散剤について上記されたように調製されてもよい。一般に、これらの分散剤粘度改質剤は官能化ポリマー(例えば、無水マレイン酸の如き活性モノマーで後グラフトされたエチレン-プロピレンのインターポリマー)であり、これらがその後に、例えば、アルコール又はアミンで誘導体化される。
潤滑剤は通常の粘度改質剤を配合されてもよく、また配合されなくてもよく、また分散剤粘度改質剤を配合されてもよく、また配合されなくてもよい。粘度改質剤としての使用に適した化合物は一般に高分子量炭化水素ポリマー(ポリエステルを含む)である。油溶性粘度改質ポリマーは一般に10,000から1,000,000まで、好ましくは20,000〜500,000の重量平均分子量を有し、これはゲル透過クロマトグラフィー又は光散乱により測定し得る。
【実施例】
【0024】
本発明が、今、下記の実施例に特別に記載され、これらは特許請求の範囲を限定することを目的としない。
実施例1−メチレン橋かけアルキルフェノールの調製
95%パラ位で置換された、分岐ドデシルフェノール(1910g) 、アルキルベンゼンスルホン酸触媒(19.1g) 及びトルエン(574g)の混合物を窒素ガス(これは反応プロセス中に残存する)のシールのもとに5Lの反応器中で60分間にわたって110℃に加熱した。ホルムアルデヒド水溶液(37%, 497g)を2時間30分にわたって段階的に添加した。その温度を120℃に上昇させ、反応器の内容物を1時間30分にわたってこの温度に維持した。内容物を90℃に冷却し、NaOH水溶液(50%, 42g) を35分間にわたって添加した。反応器の内容物を25分間にわたって130℃に加熱し、2時間にわたってこの温度に保ち、トルエンを真空蒸留によりそれからストリッピングした。生成物はメチレン橋かけアルキルフェノールの形態のアルキルフェノール-ホルムアルデヒド縮合物であり、xは0から22以上までであり、Mn(GPCによる)は1600であり、Mwは2100であり、ドデシルフェノールの残留モノマーは1%未満であった。
実施例2−エトキシル化メチレン橋かけアルキルフェノールの調製
キシレン(573g)を実施例1(2004g) に添加し、次いでエチレンカーボネート(ヒドロキシル基当り1.02当量, 645g) を35分間にわたって90℃で添加した。反応器の内容物を加熱、還流した(150-160℃)。エチレンカーボネートが4時間にわたって消費され、次いでキシレンを真空蒸留によりストリッピングした。その混合物はGPCにより測定して、Mn = 1700, Mw = 2300 の分子量を有し、ドデシルフェノールの残留モノマーは0.1%未満であった。その混合物の13C NMR 分析はそれがパラメーターnに関して以下の特性を有することを示した。
【0025】

【0026】
温度を110℃に低下し、グループI150中性油(2278g) を添加し、1時間にわたって混合して50%の活性成分のエトキシル化メチレン橋かけアルキルフェノール混合物 (4556g)をつくった。
実施例3
ベースオイル中に無灰分散剤、金属含有洗剤、亜鉛ジアルキルジチオホスフェート耐磨耗剤、補充酸化防止剤、粘度改質剤及び流動性改良剤を含むヘビーデューティ潤滑油配合Aを調製した。1.5質量%活性成分の実施例2のエトキシル化メチレン橋かけアルキルフェノール混合物を1.5質量%のベースオイルに代えて添加した以外は、同じ量の全ての添加剤を用いてヘビーデューティディーゼル潤滑油配合B(硫酸塩灰分=1.0%、TBN=12.3)を調製した。ヘビーデューティディーゼル潤滑油配合B中の金属含有洗剤に対する実施例2の無灰洗剤の質量比は活性成分基準で1.2であった。
両方の生成物をOM501LA ヘビーデューティディーゼルデポジット試験で試験し、生じられたメリットを表I中で比較する。
表I
ピストンメリット
ヘビーデューティディーゼル配合A 21.7
ヘビーデューティディーゼル配合B 31.4
明らかに、実施例2の無灰洗剤を含むヘビーデューティディーゼル配合Bは灰分含有洗剤のみを含むヘビーデューティディーゼル配合Aに対し有意に高められたデポジットコントロール能を示した。
実施例4
【0027】
ベースオイル中に無灰分散剤、金属含有洗剤、亜鉛ジアルキルジチオホスフェート耐磨耗剤、補充酸化防止剤、粘度改質剤及び流動性改良剤を含む乗用車ディーゼル潤滑油配合Cを調製した。0.5質量%活性成分の実施例2のエトキシル化メチレン橋かけアルキルフェノール混合物を0.5質量%のベースオイルに代えて添加した(かつ粘度改質剤レベルをわずかに減少した)以外は、同じ量の全ての添加剤を用いて乗用車ディーゼル潤滑油配合D(硫酸塩灰分=0.5%、TBN=7.7)を調製した。乗用車ディーゼル潤滑油配合D中の金属含有洗剤に対する実施例2の無灰洗剤の質量比は活性成分基準で0.6であった。
両方の生成物をVW TDI乗用車ディーゼルデポジット試験で試験し、生じられたメリットを表II中で比較する。
表II
ピストンメリット
乗用車ディーゼル配合C 59
乗用車ディーゼル配合D 65
明らかに、実施例2の無灰洗剤を含むヘビーデューティディーゼル配合B及び乗用車ディーゼル配合Dの両方は灰分含有洗剤のみを含むヘビーデューティディーゼル配合A及び乗用車ディーゼル配合Cに対し有意に高められたデポジットコントロール能を示した。
実施例5-6 及び比較例1
実施例2の操作を異なる量のエチレンカーボネート試薬で繰り返して表IIIに示された種々の量のオキシアルキル化部分を含む式(I)のエトキシル化メチレン橋かけアルキルフェノール混合物を生成した。
実施例7
【0028】
ベースオイル中に無灰分散剤、金属含有洗剤、亜鉛ジアルキルジチオホスフェート耐磨耗剤、補充酸化防止剤、粘度改質剤及び流動性改良剤を含むヘビーデューティディーゼル潤滑油配合Eを調製した。1.8質量%活性成分の実施例2、5、6及び比較例1のエトキシル化メチレン橋かけアルキルフェノール混合物を1.8質量%のベースオイルに代えて添加した以外は、同じ量の全ての添加剤を用いてヘビーデューティディーゼル潤滑油配合F(硫酸塩灰分=1.0、TBN=11.1)を調製した。ヘビーデューティディーゼル潤滑油配合D中の金属含有洗剤に対する無灰洗剤の質量比は活性成分基準で1.3であった。
高温腐食卓上試験(‘HTCBT’, ASTM D6594)を使用して、全ての上記配合生成物を銅腐食について試験した。銅腐食結果を百万分の一の単位のCuで表し、この場合、一層低い結果が優れている(≦20ppmが合格と考えられる)。
高温腐食卓上試験(‘HTCBT’)の結果は以下のとおりである。
表III
【0029】

【0030】
EC = 調製に使用されたエチレンカーボネート
結果は低レベルの非オキシアルキル化基 (即ち、n=0) が銅腐食性能に合格することを維持するのに必要とされることを明らかに示す。
実施例8−高度にキャップされたヒドロキシエチルメチレン橋かけアルキルフェノールの調製
50%のNaOH水溶液を等しい質量%の50%のKOH水溶液(10g)により置換した以外は、実施例1の操作を一層小さい規模で繰り返した(分岐ドデシルフェノール-400g、アルキルベンゼンスルホン酸触媒-4g、ホルムアルデヒド水溶液(37%)-104g)。キシレン(120g)を生成された中間体(418g)に添加し、次いでエチレンカーボネート(ヒドロキシル基当り2当量、270g)を90℃で30分間にわたって添加した。反応器の内容物を加熱、還流した(150-160℃)。反応を4時間続け、その時点で反応が完結せず、温度が低下したことを測定した。翌日、加熱を更に8時間にわたって再開し(165℃)、その時点で反応が完結したことを測定した。キシレンを真空蒸留によりストリッピングし、粘稠なオレンジ-赤色の液体を残した。温度を120℃に低下し、分析サンプル除去後に、生成物の質量が475gであることを測定した。その混合物はGPCにより測定して、Mn = 2250, Mw = 3900の分子量を有していた。混合物の13C NMR 分析はそれがパラメーターnに関して下記の特性を有することを示した。
【0031】

【0032】
グループI150中性油を添加し(475g) 、1時間にわたって混合して50%の活性成分でエトキシル化メチレン橋かけアルキルフェノール混合物(950g)をつくった。
実施例9(高度のキャッピングの性能影響)
【0033】
ベースオイル中に無灰分散剤、金属含有洗剤、亜鉛ジアルキルジチオホスフェート耐磨耗剤、補充酸化防止剤、粘度改質剤及び流動性改良剤を含むヘビーデューティディーゼル潤滑油配合Gを調製した。1.6質量%活性成分の実施例2を1.6質量%のベースオイルに代えて添加した以外は、同じ量の全ての添加剤を用いてヘビーデューティディーゼル配合Hを調製した。1.6質量%活性成分の実施例8を1.6質量%活性成分の実施例2に代えて置換した以外は、同じ量の全ての添加剤を用いてヘビーデューティディーゼル潤滑油配合Iを調製した。全てのヘビーデューティディーゼル潤滑油配合中の金属含有洗剤に対する無灰洗剤の質量比は1.3であった。
全ての3種の配合を熱酸化エンジンオイルシミュレーション試験 (“TEOST” 33C ; (ASTM 6335))で試験し、結果を表IV中で比較する。
表IV
【0034】

【0035】
13C NMR方法
定量13C NMR を使用して本明細書に報告されたn = 0含量、n = 1含量及びn≧2含量を測定した。部分エトキシル化オリゴマー中のn = 0 及びn = 1 の含量を比較するために、下記のダイヤグラムを使用し得る。
【0036】
【化3】

【0037】
n = 0 からn = 1への進行について、炭素A、B及びCは夫々150, 147 及び116 ppm から154, 152 及び110 ppmへの化学シフトを経験する。
60-76ppmの領域は(ポリ-)エトキシル化基の炭素の全てについての化学シフト範囲である。内部の(モノ-)ヒドロキシエチル炭素 (n = 1) が75及び61.4 ppmに見られ、一方、外部の(モノ-)ヒドロキシエチル炭素 (またn = 1) が69及び60.7 ppmに見られる。1個以上のエトキシ単位の付加 (即ち、n≧2) で、これらの同じ炭素シグナルが72、70及び61.1 ppmにあるブロードピークにシフトする。n≧2 含量を測定するために、75及び69ppmにある二つのピークの積分値の合計を61.4、61.1及び60.7ppmにある三つのピークの積分値の合計から引くことが可能である。更に、n = 1 対n≧2 の比率が直接比較でき(即ち、61.4及び60.7ppmにある二つのピークの積分値の合計対61.1ppmにあるピークの積分)、但し、NMR の分解能がこれらのピークを識別できるようにすることを条件とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) 潤滑粘度の油、及び
(B) 添加剤成分としての、オキシアルキル化ヒドロカルビルフェノール縮合物[ここで、フェノール官能基から調製されたオキシアルキル基は式-(R’O)n- (式中、R’はエチレン基、プロピレン基又はブチレン基であり、かつnは独立に0から10までである)を有し、
その縮合物のフェノール官能基の45モル%未満、好ましくは30モル%未満がオキシアルキル化されておらず (即ち、n = 0)、かつ
その縮合物のフェノール官能基の55モル%より多くがモノ-オキシアルキル化されている (即ち、n = 1)]
を含み、又はこれらを添加混合することによりつくられた潤滑油組成物。
【請求項2】
縮合物が下記の一般構造式:
【化1】

(式中、
xは1〜50、好ましくは1〜40、更に好ましくは1〜30であり、
R1 及びR2 はH、1〜12個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、又は1〜12個の炭素原子及び少なくとも1個のヘテロ原子を有するヒドロカルビル基であり、かつ
Rは9〜100個、好ましくは9〜70個、最も好ましくは9〜50個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である)
により表される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
R1 = H 、R2 = H かつRが-O-[CH2CH2O]nH 基に対しパラ位にある、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
添加剤成分(B) が1モル%未満、好ましくは0.5モル%未満、最も好ましくは0.1モル%未満の未反応アルキルフェノールを含む、請求項1から3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
添加剤成分Bのフェノール官能基の60モル%より多く、好ましくは70モル%より多く、好ましくは80モル%より多く、好ましくは90モル%より多く、又は最も好ましくは95モル%より多くがモノ-オキシアルキル化(即ち、n = 1)されている、請求項1から4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
添加剤成分Bのフェノール官能基の5モル%未満がポリ-オキシアルキル化(即ち、n ≧2)、例えば、ジ-オキシアルキル化、トリ-オキシアルキル化及びテトラ-オキシアルキル化されている、請求項1から5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
Rが独立に分岐鎖アルキル基(好ましくは9個から15個までの炭素原子を有する)である、請求項2から6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
(B) とは異なる一種以上のその他の添加剤成分を更に含む、請求項1から7のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
(B) とは異なる、その他の添加剤成分が、一種以上の無灰分散剤、腐食抑制剤、酸化防止剤、流動点降下剤、耐磨耗剤、摩擦改質剤、例えば、有機モリブデン化合物、解乳化剤、消泡剤及び粘度改質剤から選ばれる、請求項1から8のいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
ASTM D2896により測定して5以上のTBN、好ましくは8〜16のTBNを有する、請求項8又は9記載の組成物。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項記載の添加剤成分(B) の製造方法であって、その方法が(1) ヒドロカルビルフェノール-アルデヒド縮合物を生成するための、酸又は塩基触媒の存在下の、ヒドロカルビルフェノールとアルデヒドの縮合、及び(2) 前記縮合物を塩基触媒、好ましくはナトリウム塩の存在下で、縮合物中のフェノール官能基の各当量について0.5当量〜3当量未満、好ましくは2.5当量未満、好ましくは2.0当量未満のエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート又はブチレンカーボネートでオキシアルキル化する工程によりオキシアルキル化ヒドロカルビルフェノールアルデヒド縮合物を生成することを特徴とする前記製造方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項記載の添加剤成分(B) の製造方法であって、その方法が(1) ヒドロカルビルフェノールを塩基触媒、好ましくはナトリウム塩の存在下で、0.5当量〜3当量、好ましくは2.5当量未満、好ましくは2.0当量未満のエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート又はブチレンカーボネートでオキシアルキル化する工程及び(2) 酸又は塩基触媒の存在下の前記オキシアルキル化ヒドロカルビルフェノールとアルデヒドの縮合の工程によりオキシアルキル化ヒドロカルビルフェノール-アルデヒド縮合物を生成する工程を含むことを特徴とする前記製造方法。
【請求項13】
アルデヒドがホルムアルデヒドであり、かつカーボネートがエチレンカーボネートである、請求項11又は12記載の添加剤成分(B) の製造方法。
【請求項14】
請求項11から13のいずれか1項記載の方法により製造され、又は得られる請求項1から7のいずれか1項記載の添加剤成分(B)。
【請求項15】
好ましくは、添加剤成分(B) を含まない潤滑剤と比較した場合、又は好ましくはフェノール官能基の55モル%未満がモノ-オキシアルキル化されている添加剤成分(B) を含む潤滑剤と比較した場合に、潤滑剤の銅腐食特性に不利に影響しないでデポジットコントロール特性を改良するための請求項1から7又は14のいずれか1項記載の添加剤成分(B) の使用。
【請求項16】
少量の請求項1から7のいずれかに記載の一種以上の添加剤(B) 、過半量の潤滑粘度の油を用意して潤滑剤をつくって、その銅腐食特性に不利に影響しないでデポジットコントロール特性を改良し、
その潤滑剤を内燃エンジンのクランクケースに用意し、
炭化水素燃料をエンジンの燃焼チャンバーに用意し、そして
その燃料を燃焼チャンバー中で燃焼することによる運転中の内燃チャンバーの表面の潤滑方法。

【公開番号】特開2011−219755(P2011−219755A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84210(P2011−84210)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(500010875)インフィニューム インターナショナル リミテッド (132)
【Fターム(参考)】