説明

潤滑油組成物

【課題】天然ガス燃料エンジンにおける排気弁座の後退を防止もしくは抑制する方法を提供する。
【解決手段】天然ガス燃料エンジンを(a)主要量の潤滑粘度の油および(b)アルカリ金属含有清浄剤を含む天然ガスエンジン用潤滑油組成物で潤滑下に運転する。ただし、天然ガスエンジン用潤滑油組成物は実質的にアルカリ土類金属含有清浄剤およびリチウム含有清浄剤のいずれも含まない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に云って潤滑油組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天然ガス燃料エンジンは、天然ガスを燃料源として用いるエンジンである。天然ガスエンジンにおいて使用する潤滑油については、この種のエンジンに関する事情から、酸化、ニトロ化、および粘度増加に対して高い抵抗性を有する潤滑油が一般に好ましいとされている。
【0003】
天然ガスは、液体炭化水素燃料よりも高い特有の熱含量を有しており、それゆえ典型的な条件下では液体炭化水素燃料よりも、燃焼において高温になる。これに加えて、既に気体であるため、液体炭化水素燃料の液滴と比較して、天然ガスは蒸発によって吸気した空気を冷却することがない。さらにまた、多くの天然ガス燃料エンジンは、化学量論的条件もしくは近化学量論的条件のいずれにおいても作動し、そこでは過剰には至らない量の空気が燃焼ガスを希釈および冷却するために利用できる。その結果、天然ガス燃料エンジンでは、液体炭化水素燃料を燃焼するエンジンよりも高い燃焼ガス温度を生じる。大抵の場合、天然ガス燃料エンジンは70乃至100%の負荷で連続的に使用されるが、乗用車の走行において作動するエンジンは最大負荷の50%で使用されるであろう。
【0004】
ほぼ最大負荷で連続的に作動させる上記の条件では、潤滑油に対して厳しい要求が生じる。例えば、持続的な高温環境にさらされて潤滑を行うと、多くの場合、潤滑油の寿命は油の酸化によって制限される。また、窒素(NO)の生成速度が温度に対応して指数関数的に増加するため、潤滑油に深刻なニトロ化を起こすような充分に高いNO濃度が天然ガス燃料エンジンによって生じる可能性がある。
【0005】
エンジンの運転経費を低く維持するためには、バルブ(弁)の摩耗を良好に制御することも不可欠であって、それは適切な量および組成の灰分を供給することにより達成される。これに加えて、燃焼室での堆積物と点火プラグの付着物とを最小限度にすることを、上記のように油の灰分量を定める際に考慮すべきである。潤滑油における灰分の濃度は制限されているため、ピストンの堆積物とリング固着とが最小限度になるように清浄剤を注意して選択しなければならない。
【0006】
バルブの耐摩耗性は天然ガス燃料エンジンの耐久性にとって不可欠である。一般に、排気弁の後退は、バルブと弁座との界面において起こる摩耗であって、天然ガス燃料エンジンにおいて最も多く公表されているバルブの摩耗の形態でもある。バルブが弁座に対して適切に位置していないと、エンジンの粗雑な動き、不充分な燃費、および過剰な排気を起こす可能性がある。過剰なバルブの摩耗を是正するためには、常時、シリンダーヘッドを分解検査する必要がある。典型的な天然ガス燃料エンジンは、シリンダーヘッドの寿命が延びるように、バルブ面とそれと対をなす弁座表面とに非常に硬い耐腐食性物質を使用しているが、それによってもバルブの後退が完全に回避される訳ではない。
【0007】
天然ガス燃料エンジンと液体炭化水素燃料を燃料にするエンジンとでは、潤滑油に対する要求に相異がある。ディーゼル燃料のような液体炭化水素燃料の燃焼では、しばしば少量の不完全燃焼(例、排気微粒子)を生じる。液体炭化水素燃料エンジンでは、このような不燃物が小さいが臨界的な程度の潤滑性を排気バルブ/弁座界面に付与し、それによりシリンダーヘッドとバルブとの双方の耐久性を確保している。
【0008】
天然ガス燃料エンジンは、気体状態で燃焼室に導入された燃料を燃焼する。天然ガス燃料の燃焼は極めて完全な燃焼である場合が多く、不燃物質を実質的に伴うことがない。そのため、天然ガス燃料エンジンにおける排気バルブ/弁座界面に潤滑性を付与する液滴もしくはすすのような燃料系の潤滑剤が存在せず、吸気および排気バルブに重大な影響が及ぼす。従って、シリンダーヘッドとバルブの耐久性は潤滑油の灰分量と他の性質並びに高温のバルブ面とそれと対をなす弁座との間に潤滑剤を供給する消費速度により影響をうける。過度に少量の灰分もしくは不適切な種類の灰分ではバルブおよび弁座の摩耗を加速することがあり、一方、過度に多量の灰分はバルブに溝を発生させ、結果としてバルブから火炎を生じることもある。過度に多量の灰分は燃焼室の堆積物から圧縮もしくは爆発による損失をまねくこともある。従って、ガスエンジンの設計者は通常、彼らが知悉している狭い灰分量の範囲を特定した上で、最適な性能を提供している。大部分のガスは硫黄が少ないため、アルカリ度の要求に対応するための過剰な灰分は一般に必要とされず、灰分の濃度はバルブの側の必要性に応じて広い範囲で最適化される。ただし、これについては、サワーガスもしくは埋め立て地ガスを使用する場合に例外が起こり得る。
【0009】
特許文献1は、(a)主要量の潤滑粘度の油、(b)組成物の清浄性を改善するために充分な量の少なくとも一種のアルカリ土類金属スルホネート、並びに(c)(i)アルキレンポリアミン、(ii)アルデヒド、および(iii)置換フェノールの縮合生成物のアルカリ土類金属塩を少なくとも一種含み、該アルカリ土類金属塩がエンジンの排気バルブがエンジンのシリンダーヘッド内に後退することを防止するために充分な量で存在する潤滑油組成物を開示している。
【0010】
特許文献2は、相対的に多量の潤滑粘度の基油および相対的に少量でありASTM D874で約0.1乃至0.6%の灰分となる硫酸灰分量をもたらすために充分な量の添加剤混合物を含み、該添加剤混合物が清浄剤の混合物を含み、該清浄剤の混合物が約250以下の低塩基価(BN)である少なくとも一種の第一のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩またはその混合物および第一の低BN塩よりも中性である少なくとも一種の第二のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩またはその混合物を含む低灰のガスエンジン油を開示している。特許文献2は、さらに最終的に処方された典型的なガスエンジン油は、当業者に知られている他の標準的な添加剤も含むことができることを開示している。この添加剤はジチオリン酸亜鉛のような抗摩耗性の添加剤、分散剤、フェノール系もしくはアミン系の酸化防止剤、金属不活性剤、流動点降下剤、消泡剤、および粘度指数向上剤を含む。
【0011】
特許文献3は、ディーゼルもしくはガソリンエンジンのようなエンジンの潤滑に有効で、該エンジンが二ストロークもしくは四ストロークのいずれでもよい潤滑油添加剤として、アルカリ金属過塩基性清浄剤を開示している。特許文献3は、さらに過塩基性清浄剤が、作動系、変速機、二ストロークおよび四ストロークの乗用車用エンジン、トランクピストン、および二ストロークのクロスヘッド舶用エンジンのような陸上用および舶用エンジンにおける機械部品の潤滑に有効であることを開示している。アルカリ金属過塩基性清浄剤は、硫化されてもよく、少なくとも80質量%のアルキルヒドロキシベンゾエートを含むことができ、好ましいアルカリ金属はカリウムである。
【0012】
特許文献4は、(a)主要量の潤滑粘度の油、(b)一種以上のリチウム含有清浄剤、(c)リチウム含有清浄剤以外の一種以上の清浄剤、(d)一種以上の酸化防止剤、(e)一種以上の分散剤、および(f)一種以上の抗摩耗剤を含む潤滑油組成物を開示し、該潤滑油組成物が含むリチウム含有清浄剤は0.1質量%以下であり、リンは0.12質量%以下であり、カルシウム含有清浄剤を含まない。特許文献4は、さらにディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、および天然ガスエンジンのような内燃機関における処理後、潤滑油組成物が排気中の触媒毒を削減するために有用であることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第3798163号明細書
【特許文献2】米国特許第5726133号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第20050137098号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第20070129263号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
天然ガス燃料内燃機関における排気バルブの後退を防止もしくは抑制することができる改良された天然ガスエンジン用潤滑油組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様では、(a)主要量の潤滑粘度の油および(b)アルカリ金属含有清浄剤を含む天然ガスエンジン用潤滑油組成物を提供する、ただし該天然ガスエンジン用潤滑油組成物は実質的にアルカリ土類金属含有清浄剤およびリチウム含有清浄剤のいずれも含まない。
【0016】
本発明の第二の態様では、(a)主要量の潤滑粘度の油;(b)アルカリ金属含有清浄剤;(c)一種以上の分散剤;(d)一種以上の酸化防止剤;および(e)一種以上の抗摩耗剤を含む天然ガスエンジン用潤滑油組成物を提供する、ただし該天然ガスエンジン用潤滑油組成物は実質的にアルカリ土類金属含有清浄剤およびリチウム含有清浄剤のいずれも含まない。
【0017】
本発明の第三の態様では、天然ガス燃料エンジンにおける排気弁座の後退を防止もしくは抑制する方法を提供する、ただし該方法は(a)主要量の潤滑粘度の油および(b)アルカリ金属含有清浄剤を含む天然ガスエンジン用潤滑油組成物で天然ガス燃料エンジンを潤滑下に運転することを含み、該天然ガスエンジン用潤滑油組成物は実質的にアルカリ土類金属含有清浄剤およびリチウム含有清浄剤のいずれも含まない。
【0018】
本発明の第四の態様では、天然ガス燃料エンジンにおける排気バルブの後退の防止もしくは抑制によって確認される天然ガス燃料エンジンにおける排気バルブの寿命を延ばすための方法を提供する、ただし該方法は(a)主要量の潤滑粘度の油および(b)アルカリ金属含有清浄剤を含む天然ガスエンジン用潤滑油組成物で天然ガス燃料エンジンを潤滑下に運転することを含み、該天然ガスエンジン用潤滑油組成物は実質的にアルカリ土類金属含有清浄剤およびリチウム含有清浄剤のいずれも含まない。
【0019】
本発明の第五の態様では、天然ガス燃料エンジンにおける排気弁座の後退を防止もしくは抑制することを目的とする(a)主要量の潤滑粘度の油および(b)アルカリ金属含有清浄剤を含む天然ガスエンジン用潤滑油組成物の使用を提供する、ただし該天然ガスエンジン用潤滑油組成物は実質的にアルカリ土類金属含有清浄剤およびリチウム含有清浄剤のいずれも含まない。
【発明の効果】
【0020】
天然ガス燃料エンジンを(a)主要量の潤滑粘度の油および(b)アルカリ金属含有清浄剤を含む天然ガスエンジン用潤滑油組成物(ただし、該天然ガスエンジン用潤滑油組成物は実質的にアルカリ土類金属含有清浄剤およびリチウム含有清浄剤のいずれも含まない)で潤滑下に運転することにより、天然ガス燃料エンジンにおける排気弁座の後退を効果的に抑制もしくは防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[定義]
本明細書で使用する場合、異なる旨が明記される場合を除き、下記の用語は下記の意味を有する:
【0022】
「炭化水素基」との用語は、分子の残り部分に直接結合する炭素原子を有し、本発明の趣旨の範囲内で炭化水素もしくは主に炭化水素としての性質を有する基を示す。そのような基は、以下を含む:
【0023】
(1)純炭化水素基:脂肪族(例、アルキルもしくはアルケニル)、脂環式(例、シクロアルキルもしくはシクロアルケニル)、芳香族、脂肪族−および脂環式−置換芳香族、芳香族−置換脂肪族および脂環式の基その他、並びに環が分子の別の位置において完結している(すなわち、任意に二つの特定された置換基が一緒になって脂環式基を構成している)環状基。そのような基は当業者に公知である。例は、メチル、エチル、オクチル、デシル、オクタデシル、シクロヘキシル、フェニル等を含む。
【0024】
(2)置換炭化水素基:基の主に炭化水素としての性質を変更することがない非炭化水素置換基を含む基。当業者は適切な置換基を承知しているであろう。例は、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アルコキシ、アシル等を含む。
【0025】
(3)ヘテロ基:性質としては主に炭化水素であるが、鎖もしくは環に炭素以外の原子を含み、その他は炭素原子からなる基。適切なヘテロ原子は、当業者に明らかであり、例えば窒素、酸素、および硫黄を含む。炭化水素基において10の炭素原子毎に対して、一般に約3以下、好ましくは1以下の置換基もしくはヘテロ原子が存在する。
【0026】
「炭化水素」および「炭化水素系」との用語は同義であり、分子の残りの部分に直接結合する炭素原子を有する分子群を意味する場合には、炭化水素基との用語と互換的に使用される。
【0027】
ここで炭化水素基、アルキル、アルケニル、アルコキシその他のような用語と組み合わせて使用する「低級」との用語は、全体で7以下の炭素原子を含むような基を記述することを意図している。
【0028】
「油溶性」との用語は、25℃においてリットル当たり少なくとも約1グラムの程度まで鉱物油に溶解する物質を意味する。
【0029】
ここで使用する「塩基価」もしくは「BN」との用語は、試料1グラムにおいてミリグラム単位のKOHと当量である塩基の量を意味する。従って、より高いBN数は生成物のアルカリ性がより高いこと、すなわち、より大きなアルカリ度を反映する。BNは、ASTM D2896試験を用いて決定する。
【0030】
本発明は、少なくとも(a)相対的に多量の潤滑粘度の油;および(b)相対的に少量のアルカリ金属含有清浄剤を含む天然ガスエンジン用潤滑油組成物に関するものであるが、この天然ガスエンジン用潤滑油組成物は実質的にアルカリ土類金属含有清浄剤およびリチウム含有清浄剤のいずれも含まない。この天然ガスエンジン用潤滑油組成物は、天然ガス燃料エンジンにおける排気弁座の後退を抑制するために特に有用である。ここで使用する「実質的に含まない」との用語は、潤滑油組成物においてアルカリ土類金属含有清浄剤およびリチウム含有清浄剤のそれぞれについて、仮に存在するとしても痕跡量のみ、一般には潤滑油組成物の全質量に基づき0.001質量%未満を意味すると理解すべきである。アルカリ土類金属含有清浄剤の例はカルシウム含有清浄剤、バリウム含有清浄剤、マグネシウム含有清浄剤、ストロンチウム含有清浄剤その他を含む。ある態様では、天然ガスエンジン用潤滑油組成物が実質的にカルシウム含有清浄剤を含まない。
【0031】
別の態様では、天然ガスエンジン用潤滑油組成物は、実質的にアルキレンポリアミン、アルデヒド、および置換フェノールの縮合生成物のアルカリ土類金属塩も含まない。この態様に関して理解されるべき「実質的に含まない」との用語は、潤滑油組成物において縮合生成物のアルカリ土類金属塩について、仮に存在するとしても痕跡量のみ、一般には潤滑油組成物の全質量に基づき0.001質量%未満を意味すると理解されるべきであろう。
【0032】
本発明に従う天然ガスエンジン用潤滑油組成物は、ASTM D874で測定して約1.5質量%以下の硫酸灰分量、好ましくはASTM D874で測定して約0.95質量%以下の硫酸灰分量、最も好ましくはASTM D874で測定して約0.5質量%以下の硫酸灰分量を有する。ある態様では、天然ガス燃料エンジンにおいて使用する本発明に従う潤滑油組成物は、ASTM D874で測定して約0.1質量%乃至約1.5質量%、好ましくはASTM D874で測定して約0.12質量%乃至約0.95質量%、最も好ましくはASTM D874で測定して約0.15質量%乃至約0.5質量%の硫酸灰分量を有する。潤滑油の灰分は、炭化水素燃料エンジンおいて自然に生じる排気微粒子の代わりに、バルブ/弁座界面を保護する固体潤滑剤として有利に作用する。
【0033】
ある態様では、本発明の天然ガスエンジン用潤滑油組成物は、実質的にいずれのリンも含まない(例、リン量が0.08質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下)。別の態様では、本発明の潤滑油組成物が含む硫黄は比較的低レベルであって、具体的には0.7質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。
【0034】
本発明が適用できる内燃機関は、天然ガスにより作動する機関、すなわち天然ガスを燃料とする機関である。そのような機関の例は、四サイクルエンジンその他を含む。好ましい態様では、内燃機関は、例えばガス井地上部の集積、圧縮、その他のガスパイプライン設備;発電(コジェネレーションを含む);および揚水で使用される静止エンジンである。
【0035】
本発明の天然ガスエンジン用潤滑油組成物において使用する潤滑粘度の油は、基油とも呼ばれ、一般に主要量、例えば組成物の全質量に基づき50質量%を超える量、好ましくは約70質量%を超える量、さらに好ましくは約80乃至約99.5質量%、最も好ましくは約85乃至約98質量%で存在する。ここで使用する「基油」との表現は、単一の製造者により同一の仕様に(供給源や製造者の所在地とは無関係に)製造され、同じ製造者の仕様を満たし、かつ各々の処方、製造物確認番号またはその両方によって識別される潤滑剤成分である、基材油もしくは配合された基材油を意味すると理解するべきである。ここで使用される基油は、ありとあらゆる用途(例、エンジン油、舶用シリンダー油、機能液、具体的には油圧作動油、ギヤ油、変速機液等)で潤滑油組成物を処方する際に使用される、今日知られているか、あるいは後日発見される如何なる潤滑粘度の油であってもよい。さらに、ここで使用される基油は任意に、粘度指数向上剤(例、高分子量アルキルメタクリレート類;エチレン−プロピレン共重合体またはスチレン−ブタジエン共重合体などのオレフィン共重合体;その他、およびそれらの混合物)を含んでいてもよい。
【0036】
当業者であれば容易に理解できるように、基油の粘度は用途に依存する。従って、ここで使用する基油の粘度は、通常、摂氏100度(℃)で約2乃至約2000センチストークス(cSt)の範囲にある。一般にエンジン油として使用される個々の基油は、動粘度範囲が100℃で約2cSt乃至約30cSt、好ましくは約3cSt乃至約16cSt、最も好ましくは約4cSt乃至約12cStであり、そして所望の最終用途および最終油の添加剤に応じて選択または配合されて、所望のグレードのエンジン油、例えばSAE粘度グレードが0W、0W−20、0W−30、0W−40、0W−50、0W−60、5W、5W−20、5W−30、5W−40、5W−50、5W−60、10W、10W−20、10W−30、10W−40、10W−50、15W、15W−20、15W−30、15W−40、30、40その他の潤滑油組成物を与える。
【0037】
基材油は様々な種類の方法を用いて製造することができ、その例は、限定されるものではないが、蒸留、溶剤精製、水素処理、オリゴマー化、エステル化および再精製を含む。再精製基材油には、製造、汚染もしくは以前の使用によって混入した物質が実質的に含まれない。本発明の潤滑油組成物の基油は、如何なる天然もしくは合成潤滑基油であってもよい。適切な炭化水素合成油は、限定されるものではないが、エチレンの重合または1−オレフィン類の重合で重合体にすることにより製造された油、例えばポリアルファオレフィン(PAO)油もしくはフィッシャー・トロプシュ法のような一酸化炭素ガスと水素ガスとを用いた炭化水素合成法により製造された油を含む。例えば適切な基油は、重質留分を含む場合でもその量がわずかであり、例えば粘度が約100℃で20cSt以上の潤滑油留分をほとんど含むことのない油である。
【0038】
基油は、天然潤滑油、合成潤滑油、もしくはそれらの混合物から誘導することができる。適切な基油は、合成ろうおよび粗ろうの異性化により得られる基材油、並びに粗原料の芳香族および極性成分を(溶剤抽出というよりはむしろ)水素化分解することにより生成する水素化分解基材油を含む。適切な基油は、API公報1509、第14版、補遺I、1998年12月に規定された全API分類I、II、III、IV、およびVに属するものを含む。IV種基油はポリアルファオレフィン(PAO)類である。V種基油には、I、II、III、もしくはIV種に含まれなかったその他全ての基油が含まれる。II、III、およびIV種基油が本発明に使用するのに好ましいが、これらの基油は、I、II、III、IV、およびV種基材油もしくは基油のうちの一種以上を組み合わせることにより製造することができる。
【0039】
有用な天然油は、鉱物潤滑油、例えば液体石油、パラフィン系、ナフテン系、もしくは混合パラフィン−ナフテン系の溶剤処理もしくは酸処理鉱物潤滑油、石炭もしくは頁岩から誘導された油、動物油および植物油(例、ナタネ油、ヒマシ油、およびラード油)その他を含む。
【0040】
有用な合成潤滑油は、限定されるものではないが、炭化水素油およびハロゲン置換炭化水素油、例えば重合化および共重合化オレフィン類、具体的にはポリブチレン類、ポリプロピレン類、プロピレン・イソブチレン共重合体、塩素化ポリブチレン類、ポリ(1−ヘキセン)類、ポリ(1−オクテン)類、ポリ(1−デセン)類その他およびそれらの混合物;アルキルベンゼン類、例えばドデシルベンゼン類、テトラデシルベンゼン類、ジノニルベンゼン類、ジ(2−エチルヘキシル)ベンゼン類その他;ポリフェニル類、例えばビフェニル類、ターフェニル類、アルキル化ポリフェニル類その他;アルキル化ジフェニルエーテル類およびアルキル化ジフェニルスルフィド類並びにそれらの誘導体、類似物、および同族体その他を含む。
【0041】
他の有用な合成潤滑油は、限定されるものではないが、炭素原子数が5未満のオレフィン類、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン類、イソブテン、ペンテン、およびそれらの混合物を重合することにより製造された油を含む。そのような重合油の製造方法は当業者によく知られている。
【0042】
別の有用な合成炭化水素油は、適正な粘度を有するアルファオレフィン類の液体重合体を含む。特に有用な合成炭化水素油は、C乃至C12アルファオレフィンの水素化液体オリゴマー類、例えば1−デセン三量体である。
【0043】
有用な合成潤滑油の別の分類は、限定されるものではないが、アルキレンオキシド重合体、すなわち単独重合体、共重合体、および末端ヒドロキシル基が例えばエステル化もしくはエーテル化により変性したそれらの誘導体を含む。これらの油の例は、エチレンオキシドもしくはプロピレンオキシドの重合により製造された油、これらポリオキシアルキレン重合体のアルキルおよびフェニルエーテル類(例、平均分子量1000のメチルポリプロピレングリコールエーテル、分子量500乃至1000のポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、分子量1000乃至1500のポリプロピレングリコールのジエチルエーテル等)、もしくはそれらのモノおよびポリカルボン酸エステル類、例えば酢酸エステル類、混合C乃至C脂肪酸エステル類、もしくはテトラエチレングリコールのC13オキソ酸ジエステルである。
【0044】
有用な合成潤滑油のさらに別の分類は、限定されるものではないが、ジカルボン酸類(例、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸等)と各種アルコール類(例、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール等)とのエステル類を含む。これらエステル類の具体例は、ジブチルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジ−n−ヘキシルフマレート、ジオクチルセバケート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソデシルアゼレート、ジオクチルフタレート、ジデシルフタレート、ジエイコシルセバケート、リノール酸二量体の2−エチルヘキシルジエステル、およびセバシン酸1モルをテトラエチレングリコール2モルおよび2−エチルヘキサン酸2モルと反応させて生成した複合エステルその他を含む。
【0045】
合成油として有用なエステル類は、限定されるものではないが、炭素原子数が約5乃至約12のカルボン酸類と、アルコール類(例、メタノール、エタノール等、ポリオールおよびポリオールエーテル類、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトールその他)とから製造されたものも含む。
【0046】
ケイ素系の油、例えばポリアルキル−、ポリアリール−、ポリアルコキシ−、もしくはポリアリールオキシ−シロキサン油およびシリケート油は、合成潤滑油の別の有用な分類を構成する。これらの具体例は、限定されるものではないが、テトラエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラ(2−エチルヘキシル)シリケート、テトラ(4−メチルヘキシル)シリケート、テトラ(p−tert−ブチルフェニル)シリケート、ヘキシル(4−メチル−2−ペントキシ)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン類、およびポリ(メチルフェニル)シロキサン類その他を含む。さらに別の有用な合成潤滑油は、限定されるものではないが、リン含有酸の液体エステル類(例、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、デカンホスフィン酸のジエチルエステル等)、および高分子量テトラヒドロフラン類その他を含む。
【0047】
潤滑油は、以上に開示したこれらの種類のうちの天然、合成、もしくは任意の二種以上の混合物の未精製、精製、および再精製の油から誘導することができる。未精製油は、天然もしくは合成原料(例、石炭、頁岩またはタール・サンド・ビチューメン)から直接に、それ以上の精製や処理を施すことなく得られた油である。未精製油の例は、限定されるものではないが、レトルト操作により直接得られた頁岩油、蒸留により直接得られた石油、またはエステル化処理により直接得られたエステル油を含み、これらの各々はその後それ以上の処理なしで使用される。精製油は、一つ以上の性状を改善するために一以上の精製工程でさらに処理されたことを除いては、未精製油と同じである。これらの精製技術は、当業者に知られているが、例えば溶剤抽出、二次蒸留、酸もしくは塩基抽出、ろ過、パーコレート、水素化処理、脱ろう等が挙げられる。再精製油は、精製油を得るのに用いたのと同様の方法で使用済の油を処理することにより得られる。そのような再精製油は、再生もしくは再処理油としても知られていて、使用された添加剤や油分解生成物の除去を目的とする技術によりしばしばさらに処理される。
【0048】
ろうの水素異性化から誘導された潤滑油基材油も、単独で、あるいは前記天然および/または合成基材油と組み合わせて使用することができる。そのようなろう異性化油は、天然もしくは合成ろうまたはそれらの混合物を水素異性化触媒で水素異性化することにより生成する。
【0049】
天然ろうは一般に、鉱物油を溶剤脱ろうすることにより回収された粗ろうであり、合成ろうは一般に、フィッシャー・トロプシュ法により生成したろうである。有用な潤滑粘度の油の例は、異性化ろう基油およびUCBO(非在来型基油)基油のようなHVIおよびXHVI基材油を含む。
【0050】
本発明の天然ガスエンジン用潤滑油組成物は、実質的にアルカリ土類金属含有清浄剤およびリチウム含有清浄剤のいずれも含まず、さらにリチウム含有清浄剤以外のアルカリ金属含有清浄剤を含む。適切なアルカリ金属含有清浄剤は、ナトリウムおよびカリウム含有清浄剤を含む。一般に、本発明の天然ガスエンジン用潤滑油組成物において使用するためのアルカリ金属含有清浄剤は、例えば有機硫黄酸、カルボン酸、ラクトン、もしくはフェノールの塩である。これらの塩は、中性もしくは過塩基性であってもよい。過塩基性アルカリ金属含有清浄剤は、低度もしくは中度の過塩基性のアルカリ金属含有清浄剤であってもよい。アルカリ金属含有清浄剤のBNは、約1乃至約200、好ましくは約1乃至約80の範囲内とすることができる。
【0051】
中性塩は、塩のアニオン中に存在する酸性基を中和するために、ちょうど充分な量の金属カチオンを含み;一方、過塩基性塩は過剰な金属カチオンを含み、塩基性もしくは超塩基性の塩と称される場合もある。ここで使用する「金属比」との用語は、過塩基性となる有機酸と塩基性において反応する金属化合物とについて公知の化学反応性および化学量論に従い二つの反応体間の反応の結果として生じることが予想される塩における金属の化学当量に対する、過塩基性塩における金属の全化学当量の比率を意味する。従って、通常もしくは中性の塩では金属比が1であり、過塩基性塩では金属比が1よりも大きい。
【0052】
ある態様では、本発明においてアルカリ金属含有清浄剤として使用する過塩基性塩は少なくとも約1.2:1の金属比を有することができる。別の態様では、アルカリ金属含有清浄剤として使用する過塩基性塩は少なくとも約1.4:1の金属比を有することができる。多くの場合、過塩基性塩は少なくとも約2:1の比を有し、ある態様では少なくとも約4:1である。ただし、過塩基性塩は約20:1以下の金属比を有してもよい。
【0053】
有機硫黄酸は、スルホン酸、スルファミン酸、チオスルホン酸、スルフィン酸、スルフェン酸、部分エステル化硫酸、亜硫酸、およびチオ硫酸のような油溶性有機硫黄酸である。一般に、それらは脂肪族もしくは芳香族スルホン酸の塩である。
【0054】
スルホン酸は、単核もしくは多核の芳香族もしくはシクロ脂肪族化合物を含む。スルホン酸は、下記式IもしくはIIの一つにより主要部を示すことができる:
(SOH) (I)
(RT(SOH) (II)
式中、Tは芳香族核であり、例えばベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ジフェニレンオキシド、チアントレン、フェノチオキシン、ジフェニレンスルフィド、フェノチアジン、ジフェニルオキシド、ジフェニルスルフィド、ジフェニルアミンその他であり;RおよびRは、それぞれ独立に、脂肪族基であり、Rは少なくとも約15の炭素原子を含み、RおよびTに含まれる炭素原子の合計は少なくとも約15であり、そしてr、x、およびyは、それぞれ独立に、1以上である。Rの具体例は、ペトロラタム、飽和および不飽和パラフィンろう、並びに約15乃至約7000以上の炭素原子を含む重合化C乃至Cオレフィン類を含むポリオレフィン類から誘導される基を含む。上記式におけるT、R、およびRの基は、上に列挙したものに加えて、他の無機もしくは有機置換基(例、ヒドロキシ、メルカプト、ハロゲン、ニトロ、アミノ、ニトロソ、スルフィド、ジスルフィド等)を含むことができる。分子当たり、下付文字xは一般に1−3、下付文字rおよびyは一般に約1−4の値を有する。
【0055】
式IおよびIIの油溶性スルホン酸の例について一つの分類は、マホガニースルホン酸;ブライトストックスルホン酸;100°Fにおいて約100秒乃至210°Fにおいて約200秒のセイボルト粘度を有する潤滑油留分から誘導されるスルホン酸;ペトロラタムスルホン酸;例えばベンゼン、ナフタレン、フェノール、ジフェニルエーテル、ナフタレンジスルフィド、ジフェニルアミン、チオフェン、アルファ−クロロナフタレン等のモノ−およびポリ−ろう置換スルホンおよびポリスルホン酸;他の置換スルホン酸、例えばアルキルベンゼンスルホン酸(ここで、アルキル基は少なくとも8の炭素を有する)、セチルフェノールモノスルフィドスルホン酸、ジセチルチアントレンジスルホン酸、ジラウリルベータナフチルスルホン酸、およびアルカリールスルホン酸、例えばドデシルベンゼン「残油」スルホン酸を含む。列挙した全てのスルホン酸については、対応するそれらの中性および塩基性金属塩も明示されていると解すべきことを意図していると理解すべきである。
【0056】
アルカリールスルホン酸は、プロピレン四量体もしくはイソブテン三量体によりアルキル化されて、ベンゼン環上に1、2、3、もしくはそれ以上の分岐鎖C12置換基が導入されたベンゼンから誘導される酸である。ドデシルベンゼン残油、主にモノ−およびジ−ドデシルベンゼンの混合物は、家庭用洗剤の製造における副生成物を利用できる。鎖状アルキルスルホネート(LAS)の製造において生成されるアルキル化残油より得られる類似の生成物も、本発明に用いるアルカリ金属含有スルホネート清浄剤に有用である。
【0057】
清浄剤製造の副生成物からのスルホネートの生成は、当業者に良く知られている。例えば、カーク・オスマー「工業化学百科事典」における「スルホネート」の条項、第二版、19巻、291頁以降、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ、ニューヨーク(1969年)を参照されたい。
【0058】
中性および塩基性スルホネート塩およびそれらの製造方法に関するその他の記載は、例えば米国特許第2174110号、同第2174506号、同第2174508号、同第2193824号、同第2197800号、同第2202781号、同第2212786号、同第2213360号、同第2228598号、同第2223676号、同第2239974号、同第2263312号、同第2276090号、同第2276097号、同第2315514号、同第2319121号、同第2321022号、同第2333568号、同第2333788号、同第2335259号、同第2337552号、同第2347568号、同第2366027号、同第2374193号、同第2383319号、同第3312618号、同第3471403号、同第3488284号、同第3595790号、および同第3798012号の各明細書を参照することができる。さらに、脂肪族スルホン酸、例えばパラフィンろうスルホン酸、不飽和パラフィンろうスルホン酸、ヒドロキシ置換パラフィンろうスルホン酸、ヘキサプロピレンスルホン酸、テトラアミレンスルホン酸、ポリイソブテンスルホン酸(ただし、ポリイソブテンは約20乃至約7000以上の炭素原子を含む)、クロロ置換パラフィンろうスルホン酸、ニトロ−パラフィンろうスルホン酸等;シクロ脂肪族スルホン酸、例えば石油ナフテンスルホン酸、セチルシクロペンチルスルホン酸、ラウリルシクロヘキシルスルホン酸、ビス(ジイソブチル)シクロヘキシルスルホン酸、モノ−もしくはポリ−ろう置換シクロヘキシルスルホン酸等が含まれる。
【0059】
本明細書および添付の特許請求の範囲に記載したスルホン酸もしくはその塩については、ここで「石油スルホン酸」もしくは「石油スルホネート」との用語を採用して、石油生成物から誘導される全てのスルホン酸もしくはその塩を包含することを意図する。石油スルホン酸の特に価値があるグループは、硫酸処理による石油ホワイトオイルの製造における副生成物として得られるマホガニースルホン酸(それらの赤褐色の色からそのように呼ばれる)である。
【0060】
適切な中性および塩基性アルカリ金属含有塩を製造できるカルボン酸は、脂肪族、シクロ脂肪族、および芳香族のモノおよびポリ塩基性カルボン酸、例えばナフテン酸、アルキル−もしくはアルケニル−置換シクロペンタン酸、アルキル−もしくはアルケニル−置換シクロヘキサン酸、アルキル−もしくはアルケニル−置換芳香族カルボン酸を含む。脂肪族酸は、一般に少なくとも約8の炭素原子、ある態様では少なくとも約12の炭素原子を含む。通常は、それらは約400以下の炭素原子を有する。一般に、脂肪族炭素鎖が分岐している場合、所定の炭素原子の量において酸はより油溶性になる。シクロ脂肪族および脂肪族カルボン酸は、飽和もしくは不飽和のいずれでもよい。具体例は、2−エチルヘキサン酸、アルファ−リノレン酸、プロピレン四量体−置換マレイン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、ラウリン酸、オレイン酸、リシノール酸、デカン酸、ウンデカン酸、ジオクチルシクロペンタンカルボン酸、ミリスチン酸、ジラウリルデカヒドロナフタレンカルボン酸、ステアリルオクタヒドロインデンカルボン酸、パルミチン酸、および二種類以上のカルボン酸の市販混合物、例えばトール油酸、ロジン酸その他を含む。
【0061】
本発明で使用する塩の製造に使用できる油溶性カルボン酸の有用な一つのグループは、油溶性芳香族カルボン酸である。これらの酸は式IIIで表される:
(R−Ar(CXXH) (III)
式中、Rは、少なくとも4の炭素原子かつ約400以下の脂肪族炭素原子を有する脂肪族炭化水素系の基であり、aは1乃至4の整数であり、Arは約14炭素原子以下の多価芳香族炭化水素核であり、Xは、それぞれ独立に、硫黄もしくは酸素原子であり、mは1乃至4の整数であり、ただしRおよびaは、式IIIで表される酸分子のそれぞれについて、R基で与えられる脂肪族炭素原子が少なくとも8個平均で存在するように設定する。Arで表される芳香族核の例は、例示すると、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン、フルオレン、ビフェニルその他から誘導される多価芳香族基を含む。一般に、Arで表される基は、ベンゼンもしくはナフタレンから誘導される多価の核であって、例えばフェニレンおよびナフチレン(例、メチルフェニレン、エトキシフェニレン、ニトロフェニレン、イソプロピルフェニレン、ヒドロキシフェニレン、メルカプトフェニレン、N,N−ジエチルアミノフェニレン、クロロフェニレン、ジプロポキシナフチレン、トリエチルナフチレン)および類似するそれらの三価、四価、五価の核その他である。
【0062】
式IIIにおけるR基は、通常、純粋な炭化水素基であり、アルキルもしくはアルケニル基のような基を含む。ただし、R基は少数の置換基、例えばフェニル、シクロアルキル(例、シクロヘキシル、シクロペンチル等)、および非炭化水素基、例えばニトロ、アミノ、ハロゲン(例、クロロ、ブロモ等)、低級アルコキシ、低級アルキルメルカプト、オキソ置換基(すなわち、=O)、チオ基(すなわち、=S)、介在基、例えば−NH−、−O−、−S−その他を、R基の炭化水素としての性質が本質的に維持されることを条件に有することができる。R基に存在する全ての非炭素原子がR基の全質量の約10%以上に達しない限り、本発明の目的のための炭化水素としての性質は維持される。
【0063】
基の例は、限定されるものではないが、ブチル、イソブチル、ペンチル、オクチル、ノニル、ドデシル、ドコシル、テトラコンチル、5−クロロヘキシル、4−エトキシペンチル、2−ヘキセニル、e−シクロヘキシルオクチル、4−(p−クロロフェニル)オクチル、2,3,5−トリメチルヘプチル、2−エチル−5−メチルオクチル、および重合化オレフィン、例えばポリクロロプレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレン共重合体、塩素化オレフィン重合体、酸化エチレン−プロピレン共重合体その他から誘導される置換基を含む。同様に、Ar基は非炭化水素置換基、例えば低級アルコキシ、低級アルキルメルカプト、ニトロ、ハロゲン、4未満の炭素原子を有するアルキルもしくはアルケニル基、ヒドロキシ、メルカプトその他のような様々な置換基を含むことができる。
【0064】
有用なカルボン酸として分類されるものは、下記式IVである:
【0065】
【化1】

【0066】
式中、R、X、Ar、m、およびaは前述した意味を有し、pは1乃至4の整数、通常は1もしくは2である。
このグループにおいて、有用な油溶性カルボン酸として分類されるものは、下記式Vである:
【0067】
【化2】

【0068】
式中、R**は少なくとも4乃至約400の炭素原子を含む脂肪族炭化水素基であり、aは1乃至3の整数であり、bは1もしくは2であり、cは0、1、もしくは2であり、ある態様ではR**およびaは、酸分子が脂肪族炭化水素置換基中に酸分子当たり少なくとも平均で約12の脂肪族炭素原子を含むことを条件に、1である。
後者の油溶性カルボン酸のグループでは、脂肪族炭化水素置換基がそれぞれ平均で置換基当たり少なくとも約8の炭素原子、ある態様では少なくとも約16の炭素原子を含み、分子当たり1乃至3の置換基を有する脂肪族炭化水素置換サリチル酸が特に有用である。有用な脂肪族炭化水素置換サリチル酸は、C16乃至C18アルキルサリチル酸である。使用できる塩を製造する脂肪族炭化水素置換サリチル酸では、脂肪族炭化水素置換基が重合化オレフィン、特に重合化低級1−モノオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、エチレン/プロピレン共重合体その他から誘導され、約30乃至約400の炭素原子からなる平均炭素量を有する。
【0069】
上記各式で説明した種類のカルボン酸およびそれらの中性および塩基性金属塩の製造方法は良く知られており、例えば米国特許第2197832号、同第2197835号、同第2252662号、同第2252664号、同第2714092号、同第3410798号、および同第3595791号の各明細書に記載があり、それらの内容は、本明細書の記載としてここに取り込む。
【0070】
ここで使用する別の種類の中性および塩基性カルボン酸塩は、一般式VIの炭化水素置換コハク酸から誘導されるものである:
【0071】
【化3】

【0072】
式中、Rは前述の意味を有する。
これらの塩の例は、米国特許第3271130号、同第3567637号、および同第3632610号の各明細書に記載がある。
【0073】
スルホン酸および/またはカルボン酸の塩基性塩の製造方法は良く知られており、例えば米国特許第2501731号、同第2616904号、同第2616905号、同第2616906号、同第2616911号、同第2616924号、同第2616925号、同第2617049号、同第2777874号、同第3027325号、同第3256186号、同第3282835号、同第3384585号、同第3373108号、同第3368396号、同第3342733号、同第3320162号、同第3312618号、同第3318809号、同第3471403号、同第3488284号、同第3595790号、および同第3629109号の各明細書を参照することができる。
【0074】
有用なカルボン酸誘導体の別のグループは、式VIIで表されるラクトンを含む:
【0075】
【化4】

【0076】
式中、R、R、R、R、R、およびRは独立に、H、1乃至約30の炭素原子を有する炭化水素基もしくはヒドロキシ置換炭化水素基であるが、全炭素原子数が該ラクトンを油溶性にするために充分な数であることが条件であり;RおよびRは一緒に結合して脂肪族もしくは芳香族環を形成してもよく;そして、aは0乃至約4の範囲の数である。
【0077】
適切なアルカリ金属含有清浄剤の他の例は、フェノール類の(一般にフェネートとして知られる)中性および塩基性塩を含み、当業者に良く知られている。これらのフェネートを生成するためのフェノール類は、下記式VIIIである:
(R−(Ar)−(OH) (VIII)
式中、R、a、Ar、およびmは前述した意味を有する。式IIIに関する上記のR、a、Ar、およびmと同じ例も、同様に適用される。一般に有用なフェネートの分類は、式IXのフェノール類から製造されるものである:
【0078】
【化5】

【0079】
式中、aは1乃至3の整数であり、bは1もしくは2であり、zは0もしくは1であり、Rは平均で約30乃至約400の脂肪族炭素原子を有する実質的に飽和の炭化水素系置換基であり、R10は低級アルキル、低級アルコキシ、ニトロ、およびハロゲン基からなる群より選ばれる。
【0080】
本発明に使用するフェネートの分類の一つは、硫黄、ハロゲン化硫黄、またはスルフィドもしくはヒドロスルフィド塩のような硫化剤で上記のフェノールを硫化することにより製造される塩基性(すなわち、過塩基性等)アルカリ金属硫化フェネートである。これらの硫化フェネートの製造技術は、例えば米国特許第2680096号、同第3036971号、および同第3775321号の各明細書に記載がある。
【0081】
有用な他のフェネートは、アルキレン(例、メチレン)架橋を経由して連絡されたフェノール類から製造される。これらは、酸もしくは塩基性触媒の存在下で単環もしくは多環のフェノール類をアルデヒドもしくはケトンと反応させることにより製造される。そのように連絡されたフェネート並びに硫化フェネートは、例えば米国特許第3350038号明細書に詳細に記載されている。
【0082】
他の有用なアルカリ金属含有清浄剤は、アルカリ金属アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤であり、例えば米国特許出願公開第20070027043号明細書に記載されており、その記載は参考のため本明細書の記載とする。一般に、アルカリ金属アルキルヒドロキシベンゾエートは、下記式Xの構造を有することができる:
【0083】
【化6】

【0084】
式中、Rは直鎖脂肪族基、分岐鎖脂肪族基、もしくは直鎖および分岐鎖脂肪族基の混合物であり、Mはカリウムもしくはナトリウムである。好ましくは、Rはアルキルもしくはアルケニル基である。さらに好ましくは、Rはアルキル基である。Rが直鎖脂肪族基である場合、直鎖アルキル基は一般に約12乃至約40の炭素原子、さらに好ましくは約18乃至約30の炭素原子を含む。Rが分岐鎖脂肪族基である場合、一般に少なくとも約9の炭素原子、好ましくは約9乃至約40の炭素原子、さらに好ましくは約9乃至約24の炭素原子、最も好ましくは約10乃至約18の炭素原子を含む。そのような分岐鎖脂肪族基は、好ましくはプロピレンもしくはブテンのオリゴマーから誘導される。
【0085】
Rは直鎖および分岐鎖脂肪族基の混合物を表すこともできる。好ましくは、Rは約20乃至約30の炭素原子を含む直鎖アルキルおよび約12の炭素原子を含む分岐鎖アルキルの混合物を表す。Rが脂肪族基の混合物を表す場合、本発明に用いるアルカリ金属アルキルヒドロキシベンゾエートは、直鎖基の混合物、分岐鎖基の混合物、もしくは直鎖および分岐鎖基の混合物のいずれも含むことができる。従って、Rは直鎖脂肪族基、例えばC14乃至C16、C16乃至C18、C18乃至C20、C20乃至C22、C20乃至C24、およびC20乃至C28アルキル、およびそれらの混合物からなる群より選ばれるアルキル基の混合物であり、直鎖アルファオレフィンから誘導される。これらの混合物は、少なくとも約95モル%、好ましくは約98モル%のアルキル基を含むことが有利である。
【0086】
本発明の天然ガスエンジン用潤滑油組成物で使用するアルカリ金属アルキルヒドロキシベンゾエートは、Rがアルキル基の混合物を表す場合、直鎖アルファオレフィン留分、例えばシェブロン・フィリップス・ケミカル社からノーマル・アルファ・オレフィンC26−C28もしくはノーマル・アルファ・オレフィンC20−C24の名称で市販されているもの、BP社からC20−C26オレフィンの名称で市販されているもの、シェル・シミー社からSHOP C20−22の名称で市販されているもの、もしくはそれらの留分の混合物、あるいはこれらの会社から入手される約20乃至28の炭素原子を有するオレフィンから製造することができる。
【0087】
式Xの−COOM基は、ヒドロキシル基の位置に対して、オルト、メタ、もしくはパラ位のいずれでも良い。
【0088】
アルカリ金属アルキルヒドロキシベンゾエートは、−COOM基をオルト、メタ、もしくはパラ位に有するアルカリ金属アルキルヒドロキシベンゾエートの任意の混合物であってもよい。
【0089】
アルカリ金属アルキルヒドロキシベンゾエートは、中性もしくは過塩基性であってもよい。高度に過塩基性のアルカリ金属アルキルヒドロキシベンゾエートのBNは、約250より大きく、好ましくは約250乃至約450であり、さらに好ましくは約300乃至約400であり、粗沈降物が通常は約3容量%未満、好ましくは約2容量%未満、さらに好ましくは約1容量%未満である。中度に過塩基性のアルカリ金属アルキルヒドロキシベンゾエートは、BNが約100乃至約250であり、好ましくは約140乃至約230であり、粗沈降物が一般に約1容量%未満、好ましくは約0.5容量%未満である。
【0090】
一般に、過塩基性アルカリ金属アルキルヒドロキシベンゾエートは、アルカリ金属アルキルヒドロキシベンゾエートもしくはアルカリ金属アルキルヒドロキシベンゾエートとアルキルフェノールとの混合物であって、アルキルフェノールがアルキルヒドロキシベンゾエートとアルキルフェノールとの全混合物に基づき50モル%以下である混合物を、過剰モルのアルカリ金属塩基および少なくとも一種の酸性過塩基性化物質を用いて、少なくとも一種の1乃至4の炭素原子を有するカルボン酸の存在下で、過塩基性化することにより製造できる。過塩基性化工程は、通常は芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、モノアルコールその他およびそれらの混合物のような溶媒の存在下で実施する。
【0091】
アルカリ金属アルキルヒドロキシベンゾエートもしくはアルカリ金属アルキルヒドロキシベンゾエートとアルキルフェノールとの混合物の過塩基性化は、当業者に公知の任意の方法により実施して、過塩基性アルカリ金属アルキルヒドロキシベンゾエートを製造できる。ただし、必要ならば、この段階で少量のC乃至Cカルボン酸を加えて、過塩基性化工程の最後で得られる粗沈降物を少なくとも1/3に減少させる。中和工程で使用するC乃至Cカルボン酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、および酪酸を含み、単独でもしくは混合物として使用できる。それらの酸の混合物、例えばギ酸:酢酸を、ギ酸:酢酸のモル比で約0.1:1乃至約100:1、好ましくは約0.5:1乃至約4:1、さらに好ましくは約0.5:1乃至約2:1、最も好ましくは約1:1の混合物を好ましく使用できる。
【0092】
一般に、過塩基性化反応は、反応容器中、アルキルヒドロキシ安息香酸約10質量%乃至約70質量%、アルキルフェノール約1質量%乃至約30質量%、希釈油約0質量%乃至約40質量%、芳香族溶媒約20質量%乃至約60質量%の存在下で実施する。反応混合物は激しく攪拌する。温度を約20℃と80℃との間に維持しながら、芳香族溶媒、モノアルコール、および二酸化炭素と共にアルカリ土類金属を反応に加える。
【0093】
過塩基性化の程度は、アルカリ金属、二酸化炭素、および反応混合物に加えられる反応体の量、並びに炭酸塩化法において採用する反応条件により制御できる。
【0094】
使用する試薬(メタノール、キシレン、消石灰、およびCO)の質量比は、下記の質量比に対応する:
キシレン:消石灰=約1.5:1乃至約7:1、好ましくは約2:1乃至約4:1。
メタノール:消石灰=約0.25:1乃至約4:1、好ましくは約0.4:1乃至約1.2:1。
二酸化炭素:消石灰=モル比で約0.5:1乃至約1.3:1、好ましくは約0.7:1乃至約1.0:1。
乃至Cカルボン酸:アルキルヒドロキシ安息香酸=モル比で約0.02:1乃至約1.5:1、好ましくは約0.1:1乃至約0.7:1。
【0095】
石灰は、スラリーとして加える、すなわち、石灰、メタノール、キシレン、およびCOを予め混合物として、約1時間乃至約4時間かけて約20℃乃至約65℃の温度で導入する。
【0096】
石灰およびC乃至Cの量は、高度の過塩基性物質(BN>約250)および粗沈降物を0.4乃至3容量%、好ましくは0.6乃至1.8容量%の範囲で、性能が劣化することなく得られるように調節する。C乃至Cカルボン酸を除外すると、粗沈降物を上記の低レベルに到達させることができない。C乃至Cカルボン酸がないと、一般に粗沈降物は約4乃至8容量%の範囲になるであろう。
【0097】
中度に過塩基性の物質(BNが約100乃至約250)については、石灰およびC乃至Cの量を、粗沈降物が約0.2乃至約1容量%の範囲で得られるように調節する。粗沈降物は、C乃至Cカルボン酸を使用しない場合、約0.8乃至約3容量%になるであろう。
【0098】
アルカリ金属含有清浄剤は、潤滑油組成物に加えると、天然ガス燃料エンジンにおける排気弁座の後退を有利かつ良好に抑制もしくは防止する。一般に、天然ガスエンジン用潤滑油組成物中に存在するアルカリ金属含有清浄剤の量は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.5質量%乃至約8.0質量%、好ましくは約1.0質量%乃至約6.0質量%である。ある態様では、アルカリ金属含有清浄剤がナトリウム含有清浄剤であって、天然ガスエンジン用潤滑油組成物中に、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.5質量%乃至約5.5質量%、好ましくは約1.0質量%乃至約3.0質量%の量で存在する。別の態様では、アルカリ金属含有清浄剤がカリウム含有清浄剤であって、天然ガスエンジン用潤滑油組成物中に、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.5質量%乃至約4.0質量%、好ましくは約1.0質量%乃至約2.0質量%の量で存在する。
【0099】
本発明の天然ガスエンジン用潤滑油組成物は、さらに(c)一種以上の無灰分散剤、(d)一種以上の酸化防止剤、および/または(e)一種以上の抗摩耗剤を一種以上含む。
【0100】
本発明の潤滑油組成物において用いられる一種以上の無灰分散剤化合物は、一般に使用中の酸化によって生じる不溶解物質を懸濁状態で維持するために使用され、それによりスラッジの凝結および金属部分への沈澱もしくは堆積を防止する。窒素含有無灰(金属を含まない)分散剤は塩基性であり、それらの添加が、さらに硫酸灰分を加えることがない潤滑油組成物の塩基価(ASTM D2896に従い測定できるBN)を決定する要素になる。無灰分散剤は一般に、分散すべき微粒子と会合できる官能基を有する油溶性重合体炭化水素骨格を含む。多くの種類の無灰分散剤がこの技術分野で知られている。
【0101】
代表的な無灰分散剤の例は、下記のものに限定されるものではないが、アミン、アルコール、アミド、もしくは極性部分が重合体骨格に架橋基を経由して結合するエステルを含む。本発明の無灰分散剤は、例えばモノおよびジカルボン酸もしくはそれらの無水物で置換された長鎖炭化水素の油溶性塩、エステル、アミノエステル、アミド、イミド、およびオキサゾリン;長鎖炭化水素のチオカルボキシレート誘導体、直接結合するポリアミンを有する長鎖脂肪族炭化水素;および長鎖置換フェノールをホルムアルデヒドとポリアルキレンポリアミンとで縮合することにより生成したマンニッヒ縮合生成物から選択することができる。
【0102】
カルボン酸系分散剤は、少なくとも約34、好ましくは少なくとも約54の炭素原子を含むカルボン酸系アシル化剤(酸、無水物、エステル等)と窒素含有化合物(例えばアミン)、有機ヒドロキシ化合物(例えば、一価および多価アルコール類を含む脂肪族化合物、もしくはフェノール類およびナフトール類を含む芳香族化合物)、および/または塩基性無機物質との反応生成物である。これらの反応生成物は、イミド、アミド、およびエステルを含む。
【0103】
コハク酸イミド分散剤は、カルボン酸系分散剤の一種である。それらは、炭化水素基置換コハク酸アシル化剤を、有機ヒドロキシ化合物、窒素原子に結合する水素原子を少なくとも一つ含むアミン、もしくは該ヒドロキシ化合物とアミンとの混合物と反応させることにより生成する。「コハク酸アシル化剤」との用語は、炭化水素置換コハク酸もしくはコハク酸生成化合物を意味し、後者は酸そのものを包含する。そのような物質は、一般に炭化水素置換コハク酸、無水物、エステル(半エステルを含む)、およびハロゲン化物を含む。
【0104】
コハク酸系分散剤は、広く様々な化学構造を有する。コハク酸系分散剤の分類の一つは、下記式XIで表される:
【0105】
【化7】

【0106】
式中、R11は、それぞれ独立に、ポリオレフィンから誘導される基のような炭化水素基である。一般に炭化水素基は、ポリイソブチル基のようなアルキル基である。別の表現では、R11基は約40乃至約500の炭素原子を含むことができ、これらの原子は脂肪族の状態であってもよい。R12はアルキレン基であり、通常はエチレン(C)基である。コハク酸イミド分散剤の例は、例えば米国特許第3172892号、同第4234435号、および同第6165235号の各明細書に記載されているものを含む。
【0107】
置換基が誘導されるポリアルケンは、一般に2乃至約16の炭素原子、通常は2乃至6の炭素原子を有する重合性オレフィンモノマーのホモポリマーおよび共重合体である。コハク酸アシル化剤と反応してカルボン酸系分散剤組成物を生成するアミンは、モノアミンもしくはポリアミンのいずれでもよい。
【0108】
コハク酸イミド分散剤は、一般にイミドとして機能する形態の窒素を多く含むことから、アミドとしての機能がアミン塩、アミド、イミダゾリン、およびそれらの混合物の状態に存在するとしても、そのように呼ばれている。コハク酸イミド分散剤の製造では、任意に実質的に不活性な有機液体溶媒/希釈剤の存在下で、一種以上のコハク酸生成化合物と一種以上のアミンとを加熱し、一般に水を除去する。反応温度は約80℃乃至混合物もしくは生成物の分解温度の範囲内にすることができ、これは一般に約100℃乃至約300℃である。本発明のコハク酸イミド分散剤の製造方法について、その他の詳細および例は、例えば米国特許第3172892号、同第3219666号、同第3272746号、同第4234435号、同第6165235号、および同第6440905号の各明細書に記載されているものを含む。
【0109】
適切な無灰分散剤はアミン分散剤を含むことができ、アミン分散剤は比較的高分子量の脂肪族ハロゲン化物とアミン、好ましくはポリアルキレンポリアミンとの反応生成物である。そのようなアミン分散剤の例は、例えば米国特許第3275554号、同第3438757号、同第3454555号、および同第3565804号の各明細書に記載されているものを含む。
【0110】
適切な無灰分散剤はさらに「マンニッヒ分散剤」を含むことができ、マンニッヒ分散剤は、アルキル基が少なくとも約30の炭素原子を含むアルキルフェノールと、アルデヒド(特にホルムアルデヒド)およびアミン(特にポリアルキレンポリアミン)との反応生成物である。そのような分散剤の例は、例えば米国特許第3036003号、同第3586629号、同第3591598号、および同第3980569号の各明細書に記載されているものを含む。
【0111】
適切な無灰分散剤はさらに後処理されたコハク酸イミド(例、ボレートもしくはエチレンカーボネートを用いる、例えば米国特許第4612132号および同第4746446号の各明細書に開示されている後処理方法並びに他の後処理方法)のような後処理された無灰分散剤であってもよい。カーボネート処理されたアルケニルコハク酸イミドは、約450乃至約3000、好ましくは約900乃至約2500、さらに好ましくは約1300乃至約2300、最も好ましくは約2000乃至約2400の分子量を有するポリブテン、並びにこれらの分子量を有する混合物から誘導されるポリブテンコハク酸イミドである。好ましくは、反応条件下、ポリブテンコハク酸誘導体、不飽和酸性試薬とオレフィンとの不飽和酸性試薬共重合体、およびポリアミンの混合物を、例えば米国特許第5716912号明細書(その記載は参考のため本明細書の記載とする)に開示されているように反応させることによって製造される。
【0112】
適切な無灰分散剤は重合体であってもよく、重合体はデシルメタクリレート、ビニルデシルエーテル、および高分子量オレフィンのような油溶性化モノマーと極性置換基を含むモノマーとの共重合体である。重合体分散剤の例は、例えば米国特許第3329658号、同第3449250号、および同第3666730号の各明細書に記載されているものを含む。
【0113】
本発明の好ましい態様では、潤滑油組成物で使用する無灰分散剤は、約700乃至約2300の数平均分子量を有するポリイソブテニル基から誘導されるビスコハク酸イミドである。本発明の潤滑油組成物で使用する分散剤は、好ましくは非重合体(例、モノもしくはビスコハク酸イミド)である。
【0114】
一般に、一種以上の無灰分散剤が、天然ガスエンジン用潤滑油組成物中に潤滑油組成物の全質量に基づき約1.0乃至約8.0質量%、好ましくは約1.0乃至約6.0質量%の範囲の量で存在する。
【0115】
本発明の天然ガスエンジン用潤滑油組成物で用いられる一種以上の酸化防止剤化合物は、基材油が使用中に劣化する傾向を低くする。そのような劣化は、スラッジおよびワニス様の金属表面への堆積物のような酸化生成物および粘度の増大によって確認できる。有用な酸化防止剤は、ヒンダードフェノール、無灰油溶性フェネートおよび硫化フェネート、ジフェニルアミン、アルキル置換フェニルおよびナフチルアミンその他およびそれらの混合物を含む。ジフェニルアミン型酸化防止剤は、限定されるものではないが、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、およびアルキル化−α−ナフチルアミンを含む。
【0116】
一般に、一種以上の酸化防止剤化合物が、天然ガスエンジン用潤滑油組成物中に、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.1乃至約3.0質量%、好ましくは約0.2乃至約2.5質量%の範囲の量で存在する。
【0117】
一種以上の抗摩耗剤の例は、下記のものに限定される訳ではないが、ホスフェートおよびチオホスフェート並びにそれらの塩、カルバメート、エステル、およびモリブデン錯体を含む。本発明の潤滑油組成物に含まれる好ましい抗摩耗剤は、ジアルキルジチオリン酸金属である。ただし、この添加剤の量は、その金属およびリンが潤滑油に寄与するため、制御することが有利である。ジアルキルジチオリン酸金属の例は、ジアルキルジチオリン酸の亜鉛およびモリブデン塩である。本発明の天然ガスエンジン用潤滑油組成物で用いる最も好ましい抗摩耗剤は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛である。
【0118】
一般に、一種以上の抗摩耗剤が、天然ガスエンジン用潤滑油組成物中に、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.1質量%乃至約4.0質量%、好ましくは約0.2質量%乃至約3.0質量%の量で存在する。
【0119】
本発明の天然ガスエンジン用潤滑油組成物は、アルカリ金属含有清浄剤を、任意に他の添加剤、および潤滑粘度の油と単に配合もしくは混合することにより簡便に製造できる。アルカリ金属含有清浄剤は、適切な比率の濃縮物として予め配合し、必要とされる濃度の添加剤を含む天然ガスエンジン潤滑組成物の配合を容易にしてもよい。アルカリ金属含有清浄剤は基油と、それらが油溶性と望ましい調合済潤滑油における他の添加剤との相溶性とがある濃度になるように配合する。この場合における相溶性は、一般に該当する化合物が、適用される処理比において油溶性であるだけではなく、通常の条件下で他の添加剤を沈澱させないことを意味する。潤滑油の処方に示される化合物について適切な油溶性/相溶性の範囲は、普通の溶解性試験方法を用いて当業者が決定できる。例えば、環境条件(約20℃乃至25℃)において処方した潤滑油組成物からの沈澱は、油組成物からの実際の沈澱もしくは不溶解ろう微粒子の生成の証拠となる「曇った」溶液の処方のいずれかによって測定できる。
【0120】
本発明の天然ガスエンジン用潤滑油組成物は、他の通常の添加剤も含むことができ、それにより任意の機能を付与し、これらの添加剤が分散もしくは溶解している調合済の潤滑油組成物を提供できる。例えば、天然ガスエンジン用潤滑油組成物には、さび止め剤、曇り除去剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、摩擦緩和剤、流動点降下剤、消泡剤、補助溶剤、パッケージ混合剤、腐食防止剤、染料、極圧剤その他およびそれらの混合物を配合してもよい。様々な添加剤が知られており、市販されている。これらの添加剤もしくはそれらの類似化合物を通常の配合手段により本発明の潤滑油組成物の製造に用いることができる。
【0121】
さび止め用剤の例は、下記のものに限定される訳ではないが、非イオン性ポリオキシアルキレン界面活性剤、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリエチレングリコールモノオレエート;ステアリン酸および他の脂肪酸;ジカルボン酸;金属石鹸;脂肪酸アミン塩;重質スルホン酸の金属塩;多価アルコールの部分カルボン酸エステル;リン酸エステル;(短鎖)アルケニルコハク酸;それらの部分エステルおよびそれらの窒素含有誘導体;合成アルカリールスルホネート、例えば金属ジノニルナフタレンスルホネート;その他およびそれらの混合物を含む。
【0122】
摩擦緩和剤の例は、下記のものに限定される訳ではないが、アルコキシル化脂肪族アミン;ホウ素化脂肪族エポキシド;脂肪亜リン酸エステル、脂肪族エポキシド、脂肪族アミン、ホウ素化アルコキシル化脂肪族アミン、脂肪酸の金属塩、脂肪酸アミド、グリセロールエステル、ホウ素化グリセロールエステル;および米国特許第6372696号明細書に開示されている脂肪族イミダゾリン(その内容も参照のため本明細書の記載とする);C乃至C75、好ましくはC乃至C24、最も好ましくはC乃至C20の脂肪酸エステルとアンモニアおよびアルカノールアミンからなる群より選ばれる窒素含有化合物との反応生成物から得られる摩擦緩和剤その他およびそれらの混合物を含む。
【0123】
消泡剤の例は、下記のものに限定される訳ではないが、アルキルメタクリレートの重合体;ジメチルシリコーンの重合体その他およびそれらの混合物を含む。
【0124】
上記添加剤の各々を使用する場合、潤滑剤に所望の特性を付与するために機能的に有効な量で用いられる。従って、例えば添加剤が摩擦緩和剤であるならば、この摩擦緩和剤としての機能的に有効な量は、潤滑剤に所望の摩擦緩和特性を付与するために充分な量になる。一般にこれらの添加剤の各々の濃度は、使用において、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.001質量%乃至約20質量%の範囲であり、ある態様では約0.01質量%乃至約10質量%の範囲である。
【0125】
下記の限定的ではない実施例は、本発明を説明するものである。
【実施例】
【0126】
[参考例A]
製造した基準となる処方は、モノコハク酸イミド(1000MWのポリイソブテニルコハク酸無水物(PIBSA)から誘導される)および重ポリアミンとジエチレントリアミンとの混合物を1.9質量%、ビスコハク酸イミド(1300MWのPIBSAから誘導される)および重ポリアミンとジエチレントリアミンとの混合物を1.1質量%、一級アルコールから誘導されるジアルキルジチオリン酸亜鉛2.25mM/kg、硫化イソブチレン(アフトンケミカル社よりHiTEC312として入手可能)0.14質量%、アルキルジチアジアゾール0.05質量%、フェノール系酸化防止剤1.25質量%、消泡剤5ppm、およびII種/SAE40に属するための調整剤を含むものであった。
【0127】
[実施例1]
製造した基準となる潤滑油の処方は、参考例Aと同じ添加剤、基油、および処理比を有し、さらにナトリウム石油スルホネート(平均分子量:550)31.26mM/kgでトップ処理した。天然ガスエンジン用潤滑油組成物はASTM D874で測定しておおよそ0.25質量%の硫酸灰分量を有していた。
【0128】
[実施例2]
製造した基準となる潤滑油の処方は、参考例Aと同じ添加剤、基油、および処理比を有し、さらに(米国特許出願公開第2007/0027043号明細書の実施例1に記載の方法に従い製造した)カリウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤21.06mM/kgでトップ処理した。天然ガスエンジン用潤滑油組成物はASTM D874で測定して0.25質量%の硫酸灰分量を有していた。
【0129】
[比較例B]
製造した基準となる潤滑油の処方は、参考例Aと同じ添加剤、基油、および処理比を有し、さらに硫化カルシウムフェネート清浄剤(114BN)16.86mM/kgでトップ処理した。天然ガスエンジン用潤滑油組成物はASTM D874で測定して0.25質量%の硫酸灰分量を有していた。
【0130】
[比較例C]
製造した基準となる潤滑油の処方は、参考例Aと同じ添加剤、基油、および処理比を有し、さらにマグネシウム石油スルホネート清浄剤(405BN)19.10mM/kgでトップ処理した。天然ガスエンジン用潤滑油組成物はASTM D874で測定して約0.25質量%の硫酸灰分量を有していた。
【0131】
[比較例D]
製造した基準となる潤滑油の処方は、参考例Aと同じ添加剤、基油、および処理比を有し、さらに硫化カルシウムフェネート清浄剤(114BN)12.12mM/kgおよびカルシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤(115BN)4.75mM/kgでトップ処理した。天然ガスエンジン用潤滑油組成物はASTM D874で測定して約0.25質量%硫酸灰分量を有していた。
【0132】
[比較例E]
市販の天然ガスエンジン油添加剤パッケージにII種基油を配合して天然ガスエンジン用潤滑油組成物を製造した。天然ガスエンジン油添加剤パッケージは、カルシウム清浄剤に他の添加剤を加えた組成であった。天然ガスエンジン用潤滑油組成物はASTM D874で測定して約0.5質量%の硫酸灰分量を有していた。
【0133】
[比較例F]
市販の無灰天然ガスエンジン油添加剤パッケージにII種基油を配合して天然ガスエンジン用潤滑油組成物を製造した。
【0134】
(試験)
実施例1および2の天然ガスエンジン潤滑組成物と比較例B〜Fの天然ガスエンジン用潤滑油組成物について、ワーケシャ社製F11GSIDエンジンにおいて、排気弁座の後退を防止する効果を評価した。この試験では、6気筒のワーケシャ社製F11GSIDエンジンを、12バルブ(6吸気および6排気バルブ)から動的電圧が測定できるように設定した。各試験では、実施例1および2の潤滑組成物と比較例B〜Fの潤滑油組成物とを用いて400時間稼働させ、各油についてバルブの後退摩耗速度の平均を、各試験の最後の300時間のデータを基に直線に近似することにより計算し、1000時間当たりの摩耗速度として記録した。排気バルブの後退の結果を第1表に示す。この表において、バルブの摩耗による後退速度が相対的に遅い場合は、排気弁座の後退の防止効果が相対的に大きいことを意味する。
【0135】
第1表
ワーケシャ社製F11排気バルブの後退についての結果
───────────────────────────
実施例 硫酸灰分 排気バルブの摩耗の平均
/比較例 (質量%) 後退速度(インチ/1000時間)
───────────────────────────
1 0.25 −0.00177
2 0.25 −0.00038
B 0.25 0.00065
C 0.25 0.00073
D 0.25 0.00053
E 0.50 0.00071
F 0 0.00277
───────────────────────────
【0136】
上記データに示されるように、アルカリ金属含有清浄剤を含む実施例1および2の天然ガスエンジン用潤滑油組成物は、アルカリ土類清浄剤を含むか清浄剤を全く含まない比較例B〜Fの潤滑油組成物よりも優れた排気バルブの後退を防止する効果を示した。
【0137】
本明細書に開示した態様には様々な変更を加えることができることを理解されなければならない。従って、以上の記述は、本発明を限定するものではなくて単に好ましい態様の例示とみなすべきである。例えば、上記の本発明を実施するための最良の形態として実行した機能は、説明の目的でしかない。当業者であれば、本発明の範囲および真意から逸脱することなく他の構成や方法を実行することができよう。さらに、当業者であれば、本明細書に添付した特許請求の範囲の範囲および真意内で他の変更を思い描くであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)主要量の潤滑粘度の油および(b)アルカリ金属含有清浄剤を含む天然ガスエンジン用潤滑油組成物、ただし該天然ガスエンジン用潤滑油組成物は実質的にアルカリ土類金属含有清浄剤およびリチウム含有清浄剤のいずれも含まない。
【請求項2】
アルカリ金属含有清浄剤がナトリウム含有清浄剤である請求項1の天然ガスエンジン用潤滑油組成物。
【請求項3】
ナトリウム含有清浄剤がナトリウム石油スルホネート清浄剤である請求項1の天然ガスエンジン用潤滑油組成物。
【請求項4】
ナトリウム石油スルホネート清浄剤が中性ナトリウム石油スルホネート清浄剤である請求項3の天然ガスエンジン用潤滑油組成物。
【請求項5】
アルカリ金属含有清浄剤がカリウム含有清浄剤である請求項1の天然ガスエンジン用潤滑油組成物。
【請求項6】
カリウム含有清浄剤がカリウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤である請求項5の天然ガスエンジン用潤滑油組成物。
【請求項7】
アルカリ金属含有清浄剤が天然ガスエンジン用潤滑油組成物の全質量に基づき0.5乃至8.0質量%の量で存在する請求項1の天然ガスエンジン用潤滑油組成物。
【請求項8】
さらに(c)一種以上の分散剤、(d)一種以上の酸化防止剤、および(e)一種以上の抗摩耗剤を含む請求項1の天然ガスエンジン用潤滑油組成物。
【請求項9】
一種以上の分散剤がビスコハク酸イミドである請求項8の天然ガスエンジン用潤滑油組成物。
【請求項10】
一種以上の酸化防止剤がヒンダードフェノール化合物である請求項8の天然ガスエンジン用潤滑油組成物。
【請求項11】
一種以上の抗摩耗剤がジアルキルジチオリン酸亜鉛である請求項8の天然ガスエンジン用潤滑油組成物
【請求項12】
潤滑油組成物の全質量に基づき:
該アルカリ金属含有清浄剤を1.0乃至8.0質量%;
一種以上の無灰分散剤を1.0乃至8.0質量%;
一種以上の酸化防止剤を0.1乃至3.0質量%;そして
一種以上の抗摩耗剤を0.1乃至4.0質量%;
含む請求項1の天然ガスエンジン用潤滑油組成物。
【請求項13】
天然ガスエンジン用潤滑油組成物がASTM D874で測定して0.1質量%乃至1.5質量%の硫酸灰分量を有する請求項1の天然ガスエンジン用潤滑油組成物。
【請求項14】
天然ガスエンジン用潤滑油組成物がASTM D874で測定して0.1質量%乃至1.5質量%の硫酸灰分量を有する請求項12の天然ガスエンジン用潤滑油組成物。
【請求項15】
天然ガス燃料エンジンにおける排気弁座の後退を防止もしくは抑制する方法であって、請求項1乃至14のいずれか一項に従う天然ガスエンジン用潤滑油組成物で該エンジンを潤滑することを含む方法。

【公表番号】特表2012−518074(P2012−518074A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551185(P2011−551185)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/024456
【国際公開番号】WO2010/096468
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【Fターム(参考)】