説明

潤滑装置

【課題】オイルポンプの負荷を増加することなく、マイクロバブル発生装置に供給されるオイル量を増加することの可能な潤滑装置を提供する。
【解決手段】オイルポンプ2とマイクロバブル発生装置47と潤滑部位37とを備えた潤滑装置において、第1入力ポート16および第1ドレーンポート17,18とを有しており、第1入力ポート16から第1ドレーンポート17,18に排出することにより、オイルポンプ2から吐出されたオイルの油圧または流量を制御する制御弁15と、第1ドレーンポート17,18から排出されたオイルが供給されるアキュムレータ44と、アキュムレータ44から潤滑部位37に至るオイルの供給経路を遮断して、アキュムレータ44の油圧を上昇させる一方、アキュムレータ44から潤滑部位37に至るオイルの供給経路を開放して、アキュムレータ44のオイルの油圧を放出させる開閉弁53とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マイクロバブルが混入されたオイルを潤滑部位に供給するように構成された潤滑装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オイルポンプから吐出されたオイルにマイクロバブルを混入させるとともに、そのマイクロバブルが混入されたオイルを潤滑部位に供給することにより、その潤滑部位を潤滑または冷却するように構成された潤滑装置の一例が、特許文献1に記載されている。この特許文献1には、オイルパンのオイルを吸入して吐出するバブルポンプと、バブルポンプを駆動するモータなどの駆動源と、バブルポンプから吐出されたオイルと気体とを混合する混合槽と、混合槽から吐出通路にオイルが吐出される際に、混合槽内の気体からマイクロバブルを生成するバブル発生機構と、マイクロバブルが混入されたオイルをオイルパンに戻すバブル吐出通路と、前記オイルパンにおけるマイクロバブルが混入されたオイルを吸入および吐出するオイルポンプと、このオイルポンプから吐出されたオイルが供給される潤滑部とを有する潤滑装置が記載されている。
【0003】
この特許文献1においては、マイクロバブルが混入されたオイルにより、潤滑部、具体的には内燃機関の静止部品と運動部分との間、運動部品同士の間が潤滑されるように構成されている。このようにマイクロバブルが混入されたオイルを供給して潤滑する際に、その摩擦抵抗を低減できるとされている。なお、前記特許文献1の他に、液体の供給経路にマイクロバブル発生装置を設ける技術としては、特許文献2、3がある。この特許文献2には、ノズルを洗浄する洗浄液の供給経路にマイクロバブル発生装置を設ける技術が記載されている。また、特許文献3には、マイクロバブル発生装置そのものに関する技術が記載されている。さらにこのほかの技術として、オイルポンプから吐出されたオイルを車両用自動変速機の油圧制御装置に供給する技術が、特許文献4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−9900号公報
【特許文献2】特開2008−136929号公報
【特許文献3】特開2009−136864号公報
【特許文献4】特開2004−360853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、オイル中に高濃度のマイクロバブルを発生させるためには、マイクロバブル発生装置に供給するオイル量を増加する。しかしながら、特許文献1に記載されている潤滑装置において、マイクロバブル発生装置に供給するオイル量を増加すると、バブルポンプを駆動するモータの負荷が増加し、そのモータの消費電力が増加するという問題があった。
【0006】
この発明は、オイルポンプの負荷を増加することなく、マイクロバブル発生装置に供給されるオイル量を増加することの可能な潤滑装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために請求項1の発明は、オイルを油路に吐出するオイルポンプと、このオイルポンプから油路に吐出されたオイルを、潤滑部位に供給してその潤滑部位を潤滑または冷却する前の過程で、前記潤滑部位に供給するオイルにマイクロバブルに混入させるマイクロバブル発生装置と、前記油路から前記マイクロバブル発生装置に至るオイルの供給経路に配置され、かつ、前記油路に接続された第1入力ポートおよび前記マイクロバブル発生装置に接続される第1ドレーンポートとを有しており、前記オイルポンプから吐出されたオイルを前記第1入力ポートから前記第1ドレーンポートに排出することにより、前記油路におけるオイルの油圧またはオイルの流量を制御する第1制御弁と、前記第1制御弁の第1ドレーンポートから前記マイクロバブル発生装置に至るオイルの供給経路に配置され、かつ、前記第1ドレーンポートから排出されたオイルが供給されるアキュムレータと、前記第1ドレーンポートから排出されたオイルが前記アキュムレータに供給される際に、そのアキュムレータから前記潤滑部位に至るオイルの供給経路を遮断することにより、前記アキュムレータにオイルを蓄えて油圧を上昇させる一方、前記アキュムレータに蓄えられるオイルの油圧が上昇した後に、前記アキュムレータから前記潤滑部位に至るオイルの供給経路を開放することにより、前記アキュムレータに蓄えられたオイルの油圧を放出させる開閉弁とを備えていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記アキュムレータから前記潤滑部位に至るオイルの供給経路を前記開閉弁により遮断することにより、前記アキュムレータに蓄えられるオイルの油圧が、前記マイクロバブル発生装置でマイクロバブルを発生させることが可能な所定値を超えるように制御する開閉弁制御手段を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2の構成に加えて、前記第1ドレーンポートおよび前記潤滑部位に接続され、かつ、前記アキュムレータおよび前記マイクロバブル発生装置に対して並列に配置されたバイパス油路が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3の構成に加えて、前記第1ドレーンポートから排出されたオイルの油圧が前記アキュムレータに蓄えられたオイルの油圧以下であるときに、前記第1ドレーンポートから排出されたオイルを前記バイパス油路を経由させて潤滑部位に供給するとともに、前記第1ドレーンポートから排出されたオイルの油圧が前記アキュムレータに蓄えられたオイルの油圧を超えると、前記第1ドレーンポートから排出されたオイルを前記アキュムレータに供給するバルブが設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項3の構成に加えて、前記第1ドレーンポートから前記アキュムレータに至るオイルの供給経路に配置され、かつ、前記第1ドレーンポートに接続された第2入力ポートと、前記アキュムレータおよび前記バイパス油路に接続された第2ドレーンポートとを有し、前記第2入力ポートのオイルを前記第2ドレーンポートから排出することにより、前記第1ドレーンポートと前記第2入力ポートとの間におけるオイルの油圧またはオイルの流量を制御するように構成された第2制御弁が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項6の発明は、オイルポンプによってオイルを圧送される油路から、潤滑部位を経由して油貯溜部へ前記オイルを還流する潤滑装置であって、前記油路にマイクロバブル発生装置を備え、前記油路中に蓄積された油圧を前記マイクロバブル発生装置に印加することにより、マイクロバブルが混入されたオイルを前記潤滑部位に供給するように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、オイルポンプから吐出されたオイルが油路に供給されるとともに、第1制御弁により油路におけるオイルの油圧またはオイルの流量を制御する際に、第1ドレーンポートからオイルが排出され、そのオイルがアキュムレータに蓄えられて油圧が上昇する。さらに、アキュムレータで油圧が上昇したオイルをマイクロバブル発生装置に供給することができる。したがって、マイクロバブル発生装置で発生するマイクロバブルの濃度を高める際に、オイルポンプの負荷が増加することを抑制できる。
【0014】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、アキュムレータに蓄えられるオイルの油圧を、マイクロバブル発生装置でマイクロバブルを発生させることが可能な所定値を超えるように制御することができる。したがって、マイクロバブルの濃度を高めやすくなる。
【0015】
請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明と同様の効果を得られる他に、第1制御弁の第1ドレーンポートから排出されたオイルを、マイクロバブル発生装置を経由させて潤滑部位に供給することの他に、第1制御弁の第1ドレーンポートから排出されたオイルを、バイパス油路を経由させて潤滑部位に供給することもできる。つまり、潤滑部位にオイルを供給する経路として並列な2系統が形成される。したがって、アキュムレータでオイルの油圧を上昇させている際に、潤滑部位のオイル不足を回避できる。
【0016】
請求項4の発明によれば、請求項3の発明と同様の効果を得られる他に、第1ドレーンポートから排出されたオイルの油圧が、アキュムレータに蓄えられたオイルの油圧以下であるときに、第1制御弁から排出されたオイルを、バイパス油路を経由させて潤滑部位に供給することができる。これに対して、第1ドレーンポートから排出されたオイルの油圧が、アキュムレータに蓄えられたオイルの油圧を超えると、第1ドレーンポートから排出されたオイルを、アキュムレータに供給することができる。したがって、潤滑部位のオイル不足を一層確実に回避できる。
【0017】
請求項5の発明によれば、請求項3の発明と同様の効果を得られる他に、第1制御弁または第2制御弁の少なくとも一方から排出されたオイルをアキュムレータに供給することができる。したがって、アキュムレータに蓄えるオイル量を多くしやすくなる。
【0018】
請求項6の発明によれば、オイルポンプによってオイルを圧送される油路の油圧をマイクロバブル発生装置に印加してオイルにマイクロバブルを混入し、そのマイクロバブルが混入されたオイルが、潤滑部位を経由して油貯溜部へ還流される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の潤滑装置の第1具体例を示す模式図である。
【図2】この発明の潤滑装置に用いられるマイクロバブル発生装置の構成例を示す断面図である。
【図3】図1に示された潤滑装置の制御例を示すフローチャートである。
【図4】図3のフローチャートにおいて、ステップS04の処理に用いられるマップの一例である。
【図5】この発明の潤滑装置に用いられるマイクロバブル発生装置の他の構成例を示す断面図である。
【図6】図5に示されたマイクロバブル発生装置の特性を表す線図である。
【図7】この発明の潤滑装置の第2具体例を示す模式図である。
【図8】この発明の潤滑装置の第3具体例を示す模式図である。
【図9】この発明の潤滑装置の第4具体例を示す模式図である。
【図10】図9に示された潤滑装置の制御例を示すフローチャートである。
【図11】図10のフローチャートを実行する際に用いるマップである。
【図12】この発明の潤滑装置の第5具体例を示す模式図である。
【図13】この発明の潤滑装置の第6具体例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明における潤滑装置は、オイルポンプから吐出された潤滑油、すなわち、オイルにマイクロバブルを混入させ、そのマイクロバブルが混入されたオイルを潤滑部位、つまり潤滑するべき対象部位に供給するように構成されている。この発明において、開閉弁はアキュムレータとマイクロバブル発生装置との間、またはマイクロバブル発生装置と潤滑部位との間のいずれに配置されていてもよい。この発明における潤滑装置は、車両または産業機械あるいは工作機械などに用いることが可能である。以下、潤滑装置の具体例を、図面に基づいて順次説明する。各具体例においては、潤滑装置を車両に用いた場合を例として説明する。
【0021】
(第1具体例)
まず、潤滑装置の第1具体例を図1に基づいて説明する。図1に示された潤滑装置1は、動力源によって駆動されてオイルを吸入および吐出する油圧源としてオイルポンプ2を有している。前記動力源としては、車両の駆動輪に伝達するトルクを発生するエンジンまたは電動機のうちの少なくとも一方を用いることができる。あるいは、駆動輪に伝達するトルクを発生することなく、オイルポンプ2を駆動するために専用の動力源が設けられている構成でもよい。また、オイルポンプ2はギヤポンプ、ピストンポンプ、ベーンポンプなどのうちの何れでもよい。このオイルポンプ2の吸入口3には油路4が接続されており、その油路4がオイルパン5に接続されている。前記エンジンまたは電動機から駆動輪に至る経路には変速機が設けられており、その変速機を収容したケーシング(図示せず)の下部にオイルパン5などの油貯溜部が形成されている。
【0022】
前記オイルポンプ2には吐出口6が設けられており、この吐出口6には油路7が接続されている。この油路7は、前記エンジンまたは電動機から駆動輪に至る動力伝達経路に設けられた動力伝達装置(図示せず)を制御する油圧室64に接続されている。この油圧室64には、回転要素同士の間の変速比を制御する油圧室、回転要素同士の間の伝達トルクを制御する油圧室、回転要素を固定するブレーキの油圧室、回転要素同士の接続および解放を制御するクラッチの油圧室などが含まれる。
【0023】
また、この油路7の油圧(ライン圧)が過度に高圧となることを防止するためのプレッシャリリーフバルブ(逃がし弁)8が設けられている。このプレッシャリリーフバルブ8は、油路7に接続された入力ポート9と、油路10に接続されたドレーンポート11と、油路7の油圧が伝達されるフィードバックポート12と、フィードバックポート12の油圧が作用するスプール13と、フィードバックポート12の油圧によりスプール13に加えられる力とは逆向きの力をスプール13に与えるバネ14とを有している。
【0024】
また、油路7の油圧を制御する圧力制御弁としてプライマリレギュレータバルブ15が設けられている。このプライマリレギュレータバルブ15は、1つの入力ポート16および2つのドレーンポート17,18およびフィードバックポート19を有している。また、プライマリレギュレータバルブ15は、直線状に往復動作可能なスプール20を有しており、このスプール20はランド21,22,23を有している。前記フィードバックポート19には油路7の油圧が伝達され、そのフィードバックポート19の油圧がランド23に伝達されて、スプール20を所定方向に押圧する力が発生する。さらに、プライマリレギュレータバルブ15は、フィードバックポート19の油圧によりスプール20に加えられる力とは逆向きの力をスプール20に与えるバネ24を有している。さらにまた、バネ24と同じ向きの力をスプール20の与える信号圧ポート58が設けられている。
【0025】
また、前記ドレーンポート17には油路25が接続されているとともに、油路25は図示しない油圧室に接続されている。この油路25の油圧を制御する圧力制御弁として、セカンダリレギュレータバルブ26が設けられている。このセカンダリレギュレータバルブ26は、1つの入力ポート27および3つのドレーンポート28,29,30およびフィードバックポート31を有している。また、セカンダリレギュレータバルブ26は、直線状に往復動作可能なスプール32を有しており、このスプール32はランド33,34,35を有している。前記フィードバックポート31にはドレーンポート29の油圧が伝達され、そのフィードバックポート31の油圧がランド35に伝達されて、スプール32を所定方向に押圧する力が発生する。さらに、セカンダリレギュレータバルブ26は、フィードバックポート31の油圧によりスプール32に加えられる力とは逆向きの力をスプール32に与えるバネ36を有している。さらにまた、バネ36と同じ向きの力をスプール32に与える信号圧ポート65が設けられている。
【0026】
さらに、ドレーンポート28から排出されるオイルを潤滑部位37に供給する油路38が設けられている。潤滑部位37は、供給されるオイルにより潤滑または冷却される部位であり、例えば、歯車変速機構における歯車同士の噛み合い部分、回転軸を支持する軸受、ベルト型無段変速機におけるベルトとプーリとの接触部分、トロイダル型無段変速機におけるパワーローラとディスクとの接触部分などが挙げられる。
【0027】
さらに、ドレーンポート30には油路39が接続され、ドレーンポート18には油路40が接続されている。また、油路39はチェック弁(逆止弁)41を介在させて油路42に接続され、油路40はチェック弁(逆止弁)43を介在させて油路42に接続されている。このチェック弁41は、油路39の油圧が油路42の油圧以下では閉じられ、油路39の油圧が油路42の油圧を超えると開放されるように構成されている。また、チェック弁43は、油路40の油圧が油路42の油圧以下では閉じられ、油路40の油圧が油路42の油圧を超えると開放されるように構成されている。
【0028】
さらに、油路42の油圧を蓄圧するアキュムレータ(蓄圧器)44が設けられている。このアキュムレータ44は、ブラダ型、ダイアフラム型、ピストン型のいずれでもよい。そして、アキュムレータ44にオイルが供給されているときに、アキュムレータ44から潤滑部位に至るオイルの供給経路が遮断されると、油圧室45の油圧が上昇するように構成されている。また、アキュムレータ44の油圧室45の油圧を検知する油圧センサ46が設けられている。そして、油路42と潤滑部位37との間におけるオイル供給経路にマイクロバブル発生装置47が設けられている。このマイクロバブル発生装置47は、オイル中でマイクロバブルを発生させる装置である。
【0029】
このマイクロバブル発生装置47は、μmオーダー、より詳しくは10〜80μm程度の超微細で均一な気泡(いわゆるマイクロバブル)あるいはそれより更に小さい気泡を発生させる装置である。この具体例では、例えば、図2に示すような旋回流式のマイクロバブル発生装置47を用いることができる。具体的には、ノズル48が設けられており、そのノズル48にはオイル導入管49が設けられている。このオイル導入管49に前記油路42が接続されている。このオイル導入管49を経由してノズル48内に供給されるオイルに、ノズル48内で螺旋流を発生させる案内壁(図示せず)が設けられている。さらに、ノズル48に取り付けられた空気導入管50が設けられている。
【0030】
そして、オイル導入管49を経由してノズル48内にオイルが供給されて高速の螺旋流を形成すると、ノズル48内が負圧となって空気がノズル48内に吸入され、オイルの回転せん断により空気がせん断されてマイクロバブルが生成される。さらに、ノズル48の軸線方向における一端には吐出口51が形成されており、その吐出口51からオイルが油路52へ吐出される。このマイクロバブル発生装置47で発生したマイクロバブルは、その粒径が小さいことによりオイル中での浮上速度が遅い。また、マイクロバブルはコロイドのような性質があって、マイクロバブル同士が相互に合体したり吸収したりしないので、オイル中でマイクロバブルが分離もしくは分散した状態を維持できる。
【0031】
さらに、油路38,42のうち、いずれか一方のオイルを潤滑部位37に供給する切換弁53が設けられている。この切換弁53は3つのポート54,55,56を有しており、この切換弁53は、供給される電力の電流値を制御することにより、ポート52またはポート54のいずれか一方を選択してポート56と接続するように、そのスプールの動作位置が切り換えられるように構成されている。そして、ポート54が油路38に接続され、ポート55が油路52を介してマイクロバブル発生装置47に接続され、ポート56が潤滑部位37に接続されている。この潤滑部位37は、油路57を介してオイルパン5に接続されている。なお、車両には電子制御装置(図示せず)が設けられている。この電子制御装置は、演算処理部および記憶部などを有するマイクロコンピュータにより構成されている。この電子制御装置には、油圧センサ46、車速センサ(図示せず)、エンジン回転数センサ(図示せず)などの信号が入力され、この電子制御装置からは、切換弁53を制御する信号、信号圧ポート58,65に入力される信号圧を制御する信号、エンジン出力を制御する信号、変速機の変速比を制御する信号などが出力される。
【0032】
つぎに、第1具体例の潤滑装置1の作用を説明する。まず、車両を走行させる要求が生じてエンジンまたは電動機のうち、少なくとも一方が駆動されると、その動力によりオイルポンプ2が駆動される。オイルポンプ2が駆動されると、オイルパン5のオイルがオイルポンプ2に吸い込まれ、かつ、油路7にオイルが吐出される。この油路7の油圧が相対的に低圧である場合、プライマリレギュレータバルブ15においては、バネ24の力によりスプール20が図1で上向きに押されて入力ポート16とドレーンポート17とが遮断され、かつ、入力ポート16とドレーンポート18とが遮断される。このため、油路7のオイルは油路25,40へは排出されず、油路7の油圧が上昇する。
【0033】
そして、油路7の油圧が相対的に高圧になり、フィードバックポート19からスプール20に加えられる力が増加して、スプール20が図1で下向きに押されると、入力ポート16とドレーンポート17とが接続され、かつ、入力ポート16とドレーンポート18とが接続される。すると、油路7のオイルは油路25,40へ排出されて、油路7の油圧の上昇が抑制される。このように、油路7の油圧が相対的に高圧になると、油路7のオイルが油路25,40にドレーンされる。言い換えれば、油路25,40の油圧は、油路7の油圧をプライマリレギュレータバルブ15により減圧した値となる。
【0034】
そして、油路7のオイルが油路25,40へ排出されて、油路7の油圧が相対的に低下すると、バネ24の力によりスプール20が図1の上向きに押され、入力ポート16とドレーンポート17とが遮断され、かつ、入力ポート16とドレーンポート18とが遮断される。なお、信号圧ポート58に入力される信号圧を制御することにより、スプール20を図1で下向きに押すために必要な力を変更することができる。このようにして、油路7の油圧(ライン圧)が制御される。
【0035】
また、プライマリレギュレータバルブ15において、入力ポート16とドレーンポート17とが接続され、かつ、入力ポート16とドレーンポート18とが接続されて、油路7のオイルを油路25,40へ排出しても、油路7の油圧が更に上昇すると、入力ポート9とドレーンポート11とが接続され、油路7のオイルが油路10へ排出されて、油路7の油圧がさらに上昇することが防止される。なお、プレッシャリリーフバルブ8は、油路7のオイルを油路10にドレーンすることで油路7の油圧上昇を防止する機能はあるが、油路7の油圧を任意に制御する機能(調圧機能)はない。
【0036】
つぎに、セカンダリレギュレータバルブ26の作用を説明する。前記油路25の油圧が相対的に低圧である場合は、油路バネ36の力によりスプール32が図1の上向きに押されて、入力ポート27とドレーンポート28とが遮断され、かつ、入力ポート27とドレーンポート29とが接続され、さらに、入力ポート27とドレーンポート30とが遮断されている。つまり、油路25のオイルは油路38,39には供給されない。そして、油路25の油圧が上昇して、フィードバックポート31に作用する油圧が上昇すると、スプール32が図1で下向きに押されて入力ポート27とドレーンポート28とが接続され、かつ、入力ポート27とドレーンポート29とが接続され、さらに、入力ポート27とドレーンポート30とが接続される。したがって、油路25のオイルは油路38,39に供給される。
【0037】
つまり、油路38,39の油圧は、油路25の油圧をセカンダリレギュレータバルブ26により減圧した値となる。なお、信号圧ポート65に入力される信号圧を制御することにより、スプール32が図1で下向きに押されて入力ポート27がドレーンポート28,30に接続されることとなる油路25の油圧を、変更可能である。このようにして、セカンダリレギュレータバルブ26により、油路25の油圧を制御することができる。
【0038】
そして、油路25のオイルが油路38,39に供給されて、油路25の油圧が低下すると、フィードバックポート31に作用する油圧が低下して、スプール32がバネ36の力で図1で上向きに押される。その結果、入力ポート27とドレーンポート28とが遮断され、かつ、入力ポート27とドレーンポート29とが接続され、かつ、入力ポート27とドレーンポート30とが遮断される。このようにして、油路25のオイルが油路38,39へ排出されて、油路25の油圧が制御される。そして、油路39の油圧が油路42の油圧よりも高圧であれば、チェック弁41が開放されて、油路39のオイルが油路42へ供給される。また、油路40の油圧が油路42の油圧よりも高圧であれば、チェック弁43が開放されて、油路40のオイルが油路42へ供給される。
【0039】
つぎに、切換弁53を制御する例を図3のフローチャートに基づいて説明する。まず、油圧センサ46の信号を処理することにより、アキュムレータ44の油圧室45の油圧を算出する(ステップS01)とともに、油圧室45の油圧が所定値を超えているか否かが判断される(ステップS02)。この所定値は、マイクロバブル発生装置47でマイクロバブルを必要量発生することのできる油圧が、油圧室45に蓄えられているか否かを判断するための基準である。このマイクロバブルの必要量は、潤滑部位37の温度、潤滑部位37の一部を構成する回転要素の回転数などに基づいて求められる。なお、前記所定値は電子制御装置に予め記憶されている。
【0040】
そして、ステップS02で肯定的に判断された場合は、切換弁53を制御する指令値を求めるための事前処理として、ステップS02で肯定判断されてからの経過時間を計測するタイマがスタートし、その経過時間がインクリメントされる(ステップS03)。具体的には、図3の制御ルーチンの1周期分の時間を増加させる。このステップS03についで、切換弁53を制御する指令値を算出する(ステップS04)。
【0041】
このステップS04の処理には図4のマップを用いる。図4のマップは、横軸に経過時間が示され、縦軸に切換弁53を制御する指令値が示されており、予め電子制御装置に記憶されている。この図4のマップにおいて、経過時間の計測が開始されてから、経過時間が時間t1に到達するまでの間は、「切換弁53が作動中」となる指令値が設定されている。切換弁53が作動中とは、ポート55とポート56とが接続され、かつ、ポート54とポート56とが遮断されるように、切換弁53を制御することを意味する。
【0042】
これに対して、経過時間の計測が開始されてから、経過時間が時間t1を超えると、「切換弁53が非作動」となる指令値が設定されている。切換弁53が非作動とは、ポート54とポート56とが接続され、かつ、ポート52とポート56とが遮断されるように、切換弁53を制御することを意味する。このステップS04においては、その時点の経過時間から、切換弁53の指令値として、作動中または非作動を算出する。さらに、ステップS04で算出された指令値により、切換弁53を制御し(ステップS05)、この制御ルーチンを終了する。前記のように、ステップS02で肯定的に判断されてステップS04,05に進んだ場合は、ポート52とポート56とを接続し、かつ、ポート54とポート56とを遮断するように切換弁53が制御される。つまり、切換弁53の制御状態は作動中となり、マイクロバブル47においてマイクロバブルが混入されたオイルが、潤滑部位37に供給される。
【0043】
これに対して、ステップS05を経由して再度ステップS02に進み、そのステップS02で否定的に判断された場合は、切換弁53が作動中であるか否かが判断される(ステップと06)。このステップS06の判断には(図示せず)4のマップを用いる。前記経過時間が時間t1以下であれば、このステップS06で肯定的に判断されてステップS03に進む。つまり、切換弁53を作動中に制御することが継続される。
【0044】
一方、ステップS06の判断時点で、経過時間が時間t1を超えている場合は、ステップS06で否定的に判断されてステップS07に進む。このステップS07においては、切換弁53を非作動とする制御をおこなうとともに、前記経過時間をクリアする処理をおこない、この制御ルーチンを終了する。つまり、ステップS07の処理をおこなうと、アキュムレータ44で蓄圧がおこなわれるとともに、マイクロバブルが混入されたオイルは潤滑部位37には供給されない。また、油路38のオイルが潤滑部位37に供給される。
【0045】
上記の説明は、最初にステップS02に進んだ時点で肯定判断される場合の例であるが、オイルポンプ2の駆動初期段階のように、油路7が低圧であるときは、最初にステップS02に進んだ時点で否定的に判断されてステップS06に進む。この時点では、ステップS02で未だ肯定判断されていないのであるから、図4のマップを用いることなくステップS06で必然的に否定判断され、ステップS07に進む。このとき、油路7のオイルが油路42に排出されていなければ、アキュムレータ44での蓄圧は未だおこなわれず、油路7のオイルが油路42に排出されていれば、アキュムレータ44で蓄圧がおこなわれる。また、ステップS03を未だ経由していないのであるから、このステップS07では経過時間のクリアはおこなわれない。つまり、ステップS07においては、油圧室45の油圧が所定値を超えるように切換弁53が制御される。
【0046】
このように、第1具体例においては、油路7の油圧を制御する際に、プライマリレギュレータバルブ15またはセカンダリレギュレータバルブ26の少なくとも一方から排出されたオイルの油圧を一旦アキュムレータ44で蓄圧し、そのアキュムレータ44の油圧を放出させることにより、マイクロバブル発生装置47においてマイクロバブルを発生させるように構成されている。このため、マイクロバブル発生装置47に相対的に大流量または相対的に高圧のオイルを供給するにあたり、アキュムレータ44の油圧室45の油圧が相対的に高くなるように、切換弁53を制御すれば済む。したがって、オイルポンプ2の仕事量が増加することを回避でき、オイルポンプ2の圧力損失を増加させることなく、マイクロバブル発生装置47において発生するマイクロバブルの濃度を高めることができる。また、エンジンの動力でオイルポンプ2を駆動する構成であれば、そのエンジンの燃費が低下することを回避できる。さらに、電動機の動力でオイルポンプ2を駆動する構成であれば、電動機における電力消費量の増加を抑制できる。
【0047】
また、第1具体例においては、プライマリレギュレータバルブ15から油路40にドレーンされたオイル、およびセカンダリレギュレータバルブ26から油路39にドレーンされたオイルを、共にアキュムレータ44の油圧室45に蓄えることができる。したがって、アキュムレータ44の油圧室45にオイルが供給される頻度を相対的に高くすることができる。また、第1具体例においては、潤滑部位37にオイルを供給する2系統の油路、具体的には油路38と、油路42,52とが並列に設けられている。そして、油路39と油路42との間にはチェック弁41が設けられている。このため、油路39の油圧が油路42の油圧よりも高圧とならない限り、チェック弁41は開放されない。したがって、油路25の油圧が相対的に低い通常走行時、またはエンジン回転数が低回転であるときには、油路25のオイルは油路38を経由して潤滑部位37に供給される。
【0048】
これに対して、冷寒時のようにオイルの粘度が相対的に高くなって油路25の油圧が相対的に高くなる場合、または、エンジン回転数が相対的に高くなり、油路25の油圧が相対的に高くなる場合は、チェック弁41が開放されて、油路25のオイルが油路42に供給される。したがって、アキュムレータ44に確実に油圧を蓄えることができる。このように、冷寒時にはオイルの粘度が高まり、変速機の回転要素の回転抵抗が増加して動力伝達効率が低下するが、マイクロバブルが混入されたオイルが潤滑部位37に供給される頻度が増加し、オイルによる流体抵抗(摩擦抵抗)を低下させることができる。
【0049】
つぎに、図1に示す油圧回路に設けるマイクロバブル発生装置47の他の構成例を図5に基づいて説明する。この図5に示すマイクロバブル発生装置47を用いる場合、図3に示された空気導入管50は不要である。この図5に示されたマイクロバブル発生装置47は、パイプ59を有している。パイプ59内には、油路42,52に接続された油路60が形成されており、その油路60の内周面に縮径部61が接続されている。この縮径部61には、内径が次第に小さくなるような勾配もしくはテーパが形成されている。その縮径部61の下流にはくびれ部62が形成されている。また、くびれ部62の下流には拡径部63が設けられている。つまり、くびれ部62は、オイルの流れ方向で上流または下流よりも断面積が狭い。このくびれ部62は、オリフィスまたはチョークで構成することもできる。さらに、拡径部63は油路52に接続されている。そして、縮径部61からくびれ部62に至る過程でオイルの流速が高まり、減圧されて気泡(バブル)が発生し、その後、拡径部63内でバブルが圧壊してマイクロバブルが生成される。
【0050】
この図5に示されたマイクロバブル発生装置47を用いた場合でも、前述と同様の作用効果を得られる。また、図5のマイクロバブル発生装置47では、オイルに溶解した空気が析出して、もしくはオイルが沸騰することで、マイクロバブルが発生する。つまり、キャビテーションによりマイクロバブルが発生する。したがって、図5のマイクロバブル発生装置47を用いる場合、図1に示された空気導入管50は設けずに済み、車載性が向上する。また、図5のマイクロバブル発生装置47に供給されるオイルの供給流量と、マイクロバブル発生量との関係の一例を図6に示す。図5に示されたマイクロバブル発生装置47は、図6に示すように、オイルの供給流量が相対的に多くなるほど、マイクロバブル発生量が相対的に多くなる特性を有する。
【0051】
(第2具体例)
つぎに、潤滑装置1の第2具体例を図7に基づいて説明する。この第2具体例と第1具体例とを比べると、第1具体例において設けられていた油路40およびチェック弁43が、第2具体例では設けられていない点が相違し、その他の構成は、第1具体例および第2具体例共に同じである。また、第2具体例においても、図2に示されたマイクロバブル発生装置47、または図5に示されたマイクロバブル発生装置47のいずれを用いてもよい。そして、第2具体例において、第1具体例と同様の構成部分については、第1具体例と同様の作用効果を得られる。この第2具体例においても、図1の制御例を実行できる。また、第2具体例においては、第1具体例における油路40が設けられていないため、油路7の油圧が上昇してスプール20が図7で下向きに押される。すると、油路7から油路42に供給されるオイルは、必ず油路25およびセカンダリレギュレータバルブ26を経由している。
【0052】
(第3具体例)
つぎに、潤滑装置1の第3具体例を図8に基づいて説明する。この第3具体例と第1具体例とを比べると、第1具体例において設けられていた油路39およびチェック弁41、さらにはドレーンポート30が、第3具体例では設けられていない点が相違し、その他の構成は、第3具体例および第1具体例共に同じである。また、第3具体例においても、図2に示されたマイクロバブル発生装置47、または図5に示されたマイクロバブル発生装置47のいずれを用いてもよい。そして、第3具体例において、第1具体例と同様の構成部分については、第1具体例と同様の作用効果を得られる。この第3具体例においても、図1の制御例を実行できる。また、第3具体例においては、第1具体例におけるドレーンポート30および油路39が設けられていないため、油路25の油圧が上昇してスプール32が図8で下向きに押されると、油路25のオイルが油路38にドレーンされる一方、油路25のオイルが油路42に供給されることはない。
【0053】
(第4具体例)
つぎに、潤滑装置1の第4具体例を図9に基づいて説明する。図9において、図1と同じ構成部分については同じ符号を付してある。第4具体例においては、油路7の油圧(ライン圧)が過度に高圧となることを防止するためのプレッシャリリーフバルブ(逃がし弁)66が設けられている。このプレッシャリリーフバルブ66は、油路7に接続された入力ポート67と、油路68に接続されたドレーンポート69と、油路7の油圧が伝達されるフィードバックポート70と、フィードバックポート70の油圧が作用するスプール71と、フィードバックポート70の油圧によりスプール71に加えられる力とは逆向きの力をスプール71に与えるバネ72とを有している。
【0054】
また、油路68にはチェック弁73を介在させて油路74が接続されている。チェック弁73は、油路68の油圧が油路74の油圧を超えた場合に開放され、油路68の油圧が油路74の油圧以下では閉じられるように構成されている。油路74にはアキュムレータ44が接続され、アキュムレータ44の油圧室45の油圧を検知する油圧センサ46が設けられている。また、油路74から油路42に至る経路にはリリーフバルブ75が設けられている。このリリーフバルブ75は入力ポート76およびドレーンポート77を有しており、入力ポート76が油路74に接続され、ドレーンポート77が油路42に接続されている。
【0055】
このリリーフバルブ75は、油圧センサ46により検知されるアキュムレータ44の油圧に基づいてスプール(図示せず)が動作し、入力ポート76とドレーンポート77とを接続または遮断するように構成された開閉弁である。このリリーフバルブ75は、図9で上下方向に動作可能なスプールと、そのスプールを上下方向の一方に押圧するバネと、そのバネの力とは逆向きにスプールを押す力を生じる電磁コイルとを有するソレノイドバルブにより構成されている。そして、リリーフバルブ75は電磁コイルに供給する電流値を制御すると、ポート76とポート77との接続・遮断が切り換えられるように構成されている。さらに、油路42にはマイクロバブル発生装置47が接続されているとともに、マイクロバブル発生装置47は油路52を介在させて潤滑部位37に接続されている。
【0056】
つぎに、図9に示す潤滑装置1の作用を説明する。オイルポンプ2から吐出されるオイルが油路7に供給されるとともに、油路7の油圧が相対的に低圧である場合は、プレッシャリリーフバルブ72の入力ポート67とドレーンポート69とが遮断されており、油路7のオイルは油路68には排出されない。さらに油路7の油圧が上昇して、入力ポート67とドレーンポート69とが接続されると、油路7のオイルが油路68へ排出されて、油路7の油圧の上昇が防止される。プレッシャリリーフバルブ72の作用により油路7の油圧が低下すると、入力ポート67とドレーンポート69とが遮断される。そして、油路68の油圧が油路74の油圧を超えるとチェック弁73が開放されて、油路68の油路74に供給される。
【0057】
また、アキュムレータ44の油圧室45の油圧が所定値以下である場合は、入力ポート76とドレーンポート77とが遮断されるようにリリーフバルブ75が制御され、アキュムレータ44で蓄圧がおこなわれる。前記所定値は、図3のステップS02の判断に用いる所定値と同じ意味である。つまり、アキュムレータ44の油圧が所定値以下ではアキュムレータ44の蓄圧不足であるため、リリーフバルブ75の入力ポート76とドレーンポート77とが遮断される。この制御により、アキュムレータ44の油圧室45の油圧が上昇し、その油圧が所定値を超えることにより、マイクロバブル発生装置47においてマイクロバブルを発生させることが可能になる。
【0058】
つぎに、アキュムレータ44に蓄えられている油圧を放出して、マイクロバブル発生装置47に供給する制御例を図10に基づいて説明する。まず、アキュムレータ44の油圧室45の油圧が算出され(ステップS11)、その油圧が所定値を超えているか否かが判断される(ステップS12)。このステップS12の判断に用いる所定値の意味は、図3のステップS02で説明した所定値の意味と同じである。
【0059】
このステップS12で肯定的に判断された場合は、入力ポート76とドレーンポート77とを接続するようにリリーフバルブ75を制御して、アキュムレータ44の油圧をマイクロバブル発生装置47に供給し、マイクロバブルを発生させる(ステップS13)。また、このステップS13においては、ステップS12で肯定判断されてからの経過時間、または入力ポート76とドレーンポート77とが接続されてからの経過時間がインクリメントされる。この経過時間は、つぎのステップでリリーフ設定圧を算出するために用いるものである。
【0060】
そして、前記経過時間を用いてリリーフ設定圧を算出する(ステップS14)。このステップS14は、油路74の油圧を上昇させるかまたは低下させるかを判断するものであり、このステップS14の処理には図11のマップを用いる。横軸には経過時間が示され、縦軸にはリリーフ設定圧が示されている。この図11のマップにおいては、経過時間が時間t1以下ではリリーフ設定圧が低圧に設定され、経過時間が時間t1を超えると、リリーフ設定圧が高圧の所定値に設定されている。この図11に示された所定値のリリーフ設定圧は、油路74の油圧を油路7の油圧よりも高圧にすることが目標である。
【0061】
この図11のマップを用いると、時間t1以下では油路74の油圧を低下させるようにリリーフバルブ75を制御し、時間t1を超えると油路74の油圧を上昇させるように、リリーフバルブ75を制御することを示す。なお、油圧室45の油圧が所定値を越えている場合は、経過時間に関わりなく、油路74の油圧を低下させるようにリリーフバルブ75を制御する。このステップS14についで、図11のマップで算出されたリリーフ設定圧に基づいてリリーフバルブ75が制御され(ステップS15)、この制御ルーチンを終了する。ここでは、ステップS12で肯定的に判断されてステップS15に進んだのであるから、入力ポート76とドレーンポート77とを接続するようにリリーフバルブ75を制御する処理が継続される。
【0062】
一方、ステップS12で否定的に判断された場合は、リリーフ設定圧が所定値と一致しているか否かが判断される(ステップS16)。この判断には図11のマップを用いる。前記経過時間が時間t1以下であるためにリリーフ設定圧が低圧である場合は、ステップS16で否定的に判断されて、ステップS13ないしステップS15の処理をおこなう。つまり、入力ポート76とドレーンポート77とを接続するようにリリーフバルブ75を制御することが継続される。
【0063】
これに対して、経過時間が時間t1を超えているためにリリーフ設定圧が所定圧と一致している場合は、ステップS16で肯定的に判断されて、入力ポート76とドレーンポート77とを遮断するようにリリーフバルブ75を制御し、かつ、経過時間をクリアする処理をおこない(ステップS17)この制御ルーチンを終了する。つまり、前記と同様に油圧室45の油圧を上昇させる制御がおこなわれる。
【0064】
上記の説明は、最初にステップS12に進んだ時点で肯定判断される場合の例であるが、オイルポンプ2の駆動初期段階のように、油路7が低圧であるときは、最初にステップS12に進んだ時点で否定的に判断されてステップS16に進む。この時点では、ステップS12で未だ肯定判断されていないのであるから、図11のマップを用いることなくステップS16で必然的に肯定判断され、ステップS17に進む。このとき、油路7のオイルが油路74に排出されていなければ、アキュムレータ44での蓄圧はおこなわれず、油路7のオイルが油路74に排出されていれば、アキュムレータ44で蓄圧がおこなわれる。また、ステップS13を未だ経由していないのであるから、このステップS17では経過時間のクリアはおこなわれない。つまり、ステップS17では油圧室45の油圧が所定値を超えるように、リリーフバルブ75が制御される。
【0065】
このように、第4具体例においても、油路7の油圧を制御するために、プレッシャリリーフバルブ66から排出されたオイルの油圧をアキュムレータ44で上昇させ、その油圧をマイクロバブル発生装置47に供給してマイクロバブルを発生するように構成されている。したがって、第1具体例と同様の効果を得られる。
【0066】
(第5具体例)
つぎに、潤滑装置1の第5具体例を図12に基づいて説明する。図12において、図7と同じ構成部分については同じ符号を付してある。より具体的には、セカンダリレギュレータバルブ15の構成が、図7のセカンダリレギュレータバルブ15と同じである。すなわち、セカンダリレギュレータバルブ15にはドレーンポート17が設けられており、図1のドレーンポート18は設けられていない。また、ドレーンポート17には油路25が接続されている。さらに、油路25から潤滑部位47に至る経路の構成は、図9の構成と共通している。
【0067】
まず、アキュムレータ44の油圧室45は油路74に接続され、その油路74と油路25とがチェック弁73を介して接続されている。チェック弁73は、油路25の油圧が油路74の油圧よりも高圧である場合に開放され、油路25の油圧が油路74の油圧以下である場合に閉じられるように構成されている。なお、油路74にリリーフバルブ75を介在させてマイクロバブル発生装置47が接続されている構成、そのマイクロバブル発生装置47に油路52を介在させて潤滑部位37が接続されている構成も、図9の構成と同じである。
【0068】
この第5具体例において、図7と同じ構成部分については、図7と同じ作用が生じる。また、油路7の油圧を制御するために、プライマリレギュレータバルブ15のドレーンポート17からオイルが排出されて油路25の油圧が上昇し、油路25の油圧が油路74の油圧を超えた場合に、チェック弁73が開放される。すると、油路25から油路74に圧油が供給されるとともに、入力ポート76とドレーンポート77とが遮断されるように、リリーフバルブ75が制御されている場合は、アキュムレータ45に圧油の油圧が蓄えられる。
【0069】
これに対して、入力ポート76とドレーンポート77とが接続されるようにリリーフバルブ75が制御されている場合は、アキュムレータ44の油圧がマイクロバブル発生装置47に供給されてマイクロバブルが発生し、マイクロバブルが混入されたオイルが潤滑部位37に供給される。この第5具体例において、リリーフバルブ75を制御するために図10の制御を実行することができる。この第5具体例においても、油路7の油圧を制御するにあたり、セカンダリレギュレータバルブ15から油路25にドレーンされたオイルの油圧をアキュムレータ44に蓄え、その油圧をマイクロバブル発生装置47に供給するように構成されている。したがって、第1具体例と同様の効果を得られる。
【0070】
(第6具体例)
つぎに、潤滑装置1の第6具体例を図13に基づいて説明する。図13において、図8と同じ構成部分については同じ符号を付してある。この図13において、プライマリレギュレータバルブ15はドレーンポート17を有しているが、図8のドレーンポート18は設けられていない。また、図13に示されたセカンダリレギュレータバルブ26の構成は、図8のセカンダリレギュレータバルブ26の構成と同じである。さらに、セカンダリレギュレータバルブ26のドレーンポート28には油路38が接続され、その油路38にはチェック弁73を介在させて油路74が接続されている。この油路74にはアキュムレータ44の油圧室45が接続されている。また、油路74にリリーフバルブ75および油路42を介在させてマイクロバブル発生装置47が接続されているとともに、そのマイクロバブル発生装置47には油路52を介在させて潤滑部位37が設けられている点は、図9の構成と同じである。さらに図13においては、油路38から分岐する油路78が設けられており、その油路78が潤滑部位37に接続されている。つまり、図13においては、油路38から潤滑部位37にオイルを供給する2つの経路が並列に配置されている。
【0071】
つぎに、第6具体例における作用を説明する。第6具体例において、図8と同じ構成部分については同じ作用が生じる。また、第6具体例においては、油路7の油圧が上昇してプライマリレギュレータバルブ15のスプール20が図13で下向きに押されると、入力ポート16とドレーンポート17とが接続されて、油路7のオイルが油路25に排出され、油路7の油圧が低下する。また、油路7の油圧が低下すると、スプール20が図13で上向きに押されて入力ポート16とドレーンポート17とが遮断される。このようにして、油路7の油圧が制御される。
【0072】
一方、図13において、セカンダリレギュレータバルブ26の構成は図8と同様に構成されているため、図13のセカンダリレギュレータバルブ26は図8のセカンダリレギュレータバルブ26と同様に作用する。そして、油路25のオイルがセカンダリレギュレータバルブ26を経由して油路38に排出されると、油路38のオイルは油路78を経由して潤滑部位37に供給される。また、油路の油圧が油路74の油圧以下である場合は、チェック弁73が閉じられている。これに対して、油路38の油圧が油路74の油圧を超えた場合は、チェック弁73が開放されて、油路38から油路74にオイルが供給される。
【0073】
この第6具体例においても、図10の制御を実行することにより、第5具体例と同様にリリーフバルブ75を制御することができ、第4具体例と同様の作用効果を得られる。つまり、プライマリレギュレータバルブ15のドレーンポート17から排出されたオイルをアキュムレータ44に供給して油圧を上昇させ、その油圧をマイクロバブル発生装置47に供給してマイクロバブルを発生させるように構成されているから、オイルポンプ2の負荷が増加することを抑制でき、第1具体例と同様の効果を得られる。さらに第5具体例においては、アキュムレータ44にオイルの油圧を蓄えている間も、油路38のオイルを油路78を経由させて潤滑部位37に供給することができる。したがって、潤滑部位37における潤滑油不足を回避できる。
【0074】
ここで、各具体例において説明した構成と、この発明の構成との対応関係を説明する。まず、図1に基づいて説明した第1具体例は、請求項1、請求項3、請求項5の発明に対応するものであり、オイルポンプ2が、この発明のオイルポンプに相当し、マイクロバブル発生装置47が、この発明のマイクロバブル発生装置に相当し、潤滑部位37が、この発明の潤滑部位に相当し、アキュムレータ44が、この発明のアキュムレータに相当し、切換弁53が、この発明の開閉弁に相当し、プライマリレギュレータバルブ15がこの発明の第1制御弁に相当し、セカンダリレギュレータバルブ26が、この発明の第2制御弁に相当し、油路7が、この発明の油路に相当し、入力ポート16が、この発明の第1入力ポートに相当し、ドレーンポート17,18が、この発明の第1ドレーンポートに相当し、入力ポート27が、この発明の第2入力ポートに相当し、ドレーンポート30が、この発明の第2ドレーンポートに相当し、油路38が、この発明のバイパス油路に相当する。
【0075】
また、図7に基づいて説明した第2具体例は、請求項1、請求項3、請求項5の発明に対応するものであり、ドレーンポート17が、この発明における第1ドレーンポートに相当する。なお、第2具体例のその他の構成と、各請求項の構成との対応関係は、第1具体例の構成と各請求項の構成との関係と同じである。
【0076】
また、図8に基づいて説明した第3具体例は、請求項1、請求項3、請求項5の発明に対応するものであり、ドレーンポート28が、この発明における第2ドレーンポートに相当する。なお、第3具体例のその他の構成と、各請求項の構成との対応関係は、第1具体例の構成と各請求項の構成との関係と同じである。
【0077】
また、図9に基づいて説明した第4具体例は、請求項1、請求項3の発明に対応するものであり、リリ−フバルブ75が、この発明の開閉弁に相当し、プレッシャリリーフバルブ66が、この発明の第1制御弁に相当し、入力ポート67が、この発明の第1入力ポートに相当し、出力ポート69が、この発明の第1ドレーンポートに相当する。なお、第4具体例のその他の構成と、各請求項の構成との対応関係は、第1具体例の構成と各請求項の構成との関係と同じである。
【0078】
また、図12に基づいて説明した第5具体例は、請求項1、請求項3の発明に対応するものであり、リリーフバルブ75が、この発明の開閉弁に相当する。なお、第5具体例のその他の構成と、各請求項の構成との対応関係は、第1具体例の構成と各請求項の構成との関係と同じである。
【0079】
また、図13に基づいて説明した第6具体例は、請求項1、請求項3、請求項4、請求項5の発明に対応するものであり、リリーフバルブ75が、この発明の開閉弁に相当し、ドレーンポート17が、この発明の第1ドレーンポートに相当し、ドレーンポート28が、この発明の第2ドレーンポートに相当し、油路78が、この発明のバイパス油路に相当し、チェック弁73が、この発明のバルブに相当する。なお、第6具体例のその他の構成と、各請求項の構成との対応関係は、第1具体例の構成と各請求項の構成との関係と同じである。さらに、図3および図10に示されたフローチャートが、この発明の請求項2に対応するものであり、図3に示されたステップS07、および図10に示されたステップS17が、この発明における開閉弁制御手段に相当する。
【0080】
なお、前記の各具体例においては、油路の油圧を制御する圧力制御弁から排出されたオイルがアキュムレータに蓄えられるように構成されているが、油路のオイルを他の油路に排出することにより、油路のオイル量を制御する流量制御弁(図示せず)を設け、その流量制御弁から排出されたオイルをアキュムレータに供給するように構成された潤滑装置でもよい。さらに、各具体例において、油路7の油圧を任意に制御する圧力制御弁とは異なる機能を有するバルブ、例えば、プレッシャリリーフバルブ(逃がし弁)8からドレーンされたオイルをアキュムレータに蓄えて油圧を上昇させ、その油圧をマイクロバブル発生装置に供給するように構成することもできる。すなわち、この発明における制御弁には、圧力制御弁、流量制御弁、逃がし弁が含まれる。
【符号の説明】
【0081】
1…潤滑装置、 2…オイルポンプ、 7,25,38…油路、 15…プライマリレギュレータバルブ、 16,27,76…入力ポート、 17,28,30,77…ドレーンポート、 26…セカンダリレギュレータバルブ、 37…潤滑部位、 44…アキュムレータ、 47…マイクロバブル発生装置、 53…切換弁、 66…プレッシャリリーフバルブ、 73…チェック弁、 75…リリ−フバルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルを油路に吐出するオイルポンプと、このオイルポンプから油路に吐出されたオイルを、潤滑部位に供給してその潤滑部位を潤滑または冷却する前の過程で、前記潤滑部位に供給するオイルにマイクロバブルに混入させるマイクロバブル発生装置と、
前記油路から前記マイクロバブル発生装置に至るオイルの供給経路に配置され、かつ、前記油路に接続された第1入力ポートおよび前記マイクロバブル発生装置に接続される第1ドレーンポートとを有しており、前記オイルポンプから吐出されたオイルを前記第1入力ポートから前記第1ドレーンポートに排出することにより、前記油路におけるオイルの油圧またはオイルの流量を制御する第1制御弁と、
前記第1制御弁の第1ドレーンポートから前記マイクロバブル発生装置に至るオイルの供給経路に配置され、かつ、前記第1ドレーンポートから排出されたオイルが供給されるアキュムレータと、
前記第1ドレーンポートから排出されたオイルが前記アキュムレータに供給される際に、そのアキュムレータから前記潤滑部位に至るオイルの供給経路を遮断することにより、前記アキュムレータにオイルを蓄えて油圧を上昇させる一方、前記アキュムレータに蓄えられるオイルの油圧が上昇した後に、前記アキュムレータから前記潤滑部位に至るオイルの供給経路を開放することにより、前記アキュムレータに蓄えられたオイルの油圧を放出させる開閉弁と
を備えていることを特徴とする潤滑装置。
【請求項2】
前記アキュムレータから前記潤滑部位に至るオイルの供給経路を前記開閉弁により遮断することにより、前記アキュムレータに蓄えられるオイルの油圧が、前記マイクロバブル発生装置でマイクロバブルを発生させることが可能な所定値を超えるように制御する開閉弁制御手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の潤滑装置。
【請求項3】
前記第1ドレーンポートおよび前記潤滑部位に接続され、かつ、前記アキュムレータおよび前記マイクロバブル発生装置に対して並列に配置されたバイパス油路が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の潤滑装置。
【請求項4】
前記第1ドレーンポートから排出されたオイルの油圧が前記アキュムレータに蓄えられたオイルの油圧以下であるときに、前記第1ドレーンポートから排出されたオイルを前記バイパス油路を経由させて潤滑部位に供給するとともに、前記第1ドレーンポートから排出されたオイルの油圧が前記アキュムレータに蓄えられたオイルの油圧を超えると、前記第1ドレーンポートから排出されたオイルを前記アキュムレータに供給するバルブが設けられていることを特徴とする請求項3に記載の潤滑装置。
【請求項5】
前記第1ドレーンポートから前記アキュムレータに至るオイルの供給経路に配置され、かつ、前記第1ドレーンポートに接続された第2入力ポートと、前記アキュムレータおよび前記バイパス油路に接続された第2ドレーンポートとを有し、前記第2入力ポートのオイルを前記第2ドレーンポートから排出することにより、前記第1ドレーンポートと前記第2入力ポートとの間におけるオイルの油圧またはオイルの流量を制御するように構成された第2制御弁が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の潤滑装置。
【請求項6】
オイルポンプによってオイルを圧送される油路から、潤滑部位を経由して油貯溜部へ前記オイルを還流する潤滑装置であって、前記油路にマイクロバブル発生装置を備え、前記油路中に蓄積された油圧を前記マイクロバブル発生装置に印加することにより、マイクロバブルが混入されたオイルを前記潤滑部位に供給するように構成されていることを特徴とする潤滑装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−80387(P2011−80387A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231887(P2009−231887)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】