説明

澱粉麺入り加圧加熱調理食品の製造法

【課題】 おだまき蒸し等の加圧加熱調理食品を電子レンジ又は湯煎にて再加熱しても、中に入っている麺が茹でたて直後のようなもちもち感を保持し、品質に優れた加圧加熱調理食品の製造方法、及びその加圧加熱調理食品の製造に用いられる麺の製造方法を提供すること。
【解決手段】 根茎澱粉40〜90質量%を主原料とし、これに小麦澱粉、米粉、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチからなる群から選択される1種以上の原料5〜40質量%と、小麦粉0〜40質量%を配合してなる製麺原料に加水をし、これを蒸練してα化度が80%以上、好ましくは85%以上100%未満の生地を得、この生地を常法により圧延して麺帯とし、次いで麺線に切出し、澱粉麺を得ること及び澱粉麺を容器に入れて加圧加熱調理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は根茎澱粉を主体とする特定配合の原料を特定の条件下で蒸練し、麺線に切り出す澱粉麺の製造法及びこれを使用した加圧加熱調理食品の製造法に関し、より詳しくは、根茎澱粉として馬鈴薯澱粉及び/又はタピオカ澱粉を主原料とする澱粉主体の製麺原料に加水し、蒸練してα化度が80%以上の生地とし、常法により麺線とする澱粉麺の製造方法及び該澱粉麺を加圧加熱調理した容器入り加圧加熱調理食品(おだまき蒸し、麺入り茶碗蒸し、離乳食用麺類、非常食用麺類等)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主に関西地区においておだまき蒸し、うどん蒸し等と称され、チルド流通で販売されている茶碗蒸し製品が知られている。このような茹でたうどんが入った茶碗蒸し製品は、通常の茶碗蒸しと同様に、出し汁に溶いた卵液とその他の具材(カマボコ、シイタケ、銀杏等)を容器に入れ、さらに茹でたうどんを入れて密封し、レトルト釜にて加圧加熱調理を行ない、その後常温、放冷、冷水冷却を行った後に冷蔵保存され流通している商品である。そして、喫食に際して、電子レンジ又は湯煎にて再加熱される。一般的な普通の茶碗蒸しは、うどんが入っていないので何ら食感的な問題はない。しかし、おだまき蒸し等のようにうどんが入っている食品の場合、加圧加熱調理などの製造過程、流通過程中、茹で又は蒸し等の再加熱処理等によって、うどんが水分をどんどん吸収してしまい、喫食時には軟らかくブヨブヨの状態となり箸でもち上げる事も出来ずに切れてしまい、うどんとしてのもちもちした粘弾性に富んだ食感がまったくないものであった。この場合、使用するうどんとして、生麺、茹麺、冷凍麺、押出し麺等どれを使用しても、いずれも同じ軟らかくブヨブヨの状態となってしまうという問題があった。
【0003】
これらの問題を解決するために、従来、おだまき蒸しの製法として茹でたうどんを150℃の油中に1分間保持して麺表面に防液膜を形成したうどんを用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この方法においても得られるおだまき蒸し中のうどんは、水分を吸って柔らかくなっており、食感に劣るものであった。
【0004】
他方、澱粉主体の麺原料を蒸練して麺を製造する先行技術として、蒸練してα化する麺の製造方法(例えば、特許文献2参照)や、澱粉又は穀類粉末を加水蒸練したものに等量以下の澱粉又は穀類粉末を生粉のまま添加混捏して麺状食品を得る方法(例えば、特許文献3参照)が知られているが、これらの方法で得られる麺を容器に入れて加圧加熱調理食品を製造しても、電子レンジ又は湯煎等で再加熱した場合に、麺の食感が茹でたて直後のような、もちもちした粘弾性を保持することはできない。
【0005】
また、米、芋類のデンプン粉、及び小麦粉を主原料として使用し、米が粒状となってその一部は未α化の状態で混入された麺の製造法(例えば、特許文献4参照)が知られているが、この方法おいても得られる麺を容器に入れて加圧加熱調理食品を製造し、電子レンジ又は湯煎等で再加熱した場合に、麺の食感が茹でたて直後のような、もちもちした粘弾性を保持することはできない。
【0006】
さらに、蒸練ミキサー等を用いて製造する、小麦粉を主原料とする蒸練麺の製造法により得られる麺類(例えば、特許文献5参照)が知られているが、これらの麺も加圧加熱調理食品とする麺に適用するには不向きであって、この麺を容器に入れて加圧加熱調理食品を製造しても、電子レンジ又は湯煎等で再加熱した場合に、麺の食感が茹でたて直後のような、もちもちした粘弾性を保持することはできない。
【0007】
【特許文献1】特開昭56−64739公報
【特許文献2】特開昭54−132250号公報
【特許文献3】特開昭54−119046号公報
【特許文献4】特開2000−83611号公報
【特許文献5】特開2001−78694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、おだまき蒸し等の加圧加熱調理食品を電子レンジ又は湯煎にて再加熱しても、中に入っている麺が茹でたて直後のようなもちもちした粘弾性を保持し、品質に優れた加圧加熱調理の製造方法、及びその加圧加熱調理の製造に用いられる麺の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、麺類を入れたおだまき蒸し等の食品を加圧加熱して調理したレトルト食品を再加熱しても、通常の生麺を茹でたものに近いもちもちした粘弾性のある食感を残すことが出来る麺とするため、製麺原料や製麺方法について種々検討を行った結果、根茎澱粉40〜90質量%を主原料とし、これに小麦澱粉、米粉、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチからなる群から選択される1種以上の原料5〜40質量%と、小麦粉0〜40質量%を配合してなる製麺原料に加水し、これを蒸練してα化度が80%以上の生地を得、この生地を常法により圧延して麺帯とし、次いで麺線に切り出した澱粉麺を食材と共に容器に収容後、加圧加熱調理した食品を、電子レンジ又は湯煎にて再加熱したところ、中に入っている麺が茹でたて直後のような適度なもちもちした粘弾性を有することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、(1)根茎澱粉40〜90質量%を主原料とし、これに小麦澱粉、米粉、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチからなる群から選択される1種以上の原料5〜40質量%と、小麦粉0〜40質量%を配合してなる製麺原料に加水し、これを蒸練してα化度が80%以上の生地を得、この生地を常法により圧延して麺帯とし、次いで麺線に切り出すことを特徴とする澱粉麺の製造方法、特に加熱加圧調理食品用の澱粉麺の製造方法に関する。
本発明はまた、(2)根茎澱粉として馬鈴薯澱粉50〜90質量%を用いる、上記(1)記載の製造方法に関する。
本発明は、(3)根茎澱粉としてタピオカ澱粉40〜70質量%を用いる、上記(1)記載の製造方法に関する。
本発明は、(4)根茎澱粉として馬鈴薯澱粉10〜40質量%及びタピオカ澱粉20〜50質量%を用いる、上記(1)記載の製造方法に関する。
【0011】
さらに、本発明は、(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法で得られる澱粉麺を、単独又は食材と共に容器に収容後、加圧加熱調理することを特徴とする加圧加熱調理食品の製造方法に関する。
また本発明は、(6)澱粉麺を茹でて歩留り150〜220%に調整した後に容器に収納することを特徴とする上記(5)記載の加圧加熱調理食品の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明方法で得られる澱粉麺を用いた加圧加熱調理食品は、電子レンジ又は湯煎等で再加熱しても、麺の食感が茹でたて直後のような、もちもちした粘弾性を有しており、このため優れた品質のおだまき蒸し、うどん蒸し、麺入り離乳食、麺入り非常食、麺入り病人食等の澱粉麺入り加圧加熱調理食品が得られる。さらに、本発明における加圧加熱調理食品は、再加熱後に冷めても又は再加熱しなくとも、中に入っている麺がソフトでもちもち感を保持している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の澱粉麺の製造方法としては、根茎澱粉40〜90質量%を主原料とし、これに小麦澱粉、米粉、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチからなる群から選択される1種以上の原料5〜40質量%と、小麦粉0〜40質量%を配合してなる製麺原料に加水し、この加水した製麺原料を蒸練してα化度が80%以上の生地を得、この生地を常法により圧延して麺帯とし、次いで麺線に切り出す方法であれば特に制限されないが、上記α化度が80%以上の生地としては、α化度が85%以上100%以下の生地が好ましい。
【0014】
本発明の澱粉麺の製造方法における根茎澱粉の配合割合は、製麺原料総量の40〜90質量%が必要であり、配合割合が40質量%未満であると加圧加熱調理後に再加熱した麺はもちもちした粘弾性、滑らかさに劣り、柔らかくなりすぎた食感になり、90質量%を超えると硬い食感となってしまう。
また、本発明の澱粉麺の製造方法における根茎澱粉としては、馬鈴薯澱粉及び/又はタピオカ澱粉が好ましい。
本発明において、根茎澱粉として馬鈴薯澱粉のみを用いる場合、その配合割合は製麺原料総量の50〜90質量%とすることが好ましく、より一層優れたもちもちした粘弾性を付与するため、60〜70質量%とすることがさらに好ましい。
根茎澱粉として、タピオカ澱粉のみを用いる場合、その配合割合は製麺原料総量の40〜70質量%とすることが好ましく、より一層優れたもちもちした粘弾性を付与するため、45〜65質量%とすることがさらに好ましい。
さらに、本発明の方法において、馬鈴薯澱粉及びタピオカ澱粉を用いる場合、その配合割合は製麺原料総量に対して、馬鈴薯澱粉10〜40質量%及びタピオカ澱粉20〜50質量%を用いることが好ましい。
【0015】
本発明で用いる馬鈴薯澱粉は、未処理の馬鈴薯澱粉以外に、軽度に化工処理した澱粉(酸化澱粉、リン酸架橋澱粉、アセチル化澱粉、エーテル化澱粉等)を用いてもよい。また、タピオカ澱粉についても軽度に化工処理したもの、例えばリン酸架橋澱粉、アセチル化澱粉、エーテル化澱粉等を用いてもよい。
【0016】
本発明の澱粉麺の製造方法において、小麦澱粉、米粉、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチからなる群から選択される1種以上を配合することが必要であるが、なかでも小麦澱粉が好ましい。これら澱粉の配合割合は、製麺原料総量の5〜40質量%が必要であり、5質量%未満であると、加圧加熱調理後に再加熱した麺は、硬い食感になり、40質量%を超えると柔らかくなりすぎた食感となり、茹で伸びも早くなってしまう。加圧加熱調理後に再加熱した麺に、より一層優れた食感を付与するため、これら原料の配合割合を、製麺原料総量の10〜35質量%とすることが好ましい。なかでも小麦澱粉が好ましく、その配合割合は10〜35質量%が好ましく、15〜25質量%がより好ましい。
【0017】
本発明の澱粉麺の製造方法における製麺原料としての小麦粉は任意配合成分であり、小麦粉を配合する場合、製麺原料総量の40質量%を上限とする必要がある。小麦粉の配合割合が40質量%を越えると、加圧加熱調理後に再加熱した麺はもちもちした粘弾性に乏しくなる。また、小麦粉の配合割合を製麺原料総量の5〜35質量%にすることが、より一層優れた食感を付与する上で好ましい。上記のように、小麦粉は任意配合成分であり、製麺原料として小麦粉を使用しない澱粉麺の場合、小麦粉を主要成分とする従来の麺類と違って、小麦タンパク質にアレルギー反応を示すヒト(成人や子供)には、通常の麺類と変わりなく麺類の感覚を味わうことができる。
【0018】
さらに必要に応じて食塩0〜1質量%、調味料等を配合してもよい。
【0019】
本発明の澱粉麺の製造方法においては、蒸練に先立って製麺原料に加水する。加水量は特に制限されないが、製麺原料100質量部に対して、30〜40質量部、好ましくは33〜37質量部の加水量を好適に例示することができる。その際の水温は特に制限されないが、常温以下であれば特に問題なく、常温又は冷却した水のいずれでもよい。
【0020】
本発明の澱粉麺の製造方法において、麺生地をα化する蒸練は必須工程であり、蒸練しないと麺生地がつながらないために製麺ができなくなってしまう。このような蒸練処理としては、α化度が80%以上の生地を得ることができる処理であれば特に制限されないが、前記のように、α化度が85%以上100%以下の生地を得ることができる処理が好ましく、ここでα化度(糊化度)とは、次の分析法(ジアスターゼ法)にしたがって測定した値をいう。
【0021】
α化度分析法(ジアスターゼ法)
1)試料採取:蒸練処理して得られた生地を乾燥して粉砕した後、目開き150μmの篩に通し、これを通過した粉末をα化度分析用試料とした。100ml容首長三角フラスコを5個用意し、粉末試料(目開き150μmの篩を通過したもの)1.00gを、4個採取しこれをA1〜A4とする。1個はB(ブランク)とする。
2)加熱:5個のフラスコに水50mlを加え、試料をよく懸濁させる。A1及びA2を沸騰浴中で15分間加熱し、その後氷水又は冷水中で常温まで急冷する。
3)酵素添加:A1、A3及びBに5%ジアスターゼ緩衝溶液を5ml加える。
4)デンプン糖化:5個のフラスコ全部を恒温水槽中で振とうしながら、37℃±1℃に90分間保ってデンプンを糖化し、終了後、ただちに1mol/L塩酸を各フラスコに2ml加えて、ジアスターゼの反応を停止させ、水を加えて100ml定容とする。
5)検液採取:各々の溶液をろ過し、A1〜A4及びBから得た検液10mlをピペットで100ml容共栓三角フラスコにとり、a1〜a4及びbとする。
この他に水10mlを採取したフラスコを用意しWとする。
6)糖の酸化:6個の三角フラスコに、0.05mol/Lヨウ素よう化カリウム溶液10mlを加える。次に等時間間隔で、0.1mo1/L水酸化ナトリウム溶液18mlを順次加え、密栓して振り混ぜ各フラスコとも正確に15分間置く。(この反応により糖は酸化されヨウ素が消費される。)
7)滴定:15分間経過した順に、10%硫酸2mlを手早く加え硫酸酸性とし、残存ヨウ素を0.1mo1/Lチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定する。
(指示薬:デンプン溶液)
α化度(%)={(W−a3)−(W−a4)−(W−b)}/{(W−a1)−(W−a2)−(W−b)}×100
W:空試験の滴定値(ml)
a1〜a4:それぞれの滴定値(ml)
b:ジアスターゼのみを糖化したものの滴定値(ml)
【0022】
蒸練する際に供給する蒸気としては、飽和水蒸気又は過熱水蒸気のいずれでもよい。蒸練条件については、蒸気圧が0.02〜0.15MPaの範囲であれば、6〜12分間程度蒸練することが好ましい。また、蒸練時間を長くしすぎると、生地がやわらかくなりすぎてしまい、その結果得られる麺の食感も弱くなり、くちゃつきが出る。蒸練時間が少なすぎると生地のα化が不十分となり、得られる麺も折れやすいものとなってしまう。また、蒸気圧や蒸練時間以外の蒸練における条件は、用いる蒸練機の種類や扱う原料の量等により異なるが、例えば蒸気を供給しながらミキサーの回転数40〜70rpmで行えばよく、好ましくは生地温度90〜100℃、回転数50〜60rpmの条件を挙げることができる。
【0023】
上記の蒸練により、蒸練前の生地水分が蒸練後約3〜10%上昇する。蒸練後の生地水分が35〜55%、例えば、45%程度になることが好ましい。
【0024】
蒸練後のα化生地の塊を、熱いまま圧延を行って所定の厚みの麺帯を得る。圧延は常法により行うことができる。得られた麺帯は、好ましくは常温〜10℃位迄冷却して麺線切り出しを行う。切り出す麺線の太さは、所望により適宜選択することができる。
【0025】
このようにして得られる澱粉麺は、そのまま使用してもよく、茹でて水洗して使用してもよく、あるいは、茹で水洗後に冷蔵、冷凍、又は冷凍後解凍して加圧加熱調理食品に使用することができる。茹でる場合には、歩留りは加圧加熱食品の種類や求める食感により適宜決めればよいが、通常は150%〜220%、好ましくは160〜200%に調整する。
【0026】
本発明の加圧加熱調理食品の製造方法としては、上記本発明の製造方法で得られる澱粉麺を、単独又は食材と共に容器に収容後、加圧加熱調理する方法であれば特に制限されず、加圧加熱調理食品としては、おだまき蒸し、麺入り茶碗蒸し、麺入り離乳食、麺入り病人食、一般的なうどん様麺やカレーうどん様麺等の非常食用麺類を挙げることができる。また、加圧加熱調理法は、加圧加熱調理食品の種類に応じて、適宜選択することができる。
【0027】
加圧加熱調理食品がおだまき蒸しや麺入り茶碗蒸しの場合、本発明方法で得られる澱粉麺を茶碗蒸し用容器に一定量入れ、調理したダシ卵液、具材等を入れて密封包装を行った後に、レトルト釜にて例えば0.11MPa、釜内温度98〜113℃(品温:98〜99℃)にて25分間加圧加熱調理を行う。その後レトルト釜内より取り出し、1〜2時間放冷し、さらに水冷却を行って冷蔵庫内に保管する。これをチルド流通にて販売し、食べる場合は容器のまま湯煎にて約15分前後、電子レンジの場合は容器の一部を開封し4〜6分(量にもよるが500W)再加熱を行う。
【0028】
加圧加熱調理食品が麺入り離乳食や術後患者等が食する麺入り病人食の場合、本発明方法で得られる澱粉麺を離乳児の月数や術後の回復の程度に応じて適宜大きさに細断し、少なくとも1回分の食事量に合う容量の容器にダシ液と野菜、鶏肉等の刻んだ具材を入れ、必要に応じてビタミン、ミネラルを配合して密封包装を行った後に、レトルト釜にて例えば0.11MPa、釜内温度98〜113℃(品温:98〜99℃)にて25分間加圧加熱調理を行い、前述のおだまき蒸しと同様の操作を行って、冷蔵庫内に保管し、同様の方法により再加熱を行う。
【0029】
加圧加熱調理食品が一般的なうどん様麺やカレーうどん様麺の場合、本発明方法で得られる澱粉麺をだし汁やカレー汁に浸したまま容器に密封包装を行った後に、レトルト釜にて例えば0.11MPa、釜内温度98〜113℃(品温:98〜99℃)にて25分間加圧加熱調理を行い、前述のおだまき蒸しと同様の操作を行って、冷蔵庫内に保管し、同様の方法により再加熱を行う。このようなうどん様麺は、非常食品として有用である。
【0030】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0031】
馬鈴薯澱粉(北海道中斜里農協製)50質量部、浮粉(小麦澱粉;長田産業製「大宝宝船」)25質量部及び小麦粉(日清製粉製「フラワー」)25質量部を前もって試験用蒸練ミキサー(株式会社新井製作所製)で混合した。次いで、うま味調味料(味の素製)0.05質量部を水34質量部に溶解したものを加え、蒸気圧0.08MPaの蒸気を吹込みながら、ミキサー回転数50回/分にて6.5分間蒸練ミキシングを行い、その後蒸気を止めさらに2分間ミキシングを行ってα化度96%の麺生地を得た。この生地塊を熱いまま、ロール機(新東京麺機製試験用ミキサー)にかけ圧延を行って麺帯厚2.70〜2.80mmの麺帯を得た。これを15℃位迄冷却し、冷却後#9角刃にて麺線の切り出しを行って澱粉麺を得た。
【0032】
この澱粉麺を10秒間茹で(茹で歩留り167%)、水道水で水洗いを行った後に、麺50gを前もって用意しておいた茶碗蒸し用のプラスティック容器に入れ、さらにダシ卵液150gを入れた後、空気が入らない様に上部を密封シールした。これをレトルト釜にて0.11MPa(庫内温98〜113℃)で25分間加圧加熱調理を行った(品温:98〜99℃)。この後レトルト釜より容器を取り出して常温で放冷した。さらに水冷却を行い冷蔵庫(5〜10℃)に保管した。この加圧加熱調理食品を2日後に取り出して湯煎にて15分間再加熱し、これを10名のパネラーにて表1に示す評価基準表に基いて、試食試験を行った。その結果を表2に示す。
【実施例2】
【0033】
馬鈴薯澱粉(北海道中斜里農協製)65質量部、浮粉(小麦澱粉;長田産業製「大宝宝船」)17.5質量部及び小麦粉(日清製粉製「フラワー」)17.5質量部を前もって試験用蒸練ミキサー(株式会社新井製作所製)で混合した。次いで、うま味調味料(味の素製)0.05質量部を水34質量部に溶解したものを加え、蒸気圧0.08Mpaの蒸気を吹込みながら、ミキサー回転数50回/分にて6.5分間蒸練ミキシングを行い、その後蒸気を止めさらに2分間ミキシングを行ってα化度92%の麺生地を得た。この生地塊を熱いまま、ロール機(新東京麺機製試験用ミキサー)にかけ圧延を行って麺帯厚2.70〜2.80mmの麺帯を得た。これを15℃位迄冷却し、冷却後#9角刃にて麺線の切り出しを行って澱粉麺を得た。
【0034】
この澱粉麺を15秒間茹で(茹で歩留り173%)、水道水で水洗いを行った後に、50g/食に分割し冷凍した。1週間後にこの麺を冷凍庫より取り出して、冷凍のまま茶碗蒸し容器に移し、ダシ卵液150gを投入し、次いで実施例1と同様の処理を行い冷蔵保管(2日間)後、加圧加熱調理食品について実施例1と同様に試食試験を行った。その結果を表2に示す。
【実施例3】
【0035】
実施例2と同様の配合及び方法で製造した澱粉麺をそのまま茹でる事なく茶碗蒸し容器に入れた以外は実施例2と同様の処理を行い、冷蔵保管後(2日間)、実施例2と同様に加圧加熱調理食品の試食試験を行った。その結果を表2に示す。
【実施例4】
【0036】
製麺原料の配合を、馬鈴薯澱粉90質量部、浮粉5質量部及び小麦粉5質量部に代えて、α化度90%の麺生地を用いる以外は実施例2と同様の処理を行い、冷蔵保管後(2日間)、実施例2と同様に加圧加熱調理食品の試食試験を行った。その結果を表2に示す。
【実施例5】
【0037】
浮粉17.5質量部の代わりに、米粉17.5質量部としてα化度94%の麺生地を用いる以外は実施例2と同様の処理を行い、冷蔵保管後(2日間)、実施例2と同様に加圧加熱調理食品の試食試験を行った。その結果を表2に示す。
【実施例6】
【0038】
馬鈴薯澱粉の代わりに軽度の酸化処理をした馬鈴薯澱粉(松谷化学社製「スタビローズ1300」)65質量部を用い、さらに、小麦粉17.5質量部の代わりに米粉17.5質量部としてα化度89%の麺生地を用いる以外は実施例2と同様の処理を行い、冷蔵保管後(2日間)、実施例2と同様に加圧加熱調理食品の試食試験を行った。その結果を表2に示す。
【実施例7】
【0039】
製麺原料の配合を、馬鈴薯澱粉60質量部、ハイアミロースコーンスターチ20質量部及び小麦粉20質量部に代えて、α化度93%の麺生地を用いる以外は実施例2と同様の処理を行い、冷蔵保管後(2日間)、実施例2と同様に加圧加熱調理食品の試食試験を行った。その結果を表2に示す。
【実施例8】
【0040】
ハイアミロースコーンスターチ20質量部の代わりに、コーンスターチ20質量部としてα化度95%の麺生地を用いる以外は実施例7と同様の処理を行い、冷蔵保管後(2日間)、実施例7と同様に加圧加熱調理食品の試食試験を行った。その結果を表2に示す。
【実施例9】
【0041】
製麺原料の配合を、タピオカ澱粉45質量部、浮粉20質量部及び小麦粉35質量部に代えて、α化度90%の麺生地を実施例2と同様に処理して澱粉麺を得た。この澱粉麺を5秒間茹で(茹で歩留り158%)、水道水で水洗いを行った後に、50g/食に分割し冷凍した。1週間後にこの麺を冷凍庫より取り出して、冷凍のまま茶碗蒸し容器に移し、ダシ卵液150gを投入し、次いで実施例1と同様の処理を行い冷蔵保管(2日間)後、加圧加熱調理食品について実施例1と同様に試食試験を行った。この澱粉麺を冷蔵保管後(2日間)、実施例2と同様に加圧加熱調理食品の試食試験を行った。その結果を表2に示す。
【実施例10】
【0042】
製麺原料の配合を、タピオカ澱粉65質量部、浮粉20質量部及び小麦粉15質量部に代えて、α化度90%の麺生地を実施例2と同様に処理して澱粉麺を得た。この澱粉麺を6分間茹で(茹で歩留り218%)、水道水で水洗いを行った後に、50g/食に分割し冷凍した。1週間後にこの麺を冷凍庫より取り出して、冷凍のまま茶碗蒸し容器に移し、ダシ卵液150gを投入し、次いで実施例1と同様の処理を行い冷蔵保管(2日間)後、加圧加熱調理食品について実施例1と同様に試食試験を行った。この澱粉麺を冷蔵保管後(2日間)、実施例2と同様に加圧加熱調理食品の試食試験を行った。その結果を表2に示す。
【実施例11】
【0043】
製麺原料の配合を、馬鈴薯澱粉15質量部、タピオカ澱粉30質量部、浮粉20質量部及び小麦粉35質量部に代えて、α化度90%の麺生地を実施例2と同様に処理して澱粉麺を得た。この澱粉麺を2分間茹で(茹で歩留り182%)、水道水で水洗いを行った後に、50g/食に分割し冷凍した。1週間後にこの麺を冷凍庫より取り出して、冷凍のまま茶碗蒸し容器に移し、ダシ卵液150gを投入し、次いで実施例1と同様の処理を行い冷蔵保管(2日間)後、加圧加熱調理食品について実施例1と同様に試食試験を行った。この澱粉麺を冷蔵保管後(2日間)、実施例2と同様に加圧加熱調理食品の試食試験を行った。その結果を表2に示す。
【0044】
(比較例1)
製麺原料の配合を、馬鈴薯澱粉30質量部、浮粉30質量部及び小麦粉40質量部に代えた以外は実施例2と同様の処理を行い、冷蔵保管後(2日間)、実施例2と同様に加圧加熱調理食品の試食試験を行った。その結果を表2に示す。
【0045】
(比較例2)
製麺原料の配合を、馬鈴薯澱粉95質量部、浮粉2.5質量部及び小麦粉2.5質量部に代えた以外は実施例2と同様の処理を行い、冷蔵保管後(2日間)、実施例2と同様に加圧加熱調理食品の試食試験を行った。その結果を表2に示す。
【0046】
(比較例3)
製麺原料の配合を、馬鈴薯澱粉25質量部、浮粉50質量部及び小麦粉25質量部に代えた以外は実施例2と同様の処理を行い、冷蔵保管後(2日間)、実施例2と同様に加圧加熱調理食品の試食試験を行った。その結果を表2に示す。
【0047】
(比較例4)
製麺原料の配合を、馬鈴薯澱粉2.5質量部、浮粉2.5質量部及び小麦粉95質量部に代えた以外は実施例2と同様の処理を行い、冷蔵保管後(2日間)、実施例2と同様に加圧加熱調理食品の試食試験を行った。その結果を表2に示す。
【0048】
(比較例5)
小麦粉(日清製粉製「金すずらん」)65質量部、タピオカ澱粉(松谷化学社製「MKK100」)35質量部を、試験用真空ミキサー(新東京麺機製)に入れて混合し、次いで食塩1質量部を水40質量部に溶解したものを加え、真空度−750mHg、ミキサー回転数90回転/分にて10分間真空ミキシングを行って生地を得た。次いで、この生地を試験用ロール(新東京麺機製)を用いて常法により複合・圧延して麺帯厚2.90mmの麺帯を得、切刃#9角を用いて麺線切り出しを行って澱粉麺を得た。この澱粉麺を茹でて水洗い冷却し、茹で歩留り172%の茹で麺を得た。これを実施例2と同様の処理を行い、冷蔵保管後(2日間)、実施例2と同様に加圧加熱調理食品の試食試験を行った。その結果を表2に示す。
【0049】
(比較例6)
製麺原料の配合を、馬鈴薯澱粉65質量部、浮粉17.5質量部及び小麦粉17.5質量部に代えた以外は、比較例5と同様の処理を行ったが、生地つながらず製麺することができなかった。
【0050】
(比較例7)
製麺原料の配合を、浮粉80質量部、タピオカ澱粉10質量部及び小麦粉10質量部に代えた以外は、実施例2と同様の処理を行い、冷蔵保管後(2日間)、実施例2と同様に加圧加熱調理食品の試食試験を行った。その結果を表2に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
根茎澱粉40〜90質量%を主原料とし、これに小麦澱粉、米粉、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチからなる群から選択される1種以上の原料5〜40質量%と、小麦粉0〜40質量%を配合してなる製麺原料に加水し、これを蒸練してα化度が80%以上の生地を得、この生地を常法により圧延して麺帯とし、次いで麺線に切り出すことを特徴とする澱粉麺の製造方法。
【請求項2】
根茎澱粉として馬鈴薯澱粉50〜90質量%を用いる、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
根茎澱粉としてタピオカ澱粉40〜70質量%を用いる、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
根茎澱粉として馬鈴薯澱粉10〜40質量%及びタピオカ澱粉20〜50質量%を用いる、請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法で得られる澱粉麺を、単独又は食材と共に容器に収容後、加圧加熱調理することを特徴とする加圧加熱調理食品の製造方法。
【請求項6】
澱粉麺を茹でて歩留り150〜220%に調整した後に容器に収納することを特徴とする請求項5項記載の加圧加熱調理食品の製造方法。

【公開番号】特開2008−99671(P2008−99671A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242431(P2007−242431)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(301049777)日清製粉株式会社 (128)
【Fターム(参考)】